説明

配電線の相順判別方法

【課題】 容易に管理可能となる配電線の相順判別方法を提供すること。
【解決手段】 親局と、高圧配電系統に設置された複数の子局とからなり、親局は、IPプロトコルにて、該複数の子局とデータの送受信をする。配電線の相順判別を行う場合には、親局は、前記複数の子局のうちの任意の二つの子局を基準子局および判定子局と指定し、ステップS1にて、相順判別データ要求の指令を出す。次いで、ステップS2にて、前記基準子局および判定子局からのゼロクロス検出データを受信し、該検出データの内容とデータ受信時間とを記録する。ステップS3では、該検出データの内容とデータ受信時間とに従って相順判別処理を行う。該相順判別処理は、相順の位相差の基準時間、同相判定の許容誤差などを相順判別の条件に使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電系統の営業所に設置された親局と高圧配電線に対応する適当箇所に設置された複数の子局により、各子局設置点における高圧配電線の相接続順番を判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図10(a)は従来の高圧配電線の敷設状態を示し、同図(b)は近年の高圧配電線の敷設状態を示す図である。
【0003】
高圧配電系統において高圧配電線を敷設する場合、電圧送出元である配電用変電所(以下、「変電所」と略す)と各地点の高圧配電線用柱上開閉器(以下、「開閉器」と略す)は、極力同じ相順番で接続されるよう計画および設計される。高圧配電線の敷設工事では、図10(a)に示されているように、高圧配電線を接続する電柱の支持アーム部分に、相順番を示す色分けされたプレートを設置することで識別を行えるようにする。各地点の開閉器に接続された相順番は、各地点の開閉器に接続された子局の情報として、工事終了後に高圧配電系統を複数管理する拠点(以下、「営業所」と略す)に設置された計算機に入力され、高圧配電系統ごとに一元管理される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は変電所から並行して3相分を敷設するため、相順番が入れ替わることはなく管理も容易であったが、近年は、図10(b)に示すように、様々な要因から従来の敷設形態が維持できない場合が多い。
【0005】
大きな要因としては、電線と建物や樹木との離隔状況、及び電線の景観などによって、縦列に高圧配電線を敷設せざるを得ない場合があるとともに、別電柱にて並行に戻す際にも、周囲状況や工事手順によっては同一相順番に戻せない場合があるためである。従って、多くの電柱に相順番を示す色分けされたプレートを設置しなければならなくなったが、近年その煩雑さからプレートの設置を省略する場合が多くなってきており、相順番の確認は必要の都度、変電所から順に追っていく他に確認の手段がないのが実態である。また、環境や景観などへの配慮から高圧配電線を地中に埋設する場合もあるため、変電所から高圧配電線の相順番を確認するのは容易ではなく、時間も多大に要するため、事実上は不可能に近い。
【0006】
しかしながら、近年分散型電源の普及などにより電気は高品質なものが求められており、相毎の電圧や電流の管理を行うことや、高圧配電線に接続する単相の柱上変圧器の相毎の接続状況を管理し、相毎の電圧や電流の平衡を図ることが必要となってきている。そのためには、子局設置点毎に高圧配電線の相順番の管理が、前記の各要因に左右されない相順番判別手法により可能となれば、非常に有効な課題解決となる。
【0007】
本発明の目的は、前記した従来方法の課題を解消し、容易に管理可能となる配電線の相接続順番判定方法(以下、相順判別方法)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した目的を達成するために、この発明は、子局の総括を行う送受信機を備えた親局は、複数の子局のうちの任意の1台を基準子局、他の任意の1台を判定子局と指定し、該基準および判定子局に相順判別に関する指令を同時に受信させて高圧配電線の電圧波形の立ち上がりおよび立ち下がりのいずれか一方のゼロクロス点検出を同時に開始させ、前記基準および判定子局は前記ゼロクロス点を検出後、直ちにIPプロトコルを用いて前記親局へゼロクロス点検出データを送信し、前記親局は前記基準および判定子局が送信したゼロクロス点検出データと、該データを受信した時間を記録し、前記基準および判定子局からの前記データと前記記録時間を用いて相順判別を行う点に第1の特徴がある。
【0009】
また、前記親局は、前記子局への指令にて前記高圧配電線の電圧波形の立ち上がりまたは立ち下がりゼロクロス点を連続して検出させるよう指示するようにした点に第2の特徴がある。また、前記親局は、前記子局が連続送信したゼロクロス点検出データを受信した時間を、全てのデータについて記録し、該記録された時間のうち、基準子局のデータを受信した記録時間間隔の平均値を、前記高圧配電系統の系統周波数の1周期時間とし、前記高圧配電系統の系統周波数の1周期時間の1/3を相順の位相差時間とし、前記相順位相時間の一定割合を相順判別許容誤差時間として、相順判別の条件に用いることに第3の特徴がある。
【0010】
また、前記子局は前記親局へ送信するデータに、該子局が内部で処理に要した時間を明記し、前記親局は前記子局が連続送信したデータの記録時間を前記子局のデータに明記された内部処理時間で補正し、基準子局修正時間と判定子局修正時間とを求め、該基準子局修正時間および判定子局修正時間と前記位相差時間と相順判別許容誤差時間との関係から相順判別するようにした点に第4の特徴がある。
【0011】
また、前記親局が、前記子局から受信したデータのうち、相順判別に使用した有効なデータの総数が、指定した検出回数に対し一定の割合より低い場合は、相順判別を任意回数または一定回数やり直すようにした点に第5の特徴がある。また、前記親局が、相順判別に使用した有効なデータの総数に対し、相順判別結果に該当したデータの総数の割合が一定の割合より低い場合は、相順判別を任意回数または一定回数やり直すようにした点に第6の特徴がある。
【0012】
また、前記IPプロトコルにコネクションレス型のUDP/IPプロトコルを使用する点に第7の特徴がある。また、前記親局は、前記子局へのゼロクロス点検出要求を前記UDP/IPプロトコルのうちブロードキャストを使用することで、前記子局が同時に指令を受信可能とした点に第8の特徴がある。
【0013】
また、前記子局は、自立的に前記高圧配電線の電圧波形を常時取り込み、前記親局からの相順判別指令を受信した場合、前記高圧配電線の電圧波形の立ち上がりまたは立ち下がりゼロクロス点を自動的に検出し、ゼロクロス点を検出する毎に親局へデータを送信する機能を具備した点に第9の特徴がある。
【0014】
さらに、前記営業所に前記親局を配置することで、一定範囲内の前記高圧配電系統の相順データを一元管理できるようにした点に第10の特徴がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、下記の効果を奏することができる。
【0016】
(1) 高圧配電系統に複数設置された送受信機を備えた子局のうち任意の1台を基準子局、任意の1台を判定子局として、該子局の総括を行う送受信機を備えた親局を用いたので、高圧配電系統の任意の子局設置点の相順判別が可能となる。
【0017】
(2) 高圧配電線の電圧波形の立ち上がりまたは立ち下がりゼロクロス点を連続して検出させることで、相順判別の信頼性を向上することができる。
【0018】
(3) 親局は、前記子局が連続送信したゼロクロス点検出データを受信した時間を、全てのデータについて記録し、該記録された時間のうち、基準子局のデータを受信した記録時間間隔の平均値を、前記高圧配電系統の系統周波数の1周期時間とし、前記高圧配電系統の系統周波数の1周期時間の1/3を相順の位相差時間とし、前記相順位相時間の一定割合を相順判別許容誤差時間として相順判別の条件に用いることで、高圧配電系統別に固有の値を持つ必要がなく、高圧配電系統の周波数に依存しない相順判別が可能となる。
【0019】
(4) 子局は前記親局へ送信するデータに、該子局が内部で処理に要した時間を明記し、前記親局は前記子局が連続送信したデータの記録時間(以下、連続送信データ記録時間)から前記子局のデータに明記された内部処理時間を引くことで、ゼロクロス点検出の時間を補正することができ、相順判別の信頼性を向上することができる。
【0020】
(5) 親局は、前記子局から受信したデータのうち、相順判別に使用した有効なデータの総数が、指定した検出回数に対し一定の割合より低い場合は、相順判別を任意回数または一定回数やり直す機能を具備することで相順判別の信頼性を向上することができる。
【0021】
(6)親局は、相順判別に使用した有効なデータの総数に対し、相順判別結果に該当したデータの総数の割合が一定の割合より低い場合は、相順判別を任意回数または一定回数やり直す機能を具備することで相順判別の信頼性を向上することができる。
【0022】
(7) 前記IPプロトコルにコネクションレス型のUDP/IPプロトコルを使用することで、相順判別を行う前記親局と前記子局は都度コネクションを行う必要がなく、データの送受信も無手順で行えるため、該子局はゼロクロス点を検出して直ちにデータを該親局へ送信することができ、該親局の前記連続送信データ記録時間を該子局がデータを送信した時間に近づけることができるため、相順判別の信頼性を向上することができる。
【0023】
(8) 親局は、前記子局へのゼロクロス点検出要求を、前記UDP/IPプロトコルのうちブロードキャストで送信することで、前記子局が同時に指令を受信可能となり、ゼロクロス点検出を同時に開始することができる。
【0024】
(9)子局は、自立的に前記高圧配電線の電圧波形を常時取り込み、前記親局からの相順判別指令を受信した場合、前記高圧配電線の電圧波形の立ち上がりまたは立ち下がりゼロクロス点を自動的に検出し、ゼロクロス点を検出する毎に親局へデータを送信する機能を具備することで、相順判別の即時実行が可能となる。
【0025】
(10)親局を、前記営業所に配置することで、一定範囲内の前記高圧配電系統の相順データの一元管理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明を図面を参照して詳細に説明する。本発明者は、前記した従来技術の課題に鑑み、営業所に設置された親局と高圧配電線に対応する適当箇所に設置された複数子局のうち任意の1台を基準子局、任意の1台を判定子局として用い、IPプロトコルにてデータの送受信を行うことで、高圧配電線に対応する適当箇所に設置された複数子局の任意の箇所での相順判別を行うことを発明した。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態の概略の構成を示すシステム図である。
【0028】
配電系統の営業所内に設置された光IP親局1と高圧配電線11の適当箇所に設置された複数(1系統当たり、例えば500台程度)の光IP子局5はそれぞれ送受信機1a、6aを有し、該光IP親局1と光IP子局5とは1心の光ファイバーケーブル4によって1対n方式で接続され、光IP親局1と光IP子局5はIPプロトコルにて通信を行っている。該光IP親局1は、光IP子局5の各々の総括を行う。
【0029】
光IP親局1から出力された電気的なIP通信データ(IPプロトコルに従って通信されるデータ)は、同じく営業所内に設置されたSW-Hub(スイッチハブ)2に入力され、メディアコンバータ(以下、MCと略する)3により光信号に変換され、光ファイバーケーブル4を伝送媒体として光IP子局5に送信される。光IP子局5に届いたIP通信データは内蔵される光SW-Hub8により、電気的な信号に変換され処理部6に到達し、処理される。9は開閉器、10は高圧開閉器内蔵センサ、11は高圧配電線である。
【0030】
なお、光IP子局5には、停電の障害時にも、後段の光IP子局5へIP通信データを伝える必要があるため、光IP子局5は光SW-Hub8のバックアップ用電源として、バッテリ7を有する。光IP子局5には、該光SW-Hub8をバッテリ7によりバックアップするタイプの他に、バッテリレスタイプとして、光SW12を内蔵しているタイプがある。このタイプの光IP子局は、符号5’で示されている。
【0031】
このタイプの光IP子局5’では、無停電時には親局からのIP通信データは光SW12に入力され、光SW-Hub8経由で処理部6に伝えられる。一方、後段の光IP子局5へは光SW-Hub8経由で光SW12を再度経由して送信される。しかしながら、停電の障害時には光SW12の電源が消失することになるので、光SW-Hub8を経由することなく、光SW12を光信号のまま通過し、後段の光IP子局5へIP通信データを伝える。
【0032】
図2は、親局1から相順判別データ要求を送信した場合の、ネットワーク内のデータの流れを示す図である。
【0033】
親局1は、相順判別データ要求31をコネクションレス型のプロトコルであるUDP/IP(User Dtagram Protocol/Internet Protocol)のブロードキャストを使用して送信する。ブロードキャストで送信された相順判別データ要求31は、ネットワーク内の全ての子局でほぼ同時に受信される。相順判別データ要求31には、基準子局となる子局番号、判定子局となる子局番号、判別を行う相、およびゼロクロス点を検出する回数が指定されており、子局は、基準子局となる子局番号もしくは判定子局となる子局番号のいずれかが、自局に設定されている子局番号と同じである場合、相順判別データ要求にて指定された判別を行う相の電圧波形のゼロクロス点検出を開始する。例えば、基準子局の子局番号が1、判定子局の子局番号が4と指定されていた場合、子局21と子局24の処理部が、自局が相順判別データ要求の対象子局であると認識し、波形取込部によって取り込まれたデータ(電圧波形)から判別を行う相のゼロクロス点検出を開始することになる。
【0034】
図3は、基準子局および判定子局となった子局の動作を示す図である。
【0035】
基準子局および判定子局は、判定を行う相の電圧波形の立ち上がりのゼロクロス点を検出した場合、ゼロクロス点検出データを親局へ送信する。ゼロクロス点検出データには、検出データを送信した回数(連番)、検出対象としている相、子局内部で処理に要した時間が含まれている。前記基準子局および判定子局は、前記相順判別データ要求で指定された回数まで、ゼロクロス点の検出と検出データの送信を繰り返す。なお、このゼロクロス点は、電圧波形の立ち下がりのゼロクロス点であってもよい。
【0036】
図4は、親局が基準子局および判定子局からのゼロクロス点検出データを受信した場合の動作を示す図である。
【0037】
親局は、基準子局および判定子局からのゼロクロス点検出データ内容と、相順判別データ要求を送信してから基準局および判定局からの前記ゼロクロス点検出データを受信するまでの経過時間(以下「データ受信時間」と略す)とを、全データについて記録する。データ受信時間は、高圧配電系統の系統周波数(例えば60Hz)の1周期時間を計算できる精度(例えば、0.1m秒単位)で記録する。
【0038】
図5は、相順判別に関する親局の処理の概要を示す図である。ステップS1では、相順判別データ要求を行う。ステップS2では、基準子局および判定子局からゼロクロス検出データを受信し、該ゼロクロス検出データの内容とデータ受信時間とを記録する。ステップS3では、相順判別処理を行う。
【0039】
図6は、該ステップS3の相順判別処理の全体の流れを示す図である。相順判別処理は、大きく分けて6ステップ(ステップS11〜S16)に分かれている。図7は、図6のステップS11の処理内容の詳細を示す図である。
【0040】
親局は、まず、基準子局の全データについて、データ受信時間から基準子局の子局内部処理時間を引いた値(以下「基準子局修正時間」と略す)を求め、前記基準子局修正時間のデータ受信間隔の平均値を計算する。この平均値を高圧配電系統の系統周波数の1周期時間(以下「周期時間」と略す)とする。通信ネットワークに問題がなく、電圧波形が正常であれば、例えば系統周波数が60Hzであれば、周期時間は約16.67m秒となる。
【0041】
次に、前記周期時間の1/3を、相順の位相差の基準時間(以下「位相差時間」と略す)とする。更に、前記位相差時間の1/2の一定割合(例えば75%)、すなわち、位相差時間×1/2×誤差率(例えば75%)を、同相判定の許容誤差(以下「判定誤差」と略す)とする。前記の例であれば、位相差時間は5.56m秒、判定誤差は2.09m秒となる。以上3種類の値を相順判別の条件に用いる。
【0042】
図8は、図6のステップS12の処理内容の詳細を示す図である。判定子局の全データについても、データ受信時間から判定子局の子局処理時間を引いた値(以下「判定子局修正時間」と略す)を求める。ここで、該判定子局修正時間と、前記の基準子局修正時間を比較すると、子局が相順判別データ要求を受信してから、ゼロクロス点検出を開始するまでのタイムラグや、電圧波形の取り込み処理状態によっては、1データ目の時間が1周期分ずれている場合があるため、このデータずれを調整する必要がある。図8は、このデータずれが起きた場合の例である。具体的には、|基準子局修正時間の1データ目−判定子局修正時間の1データ目|>(位相差時間×2+判定誤差)が成立すれば、基準子局修正時間または判定子局修正時間を1データずらす。
【0043】
図9は、図6のステップS13の処理内容を示す図である。前記のデータずれを調整後、相順判別条件に基づいて、基準子局修正時間と判定子局修正時間の検査を行う。基準子局修正時間に対し、(1)判定子局修正時間が(±判定誤差)以内なら、基準子局と判定子局は同相として同相カウントを+1とする。(2)判定子局修正時間が(+位相差時間±判定誤差)以内なら、基準子局に対し判定子局は120度遅れているとして120度遅れカウントを+1とする。(3)判定子局修正時間が(+位相差時間×2±判定誤差)以内なら、基準子局に対し判定子局は120度進んでいるとして120度進みカウントを+1とする。以上の3条件に当てはまらない場合は、無効データとする。
【0044】
図6のステップS14では、ステップS13の検査終了後、親局が指定したゼロクロス点検出回数に対し、前記3条件に該当したデータの総数の割合が一定割合未満(例えば、80%未満)であれば、検査に使用したデータの信頼性が不十分であると判断して、相順判別をやり直す。例えば、ゼロクロス点検出回数が50回、前記3条件に該当したデータの総数が35件であった場合の割合は35÷50=70%であるため、使用データ全体の信頼性が低いと判断して、前記ステップS1(図5参照)の相順判別データ要求からやり直す。やり直す回数は任意とする。
【0045】
図6のステップS15では更に、前記のデータ信頼性が十分であった場合でも、3条件に該当したデータの総数に対する、最も多く該当した条件のカウントの割合が一定割合未満(例えば、90%未満)であれば、相順判別結果の信頼性が不十分であると判断して相順判別をやり直す。例えば、ゼロクロス点検出回数が50回、前記3条件に該当したデータの総数が45件、最も多く該当した条件が同相で、カウントが35回であった場合は、使用データ全体の信頼性は45÷50=95%あるが、相順判別の該当確率は35÷45=77.8%しかないため、相順判別結果の信頼性が低いと判断して、前記ステップS1の相順判別データ要求からやり直す。やり直す回数は任意または一定回数とする。
【0046】
ステップS14およびS15の判断が否定の時、すなわち相順判別をやり直さなければ、図6のステップS16で相順判別結果は信頼できるとして、判定子局の判別相を確定する。例えば、判定相が内相で、最も多いカウントが同相カウントであれば基準局に対する判定局の相を内相と判別する。該最も多いカウントが120度遅れであれば中相、また120進みであれば外相と判別する。
【0047】
なお、本発明では、前記高圧配電系統を複数管理する拠点に前記親局を配置することで、一定範囲内の前記高圧配電系統の相順データを一元管理できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態の遠方監視制御通信方式の要部構成を示すシステム図である。
【図2】親局から子局への要求送信時の流れを示す図である。
【図3】子局が親局からの要求を受信した場合の動作を示す図である。
【図4】親局が子局からデータを受信した場合の動作を示す図である。
【図5】親局の相順判別に関する処理の概要を示すフローチャートである。
【図6】親局での相順判別処理の詳細を示すフローチャートである。
【図7】前記相順判別処理のうちのステップS11の詳細を示す説明図である。
【図8】前記相順判別処理のうちのステップS12の詳細を示す説明図である。
【図9】前記相順判別処理のうちのステップS13の詳細を示す説明図である。
【図10】高圧配電線の従来敷設形態と近年の敷設形態を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1・・・光IP親局、2・・・SW−Hub(スイッチングハブ)、3・・・MC(メディアコンバータ)、4・・・光ファイバーケーブル、5、5’・・・光IP子局、6・・・処理部、8・・・光SW−Hub、9、19・・・開閉器、10・・・開閉器内蔵センサ、11・・・高圧配電線、21〜25・・・子局、31・・・相順判別データ要求。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧配電系統に設置された複数の子局の各設置点における高圧配電線の相接続順番を判定する方法において、
前記子局の総括を行う送受信機を備えた親局は、前記複数の子局のうちの任意の1台を基準子局、他の任意の1台を判定子局と指定し、該基準および判定子局に相順判別に関する指令を同時に受信させて高圧配電線の電圧波形の立ち上がりおよび立ち下がりのいずれか一方のゼロクロス点検出を同時に開始させ、
前記基準および判定子局は前記ゼロクロス点を検出後、直ちにIPプロトコルを用いて前記親局へゼロクロス点検出データを送信し、
前記親局は、前記基準および判定子局が送信したゼロクロス点検出データと、該データを受信した時間を記録し、前記基準および判定子局からの前記データと前記記録時間を用いて相順判別を行うことを特徴とする配電線の相順判別方法。
【請求項2】
請求項1に記載の配電線の相順判別方法において、
前記親局は、前記子局への指令にて、前記高圧配電線の電圧波形の立ち上がりまたは立ち下がりゼロクロス点を連続して検出するように指示することを特徴とする配電線の相順判別方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の配電線の相順判別方法において、
前記親局は、前記基準および判定子局が連続送信したゼロクロス点検出データを受信した時間を、全てのデータについて記録し、
該記録された時間のうち、基準子局のデータを受信した記録時間間隔の平均値を、前記高圧配電系統の系統周波数の1周期時間とし、前記高圧配電系統の系統周波数の1周期時間の1/3を相順の位相差時間とし、前記相順位相時間の一定割合を相順判別許容誤差時間として、相順判別の条件に用いることを特徴とする配電線の相順判別方法。
【請求項4】
請求項3に記載の配電線の相順判別方法において、
前記基準および判定子局は前記親局へ送信するデータに、該子局が内部で処理に要した時間(内部処理時間)を明記し、
前記親局は前記子局が連続送信したデータの記録時間を前記子局の内部処理時間で補正して、基準子局修正時間と判定子局修正時間とを求め、
下記の(1)の条件が満たされれば同相、(2)の条件が満たされれば120度遅れ、(3)の条件が満たされれば120度進みと相順判別することを特徴とする配電線の相順判別方法。
(1)(基準子局修正時間+相順判別許容誤差時間)>判定子局修正時間>(基準子局修正時間−相順判別許容誤差時間)
(2)(基準子局修正時間+位相差時間+相順判別許容誤差時間)>判定子局修正時間>(基準子局修正時間+位相差時間−相順判別許容誤差時間)
(3)(基準子局修正時間+2×位相差時間+相順判別許容誤差時間)>判定子局修正時間>(基準子局修正時間+2×位相差時間−相順判別許容誤差時間)
【請求項5】
請求項4に記載の配電線の相順判別方法において、
前記親局が、前記子局から受信した前記ゼロクロス点検出データのうち、相順判別に使用した有効なデータの総数が、指定した連続検出回数に対し一定の割合より低い場合は、相順判別を任意回数または一定回数やり直すようにすることを特徴とする配電線の相順判別方法。
【請求項6】
請求項4に記載の配電線の相順判別方法において、
前記親局が、相順判別に使用した有効なデータの総数に対し、相順判別結果に該当したデータの総数の割合が一定の割合より低い場合は、相順判別を任意回数または一定回数やり直すようにすることを特徴とする配電線の相順判別方法。
【請求項7】
請求項1に記載の配電線の相順判別方法において、
前記IPプロトコルにコネクションレス型のUDP/IPプロトコルを使用することを特徴とする配電線の相順判別方法。
【請求項8】
請求項7に記載の配電線の相順判別方法において、
前記親局は、前記子局へのゼロクロス点検出要求を前記UDP/IPプロトコルのうちブロードキャストで送信することで、前記子局が同時に前記指令を受信可能としたことを特徴とする配電線の相順判別方法。
【請求項9】
請求項1に記載の配電線の相順判別方法において、
前記子局は、自立的に前記高圧配電線の電圧波形を常時取り込み、前記親局からの相順判別指令を受信した場合、前記高圧配電線の電圧波形の立ち上がりまたは立ち下がりゼロクロス点を自動的に検出し、ゼロクロス点を検出する毎に親局へデータを送信することを特徴とする配電線の相順判別方法。
【請求項10】
請求項1に記載の配電線の相順判別方法において、
前記高圧配電系統を複数管理する拠点に前記親局を配置することで、一定範囲内の前記高圧配電系統の相順データを一元管理できるようにしたことを特徴とする配電線の相順判別方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−47020(P2006−47020A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226013(P2004−226013)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【出願人】(000164391)株式会社キューキ (15)
【出願人】(000110778)ニシム電子工業株式会社 (9)
【出願人】(000003171)株式会社戸上電機製作所 (29)
【出願人】(000196565)西日本電線株式会社 (57)
【出願人】(000207089)大電株式会社 (67)
【Fターム(参考)】