説明

重合体およびその調製方法と使用方法

【課題】発光デバイスの構造を単純化し、これにより製造プロセスを単純化して製造コストを低減する。
【解決手段】有機重合体は、重合体骨格の主鎖に沿って、負の電荷担体を輸送するとともに、第1のLUMO準位と第1のHOMO準位とで特定される第1のバンドギャップを有する第1の領域、正の電荷担体を輸送するとともに、第2のLUMO準位と第2のHOMO準位とで特定される第2のバンドギャップを有する第2の領域、ならびに、正および負の電荷担体を受容して結合させることによって光を発生するとともに、第3のLUMO準位と第3のHOMO準位とで特定される第3のバンドギャップを有する第3の領域のうちの2つ以上の領域を具備する。前記領域のそれぞれは、単量体を1つ以上含んでなる。また、当該有機重合体における前記単量体の量および配置は、第1、第2、および第3のバンドギャップが当該重合体中で互いに相違するように選択されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機重合体と、該有機重合体を例えば光デバイスにて使用するような使用方法に関する。また、本発明は、この種の重合体の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光性有機材料を発光材料として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子が知られている。例えば、国際公開公報第WO90/13148号には、少なくとも1種類の共役重合体を含有する重合体膜が電極間に介装された素子が開示されている。この場合、重合体膜は、電子と正孔が注入された際に発光するポリ(パラ−フェニレンビニレン)(PPV)膜からなるものである。この種の素子には、電極や正孔を輸送することが可能な別の層を組み込んでもよい。
【0003】
有機半導体にとって重要な特性は、電子エネルギ準位の真空準位を基準に測定された結合エネルギ、特に、最高被占分子軌道(HOMO)準位および最低空分子軌道(LUMO)準位である。これらは、光電子放出を測定することや、特に酸化還元に関する電気化学的電位を測定することから概算することができる。そのようなエネルギが、種々の因子、例えば、界面近傍の局所環境等に影響されることはこの分野で周知であり、数値が決定される点は、曲線(ピーク)上、例えば、ピーク、ピーク基底、中間点であるので、定量的というよりもむしろ指針となる数値を使用する。
【0004】
光を発する典型的デバイスの断面を図1に示す。また、デバイスに沿うエネルギ準位を図2に示す。アノード1は、仕事関数が4.8エレクトロンボルトの透明なインジウム−スズ酸化物(ITO)層である。一方、カソード2は、仕事関数が2.4エレクトロンボルトのLiAl層である。両電極の間にはPPVの発光層3が介装されており、該発光層3は、2.7エレクトロンボルト付近のLUMOエネルギ準位5と、5.2エレクトロンボルト付近のHOMOエネルギ準位6を有する。デバイスに注入された正孔と電子は、PPV層で放射的に再結合する。このデバイスの有用な特徴は、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)の正孔輸送層4である。この重合体は、欧州特許第0686662号に開示されている。この重合体から約5.2エレクトロンボルトのエネルギ準位が与えられることにより、ITOから注入された正孔がPPVにおいてHOMO準位に到達することが促進される。
【0005】
ここで、エネルギ準位や仕事関数等に関して述べる値は、絶対的な値というよりもむしろ、一般的かつ例示的な値である。例えば、ITOの仕事関数は広範囲に変動可能である。実際の数値がITO成膜方法やその過程に依存することは広汎に知られている。
【0006】
カソード2と発光層3との間に電子輸送層が介装されたデバイス構造も公知である。この電子輸送層からエネルギ準位が与えられることにより、カソードから注入される電子が発光層を構成する材料のLUMO準位に到達することが促進される。電子輸送層のLUMOエネルギ準位は、カソードのLUMOエネルギ準位と発光層のLUMOエネルギ準位との間であるか、または、発光層のLUMOエネルギ準位に合致することが適切である。
【0007】
多層構造デバイスには、溶液から層を成膜する場合、1つの層が次の層の成膜時に損傷されるのを回避することが困難であり、また、空隙が発生したり、増加した中間層の境界間で材料が埋まってしまう(trapped)という問題が惹起される、というような不具合がある。
【0008】
Appl. Phys. Lett. 51,913−915(1987)は、有機薄膜エレクトロルミネッセンスに関するものである。この文献に開示されているデバイスは、芳香族ジアミンの正孔輸送層と、8−ヒドロキシキノリンアルミニウムの発光層とを有する。正孔注入電極としてはITOが使用されており、電子注入電極としてはマグネシウム−銀合金が使用されている。
【0009】
Nature, 397,121−128(1999)に開示されているように、TPDは正孔輸送層として使用される。しかしながら、この分子材料は、デバイス内で低分子層を使用した場合に不具合が生じる。また、この文献では、PBDが電子輸送層として公知であることが開示されている。このPBDにも、エレクトロルミネッセンスデバイスにおける重合体と比較して、低分子層を使用することに伴ってデバイス特性に不具合が生じる。
【0010】
一般に、発光デバイスにおいて、特に電荷輸送材料として重合体を使用することは、極めて魅力のあるものである。重合体を使用することによって優れたデバイス特性が得られるからである。これらのデバイス特性には、良好な効率、加工性、およびデバイスの寿命が含まれる。
【0011】
米国特許第5,728,801号には、発光ダイオードにおける電荷輸送層として、ポリ(アリールアミン)が有用であることが開示されている。また、この文献では、電荷輸送材料、特に正の電荷輸送材料として、トリアリールアミンを使用することが開示されている。トリアリールアミンは、対応するラジカルカチオンへと容易に酸化されるからである。膜の形態でこのような重合体を使用することの有用性は、この文献中で説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第WO90/13148号公報
【特許文献2】欧州特許第0686662号公報
【特許文献3】米国特許第5,728,801号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Appl. Phys. Lett. 51,913−915(1987)
【非特許文献2】Nature, 397,121−128(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記した点に鑑みても、発光デバイスの構造を単純化し、これにより製造プロセスを単純化して製造コストを低減する必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、正の電荷担体を注入するための第1の電荷担体注入層と、負の電荷担体を注入するための第2の電荷担体注入層と、両電荷担体注入層の間に配置され、第1の電荷担体注入層からの正の電荷担体を受容する第1の成分、第2の電荷担体注入層からの負の電荷担体を受容する第2の成分、第1および第2の成分からの電荷担体を受容して結合させることにより光を発生する第3の有機発光成分の混合物からなる発光層と、を有するエレクトロルミネッセンスデバイスが提供される。
【0016】
1個の分子における機能的な化学的ユニットまたは部分が、発光層の成分の2つ以上となるようにしてもよい。前記1個の分子と物理的に混合された1つ以上の分子を、層のさらなる成分とするようにしてもよい。1を超える成分をもたらす1個の分子とは、例えば、共重合体である(例えば、主鎖、側鎖、ブロックまたはランダム形態)。1を超える成分をもたらす1個の分子には、第3の成分が含まれていることが好ましい。第3の成分と、第1および第2の成分の少なくとも1つとは、共重合体として供されることが適切である。
【0017】
本発明の第1の観点によれば、重合体骨格の主鎖に沿って、 (i)負の電荷担体を輸送するとともに、第1のLUMO準位と第1のHOMO準位とで特定される第1のバンドギャップを有する第1の領域、 (ii)正の電荷担体を輸送するとともに、第2のLUMO準位と第2のHOMO準位とで特定される第2のバンドギャップを有する第2の領域、 ならびに、 (iii)正および負の電荷担体を受容して結合させることによって光を発生するとともに、第3のLUMO準位と第3のHOMO準位とで特定される第3のバンドギャップを有する第3の領域、 のうちの2つ以上の領域を具備する有機重合体であって、 前記領域のそれぞれが単量体を1つ以上含み、 当該有機重合体における前記単量体の量および配置は、第1、第2、および第3のバンドギャップが当該重合体中で互いに相違するように選択されていることを特徴とする有機重合体が提供される。
【0018】
本発明によって提供される有機重合体は、発光デバイスにおいて要求される層および重合体成分の合計数を低減することにより、従来技術の問題を解決するものである。負の電荷担体材料として作用する重合体、正の電荷担体材料として作用する重合体、および発光材料として作用する重合体をそれぞれ別個に必要とするのに代え、本発明の重合体は、これらの2以上の作用を営むことができる。したがって、発光デバイスにおいて必要な成分の数を減少させることができる。すなわち、異なる作用を営む成分がデバイス中でそれぞれ別個の層を形成する場合は、層の数が減少する。一方、異なる作用を営む成分を単一の層に配合する場合は、配合物に必要とされる成分の数が減少する。
【0019】
本発明において、用語「領域」は、重合体鎖の断片または部分を意味するものであってもよい。「領域」は、単量体を1つ以上含むものであってもよい。それぞれの「領域」は、単量体を2つ以上含むものであることが好ましい。「領域」が単量体を2つ以上含む場合は、領域は、2以下の異なる単量体分子種からなること、特に、単一の種類の単量体または2つの互いに異なる種類の単量体からなることが好ましい。
【0020】
第1のLUMO準位は、第3の領域であってもなくてもよい発光材料に対し、第1の領域が負の電荷担体を輸送することができるような値とすべきである。第2のHOMO準位は、第3の領域であってもなくてもよい発光材料に対し、第2の領域が正の電荷担体を輸送することができるような値とすべきである。第3のLUMO準位および第3のHOMO準位は、正および負の電荷担体が第3の領域に受容され結合して光を発する際に所望の波長の光を発するような値とすべきである。
【0021】
第3の領域に言及すると、第3のLUMO準位と第3のHOMO準位とのエネルギ差により、第3のバンドギャップが特定される。
【0022】
本発明に係る重合体に要求される機能は、種々の特徴に基づいて説明することができる。
【0023】
まず、簡単にいえば、デバイス内の適切な位置に重合体を導入した際、エレクトロルミネッセンスデバイスが発光可能となれば、この重合体が要求された機能を備えているといえる。例えば、後述する第1のサブグループに属する重合体をエレクトロルミネッセンスデバイス内でアノードとカソードとの間に層として介装した場合、該エレクトロルミネッセンスデバイスは発光することができる。また、後述する第2のサブグループに属する重合体を適切な発光材料と配合し、この配合物をエレクトロルミネッセンスデバイス内でアノードとカソードとの間に層として介装した場合、該エレクトロルミネッセンスデバイスは発光することができる。さらに、後述する第3のサブグループに属する重合体を適切な正孔輸送材料と配合し、この配合物をエレクトロルミネッセンスデバイス内でアノードとカソードとの間に層として介装した場合、該エレクトロルミネッセンスデバイスは発光することができる。そして、後述する第4のサブグループに属する重合体を適切な電子輸送材料と配合し、この配合物をエレクトロルミネッセンスデバイス内でアノードとカソードとの間に層として介装した場合、該エレクトロルミネッセンスデバイスは発光することができる。
【0024】
理論にとらわれる必要はないが、本発明に係る重合体の要求される機能は、重合体のサイクリックボルタムグラムを解析することによって説明することができる。サイクリックボルタムグラム(C−Vグラフ)により、当業者であれば、単一の重合体において異なる酸化電位が複数存在することをある程度理解することができるであろう。通常、このような異なる酸化電位は、C−V曲線におけるピークまたは凹部としてグラフ上で明確に示される。ピークまたは凹部は、鋭いものから極めて浅いものまで様々である。単一の重合体内に異なる酸化電位が存在するということは、当業者に対し、該重合体がエレクトロルミネッセンスデバイスにおいて電荷輸送および電荷結合に関して多様な作用を営むことを示すものである。要するに、重合体のサイクリックボルタムグラムは、重合体がエレクトロルミネッセンスデバイス内に適切に導入された際、該重合体が電子的にどのような機能を示すかということを予測する方法である。エレクトロルミネッセンスデバイスにおける重合体の実際の電子的機能は、該デバイス内で重合体の層が導入された位置のような因子に依存するであろう。
【0025】
本発明の第2の観点によれば、本発明に係る重合体の層を少なくとも1つ有するエレクトロルミネッセンスデバイスが提供される。
【0026】
本発明に係る重合体をエレクトロルミネッセンスデバイス内で使用する場合、第1の領域の第1のLUMO準位または仕事関数は、発光材料のLUMO準位にできるだけ近くなるように設定すべきである。発光材料は、別個の重合体としてもよいし、第1の領域を含有する重合体中の第3の領域としてもよい。また、本発明に係る重合体をエレクトロルミネッセンスデバイス内で使用する場合、第2の領域の第2のHOMO準位または仕事関数は、発光材料のHOMO準位にできるだけ近くなるように設定すべきである。さらに、第3の領域を含む重合体をエレクトロルミネッセンスデバイスにおいて使用する場合、第3のLUMO準位および第3のHOMO準位によって特定されるバンドギャップを、正および負の電荷担体が第3の領域において結合することにより発光する際に所望の波長の光が発生するような範囲に設定すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】一般的なデバイスの構造を示す図である。
【図2】図1のデバイス構造に沿うエネルギ準位を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付の図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
【0029】
本発明において、第1、第2および第3の各領域の組成は、個別に選定される。これらの領域は、デバイス内で独立して機能するためである。
【0030】
本発明の第1の観点において、第1の領域は、置換あるいは非置換芳香族基、または、置換あるいは非置換複素芳香族基を含む第1の単量体を有する。第1の領域の成分は、第1のLUMO準位が適切となるように選択する。この選択は、重合体をエレクトロルミネッセンスデバイスにおいて使用する場合に特異的なものである。この選択は、カソードの仕事関数および発光材料のLUMO準位(これは第3のLUMO準位としてもしなくてもよい)を考慮して行う。第1のLUMO準位は、カソードの仕事関数と発光材料のLUMO準位との間であるか、または、発光材料のLUMO準位に合致するエネルギ準位であることが好ましい。この場合、第1の単量体は、置換または非置換フルオレン基を有することが好ましい。この基は、第1の領域に含まれる場合に特に有利である。フルオレンの構造は、フルオレン単量体のある長さの鎖、特に5を越える鎖の長さは、適切なカソードおよび発光材料(これは第3の領域としてもしなくてもよい)と共に使用した場合、優れた電子輸送特性を有するからである。
【0031】
特に、第1の単量体は、2,7−結合ジアルキルフルオレン基からなる。2,7−結合フルオレン基が好適である。2,7−結合ジアルキルフルオレン基が9,9ジオクチルフルオレンであることがさらに好ましい。9,9二置換、好ましくはジアルキル基またはジアリールフルオレン基は、その合成が容易であることから好適である。オクチル置換基は、該置換基が存在することによって重合体の溶解性を向上させることから好適である。
【0032】
本発明の第2の観点では、第2の領域は、置換あるいは非置換芳香族基、または、置換あるいは非置換複素芳香族基を含む第2の単量体を有する。第2の単量体は、一般式−[Ar3N]−を有するトリアリールアミン単位からなり、それぞれのArは、互いに同一または相違するものであって、置換あるいは非置換芳香族基、または、置換あるいは非置換複素芳香族基からなることが好ましい。第2の単量体におけるトリアリールアミン単位の存在は、トリアリールアミンの低い酸化電位が正の電荷輸送材料として特に適切であることから好適である。
【0033】
第2の領域の成分は、第2のHOMO準位が適切となるように選択する。この選択は、重合体をエレクトロルミネッセンスデバイスにおいて使用する場合に特異的なものである。この選択は、アノードの仕事関数および発光材料のHOMO準位(これは第3のHOMO準位としてもしなくてもよい)を考慮して行う。第2のHOMO準位は、アノードの仕事関数と発光材料のHOMO準位との間であるか、または、発光材料のHOMO準位に合致するエネルギ準位であることが好ましい。
【0034】
少なくとも1つのArは、置換または非置換フェニル基からなるのが好適である。この場合、第3の領域であってもなくてもよい適切な発光材料と共に重合体を使用する際、第2の領域において正孔輸送が良好となるからである。
【0035】
また、少なくとも1つのArが、重合体骨格から分岐した置換あるいは非置換芳香族、または、置換あるいは非置換複素芳香族側鎖基からなることが好適である。好適な側鎖基は、非置換フェニル基、または、単置換もしくは3,5−二置換フェニル基である。側鎖基が置換基を有する場合、好適な置換基は、アルキル基、パーフルオロアルキル基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、ヘテロアリール基、アリール基、アルコキシ基、チオアルキル基またはシアノ基であり、各基は置換されていてもよく、置換されていなくともよい。これらは、第2のHOMO準位の選択を支援する一方で、重合体の溶解性を向上させることから好適である。
【0036】
トリアリールアミン単位の適切な基の例は、以下の式I、II、III、IV、V、およびVIに示される通りである。
【0037】
【化1】

【0038】
式I、IIおよびIIIにおいて、XおよびYは、互いに同一または相違する置換基である。式IV、VおよびVIにおいて、A、B、CおよびDは、互いに同一または相違する置換基である。前記したように、X、Y、A、B、CおよびDの1つ以上が、アルキル基、アリール基、パーフルオロアルキル基、チオアルキル基、シアノ基、アルコキシ基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基およびアリールアルキル基の群から個別に選択されるのが好適である。また、X、Y、A、B、CおよびDの1以上は、水素とすることもできる。
【0039】
X、Y、A、B、CおよびDの1以上は、個別に、非置換イソブチル基、n−アルキル基、n−アルコキシ基またはトリフルオロメチル基とするのが好適である。これらは、第2のHOMO準位の選択を支援する一方で、重合体の溶解性を向上させるために適切であるからである。
【0040】
実験的な観点に基づけば、XおよびY、または、A、B、CおよびDは互いに同一であるのが好適である。
【0041】
本発明の第3の観点では、第3の領域は、置換あるいは非置換芳香族基、または、置換あるいは非置換複素芳香族基を含む第3の単量体を有する。
【0042】
以下に記載する本発明の第3の観点に係る3つの態様は、結果的に、デバイス構造において使用した際、重合体から発光される光の波長が互いに相違する。態様1は、限定されるものではないが、主として「赤色」の発光に関するものである。本発明においては、「赤色」の光は、600nm〜700nmの範囲の波長を有する光として定義することができる。態様2は、限定されるものではないが、主として「緑色」の発光に関するものである。本発明においては、「緑色」の光は、500nm〜600nmの範囲の波長を有する光として定義することができる。態様3は、限定されるものではないが、主として「青色」の発光に関するものである。本発明においては、「青色」の光は、400nm〜500nmの範囲の波長を有する光として定義することができる。
【0043】
本発明の第3の観点に従う第1の態様では、第3の単量体は、ベンゼン基あるいはチオフェン基に縮合した芳香族基、または、ベンゼン基あるいはチオフェン基に縮合した複素芳香族ジアジン基である基Hからなる。
【0044】
特に、第1の態様による第3の単量体は、式IXに示される基を有する。
【0045】
【化2】

【0046】
式中、Ar1は、置換あるいは非置換芳香族基、または、置換あるいは非置換複素芳香族基である。
【0047】
さらに好ましくは、第1の態様による第3の単量体は、式Xに示される基を有する。
【0048】
【化3】

【0049】
式中、Ar2は、置換あるいは非置換芳香族基、または、置換あるいは非置換複素芳香族基であり、Ar1は、式IXに関連して上記した通りである。
【0050】
式Xに言及すると、Ar1またはAr2は、個別に、置換または非置換、縮合または非縮合ベンゼン基、チオフェン基、フラン基、キノキサリン基、ビフェニル基、またはフルオレン基からなるのが好適である。これらの基は、第3のLUMO準位および第3のHOMO準位を選択する際、ある程度は適切であるからである。上記したように、第3のLUMO準位および第3のHOMO準位は、第3の領域のバンドギャップを特定するものであり、換言すれば、電子および正孔が第3の領域で結合した際に発生する光の波長を特定するものである。
【0051】
第1の態様に係るさらに特定の例では、第3の単量体は、式VIIIに示される基を有する。
【0052】
【化4】

【0053】
式中、X’はRC=CRまたはSであり、R1およびR2は互いに同一または相違する置換基である。それぞれのRは、水素、アルキル基、アリール基、パーフルオロアルキル基、チオアルキル基、シアノ基、アルコキシ基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基から個別に選択することが好ましい。
【0054】
第1の態様に係る他の特定の例では、第3の単量体は、式XIに示される基を有する。
【0055】
【化5】

【0056】
式中、R3およびR4は互いに同一または相違する置換基である。
【0057】
式VIIIおよびXIは、これらの基により、所望の第3のLUMO準位および第3のHOMO準位を有する第3の領域が得られることから好適である。
【0058】
1、R2、R3およびR4の1以上は、水素、アルキル基、アリール基、パーフルオロアルキル基、チオアルキル基、シアノ基、アルコキシ基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基からそれぞれ個別に選択されることが好ましい。これらの基は、前記X、A、B、CおよびDに関連して説明した理由と同様の理由から好適である。
【0059】
実験に基づけば、R1およびR2同士、R3およびR4同士が互いに同一であることが好ましい。これらが同一のフェニル基であることがさらに好ましい。R1およびR2が互いに同一のピリジン基またはフラン基であり、かつR3およびR4が水素であることがさらに一層好ましい。
【0060】
3およびR4が異なる場合、R3が水素であり、R4がアルキル基であるのが好適である。
【0061】
第3の観点の第1の態様に従う第3の単量体の特定の例を以下の式XIII〜XXVIに示す。
【0062】
【化6】

【0063】
【化7】

【0064】
【化8】

【0065】
前記した第3の単量体の1つまたはその他を選択することにより、異なる第3のLUMO準位および第3のHOMO準位が得られる。すなわち、第3の単量体の種類を選定することにより、第3の領域のバンドギャップを相違させることができる。その結果、第3の領域で電子および正孔が結合されることにより発生する光の波長を異ならせることができるようになる。
【0066】
本発明の第3の観点の第2の態様では、第3の単量体はトリアリールアミン単位を有する。
【0067】
好ましい第2の態様によれば、第3の単量体は、式−[(−Ar2N−)−Ar−(−NAr2−)]−で表される基を有し、それぞれのArは、同一または相違するものであって、置換あるいは非置換芳香族基、または、置換あるいは非置換複素芳香族基からなる。少なくとも1つのArが、置換または非置換アリール基、特に、非置換フェニル基からなるのが好適である。
【0068】
1つの観点では、少なくとも1つのArは、重合体骨格から分岐した置換あるいは非置換芳香族側鎖基、または、置換あるいは非置換複素芳香族側鎖基を有する。好適な側鎖基には、縮合または非縮合ベンゼン基、チオフェン基、フラン基、キノキサリン基、ビフェニル基またはフルオレン基が含まれる。
【0069】
側鎖基が、置換されていないかまたは単置換されているフェニル基を含むのがさらに好適である。適切な側鎖基としては、上記と同様の理由から、アルキル基、パーフルオロアルキル基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、ヘテロアリール基、アリール基、アルコキシ基、チオアルキル基またはシアノ基が挙げられる。各基は、置換されていてもよく、置換されていなくともよい。
【0070】
第3の観点の第2の態様によれば、一般に、トリアリールアミン単位は、式IVに示される基からなるものとすることができ、式中、AおよびBは上記したとおりのものであり、互いに同一または相違するものである。
【0071】
式IVの特定の例を式XXVIIに示す。
【0072】
【化9】

【0073】
この基を有する第3の単量体により、第3のLUMO準位および第3のHOMO準位が決定される。すなわち、電子および正孔が第3の領域で結合して光を発する際に、所望の波長の光が発光されるように第3の領域のバンドギャップを決定するものであることから好適なものである。
【0074】
本発明の第4の観点では、第1の領域が、置換あるいは非置換芳香族基、または、置換あるいは非置換複素芳香族基を有する第4の単量体をさらに含む。第4の単量体は、負の電荷担体の輸送効率を向上させる機能を有する。置換あるいは非置換芳香族基、または、置換あるいは非置換複素芳香族基は、一般式XIを有する基からなるものであり、R3およびR4が共に水素であることが好ましい。
【0075】
本発明のさらなる観点では、第2の領域は、第5の単量体をさらに含むことができる。第5の単量体は、上記したような第2の単量体から選択されるが、当該第2の領域を構成する第2の単量体とは別のものである。第5の単量体の機能は、第2の領域における正の電荷担体輸送特性を向上させるものである。
【0076】
本発明の第1、第2、および第3の観点に関連し、上記した重合体の広範なグループ内に、重合体のサブグループを4つ定義することができる。
【0077】
第1のサブグループは、負の電荷担体を輸送するとともに、第1のLUMO準位と第1のHOMO準位とで特定される第1のバンドギャップを有する第1の領域、正の電荷担体を輸送するとともに、第2のLUMO準位と第2のHOMO準位とで特定される第2のバンドギャップを有する第2の領域、ならびに、正および負の電荷担体を受容して結合させることによって光を発生するとともに、第3のLUMO準位と第3のHOMO準位とで特定される第3のバンドギャップを有する第3の領域を具備する有機重合体である。この有機重合体では、前記領域のそれぞれが単量体を1つ以上含み、当該有機重合体における前記単量体の量および配置は、第1、第2、および第3のバンドギャップが当該重合体中で互いに相違するように選択されている。
【0078】
このサブグループの特定の例を式XXVIIIに示す。
【0079】
【化10】

【0080】
式中、w+x+y+z=1、w≧0.5、0≦x+y+z≦0.5、かつn≧2である。wは約0.5、xは約0.125、yは約0.034、zは約0.341であることが好ましい。また、n≧5であることが好ましい。このような値である場合、該有機重合体をエレクトロルミネッセンスデバイスにて使用する際に該デバイスの性能が良好となるからである。この重合体は、エレクトロルミネッセンスデバイスにおいて使用される際に、上記したような「赤色」の光を発する。
【0081】
このサブグループのさらなる特定の例を式XXIXおよびXXXに示す。
【0082】
【化11】

【0083】
式中、w+x+y=1、w≧0.5、0≦x+y≦0.5、かつn≧2である。式XXIXについては、wは約0.800、xは約0.171、yは約0.029であることが好ましい。また、n≧5であることが好ましい。
【0084】
式XXXについては、wは約0.864、xは約0.108、yは約0.028であることが好ましい。このような値であると、該有機重合体をエレクトロルミネッセンスデバイスにて使用する際に、デバイス効率および寿命に関して良好な性能が得られるからである。これらの重合体は、エレクトロルミネッセンスデバイスにおいて使用される際に、上記したような「緑色」の光を発する。
【0085】
さらに、このサブグループの特定の例を式XXXIに示す。
【0086】
【化12】

【0087】
式中、w+x+y=1、w≧0.5、0≦x+y≦0.5、かつn≧2である。
【0088】
wは約0.80、xは約0.10、yは約0.10であることが好ましい。また、n≧5であることが好ましい。または、wは約0.85、xは約0.10、yは約0.05であることが好ましい。このような値であると、該有機重合体をエレクトロルミネッセンスデバイスにて使用する際に、デバイス効率および寿命に関して良好な性能が得られるからである。この重合体は、エレクトロルミネッセンスデバイスにおいて使用される際に、「青色」の光を発する。
【0089】
本発明に係る重合体の第2のサブグループは、負の電荷担体を輸送するとともに、第1のLUMO準位と第1のHOMO準位とで特定される第1のバンドギャップを有する第1の領域、ならびに、正の電荷担体を輸送するとともに、第2のLUMO準位と第2のHOMO準位とで特定される第2のバンドギャップを有する第2の領域を具備する有機重合体である。この有機重合体においては、前記領域のそれぞれが単量体を1つ以上含み、当該有機重合体における前記単量体の量および配置は、第1および第2のバンドギャップが当該重合体中で互いに相違するように選択されている。
【0090】
第2のサブグループに該当する重合体の特定の例を、式XXXIIまたはXXXIIIに示す。
【0091】
【化13】

【0092】
式中、w+x=1、w≧0.5、x≦0.5、かつn≧2である。wは約0.90、xは約0.10であることが好ましい。また、n≧5であることが好ましい。このような値であると、該有機重合体をエレクトロルミネッセンスデバイスにて使用する際に、デバイス効率および寿命に関して良好な性能が得られるからである。
【0093】
第2のサブグループに該当する重合体のさらなる特定の例は、式XXXIVに示される。
【0094】
【化14】

【0095】
式中、w+x+v=1、w≧0.5、0≦x+v≦0.5、かつn≧2である。wは約0.50、xは約0.25、vは約0.25であること、または、wは約0.90、xは約0.05、vは約0.05であることが好ましい。また、n≧5であることが好ましい。このような値であると、該有機重合体をエレクトロルミネッセンスデバイスにて使用する際に、デバイス効率および寿命に関して良好な性能が得られるからである。
【0096】
第2のサブグループに該当する重合体のさらなる特定の例は、式XXXVに示される。
【0097】
【化15】

【0098】
式中、w+x+z=1、w≧0.5、0≦x+z≦0.5、かつn≧2である。wは約0.50、xは約0.377、zは約0.123であることが好ましい。また、n≧5であることが好ましい。このような値であると、該有機重合体をエレクトロルミネッセンスデバイスにて使用する際に、デバイス効率および寿命に関して良好な性能が得られるからである。
【0099】
第2のサブグループに該当する重合体は、発光材料と配合することができる。配合された重合体を使用して、発光デバイスに単一の層を形成するようにしてもよい。適切な発光材料の例は、適切なHOMO準位およびLUMO準位、換言すれば、適切なバンドギャップを有する発光材料である。
【0100】
本発明に係る重合体の第3のサブグループに該当する重合体は、負の電荷担体を輸送するとともに、第1のLUMO準位と第1のHOMO準位とで特定される第1のバンドギャップを有する第1の領域、ならびに、正および負の電荷担体を受容して結合させることによって光を発生するとともに、第3のLUMO準位と第3のHOMO準位とで特定される第3のバンドギャップを有する第3の領域を具備する有機重合体である。この有機重合体においては、前記領域のそれぞれが単量体を1つ以上含み、当該有機重合体における前記単量体の量および配置は、第1および第3のバンドギャップが当該重合体中で互いに相違するように選択されている。
【0101】
第3のサブグループに該当する重合体の例は、式XXXVIに示される。
【0102】
【化16】

【0103】
式中、w+y=1、w≧0.5、y≦0.5、かつn≧2である。wは約0.964、yは約0.036であることが好ましい。また、n≧5であることが好ましい。このような値であると、該有機重合体をエレクトロルミネッセンスデバイスにて使用する際に、デバイス効率および寿命に関して良好な性能が得られるからである。
【0104】
第3のサブグループに該当する重合体を、発光デバイスにて使用する際、正孔輸送材料と配合するようにしてもよい。正孔輸送材料の適切な例は、ポリ−トリアリールアミンである。
【0105】
本発明に係る重合体の第4のサブグループに該当する重合体は、正の電荷担体を輸送するとともに、第2のLUMO準位と第2のHOMO準位とで特定される第2のバンドギャップを有する第2の領域、ならびに、正および負の電荷担体を受容して結合させることによって光を発生するとともに、第3のLUMO準位と第3のHOMO準位とで特定される第3のバンドギャップを有する第3の領域を具備する有機重合体である。この有機重合体においては、前記領域のそれぞれが単量体を1つ以上含み、当該有機重合体における前記単量体の量および配置は、第2および第3のバンドギャップが当該重合体中で互いに相違するように選択されている。
【0106】
第4のサブグループに該当する重合体の例を、式XXXVIIに示す。
【0107】
【化17】

【0108】
式中、x+y=1、x≧0.5、y≦0.5、かつn≧2である。xは約0.5、yは約0.5であることが好ましい。また、n≧5であることが好ましい。
【0109】
第4のサブグループに該当する重合体を、発光デバイスにて使用する際、電子輸送材料と配合するようにしてもよい。電子輸送材料の適切な例は、ポリ[2,7−(9,9ジアルキルフルオレン)]、好ましくはポリ[2,7−(9,9ジオクチルフルオレン)]のようなポリ−フルオレンである。
【0110】
本発明に係る重合体の第1、第2、第3および第4のサブグループの重合体に関連して言及した第1、第2および第3の領域は、本発明の観点または態様のいずれかにおいて説明されるような領域である。
【0111】
本発明に従って重合体を製造する際に採用できる異なる重合方法が幾つか知られている。
【0112】
特に適切な1つの方法が英国特許出願第9925653.9号に開示されている。その記述内容を参照して本明細書の一部とする。この公報には、共役重合体の調製方法が記載されている。すなわち、反応混合物中で、(a)ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボラン基から選択されたホウ素誘導体官能基を少なくとも2つ有する芳香族モノマーと、反応性ハロゲン化物官能基を少なくとも2つ有する芳香族モノマー同士、または、(b)反応性ハロゲン化物官能基を1つ有し、かつ、ボロン酸基、ボロン酸エステル基、ボラン基から選択されたホウ素誘導体官能基を1つ有する芳香族モノマー自身を重合させる工程を有する調製方法である。なお、前記反応混合物には、芳香族モノマーを重合させる際に触媒として機能し得る量の触媒と、ホウ素誘導体官能基を−BOH3負イオン基に変換させるに充分な量の有機物塩基とが含有されている。
【0113】
この方法によって製造された本発明に係る重合体は、反応時間が短く、残余のパラジウム量が少ないという点で特に有利である。
【0114】
米国特許第5,777,070号には、他の重合方法が開示されている。このプロセスは、ボロン酸、炭素数が1〜6のボロン酸エステル、炭素数が1〜6のボラン、およびこれらの組合せから選択される反応性基を2つ有する単量体と、反応性のボロン酸、ボロン酸エステルまたはボラン基を1つ有し、かつ反応性のハロゲン化物官能基を1つ有する1または複数の芳香族二ハロゲン化官能性単量体を互いに接触させることを含むものである。
【0115】
さらなる重合方法が、 Macromolecules, 31, 1099-1103 (1998)に開示されている。重合反応は、ニッケルを媒介する二臭化単量体のカップリングを含む。この方法は、「ヤマモト重合」として広汎に知られている。
【0116】
上記した各重合方法において、「単量体」は、1つの態様では、第1、第2または第3の領域の1つを含むものとすることができる。換言すれば、第1、第2または第3の領域をそれぞれ有しかつ反応性基を2つ有する複数の単量体を、1以上の第1の反応工程で調製することができる。その後、予備調製した単量体を他の予備調製した単量体と重合工程において接触させるようにすればよい。実際には、1以上の第1の反応工程および重合工程を、別個の反応容器内で実施するようにしてもよい。
【0117】
本発明に係る重合体の重合度は、典型的には2より大きく、好ましくは5よりも大きい。
【0118】
本発明に係る重合体を、エレクトロルミネッセンスデバイスを構成する層として導入するようにしてもよい。この種の層は、アノードとカソードとの間に配置される。
【0119】
上記した第1のサブグループに該当する重合体の場合、アノードとカソードとの間に、第1のサブグループに該当する重合体の層とは別の層を付加する必要は特にない。しかしながら、正孔輸送層または電子輸送層のようなさらなる層を付加することが有益であることもある。
【0120】
上記した第2のサブグループに該当する重合体を、発光材料(好ましくは発光重合体)と配合するようにしてもよい。配合物の層は、エレクトロルミネッセンスデバイスにおけるアノードとカソードの間に配置することができる。
【0121】
上記した第3のサブグループに該当する重合体を、正孔輸送材料(好ましくは正孔輸送重合体)と配合するようにしてもよい。配合物の層は、エレクトロルミネッセンスデバイスにおけるアノードとカソードの間に配置することができる。
【0122】
上記した第4のサブグループに該当する重合体を、エレクトロルミネッセンスデバイスにて使用する際、電子輸送材料(好ましくは電子輸送重合体)と配合するようにしてもよい。配合物の層は、エレクトロルミネッセンスデバイスにおけるアノードとカソードの間に配置することができる。
【0123】
第2、第3および第4のサブグループに属する有機重合体をエレクトロルミネッセンスデバイスにて使用するに際しては、デバイスにおける電子の輸送および/または正孔の輸送、および/またはデバイスからの発光を最適化するために望ましい場合、アノードとカソードの間に重合体層をさらに配置するようにしてもよい。
【0124】
実施例
実施例1
2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレンの合成
マグネティックスターラ、滴下漏斗、およびスピリット(アルコール)温度計が取り付けられた三口丸底フラスコ中に、フルオレン(166.2g、1.0モル)、ヨウ素(0.4g)、およびジクロロメタン(1リットル)を入れる。これに対して炭酸ナトリウム溶液(2リットルの水中の280g)を添加し、氷/塩浴を使用して反応混合物を5℃未満に冷却する。温度を5℃未満に維持しながら、臭素溶液(250mlのジクロロメタン中120ml、2.34モル)を反応混合物に対して滴下する。添加が一旦完了したならば氷浴を除去し、反応混合物を撹拌しながら室温へと加温する。18時間撹拌した後、微細な白色粉末の生成物が析出する。生成物をろ過して分離し、120mlのチオ硫酸ナトリウムの20%溶液を用いて1回洗浄した後、350mlの蒸留水/脱イオン水を用いて3回洗浄する。ロータリーエバポレータにより生成物を乾燥させれば、純粋な白色粉末であるジブロモフルオレン、321g、99%を得る。
【0125】
先に調製した(上記の通り)ジブロモフルオレン(320g)を、マグネティックスターラ、還流コンデンサ、および滴下漏斗が取り付けられた3リットルの三口丸底フラスコ中で、KOH溶液(1リットル、50%w/w)およびアリコート(Aliquat)−336に85℃で添加する。懸濁物を85℃に加熱し、この温度でn−オクチルブロミド(500ml)を滴下し、最終的に2相系を形成する。添加が一旦完了したならば、反応物を85℃で一夜撹拌した後、室温に冷却する。その後、反応混合物(500ml)にジクロロメタンを添加する。
【0126】
反応混合物を2リットルの分離漏斗に移す。有機層を除去し、水層を200mlのジクロロメタンで3回洗浄し、合わせた有機層を200mlの蒸留水で3回洗浄する。有機層を無水硫酸マグネシウムにより乾燥させ、ろ過し、ロータリエバポレータにより溶剤を除去し、暗色のオイルを得た後、これを氷冷して「かき取り」、黄色/オレンジ色の固体を得る。反応混合物を冷却装置中に少なくとも1時間放置した後、固体をろ過して分離し、真空ポンプにより乾燥させる。
【0127】
生成物をヘキサン(およそ1.5リットル)中に溶解させ、砂(1cm)、70〜230メッシュのシリカゲル、(60cm)、1cmの砂を詰めたガラスカラム内(カラム直径およそ60mm)を窒素の圧力下に通過させる。生成物を溶出させる前後に、1.5リットルのヘキサンを用いてカラムを洗浄すべきことに留意されたい。溶出物を蒸発させ、冷却して白色の固体を生成させた後、これをヘキサンから再結晶させる。
【0128】
必要最小量のヘキサン中で再結晶を実施する。無色の結晶質固体(白色)である2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(i)が生成物として得られる。真空下において、室温で質量が一定となるまで結晶生成物を乾燥させ、HPLCによって純度を分析する。2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレンの最終的な収量は、347g、64%である。
【0129】
実施例2
2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレンの合成
マグネティックスターラ、窒素入口、ゴム隔壁、および低温温度計が取り付けられた2リットルの三口フラスコ中で、1リットルの乾性THF中に2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(200g、0.365モル)を溶解させる。ドライアイス/アセトン浴を用いて溶液をおよそ−78℃に冷却し、この間に二臭化物を沈殿させる。温度をおよそ−50℃未満に維持しながら、ブチルリチウム(ヘキサン中の2.5M溶液の320ml、臭素当たり1.1等量)をかなり迅速に添加した。半分量の添加で臭化物は全て溶解し、略4分の3量の添加で2,7−ジリチオ−9,9−ジオクチルフルオレンの沈殿が開始する。全て添加した後、ジリチオフルオレンのスラリーをさらに半時間撹拌する。−30℃未満に温度を維持しながら、新たなトリメチルシリルクロリド(TMSCl)(120ml)を迅速に添加する。冷却浴を除去し、溶液を室温に加温する(通常は一夜)。TLC分析(ヘキサン溶出)により、溶剤の先端付近に単一のスポットが示される。溶液を一口フラスコへとろ過し、ロータリーエバポレータにより溶剤を除去する。残渣にヘキサンを添加し、得られた溶液をろ過してLiClを除去し、さらにヘキサンを用いて充分に洗浄する。ヘキサンを除去し、残余のオイルを高真空下で放置して極微量のTHFおよびヘキサンを全て除去する。2,7−ジ(トリメチルシリル)−9,9−ジオクチルフルオレンの収量は、多量である。
【0130】
ジ−TMS(トリメチルシリル)誘導体を、500mlの乾性ジクロロメタンを用いて、別の2リットルの三口フラスコ(窒素入口、ゴム隔壁、および温度計が設置されたもの)に移し、窒素下で溶液をおよそ−78℃に冷却し、この間に結晶化させる。ボロントリブロミド(120ml、TMS基当たりおよそ1.5等量)を5分間かけて添加する。最初の1または2ミリリットルを添加することに伴って、緑の色(これは強度が変動する)が出現する。全て添加した後、混合物を室温に加温し、典型的には一夜撹拌するが、反応自体は2時間で完了するようである。
【0131】
その後、室温の溶液を、水(1.5リットル)中のKOH(600g)の溶液に滴下する。厚質の白色のジ−カリウム・ジ−ボロネート塩の沈殿が生成する。全ての酸を確実に反応させるために、10分間撹拌を継続する。2相混合物を大きなガラス焼結漏斗でろ過し、吸引して部分的に乾燥させた後、大量の水で洗浄する。その後、5リットルのコニカルフラスコに入れた5MHCl(1.2リットル)およびエーテル(1.2リットル)の混合物に徐々に固体を添加しながら迅速に撹拌する。約半時間後、再生した二酸をエーテル層に含ませ、これを分離して500mlの脱イオン水により洗浄する。
【0132】
その後、このプロセスを繰り返す。すなわち、その後、水(1.5リットル)中のKOH(600g)の溶液にエーテル溶液を滴下する。厚質の白色のジカリウム・ジボロネート塩の沈殿が生成する。全ての酸を確実に反応させるために、10分間撹拌を継続する。
【0133】
大きなガラス焼結漏斗中で2相混合物をろ過し、吸引して部分的に乾燥させた後、大量の水で洗浄する。その後、5リットルのコニカルフラスコに入れた5MHCl(1.2リットル)およびエーテル(1.2リットル)の混合物に徐々に固体を添加しながら迅速に撹拌する。約半時間後、再生した二酸をエーテル層に含ませ、これを分離して500mlの脱イオン水により洗浄する。
【0134】
エーテルを除去し、生成物を約1〜1.5リットルのトルエンに溶解し、エチレングリコール(40g、0.645モル)を添加する。混合物を一夜加熱し、生成した水をデーン・スタークトラップ(Dean-Stark trap)により除去する(17mlが収集される)。トルエンを除去してオイルを得る。このオイルに対してアセトニトリル(約1リットル)を添加し、混合物を加熱して還流してオイルを溶解させた後、放置して室温に冷却する。冷却装置内で冷却を継続する。結晶をろ過し、大量のアセトニトリルで洗浄して乾燥させる。その後、乾燥させた結晶をヘキサン(約1リットル)中に溶解した後、これを室温に冷却し、冷却装置内に一夜放置する。目的化合物、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレンが、無色の固体(110g、57%)として得られる。
【0135】
実施例3
ビス(4−ブロモフェニル)−4−sec−ブチルフェニルアミンの合成
機械式オーバーヘッドスターラ、ガラス撹拌シャフト、テフロン(登録商標)撹拌翼、コンデンサを備えた2リットルの丸底フラスコに、4−sec−ブチルアニリン(200g、1.34モル、使用の前に真空下で新たに数回蒸留したもの)を入れた。その後、この化合物を、濃塩酸(350ml)と350mlの水の混合物に溶解した。溶液中に温度計を配置し、フラスコをアセトン/ドライアイス浴に浸漬した。反応混合物を撹拌し、5℃未満に冷却した。亜硝酸ナトリウムの冷却溶液(100g、1.449モル、250mlの水中)を反応混合物にゆっくりと添加した(シリンジを使用して3〜5mlを数バッチ)。温度は10℃を超えないようにした。
【0136】
ヨウ化ナトリウムの溶液(288g、1.73モル、250mlの水中)を徐々に添加した(分割量5〜10ml)。次に、反応混合物を室温で2〜3時間撹拌した。その後、反応容器にエアコンデンサを取り付け、ガス(窒素)の発生が止まるまで、反応混合物を慎重に加熱した(油浴温度は最大でおよそ100℃)。混合物を室温に冷却した。有機相を水相から分離した。水相をジクロロメタン(500mlで4回)を用いて洗浄した。有機相およびジクロロメタン抽出物を合わせ、過剰量のメタ重亜硫酸ナトリウムの溶液で洗浄した。硫酸マグネシウムを用いて有機相を乾燥させ、ろ過し、減圧ロータリーエバポレータを使用して溶剤を除去した。その後、粗製オイルを真空下で蒸留し、無色の液体である4−sec−ブチル−1−ヨードベンゼン(245g、70%)を得た。
【0137】
機械式スターラ、コンデンサ、窒素入口および出口が取り付けられた3リットルの反応容器の内部に、4−sec−ブチル−1−ヨードベンゼン(240g、0.916モル)、ジフェニルアミン(153.2g、1.58モル)、ナトリウム−tert−ブトキシド(273.2g、2.84モル)、酢酸パラジウム(3.81g、0.0170モル)、トリ−o−トリルホスフィン(10.32g、0.034モル)、トルエン2リットルを導入した。反応混合物を室温で撹拌し、容器内を窒素で20分間パージした。反応混合物を加熱し、窒素下で24時間撹拌しながら還流を維持した(油浴温度140℃)。
【0138】
反応混合物を冷却し、2Mの塩酸1リットルを用いて急冷した。有機相を水相から分離し、セライトの床を通過させた。その後、溶液を濃縮し、溶出溶剤としてヘキサンを用い、70〜230メッシュのシリカゲルが充填されたガラスカラム(直径6cm、長さ70cm)内を通過させた(窒素の圧力下)。溶出液の溶剤を除去してオイルを得、このオイルに少量のメタノールを添加して白色の固体へと結晶化させた。その後、固体をイソプロパノールから再結晶させると、N,N−ジフェニル−4−sec−ブチルフェニルアミンの白色結晶が生成した(101g、37%)。
【0139】
マグネティックスターラバー、圧力平衡滴下漏斗、および窒素入口/出口が取り付けられた1リットルの三口フラスコに、N,N−ジフェニル−4−sec−ブチルフェニルアミン(29g、0.096モル、HPLC分析によれば純度100%)と350mlの無水DMFを導入した。この反応混合物に対し、冷却した無水DMF(100ml)に溶解したN−ブロモスクシンイミド(34.18g、0.182モル)を、温度を−10〜0℃として迅速に撹拌しながらおよそ20分間かけて滴下した。
【0140】
混合物を室温に加温した後、迅速に撹拌しながら2リットルのエタノール/水3:1混合溶液を滴下した。沈殿した白色の固体をろ過した後にイソプロパノールから再結晶し、白色固体であるビス(4−ブロモフェニル)−4−sec−ブチルフェニルアミンを得た(23.5g、53%)。
【0141】
実施例4
4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾールの合成
臭酸溶液(48%水溶液)(500ml)中の2,1,3−ベンゾチアジアゾール(100g、0.74モル)の懸濁物を、100℃に加熱した。30分後、臭素(120ml、4.68モル)を滴下し、懸濁物を100℃でさらに24時間撹拌した。激しく撹拌した氷/水に粗製混合物を注ぐことによって反応を消勢した。30分間撹拌した後、チオ硫酸ナトリウム(400ml、20%溶液)を用いて残渣を2回洗浄し、次いで、トルエン(1.5リットル)中に溶解した。溶液をチャコール(1g)で2回処理し、100℃で2時間加熱した。チャコールを除去した後、固体が現れ始めるまで溶液を濃縮した。混合物にメタノールを添加し、放置して再結晶させ、105g、49%を得た。
【0142】
実施例5
式XXXIIによる重合体の合成(この場合、重合度はおよそ10)
電気機械式スターラに連結されたガラス撹拌ロッド、テフロン(登録商標)撹拌翼、還流コンデンサ(窒素ラインに接続されている)が取り付けられた2リットルの反応容器に、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン(50.5610g、95.33ミリモル)、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(41.7812g、76.18ミリモル)、ビス(4−ブロモフェニル)−4−sec−ブチルフェニルアミン(8.7560g、19.08ミリモル)、テトラキストリフェニルホスフィン・パラジウム300mg、およびトルエン950mlを導入した。混合物を室温で10分間撹拌した。
【0143】
その後、水酸化テトラエチルアンモニウム(320、20%w/v)を混合物に添加した後、これを窒素気流下に室温で20分間撹拌する。
【0144】
反応混合物を加熱し、還流状態で18時間まで維持した(典型的には一夜放置した)。この間、窒素雰囲気下で反応混合物を撹拌した(撹拌速度は2〜3)。
【0145】
ブロモベンゼン(10ml)を添加し、反応混合物を還流状態でさらに2時間撹拌した後、フェニルボロン酸を添加し(11g)、反応混合物を室温でさらに2時間撹拌した。
【0146】
混合物を室温に冷却し、4リットルのメタノール中に注ぎ、重合体を沈殿させた。その後、重合体/メタノール混合物をろ過した。その後、ろ過によって単離した重合体をトルエン溶液からメタノール中にさらに再沈殿させ、真空下に乾燥させた(収量およそ55)。
【0147】
この方法により得られた重合体のピーク分子量は、180,000であった。この分子量は、LC1120アイソクラチックポンプとERC−7515A屈折率検出器が組み込まれたポリマーラボGPCシステムを使用して測定したものである。溶媒としてはTHFを使用し、流速は1ml/分とした。また、温度は35℃に制御した。カラムのタイプは、PL600〜500000のポリスチレン標準物質を使用して校正されたPL混合物(*2、30cm)である。
【0148】
実施例6
式XXXIIを有する重合体と発光材料との配合物の合成
構造XXXIIを有する重合体(60g)と、構造XXXVI、w=yを有する重合体(2.37g)を、マグネティックスターラバー、窒素気流に接続された還流コンデンサが取り付けられた5リットルの丸底フラスコに導入する。その後、重合体混合物を、窒素下で撹拌しながら、約65℃、約3.5リットルのトルエンに溶解させる。溶解が完了したならば、重合体溶液を室温に冷却する。次いで、粘性の溶液を撹拌しながら、迅速に撹拌した大過剰のメタノール(4リットル)に4回滴下した後、沈殿した重合体をろ過する。さらに、真空下で一定重量まで重合体を乾燥させれば、最終的に、62.37gの大収量となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体骨格の主鎖に沿って、
(i)負の電荷担体を輸送するとともに、第1のLUMO準位と第1のHOMO準位とで特定される第1のバンドギャップを有する第1の領域、
(ii)正の電荷担体を輸送するとともに、第2のLUMO準位と第2のHOMO準位とで特定される第2のバンドギャップを有する第2の領域、
ならびに、
(iii)正および負の電荷担体を受容して結合させることによって光を発生するとともに、第3のLUMO準位と第3のHOMO準位とで特定される第3のバンドギャップを有する第3の領域、
のうちの2つ以上の領域を具備する有機重合体であって、
前記領域のそれぞれが単量体を1つ以上含み、
当該有機重合体における前記単量体の量および配置は、第1、第2、および第3のバンドギャップが当該重合体中で互いに相違するように選択されていることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項2】
請求項1記載の有機重合体において、前記第1の領域が、置換あるいは非置換芳香族基、または、置換あるいは非置換複素芳香族基を含む第1の単量体を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項3】
請求項2記載の有機重合体において、前記第1の単量体が、置換または非置換フルオレン基を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項4】
請求項3記載の有機重合体において、前記第1の単量体が、2,7−結合ジアルキルフルオレン基を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項5】
請求項4記載の有機重合体において、前記2,7−結合ジアルキルフルオレン基が9,9−ジオクチルフルオレン基であることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機重合体において、前記第2の領域が、置換あるいは非置換芳香族基、または、置換あるいは非置換複素芳香族基を含む第2の単量体を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項7】
請求項6記載の有機重合体において、前記第2の単量体が−[Ar3N]−の一般式で表されるトリアリールアミン単位を有し、それぞれのArが互いに同一または相違するものであって、かつ置換あるいは非置換芳香族基、または、置換あるいは非置換複素芳香族基を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項8】
請求項6または7記載の有機重合体において、少なくとも1つのArが、置換または非置換フェニル基を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項9】
請求項7または8記載の有機重合体において、少なくとも1つのArが、重合体骨格から分岐した置換あるいは非置換芳香族側鎖基、または、置換あるいは非置換複素芳香族側鎖基を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項10】
請求項9記載の有機重合体において、前記側鎖基が、置換または非置換アリール基を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項11】
請求項10記載の有機重合体において、前記側鎖基が、非置換フェニル基、または、単置換もしくは3,5−二置換フェニル基を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項に記載の有機重合体において、前記側鎖基は、アルキル基、パーフルオロアルキル基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、ヘテロアリール基、アリール基、アルコキシ基、チオアルキル基またはシアノ基からなる置換基を有し、かつ前記置換基は置換されているかまたは置換されていないものであることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項13】
請求項7〜12のいずれか1項に記載の有機重合体において、前記トリアリールアミン単位が、式I、IIまたはIIIのいずれかに示される基を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【化1】

式中、XおよびYは互いに同一または相違する置換基である。
【請求項14】
請求項13記載の有機重合体において、前記トリアリールアミン単位が、式IV、V、またはVIのいずれかに示される基を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【化2】

式中、A、B、CおよびDは互いに同一または相違する置換基である。
【請求項15】
請求項13または14記載の有機重合体において、X、Y、A、B、CおよびDの1つ以上が、水素、アルキル基、アリール基、パーフルオロアルキル基、チオアルキル基、シアノ基、アルコキシ基、ヘテロアリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基の群から個別に選定されたものであることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項16】
請求項15記載の有機重合体において、X、Y、A、B、CおよびDの1つ以上が、置換されていないイソブチル基、n−アルキル基、n−アルコキシ基、トリフルオロメチル基の群から個別に選定されたものであることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項17】
請求項15または16記載の有機重合体において、XおよびY、または、A、B、CおよびDが互いに同一であることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の有機重合体において、前記第3の領域が、置換あるいは非置換芳香族基、または、置換あるいは非置換複素芳香族基を含む第3の単量体を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項19】
請求項18記載の有機重合体において、前記第3の単量体が、ベンゼンあるいはチオフェン基に縮合した芳香族、または、ベンゼンあるいはチオフェン基に縮合した複素芳香族ジアジン基である基Hを有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項20】
請求項19記載の有機重合体において、前記第3の単量体が式IXに示される基を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【化3】

式中、Ar1は、置換あるいは非置換芳香族基、または、置換あるいは非置換複素芳香族基である。
【請求項21】
請求項20記載の有機重合体において、前記第3の単量体が式Xに示される基を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【化4】

式中、Ar2は、置換あるいは非置換芳香族基、または、置換あるいは非置換複素芳香族基であり、Ar1は請求項20にて記載した通りである。
【請求項22】
請求項20または21記載の有機重合体において、Ar1またはAr2は、ベンゼン基、チオフェン基、フラン基、キノキサリン基、ビフェニル基またはフルオレン基であり、前記各基は、置換されているかまたは置換されていないもの、縮合しているかまたは縮合していないものであることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項23】
請求項19〜22のいずれか1項に記載の有機重合体において、前記第3の単量体が、式VIIIに示される基を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【化5】

式中、X’はRC=CRまたはSであり、R1およびR2は互いに同一または相違する置換基である。
【請求項24】
請求項19〜22のいずれか1項に記載の有機重合体において、前記第3の単量体が、式XIに示される基を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【化6】

式中、R3およびR4は互いに同一または相違する置換基である。
【請求項25】
請求項23または24記載の有機重合体において、R1、R2、R3およびR4の1つ以上が、水素、アルキル、アリール、パーフルオロアルキル、チオアルキル、シアノ、アルコキシ、ヘテロアリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ピリジンまたはフランからそれぞれ個別に選定されたものであることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項26】
請求項25記載の有機重合体において、R1とR2、または、R3とR4が互いに同一のフェニル基であることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項27】
請求項23、25または26のいずれか1項に記載の有機重合体において、前記第3の単量体が式XIII〜XVIIのいずれかに示される基を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【化7】

【請求項28】
請求項23〜26のいずれか1項に記載の有機重合体において、前記第3の単量体が式XVIII〜XXVIのいずれかに示される基を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【化8】

【請求項29】
請求項18記載の有機重合体において、前記第3の単量体がトリアリールアミン単位を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項30】
請求項29記載の有機重合体において、前記第3の単量体が−[(−Ar2N−)−Ar−(−NAr2−)]−を含む基を有し、それぞれのArは互いに同一または相違するものであって、置換あるいは非置換芳香族基、または、置換あるいは非置換複素芳香族基であることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項31】
請求項30記載の有機重合体において、少なくとも1つのArが置換または非置換アリール基からなることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項32】
請求項31記載の有機重合体において、少なくとも1つのArが非置換フェニル基からなることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項33】
請求項30〜32のいずれか1項に記載の有機重合体において、少なくとも1つのArが、重合体骨格から分岐した置換あるいは非置換芳香族側鎖基、または、置換あるいは非置換複素芳香族側鎖基を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項34】
請求項33記載の有機重合体において、前記側鎖基が、縮合または非縮合ベンゼン基、チオフェン基、フラン基、キノキサリン基、ビフェニル基またはフルオレン基からなることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項35】
請求項34記載の有機重合体において、前記側鎖基が単置換フェニル基を含むことを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項36】
請求項33〜35のいずれか1項に記載の有機重合体において、前記側鎖基が、水素、アルキル基、パーフルオロアルキル基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、ヘテロアリール基、アリール基、アルコキシ基、チオアルキル基またはシアノ基からなる置換基を有し、前記各基は、置換されたものまたは置換されていないものであることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項37】
請求項35または36記載の有機重合体において、前記トリアリールアミン単位が式IVに示される基からなることを特徴とする有機重合体を含む層。
【化9】

式中、AおよびBは互いに同一または相違する置換基である。
【請求項38】
請求項37記載の有機重合体において、前記第3の単量体が式XXVIIに示される基を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【化10】

【請求項39】
請求項1〜38のいずれか1項に記載の有機重合体において、前記第1の領域が、置換あるいは非置換芳香族基、または、置換あるいは非置換複素芳香族基を含む第4の単量体をさらに有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項40】
請求項39記載の有機重合体において、前記置換あるいは非置換芳香族基、または、前記置換あるいは非置換複素芳香族基が式XIに示される基からなり、かつR3およびR4がともに水素であることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項41】
請求項6〜40のいずれか1項に記載の有機重合体において、前記第2の領域が、前記第2の単量体の他、この第2の単量体とは相違するものであってかつ請求項6〜17のいずれかに記載された第2の単量体からなる第5の単量体をさらに有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項42】
請求項1〜41のいずれか1項に記載の有機重合体において、(i)負の電荷担体を輸送するとともに、第1のLUMO準位と第1のHOMO準位とで特定される第1のバンドギャップを有する第1の領域、(ii)正の電荷担体を輸送するとともに、第2のLUMO準位と第2のHOMO準位とで特定される第2のバンドギャップを有する第2の領域、ならびに、(iii)正および負の電荷担体を受容して結合させることによって光を発生するとともに、第3のLUMO準位と第3のHOMO準位とで特定される第3のバンドギャップを有する第3の領域、を具備し、前記領域のそれぞれが単量体を1つ以上含み、当該有機重合体における前記単量体の量および配置は、第1、第2、および第3のバンドギャップが当該重合体中で互いに相違するように選択されていることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項43】
請求項42記載の有機重合体において、前記第3の領域が600nm〜700nmの範囲の波長の光を発生する能力を有するものであることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項44】
請求項42または43記載の有機重合体において、式XXVIIIに示す構造を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【化11】

式中、w+x+y+z=1、w≧0.5、0≦x+y+z≦0.5、かつn≧2である。
【請求項45】
請求項42記載の有機重合体において、前記第3の単量体が500nm〜600nmの範囲の波長の光を発生する能力を有するものであることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項46】
請求項42または45記載の有機重合体において、式XXIXに示す構造を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【化12】

式中、w+x+y=1、w≧0.5、0≦x+y≦0.5、かつn≧2である。
【請求項47】
請求項42または45記載の有機重合体において、式XXXに示す構造を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【化13】

式中、w+x+y=1、w≧0.5、0≦x+y≦0.5、かつn≧2である。
【請求項48】
請求項42記載の有機重合体において、前記第3の単量体は、400nm〜500nmの範囲の波長の光を発生する能力を有するものであることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項49】
請求項44記載の有機重合体において、式XXXIに示す式を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【化14】

式中、w+x+y=1、w≧0.5、0≦x+y≦0.5、かつn≧2である。
【請求項50】
請求項1〜41のいずれか1項に記載の有機重合体において、 (i)負の電荷担体を輸送するとともに、第1のLUMO準位と第1のHOMO準位とで特定される第1のバンドギャップを有する第1の領域、 ならびに、 (ii)正の電荷担体を輸送するとともに、第2のLUMO準位と第2のHOMO準位とで特定される第2のバンドギャップを有する第2の領域、 を具備し、 前記領域のそれぞれが単量体を1つ以上含み、 当該有機重合体における前記単量体の量および配置は、第1および第2のバンドギャップが当該重合体中で互いに相違するように選択されていることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項51】
請求項50記載の有機重合体において、式XXXIIまたはXXXIIIに示す構造を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【化15】

式中、w+x=1、w≧0.5、x≦0.5、かつn≧2である。
【請求項52】
請求項50記載の有機重合体において、式XXXIVに示す構造を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【化16】

式中、w+x+v=1、w≧0.5、0≦x+v≦0.5、かつn≧2である。
【請求項53】
請求項50記載の有機重合体において、式XXXVに示す構造を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【化17】

式中、w+x+z=1、w≧0.5、0≦x+z≦0.5、かつn≧2である。
【請求項54】
請求項50〜53のいずれか1項に記載の有機重合体において、発光材料と配合されていることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項55】
請求項1〜41のいずれか1項に記載の有機重合体において、 (i)負の電荷担体を輸送するとともに、第1のLUMO準位と第1のHOMO準位とで特定される第1のバンドギャップを有する第1の領域、 ならびに、 (ii)正および負の電荷担体を受容して結合させることによって光を発生するとともに、第3のLUMO準位と第3のHOMO準位とで特定される第3のバンドギャップを有する第3の領域、 を具備し、 前記領域のそれぞれが単量体を1つ以上含み、 当該有機重合体における前記単量体の量および配置は、第1および第3のバンドギャップが当該重合体中で互いに相違するように選択されていることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項56】
請求項55記載の有機重合体において、式XXXVIに示す構造を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【化18】

式中、w+y=1、w≧0.5、y≦0.5、かつn≧2である。
【請求項57】
請求項55または56記載の有機重合体において、正孔輸送材料と配合されていることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項58】
請求項57記載の有機重合体において、前記正孔輸送材料がポリ−トリアリールアミンであることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項59】
請求項1〜41のいずれか1項に記載の有機重合体において、 (i)正の電荷担体を輸送するとともに、第2のLUMO準位と第2のHOMO準位とで特定される第2のバンドギャップを有する第2の領域、 ならびに、 (ii)正および負の電荷担体を受容して結合させることによって光を発生するとともに、第3のLUMO準位と第3のHOMO準位とで特定される第3のバンドギャップを有する第3の領域、 を具備し、 前記領域のそれぞれが単量体を1つ以上含み、 当該有機重合体における前記単量体の量および配置は、第2および第3のバンドギャップが当該重合体中で互いに相違するように選択されていることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項60】
請求項59記載の有機重合体において、式XXXVIIに示す構造を有することを特徴とする有機重合体を含む層。
【化19】

式中、x+y=1、x≧0.5、y≦0.5、かつn≧2である。
【請求項61】
請求項59または60記載の有機重合体において、電子輸送材料と配合されていることを特徴とする有機重合体を含む層。
【請求項62】
請求項61記載の有機重合体において、前記電子輸送材料がポリ−フルオレンであることを特徴とする有機重合体を含む層。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−91591(P2009−91591A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10399(P2009−10399)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【分割の表示】特願2000−605274(P2000−605274)の分割
【原出願日】平成12年3月13日(2000.3.13)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】