説明

配線板の取付け方法

【課題】フレキシブルプリント配線板の特性に影響を与えることなく、フレキシブルプリント配線板をコネクタへ適切に挿入することができる、フレキシブル配線板の取付け方法を提供する。
【解決手段】配線板4の、回路基板1上に設けられたスライド式のロック部材3を有するコネクタ2への挿入部分に、配線板4がコネクタ2に適切に挿入されたときにコネクタ2に隠れないように補強板41を設ける。そして、配線板4をコネクタ2に適切に挿入したときの、配線板4のコネクタ2への挿入方向とは反対の補強板41の端41aの位置を記した回路基板1のマーク6と、配線板4の端41aとが一致するまで配線板4をコネクタ2に挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板のコネクタへの取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
折り畳み式の携帯電話機のような折り畳み部を有する機器や、コンピュータの端末、プリンタなどの可動部の配線などに、柔軟性のあるフレキシブルプリント配線板(FPC)が用いられている。
【0003】
FPCを回路基板にあるFPC用のコネクタに挿入するときに、FPCが適切に挿入されないと、FPCやコネクタが破損してしまうことが考えられる。また、近年FPCの配線自体が高密度化しているため、FPCが回路基板のFPC用のコネクタに適切に挿入されないと、接触不良が生じることも考えられる。そのため、FPCのコネクタへの誤挿入を防止する方法として、FPCの形状を工夫する提案がなされている(例えば特許文献1)。
【0004】
特許文献1には、FPCの、FPCがコネクタに正しく挿入されたときにコネクタの挿入口側の端部に対応する位置に、目印を施すことが示されている。目印を施す手段としては、FPCの両側縁を切り欠く方法、FPCを補強している補強板の両側縁を切り欠く方法、FPCがコネクタに適切に挿入されたときに、FPCの補強板がコネクタの端部と一致する位置に沿って、補強板に溝を施す方法などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−174241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のFPCを挿入するコネクタは、回路基板に接触している面とは反対の面にロックプレートとしてアクチュエータが回動可能に支持されているコネクタである。具体的には、コネクタにFPCが挿入されているときにはアクチュエータが閉じて、FPCをロックし、アクチュエータが回動して開くことで、FPCのロックが解除される。つまり、特許文献1の方法が適用可能なコネクタは、FPCのロックが解除されている状態で、コネクタの端が目視で確認できるコネクタに限られる。すなわち、FPCの挿入方向にロック部材(以降「スライダ」と称する)をスライドさせてコネクタに押し込むことでFPCをロックし、スライダをFPCの挿入方向とは逆方向にスライドさせてFPCのロックを解除するタイプのコネクタには適用できない。このタイプのコネクタの場合、FPCをコネクタに挿入する際には、スライダによるロックは解除された状態である。したがって、FPCのコネクタへの挿入時には、スライダがFPCの挿入方向とは逆方向に移動しているため、FPCをコネクタへ正しく挿入しロックしたときのコネクタの端に該当するスライダの位置が確認できない。
【0007】
さらに、特許文献1の方法のように、FPCの両側縁を切り欠くと、FPCの幅が部分的に狭くなり、FPC内の配線パターンに悪影響を及ぼす場合がある。例えば、配線ピッチが狭くなり、FPC内部に配線する信号パターンラインのインピーダンスが高くなり、伝達特性が劣化する事が懸念される。そのため、高速信号等の配線インピーダンス特性が重要な信号が配置されているFPCでは適用できないという欠点があった。
【0008】
そこで本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、フレキシブルプリント配線板の特性に影響を与えることなく、フレキシブルプリント配線板をコネクタへ適切に挿入することができる、フレキシブル配線板の取付け方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、回路基板上に設けられたスライド式のロック部材を有するコネクタに、配線板を挿入する、配線板の取付け方法であり、配線板のコネクタへの挿入部分に、配線板がコネクタに適切に挿入されたときにコネクタに隠れないように補強板を設ける。そして、配線板をコネクタに適切に挿入したときの、配線板のコネクタへの挿入方向とは反対の補強板の端の位置を記した回路基板のマークと、配線板の端とが一致するまで配線板をコネクタに挿入する。
【発明の効果】
【0010】
製造工程の増加や大幅なコスト増加をすることなく、また、フレキシブル配線板の特性を変化させることなく、スライド式のロック部材を用いるコネクタにフレキシブルプリント配線板を適切に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】コネクタがロックされた状態のコネクタ付近の概略構成図である。
【図2】コネクタのロックが解除された状態のコネクタ付近の概略構成図である。
【図3】回路基板に部品を実装してから、回路基板にマークを設けるまでの工程を示したフロー図である。
【図4】回路基板にコネクタが実装された状態を示す概略図である。
【図5】コネクタが傾いて回路基板に実装されたときの模式図である。
【図6】コネクタが規定の位置よりも平行にずれて回路基板に実装されたときの模式図である。
【図7】本発明に係るフレキシブルプリント配線板のコネクタへの取付け方法の他の実施形態を説明するための概略図である。
【図8】本発明に係るフレキシブルプリント配線板のコネクタへの取付け方法のさらに他の実施形態を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態を説明する。なお、同一の機能を有する構成には添付図面中、同一の番号を付与し、その説明を省略することがある。
【0013】
図1および図2は、本発明に係るフレキシブルプリント配線板のコネクタへの取付け方法の一実施形態を説明するための概略図である。具体的には、図1はフレキシブルプリント配線板がロックされた状態のコネクタ付近の概略構成図、図2はフレキシブルプリント配線板のロックが解除された状態のコネクタ付近の概略構成図である。また、図1(a)はコネクタ付近の上面図、図1(b)は図1(a)のAA断面の概略図である。図2(a)はコネクタ付近の上面図、図2(b)は図2(a)のBB断面の概略図である。なお、図中では各部材の位置や構成を分かりやすくするために、コネクタ2、ロック部材(スライダ)3は透視図として記載している。
【0014】
図1は、コネクタ2に挿入された配線板であるフレキシブルプリント配線板(以降「FPC」と称する)4が、スライダ3によってロックされた状態を示している。FPC4は、コネクタ2から抜けないように固定されている。
【0015】
FPC4用のコネクタ2は、回路基板1に実装されている。回路基板1には、FPC4が挿入されるコネクタ2が実装される場所を示す目印5や、不図示の回路記号(回路図上の識別記号)がシルクスクリーン印刷されている。また、回路基板1には、FPC4をコネクタ2に挿入するときの目印となるマーク6が設けられている。本実施形態のコネクタ2にはスライド式のロック部材3が設けられ、このロック部材3がFPC4の挿入方向にスライド可能になっており、コネクタ2にFPC4が挿入されたとき、ロック部材3でFPC4をロックする。以降の説明では、ロック部材3を「スライダ」と称する。
【0016】
FPC4の構成は、周知であるので、図1(b)を用いて簡単に説明する。FPC4は、例えば、ポリイミド製のベースフィルム42の一方の面のコネクタ2への挿入部分に、ポリイミド製の補強板41が接着剤により接合されており、他方の面には銅箔パターン43が接着剤により接合されている。補強板41の長さは、FPC4がコネクタ2に正しく挿入されたときに、スライダ3をFPC4の挿入方向とは逆向きにスライドさせてロックを解除した状態でも、補強板41の挿入方向とは反対側の端41aがスライダ3によって隠れないような長さである。つまり、FPC4がコネクタ2に正しく挿入されたときに、コネクタ2から補強板41が突出していなければならない。
【0017】
そして、FPC4の銅箔パターン43のベースフィルム42とは反対の面には、コネクタ2への挿入部分のコネクタ2と接続される部分を除いてカバーレイフィルム44により被覆されている。このカバーレイフィルム44は、例えばポリイミド製であり、接着剤により銅箔パターン43に接合されている。したがって、図1では、FPC4とコネクタ2とは、FPC4の基板1側の面で接触している様子を示している。
【0018】
回路基板1には、レーザ加工によって、FPC4の側方に、FPC4を挟むように1つの頂点が対向するように1対のマーク6が設けられている。マーク6は、FPC4が正しくコネクタ2に挿入された状態で、補強板41のコネクタ2への挿入方向とは反対の端41aの位置と、三角形(図中の△印)の1つの頂点の位置が一致する様に設けられている。当然のことながら、マーク6はFPC4に隠れてはいけない。
【0019】
図2は、スライダ3によるFPC4のロックが解除された状態を示している。スライダ3がFPC4のコネクタ2への挿入方向とは逆方向にスライドされて引き出され、FPC4のロックが解除されている。図2では、すでにコネクタ2にFPC4が挿入された状態になっているが、コネクタ2にFPC4を挿入するときには、このロック解除状態で、図中の矢印で示されている挿入方向からFPC4をコネクタ2に挿入する。このとき、補強板41の挿入方向とは反対の端41aの位置が、マーク6の位置と一致するまでFPC4を挿入する。挿入が終わったら、スライダ3をコネクタ2にスライドさせてFPC4をコネクタ2にロックする。この状態が、図1に示すロック状態である。
【0020】
このように、FPC4がコネクタ2に正しく挿入されたときの補強板41のコネクタ2への挿入方向とは反対の端41aの位置の目印を、回路基板1にマーク6として設けることで、FPC4のコネクタ2への挿入の程度が容易に認識できる。さらに、FPC4の挿入の傾きも容易に確認でき、挿入不良を軽減することができる。
【0021】
なお、三角形のマーク6のFPC4と向かい合っている頂点に対する底辺の幅を、FPC4をコネクタ2への挿入する際の適切な挿入と認められる許容範囲(挿入公差)の大きさになるようにマーク6を作成する。このようにすることで、補強板41の端41aがマーク6の頂点に完全に一致して挿入しなくても、容易に適切な挿入と認められる挿入公差に補強板41が位置していることが確認できるため、FPC4とコネクタ2との接続をチェックする必要がない。そのため、作業性を向上させることができる。
【0022】
次に、図3を用いてマーク6を回路基板1に設ける工程を説明する。
【0023】
図3に、回路基板1に部品を実装してから、回路基板1にマーク6を設けるまでの工程をフロー図で示している。
【0024】
部品実装工程S1で未実装の回路基板1に部品を実装し、実装部品位置検出工程S2では、部品実装工程S1で実装された部品の実装状態を検出する。即ち、FPC4用のコネクタ2の実装位置情報(傾き、平行ズレ等を含む)を検出する。マーク加工工程S3では、実装部品位置検出工程S2で得られた各部品の実装位置情報を元に、回路基板1に、マーク6をレーザ加工する。
【0025】
上記のように、マーク6の加工は、回路基板1に各部品の実装後に実施される様に構成されている。したがって、部品の実装状態(傾きや平行ズレ)に応じて、マーク6を設ける位置を調整する事が可能となる。
【0026】
近年の回路基板1への高密度実装では、部品実装工程S1の自動化が進み、部品の実装不良等を検出する目的で、実装部品位置検出工程S2が周知の技術(工程)として多用されている。例えば、2次元センサ(具体的には、ビデオカメラ等)で部品が正しく実装されているかを検出するために行なわれる実装部品位置検出工程S2は、必須工程となっている。そのため、通常行なわれている部品位置検出工程S2においてマーク6を設ける位置の決定も行なうようにすれば、新たな工程を追加する必要がない。
【0027】
実装部品位置検出工程S2は、上記のように周知の技術であるが、実装部品位置検出工程S2における実装部品位置検出方法とマーク6を設ける位置(設定位置)を決める方法の一例について、図4を用いて簡単に説明する。なお、図1〜図3と同一の構成については、同一符号を記し説明を省略する。
【0028】
図4は、回路基板1にコネクタ2が実装された状態を示す概略図である。実際にはマーク6を設ける工程S3より前の工程なので、回路基板1にマーク6は設けられていないが、分かりやすくするために、マーク6が記されている。
【0029】
回路基板1には、回路基板1を図示しない固定台に固定するための取り付け穴101〜104が設けられている。4つの取り付け穴101〜104のうちの1つ、例えば101は、位置決め精度を良く出すため、穴の加工精度(公差)が厳しく設定されている。また、加工精度が厳しくなっている取り付け穴101のX方向(図中長手方向)にある取り付け穴102は、回路基板1自体の加工公差を考慮して、X方向には長穴で設定されているが、Y方向(短辺方向)は、取り付け穴101と同じ精度で加工されている。このようにすることで、回路基板1の取り付け穴102の近傍でのY方向の取り付け公差を制限でき、回路基板1を精度良く固定できる。その他の取り付け穴103、104は、取り付け穴101よりも穴の加工精度を緩くし、回路基板1が確実に固定台に取り付けられるようになっている。
【0030】
回路基板1には、部品実装のための基準マーカ111、112が設けられている。部品実装の為の基準マーカ111、112は、回路基板1の対角線で向かい合う取り付け穴101、104付近に設けられる。この基準マーカ111、112からX方向とY方向に延ばした線で囲まれる範囲内に部品は配置されるように設計しておく。
【0031】
上記の取り付け穴101〜104によって、不図示の固定台に精度良く固定された回路基板1から、2次元センサを用いて部品実装用の基準マーカ111、112を検出する。そして、この基準マーカ111、112を基準に、回路基板1上の部品実装位置を精度良く確定することが出来る。
【0032】
この時、基準マーカ111、112と実装用の部品および部品の位置情報は、基板パターン設計時に確定するため、予め情報としてコンピュータなどの制御装置が保持している。したがって、コネクタ2の実装位置やコネクタ2へのFPC4の挿入方向も予め情報として保持している。そこで、部品実装後に、基準マーカ111、112を元にコネクタ2の位置を検出し、実装されている部品の輪郭情報等によりその部品の傾き情報等の位置情報を取得し、上記情報に応じて、マーク6を加工する様に構成されている。
【0033】
ただし、取り付け穴101〜104は、必須要件ではなく、基準マーカ111、112を検出しやすく固定する為のものである。したがって、回路基板1の端面が精度良く加工できていれば、回路基板1の端面に沿って回路基板1を固定する様な方法を取っても良い。
【0034】
次に、図5および図6を用いて、マーク6を回路基板1に加工する工程S3について詳細に説明する。
【0035】
図5に、コネクタ2が傾いて回路基板1に実装されたときの模式図を示す。図5では、FPC4用のコネクタ2が傾いて実装され、それに伴い、マーク6も傾いている様子を示している。それ以外の構成は、図4と同様であるため、説明を省略する。また、分かりやすくするため、補助線を追記してある。なお、この補助線は仮想的なものであり、回路基板1に実際に形成されるわけではない。
【0036】
補助線(a1)は、輪郭情報検出により検出されたコネクタ2のFPC4が挿入される側とは反対の辺の情報(補助線)である。補助線(a2)は、輪郭情報検出により検出されたコネクタ2のFPC4が挿入される側の辺であって、より具体的には、スライダ3がロック位置にあるときのスライダ3のコネクタ2とは反対側の辺の情報(補助線)である。補助線(b)は、マーク6を設ける位置の補助線であり、補助線(a1)または補助線(a2)と平行になるように、かつ補助線(a1)または補助線(a2)から所定の距離離れている。
【0037】
図6は、コネクタ2が規定の位置よりも平行にずれて回路基板1に実装されたときの模式図である。なお、図5と同じ補助線も合わせて記載してある。図6ではコネクタ2の実装位置が、正規の位置に比べて平行方向に移動しただけであり、コネクタ2が正規の位置より平行にずれて実装された状態に伴い、マーク6もコネクタ2との距離を保ちながら、平行にずれた位置に加工されている。
【0038】
FPC4の位置決め用のマーク6を回路基板1に加工するために、レーザ加工が行なわれる。このレーザ加工では、回路基板1のレジスト層のみをレーザで焼き切る工程または、回路基板1の表面層の回路パターンをレーザで焼き切る工程が有る。
【0039】
回路基板1のレジスト層のみをレーザで焼き切る工程を適用した場合は、レジスト層の下層にある回路パターン層は、どの様なパターンであっても良い。しかし、好ましくは、同種の信号パターン領域、例えばGND(グランド)パターン領域(いわゆる、ベタGND)または電源パターン領域(いわゆる、ベタ電源)を、マーク6の領域近傍に設定するのが良い。もちろん、信号パターンでも、マーク6の大きさ以上の領域のパターンであれば問題ない。即ち、マーク6を設ける領域近傍は、GNDパターンまたは、電源パターンとして、基板パターンを設計することが好ましい。
【0040】
また、回路基板1の表面層の回路パターンをレーザで焼き切る工程の場合は、同種の信号パターン領域、例えばGNDパターン領域(いわゆる、ベタGND)または電源パターン領域(いわゆる、ベタ電源)等を、マーク6を設ける領域近傍に設定する必要がある。なぜなら、回路パターンを焼き切るため、焼損箇所が発生しても、回路動作として問題ないパターンを構成する必要があるからである。
【0041】
上述のレーザ加工の工程は、回路基板1上に部品を実装した後の工程あり、かつ、FPC4がコネクタ2に挿入される工程までの間に実施する様に製造工程が設定されている。このようにすることで、図5や図6に示すように、コネクタ2が傾いて実装されたとしても、実装部品位置検出工程S2において、コネクタ2の位置を検知して、この位置情報を基にマーク6を回路基板1に設けることができる。したがって、コネクタ2が傾いて回路基板1に実装されても、コネクタ2の傾きに合わせてマーク2が設けられる位置が修正されるので、FPC4をコネクタ2に適切に挿入可能である。
【0042】
また、上記レーザ加工の工程は、本発明のFPC4の位置決め用のマーク6のみを回路基板1上に施す場合は、製造工程を増加させることになる。しかし、近年の回路基板製造工程では、回路基板製造履歴を回路基板1上にレーザ加工により記録する工程が含まれている。したがって、一般的な製造工程で回路基板1を製造する場合は、FPC4の位置決め用のマーク6を回路基板1に設けるための新たな工程を追加する必要がなく、また、コスト増加することなく回路基板1にマーク6をレーザ加工することができる。
【0043】
また、説明はしていないが、上述の実装部品位置検出工程S2で得られた情報をレーザ加工工程S3で使用するため、情報を伝達する手段(例えばコンピュータなど)が必要である事は言うまでもない。
【0044】
さらに、マーク6を回路基板1に設けることができればよいので、上述したレーザ加工手段ではなく、別の手段でも問題ないことは言うまでもない。例えば、インクジェット方式のマーク手段等が知られている。この場合、回路基板製造履歴もインクジェット方式で記録することが、製造工程の増加や製造コストの増加を抑制するという観点から好ましい。
【0045】
以上、説明したように、FPC4をコネクタ2に挿入したときに、補強板41をコネクタ2とロック解除状態のスライダ3に隠れないような長さにする。そして、FPC4が回路基板1に適切に挿入されたときの、補強板41のコネクタ2への挿入方向とは反対の端41aの位置を、回路基板1にマーク6として設ける。また、このマーク6は、回路基板1に部品が実装されてから設けるようにする。このようにすることで、コネクタ2の回路基板1への実装誤差に関係なく適切な位置にマーク6が設けられる。また、スライドタイプのロック部材(実施形態の説明では「スライダ」と称している)を用いるコネクタ2に対しても、FPC4を適切に挿入することが容易になる。
【0046】
また、FPC4のコネクタ2への挿入作業が容易になる事により、作業時間や製造コストの低減を実現することができるとともに、作業信頼性も向上し、より良好な製品を供給可能となり、歩留まりを向上させることができる。
【0047】
次に、本発明に係るフレキシブルプリント配線板(FPC)4のコネクタ2への取付け方法の他の実施形態について説明する。図7は、本発明に係るフレキシブルプリント配線板(FPC)4のコネクタ2への取付け方法の他の実施形態を説明するための概略図であって、FPC4がロックされた状態のコネクタ2付近の概略構成図である。なお、上述の実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
【0048】
上述の実施形態と異なるのは、FPC4の位置決め用のマークの形状である。上述の実施形態におけるFPC4の位置決め用のマーク6は、FPC4を挟むように補強板41のコネクタ2への挿入方向とは反対の端41aの位置と、マーク6の形状である三角形(図1〜6の△印)の1つの頂点の位置が一致する様に1対設けられていた。しかしながら、本実施形態では、FPC4の位置決め用のマーク7は、幅のある直線で構成されている。なお、図7では、分かりやすくするために、マーク7は透視図として描かれている。
【0049】
マーク7は、FPC4が正しくコネクタ2に挿入された状態で、補強板41の、FPC4のコネクタ2への挿入方向とは反対の端41aに平行に延び、かつ、FPC4の方向の長さよりも長い直線である。また、マーク7は、回路基板1上にレーザ加工されている。上述のように、レーザ加工ではなく、インクジェット方式で記録しても構わない。
【0050】
このようにすることで、FPC4をコネクタ2に挿入する前の状態でも、FPC4をコネクタ2に挿入する場合、どの位置まで挿入すれば良いかがはっきり認識できる。さらに、FPC4をコネクタ2に挿入後も、FPC4の幅方向にはみだしたマーク7が確認できるので、適切な挿入ができているかの確認できる。また、マーク7の、FPC4のコネクタ2への挿入方向における幅を、FPC4のコネクタ2への挿入公差と同じにしておけば、上述の実施形態と同様に、容易に挿入公差内に補強板41の端41aが位置していることが確認でき、作業性を向上させることができる。
【0051】
次に、本発明に係るフレキシブルプリント配線板のコネクタへの取付け方法のさらに他の実施形態について説明する。図8は、本発明に係るフレキシブルプリント配線板(FPC)4のコネクタ2への取付け方法のさらに他の実施形態を説明するための概略図であって、FPC4がロックされた状態のコネクタ2付近の概略構成図である。なお、上述の実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
【0052】
上述の2つの実施形態と異なるのは、FPC4の位置決め用のマークの形状である。FPC4をコネクタ2へ挿入するときに、FPC4の挿入不足は、目安がないと分かりづらい。しかしながら、FPC4をコネクタ2へ挿入しすぎる(押し込みすぎる)過挿入は、FPC4がコネクタ2の奥に突き当たるため過挿入かどうかの判別が容易である。
【0053】
そこで、本実施形態のマーク8では、FPC4のコネクタ2への挿入量が足りない挿入不足だけを判別できるようにした。つまり、FPC4がコネクタ2に最も適切に挿入されたときの補強板41の端41aの位置から、FPC4がコネクタ2へ挿入不足ではないと許容される最少の挿入量の補強板41の端41aの位置までの範囲をマーク8として回路基板1に設ける。また、このマーク8では、許容される過挿入の範囲は記さない。したがって、このマーク8の内部に、FPC4のコネクタ2への挿入方向とは反対の補強板41の端41aが位置するようにFPC4を挿入すれば、FPC4のコネクタ2への挿入不足を容易に解消できる。また、マーク8の領域内に補強板41の端41aが位置していれば、FPC4をコネクタ2への過挿入を抑制できる。
【0054】
上述で説明した3つの実施形態では、FPC4のコネクタ2との接続面が、回路基板1側にある場合について説明したが、回路基板1とは反対側に接続面がある場合でも同様の効果が得られる。
【0055】
この場合、補強板41も回路基板1側に位置するため、カバーレイフィルム44、銅箔パターン43、ベースフィルム42と回路基板1との間に補強板41が位置することになる。実際のFPC4は、銅箔パターン43には隙間があり、FPC4の幅方向の両端部に銅箔パターン43が位置していない。また、カバーレイフィルム44とベースフィルム42は厚さが薄い。そのため、銅箔パターン43の隙間や、FPC4の幅方向の側端部から、カバーレイフィルム44とベースフィルム42を介して補強板41を確認することができる。したがって、上述で説明した様な効果を得ることができる。
【0056】
また、本発明の趣旨は、FPC4上の目印、つまり補強板41の端41aと、回路基板1上に設けたマーク6〜8とによってFPC4のコネクタ2への挿入の位置合わせをすることである。したがって、FPC4の位置の目印は、補強板41のコネクタ2とは反対側の端41aである必要はなく、FPC4の製作上の都合によって、任意の目印をFPC4上に設ければよい。回路基板1上のマーク6〜8は、それに対応した位置に設ければよい。
【0057】
以上、説明したように、本発明によれば、FPC4をコネクタ2に挿入したときに、FPC4の補強板41をコネクタ2に隠れない長さにする。そして、回路基板1上に、補強板41の端41aを基準として位置合わせするためのマーク6〜8を、コネクタ2を含む部品を回路基板1へ実装した後に設ける。このような、FPC4のコネクタ2への取付け構造が設けられることで、コネクタ2の回路基板1への実装誤差に関係なく適切な位置にFPC4をコネクタ2へ適切に挿入し、コネクタ2にFPC4を取付けることが容易になる。
【0058】
また、挿入作業が容易になる事により、作業時間や製造コストの低減を実現することができるとともに、作業信頼性も向上し、より良好な製品を供給可能となり、歩留まりを向上させることができる。
【0059】
さらに、従来技術のように、FPC4に切れ込みを入れることはないので、FPC4内のパターンに影響を及ぼすことなく、FPC4をコネクタ2に適切に挿入することできるようになる。また、FPC4に切れ込みを入れないので、FPC4のコストを軽減し、又、FPC4のパターン性能を劣化させることがない良好なコネクタ実装を実現できる。
【0060】
なお、上記の実施形態では、フレキシブルプリント配線板(FPC)について説明したが、これに限定されず、本発明はフレキシブルフラットケーブル(FFC)など、本発明を適用できるものであれば、いずれであっても構わない。
【符号の説明】
【0061】
1 回路基板
2 コネクタ
3 スライダ(ロック部材)
4 フレキシブルプリント配線板
6〜8 マーク
41補強板
41a補強板の端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の上に設けられた、スライド式のロック部材を有するコネクタに、配線板を挿入する、配線板の取付け方法であって、
前記配線板の前記コネクタへの挿入部分に、前記配線板が前記コネクタに適切に挿入されたときに前記コネクタに隠れないように補強板を設けて、
前記配線板を前記コネクタに適切に挿入したときの、前記配線板の前記コネクタへの挿入方向とは反対の前記補強板の端の位置を記した前記回路基板のマークと、前記配線板の前記端とが一致するまで前記配線板を前記コネクタに挿入する、配線板の取付け方法。
【請求項2】
前記マークとして、前記配線板を挟んで1つの頂点が対向するように2つの三角形を配置し、前記三角形の前記頂点に対する底辺の長さを、前記配線板を前記コネクタに挿入したときに許容される挿入公差と一致させる、請求項1に記載の配線板の取付け方法。
【請求項3】
前記マークとして、前記配線板の幅方向に延びる直線を配置し、前記直線の、前記配線板の前記コネクタへの挿入方向における幅を、前記配線板を前記コネクタに挿入したときに許容される挿入公差と一致させる、請求項1に記載の配線板の取付け方法。
【請求項4】
前記配線板が前記コネクタに最も適切に挿入されたときの前記補強板の前記端の位置から、前記配線板が前記コネクタへ挿入不足ではないと許容される最少の挿入量のときの前記補強板の前記端の位置までの範囲にマークを設ける、請求項1に記載の配線板の取付け方法。
【請求項5】
回路基板と、前記回路基板に設けられたスライド式のロック部材を有するコネクタと、前記コネクタに挿入される配線板と、前記回路基板の上に設けられたマークとを含む、配線板の取付け構造であって、
前記配線板の前記コネクタへの挿入部分には、補強板が設けられており、
前記補強板は、前記配線板が前記コネクタに挿入されたときに前記コネクタから突出する長さを有しており、
前記マークは、前記配線板が前記コネクタに適切に挿入されたときの、前記配線板の前記コネクタへの挿入方向とは反対の前記補強板の端の位置の少なくとも側方にもうけられている、配線板の取付け構造。
【請求項6】
前記マークとして、前記配線板を挟んで1つの頂点が互いに対向するように1対の三角形が設けられており、前記三角形の前記頂点に対する底辺の長さが、前記配線板を前記コネクタに挿入したときに許容される挿入公差と一致している、請求項5に記載の配線板の取付け構造。
【請求項7】
前記マークとして、前記配線板の幅方向に延びる直線が設けられ、前記直線の前記配線板の前記コネクタへの挿入方向における幅と前記配線板を前記コネクタに挿入したときに許容される挿入公差とが一致している、請求項5に記載の配線板の取付け構造。
【請求項8】
前記マークは、前記配線板が前記コネクタに最も適切に挿入されたときの前記補強板の前記端の位置から、前記配線板が前記コネクタへ挿入不足ではないと許容される最少の挿入量のときの前記補強板の前記端の位置までの範囲の領域に設けられている、請求項5に記載の配線板の取付け構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−129354(P2012−129354A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279264(P2010−279264)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】