説明

酸化膜の形成方法、エレクトロウェッティング装置、液体レンズ装置、液滴装置、光学素子、ズームレンズ、撮像装置、光変調装置、表示装置及びストロボ装置

【課題】樹脂基材や複雑な面形状を有する基材等に対しても密着力の高い誘電体層を形成する方法、及びこの誘電体層の形成されたエレクトロウェッティング装置や液体レンズを提供することを目的とする。
【解決手段】基材上に亜酸化タングステン膜を形成し、その亜酸化タングステン膜上に金属膜を形成する。そしてその金属膜表面を陽極酸化することによって誘電体層の形成を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化膜の形成方法に関する。また、これを適用したエレクトロウェッティング装置、液体レンズ装置、液滴装置、光学素子、ズームレンズ、撮像装置、光変調装置、表示装置及びストロボ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロウェッティング現象を利用した液体レンズの開発が進められて来ている。この液体レンズは、電圧を加えることによりレンズ自体の曲率を変化させることができるため、フォーカス調整やズーム操作の際にレンズを移動させる機構を省くことが可能となる。
【0003】
例えば特許文献1において開示された液体レンズは、チャンバ内に互いに混和しない電導性の第1の液体と、絶縁性の第2の液体を封止してある。また、第2の液体はチャンバの絶縁壁表面の第1の領域に接するように配置される。そして絶縁壁の第2の表面に配置された電極と第1の液体との間に電圧を印加し、第1の液体と第2の液体の界面形状を変化させることで可変焦点レンズを実現しようとするものである。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1において提案された液体レンズは、その駆動に±100V程度もの交流電圧を印加することが必要とされるため、実用化するには難点があった。
この電圧は、絶縁壁に成膜された誘電体層の厚さを薄くすることによって低減することができる。ところが、誘電体層を薄く成膜するとピンホールを生じやすくなり、ここから絶縁破壊が起きてしまう。
【0005】
この問題を解決するために、下記特許文献2では、電極を陽極酸化することで形成した金属酸化物によって誘電体層を形成することが提案されている。この手法は、アルミニウムや5酸化タンタル等の金属膜の表面を陽極酸化して誘電体層とし、酸化させなかった残りの部分をそのまま電極として利用するものである。
陽極酸化では、緻密な成膜を行うことができるのでピンホールの発生を抑制することが可能となり、また化成電圧までは絶縁破壊が起きない。それゆえ絶縁破壊強度の高い誘電体層を成膜することができる。
【0006】
また下記特許文献3ではさらに、液体レンズの駆動電圧を0V以上の交流電圧範囲とすることが開示されている。
絶縁膜(誘電体層)の負極性の耐電圧は正極性の耐電圧に比べて非常に小さい。このため比較的小さい負極性の電圧の印加によっても絶縁破壊が生じてしまう。従って、電圧の可動範囲は狭く制限される。これに対して下記特許文献3においては、値の大きい正極性の耐電圧側、即ち0V以上の範囲で周期的に変化する電圧を印加することによって、絶縁破壊を生じずに電圧の可動範囲を大きくすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2001−519539号公報
【特許文献2】特開2006−285031号公報
【特許文献3】特開2006−189291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
こうした誘電体層は、上記のような第1液体及び第2液体を封止する容器や第1液体に接する基板上に形成される。ところが、こうした容器や基板が樹脂基材である場合には、無機材料である誘電体層との密着力に問題が生じる。液体レンズに限らず、樹脂基材への無機材料の成膜は一般的に密着力が弱い。特に、金属膜表面を陽極酸化することによって酸化膜を形成する上述のような手法においては、陽極酸化時に大きな応力が生じ、膜剥がれを引き起こしてしまう。このため密着性を向上させる必要がある。
【0009】
また、液体を封止する容器、基板の形状によっても膜剥がれを生じやすくなる。
図21は、液体レンズの構成を表す断面図である。この液体レンズ250は、すり鉢状の内壁面を有する容器243内に導電性の第1液体251と、絶縁性の第2液体252を収容させる構成となっている。この容器243の大きい開口側の端面及びすり鉢状の内壁面にはタンタル膜が成膜される。そしてこのタンタル膜の表面を陽極酸化し、誘電体層246として5酸化タンタルTa膜を形成している。また、陽極酸化せずに残った内部のタンタル膜は、第1電極245としてそのまま使用することができる。
【0010】
こうして形成された誘電体層246のすり鉢状の内壁面には、さらに撥水膜248が形成され、容器243の残りの上端面には絶縁性部材247を介して第2電極249が配置される。
また、第2電極249上には第2光透過性部材240が配置され、反対側の小さい方の開口部には第1光透過性部材242が配置される。そして、これら第1光透過性部材242及び第2光透過性部材240は第1液体及び第2液体を容器243内に封止するように接着剤等にて密着固定される。
【0011】
そして、第1電極245及び第2電極249間に、図示しない電圧印加部によって電圧を印加することで、第1液体251と第2液体252の界面形状を変化させ、焦点距離を調整する。
【0012】
この例のように、平面でない複雑な面上に陽極酸化によって誘電体層を形成する場合には、その陽極酸化時の応力によって膜剥がれがさらに生じてやすくなってしまうため、より強い密着力を必要とする。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。従って本発明は樹脂基材や複雑な面形状を有する基材等に対しても密着力の高い金属膜、金属酸化膜を形成する方法を提供することを目的とする。そしてこの金属酸化膜を用い、エレクトロウェッティング現象を利用した装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明においては、まず基材上に亜酸化タングステン膜を形成し、その亜酸化タングステン膜上に金属膜を形成する。そしてその金属膜表面を陽極酸化することによって酸化膜を生成し、誘電体層を形成する。
すなわち、亜酸化タングステン膜を基材とのバッファ層として用いるものである。亜酸化タングステン膜を基材と金属膜との間に形成することにより密着力を向上させることができる。このため、陽極酸化時に発生する応力によって膜割れや膜剥がれが生じるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基材と基材上に形成される金属膜や金属酸化膜との間の密着力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態によるエレクトロウェッティング装置を示す構成図である。
【図2】ゼオノア樹脂基板に金属膜を形成し、陽極酸化を行った結果を示す参考図である。
【図3】酸化タングステン膜上にTa膜を形成し、陽極酸化を行った場合の酸化膜の拡大図である。
【図4】亜酸化タングステン膜上にTa膜を形成し、陽極酸化を行った場合の酸化膜の拡大図である。
【図5】本発明の一変形例による液体レンズ装置の構成を示す断面図である。
【図6】本発明の一変形例による液体レンズアレイ装置の構成を示す概略斜視図である。
【図7】本発明の一変形例による液体シリンドリカルレンズ装置の構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態による光記録再生装置を示すブロック図である。
【図9】本発明の一実施形態による液滴操作装置を示す構成図である。
【図10】(a)は本発明の一実施形態による液滴操作装置において液滴の初期状態を表す説明図である。(b)は液滴の接触箇所を示す説明図である。
【図11】(a)は本発明の一実施形態による液滴操作装置において動作時の液滴の状態を示す説明図である。(b)は液滴の接触箇所を示す説明図である。
【図12】(a)は本発明の一実施形態による液滴操作装置において動作時の液滴の状態を示す説明図である。(b)は液滴の接触箇所を示す説明図である。
【図13】(a)は本発明の一実施形態による光学素子において低電圧印加時の状態を示す断面図である。(b)印加電圧を高めた時の状態を示す断面図である。(c)はさらに印加電圧を高めた時の状態を示す断面図である。
【図14】本発明の一実施形態によるズームレンズの構成を示す断面図である。
【図15】本発明の一実施形態によるズームレンズの構成を示す断面図である。
【図16】本発明の一実施形態によるズームレンズの構成を示す断面図である。
【図17】本発明の一実施形態による撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図18】本発明の一実施形態による光変調素子の構成を示す断面図である。
【図19】本発明の一実施形態による表示装置の構成を示す斜視図である。
【図20】本発明の一実施形態によるストロボ装置を示す構成図である。
【図21】従来の液体レンズの構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態に係るエレクトロウェッティング装置及び蒸着方法について説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
(a)エレクトロウェッティング装置の構成
(b)金属酸化膜の評価
2.第1の変形例
3.第2の変形例
4.第3の変形例
5.第2の実施の形態
6.第3の実施の形態
7.第4の実施の形態
8.第5の実施の形態
9.第4の変形例
10.第6の実施の形態
11.第7の実施の形態
12.第8の実施の形態
13.第9の実施の形態
【0018】
1.第1の実施の形態
(a)エレクトロウェッティング装置の構成
図1は、本実施の形態によるエレクトロウェッティング装置100を表す概略構成図である。なお以降の図において対応する箇所には同一の符号を付し、重複を避けるものとする。
本実施の形態によるエレクトロウェッティング装置100は、液体配置部22と液体配置部22内の第1電極5及び第2電極9間に電圧をかける電圧印加部20と電圧印加部20への電源供給及び制御を行う本体駆動部21とにより構成される。
【0019】
まず液体配置部22の構成について以下説明を行う。
液体配置部22は、すり鉢状の孔が貫通して設けられた容器3の内部に導電性または有極性の第1液体11と、絶縁性の第2液体12が収容される構成とする。この第1液体11及び第2液体12は、互いに異なる屈折率を有する光透過性材料であり、そして互いに混合しないものを用いる。
例えば、第1液体11として、塩水、硫酸ナトリウム(NaSO)水溶液等の電解質溶液またはイオン性液体などを用いることができる。また、第2液体12としては、絶縁性または無極性を有する任意の液体を利用してもよく、例えばシリコーンオイル等を用いることができる。
【0020】
そして本実施の形態においては容器3の大きい開口側の面に、そのすり鉢状の内壁から上端の面にかけてバッファ層4が形成される。そしてその上面には第1電極5が形成され、さらにその上面に誘電体層6が形成される。
バッファ層4は亜酸化タングステンWO1.5を容器3上にスパッタリングすることによって成膜される。
【0021】
ところで、例えばAu等の金属膜を成膜する場合には、基板に到達したAu粒子が動くなどして島状のアイランド構造を形成しやすい。これに対して亜酸化タングステンの場合、タングステンの原子量が大きいので重く、また融点が高いので動かず安定しており、非常に少ない原子数の段階からアモルファス状態の均一な膜を形成することができる。
【0022】
この亜酸化タングステンにはTa、Ti、Mo、Cr、Nb、V、Zr、Hfのうち1種以上を含んでいてもよい。
これらの材料を添加することによって亜酸化タングステンの酸化状態を調整できるが、密着力が低下することはない。またこれらの材料の添加量としては、少なくとも40at%以内ならば、グレインが大きくなったり、結晶化したりしないことが確認された。したがって添加量は40at%以下であることが好ましい。
【0023】
誘電体層6には、スパッタによってバッファ層4上に成膜したTa膜の表面を陽極酸化することによって形成される金属酸化膜を用い、陽極酸化させずに残したTa膜の下部分を第1電極5として用いることができる。こうして形成されたTaの誘電体層は誘電率が大きく、極めて薄い皮膜で高い絶縁性を実現することができる。
【0024】
誘電体層6のすり鉢状の壁面部分には撥水膜(撥液膜)8が形成され、残りの上端の面には絶縁性部材7を介して、例えば容器3の開口の形状に沿ったリング状の第2の電極9が配置される。
撥水膜8に比べて誘電体層6の方が膜厚が比較的薄く、高誘電率となるため、第1電極5及び第2電極9間に電圧をかけた際には撥水膜8にその大部分が印加され、絶縁破壊がおきやすくなる可能性がある。
これを防ぐためには、膜厚をナノレベルまで薄くすることによって漏れ電流を増やし、撥水膜8の絶縁性を無視できるくらいに小さくするのが好ましい。
【0025】
なお、第2の電極9を光透過性の導電性材料とする場合には、リング状の形状に限る必要はなく、例えば光透過性導電性材料を光透過性基板上に設ける構成等としてもよい。その場合には、容器3の開口全面を塞ぐ形状とし、容器3に収容される第1液体11及び第2液体12を同時に封止する構成としてもよい。
【0026】
次に電圧印加部20は、液体配置部22の第1電極5及び第2電極9に接続され、両極間に電圧を印加する。この電圧印加によりエレクトロウェッティング現象が生じ、例えば撥水膜8と第1液体11との接触角を変化させることによって第1液体と第2液体12との界面がなす曲率を制御する。このようにすることで、液体配置部22を可変焦点の液体レンズとして利用することができる。
また、第1液体11及び第2液体12を収容する容器3の形状をすり鉢状とし、第1液体との接触面である撥水膜8に傾斜を持たせてある。この傾斜角度によって第1液体11及び第2液体12との界面の曲率の変化範囲を制御することが可能である。
【0027】
またこの電圧は例えば正極性の範囲で変動する交流電圧とすると、低電圧且つ広い電圧駆動範囲で液体配置部22を駆動することができるので好ましい。
また、電圧印加部20は液体配置部22が設置される機器等の本体駆動部21に接続される。なお、本体駆動部21は液体配置部22内に含まれていてもよい。
【0028】
このように、本実施の形態におけるエレクトロウェッティング装置100は、亜酸化タングステンによるバッファ層4を介してTa膜による電極5及びTaによる誘電体層6を配置してある。このためすり鉢状の複雑な形状を有する容器3上においてもバッファ層4は容器3及び電極5に対して十分な密着力を備える。それゆえTa膜の陽極酸化時において発生する応力に耐えることができ、膜割れや剥がれの無い誘電体層6を形成することが可能となる。
【0029】
このことにより生成が可能となったTaの誘電体層6は、陽極酸化時にTaからTaへと変化する過程で体積が増えるため、緻密な膜となりピンホールの発生を抑制することができる。また、陽極酸化によって生成した金属酸化物は化成電圧までは絶縁破壊を起こさないので、より高い絶縁破壊強度を得ることができる。そしてさらにTaの誘電率が高いため、より薄い膜厚で十分な絶縁性を確保することが可能となる。
また、本実施の形態のおいてはTa膜の表面のみを陽極酸化するため、残った部分を電極5として用いることができる。
【0030】
また陽極酸化の手法自体はタンタルコンデンサ等の製造において広く用いられており、製造装置の構成も比較的簡易であるとともに、製造技術も確立されている。このため互換性が高く容易に適用することができるため、生産準備にかかるコストを低減することもできる。
【0031】
(b)形成される金属酸化膜の評価
上述のように、本発明により亜酸化タングステンのバッファ層上に金属酸化膜を形成した場合と、比較例としてその他材料を用いた場合等について実験を行い、これらの評価を行った。実験条件について以下に説明する。
【0032】
誘電体層を形成する基板には、Si基板、石英基板、ゼオノア樹脂(日本ゼオン製)基板、PEI(ポリエーテルイミド)樹脂によるすり鉢状基板の4種を用いて実験を行った。
【0033】
上記基板上に形成するバッファ層及び電極とするTa薄膜はスパッタによって形成し、その後Ta薄膜表面を陽極酸化することによってTaによる誘電体層を形成した。
陽極酸化は、0.1mol/Lのシュウ酸水溶液を用いて1mAの定電流を流しながら行った。陽極酸化により誘電体層が形成されるに従って電圧値は増加するが、30Vに達した時点で電圧をその値30Vに固定し、電流をフリーな状態とした。
すると今度はTaによる誘電体層が形成されるに従って、流れる電流は小さくなっていく。この定電圧の状態で2時間置いたものを純水洗浄し、誘電体層を得た。
【0034】
また、形成された誘電体層を光学顕微鏡にて観察し、以下の評価基準にて評価を行った。
○:誘電体層にひび割れ及び剥がれが全く確認されない
×:誘電体層にひび割れ又は剥がれが確認される
【0035】
次に、実施例及び比較例について説明する。
[1]実施例1
まず、Si基板、石英基板、ゼオノア樹脂基板、PEI樹脂の4種の材料より成るすり鉢状基板4種に対してWO1.5の亜酸化タングステン薄膜をスパッタによって成膜し、バッファ層を形成した。この膜厚は20nmで、スパッタ条件はDCパワー100W、ガス圧は10mTorrである。
次に、この形成された亜酸化タングステン薄膜上にTa薄膜をスパッタによって形成した。膜厚は200nmで、スパッタ条件はDCパワー100W、ガス圧は10mTorrである。
そしてこのTa薄膜の表面を上述の方法にて陽極酸化することにより、五酸化タンタルTaの誘電体層を形成した。
【0036】
[2]比較例1
この例ではバッファ層を設けず、基板上に直接Ta薄膜を形成して陽極酸化を行ったこと以外は実施例1と同様にして誘電体層の形成を行った。
【0037】
[3]比較例2
この例では、バッファ層として膜厚20nmのTi薄膜を基板上に形成したこと以外は実施例1と同様にして誘電体層の形成を行った。
【0038】
[4]比較例3
この例では、バッファ層として厚さ20nmのCr薄膜を基板上に形成したこと以外は実施例1と同様にして誘電体層の形成を行った。
【0039】
[5]比較例4
この例では、バッファ層として厚さ20nmのSiO薄膜を基板上に形成した。なお、このスパッタ条件はRFパワー100W、ガス圧10mTorrであり、これ以外は実施例1と同様にして誘電体層の形成を行った。
【0040】
[6]比較例5
この例では、バッファ層として厚さ20nmのTa薄膜を基板上に形成したこと以外は比較例4と同様にして誘電体層の形成を行った。
【0041】
[7]比較例6
この例では、バッファ層として厚さ20nmの酸化タングステンWOを基板上に形成したこと以外は実施例4と同様にして誘電体層の形成を行った。
【0042】
下記の表1に実施例、及び各比較例における評価結果を示す。
【表1】

【0043】
表1を見ると、Si基板や石英基板に対しては、全ての例において膜剥がれやひび割れ等無く誘電体層の形成を行うことができている。これは、Siや石英等の無機基材に対しては、無機薄膜の密着力が高いためである。
【0044】
次に、ゼオノア樹脂基板に直接Ta薄膜を形成して陽極酸化を行った比較例1の結果を図2に示す。図2から明らかなように、この場合には領域T1において膜割れが生じているだけでなく、領域T2においては全面的に膜剥がれが生じてしまっている。
【0045】
ところが、実施例1や比較例4〜6ではゼオノア樹脂基板に対しても膜割れや膜剥がれ無く誘電体層を形成することができている。即ち、無機膜の密着層として一般的に用いられるTiやCrよりも、酸化物を用いた方が樹脂基板との密着性が高くなっていることがわかる。このことから、これら酸化膜によりぬれ性が改善されているものと考えられる。
【0046】
次に図3は、PEIすり鉢状基板にバッファ層として酸化タングステンWOを成膜した比較例6の誘電体層を光学顕微鏡にて観察した時の写真図である。この誘電体層では、酸化タングステン膜上に形成したTa膜の陽極酸化時に発生する応力のために無数のひび割れが生じてしまっている。
このように、PEIすり鉢状基板に誘電体層を形成する場合には、比較例1〜6の全てにおいて陽極酸化後に膜割れや膜剥がれが発生してしまうものであった。
【0047】
これに対して、バッファ層として亜酸化タングステンWO1.5を用いた実施例1における誘電体層を光学顕微鏡にて観察した写真図を図4に示す。この場合には、陽極酸化後も誘電体層には剥がれや膜割れが生じておらず、十分な密着性が得られているのがわかる。
【0048】
樹脂との密着性を高めるためには、従来より大気中でコロナ放電処理を行い、COOH基やOH基等を生成させたり、グロー放電中のラジカルやイオンによって官能基を生成させることにより樹脂表面を活性化させることが行われてきた。
また特に日本接着学会誌,41,404(2005)には、ポリイミド樹脂において金属―樹脂界面を隔てて電荷の移動を含む化学的結合が生じることも報告されている。
本実施例における亜酸化タングステンは活性が非常に高いため、複雑な形状のPEI樹脂基板に対してもこうした結合により強い密着力を生じ、バッファ層として良好な特性を示していることも考えられる。またこのように、バッファ層に活性の高い亜酸化物を用いることで、樹脂側への表面処理をせずとも樹脂と金属との密着性を高めることができる。
【0049】
また、SiOなどのSi系の膜は密着性を高めるためのバッファ層として広く用いられているが、これは成膜時スパッタチャンバー内においてフレーク状のゴミを発生させる。このようなゴミは液体レンズの絶縁膜等のように高い膜質が求められる場合には致命的な欠陥となる危険性を孕んでいる。
しかし、本実施例のように亜酸化タングステンをバッファ層として用いる場合には、スパッタ時にそのようなゴミを発生しないため、この問題を回避することもできる。
【0050】
他にも、酸化物は非導電性であるため、通常高周波により電離させるRFスパッタによって成膜を行うのが一般的である。ところが、亜酸化タングステンは導電性があるためDCスパッタによる成膜が可能であり、装置を簡便にすることができる。
【0051】
2.第1の変形例
図5は本発明の第1の変形例による液体レンズ装置200の構成を表す概略構成図である。本変形例においては、液体レンズ装置200はレンズ本体部23、電圧印加部20、本体駆動部21により構成される。
電圧印加部20は第1電極15及び第2電極19に接続され、両電極間に例えば電圧が所定の周期で変動する交流電圧を印加する。また本体駆動部21は、電圧印加部20への電源供給及び電圧印加部20の動作制御を行う。
なお、本体駆動部21はレンズ本体部23内部に組み込まれていてもよい。
【0052】
本変形例においてレンズ本体部23は、例えば円筒状の容器13内に第1液体11及び第2液体12を収容する構成とされる。この第1液体11及び第2液体12は、互いに異なる屈折率を有する光透過性材料であり、そして互いに混合しないものを用いる。
例えば、第1液体11として、塩水、硫酸ナトリウム(NaSO)水溶液等の電解質溶液またはイオン性液体などを用いることができる。また、第2液体12としては、絶縁性または無極性を有する任意の液体を利用してもよく、例えばシリコーンオイル等を用いることができる。
【0053】
容器13の開口端部13A及び13B上には、例えば、ガラスまたは光透過性樹脂で形成された円板状の第1光透過性部材2及び第2光透過性部材10がそれぞれ液密にエポキシ樹脂等によって接着される。そしてこれにより、第1液体11及び第2液体12は、第1光透過性部材2及び第2光透過性部材10の間に封止される。
【0054】
なお、本変形例では、第2光透過性部材10の外側(液体側とは反対側)の面を、入射光を屈折させるために曲面形状とした例を示すが、本発明はこれに限定されず、第2光透過性部材10の外側の面を平面形状としてもよい。一方、本変形例では、第1光透過性部材2の外側の面を平面形状とした例を示すが、第1光透過性部材2の外側の面を、第2光透過性部材10と同様に、曲面形状にしてもよい。
【0055】
また、本変形例では、第1光透過性部材2及び第2光透過性部材10の内側(液体側)の面を平面形状としたが、第1光透過性部材2及び/または第2光透過性部材10の内側の面を曲面形状としてもよい。さらに、必要に応じて、例えば、第1光透過性部材2及び/または第2光透過性部材10の外側の面に、例えば、入射光に対して回折作用や偏光作用等を生じさせる構造または薄膜を設けてもよい。なお、入射光の入射側は、第2光透過性部材10(第1液体11)側及び第1光透過性部材2(第2液体12)側のいずれでもよく、用途に応じて適宜選定することができる。
【0056】
本変形例の液体レンズ装置200では、容器13の内壁面に亜酸化タングステンによるバッファ層14を設けてある。そしてそのバッファ層上及び外壁面の一部に渡った領域に第1電極15を設ける。容器13の外壁面上の一部に形成された第1電極15の電極領域は、電極取り出し領域となる。また第1電極15にはTaを用い、これの内壁面側を陽極酸化することによってTaによる誘電体層16を生成してある。
なお、第1電極15及び誘電体層16は、その第2電極14側の端部が、容器13の一方の開口端部13Aからある距離dで離間するように形成される。
【0057】
また本変形例においても、誘電体層16、第1電極15及び第1光透過性部材2の液体側の面を覆うように、第1液体11より第2液体12との親和性の高い撥水膜18を設ける。
【0058】
そして第2光透過性部材10の液体側の面の外周近傍及び側壁面に渡って、例えばリング状の第2電極19を設ける。すなわち、第2電極19は、第2光透過性部材10と容器13の一方の開口端部13Aとの間に配置される。なお、第2電極19を光透過性の導電性材料で形成する場合には、リング状でなく、例えば円板状とし、第2光透過性部材10の液体側の面全体に渡って第2電極19を形成しもよい。
【0059】
また、本変形例では、第2透過性部材10及び第2電極19の液体側の面を覆うように、第2液体12より第1液体11との親和性の高い親水膜1が配置される。なお、第2光透過性部材10をガラスで形成し、その液体側の表面を清浄にして親水性を保持する場合には、親水膜1を設けなくてもよい。
【0060】
このように本変形例においては、例えば円筒状の内壁面側に配置するTaの第1電極15を亜酸化タングステンによるバッファ層14を介して設けてある。このためバッファ層14と容器13及び第1電極15の間に強い密着力を確保することができる。それゆえ、第1電極15とするTa膜を成膜し、これを陽極酸化することによってTaの誘電体層16を形成しても、その応力によって誘電体層16や第1電極15が膜割れを起こしたり、剥がれたりするのを防ぐことができる。
また、本変形例においてもTa膜の表面のみを陽極酸化するため、残った部分を電極15として用いることができる。
【0061】
また、陽極酸化においてはTaからTaへと変化する過程で体積が増えるため、緻密な膜となりピンホールの発生を抑制することができる。そして、陽極酸化によって生成した金属酸化物は化成電圧までは絶縁破壊を起こさないので、より高い絶縁破壊強度を得ることができる。またTaの誘電率が高いため、より薄い膜厚で十分な絶縁性を確保することが可能となる。
【0062】
このように円筒状の内壁面においても、亜酸化タングステンによるバッファ層14を設けることにより、Taによる第1電極15及びTaの誘電体層16の密着力を向上させることができる。
この亜酸化タングステンにはTa、Ti、Mo、Cr、Nb、V、Zr、Hfのうち1種以上を含んでいてもよい。
これらの材料を添加することによって亜酸化タングステンの酸化状態を調整できるが、密着力が低下することはない。また、添加量としては20at%以下であることが好ましい。
また、本変形例において円筒状の容器13の代わりにすり鉢状の貫通孔が設けられた容器・基板を用いる構成としても、もちろん同様の効果を得ることができる。
【0063】
3.第2の変形例
上述した本発明の可変焦点レンズを2次元状に並列配置(並置配列)して、レンズアレイを構成してもよい。図6にその一構成例を示す。なお、図6の例では、可変焦点レンズ内の第1及び第2液体の部分(容器内部)のみを示し、その他の構成部分並びに電圧印加部及び本体駆動部は省略している。
【0064】
レンズアレイ30は、第1の方向(図6中のx方向)に配列されたn個の可変焦点レンズ(例えば液体レンズ30a1〜30n1)を備える。また、レンズアレイ30は、第1の方向と例えば略直交する方向(図12中のy方向)に配列されたm個の可変焦点レンズ(例えば液体レンズ30a1〜30am)を備える。すなわち、この例のレンズアレイ30は、全体としてn×m個の可変焦点レンズにより構成される。なお、個々の可変焦点レンズとしては、例えば図1、図5(第1の実施形態及び変形例1)に示す構成の液体レンズを用いることができる。可変焦点レンズの個数n及びmに関しては、n≠mでも、n=mでもよい。
【0065】
4.第3の変形例
上述した実施の形態及び変形例においては、すり鉢状または円筒状の容器・基板の内壁にバッファ層を設ける例について示した。しかし、第1液体及び第2液体を収容する容器の形状はこれらに限られたものではなく、第1電極の陽極酸化が可能であれは用途、目的に応じて様々な形状をとってもよい。
図7は、第1液体41及び第2液体42を収容する容器を直方体形状とした例である。
なお図7では、レンズ本体部43の構成として導電性の第1液体41と絶縁性の第2液体42と、それらを収容する直方体状の収容空間を画成する壁面を示し、各壁面の詳細な構成は省略してある。
【0066】
本変形例においては、第1液体41及び第2液体42を収容する直方体形状の容器の内壁面のうち、対向する面44、45において第1液体41に対して吸着性の高い領域を略半円形状に形成する。例えば第1液体が電解性水溶液やイオン性水溶液である時には親水膜を半円形上に成膜してもよい。
そして残りの内壁面には撥水膜を成膜することにより、シリンドリカルタイプの液体レンズを構成することができる。
【0067】
このような直方体状の容器とする場合においても、その内壁面46、47に亜酸化タングステンによるバッファ層を形成し、そのバッファ層上にTa膜を成膜してよい。バッファ層上に成膜されたTa膜表面を陽極酸化することによりTaの誘電体層を生成しても、亜酸化タングステンによるバッファ層の高い密着力のために、誘電体層の膜割れや剥がれを抑制することができる。
【0068】
また、Ta膜内部の陽極酸化させなかった部分は第1電極としてそのまま用いることができ、電圧印加部20に接続される。第2電極は容器の下面68側に配置し、電圧印加部20に接続される。
電圧印加部20は本体駆動部21に接続され、本体駆動部21は電圧印加部20の電源供給及び制御を行う。
このような構成とすることにより、第1液体41と容器の内壁面46、47の接触角のみを制御するシリンドリカルレンズの液体レンズ装置40が実現される。
【0069】
なお、上述のシリンドリカルタイプの液体レンズ40を並置配列して、レンチキュラーレンズタイプのレンズアレイを構成してもよい。レンチキュラーレンズタイプのレンズアレイを構成した場合には、3次元画像を電圧制御により表示することが可能な表示装置に適用することが可能であり、小型で且つ実用的な駆動電圧とされた3次元表示装置を提供することができる。
【0070】
5.第2の実施の形態
既述のように、本発明によってTaの誘電体層を陽極酸化により形成することができる。このため、誘電体層の絶縁性を向上させることが可能となり、上記のような液体レンズ装置の駆動電圧を低下させることができる。
また、誘電体層の正極性の耐電圧は負極性の耐電圧よりも十分大きいので、印加電圧を正極性の範囲内で変動する交流電圧とすることによってもさらに駆動電圧を低下させることができる。
【0071】
こうした駆動電圧の低下によって各種光学機器へ上記のような液体レンズ装置を搭載することが可能となる。例えば、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)等に代表される各種の光ディスクの記録及び/または再生を行う光記録再生装置に適用することができる。また、その光ピックアップ装置にも同様に本発明の液体レンズ装置を適用することが可能である。
【0072】
図8は、本実施の形態による光記録再生装置の構成を表す概略構成図である。
各種の光ディスクを互換可能とする多波長の光源を用いる光記録再生装置においては、コリメータレンズの焦点距離を可変とする必要がある。このため本発明による液体レンズ装置をこのコリメータレンズとして適用するものである。
【0073】
本実施形態における光記録再生装置300は、光記録媒体75を回転させる回転駆動部72と、回転する光媒体にレーザ光を照射し、信号を読み取る光ピックアップ装置60と、光ピックアップ装置60を駆動する光ヘッド駆動部71を含む。
【0074】
光ピックアップ装置60は、レーザ光を発する光源61と、光源61からのレーザ光を対物レンズ66へと導く光学系62と、光学系62によって導かれたレーザ光の焦点を光記録媒体75に合わせる対物レンズ66とを含む。
また、光記録媒体75への記録位置又は記録情報の読み込み位置に合わせて対物レンズ66を移動させるアクチュエータ67と、アクチュエータ67を駆動させる対物レンズ駆動部70を含む。そして、光記録媒体75により反射されたレーザ光を受光する受光部68と、受光部68での受光に基づいて対物レンズ駆動部70及び光ヘッド駆動部71に動作信号を出力する演算回路69により構成される。
【0075】
光学系62は偏光ビームスプリッタ63と、液体レンズ装置51と、1/4波長板64と、ミラー65とによって構成される。
光源81から発せられたレーザ光は偏光ビームスプリッタ63を透過して液体レンズ装置51に入射する。この液体レンズ装置51には第2の実施形態及び第1〜3の変形例で示した液体レンズ装置を用いることができ、レーザ光の波長や光記録媒体75における記録層の深さに合わせて焦点距離を変えることができる。
また、その他の偏光ビームスプリッタ63や1/4波長板64、ミラー65は従来の光ピックアップ装置にて用いられているものを適用することができる。
【0076】
液体レンズ装置51は、レンズ本体部52と、レンズ本体部52に電圧を印加する電圧印加部20とを備える。なお、図8では、レンズ本体部52の構成部材として、第1及び第2光透過性部材と、容器と、レンズ本体部52内部に収容された第1及び第2液体とを示し、亜酸化タングステン又はこれに添加物を加えた材料より成るバッファ層、電極、誘電体層、撥水膜等は省略している。
【0077】
また、図8では、本実施形態の可変焦点レンズ51の構成をより明確にするために、電圧印加部20を駆動する本体駆動部21を光ピックアップ装置60内に記載している。しかしながら、本実施形態では、本体駆動部21は光記録再生装置300内の構成部分であり、例えば、図8中の光ヘッド駆動部71等に含まれるものとしてもよい。ただし、本発明はこれに限定されず、本体駆動部21が、液体レンズ装置51内に含まれていてもよい。
【0078】
液体レンズ装置51に入射することにより焦点距離を調整されたレーザ光は、1/4波長板64を通過後ミラー65によって反射され対物レンズ66に入射する。そして対物レンズ66によって集光されたレーザ光は光記録体7の記録トラックに入射する。
光記録媒体75から反射されたレーザ光は再びミラーによって反射され、1/4波長板及び液体レンズ装置51を透過して偏光ビームスプリッタ63に到達する。
【0079】
この時のレーザ光は1/2波長板を2度透過することにより偏光方向が回転している。このため偏光ビームスプリッタ63によって反射され受光部68によって受光される。
そして受光部68によって検出された信号は演算回路69へと送られる。
【0080】
次いで、演算回路69は、受光部68から入力された信号に基づいて、RF(高周波)信号、TE(トラッキングエラー)信号、FE(フォーカスエラー)信号をそれぞれ演算する。RF信号は、例えばアナログ/デジタル変換、エラー訂正などの処理が施され、記録再生信号として演算回路69から出力される。TE信号は、光ヘッド駆動部71及び/または対物レンズ駆動部70に出力される。また、FE信号は対物レンズ駆動部70に出力される。そして、対物レンズ駆動部70は、入力信号に基づいてフォーカスサーボ、トラッキングサーボを行う。
【0081】
このように、本実施形態における光記録再生装置300は、そのレーザ光のコリメート及び焦点距離の調整に本発明による液体レンズ装置51を用いている。液体レンズ装置51では従来の可変焦点距離レンズのようにレンズを機械的にスライドさせる等の駆動を必要としない。このため、このような駆動機構を省いて小型化することができるとともに、従来の機械的な駆動機構に比べて寿命を長くすることができる。
【0082】
また本実施形態においても、第1液体及び第2液体を収容する容器の内壁に亜酸化タングステンによるバッファ層を介してTa膜による電極及びTaによる誘電体層を配置する。このためTa膜の陽極酸化時において発生する応力に対しても、膜割れや剥がれの無い誘電体層を形成することができる。
またこのTaは誘電率が高いため従来の誘電体層よりも薄くすることができるとともに、駆動電圧を低減することが可能となる。
【0083】
6.第3の実施の形態
これまでは、エレクトロウェッティング現象を利用した液体レンズ装置やこれを適用した光学機器について述べてきたが、本発明を応用することによりその他各種の装置に適用することができる。ここでは、特にマイクロフローチャネルやキャピラリー等への適用が可能な液滴操作装置について述べる。
【0084】
従来よりMEMS技術の開発が進められる中でその応用範囲はますます広がり、バイオ分野においても多種多様なデバイスが提案されてきている。特にバイオチップ等においては試薬等を少量ずつ導入したり、混合して反応させるためにマイクロフローチャネルやマイクロキャピラリー等の開発が盛んに行われてもいる。
本実施の形態における液滴操作装置はこうしたマイクロ流体デバイスに好適に適用できる。
【0085】
図9に本実施形態における液滴操作装置400の概略構成を示す。
液滴操作装置400は、絶縁性材料で形成された一方の基板81と、基板81上に配列して形成された例えば亜酸化タングステン、又はこれに添加物を添加した材料より成るバッファ層88(88a、88b、88c、…、88i)を有する。そしてその上にはTaの電極83(83a、83b、83c、…、83i…)(第1電極)からなる電極アレイ83が形成され、その表面にはTaよりなる誘電体層84が生成される。
この誘電体層84はバッファ層88上に成膜したTa電極83の表面を陽極酸化することによって生成される。
また、この誘電体層84上を覆うように成膜された撥水膜85を有する。
【0086】
また、液滴操作装置400は、絶縁性材料で形成された他方の基板82と、基板82上に形成された共通電極89(第2電極)と、共通電極89上に形成された導電性の撥水膜90とを有する。
【0087】
なお、本実施形態においても、上述の液体レンズ装置と同様に、電極アレイ83側の撥水膜85の膜厚を十分薄くすることが望ましい。また、共通電極89の上に形成する導電性の撥水膜90もまた、撥水膜85と同様に、膜厚を十分薄くし、導通可能としてもよい。なお、撥水膜85及び90を薄く成膜するために、撥水膜85及び90の形成材料としては、反応性の撥水コート材である例えばフッ素系シランカップリング剤を用いることが望ましい。
【0088】
液滴操作装置400では、基板81の電極アレイ83側の面と基板82の共通電極89側の面が対向するように基板81及び82が配置される。そして、基板81及び82の間に、導電性または有極性を有する液滴86が基板81上の撥水膜85及び基板82上の撥水膜90に接するように配置される。
【0089】
液滴86としては、例えば塩水、硫酸ナトリウム(NaSO)水溶液等の電解質溶液、またはイオン性液体を用いることができる。液滴86の周囲はシリコーンオイル等の絶縁性液体87が充填されていてもよい。また、液滴86の周囲に、空気などの気体を充填してあってもよい。
【0090】
また、電極アレイ83の各電極83a、83b、83c、…、83i…と基板82上の共通電極89との間に、電圧印加部20及び電圧制御部25が接続される。なお、電圧印加部20は、液滴操作装置400内の本体駆動部21に接続される。
【0091】
また、本実施形態では、電圧制御部25と各電極83a、83b、83c、…、83i…との間には、それぞれスイッチ部Sa、Sb、Sc、…Si、…を配置する。なお、スイッチ部Sa、…Si、…は、電圧制御部25により制御されてもよいし、また、電圧制御部25内に組み込まれていてもよい。また、図9中の矢印aは液滴86の移動方向を示している。
【0092】
なお、本実施形態の液滴操作装置400では、電極アレイ83を一方向に配列した例を考える。それゆえ、本実施形態の液滴操作装置400は、後述の図10(b)(液滴操作装置400の上面図)に示すように、各電極(及び誘電体層)で構成されるセル(図10(b)中のCa、Cb…)が一方向に配列された構成となる。ただし、本発明はこれに限定されず、電極アレイ83(セル)を2次元に配列してもよい。
【0093】
次に、本実施形態の液滴操作装置400の動作例を図10〜12を参照しながら説明する。なお、下記動作説明では、液滴86の一つが、例えば、図10に示すように電極83b上付近に存在するような状態から説明する。
【0094】
まず、例えば、スイッチSbを閉じて、電極83b及び共通電極89間に所定の電圧を印加する。なお、共通電極89は例えば接地電位としてもよい。図10(a)及び(b)に、この際の液滴86の状態を示す。なお、図10(a)は、スイッチSbを閉じた際の液滴操作装置400の概略断面図であり、図10(b)は、その際の液滴操作装置100の概略上面図である。図10(b)中の液滴86を示す実線で囲まれた領域は、液滴86と撥水膜85との接触領域を示す。
【0095】
スイッチSbを閉じると、エレクトロウェッティング現象により、液滴86は誘電体層84b(電極83b)上に引き付けられる。それゆえ、この場合には、図10(a)及び(b)に示すように、液滴86は、誘電体層84b(電極83b)上、すなわち、セルCb上に配置される。なお、本実施形態ではセルCa、Cb、Cc、Cd…の形状を正方形状としているが、本発明はこれに限定されず、任意の形状にすることができる。また、各セルの一辺は、例えば数mm以下のサイズで形成される。
【0096】
次いで、スイッチSbだけでなくスイッチScを閉じて、電極83bに隣接する電極83cにも同様に所定電圧を印加する。図11(a)及び(b)に、この際の液滴86の状態を示す。なお、図11(a)は、スイッチSb及びScを閉じた際の液滴操作装置400の概略断面図であり、図11(b)は、その際の液滴操作装置400の概略上面図である。図11(b)中の液滴86を示す実線で囲まれた領域は、この動作段階における液滴86と撥水膜85との接触領域であり、点線で囲まれた領域は図10の動作段階における液滴86と撥水膜85との接触領域である。
【0097】
スイッチSb及びScを閉じると、液滴86は、エレクトロウェッティング現象によって電圧が印加された電極(この場合83b及び83c)に引き付けられるので、電極アレイ83側の撥水膜85と液滴86との接触領域が広がる。この結果、液滴86と撥水膜85との接触領域が、図11(a)及び(b)に示すように、電極83bだけでなく電極83c上、すなわち、セルCbだけでなくセルCcにも広がるように、液滴86が変形する。
【0098】
次いで、電極83bの電圧を低くする、例えば、スイッチSbを開けて0にする。図12(a)及び(b)に、この際の液滴86の状態を示す。なお、図12(a)は、スイッチSbを開けた際の液滴操作装置400の概略断面図であり、図12(b)は、その際の液滴操作装置400の概略上面図である。図12(b)中の液滴86を示す実線で囲まれた領域は、この動作段階における液滴86と撥水膜85との接触領域であり、実線で囲まれた領域は図11の動作段階における液滴86と撥水膜85との接触領域である。
【0099】
スイッチSbを開けると、電極83b(セルCb)上における液滴86に対するエレクトロウェッティング現象が弱くなる。その結果、液滴86は、図12(a)及び(b)の実線に示すように、液滴86は電圧が印加されている電極83c(セルCc)上に移動する。
【0100】
本実施形態では、上述のようにして電圧制御部25により、電極アレイ83の各電極83a、83b、83c、…、83i、…に印加する電圧を順次変化させることによって、液滴86を移動させることができる。なお、このように隣接する電極に順次電圧を印加してスムーズに液滴86を移動させるためには、液滴86が安定な状態で、常に隣接する電極に液滴86の底面の一部が接触するようにする必要がある。すなわち、液滴86の移動方向(図12では矢印aの方向)における液滴86の底面の幅が、電極アレイ83の各電極の移動方向の長さより大きくなるようにする必要がある。それゆえ、液滴操作装置400では、このようなことを考慮して、液滴86の体積、基板81及び82の間の間隔、電極アレイ83の各電極の移動方向の長さを適切に選定することが必要である。
【0101】
以上説明したように、本実施形態の液滴操作装置400では、基板上に亜酸化タングステン、又はこれに添加物を加えた材料によるバッファ層を介してTa膜による電極及びTaによる誘電体層を配置してある。このバッファ層は基板及び電極に対して十分な密着力を備えており、そのためTa膜の陽極酸化時において発生する応力に耐えることができ、膜割れや剥がれの無い誘電体層を形成することが可能となる。
【0102】
このことにより均質な生成が可能となったTaの誘電体層6は、陽極酸化時にTaからTaへと変化する過程で体積が増えるため、緻密な膜となりピンホールの発生を抑制することができる。また、陽極酸化によって生成した金属酸化物は化成電圧までは絶縁破壊を起こさないので、より高い絶縁破壊強度を得ることができる。
【0103】
またTa誘電率が高いので、誘電体層の厚さをより薄くすることができる。したがって、液滴(導電性液体)の所望の形状変化を得るための駆動電圧、すなわち、本実施形態では液滴を移動させるための駆動電圧を、陽極酸化による誘電体層を用いない従来に比べて格段に低くすることが可能となる。
【0104】
さらに、陽極酸化による成膜のために、従来に比べて精度良く均一な膜厚で誘電体層を形成することができるので、膜厚のばらつきに起因する液滴の変形のばらつきを抑制することができ、より高精度に液滴の移動を制御することが可能となる。また、本実施形態では、下地すなわち基板81が絶縁物質であれば電極に多少のピンホール欠損があっても絶縁破壊は起こらず、ピンホール欠損は実用上問題にならない。また、本実施形態のように、陽極酸化により誘電体層を形成した場合には、誘電体層は化成電圧までは絶縁破壊しないので、誘電体層の絶縁破壊強度を十分高くすることができる。
【0105】
7.第4の実施形態
本発明を撮像装置に適用する場合、上述のようにレンズとして用いる以外に例えば、絞りまたはシャッター機能を有する光学素子として適用することができる。以下、このような用途に本発明を適用した例を説明する。
【0106】
図13(a)〜(c)は、本実施形態による絞り機能またはシャッター機能を有する光学素子の構成及び動作の一例を表している。
光学素子120は、例えば絶縁性材料で形成された円筒形状の容器110と、その両方の開口端部110A及び110Bにそれぞれ設けられた第2光透過性部材118及び第1光透過性部材119とを備える。なお、容器110の開口端部110A及び110Bは、それぞれ第2光透過性部材118及び第1光透過性部材119により液密に封止される。
【0107】
また、主に容器110、第2光透過性部材118及び第1光透過性部材119により画成された内部空間には、導電性または有極性を有する第1液体111と、絶縁性を有する第2液体112とが収容される。第1液体111としては、例えば塩水、硫酸ナトリウム(NaSO)水溶液等の電解質溶液、またはイオン性液体を用いることができる。一方、第2液体112としては、例えばシリコーンオイルを用いることができる。
【0108】
ただし、第1液体111及び第2液体112のいずれか一方が、他方に比べて光透過性の低い液体で構成する。本実施形態では、例えば、第2液体112の光透過率が第1液体111に比べて低くする場合を示す。すなわち、入射光Liの波長帯域において光吸収率または光反射率が第1液体111よりも第2液体112の方が高い場合を説明する。これは、例えば、第2液体112に所定の着色材を混合させることにより実現することができる。
【0109】
また、本実施形態では、容器110の内壁面に亜酸化タングステン、又はこれに添加物を加えた材料より成るバッファ層91が成膜される。そしてこのバッファ層91上及び開口端部110Bから外壁面に渡ってTaの第1電極115が形成される。また、この際、第1電極115の容器110の他方の開口端部110A側の端部が、該開口端部110Aから離間して配置されように第1電極115を形成する。
【0110】
そして、容器110の内壁面上に形成された第1電極115の電極部分の表面には、陽極酸化によって形成されたTaからなる誘電体層114が設けられる。さらに、容器110の内壁面上に形成された誘電体層114及び第1光透過性部材119の液体側の面には撥水膜113(撥液膜)が被着される。
なお、本実施形態においても、撥水膜113の膜厚を十分薄く、例えば10nm以下の5nm程度とすることが望ましい。そのためには、撥水膜113の形成材料として、反応性の撥水コート材である例えばフッ素系シランカップリング剤を用いることが望ましい。
【0111】
一方、容器110の他方の開口端部110A側に配置した第2光透過性部材118の液体側の面の外周部には、例えばリング状の第2電極117を設ける。すなわち、第2光透過性部材118と容器110の他方の開口端部110Aとの間に第2電極117が配置される。第2電極117は、例えば、第2光透過性部材118の液体側の外周近傍領域の面及び外周側面にわたって形成される。ただし、第2電極117を光透過性の導電性材料より構成する場合は、リング状でなく、例えば円形状とし、第2光透過性部材118の液体側の面全体に渡って形成してもよい。
【0112】
また、本実施形態では、第2電極117及び第2光透過性部材118の液体側の面を覆って親水膜116、いわゆる親水コートが被着される。ただし、第2光透過性部材118をガラスで形成し、その液体側の表面を清浄にして親水性を保持する場合は、親水膜116を形成しなくてもよい。
【0113】
そして、容器110の外壁面に露出する第1電極115と、第2光透過性部材118の外周付近に形成された第2電極117とが電圧印加部20に接続される。また、電圧印加部20は、光学素子120を備える撮像装置等の光学装置に含まれる本体駆動部21に接続されている。なお、本体駆動部21は、光学素子120内に含まれていてもよい。
【0114】
次に、本実施形態による光学素子の動作について説明する。
まず、例えば、印加電圧が低い場合(例えばV=0)に、容器110の内壁面の撥水膜113に対する第1液体111の接触角θ(V0)が大きく、第1液体111と第2液体112との界面が、例えば図13(a)に示すような状態であるとする。また、図13(a)の例では、光透過率の低い第2液体112が、第1液体111に比べて体積が小さく、光入射側の第1光透過性部材119の液体側の面と第1液体111が接触した状態を考える。この場合には、その接触領域が光を通過させる開口窓121となる。また、図13(a)の状態では、入射光Liのうち多くの光量が光学素子120を通過する場合を考える。すなわち、入射光Liの光量と出射光L01の光量の差が小さい場合を考える。
【0115】
このような状態の光学素子120に所定の電圧V1を電圧印加部20から印加すると、エレクトロウェッティング現象により、第1液体111が容器110の内壁面の撥水膜113上に広がろうとする。そして、これにより、第2液体112が第1光透過性部材119側(光入射側)に押し出される。その結果、図13(b)に示すように、第1液体111の接触角θ(V1)はθ(V0)より小さくなり、第1液体111と第1光透過性部材119の液体側の面との接触領域、すなわち開口窓121の内径が小さくなる。この場合、入射光Liのうち光学素子120を通過する光量は減少し、光量が絞られた状態となる。
すなわち、図13(b)の状態における光学素子120の出射光L02の光量は、図13(a)の状態における出射光L01の光量より小さくなる。
【0116】
さらに、印加する電圧を高くすると、第1液体111により第2液体112がさらに第1光透過性部材119側(光入射側)に押し出され、第1液体111の接触角θ(V2)がさらに小さくなる。その結果、図13(c)に示すように、第2液体112が第1液体111と第1光透過性部材119との間に位置するようになり、第1液体111及び第2液体112間の界面形状が容器110内部で球面の一部を構成するような形状となる。このような状態では、開口窓121が塞がり、入射光Liは光学素子120を通過できない。すなわち、この状態はシャッターを閉めた状態となる。
【0117】
光学素子120をシャッター機能を有する光学素子として用いる場合には、上述のようにして、印加電圧を制御して開口窓121の開閉を制御する。また、上述のように、本実施形態では、印加電圧を調整することにより、開口窓121の内径(開口径)を調整することができるので、図13に示す構成の光学素子120は、絞り機能を有する光学素子としても利用することができる。
【0118】
また、本実施形態では、第1液体111は本質的に回転対称となる形状で変形するので、略真円に近い開口形状をもつ絞りまたはシャッター機能を備える光学素子120を提供することができる。通常の絞りやシャッターのように、複数の羽状部材の移動により開口径を変化させる場合は、このように真円の開口形状とすることができず、六角形などの多角形となる。例えば、意図的に焦点をずらしたいわゆるソフトフォーカス状態で撮影等を行った場合には、この開口形状が映像に反映されてしまうが、本実施形態の光学素子を用いることによって、極めて真円に近いソフトフォーカス状態を実現することができる。
【0119】
また、本実施の形態においても、基板上に亜酸化タングステン又はこれに添加物を加えた材料によるバッファ層を介してTa膜による電極及びTaによる誘電体層を配置してある。このバッファ層は基板及び電極に対して十分な密着力を備えており、それゆえTa膜の陽極酸化時において発生する応力に耐えることができ、膜割れや剥がれの無い誘電体層を形成することが可能となる。
さらに、この誘電体層の誘電率が高いので薄膜化が可能であり、第1液体121及び第2液体112間の界面形状を所望の形状に変化させるための駆動電圧を従来にくらべて低減することができる。
【0120】
さらに、本実施形態では、従来に比べて簡易な製造方法で誘電体層114を形成することができ、精度良く均一な膜厚で成膜することができる。これにより、誘電体層114の膜厚のばらつきに起因する界面形状の変形のばらつきを抑制することができ、より高精度に絞りまたはシャッター機能を制御することが可能となる。また、下地すなわち容器110を絶縁性材料で形成した場合には第1電極115に多少のピンホール欠損があっても絶縁破壊は起こらず、欠損は実用上問題にならない。また、陽極酸化により形成された誘電体層114は、化成電圧までは絶縁破壊しないので、誘電体層114の絶縁破壊強度を十分高くすることができる。
【0121】
8.第5の実施の形態
次に、第2の実施形態で説明した本発明の液体レンズ装置と同様の構成のレンズを利用して、ズームレンズを構成する例について説明する。
【0122】
図14は、本実施形態のズームレンズの一例の概略断面構成図である。ズームレンズ125は、2つの液体レンズ130及び150により構成される。液体レンズ130及び150はともに、第2の実施形態や第1の変形例等で説明した構成を用いることができる。
【0123】
液体レンズ130(第1レンズ部)は、レンズ本体部130aと、電圧印加部20とで構成される。レンズ本体部130aは、例えば円筒形状の容器140の両側の開口端部140A及び140Bをそれぞれガラス等の第2光透過性部材138及び第1光透過性部材139を液密に封止することにより構成される。そして、その内部には導電性または有極性の第1液体131と、絶縁性の第2液体132とが収容される。
【0124】
第1液体131としては、例えば塩水、硫酸ナトリウム(NaSO)水溶液等の電解質溶液、またはイオン性液体を用いることができる。一方、第2液体132としては、例えばシリコーンオイルを用いることができる。また、本実施形態では、第1液体131の屈折率は第2液体132の屈折率よりに小さくなるように、各液体の材料を選定する。
【0125】
また、容器140の内壁面にはバッファ層92として亜酸化タングステン又はこれに添加物を加えた材料より成る膜が成膜される。そしてこのバッファ層92上及び開口端部140Bから外壁面に渡ってTaより成る第1電極135が形成される。この際、容器140の他方の開口端部140A側における第1電極135の端部は、該開口端部140Aから離間して配置される。そして第1電極135の電極部分の表面は、陽極酸化され、Taからなる誘電体層134(第1誘電体層)が形成される。
【0126】
また、容器140の内壁面上に形成された誘電体層134及び第1光透過性部材139の液体側の面には撥水膜133(第1撥液膜)が被着される。なお、本実施形態においても、撥水膜133の膜厚を十分薄く、例えば10nm以下の5nm程度とすることが望ましい。このためには、撥水膜133の形成材料として、反応性の撥水コート材である例えばフッ素系シランカップリング剤を用いることが望ましい。
【0127】
一方、容器140の開口端部140A側に配置した第2光透過性部材138の内面には、例えばリング状の第2電極137を形成する。すなわち、第2光透過性部材138と容器140の開口端部140Aとの間に第2電極137を配置する。第2電極137は、例えば、第2光透過性部材138の液体側の外周近傍領域の面及び外周側面にわたって形成される。ただし、第2電極137を光透過性の導電性材料より構成する場合は、リング状でなく、例えば円形状とし、第2光透過性部材138の液体側の面全体に渡って形成してもよい。
【0128】
また、本実施形態では、第2電極137及び第2光透過性部材138の液体側の面を覆って親水膜136、いわゆる親水コートを被着する。ただし、第2光透過性部材138をガラスで形成し、その液体側の表面を清浄にして親水性を保持する場合は、親水膜136を形成しなくてもよい。
【0129】
そして、電圧印加部20(第1電圧印加部)は、容器140の外壁面に形成された第1電極135と、第2光透過性部材138の外周付近に形成された第2電極137とに接続される。なお、電圧印加部20は、本実施形態のズームレンズ125を備える撮像装置等の光学装置に含まれる本体駆動部21に接続されている。なお、本体駆動部21は、可変焦点レンズ140内に含まれていてもよい。
【0130】
他方の液体レンズ150(第2レンズ部)は、レンズ本体部150aと、電圧印加部20とで構成される。レンズ本体部150aは、例えば円筒形状の容器160の両側の開口端部にガラス等の第4光透過性部材158及び第3光透過性部材159を液密に封止することにより構成される。そして、その内部には導電性または有極性の第3液体151と、絶縁性の第4液体152とが収容される。
【0131】
第3液体151としては、例えば塩水、硫酸ナトリウム(NaSO)水溶液等の電解質溶液、またはイオン性液体を用いることができる。一方、第4液体152としては、例えばシリコーンオイルを用いることができる。また、本実施形態では、第3液体151の屈折率は第4液体152の屈折率より小さくなるように、各液体の材料を選定することが好ましい。
【0132】
また、容器160の内壁面には亜酸化タングステン、又はこれに添加物を加えた材料より成るバッファ層93が設けられる。そしてそのバッファ層93上、及び開口端部160Bから外壁面に渡ってTaの第3電極155が形成される。この際、第3電極155の容器160の他方の開口端部160A側の端部は、該開口端部160Aから離間して配置される。そして、容器160の内壁面上に形成された第3電極155の電極部分の表面は陽極酸化され、Taからなる誘電体層154(第2誘電体層)が形成される。
【0133】
また、容器160の内壁面上に形成された誘電体層154及び第3光透過性部材159の液体側の面には撥水膜153(第2撥液膜)が被着される。なお、本実施形態においても、第1の実施形態の可変焦点レンズと同様に、撥水膜153の膜厚を十分薄く、例えば10nm以下の5nm程度とすることが望ましい。このためには、撥水膜153の形成材料として、反応性の撥水コート材である例えばフッ素系シランカップリング剤を用いることが望ましい。
【0134】
一方、容器160の開口端部160A側に配置した第4光透過性部材158の内面には、例えばリング状の第4電極157を形成する。すなわち、第4光透過性部材158と容器160の開口端部160Aとの間に第4電極157を配置する。第4電極157は、例えば、第4光透過性部材158の液体側の外周近傍領域の面及び外周側面にわたって形成される。ただし、第4電極157を光透過性の導電性材料より構成する場合は、リング状でなく、例えば円形状とし、第4光透過性部材158の液体側の面全体に渡って形成してもよい。
【0135】
また、本実施形態では、第4電極157及び第4光透過性部材158の液体側の面を覆って親水膜156、いわゆる親水コートを被着する。ただし、第4光透過性部材158をガラスで形成し、その液体側の表面を清浄にして親水性を保持する場合は、親水膜156を形成しなくてもよい。なお、本実施形態では、液体レンズ130の第2光透過性部材138と、液体レンズ150の第4光透過性部材158とが対向するように、両レンズを配置する例を示す。
【0136】
そして、電圧印加部23(第2電圧印加部)は、容器160の外壁面に形成された第3電極155と、第4光透過性部材158の外周付近に形成された第4電極157とに接続される。なお、電圧印加部23は、本実施形態のズームレンズ125を備える撮像装置等の光学装置に含まれる本体駆動部24に接続されている。なお、本体駆動部24は、液体レンズ150内に含まれていてもよい。
【0137】
上述のように、本実施形態のズームレンズ125は、2つの液体レンズ130及び150で構成しているので、全体として、導電性液体(第1及び第3液体)と絶縁性液体(第2及び第4液体)との界面を2つ備えた構成となる。
【0138】
次にこのズームレンズ125の動作について以下に説明する。
まず、最初に、図14に示すように、液体レンズ130の第1液体131が凸状になっており、液体レンズ150の第3液体151が凹状となっている状態を考える。この状態は、例えば、液体レンズ130に印加する電圧V11を比較的低い値(例えばV11=0)に設定し、液体レンズ150に印加する電圧V21を比較的高い値に設定する(V21>V11)ことにより作りだすことができる。
【0139】
この状態では、可変焦点レンズ130の容器140の撥水膜133上で発生するエレクトロウェッティング現象は比較的弱いので、可変焦点レンズ130内の第1液体131の撥水膜133に対する接触角θ(V11)は比較的大きくなる。一方、可変焦点レンズ150では、容器160の撥水膜153上で発生するエレクトロウェッティング現象は比較的強くなる。これにより、第3液体151の撥水膜153に対する濡れ性が大きくなるので、第3液体151の撥水膜153に対する接触角θ(V21)が比較的小さくなる。
【0140】
このような状態において、液体レンズ130の第1光透過性部材139側から光Liを入射すると、液体レンズ130は凹レンズであるので、入射光の光束を広げて出射する。液体レンズ130を通過した光は、光束を広げながら液体レンズ150に入射される。そして、液体レンズ150は凸レンズであるので、入射された光を例えば幅広の平行光にして出射する。次いで、液体レンズ150から出射された光はその出射側に設けられる光学レンズ126により集光され、撮像面127に結像される。
【0141】
次に、それぞれの液体レンズ130及び150に印加する電圧を変化させて、各液体レンズ内の導電性液体及び絶縁性液体間の界面形状を変化させる。具体的には、例えば、液体レンズ130に印加する電圧V12を比較的高く設定し、液体レンズ150では印加する電圧V22を比較的低く(例えばV22=0)設定する。この際の各可変焦点レンズ内における導電性液体及び絶縁性液体間の界面形状の状態を図15に示す。なお、図15のズームレンズの構成において、図14と対応する部分には同一符号を付して示す。
【0142】
この場合、液体レンズ130では、容器140の撥水膜133上で発生するエレクトロウェッティング現象は比較的強くなる。これにより、第1液体131の撥水膜133に対する濡れ性が大きくなるので、第1液体131の撥水膜133に対する接触角θ(V12)が比較的小さくなる。一方、液体レンズ150では、容器160の撥水膜153上で発生するエレクトロウェッティング現象は比較的弱くなるので、第3液体151の撥水膜153に対する接触角θ(V22)が比較的大きくなる。その結果、図15の状態では、液体レンズ130の第1液体131が凹状になり、液体レンズ150の第3液体151は凸状となる。
【0143】
このような状態において、液体レンズ130の第1光透過性部材139側から光Liを入射すると、液体レンズ130は凸レンズであるので、入射光の光束が収束して出射する。液体レンズ130を通過した光は光束を狭くしながら液体レンズ150に入射される。液体レンズ150は凹レンズであるので、入射された光を例えば幅狭の平行光にして出射する。次いで、液体レンズ150から出射された光はその出射側に設けられる光学レンズ126により集光され、撮像面127に結像される。
【0144】
本実施形態では、上述のようにして、液体レンズ130及び150に印加する電圧を制御して各レンズの焦点距離を制御する。これにより、例えば図14に示す状態では広角レンズを、図15に示す状態では望遠レンズを構成することができる。すなわち、電圧制御によりズームレンズ125の倍率を精度よく制御することができる。
【0145】
また、本実施形態のズームレンズ125内の2つの液体レンズ130及び150を、それぞれ電圧印加部20および23により、正極性の電圧範囲内で所定周期で変動する交流電圧で駆動するようにしてもよい。この場合には、液体レンズ130及び150に印加する電圧の可変範囲が、電極上に形成する誘電体層の負極性における耐電圧により制限されず、より広い電圧可変範囲でズームレンズ125を駆動することができる。
【0146】
本実施形態においても、第1液体及び第2液体を収容する容器に亜酸化タングステン、又はこれに添加物を加えた材料によるバッファ層を介してTa電極を形成してある。このため、Ta電極を陽極酸化することによりTaの誘電体層を生成しても、誘電体層や電極に膜割れや剥がれが生じることがない。また、Taの誘電体層は絶縁性が高いため、薄膜化できるとともに、第1液体及び第2液体界面の曲率を変化させるための駆動電圧を低減することができる。
【0147】
また、陽極酸化による誘電体層の生成は、従来に比べてその製造方法が簡易であり、精度良く均一な膜厚で成膜することができる。そのため、誘電体層の膜厚のばらつきに起因する界面形状の変形のばらつきを抑制することができ、より高精度にズーム機能を制御することができる。また、下地すなわち容器を絶縁性材料で形成した場合にはその上に形成される電極に多少のピンホール欠損があっても絶縁破壊は起こらず、欠損は実用上問題にならない。また、陽極酸化により形成された誘電体層は、化成電圧までは絶縁破壊しないので、誘電体層の絶縁破壊強度を十分高くすることができる。
【0148】
9.第4の変形例
図14及び15に示す例では、ズームレンズ125として本発明の液体レンズを2つ組み合わせたものであったが、3つ以上組み合わせることによって、導電性液体及び絶縁性液体間の界面を3つ以上設ける構成にしてもよい。また、2つの可変焦点レンズを一体化して、1つの容器内に2つの界面を構成することも可能である。本変形例では、1つの容器内に、2つの界面を形成してズームレンズを構成する例を説明する。
【0149】
1つの容器内に、導電性液体及び絶縁性液体間の界面を2つ設ける場合は、例えば円筒状やすり鉢状等の容器の両方の開口端側に、それぞれ導電性または有極性の液体を配置し、その間に絶縁性の液体を介在させる構成とする。そして、両端の導電性または有極性の液体に印加する電極を分離して、それぞれ個別に電圧制御を行う構成にすればよい。
【0150】
図16に、本変形例によるズームレンズ170の概略構成を示す。この例のズームレンズ170は、レンズ本体部170aと、2つの電圧印加部20及び23とで構成される。
【0151】
レンズ本体部170aは、例えば円筒形状の容器141の両側の開口端部にガラス等の第1光透過性部材146及び第2光透過性部材167を液密に封止することにより構成される。また、この例では、レンズ本体部170aの内部には導電性または有極性の第1液体171及び第3液体173と、絶縁性の第2液体172とが収容される。そして、レンズ本体部170aの内部では、第2液体172が第1液体171及び第3液体173の間に配置される。
【0152】
本変形例のズームレンズ170では、容器141の第1光透過性部材147側の内壁面の一部、及び第2光透過性部材167側の内壁面の一部に亜酸化タングステン又はこれに添加物を加えた材料によるバッファ層94が設けられる。そしてこのバッファ層94上及び容器141の開口端部、外壁面の一部に渡ってTaの第1電極142が形成される。また、第1電極142の液体側の面を陽極酸化することにより、Taの誘電体層143(第1誘電体層)が生成される。そして、誘電体層143上には撥水膜144(第1撥液膜)が被着される。
【0153】
また、第1光透過性部材147の液体側の表面には、リング状等の第2電極146が形成されており、第1電極142と第2電極146との間には絶縁性部材145が設けられる。そして、第1電極142と第2電極146とが電圧印加部20(第1電圧印加部)に接続され、電圧印加部20は変形例6のズームレンズ170が装着された撮像装置等の光学装置の本体駆動部21に接続される。なお、本体駆動部21は、ズームレンズ170内に含まれていてもよい。
【0154】
また本変形例においては、容器141の第2光透過性部材167側の内壁面の一部、開口端部及び外壁面の一部に渡って第3電極162が形成される。また、第3電極162の液体側の面、すなわち容器141の内壁面上の電極部分を陽極酸化して所定の誘電率を有する誘電体層163(第2誘電体層)を形成する。そして、誘電体層163上には撥水膜164(第2撥液膜)が被着される。
【0155】
また、第2光透過性部材167の液体側の表面には、リング状等の第4電極166が形成されており、第3電極162と第4電極166との間には絶縁性部材165が設けられる。そして、第3電極162と第4電極166とが電圧印加部23(第2電圧印加部)に接続され、電圧印加部23は変形例6のズームレンズ170が装着された撮像装置等の光学装置の本体駆動部24に接続される。なお、この本体駆動部24も、ズームレンズ170内に含まれていてもよい。
【0156】
本変形例におけるズームレンズ170では、電圧印加部20により第1電極142と第2電極146との間に印加する電圧を制御することにより、第1液体171及び第2液体172間の界面の曲率を自由に制御することができる。一方、電圧印加部23により第3電極162と第4電極166との間に印加する電圧を制御することにより、第2液体172及び第3液体173間の界面の曲率を自由に制御することができる。この場合、1つのズームレンズ170において、2つの変形可能な界面を有する構成となり、いわば1つの可変焦点レンズでズームレンズを構成することが可能となる。
【0157】
本変形例においても、亜酸化タングステン又はこれに添加物を加えた材料によるバッファ層上にTaによる第1電極が形成される。このため、第1電極を陽極酸化することによりTaの誘電体操を形成しても、誘電体層や電極に膜割れや剥がれが生じるのを抑制することができる。
また、Taの誘電体層は絶縁性が高いので薄膜化することができ、また第1液体及び第2液体の界面の曲率を変化させる駆動電圧を小さくすることが可能になる。
【0158】
また、本実施形態のズームレンズ170内の第1液体171及び第2液体172及び第3液体173の二つの界面を、それぞれ電圧印加部20および23により、正極性の電圧範囲内で所定周期で変動する交流電圧で駆動するようにしてもよい。この場合には、印加する電圧の可変範囲が、電極上に形成する誘電体層の負極性における耐電圧により制限されず、より広い電圧可変範囲でズームレンズ170を駆動することができる。
【0159】
10.第6の実施の形態
次に、本発明の液体レンズ装置を適用した撮像装置の一例を説明する。図17は、本実施形態の撮像装置の概略構成図である。
【0160】
撮像装置180は、主に、光学系181と、光学系181を介して入射された光を電気信号に変換して画像データを取得する固体撮像素子186と、取得した画像データに所定の処理を施す画像処理部188と、各部の動作を制御する制御部187とを備える。なお、固体撮像素子186は、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)デバイス等で構成することができる。これらのデバイスは、照射された光エネルギーを電荷に変換する複数の光電変換部、この電荷を蓄積する電荷蓄積部、電荷を転送し、外部に送出する電荷転送部を有する。
【0161】
また、本実施形態では、光学系181は、主に、ズームレンズ182と、絞り機構183と、フォーカスレンズ184と、シャッター185とを備え、光Liの入射側からこの順で配置される。本実施形態では、ズームレンズ182、絞り機構183、フォーカスレンズ184、シャッター185のうち少なくとも1つを、上述したエレクトロウェッティング現象を利用とした光学素子を用いる。
【0162】
すなわち、ズームレンズ182、絞り機構183、フォーカスレンズ184、シャッター185のうち少なくとも1つ(光学素子)は、次のような構成にする。一対の光透過性部材の間に導電性または有極性を有する第1液体と絶縁性を有する第2液体とを収容する構成とする。またTaによる第1電極は亜酸化タングステン又はこれに添加物を加えた材料によるバッファ層上に形成され、その表面を陽極酸化することで生成されるTaの誘電体層を介して、第1液体に導通する第2電極とともに第1液体に電圧を印加する。
【0163】
より具体的には、ズームレンズ182としては、例えば、第5の実施形態(図14)及び変形例4(図16)で説明したズームレンズを用いることができる。絞り機構183及びシャッター185として、例えば、第4の実施形態(図13)で説明した光学素子を用いることができる。そして、フォーカスレンズ184としては、例えば、第2の実施形態(図4)、変形例1(図5)で説明した液体レンズを用いることができる。
【0164】
本実施形態では、ズームレンズ182、絞り機構183、フォーカスレンズ184、シャッター185のうち少なくとも1つでは、Taの第1電極を亜酸化タングステン又はこれに添加物を加えた材料によるバッファ層上に形成する。そしてこの第1電極表面を陽極酸化することでTaの誘電体層が生成される。このため、駆動電圧を低減することができるとともに、その製造がより簡易にできる。さらに、第1電極を形成する容器を絶縁性物質より構成することにより、ピンホール欠損の影響を回避することができ、また、誘電体層の絶縁破壊強度を十分高くすることができる。
また、正極性の電圧範囲内で所定周期で変動する交流電圧を、ズームレンズ182、絞り機構183、フォーカスレンズ184、シャッター185のうち少なくとも1つに印加して駆動するようにしてもよい。この場合には、これらの光学素子に印加する電圧の可変範囲が誘電体層の負極性における耐電圧により制限されず、より広い電圧可変範囲で駆動することができる。また、従来に比べて高精度にズームレンズ182、絞り機構183、フォーカスレンズ184、シャッター185のうち少なくとも1つを制御することができる。
【0165】
11.第7の実施の形態
次に、本発明を適用した光変調装置について説明する。
図18は、本実施形態の光変調装置210の概略断面構成図である。光変調装置210は、例えば第4の実施形態で説明したシャッター機能を有する光学素子(図13)と同様の構成を有する光変調素子を複数備える。なお、図18の例では、光変調素子220a、220b、220c、220d、…を一方向に配列した場合の断面を示しているが、2次元状に光変調素子を並置配列してもよい。
【0166】
光変調装置210は、主に、平板状の第1光透過性部材219と、平板状の第2光透過性部材218と、これらの光透過性部材間に配置された複数の光変調素子220a、220b、220c、220d、…とを備える。
【0167】
各光変調素子の容器222の表面には亜酸化タングステンによるバッファ層221が成膜され、その上にTaによる第1電極215が形成される。また、この第1電極表面を陽極酸化することにより、Taの誘電体層214が生成される。
なお、本発明はこれに限定されず、第1電極215や誘電体層214は容器222の内壁、液体側の面にのみ形成するようにしてもかまわない。
【0168】
各光変調素子220a、220b、…の内部には、導電性または有極性を有する第1液体211と、絶縁性の第2液体212が収容される。第1液体211及び第2液体212のうちいずれか一方の光透過性が他方の光透過性より低くなるように材料を選択する。図18の例では第2液体212の光透過性が、第1液体211の光透過性により低くなるように、第1液体211及び第2液体212の材料を選択する。また、図18の例では、第2液体212が第1光透過性部材219側に配置されるように注入される。
【0169】
第1液体211としては、例えば塩水、硫酸ナトリウム(NaSO)水溶液等の電解質溶液、またはイオン性液体を用いることができ、第2液体212としては、例えばシリコーンオイルを用いることができる。
また、これらの液体は、第1電極215の一方の開口端部に配置する、第1光透過性部材219によって液密に封止される。第1光透過性部材219の接着は例えばエポキシ樹脂等により行うことができる。
【0170】
また、第1電極215の内壁面及び第1光透過性部材219の液体側の面に撥水膜213(撥液膜)が被着される。なお、撥水膜213の膜厚は、上述した実施形態と同様に十分薄く、例えば10nm以下の5nm程度とすることが望ましい。このためには、撥水膜213の形成材料として、反応性の撥水コート材である例えばフッ素系シランカップリング剤を用いることが望ましい。
【0171】
一方、第2光透過性部材218の表面の所定位置には、例えばリング状の第2電極217及び親水膜216が複数設けられる。そして、第1電極215の他方の開口端部は、親水膜216及び例えばリング状の第2電極217を介して第2光透過性部材218により封止されて、各光変調素子の内部が液密に保持される。上述のようにして、第1液体211に誘電体層214を介して電圧を印加する第1電極215、及び、第1液体211に導通する第2電極217が各光変調素子に設けられる。
【0172】
そして、各光変調素子の第1電極215及び第2電極217が電圧印加部20に接続される。なお、電圧印加部20は、例えば第1光透過性部材219及び第2光透過性部材218の間、またはこれらの光透過性部材の外部に配置される。電圧印加部20を光透過性部材の外部に配置する場合、第1電極215及び第2電極217から導通部材を引き出して、その導通部材と電圧印加部20とを接続する。図18では、第1光透過性部材219及び第2光透過性部材218の間に電圧印加部20を設ける例を示す。
【0173】
また、電圧印加部20は、本体駆動部21(駆動部)に接続されており、図18の例では、第1光透過性部材219及び第2光透過性部材218の外部に本体駆動部21を設ける。なお、各光変調素子の電圧制御は、それぞれ個別に行う。
【0174】
なお、本体駆動部21は、例えば画像、文字などの情報信号に対応して、各光変調素子220a、220b、…に印加する電圧を変調することもできる。例えば、第2光透過性部材218としては、従来の液晶表示装置で用いられているアクティブ素子アレイ基板を用いた場合、走査線及び信号線を選択することによって、画像や文字情報等に対応して各電極に適切な電圧を印加することが可能である。なお、アクティブ素子アレイ基板は、TFT(Thin Film Transistor)のようなスイッチング用アクティブ素子とこれに接続される画素電極、走査線及び信号線とをマトリクス状に配設した基板である。
【0175】
次に本実施形態による光変調装置210の動作について以下に説明する。
本実施形態の光変調装置210では、入力される情報信号に対応して、各光変調素子の第1電極215及び第2電極217に印加する電圧を変化させ、各光変調素子内部の第1液体211及び第2液体212の界面形状を変形する。これにより、入力される情報信号に対応して、光変調素子毎に第1液体211及び第2液体212を透過する光の光量が制御される。
【0176】
例えば、第1電極215及び第2電極217間に比較的高い電圧を印加した状態では、第1電極215の内壁面上に形成された撥水膜213に対する第1液体211の接触角が比較的小さくなる。この結果、第1液体211と第1光透過性部材219側表面の撥水膜213との間に光透過性の低い第2液体212が配置された状態となる。すなわち、第1液体211及び第2液体212の界面が球面の一部形状を保持し、光透過性の低い第2液体212が第1光透過性部材219側でいわば一枚の光遮蔽膜となる。この場合、この光変調素子を通過する光は遮光される。図18の例では、光変調素子220a及び220dがこの状態になっている。
【0177】
逆に、第1液体215及び第2電極217間に印加する電圧を比較的低くすると、第1電極215の内壁面上形成された撥水膜213に対する第1液体211の接触角が大きくなる。これにより、第1液体211から第2液体212に押圧力が働き、第2液体212が第1電極215側の内壁面に押し付けられる。この結果、第1液体211が第1光透過性部材219側表面の撥水膜213に接触し、光変調素子の中央に開口部が生成され、光の一部を通過させる。図18の例では、光変調素子220b及び220cがこの状態になっている。
【0178】
このように、第1電圧215及び第2電極217間に印加する電圧を調整することにより、第2液体212が第1光透過性部材219の液体側の面に押し付けられる度合いが変化する。すなわち、第1電圧215及び第2電極217間に印加する電圧を制御することにより、光変調素子の第1光透過性部材219側に形成される開口部の大きさを制御することができる。したがって、本実施形態では、入力される情報信号に基づいて、各光変調素子220a、220b、220c、…に印加する電圧を制御することにより、各光変調素子を通過する光の光量を制御することができる。
それゆえ、各光変調素子220a、220b、220c、…をそれぞれ一画素として構成することで、表示装置に適用可能な光変調装置210を構成することが可能である。
【0179】
本実施形態では、亜酸化タングステン又はこれに添加物を加えた材料によるバッファ層221上にTaの第一電極215を形成している。このため、この表面を陽極酸化してTaの誘電体層214を生成しても、応力に十分耐えるだけの密着力を有している。それゆえ誘電体層214や第一電極215に剥がれや膜割れが生じるのを防ぐことができる。
【0180】
また、容器を絶縁性材料で形成し、その表面にバルブ金属膜より成る第1電極を形成した場合には、第1電極に多少のピンホール欠損があっても絶縁破壊は起こらず、欠損は実用上問題にならない。また、陽極酸化により形成された誘電体層214は、化成電圧までは絶縁破壊しないので、誘電体層214の絶縁破壊強度を十分高くすることができる。
【0181】
陽極酸化による誘電体層の生成はプロセスが簡易であるとともに、従来に比べて精度良く均一な膜厚で誘電体層を成膜することができる。このため膜厚のばらつきに起因する界面形状の変形のばらつきを抑制することができ、より高精度に各光変調素子を制御することができる。
したがって従来の真空薄膜形成方法により作製する場合と比べて厚さを薄くすることができ、Taのような高い誘電率を有する材料を誘電体層214として用いることにより、誘電体層を薄膜化しても十分な絶縁性を確保することができる。
またさらには、この誘電体層214の絶縁性が向上することにより、第1液体及び第2液体の界面の曲率を変化させるための駆動電圧を低減することができる。
【0182】
本実施形態においても、電圧印加部20により、正極性の電圧範囲内で所定周期で変動する交流電圧を、光変調装置210内の各光変調素子に印加して駆動するようにしてもよい。この場合には、光変調装置210内の各光変調素子に印加する電圧の可変範囲が、誘電体層の負極性における耐電圧により制限されず、より広い電圧可変範囲で光変調装置210を駆動することができる。
【0183】
12.第8の実施の形態
図19は本発明を適用した表示装置225の概略構成図である。特に本実施形態においては、上述の光変調装置210を用いて表示装置を構成する例について説明する。
【0184】
表示装置225は、主に、光変調装置210(光変調装置部)と、その一方の側(背面側)に配置された光源装置227(光源)と、他方の側(前面側)に配置されたカラーフィルター226とで構成される。
【0185】
光変調装置210は、複数の光変調素子220を有し、それらは、画素に対応して2次元状に配列される。カラーフィルター226は、各画素すなわち各光変調素子220に対応した複数のセグメントで構成される。各セグメントは、例えば、3原色である赤色フィルタ(R)、緑色フィルタ(G)、青色フィルタ(B)のいずれかのセグメントに分類される。また、光変調素子220に対応するカラーフィルター226のセグメントの配列パターンは、図19に示すような正方格子状の配列以外では、ストライプ配列やデルタ配列などとしてもよい。
【0186】
なお、光源装置227の光出射側(光変調装置210側)の表面には光波の位相差を補償して広視野角化や着色防止を図る機能、入射光を拡散させる機能、輝度向上を図る機能などを備えた光学シート群等を配置してもよい。また、白黒表示を行う表示装置225の場合には、カラーフィルター226を設けなくてもよい。
【0187】
本実施形態の表示装置225では、光変調装置210における光変調素子の第1電極はTaより成り、亜酸化タングステン又はこれに添加物を加えた材料によるバッファ層上に形成される。また、この第1電極を陽極酸化することによりTaによる誘電体層を導電性液体との間に介在させている。このバッファ層を間に設けることにより生成が可能となったTaの誘電体層は絶縁性が高いため、低い電圧で光変調装置210内の光変調素子を駆動することができ、表示装置226の消費電力を低減することができる。
【0188】
また、陽極酸化による誘電体層の生成はプロセスが簡易であるとともに、従来に比べて精度良く均一な膜厚で誘電体層を成膜することができる。このため膜厚のばらつきに起因する界面形状の変形のばらつきを抑制することができ、高精度に各光変調素子を制御することができるので、鮮明で精細な表示を行うことができる。
【0189】
13.第9の実施の形態
以下は、本発明をストロボ装置に適用した例である。
【0190】
図20は本実施形態によるストロボ装置230の概略構成図である。ストロボ装置230(ストロボ回路部)は、主に、閃光放電管231(光源)と、反射傘232と、光学プリズム233と、光拡散素子234と、ストロボ回路235と、本体駆動部21とを備える。
【0191】
光学プリズム233は閃光放電管231から発光された光の配光を制御する。ストロボ回路235は、閃光放電管231の発光を制御する。なお、ストロボ回路235の動作は、本体駆動部21の制御部21bにより制御される。
【0192】
光拡散素子234は、エレクトロウェッティング現象を利用した光学素子であり、光学プリズム233を介して入射された光Liを拡散して所定の照射角で光Loを出射する。光拡散素子234は、素子本体部234aと、電圧印加部20とで構成される。素子本体部234aは、アレイ状に配列された複数の光学素子130から構成される。なお、図20の例では、説明を簡略化するために光学素子130を3つのみ記載しているが、これに限定されるものではなく単数又は複数とすることができる。
【0193】
なお、本実施形態では、光学素子130は、第5の実施形態で説明した液体レンズ130(図14参照)と同じ構成の素子を用いる。それゆえ、ここでは、光学素子130の構成の説明は省略する。なお、本実施形態では、各光学素子130の第1電極及び第2電極は、電圧印加部20に接続されている。
また、第1電極は亜酸化タングステン、又はこれに添加物を加えた材料より成るバッファ層上にTaによって形成され、これを陽極酸化することによりTaの誘電体操が生成されてある。
【0194】
次に、本実施形態のストロボ装置230の動作を説明する。なお、以下の動作説明では、示す光学素子130の構成部の符号には、第5の実施形態の液体レンズ130の構成部と同じ符号を付して説明する(図14参照)。
【0195】
光拡散素子234内の各光学素子130内には、導電性または有極性の第1液体131と、絶縁性の第2液体132とが収容されている。そして、その収容室の第2光透過性部材138側の内壁には親水膜136(図20では不図示)が形成され、第1光透過性部材139及び誘電体層134の内壁には撥水膜133(図20では不図示)が形成されている。それゆえ、第1液体131及び第2液体132間の界面は、光入射側から見て凸状になる。
【0196】
このような状態において、光拡散素子234に光Liを入射すると、第1液体131の屈折率は第2液体132の屈折率より小さいので、界面を通過した光はその光束を広げて出射される。本実施形態では、各光学素子130を同じ構造にしているので、各光学素子130から出射される光束の広がり度も同じとなる。
【0197】
ここで、光拡散素子234に電圧印加部20から印加する電圧を変化させると、エレクトロウェッティング現象により、第1液体131の撥水膜133に対する接触角θが変化し、第1液体131及び第2液体132間の界面形状が変化する。そして、第1液体131及び第2液体132間の界面形状が変化すると、各光学素子130から出射される光束の広がり度が変化する。
すなわち、光拡散素子234に印加する電圧を変化させることにより、ストロボ装置230から発光される光の照射角を変化させることができる。それゆえ、本実施形態のストロボ装置230では、電圧制御によりストロボ装置230から発光される光の照射角を精度よく制御することができる。
【0198】
本実施形態のストロボ装置230では、光学素子130における第1電極はTaより成り、亜酸化タングステン又はこれに添加物を加えた材料より成るバッファ層上に形成される。また、この第1電極を陽極酸化することによりTaによる誘電体操を導電性液体との間に介在させている。このTaの誘電体層は絶縁性が高いため、低い電圧で光学素子130を駆動することができ、ストロボ装置230の消費電力を低減することができる。
【0199】
また、陽極酸化による誘電体層の生成はプロセスが簡易であるとともに、従来に比べて精度良く均一な膜厚で誘電体層を成膜することができる。このため膜厚のばらつきに起因する界面形状の変形のばらつきを抑制することができ、より高精度に各光学素子130を制御することができる。
【0200】
また、電圧印加部20により光拡散素子234に電圧を印加する際には、正極性の電圧範囲内で所定周期で変動する交流電圧を各光学素子140に印加してもよい。この場合には、ストロボ装置230に印加する電圧の可変範囲が誘電体層の負極性における耐電圧により制限されず、より広い電圧可変範囲でストロボ装置230を駆動することができる。
【0201】
以上、上記実施形態では、液体レンズ装置、液滴装置、絞り機能またはシャッターの機能を備える光学素子、ズームレンズ、光変調装置、表示装置及びストロボ装置への適用について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。その他、エレクトロウェッティング現象を利用する各種の装置に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0202】
1,116,136,156,216・・・親水膜、2,139,147,149,219・・・第1光透過性部材、3,13,110,140,141,160,222,243・・・容器、4,14,91,92・・・バッファ層、5,15,115,142,215,245・・・第1電極、6,16,84,114,134,143,154,163,214,246・・・誘電体層、7,145・・・絶縁性部材、8,18,85,90,113,133,144,213,248・・・撥水膜、9,19,117,137,146,217,249・・・第2電極、10,118,138,167,218・・・第2光透過性部材、11,41,111,131,171,211・・・第1液体、12,42,112,132,172,212・・・第2液体、13A,13B,110A,110B,140A,140B、160A,160B・・・開口端部、44,45,46,47,68・・・面、118,218,240・・・第2光透過性部材、119,242・・・第1光透過性部材、247・・・絶縁性部材、20,23・・・電圧印加部、21・・・本体駆動部、22・・・液体配置部、23,63,130a,150a,170a・・・レンズ本体部、25・・・電圧制御部、30・・・レンズアレイ、51・・・液体レンズ装置、60・・・光ピックアップ装置、61・・・光源、62・・・光学系、63・・・偏光ビームスプリッタ、64・・・1/4波長板、65・・・ミラー、66・・・対物レンズ、67・・・アクチュエータ、68・・・受光部、69・・・演算回路、70・・・対物レンズ駆動部、71・・・光ヘッド駆動部、72・・・回転駆動部、75・・・光記録媒体、81,82・・・基板、83・・・電極アレイ、86・・・液滴、87・・・絶縁性液体、89・・・共通電極、100・・・エレクトロウェッティング装置、120,130・・・光学素子、121・・・開口窓、125,170・・・ズームレンズ、126・・・光学レンズ、127・・・撮像面、151,173・・・第3液体、152・・・第4液体、155,162・・・第3電極、157,167・・・第4電極、158・・・第4光透過性部材、159・・・第3光透過性部材、180・・・撮像装置、181・・・光学系、182,192・・・ズームレンズ、183・・・絞り機構、184,194・・・フォーカスレンズ、185,195・・・シャッター、186・・・固体撮像装置、187,21b・・・制御部、188・・・画像処理部、200・・・液体レンズ装置、210・・・光変調装置、220・・・光変調素子、225・・・表示装置、226・・・カラーフィルター、227・・・光源装置、230・・・ストロボ装置、231・・・閃光放電管、232・・・反射傘、233・・・光学プリズム、234・・・光拡散素子、234a・・・素子本体部a、235・・・ストロボ回路、40,130,150,250・・・液体レンズ、300・・・光記録再生装置、400・・・液滴操作装置、Sa,Sb,Sc,…Si・・・スイッチ部、L01,L02・・・出射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性または有極性を有する液体と、
前記液体に電圧を印加する第1電極及び第2電極と、
前記液体と前記第1電極との間に設けられた誘電体層と、
前記第1電極下に設けられた亜酸化タングステン又はこれに添加物を添加した材料より成るバッファ層と、
を含むエレクトロウェッティング装置。
【請求項2】
前記誘電体層は、前記第1電極の陽極酸化によって形成される請求項1に記載のエレクトロウェッティング装置。
【請求項3】
前記第1電極はTaよりなる請求項2に記載のエレクトロウェッティング装置。
【請求項4】
前記誘電体層はTaにより形成される請求項3に記載のエレクトロウェッティング装置。
【請求項5】
前記亜酸化タングステンの組成はWO1.5である請求項4に記載のエレクトロウェッティング装置。
【請求項6】
前記添加物として、Ta、Ti、Mo、Cr、Nb、V、Zr、Hfのうち1種以上を含む請求項5に記載のエレクトロウェッティング装置。
【請求項7】
導電性または有極性を有する第1の液体と、
第1の液体と異なる屈折率を有し且つ絶縁性または無極性を有する第2の液体と、
前記第1の液体及び第2の液体を収容する容器と、
前記容器内に収容された前記第1の液体及び第2の液体を封止する一対の光透過性部材と、
前記容器の内壁に設けられる亜酸化タングステン又はこれに添加物を添加した材料より成るバッファ層と、
前記バッファ層上に設けられ、前記第1の液体に電圧を印加するTaより成る第1電極と、
前記第1電極表面を陽極酸化することによって形成されるTaより成る誘電体層と、
前記第1の液体に電圧を印加するための第2電極と、
前記第1及び第2電極間に電圧を印加する電圧印加部と
を備える液体レンズ装置。
【請求項8】
前記容器はすり鉢状の孔が貫通して設けられた空間内に前記第1の液体及び第2の液体を収容する請求項7に記載の液体レンズ装置。
【請求項9】
少なくとも一方の前記光透過性部材の一方の表面が曲面である請求項8に記載の液体レンズ装置。
【請求項10】
導電性または有極性を有する第1の液体と、
第1の液体と異なる屈折率を有し且つ絶縁性または無極性を有する第2の液体と、
前記第1の液体及び第2の液体を、貫通して設けられた空間内に収容する容器と、
前記容器内に収容された前記第1の液体及び第2の液体を封止する一対の光透過性部材と、
前記容器の内壁に設けられる亜酸化タングステン又はこれに添加物を添加した材料より成るバッファ層と、
前記バッファ層上に設けられ、前記第1の液体に電圧を印加するTaより成る第1電極と、
前記第1電極表面を陽極酸化することによって形成されるTaより成る誘電体層と、
前記第1の液体に電圧を印加するための第2電極と、
前記第1及び第2電極間に電圧を印加する電圧印加部と
を備える液体レンズ装置を複数備え、並列配置された
液体レンズアレイ装置。
【請求項11】
光源部と、
受光部と、
光記録媒体と対向する対物レンズと、
前記対物レンズに前記光源部からの出射光を導く機能及び前記光記録媒体からの反射光を前記受光部に集光する機能を有する光学系と、
導電性または有極性を有する第1の液体と、前記第1の液体と混合せず、光透過性を有し、第1の液体と異なる屈折率を有し且つ絶縁性または無極性を有する第2の液体と、前記第1の液体及び第2の液体を、貫通して設けられた空間内に収容する容器と、前記容器内に収容された前記第1の液体及び第2の液体を封止する一対の光透過性部材と、前記容器の内壁に設けられる亜酸化タングステン又はこれに添加物を添加した材料より成るバッファ層と、前記バッファ層上に設けられ、前記第1の液体に電圧を印加するTaより成る第1電極と、前記第1電極表面を陽極酸化することによって形成されるTaより成る誘電体層と、前記第1の液体に電圧を印加するための第2電極と、前記第1及び第2電極間に電圧を印加する電圧印加部とを備える液体レンズ装置と、
を備える光ピックアップ装置。
【請求項12】
光源部と、
受光部と、
光記録媒体と対向する対物レンズと、
前記対物レンズに前記光源部からの出射光を導く機能及び前記光記録媒体からの反射光を前記受光部に集光する機能を有する光学系と、
導電性または有極性を有する第1の液体と、第1の液体と異なる屈折率を有し且つ絶縁性または無極性を有する第2の液体と、前記第1の液体及び第2の液体を、貫通して設けられた空間内に収容する容器と、前記容器内に収容された前記第1の液体及び第2の液体を封止する一対の光透過性部材と、前記容器の内壁に設けられる亜酸化タングステン又はこれに添加物を添加した材料より成るバッファ層と、前記バッファ層上に設けられ、前記第1の液体に電圧を印加するTaより成る第1電極と、前記第1電極表面を陽極酸化することによって形成されるTaより成る誘電体層と、前記第1の液体に電圧を印加するための第2電極と、前記第1及び第2電極間に電圧を印加する電圧印加部と、を備える液体レンズ装置を含む可変焦点レンズと、
前記可変焦点レンズを駆動する駆動部と、
前記光記録媒体を回転駆動する回転駆動部と
を備える光記録再生装置。
【請求項13】
基板と、
前記基板上に、所定間隔で並列配置された亜酸化タングステン又はこれに添加物を添加した材料より成る複数のバッファ層と、
前記バッファ層上に形成されたTaより成る複数の第1電極と、
前記複数の第1電極の表面を陽極酸化することにより形成されたTaより成る複数の誘電体層と、
前記複数の誘電体層上に配置された導電性または有極性を有する液滴と、
前記液滴を挟んで前記複数の第1電極と対向して設けられた前記液滴に導通する第2電極と、
前記第1及び第2電極間に印加する電圧印加部と
を備える液滴操作装置。
【請求項14】
光透過性を有し且つ導電性または有極性を有する第1の液体と、
前記第1の液体より低い光透過性を有し、且つ絶縁性または無極性を有する第2の液体と、
前記第1の液体及び第2の液体を、貫通して設けられた空間内に収容する容器と、
前記容器内に収容された前記第1の液体及び第2の液体を封止する一対の光透過性部材と、
前記容器の内壁に設けられる亜酸化タングステン又はこれに添加物を添加した材料より成るバッファ層と、
前記バッファ層上に設けられ、前記第1の液体に電圧を印加するTaより成る1電極と、
前記第1電極表面を陽極酸化することによって形成されるTaより成る誘電体層と、
前記第1の液体に電圧を印加するための第2電極と、
前記第1及び第2電極間に電圧を印加する電圧印加部と
を備える光学素子。
【請求項15】
導電性または有極性を有する第1の液体と、前記第1の液体と異なる屈折率を有し且つ絶縁性または無極性を有する第2の液体と、前記第1の液体及び第2の液体を、貫通して設けられた空間内に収容する第1の容器と、前記第1の容器内に収容された前記第1の液体及び第2の液体を封止する一対の第1光透過性部材と、前記第1の容器の内壁に設けられる亜酸化タングステン又はこれに添加物を添加した材料より成る第1のバッファ層と、前記第1のバッファ層上に設けられ、前記第1の液体に電圧を印加するTaより成る第1電極と、前記第1電極表面を陽極酸化することによって形成されるTaより成る第1の誘電体層と、前記第1の液体に電圧を印加するための第2電極と、前記第1及び第2電極間に電圧を印加する第1の電圧印加部とを備える第1の液体レンズ部と、
導電性または有極性を有する第3の液体と、前記第3の液体と異なる屈折率を有し且つ絶縁性または無極性を有する第4の液体と、前記第3の液体及び第4の液体を、貫通して設けられた空間内に収容する第2の容器と、前記第2の容器内に収容された前記第1の液体及び第2の液体を封止する一対の第2光透過性部材と、前記第2の容器の内壁に設けられる亜酸化タングステン又はこれに添加物を添加した材料より成る第2のバッファ層と、前記第2のバッファ層上に設けられ、前記第3の液体に電圧を印加するTaより成る第3電極と、前記第3電極表面を陽極酸化することによって形成されるTaより成る第2の誘電体層と、前記第3の液体に電圧を印加するための第4電極と、前記第3及び第4電極間に電圧を印加する第2の電圧印加部とを備える第2液体レンズ部と、
を備えるズームレンズ。
【請求項16】
前記第1液体レンズ部と前記第2液体レンズ部とが一体的に形成されている
請求項14に記載のズームレンズ。
【請求項17】
ズームレンズと、
可変焦点レンズと、
絞りまたはシャッター機能を有する光学素子と、
入射された光を電気信号に変換する撮像素子と、
前記ズームレンズ、前記変焦点レンズ、前記絞りまたはシャッター機能を有する光学素子を制御する制御部と、を含み、
導電性または有極性を有する第1の液体と、前記第1の液体と異なる屈折率を有し且つ絶縁性または無極性を有する第2の液体と、前記第1の液体及び第2の液体を、貫通して設けられた空間内に収容する容器と、前記容器内に収容された前記第1の液体及び第2の液体を封止する一対の光透過性部材と、前記容器の内壁に設けられる亜酸化タングステン又はこれに添加物を添加した材料より成るバッファ層と、前記バッファ層上に設けられ、前記第1の液体に電圧を印加するTaより成る第1電極と、前記第1電極表面を陽極酸化することによって形成されるTaより成る誘電体層と、前記第1の液体に電圧を印加するための第2電極と、前記第1及び第2電極間に電圧を印加する電圧印加部と、を備える光学素子により、前記ズームレンズ、前記可変焦点レンズ、前記絞りまたはシャッター機能を有する光学素子、のいずれか1つ以上が構成される
撮像装置。
【請求項18】
導電性または有極性を有する第1の液体と、前記第1の液体より低い光透過性を有し、且つ絶縁性または無極性を有する第2の液体と、前記第1の液体及び第2の液体を、貫通して設けられた空間内に収容する容器と、前記容器内に収容された前記第1の液体及び第2の液体を封止する一対の光透過性部材と、前記容器の内壁に設けられる亜酸化タングステン又はこれに添加物を添加した材料より成るバッファ層と、前記バッファ層上に設けられ、前記第1の液体に電圧を印加するTaより成る第1電極と、前記第1電極表面を陽極酸化することによって形成されるTaより成る誘電体層と、前記第1の液体に電圧を印加するための第2電極と、前記第1及び第2電極間に電圧を印加する電圧印加部とを備える複数の光変調素子と、
前記光変調素子を駆動する駆動部と
を備える光変調装置。
【請求項19】
光透過性を有し且つ導電性または有極性を有する第1の液体と、前記第1の液体と混合せず、前記第1の液体より低い光透過性を有し、且つ絶縁性または無極性を有する第2の液体と、前記第1の液体及び第2の液体を、貫通して設けられた空間内に収容する容器と、前記容器内に収容された前記第1の液体及び第2の液体を封止する一対の光透過性部材と、前記容器の内壁に設けられる亜酸化タングステン又はこれに添加物を添加した材料より成るバッファ層と、前記バッファ層上に設けられ、前記第1の液体に電圧を印加するTaの第1電極と、前記第1電極表面を陽極酸化することによって形成されるTaの誘電体層と、前記第1の液体に電圧を印加するための第2電極と、前記第1及び第2電極間に電圧を印加する電圧印加部とを備える光変調素子を複数含む光変調装置部と、
前記光変調装置部に光を入射する光源と、
を備える表示装置。
【請求項20】
導電性または有極性を有する第1の液体と、第1の液体と異なる屈折率を有し且つ絶縁性または無極性を有する第2の液体と、前記第1の液体及び第2の液体を、貫通して設けられた空間内に収容する容器と、前記容器内に収容された前記第1の液体及び第2の液体を封止する一対の光透過性部材と、前記容器の内壁に設けられる亜酸化タングステン又はこれに添加物を添加した材料より成るバッファ層と、前記バッファ層上に設けられ、前記第1の液体に電圧を印加するTaより成る第1電極と、前記第1電極表面を陽極酸化することによって形成されるTaより成る誘電体層と、前記第1の液体に電圧を印加するための第2電極と、前記第1及び第2電極間に電圧を印加する電圧印加部とを備える光学素子を複数含む光拡散素子と、
前記光拡散素子に光を入射する光源と、
前記光拡散素子と前記光源との間の光路の途中に設けられた光学プリズムと、
前記光源を発光させるストロボ回路部と、
前記光拡散素子及び前記ストロボ回路部の駆動を制御する制御部と
を備えるストロボ装置。
【請求項21】
亜酸化タングステン又はこれに添加物を添加した材料より成る層を形成するステップと、
前記亜酸化タングステン又はこれに添加物を添加した材料より成る層上に、金属膜を形成するステップと、
前記電極表面を陽極酸化することにより酸化膜を形成するステップと、
を備える
酸化膜の形成方法。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−276716(P2010−276716A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126862(P2009−126862)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】