説明

配線回路基板およびその製造方法

【課題】導体パターンの腐食を防止することが可能な配線回路基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】導体パターン3は、端子部3aおよび配線部3bを含む。配線部3bを被覆するように端子被覆層6が形成される。導体パターン3の端子部3aの上面の高さは配線部3bの上面の高さよりも低く設定され、配線部3bの端部近傍において、配線部3bの上面が配線被覆層4の下面から離間するように傾斜する。配線被覆層4の端面、配線部3bから離間する配線被覆層4の下面の部分、配線被覆層4から離間する配線部3bの上面の部分(傾斜面)、および端子部3aの表面と密着するように端子被覆層6が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々の電気機器または電子機器に配線回路基板が用いられている。特許文献1には、磁気ディスク装置において磁気ヘッドを位置決めするために用いられる配線回路基板(磁気ヘッドサスペンション基板)が示される。この配線回路基板の製造時には、例えばステンレス鋼からなる基板上に例えばポリイミドからなる絶縁層が形成された後、絶縁層上に例えば銅からなる導体パターンが形成される。続いて、無電解めっきにより導体パターン上にニッケル膜が形成される。次に、絶縁層およびニッケル膜上に例えばポリイミドからなる被覆層が形成される。
【0003】
被覆層の所定の位置には、開口部が設けられる。開口部内において、ニッケル膜の一部が露出する。その露出するニッケル膜の部分が除去されることにより、開口部内で導体パターンの一部が露出する。開口部内で露出する導体パターンの部分に、電解めっきにより例えば金からなる電極パッドが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−20898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の製造方法によって製造された配線回路基板においては、長期の使用によって被覆層の開口部近傍でニッケル膜および導体パターンに腐食が生じる。このような腐食の発生は、信頼性の低下の要因となる。
【0006】
本発明の目的は、配線被覆層および導体パターンの腐食を防止することが可能な配線回路基板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)第1の発明に係る配線回路基板は、ベース絶縁層と、ベース絶縁層上に形成され、端子部および配線部を有する導体パターンと、導体パターンの配線部を被覆するように形成される配線被覆層と、配線被覆層の少なくとも一部を覆うようにベース絶縁層上に形成されるカバー絶縁層と、導体パターンの端子部を被覆するように形成される端子被覆層とを備え、端子被覆層の一部は、配線部の端部上面と配線被覆層の端部下面との間まで延びるように形成され、カバー絶縁層は、配線被覆層の端部から端子部上にはみ出さないように形成されるものである。
【0008】
その配線回路基板においては、ベース絶縁層上に形成された導体パターンの配線部を被覆するように配線被覆層が形成される。配線被覆層の少なくとも一部を覆いかつ配線被覆層の端部から端子部上にはみ出さないようにベース絶縁層上にカバー絶縁層が形成される。さらに、配線部の端部上面と配線被覆層の端部下面との間まで延びるように端子被覆層の一部が形成される。
【0009】
この場合、カバー絶縁層の下面は、配線被覆層と接し、端子被覆層と接しない。そのため、カバー絶縁層と端子被覆層との間で液体が保持されることがない。それにより、液体が配線被覆層と接触する状態で維持されることが防止される。したがって、配線被覆層および導体パターンの腐食が防止される。
【0010】
また、配線被覆層の端部下面との間まで延びるように端子被覆層の一部が形成されるので、配線被覆層と端子被覆層との接触面積が十分に確保される。それにより、配線被覆層と端子被覆層との密着性が向上される。したがって、端子被覆層と配線被覆層との間に液体が流入することが確実に防止される。その結果、導体パターンの腐食が確実に防止される。
【0011】
(2)導体パターンの端子部の厚みおよび配線被覆層の端部下における配線部の一部分の厚みは、配線部の他の部分の厚みよりも小さく、配線被覆層は、配線部の他の部分上から配線部の一部分の上方に突出するように延び、配線被覆層の突出する部分の下面と配線部の一部分の上面との間に隙間が形成され、端子被覆層は、配線被覆層の突出する部分の下面、配線部の一部分の上面および端子部の表面を被覆するように形成されてもよい。
【0012】
この場合、配線被覆層の突出する部分の下面、配線部の一部分の上面および端子部の表面を被覆するように端子被覆層が形成されるため、配線被覆層およびカバー絶縁層を平坦に維持しつつ配線被覆層と端子被覆層との接触面積を十分に確保することができる。それにより、配線被覆層とカバー絶縁層との密着性を確保しつつ配線被覆層と端子被覆層との密着性を向上させることができ、導体パターンの腐食を防止することができる。
【0013】
(3)端子被覆層は、配線被覆層の端面を被覆するように設けられてもよい。
【0014】
この場合、配線被覆層に液体が接触することが防止される。それにより、配線被覆層の腐食が確実に防止される。
【0015】
(4)導体パターンは銅を含み、配線被覆層はニッケルを含み、端子被覆層は金を含んでもよい。
【0016】
この場合、低コストで導体パターンの導電性が確保される。また、配線被覆層により導体パターンの銅のマイグレーションが防止されるとともに、導体パターンとカバー絶縁層との密着性が確保される。さらに、耐食性が高い端子被覆層により、導体パターンおよび配線被覆層の腐食が防止される。
【0017】
(5)配線被覆層の厚みが0.01μm以上2μm以下であってもよい。
【0018】
この場合、配線被覆層により導体パターンの銅のマイグレーションを確実に防止することができる。また、配線被覆層の加工を容易に行うことができる。
【0019】
(6)第2の発明に係る配線回路基板の製造方法は、ベース絶縁層上に端子部および配線部を有する導体パターンを形成する工程と、導体パターンの配線部および端子部を被覆するように配線被覆層を形成する工程と、導体パターンの端子部上を除く配線被覆層の少なくとも一部を覆うようにベース絶縁層上にカバー絶縁層を形成する工程と、導体パターンの端子部上に形成された配線被覆層の部分を除去するとともに、配線被覆層の下面と端子部に連続する配線部の部分の上面との間に隙間が形成されるように端子部および端子部に連続する配線部の部分を所定の深さまで除去する工程と、隙間で露出する配線被覆層の下面、隙間で露出する配線部の上面および端子部の表面を被覆するように、電解めっきにより端子被覆層を形成する工程とを備えたものである。
【0020】
その製造方法においては、導体パターンの端子部上を除く配線被覆層の少なくとも一部を覆うようにベース絶縁層上にカバー絶縁層が形成される。また、配線被覆層の下面、配線部の上面および端子部の表面を被覆するように、端子被覆層が形成される。
【0021】
この場合、カバー絶縁層の下面は、配線被覆層と接し、端子被覆層と接しない。そのため、カバー絶縁層と端子被覆層との間で液体が保持されることがない。それにより、液体が配線被覆層と接触する状態で維持されることが防止される。したがって、配線被覆層および導体パターンの腐食が防止される。
【0022】
また、配線被覆層と端子被覆層との接触面積が十分に確保され、配線被覆層と端子被覆層との密着性が向上される。したがって、端子被覆層と配線被覆層との間に液体が流入することが確実に防止される。その結果、導体パターンの腐食が確実に防止される。
【0023】
(7)除去する工程において、配線被覆層に対するエッチング速度よりも導体パターンに対するエッチング速度が大きい選択エッチングを行ってもよい。
【0024】
この場合、容易にかつ迅速に、導体パターンの端子部上に形成された配線被覆層の部分を除去することができるとともに端子部および端子部に連続する配線部の部分を所定の深さまで除去することができる。
【0025】
(8)除去する工程において、配線被覆層を溶解させる速度よりも導体パターンを溶解させる速度が大きい薬液を用いてエッチングを行ってもよい。
【0026】
この場合、容易にかつ迅速に、さらに低コストで、導体パターンの端子部上に形成された配線被覆層の部分を除去することができるとともに端子部および端子部に連続する配線部の部分を所定の深さまで除去することができる。
【0027】
(9)配線被覆層はニッケルを含み、導体パターンは銅を含み、薬液は硫酸過水を含んでもよい。
【0028】
この場合、低コストで確実に、導体パターンの端子部上に形成された配線被覆層の部分を除去することができるとともに端子部および端子部に連続する配線部の部分を所定の深さまで除去することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、液体が配線被覆層と接触する状態で維持されることが防止される。したがって、配線被覆層および導体パターンの腐食が防止される。また、配線被覆層と端子被覆層との接触面積が十分に確保され、配線被覆層と端子被覆層との密着性が向上される。したがって、端子被覆層と配線被覆層との間に液体が流入することが確実に防止される。その結果、導体パターンの腐食が確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態に係る配線回路基板の平面図および断面図である。
【図2】導体パターンの端子部と配線部との境界部周辺を示す拡大断面図である。
【図3】配線回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図4】配線回路基板の製造工程を示す断面図である。
【図5】図4(g)および図4(h)の工程の詳細を示す拡大断面図である。
【図6】配線回路基板の第1の変形例の拡大断面図である。
【図7】配線回路基板の第2の変形例の拡大断面図である。
【図8】実施例および比較例において作製された配線回路基板の断面のSEM写真を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施の形態に係る配線回路基板およびその製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態の配線回路基板は、例えば磁気ディスク装置において磁気ヘッドを位置決めするために用いられる。
【0032】
(1)配線回路基板
図1は、本実施の形態に係る配線回路基板の平面図および断面図である。図1(b)の断面は、図1(a)におけるA−A線断面に相当する。
【0033】
図1(a)および図1(b)に示すように、本実施の形態に係る配線回路基板100においては、例えばステンレス鋼からなる金属基板1上に、例えば感光性ポリイミドからなるベース絶縁層2が形成される。ベース絶縁層2上に、例えば銅からなる複数のストライプ状の導体パターン3が形成される。
【0034】
以下、各導体パターン3の先端部を端子部3aと呼び、端子部3aを除く各導体パターン3の部分を配線部3bと呼ぶ。
【0035】
端子部3aの表面を被覆するように、例えば金からなる端子被覆層6が形成される。配線部3bの表面を被覆するように、例えばニッケルからなる配線被覆層4が形成される。複数の導体パターン3の配線部3bおよび複数の配線被覆層4を覆うように、ベース絶縁層2上に例えばポリイミドからなるカバー絶縁層5が形成される。この場合、配線部3bとカバー絶縁層5との間に配線被覆層4が設けられることにより、配線部3bの銅のマイグレーションが防止されるとともに、配線部3bとカバー絶縁層5との密着性が向上される。
【0036】
図2は、導体パターン3の端子部3aと配線部3bとの境界部周辺を示す拡大断面図である。なお、図2においては、金属基板1およびベース絶縁層2の図示が省略される。
【0037】
図2に示すように、配線被覆層4は、カバー絶縁層5の下面の一端まで延びるように設けられる。また、導体パターン3の端子部3aの上面の高さが、配線部3bの上面の高さ(配線被覆層4の下面の高さ)よりも低く設定される。配線部3bの端部近傍において、配線部3bの上面は、配線被覆層4の下面から離間するように傾斜する。その配線部3bの傾斜面の下端と端子部3aの上面とが連続する。
【0038】
端子被覆層6は、配線被覆層4の端面、配線部3bから離間する配線被覆層4の下面の部分、配線被覆層4から離間する配線部3bの上面の部分(傾斜面)、および端子部3aの表面と密着するように形成される。ここで、配線被覆層4の端面とは、導体パターン3が延びる方向に垂直な配線被覆層4の面をいう。
【0039】
(2)配線回路基板の製造方法
次に、図1および図2の配線回路基板100の製造方法について説明する。図3および図4は、配線回路基板100の製造工程を示す断面図である。
【0040】
図3(a)に示すように、まず、例えばステンレス鋼からなる金属層11および例えば感光性ポリイミドからなる絶縁層12からなる2層基材を用意する。
【0041】
金属層11の材料としては、ステンレス鋼に代えて、アルミニウム等の他の材料を用いてもよい。金属層11の厚みは、例えば5μm以上2000μm以下であり、10μm以上1000μm以下であることが好ましい。
【0042】
絶縁層12の材料としては、感光性ポリイミドに代えて、感光性エポキシ等の他の感光性樹脂材料を用いてもよい。絶縁層12の厚みは、例えば3μm以上2000μm以下であり、5μm以上1000μm以下であることが好ましい。
【0043】
次に、図3(b)に示すように、絶縁層12に露光処理、現像処理および加熱硬化処理を行うことにより、所定の形状のベース絶縁層2を形成する。なお、エッチング等の他の方法により絶縁層12から所定の形状のベース絶縁層2を形成してもよい。その場合、絶縁層12の材料として、感光性を有さないポリイミドまたはエポキシ等の樹脂材料を用いてもよい。
【0044】
次に、図3(c)に示すように、サブトラクティブ法またはセミアディティブ法等により、絶縁層12上に導体パターン3を形成する。
【0045】
導体パターン3の材料としては、銅に代えて、金またはアルミニウム等の他の金属を用いてもよく、銅合金またはアルミニウム合金等の合金を用いてもよい。導体パターン3の厚みは、例えば3μm以上200μm以下であり、5μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0046】
次に、図3(d)に示すように、導体パターン3の表面を被覆するように、無電解めっきにより例えばニッケルからなる配線被覆層4を形成する。この場合、導体パターン3が形成されていない絶縁層12の部分にめっきレジストを形成し、導体パターン3の表面に選択的に無電解めっきを行う。その後、めっきレジストを除去する。
【0047】
配線被覆層4の材料としては、ニッケルに代えて、錫等の他の金属を用いてもよく、錫−銅、錫−ビスマスまたは錫−銀等の合金を用いてもよい。配線被覆層4の厚みは、例えば0.01μm以上2μm以下であり、0.01μm以上0.05μm以下であることが好ましい。
【0048】
次に、図3(e)に示すように、導体パターン3および配線被覆層4を覆うように、ベース絶縁層2上に例えば感光性ポリイミドからなるカバー絶縁層5を形成する。
【0049】
カバー絶縁層5の材料としては、感光性ポリイミドに代えて、感光性エポキシ等の他の感光性樹脂材料を用いてもよい。カバー絶縁層5の厚みは、例えば1μm以上50μm以下であり、2μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0050】
次に、図4(f)に示すように、カバー絶縁層5に露光処理、現像処理および加熱硬化処理を施すことにより、カバー絶縁層5を所定の形状に成形する。これにより、導体パターン3の端子部3a上に形成された配線被覆層4の部分が露出する。なお、エッチング等の他の方法によりカバー絶縁層5を所定の形状に成形してもよい。その場合、カバー絶縁層5の材料として、感光性を有さないポリイミドまたはエポキシ等の樹脂材料を用いてもよい。
【0051】
次に、図4(g)に示すように、露出する配線被覆層4の部分をエッチングにより除去する。次に、図4(h)に示すように、露出する導体パターン3の端子部3aの表面を被覆するように、電解めっきにより例えば金からなる端子被覆層6を形成する。図4(g)の工程および図4(h)の工程の詳細については後述する。
【0052】
端子被覆層6の材料としては、金に代えて、パラジウム等の耐食性が高い他の金属を用いてもよい。端子被覆層6の厚みは、例えば0.1μm以上10μm以下であり、0.5μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0053】
そして、図4(i)に示すように、金属層11をエッチングすることにより所定の形状の金属基板1を形成する。これにより、配線回路基板100が完成する。
【0054】
(3)配線被覆層および導体パターンのエッチングおよび端子被覆層の形成
次に、上記の図4(g)の工程および図4(h)の工程の詳細について説明する。
【0055】
本発明者の実験の結果、図4(g),(h)の工程で、エッチング条件によっては次のような現象が生じることが判明した。
【0056】
カバー絶縁層5の形成後に、露出する配線被覆層4の部分をエッチング液を用いて除去する場合、カバー絶縁層5の端部下における配線被覆層4の部分にもエッチング液が浸透し、その配線被覆層4の部分も余分に除去される。その状態で、電解めっきにより端子被覆層6が形成されると、端子被覆層6は、カバー絶縁層5の端部下まで延びる。
【0057】
端子被覆層6とカバー絶縁層5とは互いに接着されず、単に接触するだけの状態である。そのため、端子被覆層6とカバー絶縁層5との間に液体が入り込み、そのまま保持されることがある。この場合、液体が配線被覆層4に接触する状態で維持される。それにより、配線被覆層4が徐々に腐食する。さらに、配線被覆層4が腐食することにより、配線被覆層4下の導体パターン3も腐食する。
【0058】
そこで、本実施の形態では、以下のようにして、配線被覆層4および導体パターン3のエッチングならびに端子被覆層6の形成が行われ、端子被覆層6とカバー絶縁層5との間で液体が保持されることが防止される。
【0059】
図5は、図4(g)および図4(h)の工程の詳細を示す拡大断面図である。図5には、図2と同様に、導体パターン3の端子部3aと配線部3bとの境界部周辺が示される。
【0060】
図5(a)に示すように、露出する配線被覆層4の部分(端子部3a上の配線被覆層4の部分)にエッチング液をスプレーする。エッチング液としては、配線被覆層4を溶解させる速度よりも導体パターン3を溶解させる速度が大きい薬液が用いられる。また、導体パターン3を溶解させる速度が配線被覆層4を溶解させる速度の1.1倍以上である薬液を用いることが好ましい。このような薬液としては、硫酸過水または硝酸過水がある。
【0061】
この場合、エッチング液が直接スプレーされない配線被覆層4の部分、すなわち、カバー絶縁層5下の配線被覆層4の部分は、ほとんど溶解しない。一方、導体パターン3は、エッチング液の浸透によって比較的容易に溶解する。それにより、図5(b)に示すように、露出する配線被覆層4の部分が除去され、カバー絶縁層5下の配線被覆層4の部分が除去されない。また、配線被覆層4下の端子部3aの厚みd1の部分が除去されるとともに、配線被覆層4の下面から配線部3bの上面が離間するように配線部3bの端部近傍の部分が除去される。
【0062】
なお、エッチングにより除去される端子部3aの部分の厚みd1は、例えば0.01μm以上5μm以下であり、0.5μm以上2μm以下であることが好ましい。また、配線被覆層4下においてエッチングにより除去される配線部3bの部分の幅d2は、例えば0μmより大きく5μm以下であり、0μmより大きく3μm以下であることが好ましい。
【0063】
そして、図5(c)に示すように、電解めっきにより、配線被覆層4の端面、配線部3bから離間する配線被覆層4の下面の部分、配線被覆層4から離間する配線部3bの上面の部分、および端子部3aの表面を被覆するように、例えば金からなる端子被覆層6が形成される。
【0064】
(4)効果
本実施の形態に係る配線回路基板100においては、配線被覆層4がカバー絶縁層5の下面の一端まで延びるように設けられる。また、配線被覆層4の端面、配線部3bから離間する配線被覆層4の下面の部分、配線被覆層4から離間する配線部3bの上面の部分、および端子部3aの表面を被覆するように端子被覆層6が設けられる。
【0065】
この場合、カバー絶縁層5の下面は、配線被覆層4と接し、端子被覆層6と接しない。そのため、カバー絶縁層5と端子被覆層6との間で液体が保持されることがない。それにより、液体が配線被覆層4と接触する状態で維持されることが防止される。したがって、配線被覆層4および導体パターン3の腐食が防止される。
【0066】
また、配線被覆層4と端子被覆層6との接触面積が十分に確保され、端子被覆層6と配線被覆層4との密着性が向上される。したがって、端子被覆層6と配線被覆層4との間に液体が流入することが確実に防止される。その結果、配線被覆層4および導体パターン3の腐食が確実に防止される。
【0067】
(5)変形例
(5−1)第1の変形例
図6は、配線回路基板100の第1の変形例の拡大断面図である。図6には、図2と同様に、導体パターン3の端子部3aと配線部3bとの境界部周辺が示される。
【0068】
図6に示す配線回路基板100aについて、上記の図1および図2に示す配線回路基板100と異なる点を説明する。
【0069】
図6の配線回路基板100aにおいては、配線被覆層4の端面、配線部3bと離間する配線被覆層4の下面の部分、配線被覆層4と離間する配線部3bの上面の部分(傾斜面)、および端子部3aの表面と密着するように、電解めっきにより例えばニッケルからなる第1の層6aが形成される。第1の層6aの表面を被覆するように、電解めっきにより例えば金からなる第2の層6bが形成される。第1および第2の層6a,6bにより、端子被覆層6cが構成される。
【0070】
この場合、導体パターン3と第2の層6bとの間に第1の層6aが設けられることにより、第2の層6bへの導体パターン3の銅のマイグレーションが防止される。
【0071】
(5−2)第2の変形例
図7は、配線回路基板100の第2の変形例の拡大断面図である。図7には、図2と同様に、導体パターン3の端子部3aと配線部3bとの境界部周辺が示される。
【0072】
図7に示す配線回路基板100bについて、上記の図1および図2に示す配線回路基板100と異なる点を説明する。
【0073】
図7の配線回路基板100bにおいては、配線被覆層4の端部が露出するようにカバー絶縁層5が設けられる。また、配線被覆層4の下面の部分、配線部3bの上面の部分(傾斜面)、および端子部3aの表面と密着するように端子被覆層6が形成される。
【0074】
本例においても、カバー絶縁層5の下面は、配線被覆層4と接し、端子被覆層6と接しない。そのため、カバー絶縁層5と端子被覆層6との間で液体が保持されることがない。それにより、液体が配線被覆層4と接触する状態で維持されることが防止される。したがって、配線被覆層4および導体パターン3の腐食が防止される。
【0075】
また、配線被覆層4と端子被覆層6との接触面積が十分に確保され、端子被覆層6と配線被覆層4との密着性が向上される。それにより、端子被覆層6と配線被覆層4との間に液体が流入することが確実に防止され、導体パターン3の腐食が確実に防止される。
【0076】
(6)さらに他の実施の形態
上記実施の形態では、ベース絶縁層2下に金属基板1が設けられるが、ベース絶縁層2下に金属基板1が設けられなくてもよい。
【0077】
また、上記実施の形態では、湿式エッチング法を用いた選択エッチングにより配線被覆層4の部分および導体パターン3の部分が除去されるが(図5(a),(b)参照)、乾式エッチング法を用いた選択エッチングにより配線被覆層4の部分および導体パターン3の部分が除去されてもよい。この場合、導体パターン3に対するエッチング速度が配線被覆層4に対するエッチング速度よりも大きいことが好ましく、導体パターン3に対するエッチング速度が配線被覆層4に対するエッチング速度の2倍以上であることが好ましい。
【0078】
また、レーザ加工技術等による他の方法により配線被覆層4の部分および導体パターン3の部分が除去されてもよい。
【0079】
(7)実施例および比較例
(7−1)実施例
図3〜図5の製造方法に基づいて、図1および図2の配線回路基板100を作製した。なお、金属基板1の材料としてステンレス鋼を用い、ベース絶縁層3の材料として感光性ポリイミドを用い、導体パターン3の材料として銅を用い、配線被覆層4の材料としてニッケルを用い、カバー絶縁層5の材料として感光性ポリイミドを用い、端子被覆層6の材料として金を用いた。
【0080】
また、エッチング前の導体パターン3の厚みを10μmとし、配線被覆層4の厚みを0.1μmとし、カバー絶縁層5の厚みを5μmとし、端子被覆層6の厚みを1μmとした。
【0081】
また、図4(g)(図5(a))の工程において、エッチング液として硫酸過水を用い、エッチング時間を60秒とした。エッチング後の端子部3aの厚みは6μmであった。
【0082】
(7−2)比較例
比較例においては、以下の点を除いて、上記実施例と同様に配線回路基板100を作製した。
【0083】
比較例では、図4(g)(図5(a))の工程において、硝酸過水を端子部3a上の配線被覆層4の部分にスプレーすることにより、配線被覆層4のエッチングを行った。その後、硫酸過水を端子部3aの表面にスプレーすることにより、端子部3aの表面のエッチングを行った。
【0084】
(7−3)評価
図8(a)は、実施例において作製された配線回路基板100の断面のSEM写真を模式的に示した図である。図8(b)は、比較例において作製された配線回路基板100の断面のSEM写真を模式的に示した図である。なお、図8(a),(b)には、導体パターン3の端子部3aと配線部3bとの境界部周辺が示される。
【0085】
図8(a)に示すように、実施例においては、カバー絶縁層5の下面の一端まで延びるように配線被覆層4が形成された。また、配線被覆層4の端面、配線部3bから離間する配線被覆層4の下面の部分、配線被覆層4から離間する配線部3bの上面の部分、および端子部3aの表面を被覆するように端子被覆層6が形成された。
【0086】
一方、図8(b)に示すように、比較例においては、カバー絶縁層5の端部下における配線被覆層4の部分がエッチングにより除去された。また、配線被覆層4の端面、配線部3bの上面の部分、および端子部3aの表面を被覆し、かつカバー絶縁層5の下面に接するように端子被覆層6が形成された。
【0087】
これにより、配線被覆層4を溶解させる速度よりも導体パターン3を溶解させる速度が大きい薬液を用いて配線被覆層4および端子部3aのエッチングを行うことにより、配線被覆層4がカバー絶縁層5の下面の一端まで延び、配線被覆層4の端面、配線部3bから離間する配線被覆層4の下面の部分、配線被覆層4から離間する配線部3bの上面の部分、および端子部3aの表面を被覆するように端子被覆層6が形成されることがわかった。
【0088】
また、実施例および比較例において作製された配線回路基板100のPCT(Pressure Cooker Test)を行い、高温、高湿および高圧の条件下における配線被覆層4および導体パターン3の変化を調べた。
【0089】
その結果、実施例の配線回路基板100においては、配線被覆層4および導体パターン3に腐食が生じなかった。一方、比較例の配線回路基板100においては、カバー絶縁層5の端部近傍において、配線被覆層4および導体パターン3に腐食が生じた。
【0090】
これにより、配線被覆層4がカバー絶縁層5の下面の一端まで延び、かつ配線被覆層4の端面、配線部3bから離間する配線被覆層4の下面の部分、配線被覆層4から離間する配線部3bの上面の部分、および端子部3aの表面を被覆するように端子被覆層6が形成されることにより、配線被覆層4および導体パターン3の腐食が防止されることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、種々の配線回路基板に有効に利用できる。
【符号の説明】
【0092】
1 金属基板
2 ベース絶縁層
3 導体パターン
3a 端子部
3b 配線部
4 配線被覆層
5 カバー絶縁層
6 端子被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース絶縁層と、
前記ベース絶縁層上に形成され、端子部および配線部を有する導体パターンと、
前記導体パターンの前記配線部を被覆するように形成される配線被覆層と、
前記配線被覆層の少なくとも一部を覆うように前記ベース絶縁層上に形成されるカバー絶縁層と、
前記導体パターンの前記端子部を被覆するように形成される端子被覆層とを備え、
前記端子被覆層の一部は、前記配線部の端部上面と前記配線被覆層の端部下面との間まで延びるように形成され、
前記カバー絶縁層は、前記配線被覆層の端部から前記端子部上にはみ出さないように形成されることを特徴とする配線回路基板。
【請求項2】
前記導体パターンの前記端子部の厚みおよび前記配線被覆層の端部下における前記配線部の一部分の厚みは、前記配線部の他の部分の厚みよりも小さく、
前記配線被覆層は、前記配線部の前記他の部分上から前記配線部の前記一部分の上方に突出するように延び、前記配線被覆層の突出する部分の下面と前記配線部の前記一部分の上面との間に隙間が形成され、
前記端子被覆層は、前記配線被覆層の前記突出する部分の下面、前記配線部の前記一部分の上面および前記端子部の表面を被覆するように形成されることを特徴とする請求項1記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記端子被覆層は、前記配線被覆層の端面を被覆するように設けられることを特徴とする請求項1または2記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記導体パターンは銅を含み、前記配線被覆層はニッケルを含み、前記端子被覆層は金を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の配線回路基板。
【請求項5】
前記配線被覆層の厚みが0.01μm以上2μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の配線回路基板。
【請求項6】
ベース絶縁層上に端子部および配線部を有する導体パターンを形成する工程と、
前記導体パターンの前記配線部および前記端子部を被覆するように配線被覆層を形成する工程と、
前記導体パターンの前記端子部上を除く前記配線被覆層の少なくとも一部を覆うように前記ベース絶縁層上にカバー絶縁層を形成する工程と、
前記導体パターンの前記端子部上に形成された前記配線被覆層の部分を除去するとともに、前記配線被覆層の下面と前記端子部に連続する前記配線部の部分の上面との間に隙間が形成されるように前記端子部および前記端子部に連続する前記配線部の部分を所定の深さまで除去する工程と、
前記隙間で露出する前記配線被覆層の下面、前記隙間で露出する前記配線部の上面および前記端子部の表面を被覆するように、電解めっきにより端子被覆層を形成する工程とを備えたことを特徴とする配線回路基板の製造方法。
【請求項7】
前記除去する工程において、
前記配線被覆層に対するエッチング速度よりも前記導体パターンに対するエッチング速度が大きい選択エッチングを行うことを特徴とする請求項6記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記除去する工程において、
前記配線被覆層を溶解させる速度よりも前記導体パターンを溶解させる速度が大きい薬液を用いてエッチングを行うことを特徴とする請求項7記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項9】
前記配線被覆層はニッケルを含み、前記導体パターンは銅を含み、前記薬液は硫酸過水を含むことを特徴とする請求項8記載の配線回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−96721(P2011−96721A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246673(P2009−246673)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】