説明

重合可能な材料を処理するための組立品

【課題】重合可能な材料を加熱する方法、高純度(メタ)アクリル酸を生成する装置および高純度(メタ)アクリル酸を生成する方法を提供する。
【解決手段】重合可能な材料(12)を処理する装置(1)は、ガス(11)を重合可能な材料に供給する少なくとも1つのガス処理装置(2)と、ガス(11)を含む重合可能な材料(12)を加熱する加熱装置(3)とを含み、前記加熱装置(3)は、重合可能な材料(12)が重力(9)に抗して導入口(4)を通って加熱装置を流れるように、導入口(4)上のガス(11)を均一に分配する手段を備えるように設計されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合可能な材料にガスを導入する少なくとも1つのガス処理装置を含む重合可能な材料を処理する装置およびガスを含む重合可能な材料を加熱する加熱装置に関する。また、本発明は、重合可能な材料を加熱する処理方法、高純度(メタ)アクリル酸を生成する装置および高純度(メタ)アクリル酸を生成する処理方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル酸およびアクリル酸は、(メタ)アクリル酸として現在理解され、アクリル酸が特に好ましい。
【0003】
(メタ)アクリル酸のような重合可能な材料および(メタ)アクリル酸エステルは、加熱および/または光作用および/または過酸化物によって容易に重合できることが知られている。しかしながら、製造において、加工時および/または貯蔵時の重合は、技術的安全および経済理由のために最小限にするか、あるいは、防ぐ必要があるため、新規、簡単かつ有効な方法および制御できない重合を減少する装置の必要性がある程度存在している。また、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルの重合は、重合阻害剤(例えばハイドロキノンまたはハイドロキノン誘導体)を用いて抑制することができることが知られている。また、酸素の存在によって重合を阻害する。
【0004】
通常、(メタ)アクリル酸は、不飽和炭水化物(例えばプロピレンまたはイソブチレン)の酸化を触媒気相酸化によって生成される。最初に、(メタ)アクロレインを含む気体反応混合物が得られ、第2の酸化工程で酸化して(メタ)アクリル酸を含む生成物ガス混合物が得られる。次いで、この生成物ガス混合物は、凝縮され、あるいは、適切な溶媒に吸収され、(メタ)アクリル酸を含む液相が得られる。この液相は、(メタ)アクリル酸および任意に含む吸収剤の他に、出発化合物である不飽和炭水化物の気相酸化によって生じる副生成物を多く含み、更なる精製処理、特に蒸留によって精製される。(メタ)アクリル酸はまた、適切なアルコール類を用いて対応する(メタ)アクリル酸エステルに任意に転換される。
【0005】
しかしながら、(メタ)アクリル酸を含む液体の蒸留精製またはエステル化において、この液体は、それぞれ十分な分離性能またはエステル化に必要な温度に、好ましくは適切なパイプバンドル型熱交換器で加熱する必要がある。また、熱応力による蒸留またはエステル化の間、(メタ)アクリル酸の重合を防ぐために、通常、重合阻害剤を加える。
【0006】
現在公知の重合可能な材料を加工するシステムからは、パイプバンドル型熱交換器の領域で発生する重合に対してまだ十分な信頼性を与えることができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、先行技術を参照して記載する技術的課題を少なくとも部分的に緩和することである。特に、重合可能な材料の処理に重合をほとんど含まない装置を提案する必要がある。さらに装置は、構造が単純で保守要求が低いことが特徴である必要がある。最後に、特に適切な処理方法およびこの装置の使用ならびに記載する生成物について更に記載する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、本願の請求項1の特徴を有する重合可能な材料を処理する装置、本願の請求項8の特徴を有する重合可能な材料を加熱する処理方法、本願の請求項13の特徴を有する高純度の(メタ)アクリル酸を製造する装置および本願の請求項14の特徴を有する高純度(メタ)アクリル酸を生成する処理方法によって解決される。装置の更に有利な実施形態、好適な操作処理方法およびその処理方法で生成される生成物については、本願の従属請求項に記載する。本願の個々の請求項に記載する特徴は、任意の技術的に合理的な方法を互いに併用し、本発明の別の実施形態を例示することに言及する必要がある。
【0009】
本発明は、重合可能な材料にガスを導入する少なくとも1つのガス処理装置を含む重合可能な材料を処理する装置およびガスを含む重合可能な材料を加熱する加熱装置に関する。加熱装置は、重合可能な材料が重力に抗して導入口を通って加熱装置を流れ、導入口のガスを均一に分配する手段を備えるように設計される。
【0010】
重合可能な材料は、液体として実質的に存在し、ガスは、少なくとも1つのガス処理装置によってこの液体に導入される。かかるガス処理装置は、それぞれ単一のガス処理配置を含むことができる。しかしながら、多くのガス処理配置を、個々のガス処理装置によって得ることもできる。後者の場合、ガス処理配置は、群ごとに、あるいは、一斉に動作することができる。
【0011】
加熱装置は、重合可能な材料と接触させる熱交換面を有するように設計される。加熱装置は、任意の公知の方法で加熱することができる。しかしながら、水蒸気加熱が好ましい。加熱装置は、水蒸気および重合可能な材料の分流経路を含む。熱交換媒体(重合可能な材料、水蒸気)は、任意の方向、特に逆流方向で互いに流れる。導入口は、特に加熱装置の入口開口を意味する。好ましくは、導入口は、直径が500〜2500mmの円形の横断面を有するように設計される。好ましくは、導入口は、水平に配置される。
【0012】
装置は、重合可能な材料が重力に抗して流れるように設計される。好ましくは、重合可能な材料は、重力に抗して実質的に平行に流れる。このことはまた、加熱装置を通って重合可能な材料の流路が重力に平行で流れる場合であれば、特に有利である。このようにして、流路内の領域で供給されるガスの蓄積が増加するのを回避する。重合可能な材料に均一に分散するガスは、加熱装置を流れる間中残留する。このようにして、加熱装置内での重合は、かなり減少し、部分的にさらには永続的に防ぐ。
【0013】
さらに、導入口上のガスを均一に分散する手段は、実質的に、加熱装置を流れる重合可能な材料の各分流が、同じガス、特に重合を阻止するガスによって得られることから、重合可能な材料の全流路で重合傾向を同じにする、あるいは、低くすることを確実にする。手段は、例えば、特にガス処理装置および/または導入口の適した実施形態で実施され、および/または、装置の部品を分離することができる。特に好ましい実施形態を以下に記載する。
【0014】
装置の垂直構造および重合可能な材料のガスの均一な供給または分散によって、重合傾向を著しく減少させ、加熱装置が効率よく長時間動作する。このようにして、経費および保守要求を著しく減少させることができる。
【0015】
装置の他の実施形態によれば、加熱装置は、少なくとも1つの垂直パイプバンドル型熱交換器を含むことが提案される。パイプバンドル型熱交換器によって、重合可能な材料は、高熱媒体(例えば水蒸気)が流れる複数のパイプを流れる。好ましくは、かかるパイプバンドル型熱交換器は、4〜6mの高さで設計される。横拡張が、例えば、1〜2.50mで水平に位置する。好ましくは、かかるパイプバンドル型熱交換器は、カラムと類似の容器に配置される。パイプバンドル型熱交換器の他に層状のバンドル型熱交換器は、狭い流路を含み、ポイント溶接またはシーム溶接によってシート束から作製され、加熱装置としても用いることができる。パイプバンドル型または層状のバンドル型熱交換器それぞれの詳細な構造に関しては、”Basic Operations of Chemical Process Technology” (”Grundoperationen Chemischer Verfahrenstechnik”), Wilhelm R.A. Vauck and Hermann A. Muller, Wiley VCH−Verlag, 改訂版および拡張版(第11版)、2000、ページ502−506を参照。このテキストのパイプバンドル型および層状の熱交換器の構造に関する開示内容は援用によって本明細書の内容の一部となし、本発明の開示部分を構成する。
【0016】
さらに、少なくとも1つのガス処理装置を、加熱装置の導入口から300〜1000mm、好ましくは300〜500mmの距離で配置することが提案される。このようにして、特に小型の装置が作製される。ガスを均一に分散する手段との関係において、このように短い距離にもかかわらず、ガスの優れた分散を実施することができる。ガス処理装置は、例えばパイプにではなく、パイプから加熱装置への移行領域の一種の混合室に接続される。ガス処理装置がそれぞれ設計される場合、特に短い距離を維持することができる。すなわち、例えば、1つ以上のガス処理配置を経てガスを分散供給することができる。
【0017】
装置の他の実施形態によれば、ガス処理装置は、少なくとも30度の開口角度を有する少なくとも1つのノズルを含む。開口角度が40〜50度のノズルが好ましい。このようにして、ガスは、少なくとも2bar、好ましくは3bar以下の圧力によって、都合よく液体の重合可能な材料に管で送られる。少なくとも1つのノズルの位置決めについて、加熱装置の導入口の均一なガス処理を確実に実施する必要がある。このように、例えば、個々のノズルは、できる限り導入口に対して中央に配置する必要があり、いくつかのノズルは、導入口の横断面の上および/または円周で均一に配置する必要がある。ガスが重合可能な材料の流れの方向に逆流するようにノズルを配置するのが特に好ましい。
【0018】
さらに、少なくとも1つの流量インフルエンサ(flow influencer)を、ガス処理装置と導入口との間に備えることが有利である。流量インフルエンサは、特に、液体の重合可能な材料を分散または分流する機能を有する。流量インフルエンサの考えられる実施形態は、例えば、シーブ、格子、穴プレートなどである。好ましくは、穴プレートは、自由流れが30%以下の横断面を有する。好ましくは、穴径は20〜30mmである。流量インフルエンサは、分流の乱流または膨張が発生するように、ガスおよび/または重合可能な材料のデフレクタとして選択的に少なくとも部分的に機能することができる。重合可能な材料の全流量が流れる流量インフルエンサの実施形態が好ましい。
【0019】
装置の他の実施形態によれば、重合可能な材料の流れ方向から見てガス処理装置の前に、交差流を生成する少なくとも1つのフローコンディショナーが設けられる。好ましくは、かかるフローコンディショナーは、重合可能な材料の流れに対して大きな(唯一の)影響を及ぼす。これにより、乱流、渦等を生じる。このように、加熱装置の導入口前の膨張の領域の重合可能な材料は、均一かつ素早く分散することができる。さらに、ガス処理装置を通る重合可能な材料の特定の流れが発生する可能性がある。更に、フローコンディショナーは、流れの方向で特定の長さにわたる一種の流量ガイダンスを実施することが有利である。好適には、この長さは、300mm以上、好ましくは500mmより大きい。
【0020】
本明細書では、少なくとも1つのフローコンディショナーは、少なくとも一部の重合可能な材料の渦を生成する複数のデフレクタを含むことが特に有利である。このようにして、特に、加熱装置の導入口に向かう重合可能な材料の流れの先端部は、フローコンディショナーによって横方向に分流する。
【0021】
さらにまた、本発明による装置の重合可能な材料を、酸素含有ガスで最初に濃縮して加熱する重合可能な材料の加熱する処理方法を提案する。
【0022】
重合可能な材料は、好ましくは、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルからなる群から選択されるエチレン不飽和化合物であり、メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチルエステルおよびメタクリル酸エチルエステルが特に好ましく、アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチルエステルおよびアクリル酸エチルエステルが特に好ましい。最も好ましくは、重合可能な材料は、アクリル酸である。
【0023】
本発明においてさらに好ましくは、それにガスが導入される重合可能な材料は、上記のエチレン不飽和化合物の他に更なる副生成物を含む。
【0024】
本発明による処理方法の特定の実施形態によれば、重合可能な材料は、以下の成分に基づく。
(α1)50〜99.5重量%、特に好ましくは60〜99重量%(メタ)のアクリル酸
(α2)0.0001〜20重量%、好ましくは5〜15重量部の分離剤
(α3)0.0001〜5重量%、特に好ましくは0.001〜1重量%の水
(α4)0.0001〜10重量%、特に好ましくは0.5〜5重量%の(メタ)アクリル酸ダイマー)
(α5)0.1〜15重量%、特に好ましくは0.5〜10重量%の他の副生成物
但し、成分(α1)〜(α5)の合計は100重量%である。
【0025】
重合可能な材料としてアクリル酸を処理する場合、好ましくは、分離剤は、水が共沸混合物を生成する有機溶剤である。トルエンは、分離剤として特に好まれる。アクリル酸を処理する場合、好ましくは、副生成物は、好ましくは、プロトアネモニン、プロピオン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アルデヒド(例えばフルフラール)、ベンズアルデヒドまたはプロピオンアルデヒドおよび重合阻害剤(例えばハイドロキノンまたはフェノサイアジン)を含む群から選択される化合物である。
【0026】
本発明による処理方法の別の特定の実施形態によれば、重合可能な材料は、以下の成分に基づく。
(β1)0〜1重量%、特に好ましくは0.0001〜0.1重量%(メタ)のアクリル酸
(β2)50〜99重量%、特に好ましくは60〜98重量%(メタ)のアクリル酸エステル
(β3)0.0001〜1重量%、特に好ましくは0.01〜0.5重量%の水
(β4)0〜2重量%、特に好ましくは0.0001〜1重量%のアルコール
(β5)0.5〜10重量%、特に好ましくは1〜5重量%の他の副生成物
但し、成分(β1)〜(β5)の合計は100重量%である。
【0027】
好ましくは、アルコール類は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノールまたはtert−ブタノールからなる群から選択される第一級アルコールであり、最も好ましくはn−ブタノール)である。好ましくは、エステル類は、それぞれメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルまたはブチルエステルである。重合阻害剤の他に、副生成物は、例えば、ジ−n−ブチルエーテル、n−ブチル酢酸塩およびブチルブチラートからなる群から選択される化合物である。
【0028】
重合可能な材料に導入されるガスとして、例えば、酸素または空気のような酸素含有混合気体が好ましい。
【0029】
重合可能な材料を加熱する本発明による処理方法の特定の実施形態によれば、重合可能な材料は、以下の工程に従って塔底製品として得られる組成物である。
A)アクロレインを含む第1の生成ガス混合物を生成するプロピレンの触媒気相酸化
B)アクリル酸を含む第2の生成物ガス混合物を生成するアクロレインの触媒気相酸化
C)アクリル酸水溶液を得るための急冷塔での第2の生成ガス混合物の濃縮
D)トルエンが共沸剤である場合、塔底製品および塔頂製品を得るためのアクリル酸水溶液の共沸蒸留
【0030】
本発明による処理方法の特定の実施形態によれば、酸素で濃縮される重合可能な材料は、少なくとも85℃、好ましくは特に少なくとも90℃の温度に加熱される。重合可能な材料は、蒸留塔から再び処理される重合可能な材料である場合、70〜80℃の温度で流入する。本明細書で提案する処理方法によって、91℃まで温度を上げることができ、加熱装置内の短い滞留がかなり考慮されている。重合可能な材料の流速は、例えば、2〜5m/sである。加熱装置内では優れた熱伝導が必要となるが、重合によって熱伝導を実質的に妨ぐことができないことから、上記の手段によって確実にすることができる。
【0031】
重合可能な材料は、500〜3000m/hの平均体積流量によって供給されるのが好ましい。これは、例えば、アクリル酸が、極めて速く、かつ、大規模に生成することができるため、かなりの経済効果がある。
【0032】
蒸留装置と共に動作する加熱装置について、上記の体積流量に対し、酸素含有ガスは、平均質量流量が60〜180kg/hで供給されることが示唆される。この量の重合を阻止するガスは、加熱装置内の重合を回避するために十分である一方、均一に分散するため、少量であり、過度に供給する必要はない。
【0033】
本発明は、液体運搬方式で互いに接続される装置部品として、
(a)合成反応器、
(b)吸収装置または濃縮装置および
(c)精製装置を含み、
精製装置(c)は、重合可能な材料の処理のための本発明による少なくとも1つの装置を含む高純度の(メタ)アクリル酸を製造する装置にも関する。
【0034】
反応器(a)として、通常(メタ)アクリル酸の生成に用いられる当業者に公知のすべての反応器を用いることができる。好適な反応器は、触媒充填層を有するパイプバンドル型反応器であり、触媒で被覆されるサーモプレートまたは触媒充填層を有するサーモプレートを含む。また、反応器は、触媒を伴う反応空間の他に冷却媒質が流れる熱輸送空間を含む。本発明による好適な反応器は、例えば、欧州特許出願公開第0 700 893号および独国特許出願公開第101 08 380号に記載されている。
【0035】
欧州特許出願公開第1 319 648号に記載されるように、好ましくは、吸収装置または濃縮装置(b)はいわゆる「急冷塔」である。かかる急冷塔において、第2の酸化工程((メタ)アクロレインを(メタ)アクリル酸に酸化する)で(メタ)アクリル酸を得て、酸化中に生じる反応水を全濃縮に用いて(メタ)アクリル酸水溶液を生成する。原則として、好適な濃縮装置は、特に、パッキン、充填材料および/または床(例えばバブルトレー、シーブ床、バルブ床および/またはデュアルフロー床)によって分離に対して効果がある部品を有するコンデンサーである。このようにして、ガス状の生成混合物の濃縮可能な成分は、冷却によってわずかに濃縮される。混合気体は、不純物および希釈ガスの結果としての濃縮できない成分とともに高沸点、中沸点および低沸点の留分を含むため、カラムには、1つ以上の側面の放出口が対応する位置に備えられる。一般的な濃縮とは逆に、カラム内の濃縮によって、個々の成分に分離するとができる。好適なカラムは、少なくとも1つの冷却装置を含み、濃縮中に生じる熱を間接的に(外部から)除去する一般的な熱伝導器または熱交換器のすべてが適している。パイプバンドル型熱交換器、平板熱交換器および給気冷却器が好ましい。好適な冷却媒体は、対応する給気冷却器に対しては空気であり、他の冷却装置に対しては冷却液、特に水である。冷却装置は、単に1つ設ける場合、この低沸点の留分が濃縮するカラムの頭部に設置される。(メタ)アクリル酸を含む混合気体がいくつかの留分を含むため、複数の冷却装置をカラムの異なる部分(例えば、低沸点の留分を濃縮するカラムの下部と高沸点留分を濃縮するカラムの頭部)に設置することが有用である。アクリル酸の生成の場合、このカラムの中間部に1つ以上の側面の放出口から留分を除去する。
【0036】
気体反応成分の濃縮の他に、分離に対して効果的であり、吸収される成分を含む吸収カラム内で吸収剤と密接に接触させることもできる。
【0037】
急冷塔で得られるアクリル酸水溶液、側流として濃縮カラム内で好ましく除去されるアクリル酸または適切な溶媒で吸収して得られるアクリル酸溶液は、適切な精製装置(c)で更に精製される。この精製装置(c)は、重合可能な材料の処理のための本発明による少なくとも1つの装置を含む。(メタ)アクリル酸に対する本発明による装置の特定の実施形態によれば、精製装置(c)は、蒸留装置を含み、蒸留装置の少なくとも一部の塔底製品を、運搬要素によって蒸留装置から除去し、好ましくは、ポンプによって本発明による装置内で処理し、すなわち、ガスと接触させて加熱し、再び蒸留装置に流れるように、本発明による装置に接続する。
【0038】
本発明による装置の特定の実施形態によれば、濃縮装置(b)は急冷塔であり、精製装置(c)は蒸留塔であり、共沸剤としてのトルエンの存在下の急冷塔で得られるアクリル酸水溶液は、共沸蒸留される。
【0039】
本発明は、以下の工程を含む高純度の(メタ)アクリル酸を生成する処理方法にも関する。
(A)反応器内で(メタ)アクリル酸を含有する生成ガス混合物を生成する
(B)本発明による少なくとも1つの装置を含む精製装置内で、生成ガス混合物を精製して純度が少なくとも99.5重量%、特に好ましくは少なくとも99.8重量%、さらにより好ましくは、最低99.9重量%である(メタ)アクリル酸を得る
【0040】
初めに、本発明による反応器での工程(A)によって、(メタ)アクリル酸を含む生成ガス混合物が生成される。好ましくは、一列に接続される2つの反応器が用いられ、第1の反応器では、それぞれプロピレンまたはイソブチレンまたは他の適切な出発化合物を(メタ)アクロレインに酸化し、第2の反応器で、(メタ)アクロレインを(メタ)アクリル酸に転換する。しかしながら、本発明による反応器の1つの工程で(メタ)アクリル酸に酸化することも考えられる。
【0041】
工程(B)では、(メタ)アクリル酸を含む生成ガス混合物を精製する。この時点で、(メタ)アクリル酸を含み、(メタ)アクリル酸の精製中に生じる少なくとも1つの生成物流は、本発明による装置で処理される。精製は、好ましくは少なくとも1つの蒸留工程を含む。
【0042】
本発明は、上記の処理方法によって得られる高純度(メタ)アクリル酸にも関する。
【0043】
また、本発明は(メタ)アクリル酸を生成する処理方法にも関し、上記の処理方法によって得られる高純度(メタ)アクリル酸が重合される。重合は、溶液重合として好ましく発生し、トラフ形ベルトコンベヤの反応ガイドが特に好ましい。この場合、水相は直接用いられるか、あるいは、難水性相がそれぞれ希釈される。通常、重合は、媒体に対して水分が20〜80体積%である媒体で発生する。
【0044】
さらにまた、本発明は、上記の処理方法に従って得られるポリマーに関連する。
【0045】
ポリマーは、ERT 440.1−99による0.9重量%のNaCl水溶液の最大吸収度が10〜1000ml/g、好ましくは15〜500ml/g、特に好ましくは20〜300ml/gの吸収ポリマーである。吸収ポリマーおよびその生成に関しては、「”Modern Superabsorbent Polymer Technology”, F. L. Buchholz, A. T. Graham, Wiley−VCH, 1998に詳細に記載される。
【0046】
本発明による高純度(メタ)アクリル酸または本発明によるポリマーは、繊維、形成体、フィルム、気泡体、超吸収ポリマーまたは衛生物品の製造において、あるいは、その製造のために用いられる。
【0047】
本発明および発明の技術分野については、図を参照し、以下に詳細に例示するが、本発明を限定しない。図形記述を明確に言及する限り、図に例示する大きさとの関係は、実寸との関係を示さないことについて言及する必要がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
図1は、重合可能な材料12にガス11を導入するガス処理装置2を含む重合可能な材料を処理する装置1およびガス11を含む重合可能な材料12を加熱する加熱装置3に関する。加熱装置3は、重合可能な材料12が重力9に抗して導入口4を通って加熱装置3を流れるように設計される。
【0049】
重合可能な材料12は、液体としてガス処理装置2の反応物入口5を流れる。ガス処理装置2は、軸13に対して中心に配置されるノズルシステムによって設計される。ガス処理装置2は、液体(重合可能な材料12)に開口角度19でガス11(特に、酸素含有重合阻害剤)を分散する。ガス処理装置2は、開口角度19が導入口4の全ての横断面に達するように、加熱装置3の導入口4に対して距離16で配置される。重合可能な材料にガスを均一に分散する好適な手段もまた設けられる。
【0050】
ガス11で濃縮される重合可能な材料12は、加熱装置3を流入し、実質的に平行、かつ、重力9に抗して流れる流れの方向10に沿って流れる。加熱装置3内で、重合可能な材料12は、生成物放出口6への分流路に導かれる。蒸気入口7から供給され、濃縮物出口8を経て除去される蒸気などの媒体によって加熱される。このようにして、実質的に加熱装置3の高さ14に対応する加熱距離が得られる。通常、特にパイプバンドル型熱交換器として設計されるかかる加熱装置3は、拡張部15が500〜2500mmとなるように設計される。
【0051】
図2は、反応物入口5は曲がり、その湾曲部には、ガス処理装置2への供給部が設けられる装置の更なる実施形態の詳細を示す。ガス処理装置2は、重合可能な材料12のガス11を順番に分散し、開口角度19は、導入口4が閉じる角度である。このためには、ガス処理装置2は、ガス11のコンベヤ33によって動作され、反応物入口5内が超過圧であるか、あるいは、混合室21はそれぞれ少なくとも2barであることを確実にする。ガス処理装置2は、個々のノズル18を含み、好ましくは円錐型のジェットノズルとして設計され、中央に配置される。
【0052】
ノズル18の下流では、重合可能な材料12およびガス11が、穴プレートとして設計される流量インフルエンサ20を最初に流れる。流量インフルエンサ20は、ガス−材料混合物の均一な分散が起こるように流量インフルエンサ20から出た後、分流の乱流を生じさせる。このように実質的に、パイプバンドル型熱交換器17のパイプ内のガス11は同じ濃度に保証される。
【0053】
図3は、かかる流量インフルエンサ20の部分図を例示する。流量インフルエンサは、複数の開口22を含み、例えば、約25mmの拡張部23を有する。開口22は、例えば、開口22の均一な分散が得られるように互いにかかる距離24に置く必要があり、開口22全体は、流量インフルエンサ20の全表面の約30%を占める。
【0054】
図4は、複数のガス処理装置2を有する装置1の更なる実施形態を示す。ここでは、重合可能な材料12は、パイプバンドル型熱交換器17の導入口4の前に、混合室21に最初に反応物入口5に流れる。流量インフルエンサ25は、反応物入口5から混合室21へ移行部に設けられ、少なくとも一部の重合可能な材料12の流れを、ガス処理装置2に送る作用を有する。このようにして、重合可能な材料12は、ガス方向29に逆流し、均一に分散することができる。
【0055】
図5は、かかるフローコンディショナー25の実施形態を示す。これは、複数のデフレクタ26が間に設けられる外筒27および内筒28によって構成される。デフレクタ26は、外筒27の外角30および内筒28の内角31で設置される。半径方向の流れを変えるために、フローコンディショナー25は、一種の「蓋」として流量インフルエンサ20を含む。生成される衝撃圧によって、流れ部分が、デフレクタ26に沿って移動し、回転するといった効果が得られる。通常、かかるフローコンディショナー25は、反応物入口5を覆うために十分な直径32を有する。
【0056】
図6は、アクリル酸の製造用に普及されている装置1およびその後に配置される蒸留塔38による材料輸送を例示する。重合可能な材料12は、ポンプ34によって、ガス11(阻害剤)のガス処理装置2の反応物入口5を介し、約80℃以内の温度で供給される。次いで、ガス−材料混合物は加熱装置3を流れる。全装置1の寸法41は、約10mである。この種類の装置1については、特に高い体積流量の重合可能な材料12は、90℃以内の温度で極めて短時間で生成物出口6において加熱される。重合可能な材料の滞留は、装置1の寸法41に応じて10秒以内である。次いで、加熱され、静止流体である液体ガス−材料混合物は、蒸留塔38に流れ、導入口40を介して導入される。この間、液圧は減少し、蒸気として蒸留塔38の個々の分離床39を介して上昇する。濃縮物は、蒸留塔38の収集タンク37で収集され、流出部36を経てポンプ34に送られる。この回路は、貯蔵部35が追加され、必要に応じて利用できる更なる重合可能な材料12を生成する。
【0057】
図7は、フローコンディショナー25内の流れの関係を示す。フローコンディショナー25は、デフレクタ26が巻き込まれている。反応物入口5は、中心で破線を示される。中心領域内を流れる重合可能な材料12の量は、上記の流量インフルエンサ20(図示せず)によって、少なくとも部分的に変化し、デフレクタ26に流れる。従って、図7では、無風領域44は、中心に近接して作成され、反応物入口5の端領域で正常な流れ42が生成される。それぞれフローコンディショナー25またはデフレクタ26を流れると、暗色の領域で示す流れ加速43が発生する。同時に、重合可能な材料12の渦45が発生する。混合室の重合可能な材料12の特に均一な運動によって、重合阻害剤を分散し、特に都合よく利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による装置の第1の実施形態を示す図である。
【図2】本発明による装置の更なる実施形態の詳細を示す図である。
【図3】流量インフルエンサの実施形態を示す図である。
【図4】装置の更なる実施形態の詳細を示す図である。
【図5】フローコンディショナーの実施形態を示す概略図である。
【図6】(メタ)アクリル酸製造の一部を示す図である。
【図7】フローコンディショナーによる流れを示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 装置
2 ガス処理装置
3 加熱装置
4 導入口
5 反応物入口
6 生成物出口
7 蒸気入口
8 濃縮物出口
9 重力
10 流れの方向
11 ガス
12 材料
13 軸
14 高さ
15 拡張
16 距離
17 パイプバンドル型熱交換器
18 ノズル
19 開口角度
20 流量インフルエンサ
21 混合室
22 開口
23 拡張
24 距離
25 フローコンディショナー
26 デフレクタ
27 外筒
28 内筒
29 ガス方向
30 外角
31 内角
32 直径
33 コンベヤ
34 ポンプ
35 貯蔵部
36 流出部
37 収集タンク
38 蒸留塔
39 分離床
40 供給部
41 寸法
42 通常流れ
43 流れ加速
44 無風領域
45 渦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス(11)を重合可能な材料に供給する少なくとも1つのガス処理装置(2)と、ガス(11)を供給された重合可能な材料(12)を加熱する加熱装置(3)とを含み、重合可能な材料(12)を処理する装置(1)であって、前記加熱装置(3)は、重合可能な材料(12)が重力(9)に抗して導入口(4)を通って加熱装置を流れ、導入口(4)のガス(11)を均一に分配する手段を備えるように設計されることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記加熱装置(3)は、少なくとも1つの垂直パイプバンドル型熱交換器(17)を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのガス処理装置(2)は、前記加熱装置(3)の前記導入口(4)から300〜1000mmの距離(16)で配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記ガス処理装置(2)は、開口角度(19)が少なくとも30度である少なくとも1つのノズル(18)を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項5】
少なくとも1つの流量インフルエンサ(20)が、前記ガス処理装置(2)と前記導入口(4)との間に設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記重合可能な材料(12)の流れ方向(10)から見て前記ガス処理装置(2)の前に、交差流を生成する少なくとも1つのフローコンディショナー(25)が設けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのフローコンディショナー(25)は、少なくとも一部の前記重合可能な材料(12)の渦を生成する複数のデフレクタ(26)を含むことを特徴とする請求項6に記載の装置(1)。
【請求項8】
重合可能な材料(12)を加熱する方法であって、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置(1)内の重合可能な材料(12)を、最初に酸素含有ガス(11)によって濃縮し、次に加熱する方法。
【請求項9】
酸素で濃縮した前記重合可能な材料(12)を、少なくとも80℃の温度に加熱する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記重合可能な材料(12)は、(メタ)アクリル酸である請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記重合可能な材料(12)を、平均体積流量が500〜3000m/hで供給する請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記酸素含有ガス(11)を、平均質量流量が60〜180kg/hで供給する請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
高純度の(メタ)アクリル酸を製造する装置であって、液体運搬方式で互いに接続される装置部品として、
(a)反応器と、
(b)吸収装置または濃縮装置と、
(c)精製装置とを含み、
精製装置(c)は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の少なくとも1つの装置(1)を含む装置。
【請求項14】
高純度の(メタ)アクリル酸を生成する方法であって、
(A)反応器内で(メタ)アクリル酸を含有する生成混合物を生成する工程と、
(B)請求項1〜7のいずれか1項に記載の少なくとも1つの装置を含む精製装置内で、生成ガス混合物を精製し、純度が少なくとも99.5重量%である(メタ)アクリル酸を得る工程とを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−546531(P2008−546531A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518734(P2008−518734)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006352
【国際公開番号】WO2007/003358
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(508004236)エボニック・シュトックハウゼン・ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】