説明

酸化チタンの分析方法とこの方法を実施する酸化チタンの分析装置

【課題】 アナターゼ型結晶とルチル型結晶が不均一に混合共存する酸化チタン試料の混合比分布画像を得る方法を提供する。
【解決手段】 単色の入射X線で酸化チタン試料表面の被測定領域全体を照らし、各部位からの回折X線を二次元位置敏感型検出器で区別して検出して強度分布画像を形成する。単色の入射X線の波長を変えてアナターゼ型結晶の所定の格子面とルチル型結晶の所定の格子面での強度分布画像を取得し、それらを割り算して換算した混合比分布画像を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナターゼ型結晶とルチル型結晶とが混合共存する酸化チタン試料の測定表面にX線を照射し、試料各位置から回折するX線を捕らえ、試料を構成する結晶とその割合を画像として取得し、試料を構成する結晶と混合比を同定することを特徴とする、酸化チタンの分析方法とその方法を実施する酸化チタンの分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンは、白色顔料として塗料等に使用されるほか、電子材料、触媒材料、紫外線吸収剤、光触媒等、多くの用途に使用されている。二酸化チタンの結晶型には、アナターゼ、ルチル、ブルッカイトの三形態が知られている。アナターゼ型は、低温で安定で主に光触媒として利用される。ルチル型は、高温で安定で主に塗料、顔料に使用される。酸化チタンの製造技術の制約から、純粋なアナターゼ型結晶のみ、ルチル型結晶のみを得ることは難しく、通常、両者が混在して生成されたままで使用されていることが多い。そして、場合によっては、両者が混合しているほうが、良い結果をもたらす場合があるという報告もある(例えば特許文献1)。何れにしても、酸化チタンを利用するに際しては、アナターゼ型結晶とルチル型結晶の混合状態をできるだけ正確に把握することが必要である。
【0003】
アナターゼ型結晶とルチル型結晶とが混合してなる試料の分析において、それらの混合比を決定するためには、X線回折計を用いて測定した回折X線の強度比を利用する方法がよく用いられている。この方法は、銅の特性X線(Cu−Kα線)を試料に照射することによって、アナターゼ型結晶において最も強い回折X線が得られる(101)面(格子面間隔d=0.352nm、ブラッグ角θ=12.68°)とルチル型結晶の最も強い回折X線が得られる(110)面(格子面間隔d=0.3247nm、ブラッグ角θ=13.73°)について着目し、両者の回折X線強度の比から、混合比既知の標準試料を用いて予め作成された検量線を用いて重量比を算出するものであった(非特許文献1、特許文献2)。
【0004】
しかしながら、この従来のX線による同定方法によって得られる結果は、あくまでもX線が照射されている領域全体の平均情報であり、領域を構成する各部位における真の値を反映していない。そのため、試料を構成する結晶の混合割合と諸特性との関係を理解しようとする場合においては問題があった。
酸化チタンの特性を利用する研究、開発を今後一層進めるためには、先ず、試料を構成する結晶の混合比を正確に知ること、すなわち、構成する結晶の混合比を広い領域についての平均値でなく、広い領域内の各所の値として正確に知ることが重要であり、求められている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−255332号公報
【非特許文献1】R.A. Spurr and H. Myers,“Quantitative Analysis of Anatase−Rutile Mixtures with an X−Ray Diffractometer ”, Analytical Chemistry, vol.29, No.5, pp.760−762, 1957.
【特許文献2】特開2004−143453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このようなニーズに応えようというものである。すなわち、酸化チタン試料を構成する結晶の混合比を全体的にも、また局所的にも正確に、しかも簡単且つ短時間に決定しえる酸化チタンの分析方法を提供することを第一の課題とする。また、その酸化チタン分析方法を実施するための酸化チタン分析装置を提供することを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の課題は、
アナターゼ型結晶とルチル型結晶を不均一に含んでいる混合酸化チタン試料の局所的な混合比の分布画像を得る酸化チタン分析方法において、
チタンのK吸収端の波長より長波長の単色の入射X線で酸化チタン試料表面の被測定領域全体を照射し、
酸化チタン試料で回折されて被測定領域から出射する回折X線の角度発散を角度発散制限手段で制限することにより、被測定領域内の各部位から出射する所定の散乱角(入射X線光軸と回折X線光軸とのなす角、回折角)の回折X線を、それらの部位に対応して一対一に対向して配置された二次元位置敏感型検出器の各検出素子で区別して検出し、
各検出素子で検出した回折X線の強度を各画素値とする二次元の回折X線強度分布画像を形成し記録すること、
入射X線の光軸及び酸化チタン試料及び角度発散制限手段及び二次元位置敏感型検出器を固定したままで、単色の入射X線の波長をチタンのK吸収端の波長より長い波長の範囲内で変えることによってアナターゼ型結晶の所定の一つの格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像とルチル型結晶の所定の一つの格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像を取得し、
それらの画像の対応する画素の画素値の比をとり、その比の値を各画素値とする、もしくは、さらに所定の換算を行った値を各画素値とすることによって二次元の混合比分布画像を形成し記録することを特徴とする、酸化チタン分析方法によって解決される。
【0008】
また、前記第一の課題は、
アナターゼ型結晶とルチル型結晶が不均一に混合共存する酸化チタン試料の局所的な混合比の分布画像を得る酸化チタン分析方法において、
チタンのK吸収端の波長よりも長波長の単色X線からなる入射X線で酸化チタン試料表面の被測定領域全体を照らし、酸化チタン試料で回折されて被測定領域から出射する回折X線の角度発散を角度発散制限手段で制限することにより、被測定領域内の各部位から出射する回折X線を、それらの部位と一対一に対向して配置された二次元位置敏感型検出器の各検出素子で区別して検出し、
各検出素子で検出した回折X線の強度を各画素値とする二次元の回折X線強度分布画像を形成し記録すること、
入射X線の光軸と酸化チタン試料を固定したままで、被測定領域内の各部位と二次元位置敏感型検出器の各検出素子との間の対応関係を変えずに二次元位置敏感型検出器を試料表面と同一の平面内で前記被測定領域の中心を通り入射X線の光軸に垂直に延在する回転軸線のまわりで回動させて、検出する回折X線の散乱角(入射X線光軸と回折X線光軸とのなす角、回折角)を変えることにより、アナターゼ型結晶の所定の一つの格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像とルチル型結晶の所定の一つの格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像とを取得し、それらの画像の対応する画素の画素値の比をとり、その比の値を各画素値とするもしくはさらに所定の換算を行った値を各画素値とする二次元の混合比分布画像を形成し記録することを特徴とする、酸化チタン分析方法によっても解決される。
二次元位置敏感型検出器は、X線回折の迅速測定を行う際に、しばしば用いられる。この場合に二次元位置敏感型検出器で得られる画像は、X線回折図形そのものであり、X線によって照明された試料全体の平均についての情報を与えるものである。これに対し、この発明の酸化チタン分析方法においては、二次元位置敏感型検出器で得られる画像は、画像上の点が試料上の点に対応する。これを図1に基づいて説明する。図1、試料の模式図(a)に示すように、観察視野内にはいろいろな結晶相が異なる場所に分布しているが、この発明の酸化チタン分析方法においては、二次元位置敏感型検出器で得られるX線像は(b)および(c)のように試料上の位置と対応する。すなわち、格子面間隔が特定の値d1である部分を画像化したものが(b)、特定の値d2である部分を画像化したものが(c) になり、さらに、その画像の明るさにより、それぞれの量を知ることができるのである。
【0009】
チタンのK吸収端の波長よりも長波長の単色X線からなる入射X線としては、チタンのX線管によりチタンの特性X線を発生させて単色化したものを用いてもよい。チタンのKα線を用いる場合には、同時に発生するKβ線はフィルターを用いて除去することが好ましい。例えば通常の粉末X線回折計等で一般的に使用される銅のKα線(8.04keV)は、チタンのK吸収端(4.97keV)よりも高エネルギーであるため、照射すればチタンからの蛍光X線が出てくる。本発明では、酸化チタンの異なる結晶相であるルチルとアナターゼの識別を目的としているが、この蛍光X線はルチルとアナターゼのどちらからも放出されてバックグラウンドとなり、両者の識別を妨げるものである。これに対し、チタンのK吸収端よりも低いエネルギーであるチタンのKα線(4.5keV)を用いると、こうした蛍光X線は放出されないため、回折X線のみによって両者を識別することができる。
【0010】
前記第二の課題は、
アナターゼ型結晶とルチル型結晶が不均一に混合共存する酸化チタン試料の局所的な混合比の分布画像を得る酸化チタン分析装置において、
光軸不変且つ波長可変にチタンのK吸収端の波長よりも長波長の単色の入射X線を発生させるX線発生部が固定保持されること、
当該X線発生部から出射した前記入射X線が前記酸化チタン試料の表面の被測定領域全体を照らすように前記酸化チタン試料が固定保持されること、
前記酸化チタン試料で回折されて前記被測定領域から出射する回折X線を検出するための二次元に配列された複数の検出素子からなる二次元位置敏感型検出器が固定保持されること、
前記被測定領域内の各部位から出射する所定の散乱角の回折X線をそれらの部位と一対一に対向した前記二次元位置敏感型検出器の各検出素子で区別して検出するために、前記酸化チタン試料と前記二次元位置敏感型検出器との間に前記被測定領域から出射する回折X線の角度発散を制限する角度発散制限手段が設けられていること、
各検出素子によって検出された回折X線の強度を各画素値とする二次元の回折X線強度分布画像を形成し記録する画像形成記録部が設けられていること、
前記入射X線の光軸、前記酸化チタン試料、前記角度発散制限手段、及び前記二次元位置敏感型検出器を固定したままでルチル型結晶の所定の一つの格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像とアナターゼ型結晶の所定の一つの格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像とを取得するために、前記X線発生部が少なくともそれらの格子面の格子間隔に対応した二種類の波長の単色の入射X線を発生させ得ること、
前記画像形成記録部が、ルチル型結晶について取得された回折X線強度分布画像とアナターゼ型結晶について取得された回折X線強度分布画像との対応する画素の画素値の比を各画素値とする、もしくは、さらに所定の換算を行った値を各画素値とする二次元の混合比分布画像を形成し記録し得ること、
を特徴とする酸化チタン分析装置、によって解決される。
【0011】
このとき、注目する格子面に由来する回折X線強度のピーク波長がブラッグの式から理論的に求まる波長と厳密に一致するとは限らない場合に対応し、ピーク波長での回折X線強度分布画像を取得できるように、前記二種類の波長をそれぞれ中心として所望の範囲で前記入射X線の波長を連続的に変え得るようにするとよい。また、二次元位置敏感型検出器と酸化チタン試料とをできるだけ近接させて配置して検出効率を落とさないようにするためには、アナターゼ型結晶とルチル型結晶のどの格子面に注目するかにも依存するが、入射X線の視射角が0度を越え、3度以下の範囲内程度の角度である場合には、試料表面に対して75度から105度の範囲内の一つの出射角を有する回折X線を検出する位置に二次元位置敏感型検出器が固定保持されていると有利である。
【0012】
また、前記第二の課題は、
アナターゼ型結晶とルチル型結晶が不均一に混合共存する酸化チタン試料の局所的な混合比の分布画像を得る酸化チタン分析装置において、
チタンのK吸収端の波長よりも長波長の単色X線からなる入射X線を発生させるX線発生部が固定保持されること、
当該X線発生部から出射した前記入射X線が前記酸化チタン試料の表面の被測定領域全体を照らすように前記酸化チタン試料が固定保持されること、
前記酸化チタン試料で回折されて前記被測定領域から出射する回折X線を検出するための二次元に配列された複数の検出素子からなる二次元位置敏感型検出器が、試料表面と同一の平面内で前記被測定領域の中心を通り前記入射X線の光軸に垂直に延在する回転軸線のまわりで回動可能に配置されていること、
前記被測定領域内の各部位から出射する一つの散乱角の回折X線をそれらの部位と一対一に対向した前記二次元位置敏感型検出器の各検出素子で区別して検出するために、前記酸化チタン試料と前記二次元位置敏感型検出器との間に前記被測定領域から出射する回折X線の角度発散を制限する角度発散制限手段が前記二次元位置敏感型検出器と一体的に設けられていること、
各検出素子によって検出された回折X線の強度を各画素値とする二次元の回折X線強度分布画像を形成し、記録する、画像形成記録部が設けられていること、
前記X線発生部及び前記酸化チタン試料を固定したままでルチル型結晶の所定の一つの格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像とアナターゼ型結晶の所定の一つの格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像とを取得するために、前記二次元位置敏感型検出器が、前記被測定領域内の各部位と各検出素子との間の対応関係を変えることなしに少なくともそれらの格子面の格子間隔に対応する二つの散乱角度の回折X線をそれぞれ検出する角度位置で保持され得ること、
前記画像形成記録部が、ルチル型結晶について取得された回折X線強度分布画像及びアナターゼ型結晶について取得された回折X線強度分布画像の対応する画素の画素値の比を各画素値とする、もしくは、さらに所定の換算を行った値を各画素値とする二次元の混合比分布画像を形成し記録し得ること、
を特徴とする酸化チタン分析装置によっても解決される。
【0013】
ここで、チタンのK吸収端の波長よりも長波長の単色X線としてチタンの特性X線を用いるためにX線発生部にチタン管を使用してもよい。その場合、そのX線取り出し窓には、ヨウ素またはヨウ素化合物を含む溶液を調製しこれを直接塗布するか、該溶液を塗布してなる高分子フィルムを貼り付けることによって、窓をKβ線を吸収除去するフィルター構造とし、チタンのKα線だけを入射X線として用いることができるようにすることが望ましい。
【0014】
また、目的とする格子面からの回折X線の散乱角がブラッグ条件から理論的に求められる散乱角と厳密に一致するとは限らないので、二次元位置敏感型検出器が、被測定領域内の各部位と各検出素子との間の一対一の対応関係を変えることなしに、前記二つの散乱角度に対応する角度位置をそれぞれ中心として所望の角度範囲で連続的に回動可能で且つ当該角度範囲内の任意の角度位置に保持可能であるように設定することがより好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る酸化チタン分析方法及び酸化チタン分析装置では、酸化チタン試料のある領域を1点としてみた平均情報ではなく、その領域を複数の部位(各部位をそれぞれ1点とみる)、典型的には1000×1000の部位、に区画したときの各部位の情報としてのアナターゼ型結晶とルチル型結晶の混合比を各画素の値としてもつ二次元の混合比分布画像を従来の平均情報を得るのと同程度の時間で取得することができる。混合比分布画像は、アナターゼ型結晶の所定の格子面とルチル型結晶の所定の格子面に由来する回折X線強度の比の分布としても、混合比のわかった標準試料を用いて決定した所定の換算式を用いて換算した重量比の分布としても得ることができる。
【0016】
従来の平均情報を得る方法は、アナターゼ型結晶の最も強い回折X線が得られる(101)面とルチル型結晶の最も強い回折X線が得られる(110)面とに注目して回折X線強度比を取得するものであったが、二次元位置敏感型検出器で酸化チタン試料の被測定領域の各部位の情報を同時に区別して収集する本発明では、アナターゼ型結晶の(200)面とルチル型結晶の(111)面または(210)面または(211)面に注目すると、酸化チタン試料の表面と二次元位置敏感型検出器の検出器面(各検出素子の検出面が構成する面)が平行に近い状態で位置して対向することとなり近接した配置をとることができるので、検出効率の点で有利である。
【0017】
入射X線の波長を固定して、二次元位置敏感型検出器を回動させて散乱角を変えることにより、注目する格子面についての回折X線強度分布画像を取得する場合には、入射X線としてチタンのKα線を使用すると、チタンからの蛍光X線が生じないので、バックグラウンドの低い、すなわち、明瞭な回折X線強度分布画像を取得することができる。
【0018】
試料に対するX線の視射角(試料表面と入射X線とのなす角、狙い角)を、0度を超え3度以下の低角に設定すると、細い線状断面の入射X線を用いても被測定領域全面を均一に照らすことが可能となり、酸化チタン試料と二次元位置敏感型検出器をより近接させることも可能となる。また、基板上に酸化チタンの薄い層があるような試料についても、基板からの回折X線や蛍光X線の影響は、これを抑制することができる。本発明に係る酸化チタン分析装置では、X線発生部と酸化チタン試料と角度発散制限手段と二次元位置敏感型検出器とが上記の相対的な位置関係を満たしていれば、酸化チタン試料の表面が水平になるように配置しても、あるいは鉛直になるように配置しても、さらには傾斜するように配置してもかまわない。酸化チタン試料が粉末試料など、固定が必ずしも容易ではない試料である場合には、水平に配置した構成とするとよいことは言うまでもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
本発明に係るアナターゼ型結晶とルチル型結晶が不均一に混合共存する酸化チタン試料の局所的な混合比の分布画像を得る酸化チタン分析方法は、図2あるいは図3に示すように、入射X線で酸化チタン試料表面の被測定領域(この領域内から出射した回折X線だけが二次元位置敏感型検出器の検出面に入射することができる)全体を照らし、酸化チタン試料で回折されて被測定領域から出射する回折X線の角度発散を角度発散制限手段で制限して回折X線のうちの所定の光軸にほぼ平行な成分だけをとりだすことによって、被測定領域内の各部位から出射する一つの散乱角をもつ回折X線を、それらの部位と一対一に対向して配置された二次元位置敏感型検出器の各検出素子で区別して検出し、各検出素子で検出した回折X線の強度を各画素値とする二次元の回折X線強度分布画像を形成し記録する。
【0021】
第一の実施形態では、入射X線がチタンのK吸収端の波長よりも長波長の単色X線であり、入射X線の光軸も酸化チタン試料も二次元位置敏感型検出器も固定したままで、単色の入射X線の波長をチタンのK吸収端の波長よりも長い波長範囲内で変えることによってアナターゼ型結晶の所定の一つの格子面に由来する回折X線の強度を画素値とする回折X線強度分布画像とルチル型結晶の所定の一つの格子面に由来する回折X線の強度を画素値とする回折X線強度分布画像を上述のように取得し、それらの画像の対応する画素の画素値の比をとり、その比の値を各画素値とする二次元の混合比分布画像を形成し記録する。その際、アナターゼ型結晶とルチル型結晶の混合比がわかっている試料を用いて注目する格子面についての回折X線の強度比を重量比に換算する換算式を予め求めておき、その換算式を用いて換算した重量比の値を各画素値とする二次元の混合比分布画像を形成してもよい。
【0022】
より詳しく説明すると、散乱角(回折角、入射X線の光軸と回折X線の光軸とのなす角)が所定の値2θ0(ブラッグ角θ0)になる位置に二次元位置敏感型検出器を固定配置してアナターゼ型結晶及びルチル型結晶の予め決めた格子面のそれぞれの格子面間隔dA、dRに対してブラッグ条件(2dAsinθ0=λA、2dRsinθ0=λR)を満たすそれぞれの波長λA、λRでの回折X線強度分布画像を取得し、波長λAで得られるアナターゼ型結晶の回折X線強度分布画像で波長λRで得られるルチル型結晶の回折X線強度分布画像を割り算し、回折X線強度比を各画素値としてもつあるいは換算式によって換算された重量比を各画素値としてもつ二次元の混合比分布画像を作成する。この画像の各画素は被測定領域内の各部位と1対1に対応しているので、画像の明暗あるいは色の分布から被測定領域内のある部位ではアナターゼ型結晶の割合が大きく、ある部位ではルチル型結晶の割合が大きいということが一目瞭然となる。各画素値から混合比を数字で表すことも可能である。
【0023】
理論上は格子面間隔dA、dRに対してブラッグ条件を満たす波長がλA、λRであっても、実際にはこれらの波長よりも多少ずれることがありうるので、回折X線強度分布画像を取得するときには、これらの波長の近傍(例えば0.01〜0.02nmの程度の範囲、エネルギーにして100〜200eV程度の範囲)で連続的に波長掃引を行って最も強度が強くなる波長での回折X線強度分布画像を取得する必要がある。この方法では、アナターゼ型結晶についての画像取得のときとルチル型結晶についての画像取得のときとで入射X線の光軸、試料位置、角度発散制限手段位置、及び二次元位置敏感型検出器位置が不変であり、変わるのは入射X線の波長のみである。したがって、試料と角度発散制限手段と二次元位置敏感型検出器とが干渉しないような2θ0となるように比較に用いる格子面を選択すれば、試料のサイズや形状にかかわらず二次元位置敏感型検出器を試料に近接させて効率よく回折X線強度分布画像を取得することができる。それぞれの型を代表させる格子面としては、強度プロファイルにおいて最強線となるアナターゼ型(101)面、ルチル型(110)面を用いなければならないというものではない。
【0024】
図2は、第一の実施形態に係る酸化チタン分析方法を実施するための酸化チタン分析装置の概念図である。X線発生部1は、例えば放射光や回転対陰極X線源からの連続X線をモノクロメータ等の単色化手段で単色化することによって、波長可変に水平方向に幅広な線状断面を有するチタンのK吸収端の波長よりも長波長の単色の入射X線2を発生させる。波長にかかわらず入射X線2の光軸は一定である。酸化チタン試料3は、視射角(入射X線の光軸と試料表面とのなす角)θiが1°となるように試料支持部4によって固定保持され、試料表面上のハッチングして示した被測定領域A全体が入射X線2によって照らされる。複数の検出素子が二次元に配列されてなる二次元位置敏感型検出器5は、試料で回折されて試料表面の被測定領域A内から出射する85°の散乱角(回折角2θ=85°)をもつ回折X線8を検出する位置に検出器支持部6によって固定保持されている。
【0025】
この二次元位置敏感型検出器5は、XY座標で表現される平面上での位置の情報を与える二次元検出器、たとえば電荷結合型素子(=CCD)カメラでありうる。試料3と二次元位置敏感型検出器5との間には、角度発散制限手段7が設けられている。角度発散制限手段7は、微細管集合体でありうる。図2においては、角度発散制限手段7は、二次元位置敏感型検出器5と一体的に設けられているが、必ずしも一体的である必要はない。角度発散制限手段7が、被測定領域Aから出射する回折X線8の角度発散を制限して所定の光軸にほぼ平行な成分だけをとりだす。それによって、被測定領域Aのうちの二次元位置敏感型検出器5の検出素子とほぼ同サイズの各部位から試料表面に対して84°の出射角度(視射角1°で散乱角85°であるから試料表面に対する出射角度は84°である)で出射する回折X線8を各部位に対向する各検出素子がそれぞれ別々に検出する。そして、各検出素子が検出した回折X線強度を各画素値とする二次元の回折X線強度分布画像が不図示の画像形成記録部で作成され記録される。
【0026】
この装置を用いてアナターゼ型結晶の(200)面(dA=0.1892nm)からの回折X線の強度とルチル型結晶の(210)面(dR=0.2054nm)からの回折X線の強度との比から両者の重量比を評価する場合には、ブラッグの条件に従って、λA=0.2556nmの近傍で入射X線の波長を連続的に変えてアナターゼ型結晶の(200)面からの回折X線の強度が最大となる波長λ1をさがし、その波長での二次元の回折X線強度分布画像を取得する。一方、λR=0.2775nmの近傍で入射X線の波長を連続的に変えてルチル型結晶の(210)面からの回折X線の強度が最大となる波長λ2をさがし、その波長での二次元の回折X線強度分布画像を取得する。そして、ルチル型結晶の(210)面に関して取得された回折X線強度分布画像の各画素の値をアナターゼ型結晶の(200)面に関して取得された回折X線強度分布画像の対応する画素の値で割り、予め混合比のわかった試料を用いて作成しておいた回折X線強度比と重量比との換算式にあてはめることにより得られる重量比を各画素値とする二次元の重量比分布画像を形成する操作が画像形成記録部において行われる。
【0027】
作成された重量比分布画像の各画素は被測定領域A内の各部位と一対一の対応関係にあるので、この重量比分布画像から被測定領域A内の各部位での酸化チタンのアナターゼ型結晶とルチル型結晶の混合割合を知ることができる。
【0028】
二次元位置敏感型検出器5は、図2に示した装置では、散乱角度2θが85°(試料表面に対して84°で出射する回折X線を検出する)となる位置に固定配置されているが、別の散乱角度位置に配置されていてもよい。ただし、試料3となるべく近接させて検出効率を高くすることを念頭に置くならば、試料表面に対する出射角が75°〜105°程度の範囲内の一つの角度となる回折X線を検出する位置とするとよい。より好ましくは、試料と正対する角度位置(試料表面に対して90°で出射する回折X線を検出する)にできるだけ近い角度位置に配置することが望ましい。
【0029】
ここでは、視射角を1°とした場合の例を示したが、視射角は1°でなければならないというものではない。しかし、水平方向に幅広の細い線状断面をもつ入射X線を用いて、被測定領域A全体を均一に照らすためには、視射角をあまり大きくすることはできない。また、視射角が大きくなると、入射X線2を遮らないように、二次元位置敏感型検出器5と試料3との間の距離を大きくする必要が生じる場合もある。したがって、検出効率の点で不利になる。さらに、試料3が基板の上に酸化チタンの薄い層を形成したものであれば、入射角度を低角にすることはバックグラウンドを低く抑えるためにも有利である。よって、目安としては、いわゆる薄膜配置といわれる試料表面に対して0度を超え、3度以下程度の視射角とするとよい。また、装置の配置上、あるいは試料の形状の都合上、さらに大きな視射角を必要とする場合には、被測定領域全体を均一に照らすために、入射X線の形状を多少変更し、かつ二次元位置敏感型検出器をやや遠ざけて使用することにすれば、空間分解能や検出効率を犠牲にしつつも、目的とする画像を得ることが可能である。
【0030】
ここでは、二次元位置敏感型検出器が散乱角85度の回折X線を検出する位置に配置されている装置でアナターゼ型結晶の(200)面とルチル型結晶の(210)面を用いる例を示したが、用いる格子面は二次元位置敏感型検出器がどのような散乱角度位置に配置されているかということと、入射X線の使用できる波長範囲(一般的に使用できるX線は0.31nm(4keV)程度よりも短波長である場合が多く、また短波長側の限界であるチタンのK吸収端は0.2497nm(4.97keVである)を考慮に入れて、回折X線強度分布画像を取得しやすい格子面を用いればよい。この配置でルチル型結晶の(210)面のかわりに(111)面(dR=0.2188nm、λR=0.296nm近傍で波長掃引)を用いてもよいが、この配置よりもわずかに散乱角の小さい配置としたほうが入射X線の波長としては使い易い。散乱角2θ=100°となる位置に二次元位置敏感型検出器が配置された装置であれば、アナターゼ型結晶の格子面として(200)面(dA=0.1892nm、λA=0.290nm近傍で波長掃引)を、ルチル型結晶の格子面として(211)面(dR=0.16874nm、λR=0.259nm近傍で波長掃引)を用いればよい。
【0031】
例えば、最適な配置とはいえないが散乱角2θ=75°となる位置に二次元位置敏感型検出器が配置された装置では、アナターゼ型結晶の格子面として(103)面(dA=0.2431nm、λA=0.296nm近傍で波長掃引)もしくは(004)面(dA=0.2378nm、λA=0.290nm近傍で波長掃引)もしくは(112)面(dA=0.2332nm、λA=0.284nm近傍で波長掃引)を、ルチル型結晶の格子面として(101)面(dR=0.2487nm、λR=0.303nm近傍で波長掃引)もしくは(200)面(dR=0.2297nm、λR=0.280nm近傍で波長掃引)もしくは(111)面(dR=0.2188nm、λR=0.266nm近傍で波長掃引)を用いることも不可能ではない。
【0032】
第二の実施形態では、入射X線として、チタンのK吸収端の波長よりも長い波長の単色X線、例えばチタンの特性X線、特にKα線を用い、入射X線の光軸と酸化チタン試料を固定したままで、被測定領域内の各部位と二次元位置敏感型検出器の各検出素子との間の対応関係を変えずに二次元位置敏感型検出器を試料表面と同一の平面内で被測定領域の中心を通り入射X線の光軸に垂直に延在する回転軸線のまわりで回動(旋回)させて検出する回折X線の散乱角を変えることにより、アナターゼ型結晶の所定の一つの格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像とルチル型結晶の所定の一つの格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像とを取得し、それらの画像の対応する画素の画素値の比をとり、その比の値を各画素値とするもしくは予め求めておいた換算式を用いて換算した重量比の値を各画素値とする二次元の混合比分布画像を形成し記録する。
【0033】
例えばチタンのKα線を使う場合には、入射X線の波長がλ0=0.2749nmに決まっているので、アナターゼ型結晶の予め決めた格子面の格子面間隔dAに対してブラッグ条件(2dAsinθA=λ0)を満たす回折角度(散乱角度)2θAの位置に二次元位置敏感型検出器を配置して回折X線強度分布画像を取得し、ルチル型結晶の予め決めた格子面の格子面間隔dRに対してブラッグ条件(2dRsinθR=λ0)を満たす回折角度2θRの位置に二次元位置敏感型検出器を配置して回折X線強度分布画像を取得し、2θA位置で取得したアナターゼ型結晶の回折X線強度分布画像で2θR位置で取得したルチル型結晶の回折X線強度分布画像を割り算して二次元の強度比分布画像を作成する。
【0034】
入射X線としてチタンのK吸収端の波長より長い波長の単色X線を使用するのは、チタンからの蛍光X線が生じないため回折X線強度分布画像のバックグラウンドを低く抑えることができるからである。理論上は格子面間隔dA、dRに対してブラッグ条件を満たすブラッグ角はθA、θRであっても、実際にはこれらの角度よりも多少ずれることがありうるので、回折X線強度分布画像を取得するときには、二次元位置敏感型検出器を散乱角2θA及び2θBのそれぞれの近傍で連続的に回動させて角度走査して最も強度が強くなる検出器角度位置で保持して回折X線強度分布画像を取得する必要がある(角度走査範囲は試料の状況等に応じて変わるが通常は回折角度をはさんで2°程度走査すれば十分である場合が多い)。
【0035】
したがって、二次元位置敏感型検出器は、試料面内で被測定領域の中心を通り入射X線の光軸に対して垂直に延在する回転軸線のまわりで少なくとも2θAと2θRに対応する位置を含む角度領域で回動(旋回移動)可能であることが必要であり、さらに、強度最強位置を角度走査で探すためにこれらの位置をそれぞれ中心として数度の範囲では連続的に回動可能であっていたるところで保持可能であることが必要である。これらの位置の間の角度領域であって強度最強位置を探すための角度走査範囲に含まれない領域については二次元位置敏感型検出器を移動させることができれば十分である。したがって、それぞれの型の結晶を代表させる格子面は装置構成上二次元位置敏感型検出器が検出し得る散乱角度をもつ回折X線を発生させる面とする必要がある。この実施形態の場合も、必ずしもそれぞれの結晶型の最強線となる格子面を用いなければならないというものではない。
【0036】
図3に、第二の実施形態に係る酸化チタン分析方法を実施するための酸化チタン分析装置の概念図を示す。X線発生部11は、チタンのK吸収端の波長よりも長い波長をもつチタンの特性X線(Kα線;波長0.2749nm、X線エネルギー4510eV、Kβ線:波長0.2514nm、X線エネルギー4931eV)を発生させるX線管(チタン管)であり、X線管支持部20によって固定保持されている。このX線管11のX線取り出し窓はKβ線を吸収するフィルターからなっている。フィルターは、該X線取り出し窓にヨウ素またはヨウ素化合物を含む溶液を直接塗布するか、該溶液を塗布してなる高分子フィルムを貼り付けることによって構成される。これによって、Kβ線は吸収除去され、チタンのKα線だけが入射X線として用いられる。
したがって、図において、X線管11から出射される略水平方向に幅広の線状断面をもつ入射X線12は、チタンのKα線からなる。しかし、必ずしもチタン管を利用してチタンのKα線を入射X線としなければならないわけではなく、放射光や回転対陰極X線源から得られる連続X線をモノクロメータ等で単色化することによりチタンのK吸収端の波長より長波長の入射X線を得てもよい。
【0037】
酸化チタン試料13は、視射角(入射X線の光軸と試料表面とのなす角)θiが1°となるように且つ入射X線断面の長手方向と試料表面がほぼ平行になるように且つ試料表面上のハッチングして示した被測定領域A’全体が入射X線12によって照らされるように試料支持部14によって固定保持されている。複数の検出素子が二次元に配列されてなる二次元位置敏感型検出器15は、検出器支持部16によって、試料表面と同一の面内で被測定領域A’の中心を通って入射X線12の光軸に垂直に延在する回転軸線19のまわりで回動(旋回)可能に保持されている。図3に示した装置の場合には、二次元位置敏感型検出器15は、検出器面の法線と入射X線の光軸とのなす角(検出する回折X線の散乱角(回折角)に相当)がほぼ80°〜97°の範囲となる回転軸線19を中心とする円弧上を移動させられ且つその角度範囲内の所望の角度位置で保持され得る。
【0038】
この角度範囲内のどの角度位置でも、検出器面の中心を通る法線は被測定領域A’の中心を指し、各検出素子が常に被測定領域A’内の同じ部位を見込む。
試料13と二次元位置敏感型検出器15との間には、角度発散制限手段17が二次元位置敏感型検出器15と一体的に設けられており、被測定領域A’から出射する回折X線18の角度発散を制限し、検出器面の法線にほぼ平行な成分だけをとりだす。それによって、被測定領域A’のうちの二次元位置敏感型検出器15の検出素子とほぼ同サイズの各部位から出射する一つの散乱角をもつ回折X線18を各部位に一対一で対向する各検出素子がそれぞれ別々に検出する。そして、各検出素子が検出した回折X線強度を各画素とする二次元の回折X線強度分布画像が不図示の画像形成記録部で作成され記録される。
【0039】
図3に示す装置を用いて、アナターゼ型結晶の(200)面(dA=0.1892nm)からの回折X線の強度とルチル型結晶の(210)面(dR=0.2054nm)からの回折X線の強度との比から両者の混合割合を評価する場合には、λ0=0.2749nmであるので、ブラッグの条件に従って、二次元位置敏感型検出器位置を散乱角が2θA=93.18°となる位置の近傍で回動させることにより連続的に角度走査してアナターゼ型結晶の(200)面からの回折X線の強度が最大となる散乱角度2θ1を探し、その散乱角度位置で二次元の回折X線強度分布画像を取得する。
【0040】
一方、2θR=84.0°の近傍で二次元位置敏感型検出器15を連続的に回動させて角度走査してルチル型結晶の(210)面からの回折X線の強度が最大となる散乱角度2θ2を探し、その散乱角度位置での二次元の回折X線強度分布画像を取得する。そして、ルチル型結晶の(210)面に関して取得された回折X線強度分布画像の各画素の値をアナターゼ型結晶の(200)面に関して取得された回折X線強度分布画像の対応する画素の値で割り、予め混合比のわかった試料を用いて作成しておいた回折X線強度比と重量比との換算式にあてはめることにより得られた重量比を各画素値とする二次元の重量比分布画像が画像形成記録部において作成され記録される。作成された重量比分布画像の各画素は被測定領域A’内の各部位と一対一の対応関係にあるので、この重量比分布画像から被測定領域A’内の各部位での酸化チタンのアナターゼ型結晶とルチル型結晶の混合割合を知ることができる。
【0041】
二次元位置敏感型検出器15の回動角度範囲は、図3に示した装置では、ほぼ80°〜97°の範囲であるが、この角度範囲は注目する格子面に応じて異なってくる。例えばアナターゼ型結晶については(200)面を対象としたままとし、ルチル型結晶の(101)面(dR=0.2487nm、2θR=67.10°近傍で角度走査)を用いるならば、回動角度範囲がほぼ63°〜97°、ルチル型結晶の(111)面(dR=0.2188nm、2θR=77.8°近傍で角度走査)を用いるならば、ほぼ74°〜97°、ルチル型結晶の(211)面(dR=0.16874nm、2θR=109.09°近傍で角度走査)を用いるならば、ほぼ89°〜113°とすればよい。
【0042】
ただし、二次元位置敏感型検出器15と試料13との距離は常に固定であるので、なんらかの部材によって入射X線が遮られることのない範囲でこれらをなるべく近接させて回折X線を効率よく検出することを念頭に置くならば、回動角度範囲がなるべく90°近傍の狭い範囲となるように注目する格子面を選択することが望ましい。
装置の構成上不利な角度とはなるが、原理的には、アナターゼ型結晶の(103)面(dA=0.2431nm、2θA=68.86°近傍で角度走査)、(004)面(dA=0.2378nm、2θA=70.62°近傍で角度走査)、(112)面(dA=0.2332nm、2θA=72.23°近傍で角度走査)などとの間で強度比を調べてもよい。
【0043】
図2および図3のどちらの装置の場合にも、試料3、13と二次元位置敏感型検出器5、15は、角度発散制限手段7、17等によって入射X線が遮られない範囲でできるだけ近接させたほうが回折X線の強度の点で有利である。
【0044】
角度発散制限手段7、17としてはコリメータ(例えば直径6ミクロン、長さ1mm)の合成石英製キャピラリーを図4のように円盤状に(例えば直径20mm)集合させたキャピラリープレート、あるいはリソグラフィ技術により軽金属に同様の加工を施したもの)等を用いることができる。
【0045】
二次元位置敏感型検出器5、15としては、多素子の半導体検出器、X線検出能力を有するCCDカメラ、CMOSイメージセンサー等を用いることができる。X線を直接検出するのではなく、X線によって発光するシンチレータを有し、そのシンチレータの発光を検知するような検出器であってもよい。
【0046】
画像形成記録部は、コンピュータであり、全てのデータをコンピュータに記録し、データ処理、画像化処理をおこなう。コンピュータの機能をマイクロチップとして二次元位置敏感型検出器に内蔵させて構成することも可能であり、含むものである。
【0047】
本発明の効果を確認するため、図5(a) に示すようなアナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンの粉末が混在する試料(直径13ミリ、厚さ2ミリ)に対し、約8ミリ(横)×約0.4ミリ(縦)の大きさのX線(エネルギー4600eV、波長0.2695nm)を約1度で入射させた(撮像時間 1秒×100回)。この試料の混合分布状態は既知であり、図において観察視野内のRはルチルが多く分布する領域、Aはアナターゼが多く分布する領域である。X線は破線で示す8ミリ角の観察視野全体に照明された。76度(ルチルの(210)面、d=0.2054nmに対応する反射が得られる角度)と84度(アナターゼの(200)面、d=0.1892nmに対応する反射が得られる角度)の2つの散乱角でX線像を取得した後、演算処理によって、ルチル型酸化チタンとアナターゼ型酸化チタンとの分布状態を抽出したものが、それぞれ(b)と(c) である。この結果は、準備した試料の混合状態ときわめてよく対応しており、ルチルとアナターゼが異なる分布を持っていることを明瞭な画像として示すことができている。(b)と(c)の画像は、ルチル対アナターゼの混合比がそれぞれ1:0および0:1の場合の分布を示しているが、本発明に係る酸化チタン分析方法では、更に、同様にして、任意の混合比、例えば1:1や2:1のような混合比のものがどの部分に多く、どの部分に少ないかを示すこともできるし、(b)と(c)
の間の画像間の簡単な割り算によって試料上の各点のそれぞれにおける混合比が
どうであるかを示す画像を得ることもできる。
【0048】
以上のX線画像情報は、実際の分布状況と整合し、二次元に展開された実際の試料における結晶の分布状況、量比を全体的にも、局部的にも正確に同定しうることが確認された。一方、図5(a)に示した試料を従来技術の粉末X線回折装置により測定すると、X線がR領域とA領域を同時に照明するため、得られる回折X線強度はそれぞれの領域からの回折X線の強度の平均値となるため、どのように混合して分布しているかについては全くわからず、R領域とA領域を含む全領域の平均混合比しか得ることはできない。そこで、試料の一部しか照明できないような小さなX線ビームを用いて、照明される試料位置を変えながら測定を繰り返すほかないことになるが、それでは、多数の点を測定するための測定時間があまりに膨大となり、本発明に係る方法のような短時間での同定は不可能である。
本発明は、X線照射するX線発生部も、そして試料も動かすことなく固定したままで、X線を短時間全面照射することにより、試料の各位置における結晶混合比情報を短時間で分析し、提供できるものであり、優れた同定手段を提供したものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
酸化チタンは古くから電子材料、触媒材料、紫外線吸収剤、光触媒等、多くの用途に使用されてきた物質であるが、近年の研究で、改めてその重要性が認識され、見直されている。例えば、紫外線を吸収し、有害物質を分解する働きを利用して、ガラスや壁面にコーティングすることによって、付着する汚れを分解し、雨水で自然に洗い流す自己洗浄機能等は、その一例である。このような例は、一例にすぎずとどまる事がない。いずれにしても酸化チタンの利用が進むに従い、構成する酸化チタン結晶の分布状態を正確に把握し、管理し、あるいは制御するとともに、品質管理を徹底することが求められている。 本発明は、このような分野に適った技術であることは明白であり、今後、大いに酸化チタンを利用する技術分野において採用され、普及することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明において取得されるX線像がどのようなものであるかを示す概念図である。(a) は試料の模式図である。観察視野内にはいろいろな結晶相が異なる場所に分布している。(b)および(c)は、取得されるX線像を模式的に示したものである。すなわち、格子面間隔が特定の値d1である部分を画像化したものが(b) であり、特定の値d2である部分を画像化したものが(c) である。さらに、その画像の明るさにより、その量を知ることができる。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る酸化チタン分析方法を実施するための酸化チタン分析装置の概念図である。
【図3】本発明の第二の実施形態に係る酸化チタン分析方法を実施するための酸化チタン分析装置の概念図である。
【図4】実施例で使用した角度発散制限手段であるキャピラリープレートを一部切載して示した外観図である。
【図5】ルチルとアナターゼが異なる分布を持つ酸化チタン試料(a) に適用した実施例である。(b)および(c)は、実験的に得られたX線像からルチルとアナターゼの分布状態を抽出したものである。
【符号の説明】
【0051】
1 X線発生部
2 入射X線
3 酸化チタン試料
4 試料支持部
5 二次元位置敏感型検出器
6 検出器支持部
7 角度発散制限手段
8 回折X線
9 検出器支持部
11 X線発生部(X線管、チタン管)
12 入射X線
13 酸化チタン試料
14 試料支持部
15 二次元位置敏感型検出器
16 検出器支持部
17 角度発散制限手段
18 回折X線
19 回転軸線
20 X線管支持部
A 被測定領域
A‘ 被測定領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナターゼ型結晶とルチル型結晶が不均一に混合共存する酸化チタン試料の局所的な混合比の分布画像を得る酸化チタン分析方法において、
チタンのK吸収端の波長より長波長の単色の入射X線で酸化チタン試料表面の被測定領域全体を照らし、
該酸化チタン試料で回折されて被測定領域から出射する回折X線の角度発散を角度発散制限手段で制限することにより、被測定領域内の各部位から出射する所定の散乱角の回折X線を、それらの部位と一対一に対向して配置された二次元位置敏感型検出器の各検出素子で区別して検出し、
各検出素子で検出した回折X線の強度を各画素値とする二次元の回折X線強度分布画像を形成し記録すること、
入射X線の光軸及び酸化チタン試料及び角度発散制限手段及び二次元位置敏感型検出器を固定したままで、単色の入射X線の波長をチタンのK吸収端の波長より長い波長の範囲内で変えることによってアナターゼ型結晶の所定の一つの格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像とルチル型結晶の所定の一つの格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像を取得し、
それらの画像の対応する画素の画素値の比をとり、その比の値を各画素値とする、もしくは、さらに所定の換算を行った値を各画素値とすることによって二次元の混合比分布画像を形成し記録することを特徴とする、酸化チタン分析方法。
【請求項2】
アナターゼ型結晶とルチル型結晶が不均一に混合共存する酸化チタン試料の局所的な混合比の分布画像を得る酸化チタン分析方法において、
チタンのK吸収端の波長よりも長波長の単色X線からなる入射X線で酸化チタン試料表面の被測定領域全体を照らし、酸化チタン試料で回折されて被測定領域から出射する回折X線の角度発散を角度発散制限手段で制限することにより、被測定領域内の各部位から出射する回折X線を、それらの部位と一対一に対向して配置された二次元位置敏感型検出器の各検出素子で区別して検出し、
各検出素子で検出した回折X線の強度を各画素値とする二次元の回折X線強度分布画像を形成し記録すること、
入射X線の光軸と酸化チタン試料を固定したままで、被測定領域内の各部位と二次元位置敏感型検出器の各検出素子との間の対応関係を変えずに二次元位置敏感型検出器を試料表面と同一の平面内で被測定領域の中心を通り入射X線の光軸に垂直に延在する回転軸線のまわりで回動させて検出する回折X線の散乱角を変えることにより、アナターゼ型結晶の所定の一つの格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像とルチル型結晶の所定の一つの格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像を取得し、
それらの画像の対応する画素の画素値の比をとり、その比の値を各画素値とする、もしくは、さらに所定の換算を行った値を各画素値とする二次元の混合比分布画像を形成し記録することを特徴とする酸化チタン分析方法。
【請求項3】
前記入射X線がチタンX線管から発生するチタンの特性X線であることを特徴とする、請求項2に記載の酸化チタン分析方法。
【請求項4】
前記チタンX線管には、チタンのKβ線を吸収するフィルターが取り付けられていることを特徴とする、請求項3に記載の酸化チタン分析方法。
【請求項5】
前記Kβ線を吸収するフィルターは、X線取り出し窓にヨウ素またはヨウ素化合物を含む溶液を直接塗布するか、該溶液を塗布してなる高分子フィルムを貼り付けることによって構成されていることを特徴とする、請求項4に記載の酸化チタン分析方法。
【請求項6】
前記所定の一つの格子面における回折X線強度分布画像を取得する際の結晶格子面が、ルチル型結晶においては(111)面、(210)面、及び(211)面のうちのいずれか一つであり、アナターゼ型結晶においては(200)面であり、各格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像を取得することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の酸化チタン分析方法。
【請求項7】
アナターゼ型結晶とルチル型結晶が不均一に混合共存する酸化チタン試料の局所的な混合比の分布画像を得る酸化チタン分析装置において、
光軸不変且つ波長可変にチタンのK吸収端の波長よりも長波長の単色の入射X線を発生させるX線発生部が固定保持されること、
当該X線発生部から出射した前記入射X線が前記酸化チタン試料の表面の被測定領域全体を照らすように前記酸化チタン試料が固定保持されること、
前記酸化チタン試料で回折されて前記被測定領域から出射する回折X線を検出するための二次元に配列された複数の検出素子からなる二次元位置敏感型検出器が固定保持されること、
前記被測定領域内の各部位から出射する所定の散乱角の回折X線をそれらの部位と一対一に対向した前記二次元位置敏感型検出器の各検出素子で区別して検出するために、前記酸化チタン試料と前記二次元位置敏感型検出器との間に前記被測定領域から出射する回折X線の角度発散を制限する角度発散制限手段が設けられていること、
各検出素子によって検出された回折X線の強度を各画素値とする二次元の回折X線強度分布画像を形成し記録する画像形成記録部が設けられていること、
前記入射X線の光軸、前記酸化チタン試料、前記角度発散制限手段、及び前記二次元位置敏感型検出器を固定したままでルチル型結晶の所定の一つの格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像とアナターゼ型結晶の所定の一つの格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像とを取得するために、前記X線発生部が少なくともそれらの格子面の格子間隔に対応した二種類の波長の単色の入射X線を発生させ得ること、
前記画像形成記録部が、ルチル型結晶について取得された回折X線強度分布画像とアナターゼ型結晶について取得された回折X線強度分布画像の対応する画素の画素値の比を各画素値とする、もしくは、さらに所定の換算を行った値を各画素値とする二次元の混合比分布画像を形成し記録し得ることを特徴とする、酸化チタン分析装置。
【請求項8】
前記二種類の波長をそれぞれ中心として所望の範囲で前記入射X線の波長を連続的に変え得ることを特徴とする、請求項7に記載の酸化チタン分析装置。
【請求項9】
視射角が0度を超え3度以下の間の角度となるように前記酸化チタン試料が固定保持されること、前記入射X線が試料表面と平行な方向に幅広の線状断面を有すること、前記二次元位置敏感型検出器が試料表面に対して75度から105度の範囲内の一つの出射角を有する回折X線を検出する位置に固定保持されていることを特徴とする、請求項7または請求項8に記載の酸化チタン分析装置。
【請求項10】
前記所定の一つの格子面における回折X線強度分布画像を取得する際の結晶格子面が、ルチル型結晶においては(111)面、(210)面、及び(211)面のうちのいずれか一つであり、アナターゼ型結晶においては(200)面であり、各格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像を取得することを特徴とする、請求項7ないし9のいずれか一項に記載の酸化チタン分析装置。
【請求項11】
アナターゼ型結晶とルチル型結晶が不均一に混合共存する酸化チタン試料の局所的な混合比の分布画像を得る酸化チタン分析装置において、
チタンのK吸収端の波長よりも長波長の単色X線からなる入射X線を発生させるX線発生部が固定保持されること、 当該X線発生部から出射した前記入射X線が前記酸化チタン試料の表面の被測定領域全体を照らすように前記酸化チタン試料が固定保持されること、
前記酸化チタン試料で回折されて前記被測定領域から出射する回折X線を検出するための二次元に配列された複数の検出素子からなる二次元位置敏感型検出器が、試料表面と同一の平面内で前記被測定領域の中心を通り前記入射X線の光軸に垂直に延在する回転軸線のまわりで回動可能に配置されていること、
前記被測定領域内の各部位から出射する一つの散乱角の回折X線をそれらの部位と一対一に対向した前記二次元位置敏感型検出器の各検出素子で区別して検出するために、前記酸化チタン試料と前記二次元位置敏感型検出器との間に前記被測定領域から出射する回折X線の角度発散を制限する角度発散制限手段が前記二次元位置敏感型検出器と一体的に設けられていること、
各検出素子によって検出された回折X線の強度を各画素値とする二次元の回折X線強度分布画像を形成し記録する画像形成記録部が設けられていること、
前記X線発生部及び前記酸化チタン試料を固定したままでルチル型結晶の所定の一つの格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像とアナターゼ型結晶の所定の一つの格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像とを取得するために、前記二次元位置敏感型検出器が、前記被測定領域内の各部位と各検出素子との間の対応関係を変えることなしに少なくともそれらの格子面の格子間隔に対応する二つの散乱角の回折X線をそれぞれ検出する角度位置で保持され得ること、
前記画像形成記録部が、ルチル型結晶について取得された回折X線強度分布画像及びアナターゼ型結晶について取得された回折X線強度分布画像の対応する画素の画素値の比を各画素値とするもしくはさらに所定の換算を行った値を各画素値とする二次元の混合比分布画像を形成し記録し得ることを特徴とする、酸化チタン分析装置。
【請求項12】
前記X線発生部がチタンの特性X線を発生させるX線管からなることを特徴とする、請求項11に記載の酸化チタン分析装置。
【請求項13】
前記X線発生部がチタンのKβ線を吸収するフィルターを備え、前記入射X線としてチタンのKα線が出射されるようにしてなることを特徴とする、請求項11または請求項12に記載の酸化チタン分析装置。
【請求項14】
前記Kβ線を吸収するフィルターが、ヨウ素またはヨウ素化合物を含む溶液が直接塗布されたX線取り出し窓、または、該溶液が塗布された高分子フィルムが貼付されたX線取り出し窓によって構成されているものであることを特徴とする、請求項13に記載の酸化チタン分析装置。
【請求項15】
前記二つの散乱角が、77.80°及び93.18°であり、前記所定の一つの格子面における回折X線強度分布画像を取得する際の結晶格子面が、ルチル型結晶においては(111)面、アナターゼ型結晶においては(200)面であり、各格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像を取得することを特徴とする、請求項13または請求項14に記載の酸化チタン分析装置。
【請求項16】
前記二つの散乱角が、84.00°及び93.18°であり、前記所定の一つの格子面における回折X線強度分布画像を取得する際の結晶格子面が、ルチル型結晶においては(210)面であり、アナターゼ型結晶においては(200)面であり、各格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像を取得することを特徴とする、請求項13または請求項14に記載の酸化チタン分析装置。
【請求項17】
前記二つの散乱角が、109.09°及び93.18°であり、前記所定の一つの格子面における回折X線強度分布画像を取得する際の結晶格子面が、ルチル型結晶においては(211)面であり、アナターゼ型結晶においては(200)面であり、各格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像を取得することを特徴とする、請求項13または請求項14に記載の酸化チタン分析装置。
【請求項18】
前記所定の一つの格子面における回折X線強度分布画像を取得する際の結晶格子面が、ルチル型結晶においては(111)面、(210)面、及び(211)面のうちのいずれか一つであり、アナターゼ型結晶においては(200)面であり、各格子面に由来する回折X線の回折X線強度分布画像を取得することを特徴とする、請求項11または請求項12に記載の酸化チタン分析装置。
【請求項19】
前記二次元位置敏感型検出器が、前記被測定領域内の各部位と各検出素子との間の対応関係を変えることなしに、前記二つの散乱角をそれぞれ中心として所望の角度範囲で連続的に回動可能で且つ当該角度範囲内の任意の角度位置に保持可能であることを特徴とする、請求項11ないし18のいずれか一項に記載の酸化チタン分析装置。
【請求項20】
視射角が0度を超え3度以下の間の角度となるように前記酸化チタン試料が固定保持されること、及び前記入射X線が試料表面と平行な方向に幅広の線状断面を有することを特徴とする、請求項11ないし19のいずれか一項に記載の酸化チタン分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−292551(P2006−292551A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114013(P2005−114013)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】