説明

酸素透過膜、酸素透過シート、およびこれらを含む電池

【課題】大気中の水蒸気が空気に伴って空気電池や燃料電池の空気極に侵入することを防止する機能を有する空気取り入れ機構に適用可能な水蒸気透過抑制能の高い酸素透過膜を提供する。
【解決手段】融着により一体化されたポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂からなる平均粒径が0.01〜50μmである粒子の集合体は直径0.5μm以下の細孔を有し、水との接触角が120°以上であり、超撥水性を有することから、水蒸気透過抑制能をもつ酸素(空気)透過膜となる。ポリエチレンなどからなる多孔質担持基材と組み合わせることで水蒸気透過抑制能に優れてた酸素透過シート17として空気電池の空気取り入れ孔110に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、酸素透過膜に関し、詳しくは水蒸気の透過を抑制しつつ酸素を選択的に透過させる膜であり、例えば大気中の酸素を取り込む空気電池や燃料電池の空気(酸素)取り入れ機構に適用されるものである。換言すれば、本発明は、大気から水蒸気を除去する空気精製膜に関する。
【背景技術】
【0002】
空気電池、燃料電池等のように、空気中の酸素を利用する素子や機器の多くは、酸素と同時に水分が侵入するのを避けるために様々な工夫が凝らされている。例えば空気電池の場合、大気中の水蒸気が電池内部に侵入すると、電解液の濃度変化や体積変化が生じ、放電特性が低下する。そこで、空気電池の空気取り入れ孔にシロキサン系化合物からなる酸素選択性透過膜と酸素透過性の溶液層を設け、大気中の水蒸気が電池内部に侵入するのを防止する提案がなされている(特許文献1)。また、均一なフィルム等に空気を通過させるための300μm以下の透過孔を複数設け、これを水蒸気の透過を抑制する選択性透過膜として用いた空気電池も提案されている(特許文献2)。
また、電池分野ではないが、豪雪地帯の無線用アンテナに雪や氷が付着し、電界強度が落ち、電気通信の質の低下を引き起こすことを防止するために、難着雪材料として、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)粒子を、バインダを用いて、無線用アンテナ表面に塗着するという技術がある(非特許文献1)。
【特許文献1】特開昭59−75582号公報
【特許文献2】特開平6−44954号公報
【非特許文献1】超親水・超撥水化技術、発行所:株式会社 技術情報協会、p.155−163
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の提案によれば、電池内部に酸素を選択的に導入することが期待できるが、酸素選択性透過膜と酸素透過性の溶液層からなる2層構造を利用するため、気体の透過が遅くなる。よって、低率放電では効果があるが、高率放電では必要酸素量の確保が困難となり、放電特性が著しく低下する。また、特許文献2の提案は、透過孔が直線的な貫通孔であるため、孔内壁の撥水性が不十分であり、水蒸気の透過を抑制する効果は、あまり期待できない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明者らは、気体透過膜の構造と水蒸気透過現象との関係について鋭意検討を行った結果、以下のような知見を得るに至った。すなわち、本発明者らは、気体透過膜を所定の粒子で構成して超撥水状態(水との接触角が120℃以上の状態)にした場合に、空気は透過するが、水蒸気の透過は抑制される現象が得られることを見出した。
【0005】
通常、空気が自由拡散して膜内の細孔を通過する場合、空気中の分子は、膜の表面や膜中の細孔の内壁に衝突する。空気中の水蒸気(水分子)も同様に、膜の表面や膜中の細孔の内壁に衝突しながら拡散する。しかし、膜が超撥水状態である場合、水蒸気は、膜表面や細孔内壁に衝突した際に、衝突面から大きな反発力を受け、細孔内を拡散(通過)することができなくなる。一方、酸素や窒素等、空気中の水蒸気以外の分子は、膜表面や細孔内壁と衝突しても大きな反発力を受けないため、細孔内を拡散(通過)することができる。
【0006】
従って、水との接触角が120℃以上の膜に空気を通過させる場合、空気中の水蒸気が選択的に除去され、乾燥状態の空気を得ることが可能になる。
【0007】
また、分子が自由拡散する場合の平均自由工程は100nm(=0.1μm)程度である。よって、膜中の細孔径が100nm程度、またはそれ以下である場合には、空気中の水蒸気のほとんどが、膜を通過する際に、膜中の細孔内壁と衝突し、水蒸気の透過を抑制する効果は高められる。すなわち、クヌーセン拡散が実現される場合には、水蒸気の透過を抑制する効果が高められる。
【0008】
以上を鑑み、本発明は、撥水性を有する粒子の集合体からなる酸素透過膜を提案する。ただし、本発明の酸素透過膜は、非特許文献1が提案するような、アンテナ表面に隙間を生ずることなく塗着されたバインダとPTFE粒子との複合物とは異なり、酸素を透過させるものである。具体的には、撥水性を有する粒子の平均粒径を0.01〜50μmとすることにより、粒子間に酸素が通過するのに適した隙間を設けている。本発明の酸素透過膜は、全体もしくはほぼ全体が撥水性を有する粒子から構成されるため、膜表面や膜中の細孔の内壁は、多数の凹凸を有する。このような凹凸により膜の撥水性が高められ、水との接触角が120°以上となる超撥水状態が実現される。よって、本発明の酸素透過膜を大気が通過する際には、水蒸気の透過が抑制される。
【0009】
本発明の酸素透過膜は、平均粒径が0.01〜50μmであり、かつ撥水性を有する粒子を、様々な方法で結合させることにより作製される。例えば、加熱等により融着させ、一体化させた粒子の集合体を、酸素透過膜として用いることができる。膜の物性は、膜を構成する粒子の種類、粒径、粒子間の結合方法等を変化させることにより制御可能である。
【0010】
撥水性を有する粒子には、フッ素樹脂を用いることが望ましい。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニルおよびポリフッ化ビニリデンよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0011】
本発明の酸素透過膜は、比表面積が0.1m/g以上500m/g以下であることが望ましく、厚みは特に限定されないが、例えば0.1μm以上1000μm以下である。
【0012】
本発明は、また、上記の酸素透過膜とそれを担持する多孔質基材とからなる酸素透過シートや、上記の酸素透過膜とそれを挟持する一対の多孔質基材とからなる3層構造の酸素透過シートに関する。本発明において、酸素透過シートのガーレー数は、0.5秒以上50000秒以下が望ましい。
【0013】
多孔質基材の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ビニロン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)およびナイロンよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。多孔質基材は、メッシュ、不織布または微多孔膜の形態を有することが望ましい。また、多孔質基材の材質として、金属を用いることもできる。すなわち穿孔された金属箔や金属メッシュを用いることもできる。
撥水性を有する粒子の集合体は、直径0.5μm以下の細孔を有することが好ましい。例えば、直径0.01μm〜0.5μmの範囲における積算細孔容積S1と、直径0.01μm〜10μmの範囲における積算細孔容積S2との比:S1/S2は、0.01以上0.8以下であることが好ましく、0.02以上0.75以下であることが更に好ましい。
さらに、直径0.5μm以下の細孔を有する本発明の酸素透過膜において、細孔空隙率は、20%〜90%であることが好ましい。
【0014】
本発明は、さらに、正極、負極および電解質を含み、前記正極に空気を供給する空気取入れ機構を有する空気電池であって、前記空気取入れ機構が、上記の酸素透過膜もしくは酸素透過シートを具備する空気電池に関する。
【0015】
本発明は、さらに、カソード、アノードおよび電解質を含み、前記カソードに空気を供給する空気取入れ機構を有する燃料電池であって、前記空気取入れ機構が、上記の酸素透過膜もしくは酸素透過シートを具備する燃料電池に関する。
【0016】
なお、一般に市販されているポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の多孔膜は、通常その表面に存在する凹凸が少なく、水との接触角は110°以下であり、水蒸気を遮断する効果はほとんど得られない。
【発明の効果】
【0017】
撥水性を有する粒子の集合体からなり、前記粒子の平均粒径が0.01〜50μmである酸素透過膜を用いれば、空気中からの水蒸気の透過を抑制できるため、より乾燥した空気を得ることができる。このような酸素透過膜を空気電池や燃料電池の空気取り入れ孔に適用すれば、水蒸気の電池内部への侵入を抑制すると同時に、相対的に多くの酸素を電池内部に導入することができる。よって、空気電池においては、開封状態で保存した後でも良好な高率放電特性を得ることができ、燃料電池においては、カソードでの水閉塞を抑制することができ、運転許容範囲を拡大させることができる。
【0018】
さらに、電池以外の素子や機器に本発明の酸素透過膜を適用した場合にも、空気中の水蒸気が素子や機器内に侵入するのを抑制し、水蒸気による悪影響を防ぐ機能を素子や機器に付与することができる。例えば、屋内の水蒸気以外の空気を外気と交換する装置においては、本発明の酸素透過膜を通して外気と屋内に空気を流通させることにより、屋内の湿度を維持することができる。
【0019】
また、本発明は、食品関連分野にも適用できる。例えば、本発明の酸素透過シートで食物をラップする場合、保存中の食物に空気中の水分が侵入するのを抑制でき、保存性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の酸素透過膜は、撥水性を有する粒子の集合体を含み、前記粒子の平均粒径は0.01〜50μmである。膜表面や膜中の細孔の内壁には、粒子形状に由来して、多数の凹凸が形成されており、膜は超撥水性を有する状態となっている。また、酸素透過膜の内部構造は、表面の一部同士を融着により、もしくはバインダを介して結合させた粒子で占められているため、フラクタル構造を呈しており、多くの空隙を有する。
【0021】
この空隙に空気を通過させると、水蒸気の透過だけが強く抑制され、相対的に酸素の透過が促進される。すなわち、膜中を透過する酸素や窒素は、超撥水性を有する膜表面や膜中の細孔内壁に衝突しながらも膜中を拡散するが、水蒸気だけは、膜表面や膜中の細孔内壁から強い反発力を受けるため、拡散が制限される。なお、本発明においては、水との接触角が120°以上である膜を、超撥水性を有するものと定義する。
【0022】
本発明の酸素透過膜を、例えば、空気電池や燃料電池の空気取り入れ経路に配置する場合、空気がこの膜を通過する際に空気中に含まれる水蒸気のみが除去され、乾燥した空気が電池内部に導入される。よって、相対的に酸素導入を促進することができる。
【0023】
撥水性を有する粒子の平均粒径が50μmより大きいと、膜表面や膜中の細孔内壁の凹凸が減少するため、水蒸気をはじく効果が十分に得られない。また、撥水性を有する粒子の平均粒径が0.01μmより小さいと、膜中の細孔径がかなり小さくなり、水蒸気の透過を抑制する効果と同時に、酸素の透過も遅くなってしまう。よって、必要量の酸素を迅速に確保することが困難となる。
【0024】
以上より、本発明では、酸素透過膜を構成する撥水性を有する粒子の平均粒径を0.01μm〜50μmに限定している。なお、水蒸気をはじく効果と酸素透過速度とのバランスに優れた酸素透過膜を得る観点からは、撥水性を有する粒子の平均粒径を0.1μm〜15μmとすることが好ましい。また、膜と水との接触角は140°以上であることが望ましい。
【0025】
本発明の酸素透過膜は、その構成粒子同士がバインダで結合された状態であってもよいが、バインダを用いずに、加熱処理等により粒子同士を融着させる方が好ましい。融着によれば膜強度が強固となり、水蒸気透過抑制効果をより長く維持することができる。また、バインダで結合された状態の酸素透過膜を、さらに加熱処理して、粒子同士を融着させてもよい。なお、バインダを用いる場合、バインダとしては、例えばシリコーン系樹脂が好ましいが、他にポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂を用いることもできる。バインダの量は、撥水性を有する粒子の粒径などに依存するため、一概には言えず、特に限定もされないが、例えば、撥水性を有する粒子100重量部あたり、2〜20重量部を用いることができる。
【0026】
撥水性を有する粒子には、シリコーン系化合物、フッ素系化合物など、撥水性を有する化合物を、特に限定なく、用いることができるが、入手が容易で扱い易く、コストも低いことから、フッ素樹脂を用いることが好ましい。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリトリフルオロクロロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ジクロロジフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー、パーフルオロアルキルビニルエーテルポリマー、パーフルオロアルキルビニルエステルポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー等が挙げられ、撥水性が高いものほど、水蒸気透過抑制効果が高まる。これらのうちでは、特に撥水性に優れることから、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニルおよびポリフッ化ビニリデンが特に好ましい。
【0027】
また、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン等を、撥水性を有する粒子として用いることもできる。
【0028】
本発明の酸素透過膜の比表面積は、0.1m/g以上500m/g以下であることが好ましい。比表面積が500m/gをこえると、水蒸気透過抑制効果は高められるが、膜中の細孔径が、かなり小さくなるため、酸素の透過速度も小さくなってしまい、迅速に必要量の酸素を確保することが困難となる場合がある。逆に、比表面積が0.1m/gより小さいと、酸素の透過速度は速くはなるが、水蒸気透過抑制効果が小さくなってしまう。水蒸気透過抑制効果と酸素透過速度とのバランスに優れた酸素透過膜を得る観点からは、膜の比表面積を1m/g以上100m/g以下とすることがさらに好ましい。
【0029】
本発明の酸素透過膜の厚みは、0.1μm以上1000μm以下であることが好ましい。膜の厚みが1000μmより大きいと、気体が膜中を通過する距離が長くなるため、水蒸気透過抑制効果は高まるが、迅速に必要量の酸素を確保することが困難となる場合がある。逆に、膜の厚みが0.1μmより小さいと、酸素の通過は良好になるが、均一な膜を成形することが困難になる傾向がある。膜が不均一になると、膜中に撥水性を有する粒子の密度差が生じ、膜表面や細孔内壁に形成される凹凸の度合いも不均一になる。その結果、水蒸気透過抑制効果が、かなり小さくなる場合がある。酸素透過速度が高く、かつ均一な膜を得る観点からは、膜の厚みを5μm以上500μm以下とすることが特に好ましい。
【0030】
本発明の酸素透過膜は、支持体となる多孔質基材に担持させたり、一対の多孔質基材で挟持したりして用いることもできる。なお、本発明では、支持体と酸素透過膜とを組み合わせたものを酸素透過シートと称する。一対の多孔質基材で酸素透過膜を挟持した三層構造の酸素透過シートの場合、酸素透過膜の破損が防止されるため、水蒸気透過抑制効果を長期にわたり持続させることができる。
【0031】
多孔質基材は、気体を通過させる能力を有し、かつ酸素透過膜を支持し得るものであれば特に限定されない。ただし、酸素透過膜を通過した酸素の移動を不必要に制限しないように、本発明の酸素透過膜よりも酸素透過速度の速いものを用いることが望ましい。
【0032】
多孔質基材の材質としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ビニロン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ビニロン、ナイロンなどが挙げられる。多孔質基材は、メッシュまたは不織布の形態を有することが望ましい。また、多孔質基材は、微多孔膜の形態を有してもよい。微多孔膜としては、例えば多孔質な樹脂シートもしくはそれを延伸して得られる膜、シリカなどの微粒子を含有した多孔質な樹脂シート、もしくは微粒子を含有した樹脂シートから微粒子を溶剤などで除去して得られるより空孔率(空隙率)の高いシート等が挙げられる。
【0033】
酸素透過膜との結合を強固にするとともに、膜強度を高める観点から、多孔質基材として、穿孔された金属箔、金属メッシュ等の金属基材を用いることもできる。金属基材を用いる場合、基材の厚み、穿孔の度合い、空隙率等により、比較的容易に膜強度を制御することができる。
【0034】
本発明の酸素透過膜と多孔質基材からなる酸素透過シートのガーレー数は、0.5秒以上50000秒以下であることが好ましい。ガーレー数が50000秒より大きいと、水蒸気透過抑制効果は大きくなるが、迅速に必要量の酸素を確保することが困難となる場合がある。また、ガーレー数を0.5秒より小さくする場合、膜の厚みをかなり薄くする必要があり、膜内の水蒸気透過抑制効果が不均一になりやすい。酸素透過速度が高く、かつ均一な膜を得る観点からは、膜のガーレー数を10秒以上20000秒以下にすることが特に好ましい。
【0035】
撥水性を有する粒子の集合体は、直径0.5μm以下の細孔を有することが好ましい。微小な細孔の存在により、水蒸気の透過を抑制する効果がより向上する。酸素透過膜の細孔径の大きさは、撥水性を有する粒子の大きさや、撥水性を有する粒子とバインダとの比率を変化させることにより制御可能である。特に、撥水性を有する粒子とバインダとの比率を変化させることにより、当業者であれば、細孔径の大きさを容易に制御できる。
【0036】
さらに、直径0.5μm以下の細孔を有する撥水性を有する粒子の集合体からなる酸素透過膜の細孔空隙率は、20%〜90%であることがより好ましい。細孔空隙率が、20%より少ないと、例えば電池の空気取り入れ機構においては、大気から電池内部への空気拡散経路が十分に確保されず、電池をハイレート放電させるために必要な酸素量を大気から急速に取り込むことが困難になり、十分に放電させることができなくなる場合がある。電池をハイレート放電させる観点からは、細孔空隙率が20%以上であることが好ましい。
【0037】
20%以上の細孔空隙率を確保するための細孔は、すべてが直径0.5μm以下であることが好ましいが、すべての細孔が直径0.5μm以下である必要はない。膜中を通過する空気が一度でも直径0.5μm以下の細孔を通過すれば、かなりの水蒸気の透過を抑制する効果を得ることが可能である。また、細孔空隙率が90%より大きいと、電池のレート特性ならびに水蒸気透過抑制効果は良好となるが、膜強度の維持が難しく、製品となる割合が1割程度に低下することがある。よって、細孔空隙率は、90%以下が好ましい。
【0038】
細孔径の分布は、直径0.01μm〜0.5μmの範囲における積算細孔容積S1と、直径0.01μm〜10μmの範囲における積算細孔容積S2との比:S1/S2が、0.01以上であり、0.8以下であることが好ましく、0.05以上、0.8以下であることが更に好ましい。直径0.01μm〜0.5μmの範囲の微小な細孔の存在により、水蒸気の透過を抑制する効果がより向上する。S1/S2が、0.01以下では、微小な細孔の存在する割合が少ないため、水蒸気の透過を抑制する効果が、かなり小さく不十分になる場合がある。S1/S2が、0.8よりも大きくなると、微小な細孔が存在する割合が増加するため、酸素透過膜全体の空隙率が低下し、酸素の透過が阻害される場合がある。あるいは、撥水性を有する粒子間の結着力が低下し、粒子が剥がれやすくなる場合がある。
【0039】
また、直径10μm以上の細孔が存在すると、水蒸気の透過を抑制する効果が減少するだけでなく、酸素透過膜の強度も低下するため、直径10μm以上の細孔は存在しないことが好ましい。
水蒸気の透過を抑制する効果をさらに向上させるには、酸素透過膜がクヌーセン拡散の効果が期待できる直径0.1μm以下の細孔を多く有することが更に好ましい。直径0.1μm以下の細孔の存在割合を増加させることにより、水蒸気の透過を抑制する効果は大きく向上する。よって、直径0.01μm〜0.1μmの範囲の積算細孔容積S3と、直径0.01μm〜10μmの範囲における積算細孔容積S2との比:S3/S2は、0.01以上であり、0.7以下であることが好ましく、0.02以上、0.7以下であることが更に好ましい。S3/S2が、0.7よりも大きくなると、微小な細孔が多くなるため、酸素透過膜の空隙率が低下し、酸素の透過が阻害される場合がある。あるいは、撥水性を有する粒子間の結着力が低下し、粒子が剥がれやすくなる場合がある。
【0040】
酸素透過膜の細孔径分布や細孔空隙率の測定法としては、水銀圧入法、窒素吸着法、ポロシメトリーなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。測定方法の原理はそれぞれ異なるため、同じ酸素透過膜であっても、得られる細孔径分布の結果は異なることがある。しかし、積算細孔容積の比、すなわち所定の直径範囲における細孔容積の総和の比は、測定方法が違ってもほとんど変化しない。
【0041】
なお、水銀圧入法と窒素吸着法では、貫通孔や非貫通孔を含む様々な形態の細孔を含めた細孔径分布が得られる。すなわち、膜表面の凹凸も細孔径分布に影響するため、1μmよりも大きな細孔領域に分布が生じる場合がある。水銀圧入法と窒素吸着法では、細孔径分布の最大ピークは、ほぼ同じ細孔直径の位置に現れる。ただし、水銀圧入法では、水銀が酸素透過膜の細孔径を広げる可能性があるため、最大ピークが窒素吸着法よりも若干大きな位置に現れることもある。
【0042】
ポロシメトリーは、バブルポイント法(ASTM F316−86、JIS K3832)に基づく多孔質材料の貫通孔径評価法であり、貫通している細孔における最も径が狭い箇所、すなわちネック部におけるネック径の分布が得られる。ガスや気体などの流体の透過速度は、貫通孔のネック径の大きさによって変化し、ネック径が小さいほど、流体の透過速度は、より減少する。従って、貫通孔のネック径は、ガスや液体の透過性を決定付ける最も重要な因子である。
【0043】
水銀圧入法では、水銀を圧入していく段階で、水銀の圧力により、細孔径が広げられる可能性があるのに対し、ポロシメトリーではガスや水銀以外の液体を圧入していくため、細孔径を変形させる可能性が少ない。そのため、同一方法で作製された同一の膜の細孔分布を測定した場合、水銀圧入法で得られる細孔分布と比較して、ポロシメトリーで得られる細孔分布の方が、細孔径の分布の幅が狭くなり、ピークの幅も狭くなる傾向がある。また、水銀圧入法や窒素吸着法では、非貫通孔も測定対象であるため、膜表面の凹凸、つまり表面粗さが分布に反映されてしまうが、ポロシメトリーでは、貫通している細孔だけが測定対象である。よって、表面粗さの影響が細孔分布上に現れないという特徴がある。水蒸気の透過が抑制される効果は、貫通孔のネック部で最大になると推測されることから、細孔分布測定には、ポロシメトリーを用いるのが最適である。
【0044】
上記ポロシメトリーでは、体積の絶対値は測定できない。そこで、酸素透過膜の細孔空隙率は、水銀ポロシメータと窒素吸着法から見積もることが好ましい。なお、本明細書においては、酸素透過膜の細孔径10nm以上の細孔空隙量は、水銀ポロシメータにより測定し、細孔径10nm以下の細孔空隙量は、窒素吸着法を用いて測定することとし、膜体積(見かけ体積)に対する、それらの細孔空隙量の和の比を、細孔空隙率として定義する。
【0045】
本発明の酸素透過膜や酸素透過シートを、空気電池の空気取入れ孔と正極との間に配置する場合、電池内に空気が取り込まれる際に、水蒸気の電池内への侵入が抑制される。よって、開封状態で保存した後の電池であっても、優れた放電特性を得ることができるようになる。
【0046】
また、本発明の酸素透過膜や酸素透過シートを、燃料電池のカソードへの空気供給経路に配置する場合、燃料電池内に空気が取り込まれる際に、水蒸気のカソードへの侵入が抑制され、カソードでの水閉塞(フラッディング)が抑制される。よって、燃料電池の運転許容範囲が拡大する。
【0047】
[実施例]
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
(1)酸素透過膜の形成
表1A〜1Gに示す撥水性を有する粒子を原料に用いて、表1A〜1Gに記載の多孔質基材上に酸素透過膜を以下の3方式の製膜方法で形成し、所定の形態の酸素透過シートを作製した。原料に用いた撥水性を有する粒子の平均粒径と、多孔質基材のガーレー数と、形成された酸素透過膜の厚みを、表1A〜1Gに示す。
【0049】
製膜方法1(スプレー方式)
所定の撥水性を有する粒子と、バインダと、n−ヘプタンと、トルエンとを混合し、得られた組成物をスプレー用の噴射剤(液化ガス)とともにスプレー缶に入れ、支持体となる種々の多孔質基材上に噴射した。基材上に形成された塗膜を、大気中、80℃で1時間乾燥させ、酸素透過膜とした。酸素透過膜の厚みはスプレー時間で制御した。
【0050】
製膜方法2(塗工方式)
撥水性を有する粒子と、バインダと、n−ヘプタンと、トルエンとを混合し、さらに粘度調整のための希釈剤としてシンナー(イソオクタンとノルマルオクタンからなる混合溶媒)を添加し、得られた組成物を、ドクターブレード等の塗工機を用いて、支持体となる種々の多孔質基材上に、必要な膜厚になるように塗工した。基材上に形成された塗膜を、例えば大気中、80℃で1時間乾燥させ、酸素透過膜とした。
【0051】
製膜方法3(エアレススプレー方式)
所定の撥水性を有する粒子と、バインダと、n−ヘプタンと、トルエンとを混合し、得られた組成物をエアレススプレー用のスプレー缶に入れ、組成物そのものに圧力を加えて圧縮し、空気による圧力を使用せず、組成物に空気が含まれない状態で組成物のみをノズルから噴出させ、支持体となる種々の多孔質基材上に噴射した。基材上に形成された塗膜を、大気中、80℃で1時間乾燥させ、酸素透過膜とした。酸素透過膜の厚みは、断続的にスプレーを繰り返し、スプレー回数で制御した。エアレススプレー方式では、スプレー時間よりも、スプレー回数で塗膜の厚みを調整する方が、精度が向上する。
【0052】
【表1A】

【0053】
【表1B】

【0054】
【表1C】

【0055】
【表1D】

【0056】
【表1E】

【0057】
【表1F】

【0058】
【表1G】

【0059】
具体的には、以下の要領で酸素透過シートを作製した。
《実施例1》
〈酸素透過シートA1〜A15〉
表1Aに示す撥水性を有する粒子(平均粒径0.009μm〜70μm)からなる酸素透過膜を、上記の所定の製膜方法で、ガーレー数の異なる多孔質基材上に形成した。
【0060】
(i)A1の作製
多孔質基材には、ガーレー数が500秒のポリテトラフルオロエチレンからなる多孔膜(ジャパンゴアテックス(株)製:品番GF52)を用い、撥水性を有する粒子には、平均粒径70μmのポリテトラフルオロエチレンからなる粒子(粒子A1)を用いて、製膜方法1(スプレー方式)により、酸素透過シートを作製した。スプレー缶の内容物は、多孔質基材から30cm程度離れた位置から多孔質基材上に2秒間噴射した。
【0061】
スプレー缶に充填した内容物の組成は、n−ヘプタンが40wt%、トルエンが5wt%、液化ガス(LPG)が35wt%、粒子A1が10wt%、バインダとしてのシリコーン樹脂(ジメチルポリシロキサン)が10wt%とした。
【0062】
(ii)A2の作製
多孔質基材には、ガーレー数が500秒のポリエチレンからなる多孔膜(旭化成(株)製)を用い、撥水性を有する粒子には、平均粒径70μmのポリテトラフルオロエチレンからなる粒子(粒子A2)を用いて、製膜方法2(塗工方式)により、酸素透過シートを作製した。
【0063】
塗工に用いた組成物の組成は、n−ヘプタンが63wt%、トルエンが8wt%、粒子A2が16wt%、バインダとしてのシリコーン樹脂が13wt%とした。この組成物は、その2倍の重量のシンナー(イソオクタン98%以上、ノルマルオクタン2%未満)で希釈してから、ドクターブレードを用いて、塗膜の厚みが10μmになるように多孔質基材上に塗工した。
【0064】
(iii)A3〜A9の作製
表1A記載の撥水性を有する粒子および多孔質基材を用い、酸素透過シートA1に準じて、製膜方法1(スプレー方式)で、酸素透過シートA3〜A9を作製した。
【0065】
(iv)A10〜A15の作製
表1A記載の撥水性を有する粒子および多孔質基材を用い、酸素透過シートA2に準じて、製膜方法2(塗工方式)で、酸素透過シートA10〜A15を作製した。
【0066】
〈酸素透過シートA16〜A19〉
表1A記載の撥水性を有する樹脂からなる市販の多孔膜を、そのまま酸素透過シートA16〜A19として用いた。これらの多孔膜のガーレー数と厚みについても表1Aに示す。
【0067】
《実施例2》
〈酸素透過シートB1〜B7の作製〉
表1B記載の撥水性を有する粒子および多孔質基材を用い、酸素透過シートA1に準じて、製膜方法1(スプレー方式)で塗膜を形成した後、大気中でアニール処理を10分間程度施した。その結果、互いに点接触している粒子同士が融着状態となった酸素透過膜を有する酸素透過シートB1〜B7を得た。このように、粒子同士を点接触状態で融着させることにより、水蒸気透過抑制効果の持続性が高まり、酸素透過性が高められる。ただし、粒子を溶融させ過ぎると、粒子の集合体からなる膜表面や膜内の細孔内壁の凹凸がなくなり、膜の撥水性が低下する。
【0068】
なお、アニールの温度は、撥水性を有する粒子としてポリテトラフルオロエチレンを用いる場合は250℃〜310℃とし、それ以外の樹脂を用いる場合は各樹脂の融点から10℃〜60℃程度低い温度とした。
【0069】
《実施例3》
〈酸素透過シートC1〜C7の作製〉
表1B記載の撥水性を有する粒子および多孔質基材を用い、酸素透過シートA1に準じて、製膜方法1(スプレー方式)で、酸素透過シートC1〜C7を作製した。
【0070】
《実施例4》
〈酸素透過シートD1〜D15の作製〉
酸素透過膜の比表面積と水蒸気透過抑制効果との関係を検討する観点から、比表面積の異なる酸素透過膜を作製した。酸素透過膜の比表面積は、撥水性を有する粒子の平均粒径を変化させるとともに、製膜方法を変化させることで制御した。
【0071】
(i)D1、D3〜D7、D13〜D14の作製
表1C記載の撥水性を有する粒子および多孔質基材を用い、酸素透過シートA1に準じて、製膜方法1(スプレー方式)で、酸素透過シートD1、D3〜D7、D13〜D14を作製した。
【0072】
(ii)D2、D8〜D12、D15の作製
表1C記載の撥水性を有する粒子および多孔質基材を用い、酸素透過シートB1(実施例2)に準じて、製膜方法1(スプレー方式)で、酸素透過シートD2、D8〜D12、D15を作製した。
【0073】
《実施例5》
〈酸素透過シートE1〜E14の作製〉
酸素透過膜の厚みと水蒸気透過抑制効果との関係を検討する観点から、厚みの異なる酸素透過膜を作製した。酸素透過膜の厚みは、撥水性を有する粒子(ポリテトラフルオロエチレンで統一)の平均粒径を0.03μm〜0.5μmの範囲で変化させるとともに、製膜方法を変化させることで制御した。
【0074】
(i)E1、E3〜E8、E12〜E13の作製
表1D記載の撥水性を有する粒子および多孔質基材を用い、酸素透過シートA2に準じて、製膜方法2(塗工方式)で、酸素透過シートE1、E3〜E8、E12〜E13を作製した。
【0075】
(ii)E2、E9〜E11、E14の作製
表1D記載の撥水性を有する粒子および多孔質基材を用い、酸素透過シートA2に準じて、製膜方法2(塗工方式)で塗膜を作製した後、大気中でアニール処理を10分間程度施した。その結果、互いに点接触している粒子同士が融着状態となった酸素透過膜を有する酸素透過シートE2、E9〜E11、E14を得た。なお、撥水性を有する粒子としてポリテトラフルオロエチレンを用いたので、アニールの温度は、250℃〜310℃とした。
【0076】
《実施例6》
〈酸素透過シートF1〜F13の作製〉
多孔質基材上に所定の酸素透過膜を形成した後、その膜を保護するために、別の多孔質基材で膜を挟み込んで、3層構造の酸素透過シートを作製した。なお、表1B記載の「水との接触角」は、別の多孔質基材で挟み込む前の膜表面で測定した。
【0077】
(i)F1、F3〜F5、F7〜F9、F12〜13の作製
表1E記載の撥水性を有する粒子および多孔質基材を用い、酸素透過シートA2に準じて、製膜方法2(塗工方式)で、酸素透過膜を作製した。その後、形成された酸素透過膜の上に、別の多孔質基材を配して3層構造の酸素透過シートF1、F3〜F5、F7〜F9、F12〜13を得た。3層の一体化は、乾燥した酸素透過膜の上に別の多孔質基材を置いた後、1mm幅程度の耳部を熱溶着でとめることで行った。
【0078】
(ii)F2、F6、F10〜F11の作製
表1E記載の撥水性を有する粒子および多孔質基材を用い、酸素透過シートA2に準じて、製膜方法2(塗工方式)で塗膜を形成した後、大気中でアニール処理を10分間程度施した。その結果、互いに点接触している粒子同士が融着状態となった酸素透過膜が形成された。その後、形成された酸素透過膜の上に、別の多孔質基材を配して3層構造の酸素透過シートF2、F6、F10〜F11を得た。なお、撥水性を有する粒子としてポリテトラフルオロエチレンを用いたので、アニールの温度は、250℃〜310℃とした。
【0079】
多孔質基材には、以下を用いた。
F1:ポリテトラフルオロエチレンからなる多孔膜(担持用)、ポリテトラフルオロエチレンからなる多孔膜(保護用)
F2:ポリエチレンからなる多孔膜(担持用)、ポリエチレンからなる多孔膜(保護用)F3:ポリプロピレンからなる多孔膜(担持用)、ポリプロピレンからなる多孔膜(保護用)
F4:ポリテトラフルオロエチレンからなる多孔膜(担持用)、ポリエチレンからなる多孔膜(保護用)
F5:ポリテトラフルオロエチレンからなる多孔膜(担持用)、ポリテトラフルオロエチレンからなる多孔膜(保護用)
F6:ポリテトラフルオロエチレンからなる多孔膜(担持用)、ポリテトラフルオロエチレンからなる多孔膜(保護用)
F7:ビニロンからなる多孔膜(担持用)、ビニロンからなる多孔膜(保護用)
F8:ポリフェニレンサルファイドからなる多孔膜(担持用)、ポリフェニレンサルファイドからなる多孔膜(保護用)
F9:ポリブチレンテレフタレートからなる多孔膜(担持用)、ポリブチレンテレフタレートからなる多孔膜(保護用)
F10:ナイロンからなる多孔膜(担持用)、ナイロンからなる多孔膜(保護用)
F11:ポリフェニレンサルファイドからなる多孔膜(担持用)、ナイロンからなる多孔膜(保護用)
F12:ポリブチレンテレフタレートからなる多孔膜(担持用)、ナイロンからなる多孔膜(保護用)
F13:ビニロンからなる多孔膜(担持用)、ナイロンからなる多孔膜(保護用)
【0080】
《実施例7》
〈酸素透過シートG1〜G17の作製〉
表1F記載の様々な多孔質基材を支持体に用いた。
(i)G1〜G3、G5〜G9の作製
表1B記載の撥水性を有する粒子および多孔質基材を用い、酸素透過シートA1に準じて、製膜方法1(スプレー方式)で、酸素透過シートG1〜G3、G5〜G9を作製した。
【0081】
(ii)G4の作製
表1F記載の撥水性を有する粒子および多孔質基材を用い、酸素透過シートA1に準じて、製膜方法1(スプレー方式)で塗膜を形成した後、大気中でアニール処理を10分間程度施した。その結果、互いに点接触している粒子同士が融着状態となった酸素透過膜を有する酸素透過シートG4を得た。なお、アニールの温度は、撥水性を有する粒子としてポリテトラフルオロエチレンを用いたので、250℃〜310℃とした。
【0082】
(iii)G10〜12、G14〜17の作製
表1F記載の撥水性を有する粒子および多孔質基材を用い、酸素透過シートA1に準じて、製膜方法1(スプレー方式)で、酸素透過膜を形成した。その後、形成された酸素透過膜の上に、別の多孔質基材を配して3層構造の酸素透過シートG10〜12、G14〜17を得た
【0083】
(iv)G13の作製
表1F記載の撥水性を有する粒子および多孔質基材を用い、酸素透過シートA1に準じて、製膜方法1(スプレー方式)で塗膜を形成した後、大気中でアニール処理を10分間程度施した。その結果、互いに点接触している粒子同士が融着状態となった酸素透過膜が形成された。その後、形成された酸素透過膜の上に、別の多孔質基材を配して3層構造の酸素透過シートG13を得た。なお、撥水性を有する粒子としてポリテトラフルオロエチレンを用いたので、アニールの温度は、250℃〜310℃とした。
【0084】
多孔質基材には、以下を用いた。
G1:ポリエチレンからなる多孔膜
G2:ポリプロピレンからなる多孔膜
G3:ポリテトラフルオロエチレンからなる不織布
G4:ポリテトラフルオロエチレンからなる不織布
G5:ビニロンからなる不織布
G6:ポリフェニレンサルファイドからなるメッシュ
G7:ポリブチレンテレフタレートからなるメッシュ
G8:ナイロンからなる不織布
G9:ナイロンからなるメッシュ
G10:ポリテトラフルオロエチレンからなる多孔膜(担持用)、ポリテトラフルオロエチレンからなる多孔膜(保護用)
G11:ポリエチレンからなる多孔膜(担持用)、ポリエチレンからなる不織布(保護用)
G12:ポリプロピレンからなる多孔膜(担持用)、ポリプロピレンからなる不織布(保護用)
G13:ポリテトラフルオロエチレンからなる多孔膜(担持用)、ナイロンからなるメッシュ(保護用)
G14:ポリフェニレンサルファイドからなる不織布(担持用)、ナイロンからなるメッシュ(保護用)
G15:ポリブチレンテレフタレートからなる不織布(担持用)、ナイロンからなるメッシュ(保護用)
G16:ビニロンからなる多孔膜(担持用)、ビニロンからなる不織布(保護用)
G17:ポリテトラフルオロエチレンからなる多孔膜(担持用)、ナイロンからなるメッシュ(保護用)
【0085】
《実施例8》
〈酸素透過シートH1〜H7の作製〉
表1F記載の様々な金属からなる多孔質基材を支持体に用いた。
(i)H1〜H4、H6〜H7の作製
表1F記載の撥水性を有する粒子および多孔質基材を用い、酸素透過シートA1に準じて、製膜方法1(スプレー方式)で、酸素透過シートH1〜H4、H6〜H7を作製した。
【0086】
(ii)H5の作製
表1F記載の撥水性を有する粒子および金属からなる多孔質基材を用い、酸素透過シートA1に準じて、製膜方法1(スプレー方式)で塗膜を作製した後、大気中でアニール処理を10分間程度施した。その結果、互いに点接触している粒子同士が融着状態となった酸素透過膜を有する酸素透過シートH5を得た。なお、撥水性を有する粒子としてポリテトラフルオロエチレンを用いたので、アニールの温度は、250℃〜310℃とした。
【0087】
金属からなる多孔質基材には、以下を用いた。
H1:多孔質銅箔(穿孔銅箔)、櫛部製作所(株)製、厚み18μm、穴径φ0.3mm、ピッチ(穴と穴との間隔)0.404mm、空孔率50%
H2:銅メッシュ箔、櫛部製作所(株)、径φ0.2mmの銅線を格子状に編んだもの、孔径75μm×75μm
H3:H2と同じ形態を有するSUS(ステンレス鋼)メッシュ箔
H4:H1と同じ形態を有する多孔質ニッケル箔
H5:H1と同じ形態を有する多孔質アルミニウム箔
H6:H2と同じ形態を有するアルミニウムメッシュ箔
H7:H2と同じ形態を有する真鍮メッシュ箔
【0088】
《実施例9》
〈酸素透過シートI1〜I10の作製〉
表1G記載の撥水性を有する粒子および多孔質基材を用いた。
(i)I1の作製
多孔質基材には、ガーレー数が450秒のポリテトラフルオロエチレンからなる多孔膜(ジャパンゴアテックス(株)製:品番GF41)を用い、撥水性を有する粒子には、平均粒子径1μmのポリテトラフルオロエチレンからなる粒子I1を用いて、製膜方法3(エアレススプレー方式)により、酸素透過シートI1を作製した。スプレー缶の内容物は、多孔質基材から50cm程度離れた位置から、約1秒間かけて、長さ30cmの多孔質基材に噴射した。スプレー回数は3回とした。
【0089】
スプレー缶に充填した内容物の組成は、n−ヘプタンが40wt%、トルエンが10wt%、粒子I1が10wt%、バインダとしてのシリコーン樹脂(ジメチルポリシロキサン)が40wt%とした。
ここでは、塗膜の乾燥固化時の粒子I1とバインダとの重量比を、20:80とすることにより、直径0.01〜0.5μmの範囲における積算細孔容積S1と、直径0.01〜10μmの範囲における積算細孔容積S2との比:S1/S2を、0.01に制御した。
【0090】
(ii)I2〜I6の作製
乾燥固化時の粒子I1とバインダとの重量比を40:60、60:40、 70:30、80:20または95:5に変更し、S1/S2をそれぞれ0.05、0.15、0.5、0.8または1に変更したこと以外、酸素透過シートI1に準じて、製膜方法3(エアレススプレー方式)で、酸素透過シートI2〜I6を作製した。
【0091】
(iii)I7の作製
撥水性を有する粒子に、平均粒子径0.8μmのポリテトラフルオロエチレンからなる粒子I7を用いたこと以外、酸素透過シートI1に準じて、製膜方法3(エアレススプレー方式)で、酸素透過シートI7を作製した。
ここでは、塗膜の乾燥固化時の粒子I7とバインダとの重量比を、10:90とすることにより、直径0.01〜0.1μmの範囲における積算細孔容積S3と、直径0.01〜10μmの範囲における積算細孔容積S2との比:S3/S2を、0.01に制御した。
【0092】
(iv)I8〜I11の作製
乾燥固化時の粒子I7とバインダとの重量比を20:80、40:60、 60:40、80:20または96:4に変更し、S3/S2をそれぞれ0.02、0.05、0.4、0.7または1に変更したこと以外、酸素透過シートI7に準じて、製膜方法3(エアレススプレー方式)で、酸素透過シートI8〜I12を作製した。
【0093】
(2)酸素透過シートの物性評価
得られた酸素透過シートの物性を以下の要領で評価した。
【0094】
〔比表面積の測定〕
比表面積は、吸着ガスとしてN(窒素)を用いる窒素吸着法を利用し、マイクロメリテックス社製の「ASAP2010装置」を用いて測定した。測定前に酸素透過膜に対し、真空中、120℃で5時間の予備乾燥を施し、その後、窒素を導入して比表面積を求めた。結果を表1A〜1Gに示す。
【0095】
〔平均粒径の測定〕
酸素透過膜の原料である撥水性を有する粒子の平均粒径は、レーザ式粒度分布測定法を用いて行った。測定装置には、HORIBA(株)製のレーザ回折散乱式粒度分布測定装置を用いた。ここでは測定試料のメジアン径を平均粒径とした。結果を表1A〜1Gに示す。
【0096】
〔酸素透過膜の厚み〕
酸素透過膜の厚みは、マイクロメータまたは走査型電子顕微鏡による断面観察により求めた。なお、表1A〜1F記載の「膜の厚み」は、膜を担持する多孔質基材の厚みは含まない。結果を表1A〜1Gに示す。
【0097】
〔ガーレー数の測定〕
酸素透過シート全体のガーレー数を、旭精工(株)製の王研式透気度試験機を用いて測定した。空気圧は2.5kgf/cmで行い、測定に用いた酸素透過シートの試験片はφ2cmの大きさとした。結果を表1A〜1Gに示す。
【0098】
〔接触角の測定〕
酸素透過膜と水との接触角は、協和界面科学(株)製の動的接触角システム「ZR−21型」を用いて液滴法によって求めた。具体的には、作製した膜上に水滴を着滴させ、水滴が自らの持つ表面張力により丸くなった状態において、その水滴画像を取り込んだ。そして側面からみた水滴画像の底辺の長さ(2r)と高さ(h)を求め、次式より接触角θを算出した(θ/2法)。結果を表1A〜1Gに示す。
θ=2tan−1(h/r)
【0099】
〔細孔径分布・積算細孔容積の測定〕
酸素透過シートI1〜I10の酸素透過膜については、細孔径分布および積算細孔容積の測定を、ポロシメトリーで行った。ポロシメトリーによる測定は、POROUS MATERIALS,INC.製のCapillary Flow Porometer CFP−1200−AEXLを用いて行った。結果を表10に示す。
測定は、必要に応じて、多孔質基材と酸素透過膜との組み合わせである酸素透過シートに対して行い、多孔質基材の細孔径分布を引き算して、酸素透過膜の細孔径分布を得た。
【0100】
細孔径分布の測定結果の代表例を図3に示す。また、積算細孔容積の測定結果の代表例を図4に示す。図4中、S1は直径0.01〜0.5μmの細孔の積算細孔容積、S2は直径0.01〜10μmの細孔の積算細孔容積、S3は直径0.01〜0.1μmの細孔の積算細孔容積である。
【0101】
〔細孔空隙量測定〕
(a)水銀ポロシメータによる細孔空隙量は、(株)島津製作所製のオートポアIII9410装置を用いて測定した。以下に条件を示す。
圧力範囲:0.5〜60000psia
試料:約3cm×2cm×1枚
(b)窒素吸着法による細孔空隙量は、マイクロメリテックス社製のASAP2010装置を用いて測定した。以下に条件を示す。
予備乾燥(脱気条件):真空中 24時間
試料量:1g
吸着ガス: N(窒素)
【0102】
(3)空気電池の作製
〔コイン型空気電池〕
所定の酸素透過シートを用いて、図1の部分断面図に示すようなコイン型空気電池を作製した。
この空気電池は、負極ケース11、その中に充填された亜鉛からなる負極12、負極ケースの周縁に配されたリング状の絶縁ガスケット13、正極−負極間に介在するセパレータ14、セパレータと一方の面を対面させた空気極(正極)15、空気極の他方の面に固定された撥水膜16、撥水膜と対峙する酸素透過シート17、酸素透過シートを内底面に固定した正極ケース18、ならびに正極ケースの外底面に固定されたシール紙111を具備する。酸素透過シート17が固定された正極ケース18の内底面と撥水膜16との間には、空気拡散室19が設けられている。正極ケース18の底部には、空気取り入れ孔110が設けられている。撥水膜16は、電解液の電池外部への漏液を防止するとともに、空気極15への酸素供給を担っている。
【0103】
電池の未使用時には、空気取り入れ孔110はシール紙111により封じられており、電池の使用時になるとシール紙111が剥がされる。電池内への空気の侵入を遮断し、自己放電による電池の劣化を防止するためである。一方、酸素透過シート17は、常時、空気取り入れ孔110を封じている。
【0104】
空気極15には、金属酸化物、黒鉛、活性炭およびフッ素系結着剤を主成分とする触媒をネット状の集電体に圧着したものを用いた。
空気極15は以下の要領で作製した。
まず、カーボンブラック1.5kg、活性炭4.5kg、マンガン酸化物6kgおよびフッ素樹脂粉末0.88kgからなる合剤に水25kgを加え、混練後、偏平帯状のシートに押し出し成形した。成形後のシートを、約60℃に加熱した2本の圧延ローラ間に通して圧延し、厚み0.6mmのシートを得た。
次に、このシートを集電体の片面に圧着した。集電体は、線径約0.15mmのステンレス鋼線からなる40メッシュ相当のシートにニッケルメッキを施したものに黒鉛を塗布したものを用いた。
得られたシートと集電体を圧着したものの集電体側に、ダイキン(株)製のD1(PTFEを60wt%含有した分散液)を塗布し、250℃で1時間乾燥した。その後、D1を塗布した面に、ジャパンゴアテックス(株)製のPTFE製多孔膜(ガーレー数が500秒)を圧着して貼り付け、空気極15を得た。
【0105】
負極12は以下の要領で作製した。
負極を構成する亜鉛には、アトマイズ法で合成されたAl、BiおよびInを含有した亜鉛合金粉末を用いた。この亜鉛粉末1.3gを負極ケース11に取り、酸化亜鉛を3wt%含む濃度34wt%の水酸化カリウム水溶液を400μl加えて負極12を作製した。
【0106】
尚、本実験では、KOHの濃度が34wt%のアルカリ電解液を用いたが、アルカリ電解液の濃度は30wt%から45wt%の範囲内のものであれば使用可能である。
【0107】
電解液中には、亜鉛の自己放電を抑制するためにZnOを溶解させてもよい。ZnOの溶解量は、各アルカリ濃度に対して飽和するまでの範囲で、適宜調整すればよい。また、電解液には、水素ガスの発生を抑制するために、有機防食剤を溶解させても良い。有機防食剤は、水素発生を抑制するものであれば何でもよく、例えば、旭硝子(株)製のフルオロアルキルポリオキシエチレン(サーフロン#S−161(商品名))等が挙げられる。
【0108】
電解液は、ゲル化剤を添加してゲル状態にしても良い。ゲル化剤は、アルカリ電解液をゲル化できるものであれば何でもよく、様々な重合度、架橋度もしくは分子量を有するポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、キトサンゲル等が挙げられる。
【0109】
〔円筒型空気電池〕
所定の酸素透過シートを用いて、図2に示すような単3型空気亜鉛電池を作製した。
図2Aは空気亜鉛電池の部分断面図であり、図2Bはその部分拡大図であり、触媒層21、集電体22およびガス拡散層23からなる3層構造の空気極24の断面を示している。この空気亜鉛電池は、空気極の内面に接するセパレータ25、その内面に充填されたゲル状亜鉛負極26、空気極の外面に接する酸素透過シート27、酸素透過シートを内面に固定した正極缶28、正極缶の外面を被覆する樹脂チューブ219、電池を使用する前に剥がす密封シール211、皿紙212、空気極の集電体の露出部を挟み込む金属製のキャップ213、214、正極缶の開口端から1mm内側に塗布された有機封止剤215、正極缶の開口を封口する樹脂封口体216、樹脂封口体と一体化された負極端子キャップ217ならびに負極端子キャップと接続された釘状の負極集電子218を具備する。
正極缶28の側部および樹脂チューブ219には、空気取り入れ孔210が設けられている。キャップ213は、正極缶28の底部にスポット溶接されている。セパレータ25は、セロハンをビニロン不織布にラミネートしたものである。
【0110】
電池の未使用時には、空気取り入れ孔210は密封シール211により封じられており、電池の使用時になると密封シール211が剥がされる。一方、酸素透過シート27は、常時、空気取り入れ孔210を封じている。
【0111】
空気極24は以下の要領で作製した。
まず、カーボンブラック1.5kg、活性炭4.5kg、マンガン酸化物6kgおよびフッ素樹脂粉末0.88kgからなる合剤に水25kgを加え、混練後、偏平帯状のシートに押し出し成形した。成形後のシートを、約60℃に加熱した2本の圧延ローラ間に通して圧延し、厚み0.6mmの触媒層1のシートを得た。
【0112】
次に、一対の触媒層21のシートを集電体22の両面に圧着した。集電体22には、線径約0.15mmのステンレス鋼線からなる40メッシュ相当のシートにニッケルメッキを施したものを用いた。得られた触媒層21と集電体22からなる平板は円筒形に湾曲させた。その後、触媒層21を一部取り除いて集電体22を露出させ、正極缶との接続部とした。
【0113】
次に、カーボンブラックとフッ素樹脂と水とポリオキシエチレンアルキルエステル系界面活性剤からなる混合物を、約200μmのシート状に成形し、ガス拡散層23のシートを得た。このシートを円筒の外側から2周以上巻き付け、3層構造の空気極24を得た。
【0114】
ゲル状亜鉛負極26は以下の要領で作製した。
酸化亜鉛を3wt%含む濃度40wt%の水酸化カリウム水溶液に、3wt%のポリアクリル酸ソーダと1wt%のカルボキシメチルセルロースを加えてゲル化させた。得られたゲルに、その2倍の重量の亜鉛粉末(Al、BiおよびIn元素を含有した亜鉛合金粉末)を加えて混合し、ゲル状亜鉛負極26を得た。ゲル状亜鉛負極26の理論容量は3700mAhとした。
尚、アルカリ電解液には、コイン型空気電池と同じものを用いた。
【0115】
負極を構成する亜鉛は、単体でもよいが、種々の亜鉛以外の金属を含む亜鉛合金を用いてもよい。空気電池に用いる亜鉛合金粉末は、所定元素を所定量で含む原料混合物からアトマイズ法を用いて合成され、分級が施される。亜鉛合金としては、ZnとAlからなる合金、ZnとAlを含み、更にBi、In、Ca、SnおよびPbよりなる群から選択される少なくとも1種を含む合金等が好ましい。亜鉛合金中のZn以外の元素の含有量は、20〜5000ppmが好適である。
【0116】
亜鉛や亜鉛合金は、どのような形態で用いることもできるが、例えば粉末、多孔体、プレート等の形態で用いられる。多孔体は、例えば亜鉛合金粉末をペレット状に成形し、還元雰囲気中、350〜500℃の範囲内で焼成して作製するか、もしくはホットプレスで成形と焼成を同時に行って作製される。通常、コイン型電池用では、扁平型ペレットを、円筒型電池用では、筒状ペレットが作製される。
【0117】
プレート状の亜鉛合金は、塊状合金を、ロールプレス等を用いて板状にしたものである。プレートの厚みは、電池ケースに合わせて調整されるため、任意である。プレートの表面は、平滑でもよく、穿孔されていてもよく、凹凸を有していてもよい。
【0118】
(4)空気電池の評価
電池の空気孔を開封し、外気と空気極とを連通させた状態で、各電池を、20℃、相対湿度60%の恒温槽に10日間保存した。その後、各電流で放電し、電池の放電容量C1(mAh)を求めた。得られた放電容量C1と、各電池が含む亜鉛重量から計算される理論容量C2(mAh)を、次式(1)に代入し、電池の放電効率(P(%))を求めた。結果を表2〜9に示す。P値が大きいほど放電特性の優れた電池であるといえる。
P(%)=(C1/C2)×100 (1)
【0119】
(5)水蒸気透過抑制能の評価
モバイル燃料電池(DMFC)では、カソード側の電極で水が発生するため、カソードに供給される空気流量(流速)が少ない場合や電池温度が低い場合には、空気流路が水により閉塞してしまうという問題がある。このような現象はフラッディングと呼ばれ、発電特性を悪化させる可能性が高くなる。特に空気の湿度が高い場合には、許容される飽和水蒸気量が少なくなるため、フラッディングが発生しやすくなる。
【0120】
一方、本発明の酸素透過シートを燃料電池のカソードに空気を供給する流路に配する場合、乾燥した空気を燃料電池の内部に送ることができるため、フラッディング現象を抑制して、発電特性を向上させることができる。そこで、外気から取り込んだ空気を酸素透過シートを通過させて燃料電池のカソードに供給する場合を想定し、空気の露点差T(℃)値を以下のように定義した。T値が高いほど酸素透過シートの性能は優れていることを意味する。
T(℃)=(酸素透過シートを通過前の空気の露点(℃))−(酸素透過シートを通過後の空気の露点(℃))
【0121】
所定の酸素透過シートに外気から取り込んだ空気を通過させ、通過前と通過後の露点を求め、上記式よりT値を求めた。結果を表2〜10に示す。なお、外気から取り込む空気の酸素透過シートを通過前の露点は0℃で統一した。
【0122】
(6)空気電池の評価結果および水蒸気透過抑制能の評価結果
(i)実施例1の結果を表2に示す。
【0123】
【表2】

【0124】
(ii)実施例2の結果を表3に示す。
【0125】
【表3】

【0126】
(iii)実施例3の結果を表4に示す。
【0127】
【表4】

【0128】
(iv)実施例4の結果を表5に示す。
【0129】
【表5】

【0130】
(v)実施例5の結果を表6に示す。
【0131】
【表6】

【0132】
(vi)実施例6の結果を表7に示す。
【0133】
【表7】

【0134】
(vii)実施例7の結果を表8に示す。
【0135】
【表8】

【0136】
(viii)実施例8の結果を表9に示す。
【0137】
【表9】

(viii)実施例9の結果を表10に示す。
【表10】

【0138】
(7)結果考察
〔実施例1の結果考察〕
空気電池の評価結果および水蒸気透過抑制能の評価結果を表2に示す。
表2において、試料No.1〜15(A1〜A15)の場合、コイン型空気電池を放電電流100mAで放電させた時の放電効率P(%)は56%以上、円筒型空気電池を放電電流1Aで放電させたときの時の放電効率P(%)は56%以上、露点差T(℃)は、13℃以上であり、比較例1〜4(A16〜A19)よりも優れていた。
【0139】
試料No.3〜13の場合、撥水性粒子の平均粒径が0.01〜50μmであるため、P値はいずれも65%以上、T値はいずれも17℃以上となり、さらに優れていた。また、撥水性粒子の平均粒径が0.1〜15μmの場合、P値は70%以上、T値は20℃以上であった。
【0140】
このように、撥水性粒子の集合体からなり、粒子の平均粒径が0.01〜50μmである酸素透過膜については、水蒸気透過抑制能が高く、結果として酸素透過性も高まり、電池特性等は良好な結果となった。また、試料No.1〜15の場合、酸素透過膜と水との接触角が120°以上であり、比較例1〜4の場合、膜と水との接触角が110°以下であった。よって、撥水性を有する粒子の集合体と水との接触角は、120°以上が望ましいことがわかる。また、撥水性を有する粒子の集合体と水との接触角が140°以上の場合、P値は70%以上、T値は20℃以上であった。
【0141】
〔実施例2の結果考察〕
空気電池の評価結果および水蒸気透過抑制能の評価結果を表3に示す。
表3において、試料No.16〜22(B1〜B7)の場合、コイン型空気電池を放電電流100mAで放電させた時の放電効率P(%)は58%以上、円筒型空気電池を放電電流1Aで放電させた時の放電効率P(%)は57%以上、露点差T(℃)は13℃以上であり、比較例5〜8(A16〜A19)よりも優れていた。一方、比較例5〜8のP値は、いずれの電池においても15%以下と低く、T値は0℃であった。以上より、平均粒径が0.01〜50μmである撥水性を有する粒子の集合体が融着により一体化されている酸素透過膜は、水蒸気透過抑制能に優れることがわかった。
【0142】
〔実施例3の結果考察〕
空気電池の評価結果および水蒸気透過抑制能の評価結果を表4に示す。
表4において、試料No.23〜29(C1〜C7)の場合、コイン型空気電池を放電電流102mAで放電させた時の放電効率P(%)は42%以上、円筒型空気電池を放電電流1.02Aで放電させた時の放電効率P(%)は41%以上、露点差T(℃)は10℃以上であり、比較例9〜12(A16〜A19)よりも優れていた。一方、比較例9〜12のP値は、いずれの電池においても13%以下と低く、T値は0℃であった。
【0143】
試料No.23〜28の場合、P値は60%前後、T値は15℃前後であり、さらに優れていた。一方、試料No.29の場合、P値は40%程度、T値は10℃であった。よって、酸素透過膜を構成する撥水性を有する粒子としては、フッ素樹脂の方がシリコーン樹脂よりも効果的であることがわかった。また、フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等が好ましいことがわかった。
【0144】
〔実施例4の結果考察〕
空気電池の評価結果および水蒸気透過抑制能の評価結果を表5に示す。
表5において、試料No.30〜44(D1〜D15)の場合、コイン型空気電池を放電電流105mAで放電させた時の放電効率P(%)は55%以上、円筒型空気電池を放電電流1.05Aで放電させた時の放電効率P(%)は54%以上、露点差T(℃)は12℃以上であり、比較例13〜16(A16〜A19)よりも優れていた。
【0145】
試料No.32〜42の場合、P値は63%以上、T値は17℃以上であり、さらに良好であった。一方、試料No.30、31、43、44の場合、P値は55%前後、T値は12℃前後であった。また、試料No.34〜38の場合、P値は70%程度、T値は20℃以上であり、特に良好な結果となった。
【0146】
以上より、本発明の酸素透過膜の比表面積は、0.1m/g以上500m/g以下の場合に、水蒸気透過抑制効果が向上することがわかった。また、比表面積が1m/g以上100m/g以下の場合に、水蒸気透過抑制効果がさらに向上することがわかった。
【0147】
〔実施例5の結果考察〕
空気電池の評価結果および水蒸気透過抑制能の評価結果を表6に示す。
表6において、試料No.45〜58(E1〜E14)の場合、コイン型空気電池を放電電流107mAで放電させた時の放電効率P(%)は55%以上、円筒型空気電池を放電電流1.07Aで放電させた時の放電効率P(%)は54%以上、露点差T(℃)は12℃以上であり、比較例17〜20(A16〜A19)よりも優れていた。
【0148】
試料No.47〜56の場合、P値は63%以上、T値は17℃以上であり、さらに良好であった。一方、試料No.45、46、57、58の場合、P値は55%前後、T値は12℃前後であった。また、試料No.49〜53の場合、P値は70%以上、T値は20℃以上であり、特に良好な結果となった。
【0149】
以上より、本発明の酸素透過膜の厚みが0.1μm以上1000μm以下の場合に、水蒸気透過抑制効果が向上することがわかった。また、厚みが5μm以上500μm以下の場合に、水蒸気透過抑制効果がさらに向上することがわかった。
【0150】
〔実施例6の結果考察〕
空気電池の評価結果および水蒸気透過抑制能の評価結果を表7に示す。
表7において、試料No.59〜71(F1〜F13)の場合、コイン型空気電池を放電電流110mAで放電させた時の放電効率P(%)は65%以上、円筒型空気電池を放電電流1.1Aで放電させた時の放電効率P(%)は65%以上、露点差T(℃)は14℃以上であり、比較例21〜24(A16〜A19)よりも優れていた。
【0151】
以上のように優れた効果が得られたのは、酸素透過膜を一対の多孔質基材で挟持した3層構造の酸素透過シートの場合、空気が膜を通過する際に撥水性を有する粒子が徐々に剥がれ落ちることを防止でき、撥水効果の低減を防ぐことができたためである。
【0152】
〔実施例7の結果考察〕
空気電池の評価結果および水蒸気透過抑制能の評価結果を表8に示す。
表8において、試料No.72〜88(G1〜G17)の場合、コイン型空気電池を放電電流112mAで放電させた時の放電効率P(%)は55%以上、円筒型空気電池を放電電流1.12Aで放電させた時の放電効率P(%)は55%以上、露点差T(℃)は14℃以上であり、比較例25〜28(A16〜A19)よりも優れていた。
【0153】
多孔質基材として樹脂多孔膜を用いた試料No.72、73、81の特性と、多孔質基材にメッシュもしくは不織布を用いた試料No.74〜80ならびにNo.82〜88の特性とを比較しても同等レベルで、かつ良好である。よって、酸素透過シートにおける多孔質基材の形態は、メッシュ、不織布等であってもよい。
【0154】
なお、以上の評価より、多孔質基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ビニロン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン等を好ましく用い得ることがわかった。
【0155】
〔実施例8の結果考察〕
空気電池の評価結果および水蒸気透過抑制能の評価結果を表9に示す。
表9において、試料No.89〜95(H1〜H7)の場合、コイン型空気電池を放電電流115mAで放電させた時の放電効率P(%)は64%以上、円筒型空気電池を放電電流1.15Aで放電させた時の放電効率P(%)は65%以上、露点差T(℃)は14℃以上であり、比較例29〜32(A16〜A19)よりも優れていた。
【0156】
金属からなる多孔質基材を酸素透過膜の支持体に用いる場合、撥水性を有する粒子を、基材の金属部分に強固に固定させることができ、水蒸気透過抑制効果をより効果的に維持できるものと考えられる。金属の種類としては、表1Bに示した金属以外に、鉄、チタン等、多孔質状態に加工できるすべての金属を用いることができる。
【0157】
なお、表6の試料No.45〜58(E1〜E14)のうち、より良好な特性を示した試料No.47〜56(E3〜E12)の酸素透過シートのガーレー数は、0.5秒以上50000秒以下である。また、さらに良好な特性を示した試料No.49〜53(E5〜E9)の酸素透過シートのガーレー数は、10秒以上20000秒以下である。また、表7の試料No.59〜71(F1〜F13)のうち、より良好な特性を示した試料No.62〜70(E4〜E12)のガーレー数は、10秒以上20000秒以下である。
【0158】
〔実施例9の結果考察〕
空気電池の評価結果および水蒸気透過抑制能の評価結果を表10に示す。
表10において、試料No.96〜101では、コイン型空気電池を放電電流100mAで放電させた時の放電効率P(%)と、円筒型空気電池を放電電流1Aで放電させた時の放電効率P(%)と、露点差T(℃)は、いずれも高い値が示された。よって、S1/S2は0.01以上であれば効果があるといえる。しかし、S1/S2が1である試料No.101は、バインダ量が少ないために撥水性を有する粒子の層に割れや剥がれが生じた。試料No.96〜101では、割れや剥がれは観察されなかった。従って、S1/S2は、0.01以上0.8以下が好ましい。
【0159】
また、S1/S2を0.01から0.05へ変化させることにより、P値およびT値の顕著な増加がみられた。酸素透過膜の厚さが同一であるこれらの試料では、S1/S2の変化に伴って比表面積が増加する傾向がみられた。酸素透過膜の厚さが同一であるため、比表面積の増加は、膜内部の微細孔の増加に起因する。従って、微細孔の存在割合が一定以上に増加することにより、水蒸気の透過を抑制する効果が顕著になることがわかる。
よって、直径0.01〜0.5μmの範囲における積算細孔容積S1と、直径0.01〜10μmの範囲における積算細孔容積S2との比:S1/S2は、0.05以上0.8以下が好ましい。
【0160】
試料No.102〜107でも、P値およびT値は、いずれも高い値が示された。よって、直径0.01〜0.1μmの範囲における積算細孔容積S3と、直径0.01〜10μmの範囲における積算細孔容積S2との比:S3/S2は0.01以上であれば効果があるといえる。しかし、S3/S2が1である試料No.107は、バインダ量が少ないために撥水性を有する粒子の層に割れや剥がれが生じた。試料No.102〜106では割れや剥がれは観察されなかった。従って、S3/S2は、0.01以上0.7以下が好ましい。
【0161】
また、S3/S4を0.01から0.02へ変化させることで顕著な増加がみられた。よって、S3/S2は、0.02以上が好ましく、0.7以下が好ましいといえる。
さらに、S1/S2値とS3/S2値とが同一の試料同士、例えば試料No.96と試料No.102、及び試料No.97と試料No.104とを比較すると、試料No.102、及び試料No.104の方がP値およびT値ともに高くなっている。従って、直径がより小さな細孔の存在割合を増加させることで、水蒸気の透過を抑制する効果が、より高められることがわかる。
【0162】
また、表10に試料No.96〜107の細孔空隙率を示した。細孔空隙率が20%より低い試料No.96と102では、コイン型空気電池を放電電流100mAで放電させた時の放電効率P(%)と、円筒型空気電池を放電電流1Aで放電させた時の放電効率P(%)は、ともに60%以下の値を示したが、細孔空隙率が20%以上の試料No.97〜101、並びにNo.103〜107では、上記P(%)の値は65%以上となった。このように酸素透過膜の細孔空隙率は、20%以上であることが好ましいことがわかる。
一方、試料No.101および107は、バインダ量が少ないために、撥水性を有する粒子の層に、割れや剥がれが生じ、実際に使える良品となる割合は10%程度であった。試料No.96〜100およびNo.102〜106では割れや剥がれは観察されなかった。
以上の結果から、酸素透過膜の細孔空隙率としては、20〜90%であることが好ましいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明の酸素透過膜は、水蒸気の透過を抑制する能力が高いことから、様々な用途に展開可能である。例えば以下の用途が挙げられる。
(1)空気から水分を除去して乾燥した空気や酸素を製造する精製装置。
(2)屋内の水蒸気以外の空気を外気と交換する装置。
(3)保存中の食物に空気中の水分が侵入するのを抑制するラップ材料。
(4)空気中の酸素を取り込んで発電する空気電池や燃料電池の空気取り入れ機構。なお、これらの用途は例示に過ぎず、本発明の適用可能範囲はこれらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】本発明の実施例に係る所定の酸素透過シートを具備するコイン型空気電池の部分断面図である。
【図2A】本発明の実施例に係る所定の酸素透過シートを具備する単3型空気亜鉛電池の部分断面図である。
【図2B】図2Aの部分拡大図である。
【図3】本発明の実施例に係る酸素透過膜の細孔直径とlog微分細孔容積との関係を示す細孔径分布図である。
【図4】本発明の実施例に係る酸素透過膜の細孔直径と積算細孔容積との関係を示す細孔径分布図である。
【符号の説明】
【0165】
11 負極ケース
12 負極
13 絶縁ガスケット
14 セパレータ
15 空気極(正極)
16 撥水膜
17 酸素透過シート
18 正極ケース
19 空気拡散室
110 空気取り入れ孔
111 シール紙
21 触媒層
22 集電体
23 ガス拡散層
24 空気極
25 セパレータ
26 ゲル状亜鉛負極
27 酸素透過シート
28 正極缶
210 空気取り入れ孔
211 密封シール
212 皿紙
213、214 キャップ
215 有機封止剤
216 樹脂封口体
217 負極端子キャップ
218 負極集電子
219 樹脂チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水性を有する粒子の集合体からなり、前記粒子の平均粒径が0.01〜50μmである酸素透過膜。
【請求項2】
水との接触角が120°以上である請求項1記載の酸素透過膜。
【請求項3】
前記粒子の集合体は、融着により一体化されている請求項1記載の酸素透過膜。
【請求項4】
前記粒子が、フッ素樹脂からなる請求項1記載の酸素透過膜。
【請求項5】
前記フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニルおよびポリフッ化ビニリデンよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項4記載の酸素透過膜。
【請求項6】
比表面積が、0.1m/g以上500m/g以下である請求項1記載の酸素透過膜。
【請求項7】
厚みが0.1μm以上1000μm以下である請求項1記載の酸素透過膜。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の酸素透過膜と、その膜を担持する多孔質基材とからなる酸素透過シート。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の酸素透過膜と、その膜を挟持する一対の多孔質基材とからなる3層構造の酸素透過シート。
【請求項10】
前記基材の材質が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ビニロン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)およびナイロンよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項8または9記載の酸素透過シート。
【請求項11】
前記基材が、メッシュまたは不織布の形態を有する請求項8または9記載の酸素透過シート。
【請求項12】
前記基材が、穿孔された金属箔または金属メッシュからなる請求項8または9記載の酸素透過シート。
【請求項13】
前記基材が、微多孔膜の形態を有する請求項8または9記載の酸素透過シート。
【請求項14】
撥水性を有する粒子の集合体が、直径0.5μm以下の細孔を有する請求項8または9記載の酸素透過シート。
【請求項15】
直径0.01μm〜0.5μmの範囲における積算細孔容積S1と、直径0.01μm〜10μmの範囲における積算細孔容積S2との比:S1/S2が、0.01以上0.8以下である請求項14記載の酸素透過シート。
【請求項16】
ガーレー数が0.5秒以上50000秒以下である請求項8または9記載の酸素透過シート。
【請求項17】
正極、負極および電解質からなり、前記正極に空気を供給する空気取入れ機構を有する空気電池であって、前記空気取入れ機構が、請求項1〜7のいずれかに記載の酸素透過膜を具備する空気電池。
【請求項18】
正極、負極および電解質からなり、前記正極に空気を供給する空気取入れ機構を有する空気電池であって、前記空気取入れ機構が、請求項8〜16のいずれかに記載の酸素透過シートを具備する空気電池。
【請求項19】
カソード、アノードおよび電解質からなり、前記カソードに空気を供給する空気取入れ機構を有する燃料電池であって、前記空気取入れ機構が、請求項1〜7のいずれかに記載の酸素透過膜を具備する燃料電池。
【請求項20】
カソード、アノードおよび電解質からなり、前記カソードに空気を供給する空気取入れ機構を有する燃料電池であって、前記空気取入れ機構が、請求項8〜16のいずれかに記載の酸素透過シートを具備する燃料電池。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−142275(P2006−142275A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−110458(P2005−110458)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】