説明

重合体ニトロキシド、その製造及び使用

本発明は、基移動重合により重合体ニトロキシドラジカルを製造する方法に関する。本発明の更なる態様は、ニトロキシドラジカルを有する重合体はもとより、その使用、特に有機ラジカル電池の活性電極材料としての使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基移動重合(group-transfer-polymerization)により重合体ニトロキシドラジカルを製造する方法に関する。本発明の更なる態様は、ニトロキシドラジカルを有する重合体はもとより、その使用、特に有機ラジカル電池の活性電極材料としての使用である。
【0002】
重合体ニトロキシドラジカルを製造する公知の方法は、初めに、それぞれ立体障害を有するアミンを重合させる工程から開始され、第二工程で、それを重合体ニトロキシドへと酸化する。これは、たとえばMakromol. Chem. 181, 595 (1980)に記載されている。こうして製造された重合体ニトロキシドのニトロキシド含量は、極めて長い反応時間(21〜70時間)、および過剰量の酸化剤にも拘わらず、理論値の100%には決して到達せずに、60〜73%を限度に留まっている。重合体アミンのこの限定された酸化能力は、ポリ(4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)という特定の場合について、Electorchimica Acta 50, 827 (2004)にも記載されていて、アミン基の81%のみをニトロキシドへと酸化することができたにすぎない。
【0003】
完全に酸化する能力がないことは、アミン性ニトロキシド前駆体の重合体としての性質に固有であると思われる。たとえば、アミン基のいくつかが重合体のコイル内に隠蔽され、そのため、酸化のために接近できないことがあり得る。明らかに、高いニトロキシド含量を必要とする重合体ニトロキシドのような用途は、低いニトロキシド濃度という問題を抱えることになる。
【0004】
したがって、ニトロキシド含量が理論的限界に等しいか、またはそれに近い重合体ニトロキシドを製造する新規な方法が、きわめて望ましい。
【0005】
驚くべきことには、適切なニトロキシドの不飽和アシル誘導体は、ニトロキシドを含まない架橋結合剤で重合体の追加的な架橋結合を実施するならば、基移動重合(GTP)によって効率的に重合させて、理論的ニトロキシド含量が100%であるか、またはこれを僅かに下回る重合体ニトロキシドを与えることが見出された。用語「僅かに下回る」とは、ニトロキシド単量体のみに基づく理論値の90〜100%、好ましくは95〜10%、最も好ましくは97〜100%を意味する。
【0006】
得られる重合体は、その各繰返し単位ごとにニトロキシド基を有し、そのため100%の理論ニトロキシド含量を有する。この定量的ニトロキシド含量は、対応する重合体アミンの酸化によっては達成することができない。このことが、GTPによって得られた重合体ニトロキシドを、重合体の重量あたり高いニトロキシド含量を有する重合体が要求されるすべての用途にとりわけ適切とする。そのような用途の代表的な例は、熱、酸素、化学線または電磁放射線による有機材料の劣化を防ぐための安定剤、不飽和単量体の望ましくない重合を防ぐための阻害剤、有機ラジカル電池の活性電極材料、および酸化触媒としての使用である。
【0007】
本発明の一態様は、繰返し単位1個あたり1または2個のニトロキシドラジカルを有する重合体ニトロキシドを製造する方法であって、式(I):
【0008】
【化6】

【0009】
[式中、R1は、CH3またはHであり;
Xは、OまたはNR2であり;
Qは、1または2個のニトロキシドラジカルを有する開鎖もしくは環状の有機基であり;R2は、H、C1〜C18アルキル、C5〜C12シクロアルキル、ベンジル、C1〜C18アルコキシカルボニルまたはフェニルであるか;あるいは
2は、Qと同じ意味を有する]
で示される単量体を、基移動重合の条件下で重合させる工程を含む方法である。
【0010】
2個のニトロキシドラジカルを有するQの例は、下記の構造式:
【0011】
【化7】

【0012】
[式中、符号*は、結合点を表す]
である。
【0013】
好ましくは、該重合体ニトロキシドは、繰返し単位1個あたり1個のみのニトロキシドラジカルを有するにすぎず、その結果、Qは、1個のニトロキシドラジカルを有する開鎖または環状の有機基である。
【0014】
ニトロキシドを有する単量体の基移動重合条件下での重合は、最大NO・容量を有する重合体を生じる。
【0015】
好ましいのは、Qが、式(II):
【0016】
【化8】

【0017】
[式中、Aは、OまたはN原子を更に含んでもよい、環状の五または六員環の形成に要される二価の基であり、R101は、独立して、C1〜C6アルキルであるか、または二個が結合炭素原子と一緒になって、C5〜C6シクロアルキル基を形成する]
で示される複素五または六員環のラジカルである場合の方法である。好ましくは、R101は、独立して、C1〜C4アルキルであり、複素環は、六員のテトラアルキルピペリジン−N−オキシル、3,3,5,5−テトラアルキルモルホリン−2−オン−N−オキシル、3,3,5,5−テトラアルキルピペラジン−2−オン−N−オキシル、3,3,5,5−テトラアルキルピペラジン−2,6−ジオン−N−オキシルの誘導体、または五員の2,2,5,5−テトラアルキル−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−N−オキシル、2,2,5,5−テトラアルキルピロリジン−N−オキシル、2,2,4,4−テトラアルキルオキサゾリジン−N−オキシルもしくは2,2,5,5−テトラアルキルイミダゾリジン−4−オン−N−オキシルの誘導体である。
【0018】
特定の実施態様では、該単量体は、式(Ia):
【0019】
【化9】

【0020】
[式中、Xは、OまたはNR2であり;
2は、H、C1〜C18アルキル、C5〜C12シクロアルキル、ベンジル、C1〜C18アルコキシカルボニルまたはフェニルであり;
4は、CH3またはHである]
を有する。
【0021】
好ましくは、R4は、Hである。
【0022】
得られるニトロキシド含有重合体は、下記の構造:
【0023】
【化10】

【0024】
[(Ia)からの重合体];
【0025】
【化11】

【0026】
[(Ib)からの重合体、式中、R4およびXは、上記に定義されたとおりであり、nは、10〜10,000の数である]
を有する。
【0027】
特に好ましいのは、単量体が式(Ib):
【0028】
【化12】

【0029】
[式中、Xは、OまたはNR2であり;R2は、C1〜C4アルキル、シクロヘキシル、ベンジル、C1〜C8アルコキシカルボニルまたはフェニルである]
で示される場合の方法である。
【0030】
他の実施態様では、単量体は、式(Ic)で示される:
【0031】
【化13】

【0032】
特に好適な単独単量体化合物は、
【0033】
【化14】

【0034】
4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルである。
【0035】
架橋結合によらない重合体の数平均分子量Mnは、用いた開始剤の量に左右され、代表的には、1,000〜1,000,000、好ましくは2,000〜200,000、特に5,000〜50,000である。架橋結合した重合体のMnは、より大きく、その実際の値は、架橋結合剤の量による。
【0036】
このニトロキシド含有単量体は、公知であり、たとえばJ. Polym. Sci.:Polymer Chemistry Edition 12, 1407 (1974)、英国特許出願公開第2335190号(GB 2335190)、同第2342649号(GB 2342649)公報または国際公開第96/24620号公報(WO 96/24620)に記載されたとおりに製造することができる。適切な更なるニトロキシドは、米国特許第4,581,429号明細書(US-A-4 581 429)または欧州特許出願公開第621 878号公報(EP-A-621 878)、国際公開第98/13392号(WO 98/13392)、同第99/03894号(WO 99/03894)、同第00/07981号(WO 00/07981)、同第99/67298号(WO 99/67298)、同第02/4805号(WO 02/4805)および同第02/100831号公報(WO 02/100831)に記載されている。
【0037】
ニトロキシド単量体の基移動重合(GTP)は、GTPに効果的であることが公知の最も広汎な条件セット下で実施することができる。これらは、膨大な特許および学術文献、たとえばAdv. Polym. Sci., 167, 1 (2004)に記載されている。
【0038】
重合は、下記の化学式に従って進行する:
【0039】
【化15】

【0040】
開始剤は、たとえば(1−メトキシ−2−メチルプロペニルオキシ)トリメチルシランであることができるが、その他のシリルケテンアセタールを用いてもよい。シリルケテンアセタールの開始剤は、たとえばシアン化トリメチルシリル、塩化トリメチルシリルその他のような、適切なシリル化剤を用いて、ニトロキシド単量体からそのままの位置で形成することもできる。
【0041】
好ましくは、基移動重合は、シリルケテンアセタール開始剤の存在下で実施する。
【0042】
開始剤の量は、幅広い変動幅を有することができる。たとえば、単量体のモル量を基準にして、0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%、より好ましくは0.2〜3モル%を用い得る。[単量体]/[触媒]の比が、目標となる重合体ニトロキシドの分子量を決定する。
【0043】
様々な触媒を、開始剤と組み合わせて用いることができる。好ましいのは、求核性触媒、たとえばフッ化物もしくは重フッ化物、カルボン酸塩、または重カルボン酸塩である。触媒は、開始剤のモル量を基準にして、約0.1〜20モル%であるが、ときには、より高いか、またはより低いレベルで用いることもできる。たとえばZnBr2、ZnCl2、HgCl2+J2またはアルキルアルミニウム=クロリドのような、ルイス酸触媒も、触媒として適切である。
【0044】
たとえば、基移動重合は、フッ化物、重フッ化物、カルボン酸塩、重カルボン酸塩およびルイス酸からなる群から選ばれる触媒の存在下で実施する。
【0045】
重合は、多くの溶媒中で実施することができ、好ましいのは、脂肪族もしくは芳香族炭化水素またはエーテル、たとえばテトラヒドロフラン(THF)、ジブチルエーテルまたはメチルtert−ブチルエーテルである。
【0046】
重合は、幅広い温度範囲内、たとえば−100〜+100℃、好ましくは0〜80℃で実施することができる。
【0047】
反応時間は、数分、たとえば10分から20時間までの変動幅があり得る。代表的反応時間は、1〜15時間である。通常、反応は、常圧下で実施する。
【0048】
より高い分子量が所望ならば、少量の適切な多官能GTP重合性単量体を加えることができる。これらの単量体は、その量および官能性に応じて、完全に不溶性の架橋結合した重合体ニトロキシドへと導くことができる。そうして、ニトロキシド含量は、100%を僅かに下回り、通常、90〜100%となると思われるが、それでも、対応する前駆体アミンの直接酸化によって達成できるより有意に高い。
【0049】
用語「多官能単量体」は、2個またはそれ以上のGTP重合性官能基が単量体中に存在することを意味する。
【0050】
多官能GTP重合性単量体の量は、たとえば、ニトロキシド含有単量体の重量を基準にして、0.01〜10重量%、特に0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲内で、広い変動幅を有することができる。
【0051】
多官能GTP重合性単量体の非限定的な例は、
ビスフェノールA=ジメタクリラート(CAS番号:3253−39−2)、
トリメチロールプロパン=トリメタクリラート(CAS番号:3290−92−4)、
エチレングリコール=ジメタクリラート(CAS番号:97−90−5)、
トリエチレングリコール=ジメタクリラート(CAS番号:109−16−0)、
1,3−プロパンジオール=ジメタクリラート(CAS番号:7559−82−2)、
1,2−プロパンジオール=ジメタクリラート(CAS番号:7559−82−2)、
1,4−ブタンジオール=ジメタクリラート(CAS番号:2082−81−7)、
1,3−ブタンジオール=ジメタクリラート(CAS番号:1189−08−8)、
ジエチレングリコール=ジメタクリラート(CAS番号:2358−84−1)、
テトラエチレングリコール=ジメタクリラート(CAS番号:109−17−1)、
1,6−ヘキサンジオール=ジメタクリラート(CAS番号:6606−59−3)、
ネオペンチルグリコール=ジメタクリラート(CAS番号:1985−51−9)、
1,4−シクロヘキサンジオール=ジメタクリラート(CAS番号:38479−34−4)、
グリセリル=トリメタクリラート(CAS番号:7401−88−9)、
1,1,1−トリメチロールエタン=トリメタクリラート(CAS番号:19778−85−9)、
トリスヒドロキシエチル−イソシアヌラート=トリメタクリラート(CAS番号:入手不能)
ペンタエリトリトール=テトラメタクリラート(CAS番号:3253−41−6)
である。
【0052】
この重合体ニトロキシドは、たとえば適切な溶媒中での沈澱のような、標準的な手順によって単離することができる。適切な溶媒は、たとえば飽和炭化水素である。
【0053】
本発明のもう一つの態様は、式(III):
【0054】
【化16】

【0055】
[式中、R1およびQは、上記に定義されたとおりであり、nは、10〜10,000の数である]
で示される繰返し単位1個あたり1または2個のニトロキシドラジカルを有する、上記のGTP法によって製造された重合体ニトロキシドである。
【0056】
代表的には、ニトロキシド含有単量体の100%が、重合後のニトロキシド官能性を保持している。言い換えれば、本発明により、ニトロキシド官能性の最大量(100%)が達成される。
【0057】
本発明の更に一つの態様は、有機ラジカル電池における活性電極材料としての、上記の方法に従って製造された重合体ニトロキシドの使用である。
【0058】
欧州特許出願公開第1 128 453号公報(EP 1 128 453)には、電池の電極材料中の活性成分としての様々なニトロキシドラジカルの使用が開示されている。電極材料は、電池の電解質に不溶でなければならないことから、重合体ニトロキシドには、特別な関心が持たれる。
【0059】
有機ラジカル電池の陰極の活性材料としてのニトロキシド重合体は、たとえばElectrochimica Acta 50, 827 (2004)に既に記載されている。4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの製造、そのフリーラジカル重合、およびその後の、対応する重合体ニトロキシドへの重合体の酸化が記載されている。
【0060】
しかし、こうして製造されたニトロキシド重合体は、該重合体の酸化がすべてのアミン官能性を転換することはないことから、繰返し単位中に100%のニトロキシドラジカルを含むことがない。したがって、該重合体は、有機ラジカル電池についての完全な理論的容量を与えることがない。
【0061】
対照的に、本発明のニトロキシド重合体は、すべての繰返し単位が1または2個のニトロキシドラジカルを有することから、100%の理論的容量を与える。これは、先行技術の重合体に優る有意な利点である。
【0062】
本発明の更にもう一つの態様は、上記のとおりに製造された重合体ニトロキシドの使用であって、熱、酸素、化学線または電磁放射線による有機材料の劣化を防ぐため、不飽和単量体の望ましくない重合を防ぐための阻害剤として、および酸化触媒としての使用である。
【0063】
以下の実施例は、本発明を例示する。
【0064】
実施例1:4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルのGTP重合
撹拌器、温度計、還流冷却器およびアルゴン吸気口を備えた、250ml入り三つ口フラスコに、J. Polym. Sci.:Polymer Chemistry Edition 12, 1407 (1974)に記載されたとおりに製造し、注意深く乾燥させた4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(12.0g、0.05mol)、ナトリウム/ベンゾフェノンから直前に蒸留したテトラヒドロフラン(THF)50mlを充填し、フラスコをアルゴンで満たした。次いで、赤色の溶液に、(1−メトキシ−2−メチルプロペニルオキシ)トリメチルシラン(0.174g、0.001mol、Flukaからの商業製品)を注射筒を通じて加えた。21℃で10分間撹拌した後、THF(0.030ml、0.00003mol)中のテトラブチルアンモニウム=フルオリドの1mol溶液を注入した。直ちに発熱反応が続き、反応混合物の温度が47℃に上昇した。赤色の粘稠溶液を、室温で12時間撹拌し、次いで、メタノール1mlを加え、混合物を、更に5分間撹拌した。次いで、溶液を、活溌な撹拌下のヘキサン500mlに徐々に注ぎ込んだ。橙色の懸濁液を1時間撹拌し、濾過した。赤色の固体を、ヘキサンで洗浄し、50℃/100ミリバールで乾燥させて、ポリ(4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル)11.5gを赤色粉末として得た。
【0065】
(C1322NO3nについての元素分析;(244.33)n;理論値/実測値:C64.97/64.80;H9.23/9.23;N5.83/5.72。
GPC(ポリスチレン較正):Mn=13881、Mw=41221、PDI=2.97。
【0066】
ニトロキシド含量:50.88mg/10mlおよび100.90mg/10mlでCH2Cl2に溶解した重合体の、462nmでの吸光度のUV分光法による決定、ならびに分析学的に純粋な4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル参照物質のモル吸光係数を用いた算出は、100.26%のニトロキシド含量を示した。
【0067】
実施例2:2モル%のエチレングリコール=ジメタクリラートの存在下での4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルのGTP重合
エチレングリコール=ジメタクリラート(0.201g、0.001mol)を、テトラブチルアンモニウム=フルオリド溶液(0.1ml、0.0001mol)の注入前に加えた以外は、実施例1に記載したとおりに重合を実施した。ポリ(4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル)を赤色粉末として得た。12.04g。
【0068】
GPC(ポリスチレン較正):Mn=16581、Mw=371763、PDI=22.41(少なくとも部分的に架橋結合した重合体の指標である)。
【0069】
実施例3:3.9モル%のエチレングリコール=ジメタクリラートの存在下での4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルのGTP重合
エチレングリコール=ジメタクリラート(0.385g、0.00194mol、3.88モル%)を、テトラブチルアンモニウム=フルオリド溶液(0.1ml、0.0001mol)の注入前に加えた以外は、実施例1に記載したとおりに重合を実施した。テトラブチルアンモニウム=フルオリド溶液の注入後10秒以内に、重合液は濃密なゲルへと変形し、その温度は、22℃から44℃へと上昇した。1時間後に、酢酸エチル(400ml)およびメタノール(1ml)を加えた。活溌な撹拌によって、ゲルを破砕し、得られた橙色の懸濁液を、−60℃に冷却した。固体を、吸引濾過によって単離し、酢酸エチル400mlに再分散させ、再び濾過した。フィルターケーキを、ジクロロメタン600ml中で12時間撹拌し、次いで、固体を濾取し、60℃/100ミリバールで、恒量となるまで乾燥させた。重合体は、テトラヒドロフラン、メタノール、CH2Cl2、トルエンおよびジメチルホルムアミドに完全に不溶であった。架橋結合したポリ(4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル)を赤色粉末として得た。8.25g。
【0070】
架橋結合剤は、すべて、重合体中に取り込まれたという想定のもとに、この材料のニトロキシド含量は、94.3%と算出された。
【0071】
(C1322NO3nについての元素分析;(244.33)n;理論値/実測値:C64.97/63.56;H9.23/9.16;N5.83/5.61。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰返し単位1個あたり1または2個のニトロキシドラジカルを有する重合体ニトロキシドを製造する方法であって、式(I):
【化1】


[式中、R1は、CH3またはHであり;
Xは、OまたはNR2であり;
Qは、1または2個のニトロキシドラジカルを有する開鎖もしくは環状の有機基であり;R2は、H、C1〜C18アルキル、C5〜C12シクロアルキル、ベンジル、C1〜C18アルコキシカルボニルまたはフェニルであるか;あるいは
2は、Qと同じ意味を有する]
で示される単量体を、基移動重合の条件下で重合させる工程を含む方法。
【請求項2】
Qが、式(II):
【化2】


[式中、Aは、OまたはN原子を更に含んでもよい、環状の五または六員環の形成に要される二価の基であり、R101は、独立して、C1〜C6アルキルであるか、または二個が結合炭素原子と一緒になって、C5〜C6シクロアルキル基を形成する]
で示される複素五または六員環のラジカルである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
101が、独立して、C1〜C4アルキルであり、複素環が、六員のテトラアルキルピペリジン−N−オキシル、3,3,5,5−テトラアルキルモルホリン−2−オン−N−オキシル、3,3,5,5−テトラアルキルピペラジン−2−オン−N−オキシル、3,3,5,5−テトラアルキルピペラジン−2,6−ジオン−N−オキシルの誘導体、または五員の2,2,5,5−テトラアルキル−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−N−オキシル、2,2,5,5−テトラアルキルピロリジン−N−オキシル、2,2,4,4−テトラアルキルオキサゾリジン−N−オキシルもしくは2,2,5,5−テトラアルキルイミダゾリジン−4−オン−N−オキシルの誘導体である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
単量体が、式(Ia):
【化3】


[式中、Xは、OまたはNR2であり;
2は、H、C1〜C18アルキル、C5〜C12シクロアルキル、ベンジル、C1〜C18アルコキシカルボニルまたはフェニルであり;
4は、CH3またはHである]
で示される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
単量体が、式(Ib):
【化4】


[式中、Xは、OまたはNR2であり;R2は、C1〜C4アルキル、シクロヘキシル、ベンジル、C1〜C8アルコキシカルボニルまたはフェニルである]
で示される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
基移動重合を、シリルケテンアセタール開始剤の存在下で実施する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
基移動重合を、フッ化物、重フッ化物、カルボン酸塩、重カルボン酸塩およびルイス酸からなる群から選ばれる触媒の存在下で実施する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
追加分の多官能単量体を、ニトロキシド含有単量体の重量を基準にして、0.01〜10重量%の量で加える、請求項1記載の方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法によって製造された、式(III):
【化5】


[式中、R1およびQは、請求項1に定義されたとおりであり、nは、10〜10,000の数である]
で示される繰返し単位1個あたり1または2個のニトロキシドラジカルを有する、重合体ニトロキシド。
【請求項10】
有機ラジカル電池における活性電極材料としての、請求項9記載の重合体ニトロキシドの使用。
【請求項11】
熱、酸素、化学線または電磁放射線による有機材料の劣化を防ぐための安定剤としての、不飽和単量体の望ましくない重合を防ぐための阻害剤としての、および酸化触媒としての、請求項9記載の重合体ニトロキシドの使用。

【公表番号】特表2008−545863(P2008−545863A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515180(P2008−515180)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062651
【国際公開番号】WO2006/131451
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(396023948)チバ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
【Fターム(参考)】