説明

配電システム

【課題】従来の配電システムよりも構築・維持が容易な配電システムを提供する。
【解決手段】交流電力が供給される交流母線10を有する交流電力系統1と、直流電力系統2と、系統接続線3と、を備える配電システム100である。直流電力系統2は、自然エネルギーを利用して直流電力を出力する発電機21と、その直流電力を直流負荷5に供給する直流母線20と、直流母線20に接続される充放電装置22と、を有する。系統接続線3は、交流母線10と直流母線20とを接続する。配電システム100はさらに、系統接続線3に設けられ、交流母線10からの交流電力を直流電力に変換する整流器30と、系統接続線3における整流器30よりも直流母線20側に設けられ、交流母線10から直流母線20への送電を許容し、直流母線20から交流母線10への送電を規制する送電方向規制手段31と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電力系統と、直流電力系統と、これらの系統を接続する系統接続線と、を備える配電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球温暖化への対策として、太陽光発電、風力発電といった自然エネルギーの導入が世界的に推進されている。しかし、これら自然エネルギーを利用した発電量は天候に大きく左右されるため、自然エネルギーによる発電は交流電力を用いた既存の配電システムに組み込まれて、電力需要を補助的に賄うために利用されている。
【0003】
自然エネルギーを利用した配電システムとして、例えば特許文献1に記載の配電システムが挙げられる。特許文献1の配電システムは、交流電力系統と、直流電力系統と、系統接続線と、を備える。交流電力系統は、商用の交流電力が供給される交流母線を有する。直流電力系統は、自然エネルギーを利用して直流電力を出力する発電機と、当該発電機からの直流電力を直流負荷に供給する直流母線と、その直流母線に接続される充放電装置と、を有する。系統接続線は、交流母線と直流母線とを接続する。この系統接続線には、交流電力系統と直流電力系統との間で電力の遣り取りをできるように、双方向コンバーターが設けられている。このような構成とすることで、負荷の要求に対して発電機の直流電力が不足する場合には、充放電装置から直流電力を補うか、交流電力系統から双方向コンバーターを介して直流電力を補うことができる。また、負荷の要求に対して発電機の直流電力が過剰な場合には、直流電力系統から双方向コンバーターを介して交流電力系統に送電することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−109784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の配電システムの構成が複雑であるため、配電システムの構築・維持が煩雑であった。
【0006】
配電システムの構成が複雑になる要因の一つとして、直流電力系統から交流電力系統への送電量が自然エネルギーによる発電量以上とならないように制限されていることが挙げられる。電力会社の立場からすれば、電気料金の割安な時間帯に充放電装置に蓄電された電力を、割高な料金で買い取ることは避けたいからである。このような制限を行なうための制御は非常に複雑であり、構築・維持管理も煩雑である。また、交流電力系統への送電を行なう場合、発電機は発電設備と同等の扱いになるため、電力会社との交渉・手続き等も煩雑である。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、従来の配電システムよりも構築・維持が容易な配電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は、上記事情を検討した結果、直流電力系統から交流電力系統へ送電する、即ち電力会社へ売電するという発想自体を捨て去り、配電システムを構築することで、配電システムを簡素化することを提案する。以下、本発明配電システムを説明する。
【0009】
本発明配電システムは、交流電力系統と、直流電力系統と、系統接続線と、を備える。交流電力系統は、交流電力が供給される交流母線を有する。直流電力系統は、自然エネルギーを利用して直流電力を出力する発電機と、当該発電機からの直流電力を直流負荷に供給する直流母線と、その直流母線に接続される充放電装置と、を有する。また、系統接続線は、交流母線と直流母線とを接続する。この本発明配電システムは、系統接続線に設けられ、交流母線からの交流電力を直流電力に変換する整流器と、系統接続線における整流器よりも直流母線側に設けられ、交流母線から直流母線への送電を許容し、直流母線から交流母線への送電を規制する送電方向規制手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成とすることで、直流電力系統から交流電力系統への送電量を考慮する必要がなくなるため、配電システムの構築(電力会社との契約などの事務手続きを含む)・維持が容易になる。また、当該発電システムでは、自然エネルギーによる発電量が直流負荷の要求に足らない場合、充放電装置や交流電力系統から不足分の電力を補うことができるので、直流負荷の安定的な動作が保証される。
【0011】
本発明配電システムの一形態として、直流母線の直流電圧を、系統接続線の直流電圧よりも高く設定することが好ましい。
【0012】
上記構成とすることで、系統接続線から直流母線への過剰な直流電力の流入を抑制し、自然エネルギーに由来する直流電力を有効に利用することができる。直流母線側の電圧を確実に高くするには、例えば、後述する実施形態に示すように、直流母線にDC/DCコンバーターを設けると共に、直流母線と系統接続線の直流電圧を監視して、その監視結果に基づいてDC/DCコンバーターと整流器の少なくとも一方を制御すると良い。
【0013】
本発明配電システムの一形態として、系統接続線と直流母線との接続位置に設けられ、交流母線から系統接続線を介した直流負荷への給電と、発電機から直流母線を介した直流負荷への給電と、を択一的に切り替える切替スイッチを備えることが好ましい。その場合、常時は直流母線から直流負荷に給電されるように構成すると良い。
【0014】
上記構成によれば、自然エネルギーにより発電された電力を有効に利用でき、直流負荷の利用者が負担する電気料金を割安にすることができる。
【0015】
本発明配電システムの一形態として、充放電装置を動作させる電力を直流母線から給電されるように構成することが好ましい。
【0016】
上記構成とすることで、交流電力系統が停電したときでも充放電装置を動作させることができる。ここで、充放電装置を動作させる電力とは、充放電装置に充電動作あるいは放電動作を行なわせるために設けられる周辺機器を動作させる電力のことである。例えば、レドックスフロー電池であれば、電解液を循環させるポンプや、電池における充電状態を監視する監視装置などが、周辺機器に相当する。
【0017】
本発明配電システムの一形態として、充放電装置はレドックスフロー電池とすることができる。
【0018】
充放電装置は、電力を蓄え、必要に応じて蓄えた電力を放出することができる構成であれば良く、特に限定されない。例えば、Ni−MH電池やLiイオン電池、NaS電池、レドックスフロー電池などの二次電池などが充放電装置の代表例である。特に、レドックスフロー電池は、大容量の物を容易に構築できるため、好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明配電システムによれば、従来の配電システムよりも構築・維持を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1に係る配電システムの概略構成図である。
【図2】実施形態2に係る配電システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態1>
≪全体構成≫
図1に示すように、本実施形態の配電システム100は、交流電力系統1と、直流電力系統2と、これら系統1,2を接続する系統接続線3と、制御手段4と、を備え、直流負荷5へ所望の電力を配電するシステムである。この配電システム100の最も特徴とするところは、系統接続線3に整流器30と送電方向規制手段31が設けられていることである。以下、各構成を詳細に説明する。
【0022】
≪交流電力系統≫
交流電力系統1は、電気事業者が構築したものであって、電気事業者が所有する発電機(火力、水力、原子力など)から出力される交流電力が供給される交流母線10を備える。この交流電力系統1に、後述する系統接続線3を介して直流電力系統2が接続される。
【0023】
≪直流電力系統≫
直流電力系統2は、電気事業者が構築して直流負荷5の所有者に提供しても良いし、直流負荷5の所有者自身が構築しても良い。この直流電力系統2は、自然エネルギーを利用して直流電力を出力する発電機21と、当該発電機21からの直流電力を直流負荷5に供給する直流母線20と、直流母線20に接続される充放電装置22とを備える。
【0024】
[発電機]
発電機21は、例えば、太陽光や、風力、水力、潮力、波力、バイオマスなどの自然エネルギーを利用するものであれば特に限定されない。また、発電機21は、直流電力を直接出力する整流子発電機(DC generator)でも良いし、交流発電機と整流器を組み合わせたオルタネーターでも良い。
【0025】
[充放電装置]
充放電装置22は、電力を蓄え、必要に応じて蓄えた電力を放出することができる構成であれば良く、特に限定されない。例えば、充放電装置22として、Ni−MH電池やLiイオン電池、NaS電池、レドックスフロー電池などの二次電池を利用できる。その他、電力を電気化学的な形態とは異なる形態で貯蔵する構成としても良い。例えば、水素製造装置と、水素貯留タンクと、燃料電池とで充放電装置22を構成する。その場合、電力を用いて水素製造装置で水素を作製し、水素貯蔵タンクに貯蔵しておくことで電力を蓄え、電力を放出する際は、タンクの水素を使って燃料電池で発電する。以上、例示したこれらの構成の中でも、レドックスフロー電池は、大容量のものを容易に構築することができるので、好ましい。レドックスフロー電池としては、電解液としてV、Fe、Cr、Br、Mn、Tiイオン等を用いたものが好適である。
【0026】
上記充放電装置22は、分岐線23を介して直流母線20に接続される。本実施形態では、その接続位置は、直流母線20に対する系統接続線3の接続位置よりも直流負荷5側としている。もちろん、直流母線20に対する分岐線23の接続位置は、系統接続線3の接続位置よりも上流側(発電機21側)であっても良い。
【0027】
この充放電装置22を動作させる周辺機器25は、分岐線24を介して直流母線20から電力の供給を受けて動作する。もちろん、周辺機器25は、交流電力系統1と直流電力系統2とは独立した電源から電力の供給を受けて動作するようにしても良い。ここで、周辺機器25とは、例えば、充放電装置22がレドックスフロー電池であれば、電解液を循環させるポンプや、電解液の温度を調節する温度調節手段などである。後述する制御手段4も周辺機器と見做しても良い。
【0028】
[その他]
本実施形態の直流電力系統2はさらに、発電機21から出力される直流電圧を変化させるDC/DCコンバーター210を備える。このDC/DCコンバーター210は、直流負荷5の構成によっては無くても構わないが、本実施形態では、後述する制御手段4による制御を受けて、直流母線20の直流電圧を調整している。
【0029】
≪系統接続線≫
系統接続線3は、交流母線10と直流母線20とを接続する。ただし、本発電システム100では、従来と異なり、交流電力系統1から直流電力系統2へ電力を供給できるようになっているものの、直流電力系統2から交流電力系統1へは電力を供給できないようになっている。このような構成を達成するために、系統接続線3には、整流器30と、送電方向規制手段31が設けられている。
【0030】
[整流器]
整流器30は、交流を直流に変換できるものであれば特に限定されず、市販のものを利用することができる。この整流器30を設けることにより、直流負荷5の要求電力に対して、発電機21の発電量も充放電装置22の蓄電量も不足している場合に、交流電力系統1から電力の供給を受けることができる。
【0031】
[送電方向規制手段]
送電方向規制手段31は、系統接続線3における整流器30よりも下流側(直流母線20側)に接続され、交流母線10から直流母線20への送電を許容するが、直流母線20から交流母線10への送電を許容しない。この送電方向規制手段31としては、市販のダイオードなどを好適に利用できる。その場合、ダイオードのアノード(陽極)は交流母線10側に、カソード(陰極)は直流母線20側に配されるようにすると良い。
【0032】
≪制御手段≫
本実施形態の制御手段4は、例えば、コンピューターなどで構成することができ、主として(1)充放電装置22の制御、(2)直流母線20の電圧の制御、を行なっている。なお、制御手段4への給電は、交流電力系統1から行なっても良いし、直流電力系統2の直流母線20もしくは充放電装置22から行なっても良いし、系統1,2とは独立した電源から行なっても良い。
【0033】
(1)充放電装置22の制御
制御手段4は、直流負荷5の要求電力に応じて充放電装置22を制御する。例えば、直流負荷5の要求電力に対して、発電機21の発電量に余剰がある場合、その余剰電力を充放電装置22に充電させるように充放電装置22を制御する。例えば、充放電装置22がレドックスフロー電池であれば、電解液を循環させるポンプを動作させて、充放電装置22に充電を行なわせる。
【0034】
一方、直流負荷5の要求電力に対して、発電機21の発電量が不足している場合、制御手段4は、充放電装置22から放電させるように充放電装置22を制御する。
【0035】
その他、直流負荷5の要求電力がない場合(例えば、深夜時間帯)、発電機21からの電力や交流電力系統1からの電力を充放電装置22に充電させるように充放電装置22を制御する。
【0036】
(2)直流母線20の電圧の制御
制御手段4は、直流母線20の電圧が、系統接続線3における整流器30よりも直流母線20側の電圧に比べて高くなるようにDC/DCコンバーター210と整流器30を制御する。そうすることで、発電機21からの直流電力を余すところなく利用することができる。もちろん、発電機21による発電量が十分でない場合は、この限りではない。
【0037】
以上説明した配電システム100によれば、系統接続線3に設けられた整流器30と送電方向規制手段31により、直流電力系統2から交流電力系統1へ送電されないようにすることができる。そのため、従来のように、直流電力系統2から交流電力系統1への送電量(売電量)が制限値を超えないように当該送電量を調整する必要がない。その分だけ、配電システム100の構成や制御を簡素化でき、配電システム100の構築を容易にできる。また、電気事業者との売電に関する契約などの事務手続きを簡素化できる。
【0038】
<実施形態2>
実施形態2では、図2を参照して系統接続線3と直流母線20との接続位置に切替スイッチ32を設けた配電システム200を説明する。この切替スイッチ32とその制御に関すること以外は、実施形態1と同様であるため、以下には実施形態1との相違点のみを説明する。
【0039】
切替スイッチ32は、交流母線10から系統接続線3を介した直流負荷5への給電と、発電機21から直流母線20を介した直流負荷5への給電と、を択一的に切り替えるための構成である。この切替スイッチ32を備える配電システム200では、常時は、切替スイッチ32の接点Aと接点Bとが繋がるようにして、発電機21から直流負荷5に給電されるようにしておく。そうすることで、自然エネルギーに由来する直流電力を余すところなく利用することができる。
【0040】
一方、発電機21による発電量が十分でない場合、切替スイッチ32の接点Bと接点Cとが繋がるようにして、交流母線10から直流負荷5に給電されるようにする。
【0041】
切替スイッチ32の切り替えは、制御手段4が行なうと良い。例えば、制御手段4は、発電機21から出力される直流電力を監視し、その直流電力が所定値を下回った場合に、切替スイッチ32を接点Aから接点Cに繋ぎ替え、交流母線10から系統接続線3・直流母線20を介して直流負荷5に給電されるようにする。
【0042】
本実施形態の構成によれば、自然エネルギーによる発電量が十分な場合は、その自然エネルギーにより発電された電力を無駄なく利用することができる。
【0043】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明配電システムは、自然エネルギーを利用した配電システムに好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
100,200 配電システム
1 交流電力系統
10 交流母線
2 直流電力系統
20 直流母線 21 発電機 22 充放電装置
210 DC/DCコンバーター 23,24 分岐線 25 周辺機器
3 系統接続線
30 整流器 31 送電方向規制手段 32 切替スイッチ
4 制御手段
5 直流負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力が供給される交流母線を有する交流電力系統と、
自然エネルギーを利用して直流電力を出力する発電機、当該発電機からの直流電力を直流負荷に供給する直流母線、及びその直流母線に接続される充放電装置を有する直流電力系統と、
前記交流母線と前記直流母線とを接続する系統接続線と、
を備える配電システムであって、
前記系統接続線に設けられ、前記交流母線からの交流電力を直流電力に変換する整流器と、
前記系統接続線における前記整流器よりも前記直流母線側に設けられ、前記交流母線から前記直流母線への送電を許容し、前記直流母線から前記交流母線への送電を規制する送電方向規制手段と、
を備えることを特徴とする配電システム。
【請求項2】
前記直流母線の直流電圧を、前記系統接続線の直流電圧よりも高く設定したことを特徴とする請求項1に記載の配電システム。
【請求項3】
前記系統接続線と前記直流母線との接続位置に設けられ、前記交流母線から前記系統接続線を介した前記直流負荷への給電と、前記発電機から前記直流母線を介した前記直流負荷への給電と、を択一的に切り替える切替スイッチを備え、
常時は前記発電機から前記直流負荷に給電されるように構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の配電システム。
【請求項4】
前記充放電装置を動作させる電力は、前記直流母線から給電されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の配電システム。
【請求項5】
前記充放電装置は、レドックスフロー電池であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の配電システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−27177(P2013−27177A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160234(P2011−160234)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】