説明

配線板接続体、その製造方法、および配線板

【課題】一方の配線板と他方の配線板とを、導電性接着剤を介在させて、従来よりも低温かつ短時間で熱圧着することができる配線板接合体等を提供する。
【解決手段】フレキシブルプリント配線板である第1の配線板10と第2の配線板20とが、導電性接着剤30を挟んで接続された配線板接続体50、を製造するとき、第2の配線板に、第1の配線板と固着させるための粘着部21fを形成する工程と、第1の配線板と第2の配線板との間に導電性接着剤30を挟んで、熱圧着する工程とを備え、その熱圧着工程では、フレキシブルプリント配線板10を押し込んで導電性接着剤30を押しのけて、相手側の配線板と、粘着部21fにより固着させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の配線板を接続した配線板接続体、その製造方法、および配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器においては、2つの配線板の導体配線または電極を電気的に接続する構造が用いられる。たとえば電子機器類の可動部への配線等の用途にフレキシブル配線板が多用され、また小型化および高機能化に伴って、フレキシブル配線板とリジッド配線板との接合、複数のフレキシブル配線板の接合などの、多様な配線板接続体が多く用いられている。
これら配線板の接続には、比較的、低温かつ短時間で、導電接着ができるため導電性接着剤が用いられる傾向にある。たとえば導電フィラー等を含む熱硬化性樹脂を主成分とする主剤層と、熱可塑性樹脂と主成分の潜在性硬化剤とが混合された硬化剤層とが、隔離層を介して積層された、一液型の異方導電性接着膜(ACF:Anisotropic Conductive Film)が提案されている(特許文献1)。この異方導電性接着膜によれば、保管時には隔離層によって熱硬化性樹脂と硬化剤とは隔離されており、接合の際の加熱加圧処理において、隔離層を溶融させて熱硬化性樹脂と硬化剤とを接触させて硬化させる。このため、保管条件を厳しく管理することなく、硬化反応速度が大きい硬化剤や熱硬化性樹脂を用いることができ、加熱温度を比較的低く設定した場合であっても、短時間で接続ができる。
一方、隔離層を間に介在させるACFは、製造工程が複雑になり、取り扱いも配慮がいることから、樹脂製のマイクロカプセルに硬化剤等を封入して、熱硬化性樹脂層中に分散させておき、圧力をかけることでマイクロカプセルを破壊して、硬化剤と熱硬化性樹脂とを反応させて硬化させるACFが提案された(特許文献2)。このACFも一液型である。この方式でも、マイクロカプセルが圧壊されない限り反応は進行しないので、反応速度が大きい硬化剤と熱硬化性樹脂とを用いることができる。(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−173362号公報
【特許文献2】特開平4−96981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のACFは、低温域で短時間の熱圧着工程で接続を行うと、つぎのような問題が生じる。すなわち、特許文献1の発明では、熱圧着の際、隔離層が加熱されて溶融するのには時間がかかり、また、隔離層が溶融した部分の硬化剤と熱硬化性樹脂とが局所的に反応するため、隔離層の公称融点付近ではそれほど大きな速度で硬化反応は進行しない。このため熱圧着の温度を高くする必要があり、一方のプリント配線板の耐熱性が低い場合、不都合を生じる。
また、特許文献2の方法では、樹脂製のマイクロカプセルの圧力による破壊は、容易には進まず、このため、化学反応は円滑に進行しない。マイクロカプセルの融点以上に加熱すれば硬化剤は熱可塑性樹脂と接触が容易になるが、熱圧着温度を低くすることが難しい。
具体的な現象としては、両方のプリント配線板の耐熱条件を満たす低い温度域に加熱して所定時間加圧して熱圧着しても、除荷後、硬化反応が不十分なために、2つの配線板の距離が大きくなる「浮き」または「戻り」が発生する。硬化反応が十分に行き渡らない場合に生じる不具合現象である。このような浮きが生じると配線または電極間の導電接続の不良が発生する。
本発明は、一方の配線板と他方の配線板とを、導電性接着剤を介在させて、従来よりも低温かつ短時間で熱圧着することができる、配線板接合体、その製造方法、および配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線板接合体の製造方法では、少なくとも一方がフレキシブルプリント配線板である、第1の配線板と第2の配線板とが、導電性接着剤を挟んで接続された配線板接続体、を製造する。この製造方法は、第1の配線板および/または第2の配線板において、相手側の配線板との対面位置に、当該相手側の配線板と固着するための粘着部を形成する工程と、第1の配線板と第2の配線板との間に導電性接着剤を挟んで、熱圧着する工程とを備える。そして、熱圧着工程では、フレキシブルプリント配線板を押し込んで導電性接着剤を押しのけて、粘着部により、相手側の配線板に固着することを特徴とする。
【0006】
本発明の対象とする導電性接着剤は一液型であり、潜在性硬化剤としてマイクロカプセル等に収納されて、(接着)樹脂と隔離された硬化剤を内蔵している。マイクロカプセル等は所定温度以上で融けるような別の樹脂で形成されている。熱圧着工程において、マイクロカプセルは所定温度以上に加熱されて融解を始めて、周囲の(接着)樹脂と接触して硬化反応を始める。このため、用いる配線板の耐熱性が低い等の理由によって、熱圧着時の加熱温度を低く、かつ保持時間を短く設定すると、硬化反応が十分進行しないうちに、熱圧着工程が終了する。この結果、熱圧着の圧力負荷が除かれた後、上述のように、所定値を超える浮きが発生し、電極間の導電接続不良を生じる。
本発明方法によれば、導電性接着剤による熱圧着と並んで、フレキシブルプリント配線板を押し込んで配線板の基材どうしを、両配線板の基材の少なくとも一方に設けた粘着部により、直接、固着する。このため硬化反応が不十分であっても、上記の間隔を、熱圧着直後の間隔から大きく増加させず、所定範囲内に保つことができる。硬化反応は、熱圧着工程の加温・加圧時間だけでなく、その後の放冷時間においても、確実に進行する。上記の浮きは、除荷後、所定時間経過時点で実用上問題のないレベル以下にできればよく、100パーセント硬化反応を終了させておく必要はない。また、粘着部についても、熱圧着時に相手側と最終的な固定強度の100%で固着する必要はなく、導電性接着剤の硬化反応の未成熟をカバーできればよい。
上記の製造方法によって、従来よりも低い温度で、かつ、より短い保持時間で熱圧着しても、両配線板の上記の浮きを実用上問題のないレベルまで小さくすることができ、電極間の導電接続不良を防止することができる。
なお、導電性接着剤には、液状、ペースト状、フィルム状(ACF)などの形態が含まれる。
【0007】
粘着部を、(N1)第1および第2の配線板と別体の粘着剤の積層、または、(N2)第1の配線板および/または第2の配線板における基材表層を粘着化する粘着化液の塗布もしくは散布、により形成することができる。これによって、多くの選択肢を得ることができる。これらの選択肢から、配線板の基材の種類、配線板接続体の製造態様(配線板の準備と熱圧着時との間の時間間隔など)、経済性等を考慮して、適切な方法を選ぶことができる。
【0008】
粘着部を、第1の配線板および/または第2の配線板における基材表層を粘着化する粘着化液の塗布もしくは散布、により形成する場合において、「基材表層材料と粘着化液」との組み合わせを、「アクリル系樹脂とケトン系溶剤」、「ポリイミド系樹脂とピロリドン系溶剤」、「ポリカーボネートと、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤」等とすることができる。これによって、低い温度で、かつ、より短い保持時間で熱圧着しながら、簡単な付加手順で安価に、配線板間の導電接続不良を防止することができる。なお、粘着化される基材表層は、基材と一体物である必要はなく、基材本体と接続用電極との間に形成されたものであってもよい。
【0009】
熱圧着工程では、熱圧着の押し具と、配線板接続体となる積層体との間に、圧縮変形可能な離型シートを挿入して熱圧着するのがよい。離型シートは一方の配線板(積層体の高い位置のほうの配線板)の裏面に押しつけられる。離型シートにおいて、熱圧着時に、電極の裏面部分では高い圧力が分布し、電極がない領域ではそれより低い圧力が分布する。電極の裏面側の高圧力分布部では離型シートは大きな圧力を受けて圧縮されて薄くなり、電極がない、厚みが厚い領域において配線板の基材を相手側に押し出すことができる。配線板において電極の高さ(露出厚み)は、たとえば2種類あって18μm、および35μmであるのに対して、電極間の幅は200μm〜1000μm程度ある。このため、離型シートは電極裏面部で局所的に押し込まれて圧縮され、電極がない間の領域(圧縮の程度が小さく厚みが厚い領域)において、その配線板の基材を相手側に容易に接触させることができる。これより、離型シートの厚みは、最低限、両電極の高さの和以上あるのが好ましい。たとえば、36μm以上、または70μm以上とするのがよい。より好ましくは、40μm以上、または80μm以上とするのがよい。
上記の熱圧着方法によって、特別な工具、装置、もしくは微妙な操作を要する処理を行うことなく、簡単に両配線板の基材同士の固着を実現することができる。その結果、低い温度で、かつ、より短い保持時間で熱圧着しながら、簡単に、配線板間の導電接続不良を防止することができる。
【0010】
ヒータを内蔵した押し具である熱圧着ツールによる熱圧着での前記第1の配線板と第2の配線板との間の距離について、前記導電性接着剤の温度が100℃以下になるようにして加圧時間10秒間以下で熱圧着した直後の除荷前の値を基準にして、除荷または熱圧着ツールを離して5分後の値が、3μm以下の増大となるように、粘着部を形成することができる。これによって、既存の熱圧着ツールを用いて、接続不良のない高品質の接続配線体を、能率良く製造することができる。硬化反応は、上述のように熱圧着ツールを離したあとも進行する。上記の許容される範囲内の浮きを生じても、熱圧着ツールを離した後、温度低下しながら緩やかに硬化反応が進行して接着強度等が実用上問題ないレベルに到達すればよい。熱圧着後に硬化反応を促進して浮きを増大させないために、その熱圧着後に100℃以下の加熱処理を追加してもよい。
【0011】
本発明の配線板接続体は、第1の電極および第1の基材を有する第1の配線板と、第2の電極および第2の基材を有する第2の配線板とが接続されている。この配線板接続体では、第1の配線板および第2の配線板の少なくとも一方がフレキシブルプリント配線板であり、第1の電極と第2の電極とが導電接続されるように、第1の配線板と第2の配線板とは導電性接着剤を挟んで接続されており、さらに、第1の基材と第2の基材とが固着されていることを特徴とする。
【0012】
上記の構成によれば、第1の配線板と第2の配線板とは、(B1)導電性接着剤による接続、および、(B2)基材どうしの固着、によって接続される。このため、上記の(B1)および(B2)は、協働して熱圧着後の浮き等を防止する作用を発揮する。熱圧着工程において低温度でかつ短時間保持を採用した場合、(B1)だけでは実用上問題ないレベル以下の浮きの発生とすることができない場合がある。しかし、上記の(B1)と(B2)とが協働することで、浮きを実用上問題ないレベル以下に確実に抑制することができ、両配線板間の導電接続不良を防止することができる。
【0013】
固着されている部分が、第1の基材および/または第2の基材の表層が粘着化された部分で形成されているか、もしくは、第1の基材および/または第2の基材の表面に配置されていた粘着剤により形成されているか、または、その両方で形成されているか、とすることができる。これによって、多くの選択肢を得ることができる。これらの選択肢から、配線板の基材の種類、配線板接続体の製造態様(配線板の準備と熱圧着時との間の時間間隔など)、経済性等を考慮して、適切な方法を選ぶことができる。
【0014】
本発明の配線板は、配線板接続体を製造するために用いられる、基材から突出する電極を有する。この配線板は、電極を避けて基材の一部または全面に限定して、粘着剤が配置されていることを特徴とする。
上記の構成によって、硬化反応が不十分であっても、両配線板の基材同士の固着により、両配線板の間隔について、熱圧着直後の負荷状態の間隔を、除荷後も許容範囲の増加に保つことができる。その結果、従来よりも低い温度で、かつ、より短い保持時間で熱圧着しても、両配線板の間隔の増大を実用上問題のないレベルまで小さくすることができ、電極間の導電接続不良を防止することができる。
なお、上記の粘着剤の上に、電極も含めて配線板の全面を被覆するように、導電性接着剤を配置してもよい。
また上記の配線板は、言うまでもなく、本発明の配線板接続体の製造方法を実施する場合の特別の一態様であり、上記以外の配線板を用いても、本発明の配線板接続体の製造において、上記と同様の作用効果を得ることができる。また配線板接続体の少なくとも一方の配線板をフレキシブルプリント配線板とするので、上記の配線板はフレキシブルプリント配線板でなくてもよいが、熱圧着の際に変形することなどが必要であるので、相手側の基板の形態が不明なときは、フレキシブルプリント配線板とするのがよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一方の配線板と他方の配線板とを、導電性接着剤を介在させて、従来よりも低温かつ短時間で熱圧着できる、配線板接続体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は本発明の実施の形態1における配線板接続体を、(b)はその固着部の拡大した部分を、示す図である。
【図2】(a)は第2のプリント配線板の基材上に粘着化液を置いた状態を、(b)は、基材が粘着化された状態を、示す図である。
【図3】図1(a)の配線板接続体を製造するために、熱圧着しようとする状態を示す図である。
【図4】熱圧着して配線板接続体を製造した直後の状態を示す図である。
【図5】(a)は本発明の実施の形態2における配線板接続体を、(b)はその固着部の拡大した部分を、示す図である。
【図6】図5(a)の配線板接続体を製造するために、熱圧着しようとする状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
図1(a)は、本発明の実施の形態1における配線板接続体50を示す図である。この配線板接続体50は、第1のプリント配線板10と第2のプリント配線板20とが導電性接着剤30によって接続されている。加えて、第1のプリント配線板10の基材11と第2のプリント配線板20の基材21とが、固着部Kで固着されている。両プリント配線板10,20の間隔Gは、両電極12,22の基部間の距離である。両電極12,22の先端間の間隔gの部分には、図示しない導電フィラーが集積して、両電極12,22を導電接続している。2つのプリント配線板間の距離として、上記の間隔Gを用いてもよいし、間隔gを用いてもよい。浮きの値(絶対値)は、両方の間隔G,gについて同じである。
【0018】
固着部Kが比較的容易に形成できることを示すために、図1(a)に示す配線板接続体50の各部寸法を説明する。第1のプリント配線板10をフレキシブルプリント配線板とすると基材11の厚みは12μm、18μm、25μmの3種類ある。その電極12の厚みは、18μmおよび35μmの2種類である。図1では、電極12,22の厚みを誇張して大きく描いているが、実際は、基材面において2つの電極12の間の距離は、200μm〜1000μmであり、間隔が大きくあいている。図1を参照して、第1のプリント配線板の電極11と、第2のプリント配線板の電極21との間の隙間(間隔)gは、約1μm程度とする。また、両プリント配線板10,20の間の間隔または電極12,22間の基部間の距離Gは、37μm〜50μm程度である。
上記によれば、電極12間の領域の幅は電極厚みの略10倍程度ある。このため、第1のプリント配線板10は、形状上、大きなアール(曲げ半径)で湾曲して、固着部Kを実現している。第1のプリント配線板10は、フレキシブルプリント配線板なので、上記の程度のアールの湾曲は、フレキシブルプリント配線板にとって自然な湾曲の範囲内といってよく、形状上、まったく問題ない。固着部Kについては、第1または第2のプリント配線板10,20の形状よりは、固着力をいかに持たせるか、が重要である。
【0019】
図1(b)は、固着部Kにおける基材11,21の界面の拡大図である。本実施の形態では、固着力は、第2のプリント配線板20の基材21が粘着化液によって粘着化された粘着部21fによって、発現する。第1のプリント配線板10の基材11が、導電性接着剤30を退けるように押し込まれて、第2のプリント配線板20の基材21の粘着部21fによって固着部Kを形成している。
【0020】
本実施の形態における配線板接続体50では、導電性接着剤30による熱圧着と並んで、フレキシブルプリント配線板10を押し込んで配線板基材どうし11,21を、直接、固着する。このため導電性接着剤30における硬化反応が不十分であっても、第2のプリント配線板20の基材21に設けた粘着部21fと第1のプリント配線板10の基材11との固着により、固着部Kが形成される。このため、間隔Gまたはgを、熱圧着直後の負荷時の間隔から大きく増加しないように、所定範囲内に保つことができる。この結果、第1のプリント配線板10と第2のプリント配線板20との導電接続において不良箇所を生じない。
【0021】
次に、図1に示す配線板接続体50の製造方法について説明する。図2(a)は、第2のプリント配線板20の基材21上に粘着化液35を置いて基材表面と接触させた状態を示す図である。この接触によって、粘着化液35は基材21の表層を粘着化する。図2(b)は、粘着化液35によって、基材21の表層が粘着化されている状態を示す図である。基材21は、全体が同じ材料で形成されている必要はなく、表層を含む所定厚み範囲、たとえば基材本体と接続用電極との間に、基材本体を構成する材料と異なる別の樹脂層が配置されたものであってもよい。したがって粘着部21fはその別の樹脂層に形成されてもよい。
粘着化される基材表層の樹脂として、アクリル系樹脂を用い、粘着化液としてケトン系溶剤を用いることができる。アクリル樹脂にケトン系溶剤を用いることで、粘着性の高い流動体からなる粘着部21fを形成することができる。アクリル系樹脂とケトン系溶剤、の組み合わせの代わりに、ポリイミド系樹脂とピロリドン系溶剤、ポリカーボネートとケトン系溶剤または芳香族炭化水素系溶剤、等を用いてもよい。このような樹脂と粘着化液を用いることで、低い温度で、かつ、より短い保持時間で熱圧着しながら、簡単な付加手順で安価に、配線板間の導電接続不良を防止することができる。
【0022】
図3は、粘着化液によって粘着部21fを有する第2のプリント配線板20と、第1のプリント配線板(フレキシブルプリント配線板)10との間に、導電性接着剤30を挟んで、熱圧着しようとする状態を示す図である。熱圧着では、フレキシブルプリント配線板10の上に所定厚みを有する離型シート54を載せ、その離型シート54の上から、ヒータを内蔵する熱圧着ツール53で圧力を負荷する。
図4は、熱圧着において、圧力を負荷して離型シート54を圧縮変形させながら、導電性接着剤30に両プリント配線板10,20を接着させ、かつ、固着部Kを形成する状態を示す図である。プリント配線板10,20の電極12,22に対応する部分の離型シート54sは、局所的に圧縮変形されている。そして、圧縮変形の程度が小さい電極間の厚い領域54rは、両プリント配線板10,20の基材どうし11,21が接触するように、第1のプリント配線板(フレキシブルプリント配線板)を相手側に押し込んでいる。
【0023】
上記の圧縮変性を容易に生じさせるために、離型シート54には、シリコンゴム、テフロン(登録商標)などを用いるのがよい。このような離型シート54の圧縮変形によって、フレキシブルプリント配線板10に、導電性接着剤30を押し退けさせて、両基材どうし11,21を接触させて固着部Kを形成するのが容易となる。上記の作用を得るために、離型シート54の厚みは所定値以上あるほうがよい。
ここで、厚みについて概算を行う。
両電極12,22に対応する部分の厚みDs:{(圧縮変形部54sの厚みTs)+(間隔G)}
電極のない領域の厚みDr:(電極間領域54rの厚みTr)
大雑把に、上記のDsとDrとは等しい。離型シート54の電極間領域54rは、基材11を相手側に押しつけるために、少しだけ、たとえば当該基材11の厚み分だけ圧縮されているとすると、離型シート54は、フリーの状態で、少なくとも、2つの電極12,22の和の厚みは持つのがよい。プリント配線板の電極の厚み(高さ)は、たとえば18μmと35μmとする。電極材料としては、銅だけでなく、ITO、Agペーストなどであってもよい。ITOの場合には厚みは0.1μm程度、またAgペーストの場合には厚みは10μmとなる場合がある。銅の場合で、厚みが18μmまたは35μmの場合には、離型シート54の厚みは、上記に従って少なくとも36μm、または70μmとするのがよい。また、望ましくは離型シート54の厚みは、45μm以上、または80μm以上とするのがよい。さらに望ましくは50μm以上、または85μm以上とするのがよい。
【0024】
本発明の対象とする導電性接着剤30は一液型であり、潜在性硬化剤として図示しないマイクロカプセルに収納されて、(接着)樹脂と隔離された硬化剤を内蔵している。マイクロカプセルは所定温度以上で融けるような別の樹脂で形成されている。熱圧着工程において、マイクロカプセルは所定温度以上に加熱されて融解を始めて、周囲の(接着)樹脂と接触して硬化反応を始める。このため、用いる配線板の耐熱性が低い等の理由によって、熱圧着時の加熱温度を低く、かつ保持時間を短く設定すると、硬化反応が十分進行しないうちに、熱圧着工程が終了する。この結果、熱圧着の圧力負荷が除かれた後、所定値を超える浮きが発生し、電極間の導電接続不良を生じる。
【0025】
導電性接着剤30の主成分である接着樹脂は、たとえばエポキシ系樹脂などを用いることができる。エポキシ系樹脂は、とくに制限はないが、たとえばビスフェノールA型、F型、S型、AD型、またはビスフェノールA型とビスフェノールF型との共重合型のエポキシ樹脂や、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等を使用することができる。また、高分子エポキシ樹脂であるフェノキシ樹脂を用いることもできる。
エポキシ樹脂の分子量は、接着剤に要求される性能を考慮して、適宜選択することができる。高分子量のエポキシ樹脂、たとえば上述のフェノキシ樹脂などを使用すると、フィルム形成性が高く、また熱圧着温度における樹脂の溶解粘度を高くでき、導電粒子の配向を乱すことなく接続することができる。一方、低分子量のエポキシ樹脂を用いると、架橋密度が高まって耐熱性が向上する利点を得ることができる。また加熱時に、上述の硬化剤と速やかに反応して接着性能を向上させることができる。したがって分子量が15000以上の高分子量エポキシ樹脂と、分子量が2000以下の低分子量エポキシ樹脂とを組み合わせることで、性能のバランスをとることができる。高分子量エポキシ樹脂と低分子量エポキシ樹脂との配合比は、適宜、選択することができる。分子量は、THF展開のゲルパーミッションクロマトグラフィ(GPC)から求められるポリスチレン換算の重量平均分子量をさす。
【0026】
硬化剤には、たとえばイミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、アミンイミド、ポリアミン系、第3級アミン、アルキル尿素系等のアミン系、ジシアンジアミド系、無水物系、フェノール系、および、これらの変性物が例示され、これらは単独または2種以上の混合物として使用できる。これらの硬化剤に加えて硬化促進剤を配合してもよい。
【0027】
導電フィラーには、金、ニッケル等の金属粒子、金属めっき層に被覆された樹脂粒子など、既存のものを使用することができる。フレキシブルプリント配線板である第1のプリント配線板10の基材11には、ポリエステルフィルム等を用いることができる。柔軟性と耐熱性とを兼ね備える基材としては、ポリアミド系の樹脂フィルムや、ポリイミド、ポリアミドイミドなどのポリイミド系の樹脂フィルムやポリエチレンナフタレートを用いることができる。
一方、第2のプリント配線板20の基材21には、表層に粘着部21fを形成される材料を用いる必要がある。表層をアクリル系樹脂で形成する場合、基材本体は、どのような材料で形成してもよい。たとえば、ガラスエポキシ樹脂等を用いることができるし、第1のプリント配線板10と同様の材料で形成してもよいし、さらに耐熱性の低い安価な材料で形成することもできる。また、基材21の全体をアクリル系樹脂で形成してもよい。
【0028】
上記の方法によれば、導電性接着剤による熱圧着と並んで、フレキシブルプリント配線板を押し込んで配線板基材どうしを、直接、固着するので、硬化反応が不十分であっても、上記の間隔を、熱圧着直後の間隔から大きく増加しないように、実用上の許容範囲内に保つことができる。硬化反応は、熱圧着工程の加温・加圧時間だけでなく、その後の放冷時間においても、確実に進行する。上記の浮きは、除荷後、所定時間経過時点で実用上問題のないレベル以下にできればよく、100パーセント硬化反応を終了させておく必要はない。また、粘着部を構成する部分についても、熱圧着時に相手側と最終的な固定強度の100%で固定する必要はなく、導電性接着剤の硬化反応の未成熟をカバーできればよい。
上記の製造方法によって、従来よりも低い温度で、かつ、より短い保持時間で熱圧着しても、両配線板の間隔を実用上問題のないレベルまで小さくすることができ、電極間の導電接続不良を防止することができる。
【0029】
(実施の形態2)
図5(a)は、本発明の実施の形態2における配線板接続体50を示す図である。この配線板接続体50は、実施の形態1と同様に、第1のプリント配線板10と第2のプリント配線板20とが導電性接着剤30によって接続され、それに加えて、両プリント配線板10,20は、固着部Kで固着されている。ただし、固着部Kの内容が、図1(a)とは相違する。本実施の形態における固着部Kは、図1(b)に示すように、両プリント配線板10,20とは別体の粘着剤43によって基材同士11,21が固着されている。その他の部分は、実施の形態1の配線板接続体と同じである。
【0030】
図6は、本実施の形態の配線板接続体50の製造において、配線板接続体の積層体を形成して熱圧着をしようとする状態を示す。第2のプリント配線板20の基材22には、粘着剤43が配置されている。粘着剤43としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等を用いるのがよい。この粘着剤43は、実施の形態1における図3の第2のプリント配線板20の粘着部21fに対応する。相手側のフレキシブルプリント配線板10の基材11が、離型シートによって押し込まれて、固着部Kを形成するという点では、実施の形態1と同じである。このため、熱圧着工程で、加熱温度を低くし、加圧保持時間を短くしても、熱圧着後の浮きを実用上、問題ないレベル以下に抑えることができ、導電接続不良を防止することができる。この点の作用効果は、実施の形態1と同じである。
【0031】
実施の形態1と相違する本実施の形態の特徴は、粘着剤43を両プリント配線板10,20とは別体とする点にある。この特徴により、第2のプリント配線板20の基材21には、どのような材料でも用いることができる。第1のプリント配線板10は、押し込むための柔軟性または弾性を要するので、フレキシブルプリント配線板とする。第2のプリント配線板20については、たとえば経済性を追求して非常に安価な樹脂を基材に用いることができる。耐熱性の点で、第1のプリント配線板10に劣っても、上述のように、熱圧着工程で、加熱温度を低く、かつ負荷時間を短くしても、導電接続の不良は防止されるので、思い切って安価な樹脂を基材に選ぶことが可能になる。また、これとは違う観点から、第2のプリント配線板20を選択することも可能である。たとえばガラスエポキシ樹脂など硬質の樹脂や、セラミックス等を、基材21に用いてもよい。
【0032】
(他の実施の形態)
上記の実施の形態では、第2のプリント配線板20に、粘着部21f、または粘着剤43を設けて、熱圧着工程では、このような粘着部等を持たないフレキシブルプリント配線板10を押し込んで固着部Kを形成した。しかし、粘着部や粘着剤を、熱圧着工程で押し具で押される側の第1のプリント配線板10に配置した上で、熱圧着を行ってもよい。
【0033】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、一方の配線板と他方の配線板とを、導電性接着剤を介在させて、従来よりも低温かつ短時間で浮き等を生じることなく熱圧着できる、配線板接合体を得ることができる。
【符号の説明】
【0035】
10 第1のプリント配線板、11 基材、12 電極、20 第2のプリント配線板、21 基材、21f 粘着部、22 電極、30 導電性接着剤、35 粘着化液、43 粘着剤、50 配線板接続体、53 熱圧着ツール、54 離型シート、54r 電極がない電極間に対応する領域、54s 電極裏面の圧縮変形領域、g 電極間の間隔(隙間)、G 配線板間の間隔(電極基部間の間隔)、K 固着部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方がフレキシブルプリント配線板である、第1の配線板と第2の配線板とが、導電性接着剤を挟んで接続された配線板接続体、を製造する方法であって、
前記第1の配線板および/または第2の配線板において、相手側の配線板との対面位置に、当該相手側の配線板と固着するための粘着部を形成する工程と、
前記第1の配線板と前記第2の配線板との間に前記導電性接着剤を挟んで、熱圧着する工程とを備え、
前記熱圧着工程では、前記フレキシブルプリント配線板を押し込んで前記導電性接着剤を押しのけて、前記粘着部により、相手側の配線板に固着することを特徴とする、配線板接続体の製造方法。
【請求項2】
前記粘着部が、前記第1および第2の配線板と別体の粘着剤の積層、または、前記第1の配線板および/または第2の配線板における基材表層を粘着化する粘着化液の塗布もしくは散布、により形成されることを特徴とする、請求項1に記載の配線板接続体の製造方法。
【請求項3】
前記熱圧着工程では、熱圧着の押し具と、前記配線板接続体となる積層体との間に、圧縮変形可能な離型シートを挿入して熱圧着することを特徴とする、請求項1または2に記載の配線板接続体の製造方法。
【請求項4】
ヒータを内蔵した押し具である熱圧着ツールによる熱圧着での前記第1の配線板と第2の配線板との間の距離について、前記導電性接着剤の温度が100℃以下になるようにして加圧時間10秒間以下で熱圧着した直後の除荷前の値を基準にして、除荷または前記熱圧着ツールを離して5分後の値が、3μm以下の増大となるように、前記粘着部を形成することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の配線板接続体の製造方法。
【請求項5】
第1の電極および第1の基材を有する第1の配線板と、第2の電極および第2の基材を有する第2の配線板とが接続された配線板接続体であって、
前記第1の配線板および第2の配線板の少なくとも一方がフレキシブルプリント配線板であり、
前記第1の電極と第2の電極とが導電接続されるように、前記第1の配線板と前記第2の配線板とは前記導電性接着剤を挟んで接続されており、
さらに、前記第1の基材と第2の基材とが固着されていることを特徴とする、配線板接続体。
【請求項6】
前記固着されている部分が、前記第1の基材および/または第2の基材の表層が粘着化された部分で形成されているか、もしくは、前記第1の基材および/または第2の基材の表面に配置されていた粘着剤により形成されているか、または、その両方で形成されているか、であることを特徴とする、請求項5に記載の配線板接続体。
【請求項7】
配線板接続体を製造するために用いられる、基材から突出する電極を有する配線板であって、
前記電極を避けて前記基材の一部または全面に限定して、粘着剤が配置されていることを特徴とする、配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−108995(P2011−108995A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264923(P2009−264923)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】