説明

酸化イリジウムナノチューブおよびその形成方法

【課題】テンプレートを必要としない酸化イリジウム(IrOx)ナノチューブの形成方法を提供する。
【解決手段】本発明の方法は、基板を提供すること、(メチルシクロペンタジエニル)(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)前駆物質を導入すること、前駆物質反応ガスとして酸素を導入すること、1から50Torrの範囲内の最終圧力を確立すること、有機金属化学気相成長(MOCVD)処理を使用することにより、基板の表面からIrOx中空ナノチューブを成長させることとを包含する。代表的には、(メチルシクロペンタジエニル)(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)前駆物質がアンプルの中で60から90℃の範囲内の第1の温度に初期加熱され、前駆物質を導入する移送ラインの中においては第1の温度に保たれる。前駆物質はArなどの不活性搬送ガスと混合され得、または前駆物質反応ガスである酸素が搬送ガスとして使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して集積回路(IC)の製造に関する。より詳細には、酸化イリジウムナノチューブを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ナノ、マイクロエレクトロメカニカル(MEM)、およびナノエレクトロメカニカルNEM部品の利用分野におけるビルディングブロックとしての潜在的重要性のために、ナノワイヤの製造が探究されている。例えば、Charles Lieberと提携した研究者達は、ナノ−コンピューティング システムの構築(building)に使用するためのシリコン(Si)、シリコン−ゲルマニウム(SiGe)、InP、およびGaN、などの材料から作られる各種の半導体ナノワイヤの合成(synthesis)について報告している。他のグループもまた、Ni、NiSi、Au、およびPtなどの材料で作られた金属ナノワイヤを成長させるためにテンプレート(template)構造を使用することについて報告している。金属ナノワイヤは電気的相互接続に使用されることが出来、またナノワイヤの比較的鋭いチップ(tip)は電界放出の用途に適している。ZnOナノワイヤは発光素子(light emission element)として潜在的有用性がある。
【0003】
しかしながら、多孔質材料またはテンプレートを使用することなく、金属ナノワイヤを作成することのできるプロセスは報告されていない。テンプレートは、処理方法にかなりの程度の複雑さを加える。従って、より一層実用的かつ商業的に実行可能な、金属ナノワイヤの形成手段が望まれる。テンプレートを使用せずに有機金属化学気相成長(MOCVD)法により、酸化イリジウム(IrO)のナノワイヤが成長させられるならば、それは特に有用である。IrOは、すでにDRAMおよびFeRAMの用途で広く使用されている導電性の金属酸化物であり、それ故にその使用は、従来のIC製造に容易に取り入れられ得る。IrOは、高温のOの環境条件においても安定した電気的および化学的性質を有するために、導電性電極として使用され得る。IrOはまたpHセンサー材料としても使用され得る。Irの薄いフィルムはPVD法により容易に堆積されることができ、それは優れた多結晶構造および強い(111)方位(orientation)を有する。IrOはその後、Irフィルムを酸化することにより形成され得、または、それは酸素に接する高温での反応的スパッタリング法を用いて直接的に形成され得る。IrおよびIrOの薄いフィルムを成長させるCVD法が、最近開発されている。CVD処理においては、良好な成分調整を維持することが比較的容易であり、またその方法は良好なステップカバレージを提供することが知られている。
【0004】
Reui−San Chenらは、(メチルシクロペンタジエニル)(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)前駆物質を使用するMOCVD法によるIrOナノロッドの製造(making)について論ずる論文を出版している。彼らはまた、電界放出の用途におけるIrOナノロッドの使用可能性について探究した。彼らが成長させたナノロッドは長さ数マイクロメートルで、直径約100ナノメートル(nm)のものであった。しかしながら、同様の垂直方向に整列したIrOナノロッドを繰り返し得ることに成功した実験の結果では、これらの構造が鋭いチップを示すものの、その結晶構造は非晶質または多結晶質であることを示す。この結晶構造は欠陥、または高い転移密度の結果であり、成長の過程で拡散が不十分でありシャドウイング(shadowing)の影響を打ち消すことが出来なかった事実に起因し、それはナノロッドの軸、またはロッドの底部部分よりもナノロッドのチップにより多くの前駆物質を供給する働きをする。
【0005】
中空のナノチューブ構造を形成するために、MOCVD処理において、酸化イリジウムナノロッドをクラスターに成長させることができることは、有益である。
【0006】
中空のナノチューブを、テンプレートを使用することなく形成することができることは、有益である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は、Ti、TiN、TaN、あるいはSiO基板上に、中空のナノチューブを作るための、IrOxナノチップのクラスター成長について記述する。成長の長さ、密度、および垂直の向きは温度、圧力、流量、基板の材料、および時間の変数によって制御されることができる。
【0008】
従って、酸化イリジウム(IrOx)ナノチューブを形成するめの方法が提供される。その方法は、基板を提供することと、(メチルシクロペンタジエニル)(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)前駆物質を導入することと、前駆物質反応ガスとして酸素を導入することと、1Torrから50Torrの範囲内の最終圧力を確立することと、200℃から500℃の範囲内の基板またはチャンバーの温度を確立することと、有機金属化学気相成長(MOCVD)処理を使用して基板表面からIrOx中空ナノチューブを成長させることとを包含する。
【0009】
代表的には、(メチルシクロペンタジエニル)(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)前駆物質は、アンプルの中で60℃から90℃の範囲内の第1の温度に初期加熱され、そして第1の温度は前駆物質を導入する移送ラインの中で保持される。前駆物質はArのような不活性移送ガスと混合され得、または前駆物質反応ガスである酸素が移送ガスとして使用され得る。いかなる移送方法においても、前駆物質および移送ガスは50から500標準立方センチメートル毎分(sccm)の範囲内の流量で導入される。
【0010】
一局面においては、IrOx中空ナノチューブは四角の断面形状を有する。直径は100Åから1マイクロメートルの範囲内にあり、ナノチューブの長さは500Åから2マイクロメートルの範囲内にある。従ってナノチューブは1:1から50:1の範囲内のアスペクト比(長さ対幅)を有する。ナノチューブの四角の中空の形状は、チップを有する隣り合うナノロッドのクラスターを成長させることと、4個で代表されるナノロッドのチップをマージ(merge)することと、マージされたチップのクラスターを成長させて閉じたチューブ構造を生成することとの結果として得られる。
【0011】
本発明は、さらに以下の手段を提供する。
【0012】
(項目1)
酸化イリジウム(IrOx)ナノチューブを形成する方法であって、
表面を有する基板を提供することと、
(メチルシクロペンタジエニル)(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)前駆物質を導入することと、
有機金属化学気相成長(MOCVD)処理を使用し、該基板の表面からIrOx中空ナノチューブを成長させること
を包含する、方法。
【0013】
(項目2)
前駆物質反応ガスとして酸素を導入することをさらに包含する、項目1に記載の方法。
【0014】
(項目3)
1Torrから50Torrの範囲内の最終圧力を確立することをさらに包含する、項目2に記載の方法。
【0015】
(項目4)
上記前駆物質を導入することに先立ち、1×10−8Torrから1×10−3Torrの範囲内のベース圧力を確立することをさらに包含する、項目3に記載の方法。
【0016】
(項目5)
前駆物質反応ガスとして酸素を導入することは、上記ベース圧力を最終圧力に向けて増加させるために酸素を加えることを含み、
前駆物質を導入することは、該最終圧力が到達された後に前駆物質を導入することを含む、
項目4に記載の方法。
【0017】
(項目6)
最終圧力を確立することは、酸素および前駆物質を同時に加え、上記ベース圧力を上記最終圧力に向けて増加させることを含む、項目4に記載の方法。
【0018】
(項目7)
上記(メチルシクロペンタジエニル)(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)前駆物質を導入することは、
60℃から90℃の範囲内の第1の温度に上記前駆物質を初期加熱することと、
上記前駆物質を導入する移送ラインの中において該第1の温度を保持することと、
上記前駆物質を搬送ガスと混合することと
含む、項目2に記載の方法。
【0019】
(項目8)
上記前駆物質を搬送ガスと混合することは、Arおよび酸素を含むグループから選択された搬送ガスと混合することを含む、項目7に記載の方法。
【0020】
(項目9)
上記(メチルシクロペンタジエニル)(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)前駆物質を導入することは、50標準立方センチメートル毎分(sccm)から500sccmの範囲内の流量で、上記前駆物質および搬送ガスを導入することを含む、項目7に記載の方法。
【0021】
(項目10)
前駆物質反応ガスとして酸素を導入することは、50sccmから500sccmの範囲内の流量で酸素を導入することを含む、項目2に記載の方法。
【0022】
(項目11)
1Torrから50Torrの範囲内の最終圧力を確立することは、30Torrから50Torrの範囲内の最終圧力を確立することを含む、項目3に記載の方法。
【0023】
(項目12)
200℃から500℃の範囲内の基板温度を確立することをさらに包含する、項目2に記載の方法。
【0024】
(項目13)
上記基板の表面からIrOx中空ナノチューブを成長させることは、四角の断面形状を有するナノチューブを成長させることを含む、項目1に記載の方法。
【0025】
(項目14)
上記基板の表面からIrOx中空ナノチューブを成長させることは、100Åから1マイクロメートルの範囲内の直径を有するナノチューブを成長させることを含む、項目1に記載の方法。
【0026】
(項目15)
上記基板の表面からIrOx中空ナノチューブを成長させることは、1:1から50:1の範囲内のアスペクト比(長さ対幅)を有するナノチューブを成長させることを含む、項目1に記載の方法。
【0027】
(項目16)
上記基板の表面からIrOx中空ナノチューブを成長させることは、
端部を有する隣り合うナノチップのクラスターを成長させることと、
該ナノチップの端部をマージすることと、
端部をマージされた該クラスターを成長させ、閉じたチューブ構造を生成することとを含む、項目1に記載の方法。
【0028】
(項目17)
上記ナノチップの端部をマージすることは、上記クラスターの中から4個の端部をマージすることを含む、項目16に記載の方法。
【0029】
(項目18)
表面を有する基板を提供することは、TiN、TaN、Ti、Ta、Si、およびSiOを含むグループから選択された材料から作られた基板を提供することを含む、項目1に記載の方法。
【0030】
(項目19)
上記基板の表面からIrOx中空ナノチューブを成長させることは、500Åから2マイクロメートルの範囲内の長さを有するナノチューブを成長させることを含む、項目1に記載の方法。
【0031】
(項目20)
酸化イリジウム(IrOx)のナノチューブであって、
結合された端部を有する複数のクラスターIrOxナノチップと、
該ナノチップの間に形成された中空の空洞とを備え、
IrOx中空ナノチューブが形成される、ナノチューブ。
【0032】
(項目21)
上記中空ナノチューブは、四角の断面形状を有する、項目20に記載のナノチューブ。
【0033】
(項目22)
上記中空ナノチューブは、100Åから1マイクロメートルの範囲内の直径を有する、項目20に記載のナノチューブ。
【0034】
(項目23)
上記中空ナノチューブは、1:1から50:1の範囲内のアスペクト比(長さ対幅)を有する、項目20に記載のナノチューブ。
【0035】
(項目24)
4個のナノチップの端部が結合されて中空ナノチューブを形成している、項目20に記載のナノチューブ。
【0036】
(項目25)
上記ナノチューブは、500Åから2マイクロメートルの範囲内の長さを有する、項目20に記載のナノチューブ。
【0037】
上述された方法の追加の詳細およびIrOxナノチューブ装置は以下に記述される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は、酸化イリジウム(IrOx)ナノチューブの部分的断面の側面図である。「x」の値は2であり得るが、それはIrが完全に酸化されている場合であり、Irが不完全に酸化されている場合は、ゼロに近づく値であり得る。ナノチューブは、結合された端部102を有する複数のクラスターIrOxナノチップ(clustered IrOx nanotips)を備える。ナノチューブ108の部分を形成するナノチップ104および106が示されている。ナノチップ110および112はナノチューブ114の部分を形成する。ナノチップの端部はIrOxの中空ナノチューブを形成するように結合されている(図2を参照)。ナノチューブ108および114は、500Åから2マイクロメートルの範囲で変化する長さ116を有し得る。ある局面では、ナノチューブは多結晶質構造および(101)方位を有する。隣り合うナノチューブの長さは、必ずしも一様である必要はないことに、留意する。むしろ、隣り合うナノチューブの長さは変わり得る。
【0039】
図2は、図1のナノチューブの部分的断面の平面図である。この図の中で、ナノチューブ108がナノチップ200および202を付加することにより形成されたことを、認識できる。ナノチューブ114は付加されたナノチップ204から形成されている。典型的には、ナノチューブは、四角の断面形状(square−shaped diameter)と共にその中空の性状を与えるために、4個のナノチップから作られる。ナノチューブ108は、ナノチップの間に形成された空洞206、および断面寸法208と共に示されている。示されるように、空間206もまた四角の形状を有する。3−ナノチップおよび4−ナノチップのナノチューブのみが示されているが、ナノチューブはいかなる特定の数のナノチップにも必ずしも限定されないことに、留意する。ナノチューブ1本あたりのナノチップの数の選択は、ナノチューブ断面寸法208および空間206の寸法を定める助けとなる。いくつかの局面では、中空ナノチューブ108は、100Åから1マイクロメートルの範囲の断面寸法208を有する。図1および図2の両方を考慮し、中空ナノチューブ108または114は、1:1から50:1の範囲のアスペクト比(長さ対幅)を有する。隣り合うナノチューブの断面寸法およびナノチューブ1本あたりのナノチップの数は、同一である必要はなく、変わり得る。
【0040】
(機能に関する説明)
IrOxナノチューブは、TiN、TaN、Ti、Ta、およびSiO基板上に、成功裡に成長させられてきた。(メチルシクロペンタジエニル)(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)が前駆物質として使用される。前駆物質および移送ライン(transport line)は共に60℃〜90℃の一定温度に保たれる。流量50sccm〜500sccmの高純度酸素を、Ir前駆物質のアンプル(ampule)を介して搬送ガス(carrier gas)として使用することができる。前駆物質の濃度を薄めるために、あるいは前駆物質の合計流量を増加するために、追加の純酸素ラインを、追設することができる。ナノチューブの核形成を促進するために、より高い初期のチャンバー圧力が、また使用され得る。一般的にベース圧力は、成長チャンバーを可能な限り清浄に保つように、初期に確立される。つぎに、チャンバーは酸素のみ、または酸素と前駆物質とにより、その圧力が1Torr〜50Torrの範囲となるように満たされる。チャンバー内の成長温度は200℃〜500℃であり、チャンバーの圧力は成長の間を通じて1Torr〜50Torrに保たれる。
【0041】
図3Aおよび図3Bは、SiO基板上に形成された四角の形状のIrOxナノチューブを示す写真である。
【0042】
図4Aおよび図4Bは、TaN基板上に成長したIrOxナノチューブを示す写真である。TaN層の厚さは約10nmである。成長温度、圧力、および前駆物質供給量を選択することにより、IrOxナノチップのクラスターの作用を制御することができることに注目することは興味深い。上に指摘したとおり、4個のナノチップがクラスターとなり閉じたチューブを形成するように成長することができる。
【0043】
図5は、クラスター化の前の、個別のナノチップを撮影した写真である。
【0044】
図6は、ナノチップがナノチューブに成るためのクラスター化の過程を開始したときの、ナノチップを撮影した写真である。
【0045】
図7は、酸化イリジウム(IrOx)ナノチューブを形成する方法のフローチャートである。わかりやすさのために、この方法は一連の付番されたステップとして描かれているが、明白に述べられた場合を除いては、番号から順番を推測してはならない。これらのステップのいくつかは省かれる、平行して行われる、あるいは厳密な並び順序を保つことが要求されずに行われることがあり得ることを、理解すべきである。形成方法はステップ700から始まる。
【0046】
ステップ702は、TiN、TaN、Ti、Ta、Si、またはSiOなどの材料から作られる表面を有する基板を提供する。しかしながら、本方法は、ここに列記された基板材料に必ずしも限定されないことに、注意する必要がある。ステップ704は、基板、あるいはチャンバーの温度を200℃から500℃の範囲内に確立する。ステップ706は、前駆物質反応ガスとして、酸素を導入する。ステップ708は、最終圧力を1から50Torrの範囲内に確立する。一局面においては、最終圧力は30から50Torrの範囲内にある。ステップ710は、(メチルシクロペンタジエニル)(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)前駆物質を導入する。ステップ712は、有機金属化学気相成長(MOCVD)処理を使用することにより、IrOx中空ナノチューブを基板表面から成長させる。
【0047】
一局面においては、前駆物質の導入(ステップ710)に先立って、ステップ705が、ベース圧力を1×10−8から1×10−3Torrの範囲内に確立する。ある変化例(variation)では、最終圧力は以下のように確立される。ステップ706は酸素を加え、それによりベース力を最終圧力に向けて増加させる。ステップ708で最終圧力が到達された後に、ステップ710で前駆物質が導入される。すなわち、ステップ708の次にステップ710がなされる。代替としては、酸素および前駆物質を同時に加えることにより、ベース圧力を最終圧力に向けて増加させることの結果として、最終圧力はステップ708で確立される。この場合は、ステップ708はステップ706および710の同時実行の結果として行われる。
【0048】
一局面においては、ステップ710における(メチルシクロペンタジエニル)(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)前駆物質の導入は、サブステップを含む。ステップ710aは、前駆物質を60℃から90℃の範囲内の最初の温度に初期加熱する。ステップ710bは、前駆物質を導入する移送ラインの中において最初の温度を保つ。ステップ710cは、前駆物質を搬送ガスと混合する。例えば、搬送ガスはArまたは酸素であり得る。
【0049】
搬送ガスが酸素である場合には、ステップ706および710は統合され得る。しかし酸素が搬送ガスとして使用される場合にも、前駆物質から分離されたラインを経て酸素が導入され得る。酸素が搬送ガスでない場合には、酸素は分離されたラインを経て導入される(ステップ706はステップ710とは別個のものとなる)。いかなる導入法においても、全体の酸素の流量は代表的には50から500sccmの範囲内である。同様に、前駆物質および搬送ガス(ステップ710)は50から500sccmの範囲内の流量で導入される。
【0050】
他の一局面においては、ステップ712において、基板表面からのIrOx中空ナノチューブの成長は、四角の断面形状のナノチューブの成長を含む。異なる局面においては、ステップ712は、直径100Åから1マイクロメートルの範囲のナノチューブを成長させる。一局面においては、ステップ712は、500Åから2マイクロメートルの長さを有するナノチューブを成長させる。その結果、ナノチューブは1:1から50:1の範囲内のアスペクト比(長さ対幅)を有し得る。
【0051】
他の一局面においては、ステップ712におけるIrOx中空ナノチューブの成長は、サブステップを含む。ステップ712aは、端部を有する隣り合うナノチップのクラスターを成長させる。ステップ712bは、ナノチップの端部を結合する。ステップ712cは、端部を結合されたクラスターを成長させ、閉じたチューブ構造を生成する。一局面においては、ステップ712bは、クラスターから4個の端部を結合する。
【0052】
IrOxナノチューブ、および中空のIrOxナノチューブ構造の製造方法が提供されてきた。本発明を説明するために、いくつかの材料および処理方法の詳細が提示されてきた。しかしながら、本発明は、これらの例示されたもののみに限定されるものではない。装置の例は提供されなかったものの、本発明はRAM、FeRAM、フィールド電極、pHセンサー、およびナノコンピュータの利用分野に応用性を有することが認識されるべきである。本発明の他の変更および他の実施形態は、当業者によって想起されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】酸化イリジウム(IrOx)ナノチューブの部分的断面の側面図である。
【図2】図1のナノチューブの部分的断面の平面図である。
【図3】図3Aおよび図3Bは、SiO基板の上に形成されたIrOxナノチューブの四角の形状を示す写真である。
【図4】図4Aおよび図4Bは、TaN基板に上に成長したIrOxナノチューブを示す写真である。
【図5】クラスター化する以前の個別のナノチップを撮影した写真である。
【図6】ナノチップがナノチューブに成るためのクラスター化の過程を開始したときの、ナノチップを撮影した写真である。
【図7】酸化イリジウム(IrOx)ナノチューブを形成する方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
104、106、110、112、200、202、204 ナノチップ
108、114 ナノチューブ
116 ナノチューブの長さ
206 ナノチューブの空洞
208 ナノチューブの直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化イリジウム(IrOx)ナノチューブを形成する方法であって、
表面を有する基板を提供することと、
(メチルシクロペンタジエニル)(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)前駆物質を導入することと、
有機金属化学気相成長(MOCVD)処理を使用し、該基板の表面からIrOx中空ナノチューブを成長させること
を包含する、方法。
【請求項2】
前駆物質反応ガスとして酸素を導入することをさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1Torrから50Torrの範囲内の最終圧力を確立することをさらに包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記前駆物質を導入することに先立ち、1×10−8Torrから1×10−3Torrの範囲内のベース圧力を確立することをさらに包含する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前駆物質反応ガスとして酸素を導入することは、前記ベース圧力を最終圧力に向けて増加させるために酸素を加えることを含み、
前駆物質を導入することは、該最終圧力が到達された後に前駆物質を導入することを含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
最終圧力を確立することは、酸素および前駆物質を同時に加え、前記ベース圧力を前記最終圧力に向けて増加させることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記(メチルシクロペンタジエニル)(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)前駆物質を導入することは、
60℃から90℃の範囲内の第1の温度に前記前駆物質を初期加熱することと、
前記前駆物質を導入する移送ラインの中において該第1の温度を保持することと、
前記前駆物質を搬送ガスと混合することと
含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記前駆物質を搬送ガスと混合することは、Arおよび酸素を含むグループから選択された搬送ガスと混合することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記(メチルシクロペンタジエニル)(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)前駆物質を導入することは、50標準立方センチメートル毎分(sccm)から500sccmの範囲内の流量で、前記前駆物質および搬送ガスを導入することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前駆物質反応ガスとして酸素を導入することは、50sccmから500sccmの範囲内の流量で酸素を導入することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
1Torrから50Torrの範囲内の最終圧力を確立することは、30Torrから50Torrの範囲内の最終圧力を確立することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
200℃から500℃の範囲内の基板温度を確立することをさらに包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記基板の表面からIrOx中空ナノチューブを成長させることは、四角の断面形状を有するナノチューブを成長させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記基板の表面からIrOx中空ナノチューブを成長させることは、100Åから1マイクロメートルの範囲内の直径を有するナノチューブを成長させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記基板の表面からIrOx中空ナノチューブを成長させることは、1:1から50:1の範囲内のアスペクト比(長さ対幅)を有するナノチューブを成長させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記基板の表面からIrOx中空ナノチューブを成長させることは、
端部を有する隣り合うナノチップのクラスターを成長させることと、
該ナノチップの端部をマージすることと、
端部をマージされた該クラスターを成長させ、閉じたチューブ構造を生成することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ナノチップの端部をマージすることは、前記クラスターの中から4個の端部をマージすることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
表面を有する基板を提供することは、TiN、TaN、Ti、Ta、Si、およびSiOを含むグループから選択された材料から作られた基板を提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記基板の表面からIrOx中空ナノチューブを成長させることは、500Åから2マイクロメートルの範囲内の長さを有するナノチューブを成長させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
酸化イリジウム(IrOx)のナノチューブであって、
結合された端部を有する複数のクラスターIrOxナノチップと、
該ナノチップの間に形成された中空の空洞とを備え、
IrOx中空ナノチューブが形成される、ナノチューブ。
【請求項21】
前記中空ナノチューブは、四角の断面形状を有する、請求項20に記載のナノチューブ。
【請求項22】
前記中空ナノチューブは、100Åから1マイクロメートルの範囲内の直径を有する、請求項20に記載のナノチューブ。
【請求項23】
前記中空ナノチューブは、1:1から50:1の範囲内のアスペクト比(長さ対幅)を有する、請求項20に記載のナノチューブ。
【請求項24】
4個のナノチップの端部が結合されて中空ナノチューブを形成している、請求項20に記載のナノチューブ。
【請求項25】
前記ナノチューブは、500Åから2マイクロメートルの範囲内の長さを有する、請求項20に記載のナノチューブ。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−117520(P2006−117520A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−300934(P2005−300934)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】