説明

酸素濃縮装置

【課題】コンプレッサが作動してスリーブが発熱しても、効率良く冷却しつつ、騒音の発生や電力消費を抑制することができる酸素濃縮装置を提供すること。
【解決手段】ピストン11P、12Pと、ピストンを往復移動させるスリー11,12を有しスリーブ11,12内で原料空気を圧縮して圧縮空気を発生するコンプレッサ10と、スリーブ11,12に対向する位置に配置された送風口37,38を有し、送風口37,38を通じてスリーブ11,12に冷却用の送風を行うファン34,36を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素濃縮装置に関し、特に取り込んだ原料空気を圧縮して、この圧縮空気を吸着剤に供給することで酸素の供給が可能な医療用の酸素濃縮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧力スイング吸着法を利用した酸素濃縮装置は、原料空気中の酸素を透過させて窒素を選択的に吸着するゼオライトを吸着剤として用いることで濃縮酸素を得る構成になっている。
この方式の酸素濃縮装置によれば、取り込んだ原料空気をコンプレッサで圧縮して圧縮空気を発生して、吸着剤を内蔵した吸着筒に対してこの圧縮空気を供給することで該吸着剤に窒素を吸着させ酸素を生成する。そして、生成された濃縮酸素はタンクに貯めておき、減圧弁や流量設定器を介してタンクから所定流量の酸素を供給可能な状態にすることで、患者は鼻カニューラ等の器具を用いて酸素吸入ができる。
【0003】
この酸素濃縮装置はAC電源(商用交流電源)が利用できる場所に設置しておけば、例えば肺機能が低下した在宅酸素療法患者が、就寝中でも安全に酸素を吸うことができるようになり安眠できる。特に、在宅酸素療法患者が就寝中も使用する場合には、酸素濃縮装置は騒音発生が極めて少ないことが好ましい。例えば、酸素濃縮装置の騒音は、室内の空調設備から発生する騒音レベル以下となることが望ましい。
【0004】
また、慢性気管支炎等の呼吸器疾患の患者の治療法として有効となる長期酸素吸入療法に使用される酸素濃縮装置は、一般的には可搬型ではなく、患者が外出先に持ち出せるようには構成されていない。
患者がやむなく外出する場合には、例えば、所定の収容容器に酸素を充填した酸素ボンベを搭載したカートを押しながら、その酸素ボンベから濃縮酸素を吸うようにしている。この酸素ボンベに対する酸素の充填は専用設備にて行なわなければならない。そこで、可搬型や移動型の酸素濃縮装置が提案されており、可搬型や移動型の酸素濃縮装置は、原料空気を取り込んで圧縮空気と減圧空気を発生するコンプレッサを備えている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−111016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の酸素濃縮装置では、コンプレッサは、ピストンを往復移動させるスリーブを有する。このコンプレッサは酸素濃縮装置の筐体内に設置されており、コンプレッサが作動してピストンが空気を圧縮するとスリーブが発熱することから、スリーブを冷却することが求められている。コンプレッサは通常防音ボックス内に設置されているが、コンプレッサを冷却するファンは、この防音ボックスの外に設置されている。しかし、このファンは、コンプレッサの形状によっては一番冷却したいスリーブ付近に近づけて設置することが難しく、コンプレッサを効率良く冷却することができない。またファンをスリーブ付近に設置できないので、スリーブを冷却するために必要以上に風量の大きいファンを設置する必要があり、消費電力が増加し、騒音が大きくなる。
そこで、本発明は、コンプレッサが作動してスリーブが発熱しても、効率良く冷却しつつ、小型、軽量で騒音の発生や電力消費を抑制することができる酸素濃縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のいわゆる5Lクラス(90%以上に濃縮された酸素の供給流量が最大で5L/分)の酸素濃縮装置は、ピストンと、前記ピストンを往復移動させるスリーブを有し前記スリーブ内で原料空気を圧縮して圧縮空気を発生するコンプレッサと、前記スリーブに対向し接近させた位置に配置された送風口を有した前記コンプレッサを設置する防音ボックスと、前記送風口を通じて前記スリーブに冷却用の送風を行うファンと、前記ファンを保持する保持手段とを有することを特徴とする。
上記構成によれば、コンプレッサを冷却するためのファンをコンプレッサに近づけて配置でき、コンプレッサが作動してスリーブが発熱しても、効率良く冷却することができる。
【0008】
本発明の酸素濃縮装置では、前記コンプレッサは、複数の前記スリーブと、前記ピストンを往復動作させるモータを有し、前記コンプレッサから発生する前記圧縮空気を冷却するラジエータが、前記ファンの空気吸い込み口付近に配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、ファンが発生する冷却用の送風は、複数のスリーブを冷却しながらモータも同時に冷却でき、しかも圧縮空気を冷却するラジエータをファンの空気吸い込みによって冷却することが可能となる。
【0009】
本発明の酸素濃縮装置では、一つの前記スリーブと他の少なくとも一つの前記スリーブにそれぞれ対向して同形状の一方の前記ファンと他方の前記ファンが配置されており、前記一方の前記ファンと前記他方の前記ファンは、互いに上下逆にして対面した状態で前記保持手段に保持されていることを特徴とする。
上記構成によれば、同形状の一方のファンと他方のファンを上下逆にして対面した状態で用いることにより、一方のファンと他方のファンにおける空気の吸込み口を対面させることができるので、両ファンの空気の吸い込みにより、ラジエータへの大きな冷却効果が可能となる。またファンの回転中心は縦方向にずれて固定されることになり、その分ラジエータを設置することが可能となりスペースの有効利用を図ることができる。
【0010】
本発明の酸素濃縮装置では、前記コンプレッサと前記ファンと前記保持手段を収容する主筐体を有し、前記主筐体は、前記ファン側に空気を取り込むための空気取り入れ口と、前記主筐体内に取り込まれた前記空気を前記主筐体内から排出する排気口とを有することを特徴とする。
上記構成によれば、同形状の一方のファンと他方のファンを上下逆にして対面した状態で用いることにより、一方のファンと他方のファンにおける空気の吸込み口を対面させることができるので、両ファンの空気の吸い込みにより、ラジエータへの大きな冷却効果が可能となる。またファンの回転中心は縦方向にずれて固定されることになり、その分ラジエータを設置することが可能となりスペースの有効利用を図ることができる。
【0011】
本発明の酸素濃縮装置では、前記ファンにより前記スリーブに送風された前記空気により冷却される電源制御回路が前記主筐体内に配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、電源制御回路が発熱しても、電源制御回路はファンの冷却用の送風により容易に冷却することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の酸素濃縮装置は、いわゆる5Lクラス(90%以上に濃縮された酸素の供給流量が最大で5L/分)の酸素濃縮装置にも係らず、コンプレッサが作動してスリーブが発熱しても、効率良く冷却しつつ、騒音の発生や電力消費を抑制することができる。本発明の 酸素濃縮装置は、小型化、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の酸素濃縮装置の実施形態の外観を示す前側から見た斜視図である。
【図2】図1の酸素濃縮装置の外観の背面図である。
【図3】図1と図2に示す酸素濃縮装置の内部構造例を示す斜め前側から見た斜視図である。
【図4】図3に示す酸素濃縮装置の主筐体と、この主筐体内に配置されているコンプレッサと、主筐体の空気取り入れ口と排気口の位置関係を示す斜め前側から見た斜視図である。
【図5】第1吸着筒体と第2吸着筒体の間であって、第1ファンと第2ファンとラジエータの位置関係を示す前側から見た図である。
【図6】図4のB−B線から見た内部構造を示す図である。
【図7】コンプレッサの構造例を示す図である。
【図8】酸素濃縮装置のシステム構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
図1は、本発明のコンプレッサを備える酸素濃縮装置の実施形態の外観を示す前側から見た斜視図である。図2は、図1の酸素濃縮装置の外観の背面図である。
図1と図2に示す酸素濃縮装置1は、好ましくは携帯型(可搬型や移動型ともいう)の酸素濃縮装置である。図1に示す酸素濃縮装置1は、例えば、酸素生成原理として圧縮空気による圧縮空気力変動吸着法(PSA)を用いている。
【0015】
図1と図2に示す酸素濃縮装置1は、一例として90%以上に濃縮された酸素の供給流量が最大5Lクラス(5L/分)の酸素濃縮装置(高さ62.5cm,幅35cm,奥行き29.5cm,重量23kg)であり、酸素流量の設定単位は、例えば0.25L〜5.00Lまで設定できる(0.25L〜2.00Lまでは、0.25Lごと、2.00L〜5.00Lまでは、0.50Lごと)。酸素濃縮装置1は、ほぼ直方体状の主筐体2と、流量設定が可能な表示部128と、加湿器Gと、カニューラ掛け2Kと、4隅のキャスタ2Tを有している。
主筐体2は、フロントパネル2Fと、左右のサイドパネル2Sと、リアパネル2Rと、上面部2Dと、底部2Bを有している。図1に示すように、上面部2Dには表示部128と、酸素出口部100と、電源スイッチ101と、酸素流量設定ボタン102が配置されている。フロントパネル2Fの上部には、幅方向のほぼ中央に加湿器Gの配置部2Gが開口して設けられている。キャスタ2Tは底部2Bの四隅部分に配置され、酸素濃縮装置1はこれらのキャスタ2Tを用いて移動可能になっている。
【0016】
図2を参照すると、リアパネル2Rは、上部の中央位置に主筐体2内に外気を取り入れるための空気取り入れ口5が形成され、下部の右側に主筐体2内の温まった空気を外部に排出するための排気口6が形成されている。空気取り入れ口5の内面側には、空気取り入れ口フィルタ7が着脱可能に装着されている。その他に、左右のサイドパネル2Sは取手8を有し、底部2Bは巻き取り式の電源コード9を有している。
【0017】
図3は、図1と図2に示す酸素濃縮装置1の内部構造例を示す斜め前側から見た斜視図である。図4は、図3に示す酸素濃縮装置1の主筐体2と、この主筐体2内に配置されているコンプレッサ10と、主筐体2の空気取り入れ口5と排気口6の位置関係を示す斜め前側から見た斜視図である。
図5は、第1吸着筒体31と第2吸着筒体32の間であって、第1ファン34と第2ファン36とラジエータ13の位置関係を示す後側から見た図である。図6は、図4のB−B線から見た内部構造を示す図である。
図3に示すように、底部2Bの上にはコンプレッサ10が設定され、このコンプレッサ10は、直方体状の防音用のコンプレッサケース4内に配置されている。コンプレッサケース4の背面部には、第1吸着筒体31と第2吸着筒体32がX方向に沿って間隔をおいて、しかもZ方向(垂直方向)に沿って平行に立てて固定されている。
【0018】
図3に示すように、コンプレッサ10は、配管15に接続されており、この配管15の途中には、コンプレッサ10から発生する圧縮空気を冷却するラジエータ13と3方向切換弁14B、14Cが接続されている。図5に示すように、第1吸着筒体31の内側には、取付部材33を介して第1ファン34が取り付けられ、第2吸着筒体32の内側には、取付部材35を介して第2ファン36が取り付けられている。
図3と図5に示すように、同形状の2つの第1ファン34と第2ファン36は、例えばシロッコファンが用いられ、対面して位置されているが、第1ファン34と第2ファン36の取り付け向きが、互いに上下逆になるように、しかも互いに対面するようにして固定されている。その結果、図示するように、第1ファン34と第2ファン36の本体が占める領域は、上下にずれた配置となる。
すなわち、第1ファン34の空気吸い込み口34Dと第2ファン36の空気吸い込み口36Dは、ほぼ対面している。第1ファン34は一方のファンに相当し、第2ファン36は他方のファンに相当する。
図5に示すように、第1ファン34の回転中心軸L1と第2ファン36の回転中心軸L2は、水平方向に平行でありしかも高さ(縦)方向にずれている。
これにより、第1ファン34は、ラジエータ13と干渉しないようにその上方の位置をとることができ、これに対して、第2のファン36は、高さ方向に下方にずれて、一部がラジエータ13の側方の位置と僅かに重なる位置をとることができる。このようにして、コンパクトに形成された主筐体2内部の限られたスペースを有効に利用することができる(図5参照)。
【0019】
図5に示す第1ファン34の送風口37と第2ファン36の送風口38はともに斜線で示している部分であり、第1ファン34の送風口37はスリーブ11に対面し、第2ファン36の送風口38はスリーブ12に対面している。第1ファン34の送風口37と第2ファン36の送風口38の中心位置Lは、高さ方向に関してほぼ同一の位置にある。
図6に示すコンプレッサケース4は送風口37及び送風口38を有しており、その面はコンプレッサケース4の外形に対して2つのスリーブ11及びスリーブ12に近くなるよう内側に凹ましてある。
これにより、第1ファン34は送風口37を通じてスリーブ11に送風してスリーブ12を直接冷却でき、第2ファン36は送風口38を通じてスリーブ12に送風してスリーブ12を直接冷却できる。
【0020】
図3と図5に示すように、冷却用のラジエータ13は、第1吸着筒体31と第2吸着筒体32の間であって、第1ファン34の送風口37と第2ファン36の送風口38の下部でしかも第1ファン34の送風口37と第2ファン36の送風口38の付近に配置されている。
図4と図6に示すように、第1ファン34と第2ファン36が発生する冷却用の送風は、複数のスリーブ11,12をそれぞれ冷却しながら、コンプレッサ10の駆動用のモータ53をも同時に冷却でき、しかも圧縮空気を冷却するラジエータ13を第1ファン34及び第2ファン36の空気吸い込みにより冷却できるので、温まった圧縮空気の冷却が容易にできる。また、電源制御回路39が底部2Bに配置されている。
【0021】
図7は、コンプレッサ10の構造例を示す図であり、コンプレッサ10は、第1ポンプ部51と第2ポンプ部52を有している。第1ポンプ部51は、円筒状のスリーブ11と、このスリーブ11内に配置されたピストン11P、ヘッドカバー11Hと、コンロッド11Cと、ケース部11Fを有している。同様にして、第2ポンプ部52は、円筒状のスリーブ12と、このスリーブ12内に配置されたピストン12P、ヘッドカバー12Hと、コンロッド12C、ケース部12Fを有している。
【0022】
図7に示すように、スリーブ11,12はピストンシリンダともいう。駆動用モータ53は例えば同期モータであり、出力軸54を有している。出力軸54の両端部には、コンロッド11C、12Cが回転可能に支持されている。
配管37と配管40,41の途中には、吸気フィルタ兼消音バッファ38が配置され、配管40はケース部11Fに接続され、配管41はケース部12Fに接続されている。ヘッドカバー11H、12Hは、共通して配管15に接続され、この配管15の途中には放熱用のラジエータ13が配置されている。
【0023】
次に、図8を参照して、上述した酸素濃縮装置1のシステム構成例を説明する。
図8は、酸素濃縮装置1のシステム構成例を示す図である。
図8に示す二重線は、原料空気、酸素、窒素ガスの流路となる配管を示している。また、細い実線は電源供給または電気信号の配線を示している。図8に示す酸素濃縮装置1の主筐体2は破線で示しており、この主筐体2は内部に配置された要素を密閉している密閉容器である。
【0024】
図8に示すように、主筐体2は、外気である原料空気を導入するための空気取り入れ口5と空気取り入れ口フィルタ7および排気するための排気口6を有している。空気取り入れ口5には、空気中の塵埃等の不純物を除去するための空気取り入れ口フィルタ7が交換可能に配置されている。原料空気は、コンプレッサ10が作動すると、空気取り入れ口フィルタ7を介して、内部の配管37と吸気フィルタ兼消音バッファ38と配管40,41を通じてコンプレッサ10側に導入されるようになっている。
【0025】
このように原料空気は、コンプレッサ10に導入されて圧縮空気になるが、原料空気を圧縮する際に熱が発生する。このため、コンプレッサ10、特にスリーブ11,12は、冷却用の第1ファン34と第2ファン36からの送風により冷却する。そして、コンプレッサ10から配管15を通じて送られる圧縮空気は、ラジエータ13により冷却される。
このように圧縮空気を冷却することで、高温では機能低下してしまう吸着剤であるゼオライトの昇温を抑制できる。これにより、窒素の吸着により酸素を生成するための吸着剤として十分に機能できるようになり、酸素を90%程度以上にまで濃縮できる。
【0026】
第1吸着筒体31と第2吸着筒体32は、並べて配置された吸着部材の一例であり、縦方向に並列に配置されている。これら第1吸着筒体31と第2吸着筒体32には、それぞれ三方向切換弁14B,14Cが接続されている。一方の3方向切換弁14Bの一端部が配管15に接続されている。配管15の途中には、配管15内を通過する圧縮空気を冷却するためのラジエータ13が配置されている。一方の3方向切換弁14Bと他方の3方向切換弁14Cとが互いに接続され、さらに、他方の3方向切換弁14Cの一端部が配管15Rに接続されている。配管15Rの端部は、排気口6に達している。
3方向切換弁14B、14Cは、第1吸着筒体31と第2吸着筒体32にそれぞれ対応して接続されている。コンプレッサ10から発生する圧縮空気は、配管15と3方向切換弁14B、14Cを介して、第1吸着筒体31と第2吸着筒体32に対して交互に供給される。
【0027】
触媒吸着剤であるゼオライトは、第1吸着筒体31と第2吸着筒体32内にそれぞれ貯蔵されている。このゼオライトは、例えばSi/Al比が2.0〜3.0であるX型ゼオライトであり、かつこのAlの四面体単位の少なくとも88%以上をリチウムカチオンと結合させたものを用いることで、単位重量当たりの窒素の吸着量を増やせるようにしている。このゼオライトは、特に1mm未満の顆粒測定値を有するとともに、四面体単位の少なくとも88%以上をリチウムカチオンと融合させたものが好ましい。ゼオライトを使用することで、他の吸着剤を使う場合に比べて酸素を生成するために必要となる原料空気の使用量を削減できるようになる。この結果、圧縮空気を発生するためのコンプレッサ10をより小型化が図れ、コンプレッサ10の低騒音化を図ることができる。
【0028】
図8に示すように、第1吸着筒体31と第2吸着筒体32の出口側には、逆止弁と絞り弁と開閉弁とからなる均等圧弁107が接続されている。均等圧弁107の下流側には、合流する配管60が接続されており、この配管60にはバッファ61が接続されている。このバッファ61は、第1吸着筒体31と第2吸着筒体32において分離生成された90%程度以上の濃度の酸素を貯蔵するための酸素貯蔵容器である。
【0029】
図8に示すように、バッファ61の下流側には、圧力調整器62が接続されており、圧力調整器62はバッファ61の出口側の酸素の圧力を一定に自動調整するレギュレータである。圧力調整器62の下流側には、フィルタ63を介してジルコニア式あるいは超音波式の酸素濃度センサ64が接続されており、酸素濃度センサ64は、酸素濃度の検出を間欠的に(10〜30分毎に)または連続的に行うようになっている。
【0030】
図8に示すように、バッファ61には、比例開度弁65が接続されている。この比例開度弁65は、中央制御部200の指令により流量制御部202からの信号により、酸素流量設定ボタン102の設定ボタン操作に連動して開閉する。比例開度弁65には酸素流量センサ66が接続されている。この酸素流量センサ66には、加湿器Gと酸素流量センサ67が接続されている。この酸素流量センサ67の後段には、酸素出口部100が接続されている。
酸素出口部100には、鼻カニューラ70のカプラソケット71が着脱可能に接続される。カプラソケット71は、チューブ72を介して鼻カニューラ70に接続されている。患者は、鼻カニューラ70を経て、例えば最大流量5L/分の流量で、約90%程度以上に濃縮された酸素の吸入が可能である。
【0031】
次に、図8を参照して電源系統を説明する。
図8に示すAC(商用交流)電源のコネクタ203は、電源制御回路39に電気的に接続され、電源制御回路39は商用交流電源の交流電圧を所定の直流電圧に整流する。内蔵電池204は、主筐体2に内蔵されている。内蔵電池204は、繰り返し充電可能な2次電池であり、内蔵電池204は電源制御回路39からの電力供給を受けて充電できる。
【0032】
これにより、図1の中央制御部200が電源制御回路39を制御することで、電源制御回路39は、例えばACアダプタ203からの電力供給を受けて作動する第1電力供給状態と、内蔵電池204からの電力供給を受けて作動する第2電力供給状態の内の1つの供給状態に自動切換して使用できる。内蔵電池204は充電時のメモリ効果が少なく再充電時にも満杯充電できるリチウムイオン、リチウム水素イオン2次電池が良いが、従来からのニッカド電池やニッケル水素電池でも良い。
【0033】
図8の中央制御部200は、モータドライバ210とファンモータドライバ211に電気的に接続されている。中央制御部200は生成する酸素量に応じた最適な動作モードに切り替えるプログラムが記憶されている。モータドライバ210とファンモータドライバ211は、中央制御部200の指令により、多くの酸素生成をする場合は自動的にコンプレッサ10と第1ファン34と第2ファン36を高速駆動し、少ない酸素生成時の場合にはコンプレッサ10と第1ファン34と第2ファン36を低速に回転駆動する制御を行う。
【0034】
この中央制御部200には、所定動作プログラムを記憶したROM(読み出し専用メモ)が内蔵されるとともに、中央制御部200には、外部記憶装置と揮発メモリと一時記憶装置とリアルタイムクロックからなる回路が電気的に接続されている。中央制御部200は、通信コネクタ205を介して外部の通信回線等と接続することでアクセスが可能となる。
図8に示す3方向切換弁14B、14Cと均等圧弁107とをオンオフ制御することで、第1吸着筒体31と第2吸着筒体32内の不要ガスを脱離させるように制御する制御回路(図示せず)と、圧力調整器62と、流量制御部202と、酸素濃度センサ64が、中央制御部200に電気的に接続されている。流量制御部202は、比例開度弁65を制御し、酸素流量センサ66と酸素流量センサ67の酸素流量値は、中央制御部200に送られる。図8に示す中央制御部200には、酸素流量設定ボタン102と、表示部128と、電源スイッチ101が電気的に接続されている。
【0035】
酸素流量設定ボタン102は、例えば90%程度以上に濃縮された酸素を毎分当たり0.25L(リットル)から最大で5Lまで0.25L段階で操作するごとに、酸素流量を設定できる。表示部128は、例えば、7セグメント表示の液晶ディスプレイなどの表示装置が利用されている。表示部128には、例えば酸素流量、酸素ランプ、警報アイコン(チューブ折れ、加湿器外れ、酸素濃度低下、電源供給停止、バッテリ残量、バッテリ運転中、充電ランプ)、積算時間等の表示項目を表示することができる。
【0036】
図8に示すコンプレッサ10は、すでに説明したように圧縮空気のみを発生させることで正圧変動吸着法(PSA)により、圧縮空気を第1吸着筒体31と第2吸着筒体32内に送り、第1吸着筒体31と第2吸着筒体32内の吸着剤により圧縮空気中の窒素を吸着させる。コンプレッサ10の駆動用モータ53は、同期モータであっても、その他に例えば単相交流誘導モータであっても良いし、単相4極交流同期モータであっても良いし、特に種類は限定されない。
【0037】
次に、上述した酸素濃縮装置1の動作例を説明する。
図8に示す中央制御部200がモータドライバ210に指令して、モータドライバ210がコンプレッサ10の駆動用モータ53を始動して、図7に示す駆動用モータ53の出力軸54が連続回転をする。これにより、図7に示す第1ヘッド部51のピストン11Pと第2ヘッド部52のピストン12Pは往復移動する。
【0038】
図7のピストン11Pとピストン12Pが上死点に位置するとスリーブ11とスリーブ12内の原料空気が圧縮される。逆に、ピストン11Pとピストン12Pが下死点に位置すると、スリーブ11とスリーブ12内に原料空気が吸入される状態になる。コンプレッサ10が動作すると、原料空気は、図8に示す空気取り入れ口5から取り入れられてフィルタ7により塵埃等の不純物を取り除き、内部の配管37と吸気フィルタ兼消音バッファ38と配管40,41を通じてコンプレッサ10側に導入される。図8に示すコンプレッサ10が発生する圧縮空気は、配管15を介して、第1吸着筒体13と第2吸着筒体32側に供給できる。
【0039】
一方、図8に示す中央制御部200は、第1ファン34と第2ファン36を回転させる。コンプレッサ10が原料空気を圧縮して圧縮空気を発生する際に、コンプレッサ10のスリーブ11,12はそれぞれ第1ファン34と第2ファン36の送風により冷却され、しかも配管15を通る圧縮空気は、ラジエータ13を通過することで冷却される。そして、圧縮空気は、配管15と3方向切換弁14B、14Cを経て第1吸着筒体31と第2吸着筒体32内の吸着剤を通過して窒素を吸着することにより、酸素が分離して生成される。製品タンク111は、分離して生成された90%程度以上の濃度の酸素を貯蔵することができる。
【0040】
ここで、第1ファン34と第2ファン36がコンプレッサ10を冷却する方法について、図4〜図6を参照して説明する。
第1ファン34と第2ファン36が回転すると、外気が図4に示すように主筐体2の空気取り入れ口5から、矢印R1で示すようにフィルタ7を介して主筐体2の内に取り込まれる。取り込まれた空気は、矢印R2で示すように第1ファン34の空気吸い込み口34Dと第2ファン36の空気吸い込み口36Dに流入する。
そして、図4と図6に示す第1ファン34の送風口37から対面するスリーブ11に対して直接送風するとともに、第2ファン36の送風口38から対面するスリーブ12に対して直接送風する。これにより、第1ファン34はスリーブ11を直接冷却でき、第2ファン36はスリーブ12を直接冷却できる。
【0041】
しかも、図5に示すように、冷却用のラジエータ13は、第1吸着筒体31と第2吸着筒体32の間であって、第1ファン34と第2ファン36の下部に配置されているので、空気取り入れ口5から流入される空気により、図6に示すように矢印R5で示すようにラジエータ13にも通風することができる。このため、ラジエータ13は空気により効率よく冷却できるので、ラジエータ13は配管15内を通る圧縮空気を冷却できる。
また、スリーブ11,12を通過した冷却空気は、矢印R4で示すように下部に至り、電源制御回路39に達するので、この電源制御回路39をも同時に冷却できる。その後、冷却に使われた空気は、R6方向に沿って排気口6から、主筐体2の外部に排出することができる。
【0042】
図8の酸素濃度センサ66は、バッファ61からの酸素の濃度の検出を行う。比例開度弁65は、酸素流量設定ボタン102に連動して開閉する。そして、酸素は、酸素出口部100を経て、鼻カニューレ70に供給される。これにより、患者は、鼻カニューレ70を経て例えば最大流量5L/分の流量で、約90%程度以上に濃縮された酸素の吸入が可能である。
【0043】
上述した本発明の酸素濃縮装置の実施形態では、コンプレッサを冷却するためのファンをコンプレッサに近づけて配置でき、コンプレッサが作動してスリーブが発熱しても、外気を取り込むことで効率良く冷却することができる。
ファンが発生する冷却用の送風は、複数(少なくとも2つ)のスリーブを冷却しながらモータも同時に冷却でき、しかも圧縮空気を冷却するラジエータ13を第1ファン34及び第2ファン36の空気吸い込みにより容易に冷却できる。同形状の一方のファンと他方のファンを上下逆にして対面した状態で用いることにより、一方のファンと他方のファンにおける空気の吸込み口を対面させることができるので、両ファンの空気の吸い込みにより、ラジエータへの大きな冷却効果が可能となる。またファンの回転中心は縦方向にずれて固定されることになり、その分ラジエータを設置することが可能となり酸素濃縮装置の小型化、軽量化が図れる。電源制御回路が発熱しても、電源制御回路はファンの冷却用の送風により容易に冷却することができる。
【0044】
本発明の酸素濃縮装置の実施形態では、コンプレッサは、ピストンを往復移動させるスリーブを有する。このコンプレッサは酸素濃縮装置の筐体内に設置されており、コンプレッサが作動するとスリーブは発熱することから、スリーブを効率良く冷却することが求められ、コンプレッサは防音ボックス内に設置されている。従って、コンプレッサを冷却するファンは、一番冷却したいスリーブ付近に近づけて設置することができ、コンプレッサを効率よく冷却することができる。
ファンをスリーブ付近に設置できるので、風量の大きいファンを設置する必要がなく、消費電力が増加することと騒音が大きくなることを防止できる。コンプレッサが作動してスリーブが発熱しても、効率良く冷却することができる。
【0045】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明は様々な修正と変更が可能であり、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形が可能である。
図示したコンプレッサ10は第1ポンプ部51と第2ポンプ部52を有しているが、これに限らず1つのポンプ部あるいは3つ以上のポンプ部を備えていても良い。コンプレッサ10を冷却するファンの数は、ポンプの数に対応して配置することができる。図に示すコンプレッサ10の駆動用モータは、例えば5Lクラスのモータであるが、これに限らず例えば3Lクラス等に適するモータを用いても良い。コンプレッサの形式は時に限定されず、任意の形式が採用できる。
【符号の説明】
【0046】
1・・・酸素濃縮装置、2・・・主筐体、2F・・・フロントパネル、2S・・・サイドパネル、2R・・・リアパネル、2D・・・上面部、2B・・・底部、5・・・空気取り入れ口、6・・・排気口、10・・・コンプレッサ、11・・・一方のスリーブ、12・・・他方のスリーブ、11P、12P・・・ピストン、13・・・ラジエータ、15・・・配管、31・・・第1吸着筒体(第1ファンの保持手段)、32・・・第2吸着筒体(第2ファンの保持手段)、34・・・第1ファン(一方のファン)、34D・・・第1ファンの空気吸い込み口、36・・・第2ファン(他方のファン)、36D・・・第2ファンの空気吸い込み口、37・・・第1ファンの送風口、38・・・第2ファンの送風口、39・・・電源制御回路、51・・・第1ポンプ部、52・・・第2ポンプ部、53・・・駆動用モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンと、前記ピストンを往復移動させるスリーブを有し前記スリーブ内で原料空気を圧縮して圧縮空気を発生するコンプレッサと、
前記スリーブに対向し接近させた位置に配置された送風口を有した前記コンプレッサを設置する防音ボックスと、前記送風口を通じて前記スリーブに冷却用の送風を行うファンと、
前記ファンを保持する保持手段と
を有することを特徴とする酸素濃縮装置。
【請求項2】
前記コンプレッサは、複数の前記スリーブと、前記ピストンを往復動作させるモータを有し、前記コンプレッサに接続されて前記圧縮空気を冷却するラジエータが、前記ファンの空気吸い込み口付近に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の酸素濃縮装置。
【請求項3】
一つの前記スリーブと他の少なくとも一つの前記スリーブにそれぞれ対向して同形状の一方の前記ファンと他方の前記ファンが配置されており、前記一方の前記ファンと前記他方の前記ファンは、互いに上下逆にして対面した状態で前記保持手段に保持されていることを特徴とする請求項2に記載の酸素濃縮装置。
【請求項4】
前記コンプレッサと前記ファンと前記保持手段を収容する主筐体を有し、前記主筐体は、前記ファン側に空気を取り込むための空気取り入れ口と、前記主筐体内に取り込まれた前記空気を前記主筐体内から排出する排気口とを有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つの項に記載の酸素濃縮装置。
【請求項5】
前記ファンにより前記スリーブに送風された前記空気により冷却される電源制御回路が前記主筐体内に配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つの項に記載の酸素濃縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−143023(P2011−143023A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5211(P2010−5211)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【出願人】(396007694)株式会社医器研 (57)
【Fターム(参考)】