説明

酸素吸収性樹脂組成物及び積層体

【課題】本発明は、酸素吸収能力が大きく、長期間酸素を吸収することができる酸素吸収性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、炭素数2〜8のオレフィンを重合してなるポリオレフィン樹脂(A)、樹脂(A)以外の樹脂であって樹脂(A)の酸化のトリガーとなる樹脂(B)、及び遷移金属触媒(C)を含有し、樹脂(B)は樹脂(A)のマトリックス中に分散してなり、酸素に接触したときにマトリックス樹脂(A)の酸化反応が進行して酸素を吸収することを特徴とする酸素吸収性樹脂組成物を提供する。この酸素吸収性樹脂組成物は、樹脂(A)に酸素を吸収させるため、酸素吸収能力が大きく、コスト面でも有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素吸収性樹脂組成物及びその積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、包装容器としては、軽量で透明且つ易成形性等の利点を有するため、各種プラスチック容器が使用されている。
プラスチック容器は、金属容器やガラス容器と比べると、酸素バリヤー性が劣るため、容器内に充填された内容物の変質や、フレーバーの低下が問題になる。
これを防止するために、プラスチック容器では容器壁を多層構造とし、少なくとも一層を酸素バリヤー性に優れている樹脂、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体の層を設けている。また、容器内部に残存する酸素及び容器外部から侵入してくる酸素を除去するために、酸素吸収層を設けた容器がある。酸素吸収層に用いられる酸素吸収剤(脱酸素剤)には、例えば、鉄粉等の還元性物質を主剤とするもの(特公昭62−1824号公報等)や、エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒からなる酸素掃去剤を用いるもの(特開2001−39475号公報、特開平5−115776号公報、特表平8−502306号公報等)がある。
しかし、鉄粉等の酸素吸収剤を樹脂に配合して、包装材料の器壁に用いる方法は、酸素吸収性能が大きいという点では満足できるものであるが、樹脂を固有の色相に着色するために、透明性が要求される包装の分野には使用できないという用途上の制約がある。また、エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒からなる酸素掃去剤を用いる方法は、エチレン性不飽和炭化水素自体が酸素を吸収して酸素バリヤー性を達成するためある程度配合量を多くする必要があるが、配合量を多くすると成形性や透明性が低下するといった問題が生じる。このため、酸素を有効に吸収できる期間が限定されるため、長期保存の要請に十分対応するものとは言えない。さらに酸素吸収により着色や臭気も生じる。
【0003】
【特許文献1】特公昭62−1824号公報
【特許文献2】特開2001−39475号公報
【特許文献3】特開平5−115776号公報
【特許文献4】特表平8−502306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題に鑑み、酸素吸収能力が大きく、長期間酸素を吸収することができ、酸素吸収による着色や臭気を生じない酸素吸収性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために、本発明者らは、炭素数2〜8のオレフィンを重合してなるポリオレフィン樹脂(A)に、樹脂(A)以外の樹脂であって樹脂(A)の酸化のトリガーとなる樹脂(B)と、遷移金属触媒(C)を特定量配合した樹脂組成物において、樹脂(B)がポリオレフィン樹脂(A)の酸化のトリガーとして作用してポリオレフィン樹脂(A)が酸素を吸収するため、樹脂組成物の酸素吸収量を大幅に向上できることを見出し、本発明を完成させた。
従って、本発明は、炭素数2〜8のオレフィンを重合してなるポリオレフィン樹脂(A)、樹脂(A)以外の樹脂であって樹脂(A)の酸化のトリガーとなる樹脂(B)、及び遷移金属触媒(C)を含有し、樹脂(B)は樹脂(A)のマトリックス中に分散してなり、酸素に接触したときにマトリックス樹脂(A)の酸化反応が進行して酸素を吸収することを特徴とする酸素吸収性樹脂を提供する。
また、本発明は、上記の酸素吸収性樹脂組成物を含む層を、少なくとも1層有することを特徴とする積層体を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
[酸素吸収性樹脂組成物]
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、炭素数2〜8のオレフィンを重合してなるポリオレフィン樹脂(A)、樹脂(A)以外の樹脂(B)、及び遷移金属触媒(C)を含有し、樹脂(B)がトリガーとなって樹脂(A)の酸化が進行する酸素吸収性樹脂組成物である。
炭素数2〜8のオレフィンを重合してなるポリオレフィン樹脂(A)としては、例えば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、アイソタクティック又はシンジオタクテイクスポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体、或いはこれらのブレンド物等が挙げられる。また、上記樹脂をベースポリマーとし、不飽和カルボン酸又はこれらの誘導体でグラフト変性された酸変性オレフィン系樹脂を用いる事も出来る。好ましくは、分子構造にエチレン構造を有するポリオレフィン樹脂であり、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体等のエチレン系共重合体である。特に好ましくは、低密度ポリエチレン又は線状低密度ポリエチレンである。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0007】
従来の酸素吸収剤、例えば特開平5−115776号公報等に開示されるエチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒からなる酸素掃去剤では、エチレン性不飽和炭化水素が有する不飽和結合の数により酸素吸収量が決まる。一般に上記酸素掃去剤はその用途に応じて他の熱可塑性樹脂に配合して用いられるが、上記酸素掃去剤の配合量を多くすると耐久性や成形性が低下し、また透明性が低下するといった問題が生じる。そのため、その配合量は制限され、樹脂組成物の酸素吸収量には限界があった。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物においては、樹脂(B)は樹脂(A)のマトリックス中に分散した状態で存在するのが好ましい。樹脂(B)は平均粒径が10μm以下の微粒子状に分散するのが好ましく、5μm以下の微粒子状に分散するのが特に好ましい。樹脂(A)のマトリックス中に均一に分散した樹脂(B)のトリガー作用により、樹脂(A)自体が酸素吸収剤として機能する。即ち、本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、マトリックス樹脂自体が酸素を吸収するため、上記従来の酸素掃去剤の酸素吸収量と比較してはるかに多くの酸素を吸収することができる。従って、本発明の樹脂組成物は、従来の酸素掃去剤よりも長期にわたって酸素を有効に吸収できる。また、樹脂(B)の配合量は、トリガー作用が発現する程度の少量の配合であり、マトリックス樹脂(A)の成形性の低下も生じない。また、汎用樹脂に酸素を吸収させることができるためにコスト面でも有利である。
【0008】
樹脂(A)は、マトリックスの形成が可能であり、かつ酸化により多量の酸素を吸収することが可能であるように多割合で含有されるのが好ましく、樹脂(A)の含有量は90〜99重量%の範囲がより好ましく、92.5〜97.5重量%の範囲がさらに好ましい。また、樹脂(B)は、樹脂(A)のマトリックス中に分散した状態で存在することが可能であり、かつ樹脂(A)の酸化のトリガーとして機能を十分に発揮することが可能であるように少割合で含有されるのが好ましく、フィルム、シート或いはカップ、トレイ、ボトル、チューブとする際に成形性を考慮すると、樹脂(B)の含有量は1.0〜10.0重量%の範囲が好ましく、2.5〜7.5重量%の範囲がさらに好ましい。樹脂(B)が樹脂(A)のマトリックス中に分散した状態で存在する事は、電子顕微鏡を用いて簡便に観察する事ができる。例えば、低密度ポリエチレン100重量部にスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体樹脂5重量部と遷移金属触媒を配合した樹脂組成物を中間層に用いたボトル胴壁の断面を観察した走査型電子顕微鏡写真(JSM−6300F;JEOL)を図1に示す。図1から樹脂(B)が平均粒径1μm程度で樹脂(A)のマトリックス中に均一に分散している事が分かる。
【0009】
樹脂(B)は、樹脂(A)以外の樹脂であり、樹脂(A)の酸化のトリガーとなる樹脂である。樹脂(B)としては、例えば主鎖又は側鎖に脂肪族性の炭素−炭素二重結合を有する樹脂、主鎖に三級炭素原子を含む樹脂及び主鎖に活性メチレン基を有する樹脂を挙げることができる。
これらは、樹脂(A)中に単独で含有されていてもよいし、二種以上の組合せで含有されていてもよい。
主鎖又は側鎖に脂肪族性の炭素−炭素二重結合を有する樹脂(B)としては、鎖状又は環状の共役又は非共役ポリエンから誘導された単位を含む樹脂が挙げられる。
このような単量体としては、例えばブタジエン、イソプレン等の共役ジエン;1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の環状非共役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン等のトリエン等が挙げられる。
具体的な重合体としては、ポリ−1,2−ブタジエン、ポリ−1,4−ブタジエン、ポリ−1,2−イソプレン、ポリ−1,4−イソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体等が挙げられる。
【0010】
また、主鎖に三級炭素原子を含む樹脂(B)としては、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから誘導された単位を含む重合体または共重合体、或いは側鎖にベンゼン環を有する重合体または共重合体が好適に使用される。上記α−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなどが挙げられる。具体的な重合体としては、特にポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−1−ヘキセン、ポリ−1−オクテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体が挙げられる。また、上記側鎖にベンゼン環を有する単量体としては、スチレン、3−フェニルプロペン、2−フェニル−2−ブテン等のアルケニルベンゼンが挙げられる。具体的な重合体としては、ポリスチレンまたはスチレン共重合体が挙げられる。
また、主査に活性メチレン基を有する樹脂(B)としては、主鎖に電子吸引性の基、特にカルボニル基とこれに隣接するメチレン基とを有する樹脂であり、具体的には、一酸化炭素とオレフィンとの共重合体、特に一酸化炭素−エチレン共重合体等が挙げられる。
樹脂(B)としては、側鎖にベンゼン環を有するポリスチレンまたはスチレン共重合体が、樹脂(A)の酸化のトリガーとしての機能の点から特に好ましい。
【0011】
スチレン共重合体においては、スチレン部分を10重量%以上含有するものがラジカル発生効率の点で好ましく、スチレン部分を15〜50重量%含有するものがより好ましい。
また、スチレン共重合体がブロック共重合体である場合には、樹脂(A)に対する相溶性、分散性に優れるという利点を有する。
さらに、スチレン共重合体は、樹脂組成物の機械的特性の点で、分子末端部分にポリスチレンブロックを有するブロック共重合体であるのが好ましく、イソプレン単位を含むブロック共重合体であるのが樹脂(A)に対するトリガー効果の点で好ましい。
すなわち、樹脂(B)としては、スチレン−イソプレン共重合体等のスチレン共重合体が好ましく、特に、スチレン−イソプレン共重合体の一種であるスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体が好ましい。
また、上記した樹脂(B)として列記した主鎖又は側鎖に脂肪族性の炭素−炭素二重結合を有する樹脂、主鎖に三級炭素原子を含む樹脂、主鎖に活性メチレン基を有する樹脂においては、成形中の熱安定性及び樹脂(A)の酸化のトリガーとしての機能の点から、樹脂(B)は、ベンゼン環以外の炭素−炭素二重結合の量が0.018eq/g以下が好ましく、より好ましくは0.0001〜0.015eq/gの範囲である。
さらに、本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、ベンゼン環以外の炭素−炭素二重結合の量が0.001eq/g以下が好ましく、より好ましくは0.00001〜0.0007eq/gの範囲である。ベンゼン環以外の炭素−炭素二重結合が過剰に存在すると、樹脂(A)の酸化を逆に抑制する傾向がある。
尚、樹脂(B)の分子量については特に制限はないが、樹脂(A)への分散性の点から数平均分子量が1000〜500000の範囲であるのが好ましく、より好ましくは10000〜250000の範囲である。
【0012】
次に、本発明に用いる遷移金属触媒(C)としては、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族の金属成分、銅、銀等の第I族金属、錫、チタン、ジルコニウム等の第IV族金属、バナジウムの第V族、クロム等VI族、マンガン等のVII族の金属成分を挙げることができる。好ましくは、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族の金属成分であり、特に、コバルト成分は、酸素吸収速度が大きいため好ましい。
遷移金属触媒(C)は、上記遷移金属の低価数の無機酸塩、有機酸塩又は錯塩の形で使用される。
無機酸塩としては、塩化物等のハライド、硫酸塩等の硫黄オキシ酸塩、硝酸塩等の窒素のオキシ酸塩、リン酸塩等のリンオキシ酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。
有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩等が挙げられ、中でもカルボン酸塩が好ましく、その具体例としては、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、ブタン酸、イソブタン酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、イソヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸、リンデル酸、ツズ酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ギ酸、シュウ酸、スルファミン酸、ナフテン酸等の遷移金属塩が挙げられる。
【0013】
遷移金属の錯体としては、β−ジケトン又はβ−ケト酸エステルとの錯体が使用され、β−ジケトン又はβ−ケト酸エステルとしては、例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、1,3−シクロヘキサジオン、メチレンビス−1,3ーシクロヘキサジオン、2−ベンジル−1,3−シクロヘキサジオン、アセチルテトラロン、パルミトイルテトラロン、ステアロイルテトラロン、ベンゾイルテトラロン、2−アセチルシクロヘキサノン、2−ベンゾイルシクロヘキサノン、2−アセチル−1,3−シクロヘキサンジオン、ベンゾイル−p−クロルベンゾイルメタン、ビス(4−メチルベンゾイル)メタン、ビス(2−ヒドロキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセトン、トリベンゾイルメタン、ジアセチルベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタン、ラウロイルベンゾイルメタン、ジベンゾイルメタン、ビス(4−クロルベンゾイル)メタン、ビス(メチレン−3,4−ジオキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセチルフェニルメタン、ステアロイル(4−メトキシベンゾイル)メタン、ブタノイルアセトン、ジステアロイルメタン、アセチルアセトン、ステアロイルアセトン、ビス(シクロヘキサノイル)−メタン及びジピバロイルメタン等を用いることが出来る。本発明において、遷移金属触媒(C)は、単独で用いることも、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0014】
上記遷移金属触媒(C)は、少なくとも樹脂(A)中に存在するのが好ましく、樹脂(A)の酸化反応の進行を促進し、効率良く酸素を吸収することができる。より好ましくは、遷移金属触媒(C)は樹脂(A)及び樹脂(B)中に存在させて、樹脂(B)のトリガー機能を促進させることができる。また、遷移金属触媒(C)の配合量は、使用する遷移金属触媒の特性に応じて樹脂(A)の酸化反応を進行できる量であれば良く、樹脂(A)の酸化反応を十分に促進し、流動特性の悪化による成形性低下の防止の点から、一般的には10〜3000ppmの範囲が好ましく、50〜1000ppmの範囲がより好ましい。
【0015】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物における樹脂(B)の上記トリガー機能の作用機構に関しては、その全てが解明されているわけではないが、その1つとして本発明者らの検討により以下のような機構が推察されるが、上記トリガー機能の作用機構はこれに限定されるものではない。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物では、始めに遷移金属触媒(C)により樹脂(B)の水素の引き抜きが起こり、ラジカルが発生し、続いて、このラジカルによる攻撃と遷移金属触媒(C)により樹脂(A)の水素の引き抜きが起こり、樹脂(A)にもラジカルが発生し、このようにして生じたラジカルの存在下で、酸素が樹脂(A)と接触したときに樹脂(A)の初期酸化が起こると考えられる。以降、樹脂(A)の酸化反応は遷移金属触媒の作用により自動酸化の理論に従って連鎖的に進行し、樹脂(A)自体が酸素吸収剤として機能すると考えられる。
上述したように、推察される作用機構においては、遷移金属触媒(C)によって、まず樹脂(B)のラジカルが発生することが肝要であり、従って、樹脂(B)にはメチレン鎖より水素引き抜きが起こりやすい炭素−水素結合を有するのが好ましい。このような樹脂(B)であれば、効率良くラジカルを供給することができ、優れたトリガー機能を発揮できる。水素引き抜きの起こりやすさの指標としては、例えばC−H結合解離エネルギーがある。この結合解離エネルギーは分子(ラジカル)内の特定のC−H結合を開裂させるのに必要なエネルギーである。分子(ラジカル)をR−Hで表すと、C−H結合の結合解離エネルギーは下記反応のエンタルピー変化として与えられ、その値は分子軌道計算等により求めることができる。代表的なその値を表1に示す。(化学便覧基礎編 改訂2版、社団法人日本化学会、丸善株式会社、p976−978)
R−H(g) → R(g)+H(g)
【0016】
【表1】

【0017】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物の製法について、上記成分(A)〜(C)の混合については、この三成分を別個に混合してもよく、また、上記三成分の内、二成分を予め混合し、これと残りの成分を混合してもよい。例えば、樹脂(A)と樹脂(B)とを予め混合し、これに遷移金属触媒(C)を混合する方法や、樹脂(A)と遷移金属触媒(C)とを予め混合し、これに樹脂(B)を混合する方法、或いは樹脂(B)と遷移金属触媒(C)とを予め混合し、これに樹脂(A)を混合する方法が挙げられる。
樹脂(A)及び/又は樹脂(B)に、遷移金属触媒(C)を混合するには、種々の手段を用いることができる。例えば、遷移金属触媒(C)を樹脂に乾式でブレンドする方法や、遷移金属触媒(C)を有機溶媒に溶解し、この溶液と、粉末又は粒状の樹脂とを混合し、必要によりこの混合物を不活性雰囲気下により乾燥する方法等がある。遷移金属触媒(C)が樹脂に比して少量であるので、ブレンドを均質に行うため、遷移金属触媒(C)を有機溶媒に溶解し、この溶液と、粉末又は粒状の樹脂とを混合する方法が好ましい。
遷移金属触媒(C)を溶解させる溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒を用いることができる。遷移金属触媒(C)の濃度は、5〜90重量%が好ましい。
【0018】
樹脂(A)、樹脂(B)及び遷移金属触媒(C)を混合するとき、及び混合した組成物を保存するときは、使用前にこの組成物が酸化しないように、非酸化性雰囲気中で行うことが好ましい。即ち、減圧下又は窒素気流中で混合又は保存を行うことが好ましい。
ベント式又は乾燥機付の押出成形機や射出成形機を使用すると、成形工程の前段階で混合及び乾燥を行うことができ、遷移金属触媒が配合された樹脂の保存に格別の配慮が不要になるため好ましい。
また、遷移金属触媒を比較的高い濃度で含有する樹脂のマスターバッチを調製し、これを未配合の樹脂と乾式ブレンドして調製することもできる。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物には、ラジカル開始剤や光増感剤等の種々の添加剤を配合することができる。
ラジカル開始剤及び光増感剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン及びそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類又はキサントン類等の一般に光開始剤として知られているものが使用される。かかる光ラジカル開始剤は、安息香酸系又は第三級アミン系等、公知慣用の光重合促進剤の一種又は二種以上と組み合わせて用いることができる。
【0019】
その他の添加剤としては、充填剤、着色剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、金属セッケンやワックス等の滑剤、改質用樹脂又はゴム等の添加剤が挙げられ、それ自体公知の処方に従って添加することができる。例えば、滑剤を配合することにより、スクリューへの樹脂の食い込みが改善される。滑剤としてはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石ケン、流動、天然または合成パラフィン、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス等の炭化水素系のもの、ステアリン酸、ラウリン酸等脂肪酸系のもの、ステアリン酸アミド、バルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の脂肪酸モノアミド系またはビスアミド系のもの、ブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート等のエステル系のもの、およびそれらの混合系が一般的に用いられ、滑剤の添加量はポリアミド当たり50〜1000ppmの範囲が適当である。
本発明の酸素吸収性組成物は、粉末、粒状又はシート等の形状で、密封包装体内の酸素吸収に使用することができる。また、ライナー、ガスケット用又は被覆形成用の樹脂やゴム中に配合して、包装体内の残留酸素吸収に用いることができる。さらに、フィルム、シートの形で包装材料として、また、カップ、トレイ、ボトル、チューブ容器等の形で包装容器として包装体の製造に用いることができる。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、これを含む少なくとも一層と、他の樹脂の層からなる積層体の形で使用することが好ましい。
【0020】
[積層体]
本発明の積層体は、上記の酸素吸収性樹脂組成物を含む層(以下、酸素吸収層という)を少なくとも一層有している。尚、酸素吸収性樹脂組成物を含む層とは、上記の酸素吸収性樹脂組成物のみからなる層、及び他の樹脂等を基材とし酸素吸収性樹脂組成物を配合してなる層の両者の場合を含む。
積層体を構成する、酸素吸収層以外の樹脂層は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂から、その使用態様や要求される機能により適宜選択できる。例えば、オレフィン系樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、酸素バリヤー性樹脂等が挙げられる。
オレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)又はこれらのブレンド物等が挙げられる。
熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、又はこれらの共重合ポリエステル、さらに、これらのブレンド物等が挙げられる。
酸素バリヤー性樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を挙げることができる。例えば、エチレン含有量が20〜60モル%、好ましくは、25〜50モル%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、好ましくは、99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が使用される。
【0021】
このエチレンビニルアルコール共重合体ケン化物は、フィルムを形成することができる分子量を有する。一般に、フェノール:水の重量比で85:15の混合溶媒中30℃で測定して0.01dl/g以上、好ましくは、0.05dl/g以上の粘度を有する。
酸素バリヤー性樹脂の他の例としては、ポリメタキシリデンアジパミド(MXD6)等のポリアミド樹脂、ポリグリコール酸等のポリエステル樹脂等を用いることができる。
本発明の積層体の構造は、使用態様、要求される機能により適宜選択できる。例えば、酸素吸収層をOARとして表して、次の構造がある。
二層構造:PET/OAR、PE/OAR、OPP/OAR、
三層構造:PE/OAR/PET、PET/OAR/PET、PE/OAR/OPP、EVOH/OAR/PET、PE/OAR/COC、
四層構造:PE/PET/OAR/PET、PE/OAR/EVOH/PET、PET/OAR/EVOH/PET、PE/OAR/EVOH/COC、PE/OAR/EVOH/PE、
五層構造:PET/OAR/PET/OAR/PET、PE/PET/OAR/EVOH/PET、PET/OAR/EVOH/COC/PET、PET/OAR/PET/COC/PET、PE/OAR/EVOH/COC/PET、PE/EVOH/OAR/EVOH/PE、PP/EVOH/OAR/EVOH/PP、
六層構造:PET/OAR/PET/OAR/EVOH/PET、PE/PET/OAR/COC/EVOH/PET、PET/OAR/EVOH/PET/COC/PET、PE/EVOH/OAR/PE/EVOH/PE、PP/EVOH/OAR/PP/EVOH/PP、
七層構造:PET/OAR/COC/PET/EVOH/OAR/PET、
【0022】
尚、PEとは、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)を意味する。
これらの構造で、酸素バリヤー層を少なくとも一層有している構造が、酸素吸収層の寿命を向上することができるため好ましい。
この積層体に、各樹脂層間に必要により接着剤樹脂を介在させることもできる。このような接着剤樹脂としては、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸を主鎖又は側鎖に、1〜700ミリイクイバレント(meq)/100g樹脂、好ましくは、10〜500meq/100g樹脂、の濃度で含有する重合体が挙げられる。
接着剤樹脂としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、アクリル酸グラフトポリオレフイン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、共重合ポリエステル、共重合ポリアミド等があり、これらを二種以上の組み合わせたものでもよい。
これらの接着剤樹脂は、同時押出又はサンドイッチラミネーション等による積層に有用である。また、予め形成されたガスバリヤー性樹脂フィルムと耐湿性樹脂フィルムとの接着積層には、イソシアネート系又はエポキシ系等の熱硬化型接着剤樹脂も使用される。
積層体の製造には、それ自体公知の共押出成形法を用いることができる。例えば、樹脂の種類に応じた数の押出機を用いて、多層多重ダイを用いて押出成形を行うことで積層体が成形できる。
これにより、フィルム、シート、ボトル、カップ、キャップ、チューブ形成用パリソン又はパイプ、ボトル又はチューブ成形用プリフォーム等の積層体が成形できる。
【0023】
フィルム等の包装材料は、種々の形態の包装袋として用いることができる。例えば、三方又は四方シールの通常のパウチ類、ガセット付パウチ類、スタンディングパウチ類、ピロー包装袋等が挙げられる。製袋は公知の製袋法で行うことができる。
パリソン、パイプ又はプリフォームを一対の割型でピンチオフし、その内部に流体を吹込むことにより容易にボトルが成形できる。また、パイプ、プリフォームを冷却した後、延伸温度に加熱し、軸方向に延伸すると共に、流体圧によって周方向にブロー延伸することにより、延伸ブローボトル等が得られる。
さらに、フィルム又はシートを、真空成形、圧空成形、張出成形、プラグアシスト成形等の手段に付することにより、カップ状、トレイ状等の包装容器が得られる。
多層射出成形体の製造には、樹脂の種類に応じた数の射出成形機を用いて、共射出法や逐次射出法により多層射出成形体を製造することができる。
さらに、多層フィルムや多層シートの製造には、押出コート法や、サンドイッチラミネーションを用いることができ、また、予め形成されたフィルムのドライラミネーションによって多層フィルムあるいはシートを製造することもできる。
本発明の積層体は、酸素を有効に遮断するので、包装材又は包装容器に好ましく使用できる。この積層体は長期間酸素を吸収できるので、内容物の香味低下を防止し、シェルフライフを向上させる容器として有用である。
特に、酸素存在下で劣化を起こしやすい内容品、例えば、飲料ではビール、ワイン、フルーツジュース、炭酸ソフトドリンク等、食品では果物、ナッツ、野菜、肉製品、幼児食品、コーヒー、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、食用油、ドレッシング、ソース類、佃煮類、乳製品類等、その他では医薬品、化粧品、ガソリン等の包装材に有用である。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
[スチレン−ジエン共重合体の炭素−炭素二重結合含有量の測定]
重クロロホルムを溶媒に用いて10〜15wt%の濃度に溶解し、13C−NMR測定(JEOL製、JNM−EX270)を行いスペクトルより樹脂の構造を同定した。それにより上記含有量は、樹脂1g中に含まれる二重結合のモル数(eq/g)を計算により求めた。
【0025】
[酸素吸収性樹脂組成物中の樹脂(B)の分散状態の観察方法]
酸素吸収性樹脂組成物を電子顕微鏡用のエポキシ/アミン系包埋樹脂に埋め込み、包埋樹脂を硬化させた。次いで、ミクロトームを用いて包埋樹脂を研磨し、酸素吸収性樹脂組成物断面を削り出した。さらに、包埋試料の前記切削断面をウルトラミクロトームを用いて仕上げ研磨し、走査型電子顕微鏡(JSM−6300F:JEOL)により、前記仕上げ研磨断面のSEM写真を撮影し、酸素吸収性樹脂組成物中の樹脂(B)の分散状態を観察した。
【0026】
1.酸素吸収性樹脂組成物
[実施例1]
低密度ポリエチレン樹脂[JB221R;日本ポリオレフィン(株)製]100重量部に、スチレン樹脂[HRM24N;東洋スチレン(株)製]を5重量部と、遷移金属触媒としてネオデカン酸コバルト[DICNATE5000;大日本インキ化学工業(株)製]をコバルト換算で350ppmを配合し、撹拌乾燥機[ダルトン(株)製]で予備混練後ホッパーに投入した。定量フィーダーにより2軸押出機[TEM37、東芝機械(株)製]内に投入し、温度設定210℃、回転数100RPMでストランド状に押出、ペレット化を行った。
このペレットを凍結粉砕機で粉砕後定量し、蒸留水1.0mlと共に内容量85mlの酸素不透過性容器[ハイレトフレックス:HR78−84東洋製罐(株)製ポリプロピレン/スチール箔/ポリプロピレン製カップ状積層容器]に入れ、ポリプロピレン(内層)/アルミ箔/ポリエステル(外層)の蓋材でヒートシールし、50℃の条件下で保存した。この容器内酸素濃度を経時日時においてガスクロマトグラフィー[GC−8A、島津製作所(株)製]を用いて測定し、酸素吸収量(cc/g)を算出した。その結果を表2に示す。また、前記ペレットの断面を観察した結果、スチレン樹脂は低密度ポリエチレン樹脂のマトリックス中に均一に分散していた。
【0027】
[実施例2]
スチレン樹脂の代わりにスチレン含有量15重量%のスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体樹脂[SIS5200;JSR(株)製、この樹脂中の炭素−炭素二重結合含有量は0.014eq/gであった]を用いた以外は、実施例1と同じ方法でペレット化し、容器内酸素濃度を測定し、酸素吸収量(cc/g)を算出した。その結果を表2に示す。また、実施例1と同じ方法でペレット断面を観察した結果、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体樹脂は低密度ポリエチレン樹脂のマトリックス中に均一に分散していた。
【0028】
[実施例3]
低密度ポリエチレン樹脂の代わりに線状低密度ポリエチレン樹脂[ULTZEX2020SB;三井住友ポリオレフィン(株)製]を用いた以外は、実施例2と同じ方法でペレット化し、容器内酸素濃度を測定し、酸素吸収量(cc/g)を算出した。その結果を表2に示す。また、実施例1と同じ方法でペレット断面を観察した結果、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体樹脂は線状低密度ポリエチレン樹脂のマトリックス中に均一に分散していた。
【0029】
[実施例4]
低密度ポリエチレン樹脂の代わりに高密度ポリエチレン樹脂[KZ145N;日本ポリオレフィン(株)製]を用いた以外は、実施例2と同じ方法でペレット化し、容器内酸素濃度を測定し、酸素吸収量(cc/g)を算出した。その結果を表2に示す。また、実施例1と同じ方法でペレット断面を観察した結果、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体樹脂は高密度ポリエチレン樹脂のマトリックス中に均一に分散していた。
【0030】
[比較例1]
スチレン樹脂[HRM24N;東洋スチレン(株)製]を配合しなかった以外は、実施例1と同様にペレット化を行い、容器内酸素濃度を測定し、酸素吸収量(cc/g)を算出した。その結果を表2に示す。
【0031】
[比較例2]
低密度ポリエチレン樹脂の代わりに線状低密度ポリエチレン樹脂[ULTZEX2020SB;三井住友ポリオレフィン(株)製]を用いた以外は、比較例1と同様にペレット化を行い、容器内酸素濃度を測定し、酸素吸収量(cc/g)を算出した。その結果を表2に示す。
【0032】
[比較例3]
低密度ポリエチレン樹脂の代わりに高密度ポリエチレン樹脂(KZ145N;日本ポリオレフィン(株)製)を用いた以外は、比較例1と同様にペレット化を行い、容器内酸素濃度を測定し、酸素吸収量(cc/g)を算出した。その結果を表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
2.積層体
[実施例5]
実施例2でペレット化した酸素吸収性樹脂組成物と低密度ポリエチレン樹脂[JB221R;日本ポリオレフィン(株)製]、接着性樹脂[モディックL522;三菱化学(株)製]、バリヤー性樹脂[エバールF101B;(株)クラレ製]を用いて、公知の溶融ブロー成形法により口径45mm、内容量150mlの4種6層多層ボトルを作製した。
その層構成を下記に示す。
外側 ポリエチレン層/接着層/バリヤー層/接着層/酸素吸収層/ポリエチレン層
重量% 20/2.5/5/2.5/5/65
多層ボトルの酸素遮断性を評価する為、実施例1で用いた酸素不透過性容器内に蒸留水1mlを入れ、窒素雰囲気下で口部を実施例1で用いた蓋材でヒートシールして密封し、容器内の初期酸素濃度を0.02%以下とし、30℃、80%RHで保存した。この容器内酸素濃度を経時日時においてガスクロマトグラフィー[GC−8A島津製作所(株)製]を用いて測定した。その結果を表3に示す。
【0035】
[比較例4]
比較例1でペレット化した酸素吸収性樹脂組成物と低密度ポリエチレン樹脂(JB221R;日本ポリオレフィン(株)製)、接着性樹脂(モディックL522;三菱化学(株)製)、バリヤー性樹脂(エバールF101B;(株)クラレ製)を用いて、実施例3と同様にして内容量150mlの4種6層多層ボトルを作製し、酸素遮断性の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0036】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の酸素吸収性樹脂組成物を中間層に用いたボトル胴壁の断面を観察した走査型電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン樹脂(A)、樹脂(A)以外の樹脂であって樹脂(A)の酸化のトリガーとなる樹脂(B)、及び遷移金属触媒(C)を含有し、樹脂(B)は樹脂(A)のマトリックス中に分散してなり、酸素に接触したときにマトリックス樹脂(A)の酸化反応が進行して酸素を吸収することを特徴とする酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項2】
遷移金属触媒(C)が少なくとも樹脂(A)中に存在する請求項1に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項3】
ポリエチレン樹脂(A)が低密度ポリエチレン又は線状低密度ポリエチレンである請求項1又は2に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂(A)の含有量が90〜99重量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂(B)の含有量が1.0〜10重量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項6】
樹脂(B)がメチレン鎖より水素引き抜きが起こりやすい炭素−水素結合を有する樹脂である請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項7】
樹脂(B)が側鎖にベンゼン環を有する樹脂である請求項1〜6のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項8】
側鎖にベンゼン環を有する樹脂がポリスチレン又はスチレン共重合体である請求項7に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項9】
スチレン共重合体がスチレン部分を10重量%以上含有する請求項8に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項10】
スチレン共重合体ブロック共重合体である請求項8又は9に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項11】
スチレン共重合体が分子末端にポリスチレンブロックを有するブロック共重合体である請求項8〜10のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項12】
スチレン共重合体がイソプレン単位を含むブロック共重合体である請求項8〜11のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項13】
イソプレン単位を含むブロック共重合体がスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体である請求項12に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項14】
酸素吸収性樹脂組成物中にベンゼン環以外の炭素−炭素二重結合の量が0.001eq/g以下で含有されている請求項1〜13のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項15】
遷移金属触媒が金属重量換算で10〜3000ppm含まれている請求項1〜14のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物を含む酸素吸収シート。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の酸素吸収性樹脂組成物を含む層を少なくとも1層有する積層体。
【請求項18】
さらに酸素バリヤー層を少なくとも1層有する請求項17に記載の積層体。
【請求項19】
ポリエチレン樹脂(A)、樹脂(A)以外の樹脂(B)、及び遷移金属触媒(C)を含有し、樹脂(B)がトリガーとなって樹脂(A)の酸化が進行することを特徴とする酸素吸収性樹脂組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−195949(P2008−195949A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65971(P2008−65971)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【分割の表示】特願2004−530608(P2004−530608)の分割
【原出願日】平成15年8月22日(2003.8.22)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】