説明

配線基板と画像形成装置

【課題】ドライバ手段が表面実装型の場合であってもドライバ手段の出力を測定することのできる配線基板と画像形成装置とを提供することにある。
【解決手段】絶縁基板上に形成された第1,第2信号線路21,22からなる伝送線路20を備え、絶縁基板上に実装されるドライバ手段から逆位相の2相の信号を第1,第2信号線路21,22を介してレシーバ手段に伝送する配線基板であって、第1,第2信号線路21,22の途中に、前記ドライバ手段の動作を測定するための第1,第2測定パッド部23,24を形成し、この第1,第2測定パッド部23,24は、第1,第2信号線路21,22間の間隔より大きく離間され且つ第1,第2信号線路21,22の線幅より大きい線幅を有し、第1,第2測定パッド部23,24と第1,第2信号線路21,22とを第1,第2接続線路25,26で接続し、第1,第2測定パッド部23,24のインピーダンスと、第1,第2信号線路21,22のインピーダンスとをほぼ同一に設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、第1,第2信号線路からなる差動伝送線路を絶縁基板上に形成した配線基板と、これを備えた画像形成装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、第1,第2配線からなる差動信号線を基板上に形成したプリント配線基板が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
かかるプリント配線基板は、絶縁体の基板上に一対の差動信号線と、この一対の差動信号線の両端に電極パッドを形成し、一方の電極パッドにドライバ素子の端子を接続し、他方の電極パッドにレシーバ素子の端子を接続するものである。
【特許文献1】特開2005−340506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなプリント配線基板にあっては、ドライバ素子の出力波形を観測するとき、測定プローブを電極パッドに接触させて行うが、ドライバ素子(ドライバ手段)が表面実装型(球状バンプをアレイ状に並べたパッケージタイプ)の場合、電極パッドがパッケージの下にあるため、測定プローブを電極パッドに接触させることができず、出力波形の観測が困難となる。
【0005】
この発明の目的は、ドライバ手段が表面実装型の場合であってもドライバ手段の出力を測定することのできる配線基板と画像形成装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、絶縁基板と、この絶縁基板上に形成されるとともに平行な第1,第2信号線路からなる差動伝送線路と、この第1,第2信号線路の一端にそれぞれ形成した一方の電極パッドと、第1,第2信号線路の他端にそれぞれ形成した他方の電極パッドとを備え、前記絶縁基板上に実装されるドライバ手段の端子が前記一方の電極パッドに接続され、前記絶縁基板上に実装されるレシーバ手段の端子が前記他方の電極パッドに接続され、前記ドライバ手段から出力される互いに逆位相の2相の信号を第1,第2信号線路を介してレシーバ手段に伝送する配線基板であって、
第1,第2信号線路の途中に、前記ドライバ手段の動作を測定するための第1,第2測定パッド部を形成し、
この第1,第2測定パッド部は、第1,第2信号線路間の間隔より大きく離間され且つ第1,第2信号線路の線幅より大きい線幅を有し、
第1,第2測定パッド部と第1,第2信号線路とを第1,第2接続線路で接続し、
第1,第2測定パッド部のインピーダンスと、第1,第2信号線路のインピーダンスとをほぼ同一に設定したことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、第1,第2接続線路の一端の線幅を第1,第2測定パッド部の線幅とほぼ同一に設定し、第1,第2接続線路の他端の線幅を第1,第2信号線路の線幅とほぼ同一に設定するとともに、第1,第2接続線路の線幅が第1,第2測定パッド部に近づくにしたがって大きくなることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、第1,第2接続線路と第1,第2信号線路とのなす角度を45度以下にしたことを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、第1,第2測定パッド部の近傍に接地用パッド部を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の配線基板を備えた画像形成装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、ドライバ手段が表面実装型の場合であってもドライバ手段の出力を測定することができ、しかもドライバ手段から出力される信号が高周波であっても第1,第2測定パッド部による反射波を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明に係る配線基板とこの配線基板を搭載した画像形成装置の実施の形態である実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0013】
[第1実施例]
図1に示す10は配線基板であり、この配線基板10は、絶縁材で形成されたプリント配線基板(絶縁基板)11を有している。このプリント配線基板11の上面には差動信号を出力する半導体素子(ドライバー手段)12と、この半導体素子12からの差動信号を入力する半導体素子(レシーバ手段)13とが実装されており、これらの半導体素子12,13は差動伝送線路20により接続されている。そして、配線基板10はプリント配線基板11と差動伝送線路20とプリント配線基板11の下層のグランド層15(図3参照)等とから構成されている。
【0014】
差動伝送線路20は、プリント配線基板11上に形成されるとともに平行な第1,第2信号線路21,22から構成されており、第1,第2信号線路21,22の一端には図示しない電極パッドが形成されている。この電極パッドには半導体素子12の端子(図示せず)が接続されている。また、第1,第2信号線路21,22の他端には図示しない電極パッドが形成され、この電極パッドには半導体素子13の端子(図示せず)が接続されている。
【0015】
第1,第2信号線路21,22の途中には、半導体素子12の動作を測定するための第1,第2測定パッド部23,24が形成されている。
【0016】
この第1,第2測定パッド部23,24は、図2に示すように、第1,第2信号線路21,22間の間隔L1より大きい間隔L2で離間され、第1,第2信号線路21,22の線幅W1より大きい線幅W2を有している。
【0017】
そして、第1,第2測定パッド部23,24と第1,第2信号線路21,22とは第1,第2接続線路25,26で接続されている。この第1,第2接続線路25,26の一端の線幅は第1,第2信号線路21,22の線幅W1と同一に設定され、第1,第2接続線路25,26の他端の線幅は第1,第2測定パッド部23,24の線幅W2と同一に設定されている。そして、第1,第2接続線路25,26は第1,第2測定パッド部23,24に近づくにしたがって線幅が広くなっており、第1,第2接続線路25,26の中心線25a,26aと第1,第2信号線路21,22とのなす角度αが45度以下となるように設定され、第1,第2信号線路21,22方向の第1,第2接続線路25,26の長さLaが0.6mmに設定されている。
【0018】
ところで、一般的な配線基板のレイアウトで配線を曲げる際、その曲げの角度は45度である。つまり、曲げの角度45度以下であれば、信号品質への影響は小さい。このため、第1,第2信号線路21,22と第1,第2接続線路25,26とのなす角度を45度以下としたものである。
【0019】
この実施例では、第1,第2測定パッド部23,24の線幅W2は0.24mm、第1,第2測定パッド部23,24の間隔L2は1.1mmに設定されている。また、第1,第2信号線路21,22の線幅W1は図3に示すように0.144mm、第1,第2信号線路21,22の間隔L1は0.15mmに設定されている。第1,第2信号線路21,22および第1,第2測定パッド部23,24の線路厚は38μmであり、プリント配線基板11の厚さは0.15mm、比誘電率は4.3、誘電正接は0.015、プリント配線基板11の裏面に形成されたグランド層15の厚さは38μmである。
【0020】
なお、図3において2層構造のみの配線基板10を図示しているが、積層構造の一部としても適用可能である。また、第1,第2測定パッド部23,24の長さに制約はない。
【0021】
上記のプリント配線基板11に、線幅W1が0.144mm、間隔L1が0.15mm、線路厚が38μmの第1,第2信号線路21,22を形成すると、この第1,第2信号線路21,22の差動インピーダンスは約100Ωとなる(シミュレータによる計算値では98.2Ω)。
【0022】
図4に示すグラフG1は、線幅(パッド幅)が0.24mmの第1,第2測定パッド部23,24の間隔L2と第1,第2測定パッド部23,24の差動インピーダンスとの関係を示したものであり、このグラフG1から分かるように、第1,第2測定パッド部23,24の間隔L2が1.1mmのとき差動インピーダンスが98.2Ωとなる。
【0023】
上記のように構成される配線基板10によれば、第1,第2測定パッド部23,24の間隔L2が1.1mmと広く設定され、その線幅W2も0.24mmと大きく設定されていることにより、第1,第2測定パッド部23,24に測定プローブ(図示せず)を簡単に接触させることができ、半導体素子12の出力波形を観測することができる。しかも、第1,第2測定パッド部23,24は第1,第2信号線路21,22の途中に設けたものであるから、半導体素子12が表面実装型であっても測定プローブを第1,第2測定パッド部23,24に確実に接触させることができ、半導体素子12の出力波形を確実に観測することができる。
【0024】
さらに、第1,第2測定パッド部23,24の差動インピーダンスと第1,第2信号線路21,22の差動インピーダンスとが同一に設定されていることにより、半導体素子12の端子(図示せず)から高周波の差動信号が出力されても、第1,第2測定パッド部23,24での差動信号の反射を防止することができる。
【0025】
また、第1,第2接続線路25,26が第1,第2信号線路21,22に対して45度以下の角度で傾斜して第1,第2測定パッド部23,24に接続され、しかも第1,第2接続線路25,26の線幅が第1,第2測定パッド部23,24に近づくにしたがって広くなることにより、第1,第2接続線路25,26と第1,第2測定パッド部23,24との接続部で急激なインピーダンス変化を防止することができ、その接続部での差動信号の反射を防止することができる。
【0026】
なお、第1,第2測定パッド23,24および第1,第2接続線路25,26の位置は、ドライバ12近傍に限らず差動線路20上の任意の場所において配置が可能であり、複数の設置も可能である。
[第2実施例]
図5は第2実施例の配線基板の第1,第2測定パッド部123,124を示したものである。この第1,第2測定パッド部123,124は、線幅W3が0.23mm、その間隔L3が0.6mmであり、第1,第2接続線路125,126の第1,第2信号線路21,22方向の長さLbが0.3mm、第1,第2接続線路125,126と第1,第2信号線路21,22とのなす角度が第1実施例と同様に45度以下に設定されている。
【0027】
図6に示すグラフG2は、線幅が0.23mmの第1,第2測定パッド部123,124の間隔と第1,第2測定パッド部123,124の差動インピーダンスとの関係を示したものである。
【0028】
このグラフG2から分かるように、第1,第2測定パッド部123,124の間隔L3が0.6mmのとき差動インピーダンスが98.2Ωとなる。
【0029】
このため、第2実施例の配線基板であっても第1実施例と同様な効果を得ることが出来る。
[第3実施例]
図7は第1,第2測定パッド部23,24の中間にグランドパッドR1を設けた配線基板を示したものであり、図8は第1,第2測定パッド部23,24の側方にグランドパッドR2を設けた配線基板を示したものであり、図9は第1,第2測定パッド部23,24の側方にグランドパターンR3を設けた配線基板を示したものである。
【0030】
グランドパッドR1,R2やグランドパターンR3を設けたことにより、半導体素子12の出力波形の観測が容易なものとなる。
【0031】
また、グランドパッドR1,R2を第1,第2測定パッド部23,24近傍に設けることで、測定プローブのグランドリードを短くすることができ、グランドリードに発生する電位を抑えることができる。このため、正確な波形を観測することが可能となる。
【0032】
配線基板にはグランドパッドR1,R2やグランドパターンR3を設けているが、第1,第2測定パッド部23,24の差動インピーダンスはグランドパッドR1,R2やグランドパターンR3がない場合とほぼ同じ差動インピーダンスとなり、第1実施例と同様な効果を得ることができる。
【0033】
上記実施例は、いずれも1つの配線基板に半導体素子12,13を実装したものについて説明したが、それぞれ別の配線基板の一方に半導体素子12を実装し、他方の配線基板に半導体素子13を実装し、この両配線基板をコネクタで接続している場合にも、少なくともどちらか一方の配線基板に上記実施例の第1,第2測定パッド部を設けてもよい。
[画像形成装置]
図10は複写機やファクシミリ装置やプリンタなどの画像形成装置50の構成を示したブロック図である。画像形成装置50は、コントローラユニット51とROM52とRAM53と操作部54とセンサ類55と画像処理ユニット56などとから構成されている。57はバスである。そして、コントローラユニット51や画像処理ユニット56などには第1実施例ないし第3実施例の配線基板が設けられており、コントローラユニット51の半導体素子や画像処理ユニット56の半導体素子がその配線基板に実装されている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明に係る配線基板を示した平面図である。
【図2】図1に示す配線基板に設けた第1,第2測定パッド部を示した説明図である。
【図3】図1に示す配線基板の断面図である。
【図4】第1,第2測定パッド部の間隔と差動インピーダンスとの関係を示したグラフである。
【図5】第2実施例の第1,第2測定パッド部を示した説明図である。
【図6】第2実施例の第1,第2測定パッド部の間隔と差動インピーダンスとの関係を示したグラフである。
【図7】第3実施例の配線基板を示した説明図である。
【図8】第3実施例の他の配線基板を示した説明図である。
【図9】第3実施例の他の別な配線基板を示した説明図である。
【図10】画像形成装置の構成を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0035】
10 配線基板
11 プリント配線基板(絶縁基板)
20 差動伝送線路
21 第1信号線路
22 第2信号線路
23 第1測定パッド部
24 第2測定パッド部
25 第1接続線路
26 第2接続線路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、この絶縁基板上に形成されるとともに平行な第1,第2信号線路からなる差動伝送線路と、この第1,第2信号線路の一端にそれぞれ形成した一方の電極パッドと、第1,第2信号線路の他端にそれぞれ形成した他方の電極パッドとを備え、前記絶縁基板上に実装されるドライバ手段の端子が前記一方の電極パッドに接続され、前記絶縁基板上に実装されるレシーバ手段の端子が前記他方の電極パッドに接続され、前記ドライバ手段から出力される互いに逆位相の2相の信号を第1,第2信号線路を介してレシーバ手段に伝送する配線基板であって、
第1,第2信号線路の途中に、前記ドライバ手段の動作を測定するための第1,第2測定パッド部を形成し、
この第1,第2測定パッド部は、第1,第2信号線路間の間隔より大きく離間され且つ第1,第2信号線路の線幅より大きい線幅を有し、
第1,第2測定パッド部と第1,第2信号線路とを第1,第2接続線路で接続し、
第1,第2測定パッド部のインピーダンスと、第1,第2信号線路のインピーダンスとをほぼ同一に設定したことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
第1,第2接続線路の一端の線幅を第1,第2測定パッド部の線幅とほぼ同一に設定し、第1,第2接続線路の他端の線幅を第1,第2信号線路の線幅とほぼ同一に設定するとともに、第1,第2接続線路の線幅が第1,第2測定パッド部に近づくにしたがって大きくなることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
第1,第2接続線路と第1,第2信号線路とのなす角度を45度以下にしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配線基板。
【請求項4】
第1,第2測定パッド部の近傍に接地用パッド部を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の配線基板。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の配線基板を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−71949(P2008−71949A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249438(P2006−249438)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】