説明

配線構造体、その製造方法、および層間絶縁膜

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、導体層とポリイミド膜とを備える配線構造体、その製造方法、および層間絶縁膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、耐熱性高分子の前駆体である感光性耐熱材料としては(イ)特公平5−67026号に芳香族テトラカルボン酸二無水物をオレフィン不飽和アルコールと反応させてオレフィン芳香族テトラカルボン酸ジエステルを合成し、この化合物とジアミンとをカルボジイミドを縮合剤として用いた脱水縮合反応により重合させたもの、及び(ロ)特開昭60−100143号に芳香族テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンおよびシロキサン骨格を有する脂肪族ジアミンを共重合させて得られるポリアミド酸をイソシアネートオルガノ(メタ)アクリレートにより変性し、光重合開始剤を加えたものが知られている。
【0003】
このような感光性耐熱材料を適当な有機溶剤に溶解してワニスとし、該ワニスを基板に塗布、乾燥して塗膜とした後に、必要な場合には適当なフォトマスクを介して紫外線照射した後に現像し、リンス処理すれば、所望のレリーフ・パターンが得られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記(イ)の材料は、最終硬化膜としたときの膜の可とう性や強度が低いため、膜にクラックが生じやすかった。特に、応力の発生が大きい多層配線の層間絶縁膜として用いる場合クラック発生を押さえることが困難であった。これは、オレフィン芳香族テトラカルボン酸ジエステルがカルボキシル基に隣接した立体的にかさ高いエステル基を有しているため、ジアミンとの脱水重縮合に際して重合が十分に進まず、得られるポリマーの分子量が低いためと考えられる。
【0005】
また、上記(ロ)の材料は高分子量のポリアミド酸に感光基を導入しているため最終硬化膜の機械特性は比較的良好であるが、ワニスの安定性が低い、イソシアネート化合物による変性の際に全芳香族ポリアミド酸を用いるとワニスがゲル化しやすく、配線構造体の製造工程に安定な材料を供給することが困難であった。また、この材料では、用いうる構造がシロキサン骨格を有するものに限られる等の問題点があった。
【0006】
ワニスがゲル化するのは、イソシアネート化合物がポリアミド酸のカルボキシル基と反応するのみならず脱水剤としても作用するためポリマー内にイミド環が形成して溶剤に不溶化するためと考えられる。また、ワニスの安定性が低いのは、イソシアネート化合物とポリアミド酸との反応性が低いために、合成後も未反応のイソシアネート化合物が残り、これが長期的に徐々に反応するためと考えられる。
【0007】
そこで、本発明は、上記の欠点を無くし、前駆体が感光性を有し、該前駆体の組成物が安定であり、機械特性に優れたポリイミド膜からなる層間絶縁膜と、該ポリイミド膜を備える、信頼性の高い配線構造体と、材料供給の安定した該配線構造体の製造方法とを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、感光基として用いられる炭素−炭素2重結合を有するイソシアネート化合物をポリアミド酸に反応させる際に、触媒を添加すれば高分子量のポリアミド酸に効率良く感光基を導入することができ、上記目的を達成できるとの着想に基いてなされたものである。
【0009】
本発明者らは、下記一般式(化2)で表される繰返し単位を有するポリアミド酸と下記一般式(化3)で表される炭素−炭素2重結合を有するイソシアネート化合物を触媒の存在下反応させて、下記一般式(化1)で表される繰返し単位を有する感光性ポリイミド前駆体を製造すれば、得られる感光性ポリイミド前駆体の溶液(ワニス)は保存安定性が良く、さらに、最終硬化膜が機械特性に優れるにちがいないと考えた。
【0010】
【化2】



【0011】
(但し、式中R1は少なくとも4個以上の炭素を含む4価の有機基、R2は芳香族環または珪素を含有する2価の有機基を示す)
【0012】
【化3】



【0013】
(但し、R3、R4、R5は水素、アルキル基、フェニル基、ビニル基、プロペニル基から選択された基、R6は2価の有機基を示す)
【0014】
【化1】



【0015】
(但し、式中R1は少なくとも4個以上の炭素を含む4価の有機基、R2は芳香族環またはケイ素を含有する2価の有機基、R3、R4、R5は水素、アルキル基、フェニル基、ビニル基、プロペニル基から選択された基、R6は2価の有機基を示す)
しかし、重合体のカルボキシル基は、その立体障害のため反応性に乏しい。また、脱水縮合剤を用いれば、上述のような問題が生じるだけでなく、比較的高価な縮合剤を大量に用いなければならないためコストが高くなってしまう。そこで、本発明者らは、少量で反応を促進することのできる触媒について鋭意検討した結果、ホスフィンオキシドが、カルボキシル基を有する重合体のアミド化反応の触媒となることを見出した。発明者らの研究の結果、ホスフィンオキシドのうち、特に、第3級ホスフィンオキシドが有効であり、下記一般式(化4)または(化5)で表される化合物は、カルボキシル基を有する重合体のアミド化反応に対して、優れた触媒として働くことがわかった。
【0016】
【化4】



【0017】
(但し、R7、R8、R9はアルキル基、フェニル基、ベンジル基、および−R10OR11のうちから、それぞれ独立に選択された基、R10は2価の有機基、R11は1価の有機基を示す)
【0018】
【化5】



【0019】
(但し、R12はアルキル基、フェニル基、ベンジル基、および−R10OR11のうちから選択された基、R10は2価の有機基、R11は1価の有機基、R13は環状基を形成する2価の有機基を示す)
これらの触媒は、縮合剤と異なり微量で反応を促進することができるため、縮合剤に比べてコストを削減することができるのみならず、得られた前駆体ワニスから除去する必要がないため、好ましい。また、本発明では、三塩化リンや塩化チオニルといったハロゲン化剤を用いる場合のように、反応生成物(ポリイミド前駆体ワニス)からハロゲンを除去する必要もない。
【0020】
本発明では、高分子量のポリアミド酸をベースポリマとして用い、これをアミド化して感光性前駆体を得るため、該前駆体を硬化させて得られる最終硬化膜の機械的特性が優れている。さらに、本発明によれば、触媒がカルボキシル基とイソシアネート基との反応を促進するため、イミド環が形成されることなく、合成後も未反応のイソシアネート化合物が残らないため、安定なワニスが得られる。
【0021】
そこで、上記目的を達成するため、本発明では、以上の新たな知見を基に、上記一般式(化1)で表される構造単位を有する感光性ポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物を加熱硬化させて得られたポリイミドからなるポリイミド膜と、導体層とを備える配線構造体が提供される。なお、上記ポリイミド前駆体は、上記一般式(化2)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、上記一般式(化3)で表されるイソシアネート化合物とを、上述の触媒の存在下で反応させれば得られる。さらに、本発明では、このポリイミドからなる層間絶縁膜が提供される。
【0022】
また、本発明では、上記一般式(化2)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、上記一般式(化3)で表されるイソシアネート化合物とを、上述の触媒の存在下で反応させれて得られたポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物を加熱硬化させて、ポリイミド膜を形成する工程を有する配線構造体の製造方法が提供される。
【0023】
上記構造単位を有する感光性ポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物を加熱硬化させて得られたポリイミド膜は、機械特性に優れるため、層間絶縁膜としてその上層に形成される導体層の応力に対する優れた強度を有する。このため、層間絶縁膜にクラックが発生することが回避され、配線構造体の信頼性が向上する。これは、感光性ポリイミド前駆体の合成において、感光基として用いられる炭素−炭素二重結合を有する基を備えるイソシアネート化合物を、ポリアミド酸のカルボキシル基と反応させる際に、触媒を用いることで、高分子量のポリアミド酸に効率よく感光基を導入することができることによる。高分子量のポリアミド酸をベースポリマとして用いるため、最終硬化膜であるポリイミド膜の機械的特性を向上できる。なお、ポリアミド酸の重量平均分子量は、良好な機械特性を得るため、2万〜10万とすることが望ましい。
【0024】
なお、ここで配線構造体とは、計算機などに用いられる薄膜多層配線基板、薄膜感熱記録ヘッド、薄膜磁気ヘッド等を指し、特に、導体層間絶縁膜として有機樹脂を用いるものを指す。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の配線構造体を図1に示した例を用いて説明する。
図1に示した配線構造体は、基板1上の所定のパターンが形成された導体層2と、上記感光性ポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物を加熱硬化させて形成されたポリイミド樹脂層3、導体層2を下部導体層として形成された上部導体層4を有する。
【0026】
基板1は、シリコンウエハ、ガラス、セラミックス等であり、目的に応じてSiO2、Ta25、In23などの金属酸化膜を設けてもよい。導体層2に用いる導体としては、金属、特に主としてAlが用いられるが、Cu、Au、Pt、Cr、Ti、Mo、W、Mnなどの金属、またはこれらから選ばれる2種以上の金属の合金あるいは多層膜であっても良い。
【0027】
上記一般式(化1)および(化2)の繰り返し単位におけるR1としては、最終的に得られるポリイミド膜の機械特性および耐熱性の点から、下記構造式群(化8)のうちの少なくともいずれかにより表わされるものが好ましいが、これらに限定されない。R1は、これらのうちの一種でもよく、異なった2種以上の基が混在してもよい。
【0028】
【化8】



【0029】
また、上記一般式(化1)および(化2)の繰り返し単位におけるR2としては、最終的に得られるポリイミド膜の機械特性および耐熱性の点から、下記構造式群(化9)、(化10)および(化11)のうちの少なくともいずれかにより表わされるものが好ましいが、これらに限定されない。R2は、これらのうちの一種でもよく、異なった2種以上の基が混在してもよい。
【0030】
【化9】



【0031】
【化10】



【0032】
【化11】



【0033】
上記一般式(化3)においてR3、R4、R5は、水素、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜3)、フェニル基、ビニル基、およびプロペニル基からそれぞれ独立に選択された基である。また、R6は、2価の有機基であるが、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
【0034】
一般式(化3)で表される炭素−炭素2重結合を有するイソシアネート化合物の好適なものの例としては、2−イソシアネートエチルメタクリレート、3−イソシアネートプロピルメタクリレート、2−イソシアネートエチルアクリレート、3−イソシアネートプロピルアクリレート、イソシアネートエチル−2,4−ペンタジエノエート等が挙げられるがこれらに限定されない。これらのなかで、2−イソシアネートエチルメタクリレート、2−イソシアネートエチルアクリレートが、感光性の点から特に好ましい。
【0035】
上記一般式(化4)において、R7、R8およびR9は、それぞれ、アルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、フェニル基、ベンジル基、および−R10OR11のうちから独立に選択された基である。また、上記一般式(化5)において、R12はアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、フェニル基、ベンジル基、および−R10OR11から選択された基である。ここで、また、R10は2価の有機基であり、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜8)が好ましい。R11は1価の有機基であり、アルキル基(好ましくは炭素数1〜8)が好ましい。
【0036】
一般式(化4)または(化5)で表される触媒の好適なものの例としては、3−メチル−1−フェニル−3−ホスホレン−1−オキシド、トリ−n−ブチルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド、トリ−n−オクチルホスフィンオキシド、ジフェニルエチルホスフィンオキシド、エチルメチルフェニルホスフィンオキシド、ジフェニルメトキシメチルホスフィンオキシド、ジフェニルモルホリノメチルホスフィンオキシド、ジフェニルベンジルホスフィンオキシド等が挙げられるがこれらに限定されない。これらのうち、ジフェニルエチルホスフィンオキシド、エチルメチルホスフィンオキシドや、下記一般式(化6)で表わされる化合物は、特に効率よくアミド化を触媒する。
【0037】
【化6】



【0038】
(ただし、Arは芳香族基を示し、R14は炭素数1〜8のアルキル基を示す)
なお、(化6)で表わされる化合物のうち、下記化学式(化7)で表わされる3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシドが、特に好ましい。
【0039】
【化7】



【0040】
本発明のポリイミド前駆体は、溶媒中、触媒の存在下で、重合体と、イソシアネート化合物とを反応させることにより得られる。この際用いられる溶媒は、重合体、イソシアネート化合物、および触媒が溶解し、これらと反応しないものであればよく、溶解性の観点から非プロトン性極性溶媒が望ましい。具体的には、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N−ベンジル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−アセチル−ε−カプロラクタム、ジメチルイミダゾリジノン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチロラクトンなどを用いることができる。これらは単独で用いても良いし、混合系として用いることも可能である。
【0041】
上述の感光性ポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物は、感光性ポリイミド前駆体を含み、さらに、必要に応じて、増感剤、光重合助剤、および/または共重合モノマを含んでもよく、また、適当な溶剤(例えば、上述の反応溶媒など)をさらに含んでもよい。必要に応じて加えられる増感剤の量は、感光性ポリイミド前駆体100重量部に対し、0.1〜30重量部が望ましい。必要に応じて加えられる光重合助剤の量は、感光性ポリイミド前駆体100重量部に対し0.1〜30重量部が望ましい。必要に応じて加えられる共重合モノマーの量は、感光性ポリイミド前駆体100重量部に対し1〜100重量部が望ましい。この様な組成であれば、感光性ポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物を用いることは、表面保護膜の形成において、フォトエッチング技術により、現像性を損なうことなくパターン化加工することができるため、特に配線構造体の層間絶縁膜に適している。
【0042】
本発明によって製造した感光性ポリイミド前駆体は実用に供しうる感光感度を達成するため、増感剤を添加して、感光性ポリイミド前駆体組成物として実用に供することが望ましい。好ましい増感剤の例としては、ミヒラケトン、ビス−4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾフェノン、3,5−ビス(ジエチルアミノベンジリデン)−N−メチル−4−ピペリドン、3,5−ビス(ジメチルアミノベンジリデン)−N−メチル−4−ピペリドン、3,5−ビス(ジエチルアミノベンジリデン)−N−エチル−4−ピペリドン、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン、リボフラビンテトラブチレート、2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、3,5−ジメチルチオキサントン、3,5−ジイソプロピルチオキサントン、1−フェニル−2−(エトキシカルボニル)オキシイミノプロパン−1−オン、ベンゾインエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンズアントロン、5−ニトロアセナフテン、2−ニトロフルオレン、アントロン、1,2−ベンズアントラキノン、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、チオキサンテン−9−オン、10−チオキサンテノン、3−アセチルインドール、2,6−ジ(p−ジメチルアミノベンザル)−4−カルボキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−ジメチルアミノベンザル)−4−ヒドロキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−ジエチルアミノベンザル)−4−カルボキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−ジエチルアミノベンザル)−4−ヒドロキシシクロヘキサノン、4,6−ジメチル−7−エチルアミノクマリン、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、7−ジエチルアミノ−3−(1−メチルベンゾイミダゾリル)クマリン、3−(2−ベンゾイミダゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンゾオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)キノリン、4−(p−ジメチルアミノスチリル)キノリン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)−3,3−ジメチル−3H−インドール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
これらのうち、ミヒラケトン、ビス−4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノ)クマリン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、または、2,4−ジイソプロピルチオキサントンを用いることが、特に好ましい。
【0044】
増感剤の好適な配合割合は、一般式(化1)で表される感光性ポリイミド前駆体100重量部に対し、0.1〜30重量部が好ましく、更に好ましくは0.3〜20重量部の範囲である。この範囲を逸脱すると増感効果が得られなかったり、現像性に好ましくない影響を及ぼすことがある。また、増感剤として1種類の化合物を用いても良いし、数種を混合して用いてもよい。
【0045】
本発明で用いられる感光性ポリイミド前駆体を含む感光性ポリイミド前駆体組成物には、実用に供しうる感光感度を達成するため、光重合助剤を添加してもよい。光重合助剤には、4−ジエチルアミノエチルベンゾエート、4−ジメチルアミノエチルベンゾエート、4−ジエチルアミノプロピルベンゾエート、4−ジメチルアミノプロピルベンゾエート、4−ジメチルアミノイソアミルベンゾエート、N−フェニルグリシン、N−メチル−N−フェニルグリシン、N−(4−シアノフェニル)グリシン、4−ジメチルアミノベンゾニトリル、エチレングリコールジチオグリコレート、エチレングリコールジ(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパンチオグリコレート、トリメチロールプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールエタントリ(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)、チオグリコール酸、α−メルカプトプロピオン酸、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシメトキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシニトロベンゾエート、t−ブチルペルオキシエチルベンゾエート、フェニルイソプロピルペルオキシベンゾエート、ジt−ブチルジペルオキシイソフタレート、トリt−ブチルトリペルオキシトリメリテート、トリt−ブチルトリペルオキシトリメシテート、テトラt−ブチルテトラペルオキシピロメリテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−アミルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,6−ジ(p−アジドベンザル)−4−ヒドロキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−アジドベンザル)−4−カルボキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−アジドベンザル)−4−メトキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−アジドベンザル)−4−ヒドロキシメチルシクロヘキサノン、3,5−ジ(p−アジドベンザル)−1−メチル−4−ピペリドン、3,5−ジ(p−アジドベンザル)−4−ピペリドン、3,5−ジ(p−アジドベンザル)−N−アセチル−4−ピペリドン、3,5−ジ(p−アジドベンザル)−N−メトキシカルボニル−4−ピペリドン、2,6−ジ(p−アジドベンザル)−4−ヒドロキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(m−アジドベンザル)−4−カルボキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(m−アジドベンザル)−4−メトキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(m−アジドベンザル)−4−ヒドロキシメチルシクロヘキサノン、3,5−ジ(m−アジドベンザル)−N−メチル−4−ピペリドン、3,5−ジ(m−アジドベンザル)−4−ピペリドン、3,5−ジ(m−アジドベンザル)−N−アセチル−4−ピペリドン、3,5−ジ(m−アジドベンザル)−N−メトキシカルボニル−4−ピペリドン、2,6−ジ(p−アジドシンナミリデン)−4−ヒドロキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−アジドシンナミリデン)−4−カルボキシシクロヘキサノン、2,6−ジ(p−アジドシンナミリデン)−4−ヒドロキシメチルシクロヘキサノン、3,5−ジ(p−アジドシンナミリデン)−N−メチル−4−ピペリドン、4,4’−ジアジドカルコン、3,3’−ジアジドカルコン、3,4’−ジアジドカルコン、4,3’−ジアジドカルコン、1,3−ジフェニル−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−アセチル)オキシム、1,3−ジフェニル−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−n−プロピルカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニル−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−フェニルオキシカルボニル)オキシム、1,3−ビス(p−メチルフェニル)−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、1,3−ビス(p−メトキシフェニル)−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−(p−メトキシフェニル)−3−(p−ニトロフェニル)−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−フェニルオキシカルボニル)オキシム等を用いることができるが、これらに限定されない。
【0046】
これらのうち、特に、4−ジエチルアミノエチルベンゾエート、4−ジメチルアミノエチルベンゾエート、4−ジエチルアミノプロピルベンゾエート、4−ジメチルアミノプロピルベンゾエート、4−ジメチルアミノイソアミルベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート、または、ペンタエリスリトールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)を用いることが好ましい。
【0047】
本発明において用いる光重合助剤の好適な配合割合は、一般式(化1)で表されるポリマー100重量部に対し0.1〜30重量部が好ましく、更に好ましくは0.3〜20重量部の範囲である。この範囲を逸脱すると目的とする増感効果が得られなかったり、現像性に好ましくない影響をおよぼすことがある。また、1種類の化合物を用いても良いし、数種を混合して用いてもよい。
【0048】
本発明によって製造した感光性ポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物には、実用に供しうる感光感度を達成するため、共重合モノマーを添加してもよい。共重合モノマーは、炭素−炭素二重結合を有する化合物であり光重合反応を容易にするものである。共重合モノマーの好ましいものの例としては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0049】
これらのうち、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、または、ペンタエリスリトールトリアクリレートを用いることが、特に好ましい。
【0050】
上記共重合モノマーの好適な配合割合は、一般式(化1)で表されるポリマー100重量部に対し1〜100重量部が好ましく、更に好ましくは3〜50重量部の範囲である。この範囲を逸脱すると目的とする効果が得られなかったり、現像性に好ましくない影響をおよぼすことがある。また、1種類の化合物を用いても良いし、数種を混合して用いてもよい。
【0051】
本発明で用いられる感光性ポリイミド前駆体組成物は、所望のパターンのポリイミド膜を形成するために、適当な有機溶媒に溶解した溶液(ワニス)状態であってもよい。この場合に用いる溶媒としては、溶解性の観点から非プロトン性極性溶媒が望ましく、具体的にはN−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N−ベンジル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−アセチル−ε−カプロラクタム、ジメチルイミダゾリジノン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチロラクトンなどが好適な例としてあげられる。これらは単独で用いても良いし、混合系として用いることも可能である。また、塗布性を改善するために、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤をポリマーの溶解に悪影響を及ぼさない範囲で混合しても差し支えない。
【0052】
本発明で用いられる感光性ポリイミド前駆体は、乾燥塗膜または加熱硬化後のポリイミド被膜と支持基板の接着性を向上させるため、適宜支持基板を接着助剤で処理することもできる。
【0053】
本発明の感光性ポリイミド前駆体を用いれば、通常のフォトリソグラフィー技術でパターン加工し、加熱硬化することにより、所望のパターンのポリイミド膜を得ることができる。支持基板への本組成物の塗布には、スピンナーを用いた回転塗布、浸漬、噴霧印刷、スクリーン印刷などの手段が可能であり、適宜選択することが出来る。塗布膜厚は、塗布条件、本組成物の固形分濃度等によって調節可能である。
【0054】
この前駆体組成物を塗布した後、乾燥すると、支持基板上に本発明によるポリイミド前駆体を含む組成物の塗膜が形成される。この塗膜に、フォトマスクを介して紫外線を照射し、次いで未露光部を現像液で溶解除去することにより、所望のレリーフ・パターンが得られる。
【0055】
現像液としては、上記組成物の良溶媒が用いられ、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N−ベンジル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−アセチル−ε−カプロラクタム、ジメチルイミダゾリジノン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチロラクトンなどを単独、あるいはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、トルエン、キシレン、1,2−ジメトキシエタン、2−メトキシエタノール、1−アセトキシ−2−メトキシエタン、水等の貧溶媒との混合液として用いることができる。
【0056】
つぎに、現像によって形成したレリーフ・パターンをリンス液により洗浄して、現像溶剤を除去する。リンス液には、現像液との混和性の良いメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、トルエン、キシレン、1,2−ジメトキシエタン、2−メトキシエタノール、1−アセトキシ−2−メトキシエタン、水などが用いられる。
【0057】
上記の処理によって得られたレリーフ・パターンのポリマは、ポリイミドの前駆体からなり、150℃から450℃までの範囲から選ばれた加熱温度で処理することにより、高耐熱性を有し、機械特性の優れたポリイミドのパターンが得られる。
【0058】
以上詳述したように、本発明によれば、あらかじめ重合した高分子量のポリアミド酸に感光基を導入することにより得られた高分子量のポリイミド前駆体を用いるため、最終的に得られたポリイミド膜の機械的特性が優れている。従って、上層に形成する導体層の応力によっても、ポリイミド膜にクラックが発生しないため、このポリイミド膜を備える配線構造体の信頼性を向上させることができた。
【0059】
また、本発明の感光性ポリイミド前駆体の製造方法によれば、触媒がカルボキシル基とイソシアネート基との反応を促進するため、イミド環が形成されることなく、製造後も未反応のイソシアネート化合物が残らないため、ポリマ溶液(ワニス)を、保存安定性の優れたものにすることができた。従って、本発明によれば、配線構造体の製造におけるポリイミド膜の形成において、安定な材料供給を行なうことができる。
【0060】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
(合成例1)
窒素気流下で、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル10g(0.05モル)をN−メチル−2−ピロリドンとN,N−ジメチルアセトアミドの1:1混合液119gに溶解し、アミン溶液を調合した。次に、この溶液を氷冷によって約15℃の温度に保ちながら、撹拌しつつピロメリット酸二無水物10.9g(0.05モル)を加えた。加え終えてから、更に15℃で5時間反応させ、ポリアミド酸溶液を得た。
【0061】
このポリアミド酸溶液74g(ポリアミド酸0.027モル)に、t−ブチルカテコール0.04gと3−メチル−1−フェニル−3−ホスホレン−1−オキシド0.02gとを入れ、60℃で撹拌し溶解させた。5分間撹拌後、イソシアネートエチルメタクリレート6.9g(0.053モル)を反応溶液に滴下し、60℃で2時間反応させた。得られたポリマ溶液(ワニス)の濃度は15重量%であり、室温で一週間後もゲル化すること無く安定であった。また、このポリマの重量平均分子量をGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定したところ、ポリスチレン換算で44000であった。さらに、プロトンNMR(核磁気共鳴)スペクトルで確認したところ、ポリアミド酸中の全カルボキシル基の90%に感光基が結合されていた。
【0062】
この溶液に対し、3,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)−1−メチル−4−アザシクロヘキサノン100mgと4−ジエチルアミノエチルベンゾエート200mgを加えて、5μm孔のフィルタを用いて加圧濾過した。これにより、感光性ポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物溶液(以下、組成物1と呼ぶ)を得た。
【0063】
つぎに、組成物1感光性および最終硬化膜の膜特性について検討した。まず、得られた濾液(組成物1)を、スピンナを用いてシリコンウエハ上に回転塗布し、ついで、90℃で30分間乾燥して20μm厚の塗膜を得た。この塗膜を縞模様のパターンを有するフォトマスクで未着被覆し、500Wの高圧水銀灯で紫外線照射した。露光後、N−メチル−2−ピロリドン4容、水1容からなる現像液で現像し、ついで、イソプロピルアルコールでリンスしてレリーフパターンを得た。現像後、膜厚の露光量依存性を測定し、感度を求めたところ、感度200mJ/cm2であった。なお、現像後膜厚が塗布膜厚の半分になる露光量を感度とした。
【0064】
感度の4倍の露光量により、シャープな端面を持つ5μm幅のレリーフパターンが得られた。このパターンを200℃30分間、400℃30分間加熱して最終的にポリイミドのパターンを得た。これとは別に、パターンを形成しないことのほかは上記と全く同一の処理をした厚さ10μmのポリイミドフィルムを作成し、伸び特性を測定したところ、伸びは10%と良好であった。
【0065】
(合成例2)
窒素気流下で、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル9.5g(0.0475モル)と1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン0.62g(0.0025モル)とを、N−メチル−2−ピロリドンとN,N−ジメチルアセトアミドとの1:1混合液141gに溶解し、アミン溶液を調合した。つぎに、この溶液を氷冷によって約15℃の温度に保ちながら、撹拌しつつ3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物14.7g(0.05モル)を加えた。加え終えてから、更に15℃で5時間反応させ、ポリアミド酸溶液を得た。
【0066】
このポリアミド酸溶液70g(ポリアミド酸0.021モル)に、t−ブチルカテコール0.04gと3−メチル−1−フェニル−3−ホスホレン−1−オキシド0.02gとを入れ、60℃で撹拌し溶解させた。5分間撹拌後、反応溶液にイソシアネートエチルメタクリレート5.5g(0.042モル)を滴下し、60℃で2時間反応させた。得られたポリマ溶液(ワニス)の濃度は15%であり、室温で一週間後もゲル化すること無く安定であった。また、このポリマの重量平均分子量をGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定したところ、ポリスチレン換算で39000であった。さらに、プロトンNMRスペクトルで確認したところ、ポリアミド酸中の全カルボキシルの92%に感光基が結合されていた。
【0067】
この溶液に、ミヒラケトン100mgと1,3−ジフェニル−1,2,3−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム200mgとを加えて、5μm孔のフィルタを用いて加圧濾過した。これにより、感光性ポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物溶液(以下、組成物2と呼ぶ)が得られた。
【0068】
つぎに、組成物1感光性および最終硬化膜の膜特性について検討した。まず、得られた濾液(組成物2)をスピンナを用いてシリコンウエハ上に回転塗布し、ついで90℃で30分間乾燥して20μm厚の塗膜を得た。この塗膜を縞模様のパターンを有するフォトマスクで未着被覆し、500Wの高圧水銀灯で紫外線照射した。露光後、N−メチル−2−ピロリドン4容、水1容から成る現像液で現像し、ついでイソプロピルアルコールでリンスして、レリーフパターンを得た。現像後、膜厚の露光量依存性を測定し、感度を求めたところ、150mJ/cm2であった。なお、現像後膜厚が塗布膜厚の半分になる露光量を感度とした。
【0069】
感度の4倍の露光量により、シャープな端面を持つ5μm幅のレリーフパターンが得られた。このパターンを200℃30分間、400℃30分間加熱して最終的にポリイミドのパターンを得た。これとは別に、パターンを形成しないことのほかは上記と全く同一の処理をした厚さ10μmのポリイミドフィルムを作成し、伸び特性を測定したところ伸びは10%と良好であった。
【0070】
(合成例3〜12)
表1、表2に示す酸二無水物、ジアミン、イソシアネート、触媒を用い、合成例3および8は合成例1と同様にして、合成例4〜7および9〜12は合成例2と同様にして、それぞれ、感光性ポリイミド前駆体を合成し、得られた感光性ポリイミド前駆体を含む溶液(ワニス)の安定性を観察した。結果を表1および表2に示す。なお、表1および表2において、得られたポリマ溶液(ワニス)の安定性は、室温で1週間放置してもゲル化しないものを良好とした。ここで用いたワニスの濃度は15%であり、溶剤はN−メチル−2−ピロリドンとN,N−ジメチルアセトアミドの1:1混合液を用いた。
【0071】
【表1】



【0072】
【表2】



【0073】
さらに、得られた感光性ポリイミド前駆体ワニスに、表3および表4に示す増感剤、光重合助剤、共重合モノマを添加して、ポリイミド前駆体組成物(組成物3〜12)を調製し、このポリイミド前駆体組成物を用い、合成例1と同様にしてポリイミド膜を形成し、感度、膜の伸び、引っ張り強度特性を検討した結果を、表3および表4に示す。成膜、評価条件は合成例1、2で用いたのと同様の条件を用い、膜厚は10〜20μmに設定した。なお、表3および表4において、( )内に示した各成分の量は、感光性ポリイミド前駆体の量を100重量部としたときの重量部である。この表3および表4では、感度は、測定波長365nmで300mJ/cm2以下のものを良好とした。最終ポリイミドの伸びは5%以上を良好とした。引っ張り強度は80MPa以上を良好とした。
【0074】
【表3】



【0075】
【表4】



【0076】
(実施例1)
本実施例1では、薄膜多層基板の例として、図3に示すコンピュータ用の薄膜多層基板を作製した。
【0077】
(1)まず、セラミックス14の内部にタングステン配線15を備えるセラミックス基板19(100mm角、1mm厚)を用意し、このタングステン配線15の上部および下部にニッケルメッキを行い、ニッケルの上部電極部分16および下部電極17を形成し、下部電極17に金メッキを行い、金層18を形成した。さらに、基板19の上部電極16を形成した側に、アルミニウムを真空蒸着により堆積させ、フォトエッチング技術により所定のパターンを形成し、2μm厚の第1の導体層20を得た。
【0078】
(2)次に、基板の第1の導体層20の形成された側に、合成例1で得られた組成物1をスピンナで回転塗布し、次いで90℃で30分間乾燥して10μm厚の感光性被膜を得た。この被膜を所望のパターンを有するフォトマスクで未着被覆し、500Wの高圧水銀灯で紫外線照射した。露光後、N−メチル−2−ピロリドン4容、水1容から成る現像液で現像し、ついでイソプロピルアルコールでリンスした。これにより、感光性被膜の内、光のあたらなかった所定の部分の被膜が除去されて、所望のパターンのポリイミド前駆体膜が得られた。このパターンを200℃で30分間、次いで350℃で30分間窒素雰囲気中で加熱硬化させて、所望のスルーホール用の貫通孔(径70μm)を形成した。これにより所望のパターンのポリイミド層からなる第1の層間絶縁膜21を形成した。得られたポリイミド層の膜厚は5μmであった。
【0079】
(3)形成された第1の層間絶縁膜21の貫通孔の底に露出した第1の導体層のアルミニウム表面には酸化物が形成されているので、スルファミン酸水溶液で処理した後にアルミニウムのエッチング液で短時間処理して、新鮮なアルミニウム表面を得た。つぎに、基板を乾燥したのち、アルミニウムを真空蒸着により堆積させ、フォトエッチング技術により所定のパターンを形成し、2μm厚の第2の導体層22を得た。
【0080】
(4)第2の導体層22の上に、合成例1により得られた組成物1をスピンナで回転塗布し、上述の(2)と同様の工程で、厚さ5μmの所望のパターンのポリイミド層からなる第2の層間絶縁膜23を得た。
【0081】
(5)さらに、上述の(3)および940を繰り返すことにより、第3の導体層24と、第3の層間絶縁膜25を得た。
【0082】
(6)つぎに、層間絶縁膜25上に真空蒸着により膜厚0.07μmのクロム、膜厚0.7μmのニッケル−銅合金を順次堆積させ、フォトエッチング技術により不要部分を除去して、層間絶縁膜25ののスルーホールの貫通孔部分に、クロム/ニッケル−銅層26を形成し、この上にさらにメッキによりニッケル層および金層を順次形成して、ニッケル/金複合膜27からなる上部電極を形成した。
【0083】
本実施例の1により得られた薄膜多層基板は、組成物1のポリイミド前駆体を加熱硬化させて得られるポリイミド層を、層間絶縁膜として備えている。この配線構造体について、−55〜150℃の熱衝撃サイクル試験(それぞれの温度雰囲気中に10分間放置)を100サイクル行ったが、層間絶縁膜にクラック発生がなく、信頼性の高い配線構造体の製品を得ることができた。
【0084】
(実施例2〜12)
組成物1の代わりに、組成物2〜12を用い、実施例1と同様に薄膜多層基板を作製した。各実施例2〜12により得られる薄膜多層基板は、それぞれ組成物2〜12のポリイミド前駆体を加熱硬化させて得られるポリイミド層を、層間絶縁膜として備えている。
【0085】
これらの配線構造体について、−55〜150℃の熱衝撃サイクル試験(それぞれの温度雰囲気中に10分間放置)を100サイクル行ったが、層間絶縁膜にクラック発生がなく、信頼性の高い配線構造体の製品を得ることができた。
【0086】
(実施例13)
本発明の二層配線構造体の例として、本実施例では図2に示すリニアICを作製した。
【0087】
まず、コレクタ6、ベース7およびエミッタ8の各領域が作り込まれ、これら各領域6、7、8の形成されている面(上面とする)にSiO2層9を備えるシリコンウェハ5を用意した。このシリコンウェハ5のコレクタ6、ベース18、およぴエミッタ19各領域と外部との導通を図るために、SiO2層9にスルーホール12のための貰通孔をあけた。
【0088】
つぎに、このシリコンウェハ5の上面に、アルミニウムを真空蒸着により堆積させ、フオトエッチング技術により所定のパターンを形成して、2μmの厚さの第1の導体層10を得た。さらに、第1導体層10を形成したシリコンウェハ5の表面に、第1導体層10の除去部分に露出しているSiO2層9と、上に形成するポリイミド層との接着性を碓保するため、1%のアルミニウムモノエチルアセテートジイソプロピレート溶液を塗布し、酸素雰囲気中で350℃で熱処理した。この第1導体層10の形成されたシリコンウェハ5表面に、合成例1により得られた組成物1をスピンナで回転塗布し、次いで90℃で30分間乾燥して感光性被膜を得た。この被膜を所望のパターンを有するフォトマスクで未、着被覆し、500Wの高圧水銀灯で紫外線照射した。露光後、N−メチル−2−ピロリドン4容、水1容から成る現像液で現像し、ついでイソプロピルアルコールでリンスした。これにより、感光性被膜の内、光のあたらなかった所定の部分の被膜が除去されて、所望のパターンのポリイミド前駆体膜が得られた。このパターンを200℃で30分間、次いで350℃で30分間窒素雰囲気中で加熱硬化させて、所望のスルーホール用の貫通孔51を形成した。これにより所望のパターンのポリイミド層からなる層間絶縁膜11を形成した。得られたポリイミド層の膜厚は2.5μmであった。
【0089】
形成された層間絶縁膜11の貫通孔51の底に露出した第1の導体層のアルミニウム表面には、酸化物が形成されているので、スルファミン酸水溶液で処理した後にアルミニウムのエッチング液で短時間処理して、新鮮なアルミニウム表面を得た。つぎに、基板を乾燥したのち、アルミニウムを真空蒸着により堆積させ、フォトエッチング技術を用いて所定の領域を除去し、所定のパターンの第2の導体層13を得た。これにより、2層構造を有するリニアICが得られた。
【0090】
得られたリニアICは、組成物1のポリイミド前駆体を加熱硬化させて得られるポリイミド層を、層間絶縁膜11として備えている。このリニアICについて、−55〜150℃の熱衝撃サイクル試験(それぞれの温度雰囲気中に10分間放置)を100サイクル行ったが、層間絶縁膜にクラック発生がなく、信頼性の高いリニアICの製品を得ることができた。
【0091】
(実施例14〜24)
組成物1の代わりに、組成物2〜12を用い、実施例13と同様にしてリニアICを作製した。各実施例14〜24により得られるリニアICは、それぞれ組成物2〜12のポリイミド前駆体を加熱硬化させて得られるポリイミド層を、層間絶縁膜として備えている。
【0092】
これらのリニアICについて、−55〜150℃の熱衝撃サイクル試験(それぞれの温度雰囲気中に10分間放置)を100サイクル行ったが、層間絶縁膜にクラック発生がなく、信頼性の高いリニアICの製品を得ることができた。
【0093】
(実施例25)
本実施例では、図4に示す薄膜感熱記録ヘツドを作製し、評価した。
(1)まず、グレーズドアルミナ基板28上にエッチングバリアとして約100nmのTa2O5層29を設け、スパッタリング法によって、クロムとSiを同時に堆積させて約50nmのCr−Si層30を、クロムを堆積させて約10nmのCr層31を、アルミニウムを堆積させて約2μmでのAl層32を、それぞれ形成した。さらに、ネガ型フォトレジストOMR−83(束京応化(株)製)を用いて、フォトプロセスにより所定のレジストパターンを得た。
【0094】
形成されたAl層32をリン酸、硝酸、酢酸、およぴ水からなるエッチング液でAl層32を、Cr層31を硝酸第2セリウムアンモニウム水溶液で、Cr−Si層30をフッ化水素およぴ硝酸の混酸で、順次選択エツチングした。その後、レジスト剥離液S−502(束京応化(株)製)を用いてレジストを除去し、所定のリンス液でリンスして、配線幅90μm、配線間隔35μmの第1のアルミニウム配線パターン32を得た。
【0095】
(2)つぎに、別のレジストマスクを(1)と同様にして形成し、(1)と同様にしてアルミニウムとクロムとをエツチングし、90μm×250μmの矩形のCr−Si抵抗体パターン30を形成した。
【0096】
(3)形成した抵抗体30の上に、マスクスパツタリング法によって、2μmの膜厚のSiO2層およぴ3μmの膜厚のTa25層をパターン形成して抵抗体保護層33を得た。
【0097】
(4)つぎに、(1)〜(3)により得られた積層体の表面に、合成例1により得られた組成物1をスピンナで回転塗布し、次いで90℃で30分間乾燥して感光性被膜を得た。この被膜を所望のパターンを有するフォトマスクで密着被覆し、500Wの高圧水銀灯で紫外線照射した。露光後、N−メチル−2−ピロリドン4容、水1容から成る現像液で現像し、ついでイソプロピルアルコールでリンスした。これにより、感光性被膜の内、光のあたらなかった所定の部分の被膜が除去されて、所望のパターンのポリイミド前駆体膜が得られた。このパターンを200℃で30分間、次いで350℃で30分間窒素雰囲気中で加熱硬化させて、所定の貫通孔パターンを設けた。これにより所望のパターンのポリイミド層からなる厚さ2.0μmの層間絶縁膜34を形成した。
【0098】
(5)貫通孔の形成されたポリイミド膜34上に、スパッタリング法によって、約50nmの膜厚のCr膜、約1.2μmの膜厚のCuを順次体積して、Cr/Cu膜35を形成した後、ポリイミド膜34の貫通孔部分以外の表面を覆うように、フォトレジストパターンを形成した。この上に、電気メッキにより約6μmの膜厚のCu層36と、約2μmの膜厚のPb層と、約3μmの膜厚のSn層を順次形成したのち、レジストパターンを除去し、Cr/Cu膜35のCu層36に覆われていない部分のCuおよぴCrを順次エッチングで避択除去した。めっきされたPbとSnとを、380℃の熱処理により溶融させてはんだ37とした。これにより、第2の導体層が形成された。
【0099】
本実施例により得られた薄膜感熱記録ヘツドは、第1の導体層と第2の導体層とを絶縁する層間絶縁層として、ポリイミド前駆体組成物1を加熱硬化して得られるポリイミドの膜34を備えている。この薄膜感熱記録へッドについて、−55〜150℃の熱衝撃サイクル試験(それぞれの温度雰囲気中に10分間放置)を100サイクル行ったが、層間絶縁膜にクラック発生がなく、信頼性の高い薄膜感熱記録へッドの製品を得ることができた。
【0100】
(実施例26〜36)
組成物1の代わりに、組成物2〜12を用いて、実施例25と同様に薄膜感熱記録へッドを作製した。各実施例26〜36により得られる薄膜感熱記録へッドは、それぞれ組成物2〜12のポリイミド前駆体を加熱硬化させて得られるポリイミド層を、層間絶縁膜として備えている。
【0101】
これらの薄膜感熱記録へッドについて、−55〜150℃の熱衝撃サイクル試験(それぞれの温度雰囲気中に10分間放置)を100サイクル行ったが、層間絶縁膜にクラック発生がなく、信頼性の高い薄膜感熱記録へッドの製品を得ることができた。
【0102】
(実施例37)
本実施例では、図5に示す薄膜磁気ヘッドを作製し、評価した。
(1)セラミツク基板38の表面にAl23をスパッタリングし、平坦な第1の無機絶縁層39を形成した。この無機絶縁層39上に、スパッタリング法により2μmの厚さにパーマロイを堆積し、フォトエッチング技術を用いてパターン形成して、下部磁性体40を得た。この下部磁性体40上に、ギャップスペーサとして、スパッタリングにより1μmの厚さのAl23層を形成し、フォトエッチング技術によりパターン化して、第2の無機絶縁層41を得た。
【0103】
(2)この第2の無機絶縁層41上に、合成例1により得られた組成物1をスピンナで回転塗布し、次いで90℃で30分間乾燥して感光性被膜を得た。この被膜を所望のパターンを有するフォトマスクで未、着被覆し、500Wの高圧水銀灯で紫外線照射した。露光後、N−メチル−2−ピロリドン4容、水1容から成る現像液で現像し、ついでイソプロピルアルコールでリンスした。これにより、感光性被膜の内、光のあたらなかった所定の部分の被膜が除去されて、所望のパターンのポリイミド前駆体膜が得られた。このパターンを200℃で30分間、次いで350℃で30分間窒素雰囲気中で加熱硬化させて、所定のパターンを設けた。これにより所望のパターンのポリイミド層からなる厚さ3.0μmの下部層間絶縁膜42を形成した。
【0104】
(3)下部層間絶縁膜42上に、真空蒸着法により、10nmの厚さにCrを堆積させ、さらに1.5μmの厚さにCuを堆積させ、10nmの厚さにCrを堆積させ、フォトエッチング技術によりパターン化して、導体コイル43を得た。
【0105】
(4)導体コイル43の載置された下剖絶縁層42上に、(2)と同様にしてポリイミド膜のパターンを形成し、上剖絶縁層44を得た。
【0106】
(5)さらに、上剖絶縁層44上に、スパッタリング法により、2μmの厚さにパーマロイを堆積させ、フォトエッチング技術によりパターン形成して、上部磁性体45を得た。なお、端子のメタライズにつては図5に図示していないが、Cuとはんだにより構成されている。これは、フォトレジスト膜をあらかじめ設け、必要部分にのみめっき技術によりCu、Pb、Snの層を順次形成したのち、PbとSnとを熱処理により溶融させてはんだとすることにより行われる。
【0107】
以上によリ1層7夕一ンの磁気ヘッド基板が完成したので、基板を切断して素子を切り出し、基板を、下部磁性体40、Al23層41、上部磁性体45の3層が表れる端面46まで研磨して、薄膜磁気ヘッドを得た。本実施例により作製された薄膜磁気ヘッドでは、ポリイミド膜のクラック、欠陥等ば見られず、すべての配線に良好な電気的導通が得られた。
【0108】
この薄膜磁気ヘッドについて、−55〜150℃の熱衝撃サイクル試験(それぞれの温度雰囲気中に10分間放置)を100サイクル行ったが、層間絶縁膜にクラック発生がなく、信頼性の高い薄膜磁気ヘッドの製品を得ることができた。
【0109】
(実施例38〜48)
組成物1の代わりに、組成物2〜12を用いて、実施例38と同様に薄膜磁気ヘッドを作製した。各実施例38〜48により得られる薄膜磁気ヘッドは、それぞれ組成物2〜12のポリイミド前駆体を加熱硬化させて得られるポリイミド層を、層間絶縁膜として備えている。
【0110】
これらの薄膜磁気ヘッドについて、−55〜150℃の熱衝撃サイクル試験(それぞれの温度雰囲気中に10分間放置)を100サイクル行ったが、層間絶縁膜にクラック発生がなく、信頼性の高い薄薄膜磁気ヘッドの製品を得ることができた。
【0111】
(比較例1)
窒素気流下に、γ−ブチロラクトン50容量部に溶けたベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物32.2重量部(濃度64.4wt/vol%)に対し、ヒドロキシエチルメタクリレート26重量部および1、4−ジアザビシクロ(2、2、2)オクタンを加え、16時間反応させた後、N−メチル−2−ピロリドン50容量部に溶けた4、4’−ジアミノジフェニルエーテル16重量部(濃度32.0wt/vol%)の溶液を加えた。その後、反応溶液に、γ−ブチロラクトン100容量部に溶けたジシクロヘキシルカルボジイミド36重量部の溶液(濃度36.0wt/vol%)を滴下し、室温で1夜放置した後、反応溶液から沈殿物を濾別した。
【0112】
得られた濾液に対し、ミヒラケトン100mgと1、3−ジフェニル−1、2、3−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム200mgを加えて、5μm孔のフィルタを用いて加圧濾過して、感光性ポリイミド前駆体組成物溶液を得た。
【0113】
この感光性ポリイミド前駆体組成物溶液を用いて、実施例1と同様にして(2)までの工程でポリイミドの第1の層間絶縁膜を形成した。次に実施例1(3)の工程と同様にしてアルミニウム膜を形成し、パターン化して第2の導体層を形成しようとしたが、アルミニウムのパターン化したところ、応力の集中する角基板の角の部分で、アルミニウムのパターンの応力により、ポリイミドにクラックが発生し、薄膜多層基板を作製することはできなかった。
【0114】
(比較例2)
比較例1で得られた感光性ポリイミド前駆体組成物溶液を用い、実施例13と同様にしてリニアICを作製した。このリニアICについて、−55〜150℃の熱衝撃サイクル試験(それぞれの温度雰囲気中に10分間放置)を50サイクル行ったところ、層間絶縁膜にクラック発生し、信頼性の低い使用に耐えない製品であった。
【0115】
(比較例3)
比較例1で得られた感光性ポリイミド前駆体組成物溶液を用い、実施例25と同様にして薄膜感熱記録へッドを作製しようとした。しかし、実施例25と同様の工程(5)において、ポリイミド層間絶縁膜上に、CuとCr膜を形成してパターン化するために、不要なCuとCr膜を除去したところ、ポリイミド層間絶縁膜にクラックが発生した。これは、CuとCr膜の応力に起因し、ポリイミド層間絶縁膜の機械強度が低いため、それに耐えきれず、クラックが発生したにクラックが発生したものと考えられる。このため、本比較例では、薄膜感熱記録へッドを作製することはできなかった。
【0116】
(比較例4)
比較例1で得られた感光性ポリイミド前駆体組成物溶液を用い、実施例38と同様にして薄膜磁気ヘッドを作製しようとした。しかし、実施例38と同様の工程(3)でポリイミド層間絶縁膜上に、CuとCr膜を形成してパターン化するために、不要なCuとCr膜を除去したところ、ポリイミド層間絶縁膜にクラックが発生した。これは、CuとCr膜の応力に起因し、ポリイミド層間絶縁膜の機械強度が低いため、それに耐えきれず、クラックが発生したにクラックが発生したものと考えられる。このため、本比較例では、薄膜磁気ヘッドを作製することはできなかった。
【0117】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明では、高分子量のポリアミド酸に感光基を導入して得られる感光性ポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物を用いてポリイミド膜を形成するため、機械特性のよい最終硬化膜が得られる。このため、本発明のポリイミド膜からなる層間絶縁膜は、機械的特性に優れており、このポリイミド膜を備える本発明の配線構造体は、上層に形成する導体層の応力によっても層間絶縁膜にクラックが発生せず、信頼性が高い。また、本発明によれば、ポリイミド前駆体組成物(ワニス)の保存安定性が高いため、配線構造体の製造における層間絶縁膜の形成に、安定に材料を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】配線構造体の断面図である。
【図2】リニアICの断面図である。
【図3】薄膜多層配線基板の断面図である。
【図4】薄膜感熱記録へッドの断面図である。
【図5】薄膜磁気ヘッドの断面図である。
【符号の説明】
1…基板、2…導体層、3…ポリイミド樹脂層、4…上部導体層、5…シリコンウエハ、6…コレクタ、7…ベース、8…エミッタ、9…SiO2層、10…第1層Al配線、11…ポリイミド膜、12…貫通孔、13…第2層Al配線、14…セラミック層、15…タングステン配線、16…ニッケル層、17…ニッケル層、18…金層、19…セラミック基板、20…Al導体層、21…第1の層間絶縁層、22…第2の導体層、23…第2の層間絶縁層、24…第3の導体層、25…第3の層間絶縁層、26…クロム/ニッケル−銅層、27…ニツケル/金複合膜、28…グレーズドアルミナ基板、29…Ta2O5層、30…Cr−Si層、31…Cr層、32…第1のAl層、33…抵抗体保護層、34…ポリイミド層、35…第2の配線導体(Cr/Cu)層、36…Cu、37…ばんだ、38…セラミック基板、39…無機絶縁膜、40…下部磁性体、41…Al2O3、42…下部ポリイミド膜パターン、43…導体コイル、44…上部ポリイミド膜パターン、45…上部磁性体、46…端面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体層と、層間絶縁膜であるポリイミド膜とを備える配線構造体において、
上記ポリイミド膜は、下記一般式(化1)で表される構造単位を有する感光性ポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物を加熱硬化させて得られたポリイミドからなり、
【化1】



(ただし、式中、Rは少なくとも4個以上の炭素を含む4価の有機基、Rは芳香族環またはケイ素を含有する2価の有機基、R、RおよびRは、それぞれ、水素、アルキル基、フェニル基、ビニル基およびプロペニル基から独立に選択された基、Rは2価の有機基を示す)
上記ポリイミド前駆体は、
下記一般式(化2)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、
【化2】



(ただし、式中、Rは少なくとも4個以上の炭素を含む4価の有機基、Rは芳香族環またはケイ素を含有する2価の有機基を示す)
下記一般式(化3)で表されるイソシアネート化合物とを、
【化3】



(ただし、R、RおよびRは、それぞれ、水素、アルキル基、フェニル基、ビニル基およびプロペニル基から独立に選択された基、Rは2価の有機基を示す)
触媒の存在下で反応させて得られたものであり、
上記触媒は、下記一般式(化4)で表わされるホスフィンオキシド化合物を含むことを特徴とする配線構造体。
【化4】



(ただし、R、R、およびRは、それぞれ、アルキル基、フェニル基、ベンジル基、および−R10−O−R11から独立に選択された基を示し、R10は2価の有機基、R11は1価の有機基を示す)
【請求項2】
導体層と、層間絶縁膜であるポリイミド膜とを備える薄膜多層配線基板において、
上記ポリイミド膜は、下記一般式(化1)で表される構造単位を有する感光性ポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物を加熱硬化させて得られたポリイミドからなり、
【化1】



(ただし、式中、Rは少なくとも4個以上の炭素を含む4価の有機基、Rは芳香族環またはケイ素を含有する2価の有機基、R、RおよびRは、それぞれ、水素、アルキル基、フェニル基、ビニル基およびプロペニル基から独立に選択された基、Rは2価の有機基を示す)
上記ポリイミド前駆体は、
下記一般式(化2)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、
【化2】



(ただし、式中、Rは少なくとも4個以上の炭素を含む4価の有機基、Rは芳香族環またはケイ素を含有する2価の有機基を示す)
下記一般式(化3)で表されるイソシアネート化合物とを、
【化3】



(ただし、R、RおよびRは、それぞれ、水素、アルキル基、フェニル基、ビニル基およびプロペニル基から独立に選択された基、Rは2価の有機基を示す)
触媒の存在下で反応させて得られたものであり、
上記触媒は、下記一般式(化4)で表わされるホスフィンオキシド化合物を含むことを特徴とする薄膜多層配線基板。
【化4】



(ただし、R、R、およびRは、それぞれ、アルキル基、フェニル基、ベンジル基、および−R10−O−R11から独立に選択された基を示し、R10は2価の有機基、11は1価の有機基を示す)
【請求項3】
導体層と、層間絶縁膜であるポリイミド膜とを備える薄膜感熱記録ヘッドにおいて、
上記ポリイミド膜は、下記一般式(化1)で表される構造単位を有する感光性ポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物を加熱硬化させて得られたポリイミドからなり、
【化1】



(ただし、式中、Rは少なくとも4個以上の炭素を含む4価の有機基、Rは芳香族環またはケイ素を含有する2価の有機基、R、RおよびRは、それぞれ、水素、アルキル基、フェニル基、ビニル基およびプロペニル基から独立に選択された基、Rは2価の有機基を示す)
上記ポリイミド前駆体は、
下記一般式(化2)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、
【化2】



(ただし、式中、Rは少なくとも4個以上の炭素を含む4価の有機基、Rは芳香族環またはケイ素を含有する2価の有機基を示す)
下記一般式(化3)で表されるイソシアネート化合物とを、
【化3】



(ただし、R、RおよびRは、それぞれ、水素、アルキル基、フェニル基、ビニル基およびプロペニル基から独立に選択された基、Rは2価の有機基を示す)
触媒の存在下で反応させて得られたものであり、
上記触媒は、下記一般式(化4)で表わされるホスフィンオキシド化合物を含むことを特徴とする薄膜感熱記録ヘッド。
【化4】



(ただし、R、R、およびRは、それぞれ、アルキル基、フェニル基、ベンジル基、および−R10−O−R11から独立に選択された基を示し、R10は2価の有機基、11は1価の有機基を示す)
【請求項4】
導体層と、層間絶縁膜であるポリイミド膜とを備える薄膜磁気ヘッドにおいて、
上記ポリイミド膜は、下記一般式(化1)で表される構造単位を有する感光性ポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物を加熱硬化させて得られたポリイミドからなり、
【化1】



(ただし、式中、Rは少なくとも4個以上の炭素を含む4価の有機基、Rは芳香族環またはケイ素を含有する2価の有機基、R、RおよびRは、それぞれ、水素、アルキル基、フェニル基、ビニル基およびプロペニル基から独立に選択された基、Rは2価の有機基を示す)
上記ポリイミド前駆体は、
下記一般式(化2)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、
【化2】



(ただし、式中、Rは少なくとも4個以上の炭素を含む4価の有機基、Rは芳香族環またはケイ素を含有する2価の有機基を示す)
下記一般式(化3)で表されるイソシアネート化合物とを、
【化3】



(ただし、R、RおよびRは、それぞれ、水素、アルキル基、フェニル基、ビニル基およびプロペニル基から独立に選択された基、Rは2価の有機基を示す)
触媒の存在下で反応させて得られたものであり、
上記触媒は、下記一般式(化4)で表わされるホスフィンオキシド化合物を含むことを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
【化4】



(ただし、R、R、およびRは、それぞれ、アルキル基、フェニル基、ベンジル基、および−R10−O−R11から独立に選択された基を示し、R10は2価の有機基、11は1価の有機基を示す)
【請求項5】
あらかじめ定められたパターンの導体層を形成する工程と、
下記一般式(化1)で表される構造単位を有する感光性ポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体組成物を加熱硬化させて層間絶縁膜であるポリイミド膜を形成する工程とを、少なくとも含み、
【化1】



(ただし、式中、Rは少なくとも4個以上の炭素を含む4価の有機基、Rは芳香族環またはケイ素を含有する2価の有機基、R、RおよびRは、それぞれ、水素、アルキル基、フェニル基、ビニル基およびプロペニル基から独立に選択された基、Rは2価の有機基を示す)
上記ポリイミド前駆体は、
下記一般式(化2)で表される構造単位を有するポリアミド酸と、
【化2】



(ただし、式中、Rは少なくとも4個以上の炭素を含む4価の有機基、Rは芳香族環またはケイ素を含有する2価の有機基を示す)
下記一般式(化3)で表されるイソシアネート化合物とを、
【化3】



(ただし、R、RおよびRは、それぞれ、水素、アルキル基、フェニル基、ビニル基およびプロペニル基から独立に選択された基、Rは2価の有機基を示す)
触媒の存在下で反応させて得られたものであり、
上記触媒は、下記一般式(化4)で表わされるホスフィンオキシド化合物を含むことを特徴とする配線構造体の製造方法。
【化4】



(ただし、R、R、およびRは、それぞれ、アルキル基、フェニル基、ベンジル基、および−R10−O−R11から独立に選択された基を示し、R10は2価の有機基、R11は1価の有機基を示す)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】特許第3732564号(P3732564)
【登録日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【発行日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−2513
【出願日】平成8年1月10日(1996.1.10)
【公開番号】特開平9−191050
【公開日】平成9年7月22日(1997.7.22)
【審査請求日】平成12年8月9日(2000.8.9)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【参考文献】
【文献】特開平03−188449(JP,A)
【文献】特開平02−157845(JP,A)
【文献】特開平01−105242(JP,A)
【文献】特開平07−228657(JP,A)
【文献】特開平07−228656(JP,A)
【文献】特開平07−238133(JP,A)
【文献】特開平07−304871(JP,A)
【文献】特開平05−214046(JP,A)
【文献】特開昭63−226639(JP,A)