説明

重合性化合物を含有する液晶組成物及び該液晶組成物を用いた液晶表示素子

【課題】重合性化合物を含有する液晶組成物において、析出物が発生せず、重合性化合物の反応性が高く、重合後の液晶表示素子の信頼性が高い液晶組成物を提供すること。
【解決手段】誘電率異方性Δεが負であるネマチック液晶組成物100質量部に対し、下記一般式(I)で表される重合性化合物を0.01〜3質量部含有させてなる液晶組成物。


(式中、C1、C2及びC3は、それぞれ独立に1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基又はナフタレン−2,6−ジイル基を表し、これらの環の水素原子は、C1〜3アルキル基、C1〜3アルコキシ基、C1〜3のアシル基、シアノ基又はハロゲン原子で置換されていてもよく、M1及びM2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、Z1は−O−CO−、−CO−O−等であり、Z2は直接結合、−O−CO−、−CO−O−等であり、qは0又は1を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性基として(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物を、特定の液晶組成物に添加してなる液晶組成物、及び該液晶組成物を基板で挟持して作製された電気光学表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶化合物の特性である光学(屈折率)異方性(Δn)(以下、単に「Δn」ということがある)や誘電率異方性(Δε)(以下、単に「Δε」ということがある)を利用した液晶表示素子は、これまで多数作られており、時計を始め、電卓、各種測定機器、自動車用パネル、ワープロ、電子手帳、携帯電話、プリンター、コンピューター、テレビ等に広く利用され、需要も年々高くなってきている。液晶化合物には固体相と液体相との中間に位置する固有の液晶相があり、その相形態はネマチック相、スメクチック相及びコレステリック相に大別されるが、これらのうち、表示素子用にはネマチック相が現在最も広く利用されている。また、液晶表示素子に応用されている方式のうち、表示方式としては、その代表的なものにTN(捩れネマチック)型、STN(超捩れネマチック)型、DS(動的光散乱)型、GH(ゲスト・ホスト)型、IPS(インプレーンスイッチング)型、OCB(光学補償複屈折)型、ECB(電圧制御複屈折)型、VA(垂直配向)型、CSH(カラースーパーホメオトロピック)型、あるいはFLC(強誘電性液晶)等を挙げることができる。また、駆動方式としては、従来のスタティック駆動からマルチプレックス駆動が一般的になり、単純マトリックス方式、最近ではTFT(薄膜トランジスタ)やMIMにより駆動されるアクティブマトリックス(AM)方式が主流となっている。
【0003】
従来、AM方式の液晶ディスプレイとしては、誘電率異方性(Δε)が正の液晶材料を、基板面に水平に、かつ対向する基板間で90度捻れるように配向させたTN型の液晶表示装置が主流であった。しかしながら、このTN型は視野角が狭いという問題点を有しており、広視野角化に向けたさまざまな検討が行われてきた。
【0004】
このTN型に変わる方式として、VA型、MVA型、PVA型が開発され、大幅に視野角特性を改善することに成功している。これらは、誘電率異方性が負の液晶材料を2つの基板間に垂直配向させ、かつ基板表面に設けた突起やスリットにより電圧印加時の液晶分子の傾斜方向を規制している方式である。また、最近では、例えば特許文献1〜3に記載されているように、光又は熱により重合するモノマーやオリゴマー等を含有する液晶材料を基板間に封止し、液晶層に印加する電圧を調整しながら重合性成分を重合して液晶の配向方向を決定する液晶表示装置等も提案され、PS(高分子安定化)型やPSA(高分子安定化配向)型の液晶ディスプレイと呼ばれている。PS(A)の技術はMVA等の液晶表示装置における光透過率と応答速度の間にあるトレードオフを改善するためPSA−VA型(又はPS−VA型)として、開発が進められている(特許文献1〜4等参照)。
【0005】
PSA−VA型液晶ディスプレイでは、電圧印加した状態で重合性化合物を重合する。その重合体がMVA型における突起の役割を果たし、電圧印加時の分子傾斜方向を規制する。したがって分子配向領域の分割化を行うことにより、MVA型等と同様に視野角を広げることが可能である。またMVA型では、その突起のため入射光に対する透明性が低下し、輝度・コントラストの改善が望まれていたが、PSA型では突起が不要となるため、それらの特性が向上し、加えて製造工程の簡略化が可能となる。PSA型では重合性化合物の傾きを保持することが重要であり、そのためには高い反応性が求められている。しかしながら、液晶性の重合性化合物では電圧印加時に液晶組成物と同様の傾きが容易に得られるが、反応性が低かったり、溶解度が低いため液晶組成物中に析出してしまう等の問題があった。また、重合性基の反応性が高かったとしても、重合物が液晶組成物中で動くことでVTシフト(電圧に対する透過率挙動の変化)が起こり、液晶表示素子の信頼性を低下させるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−307720号公報
【特許文献2】特開2008−116931号公報
【特許文献3】特開2009−132718号公報
【特許文献4】国際公開第2009/104468号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、重合性化合物を含有する液晶組成物において、析出物が発生せず、重合性化合物の反応性が高く、重合後の液晶表示素子の信頼性が高い液晶組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、誘電率異方性(Δε)が負であるネマチック液晶組成物100質量部に対し、下記一般式(I)で表される重合性化合物を0.01〜3質量部含有させてなる液晶組成物を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
【化1】

(式中、C1、C2及びC3は、それぞれ独立に、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基又はナフタレン−2,6−ジイル基を表し、これらの環の水素原子は、炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数1〜3のアルコキシ基、炭素原子数1〜3のアシル基、シアノ基又はハロゲン原子で置換されていてもよく、
1及びM2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、
1は、−O−CO−、−CO−O−、−L1−、−L1O−、−L1O−CO−、−L1CO−O−、−OL1−、−O−COL1−又は−CO−OL1−であり、
2は、直接結合、−O−CO−、−CO−O−、−L1−、−L1O−、−L1O−CO−、−L1CO−O−、−OL1−、−O−COL1−又は−CO−OL1−であり、
1に含まれるL1及びZ2に含まれるL1は、それぞれ独立に、分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し、該アルキレン基は酸素原子で中断されてもよく、該中断は酸素原子が隣り合わず、
qは、0又は1を表す。)
【0010】
また、本発明は、上記液晶組成物を、少なくとも一方の基板上に、液晶分子に電圧を印加するための電極を備えた一対の基板で挟持した後、該液晶組成物にエネルギー線を照射して、該液晶組成物が含有する上記一般式(I)で表される重合性化合物を重合させてなる電気光学表示素子を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液晶組成物は、含まれる重合性化合物の析出が発生しにくく、紫外線等のエネルギー線の照射に対し高い反応性を有する。また、エネルギー線照射後においては、重合性化合物から形成された重合物が液晶組成物中で動きにくいため、液晶表示素子の信頼性が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について、その好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0013】
本発明の液晶組成物は、誘電率異方性(Δε)が負であるネマチック液晶組成物100質量部に対して、上記一般式(I)で表される重合性化合物を0.01〜3質量部含有するものであり、該ネマチック液晶組成物100質量部に対して、該重合性化合物を0.01〜2質量部含有することが好ましい。該重合性化合物が0.01質量部未満になると応答速度が遅くなったり、上記一般式(I)で表される重合性化合物が液晶組成物中で傾きを保持できなくなり、3質量部を超えると溶解性が悪くなる。さらに、該ネマチック液晶組成物100質量部に対して、該重合性化合物が0.05〜1質量部であると、電圧保持率が特に良好であるためより好ましい。
【0014】
上記一般式(I)中のC1、C2及びC3で表される環の水素原子を置換してもよい炭素原子数1〜3のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルが挙げられ、炭素原子数1〜3のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシが挙げられ、炭素原子数1〜3のアシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニルが挙げられ、上記一般式(I)中のC1、C2及びC3で表される環の水素原子を置換してもよいハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0015】
上記一般式(I)中のL1で表される分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ブタン−1,3−ジイル、2−メチルプロパン−1,3−ジイル、2−メチルブタン−1,3−ジイル、ペンタン−2,4−ジイル、ペンタン−1,4−ジイル、3−メチルブタン−1,4−ジイル、2−メチルペンタン−1,4−ジイル、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン等が挙げられる。
【0016】
上記一般式(I)で表される重合性化合物において、C1、C2及びC3が有する水素原子の少なくとも一つが炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数1〜3のアルコキシ基、炭素原子数1〜3のアシル基、シアノ基又はハロゲン原子で置換されている化合物;M1及びM2がメチル基である化合物;C1、C2及びC3の少なくとも一つがナフタレン環である化合物は、反応性がより高いため好ましい。とりわけ、C1、C2及びC3が有する水素原子の少なくとも一つが炭素原子数1〜3のアルキル基又は炭素原子数1〜3のアルコキシ基で置換されている化合物;M1及びM2がメチル基である化合物;C1、C2及びC3の少なくとも一つがナフタレン環である化合物は、反応性が特に高いため、より好ましい。Z1が−O−CO−又は−CO−O−であり、qが0であるものは、溶解性に特に優れるため好ましい。
【0017】
上記一般式(I)で表される重合性化合物のより具体的な化合物としては、特に、下記化合物No.1〜No.25が挙げられる。
【0018】
【化2】

【0019】
【化3】

【0020】
上記一般式(I)で表される重合性化合物は、その製造方法には特に制限はなく、周知の反応を適宜応用して製造することができる。例えば、国際公開第2006/049111号、特開2008−179654号公報等に記載の手順で製造可能である。
【0021】
本発明の液晶組成物には、重合性官能基を有する化合物として上記一般式(I)で表される重合性化合物に加えてその他の重合性化合物を用いることが出来る。該その他の重合性化合物としては、通常一般に使用されるものを用いることができ、その具体例としては、特に制限するものではないが、特開2005−15473号公報の段落〔0172〕〜〔0314〕に挙げられる化合物、又は、以下に示す化合物等が挙げられる。
尚、該その他の重合性化合物は上記一般式(I)で表される重合性化合物に対して0〜95質量%含有させることができ、好ましくは0〜70質量%であり、さらに好ましくは0〜50質量%である。95%以上含有させると析出物が発生したり、VTシフトが大きくなるため好ましくない。
【0022】
【化4】

【0023】
【化5】

【0024】
【化6】

【0025】
【化7】

【0026】
【化8】

【0027】
【化9】

【0028】
【化10】

【0029】
【化11】

【0030】
【化12】

【0031】
また、本発明に用いられる誘電率異方性(Δε)が負である上記ネマチック液晶組成物としては、公知の液晶化合物等を適宜用いて誘電率異方性(Δε)が負となるように調製したものを用いることができるが、下記一般式(II)で表される液晶化合物を30〜100質量%含有するものが、液晶表示特性が特に優れるため望ましい。下記一般式(II)で表される液晶化合物は、一種のみで用いてもよく二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
【化13】

(式中、環B1、B2、B3及びB4は、それぞれ独立に、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は2,5−インダニレン基を表し、これらの環の水素原子は、炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数1〜3のアルコキシ基、塩素原子又はフッ素原子で置換されていてもよく、これらの環中の−CH=は、−N=で置換されていてもよく、これらの環中の−CH2−は、−S−、−N=又は−O−で置換されていてもよく、環B3及びB4の少なくとも一つの環の二つ以上の水素原子が塩素原子、フッ素原子、−CF3、−OCF3又は−OCF2Hで置換されており、これらの置換される基は1種でも2種以上でもよく、
1、Y2及びY3は、それぞれ独立に、直接結合、−CH2−CH2−、−CF2−CF2−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CH2−O−、−O−CH2−、−CF2−O−、−O−CF2−、−CH2−S−、−S−CH2−、−CF2−S−、−S−CF2−、−O−CF2−C24−、−C24−CF2−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CH2−CH2−CO−O−、−O−CO−CH2−CH2−又は−C≡C−を表し、
3及びR4は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基又は炭素原子数2〜6のアルケニル基を表し、
j、k及びmは、それぞれ独立に、0又は1であり、かつj+k+m≧1であり、nは0又は1である。)
【0033】
上記一般式(II)中のB1、B2、B3及びB4で表される環の水素原子を置換してもよい炭素原子数1〜3のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルが挙げられ、炭素原子数1〜3のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシが挙げられる。
【0034】
上記一般式(II)中のR3及びR4で表される炭素原子数1〜6のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル等が挙げられ、上記一般式(II)中のR3及びR4で表される炭素原子数2〜6のアルケニル基としては、ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、2−プロペニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、イソブテニル、3−ペンテニル、4−ヘキセニル等が挙げられる。
【0035】
本発明において、上記一般式(II)で表される液晶化合物の中でも、下記一般式(III)で表される化合物を含有する上記ネマチック液晶組成物を用いると、液晶表示特性が特に優れるため好ましい。
【0036】
【化14】

(式中、環B1、B2、Y1、Y2、Y3、R3、R4、j、k、m及びnは上記一般式(II)と同じであり、E1、E2、E3及びE4は、水素原子、塩素原子、フッ素原子、−CF3、−OCF3又は−OCF2Hを表し、E1とE2、E3とE4の組み合わせのうち、少なくとも一組が水素原子以外からなる組み合わせである。)
【0037】
さらに、本発明において、上記一般式(III)におけるE1、E2、E3及びE4が水素原子又はフッ素原子である液晶化合物(即ち、E1とE2、E3とE4の組み合わせのうち、一方の組み合わせはフッ素原子のみからなり、他方の組み合わせは水素原子のみからなるか、又は両方の組み合わせがフッ素原子のみからなる液晶化合物)を含有する上記ネマチック液晶組成物を用いると、応答速度等の表示特性及び信頼性がとりわけ優れるため好ましい。また、本発明において、上記一般式(III)におけるE3及びE4がフッ素原子であり、Y2が直接結合であり、kが1であり、mが0である液晶化合物を含有する上記ネマチック液晶組成物を用いると、応答速度等の表示特性及び信頼性がさらに一層優れるため、より好ましい。
【0038】
上記一般式(II)で表される化合物の具体例としては、以下に示す構造の化合物が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物により制限を受けるものではない。尚、以下に示す化学式中、R13は、炭素原子数2〜5のアルキル基を表し、R14は、炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。
【0039】
【化15】

【0040】
【化16】

【0041】
【化17】

【0042】
【化18】

【0043】
【化19】

【0044】
これらの中でも、以下の化合物が好ましく用いられる。尚、以下に示す化合物は、一般式(III)で表される液晶化合物に包含されるものである。
【0045】
【化20】

(式中、R23は、炭素原子数2〜5のアルキル基を表し、R24は、炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。)
【0046】
本発明に用いられる誘電率異方性(Δε)が負である上記ネマチック液晶組成物として、さらに下記一般式(IV)で表される液晶化合物を含有するものを用いると、液晶表示特性がさらに一層優れるため好ましい。上記ネマチック液晶組成物におけるその含有量は好ましくは5〜50質量%であり、さらに好ましくは10〜50質量%である。5質量%未満であると使用効果が乏しく、50質量%を超えて使用すると電圧保持率が低下しやすい。
【0047】
【化21】

(式中、環A1、A2及びA3は、それぞれ独立に、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又はテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表し、これらの環の水素原子は、炭素原子数1〜3のアルキル基又は炭素原子数1〜3のアルコキシ基で置換されていてもよく、これらの環中の−CH=は、−N=で置換されていてもよく、これらの環中の−CH2−は、−S−、−N=又は−O−で置換されていてもよく、
1及びX2は、それぞれ独立に、直接結合、−CH2−CH2−、−CF2−CF2−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CH2−O−、−O−CH2−、−CF2−O−、−O−CF2−又は−C≡C−を表し、
1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基又は炭素原子数2〜6のアルケニル基を表し、
g及びhは、それぞれ独立に、0又は1である。)
【0048】
上記一般式(IV)中のA1、A2及びA3で表される環の水素原子を置換してもよい炭素原子数1〜3のアルキル基及び炭素原子数1〜3のアルコキシ基としては、上記一般式(II)中のB1、B2、B3及びB4で表される環の水素原子を置換してもよい炭素原子数1〜3のアルキル基及び炭素原子数1〜3のアルコキシ基で例示したものが挙げられる。
【0049】
上記一般式(IV)中のR1及びR2で表される炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基としては、上記一般式(II)中のR3及びR4で表される炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基として例示したものが挙げられる。
【0050】
上記一般式(IV)で表される液晶化合物の具体例としては、以下に示す構造の化合物が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物により制限を受けるものではない。尚、以下に示す化学式中、R11及びR12は、炭素原子数1〜6のアルキル基又は炭素原子数2〜6のアルケニル基を表す。
【0051】
【化22】

【0052】
これらの中でも、以下の化合物が好ましく用いられる。
【0053】
【化23】

(式中、R21及びR22は、炭素原子数2〜5のアルキル基又は炭素原子数1〜6のアルケニル基を表す。)
【0054】
本発明の液晶組成物に用いる上記ネマチック液晶組成物には、誘電率異方性(Δε)が負となる範囲で、その他にも、通常一般に使用される液晶化合物を使用することができ、該液晶化合物の具体例としては、特に制限するものではないが、例えば、下記の各化合物が挙げられる。尚、以下の化学式中、W1は、水素原子、又は分岐を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルキニル基、アルキニルオキシ基、アルコキシアルキル基、アルカノイルオキシ基若しくはアルコキシカルボニル基を表し、これらはハロゲン原子、シアノ基等で置換されていてもよく、W2は、シアノ基、ハロゲン原子、又はW1で表される基を示し、W3、W4及びW5は、水素原子、ハロゲン原子又はシアノ基を示す。ただし、前記一般式(II)及び(IV)に該当する化合物を除く。
【0055】
【化24】

【0056】
【化25】

【0057】
【化26】

【0058】
また、本発明の液晶組成物には、さらに光重合開始剤を添加して使用することもできる。この光重合開始剤としては、従来既知の化合物を用いることが可能であり、例えば、ベンゾインブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール等のベンジルケタール類;1−ヒドロキシ−1−ベンゾイルシクロヘキサン、2−ヒドロキシ−2−ベンゾイルプロパン、2−ヒドロキシ−2−(4’−イソプロピル)ベンゾイルプロパン等のα−ヒドロキシアセトフェノン類;4−ブチルベンゾイルトリクロロメタン、4−フェノキシベンゾイルジクロロメタン等のクロロアセトフェノン類;1−ベンジル−1−ジメチルアミノ−1−(4’−モルホリノベンゾイル)プロパン、2−モルホリル−2−(4’−メチルメルカプト)ベンゾイルプロパン、9−n−ブチル−3,6−ビス(2’−モルホリノイソブチロイル)カルバゾール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等のα−アミノアセトフェノン類;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド類;ベンジル、ベンゾイル蟻酸メチル等のα−ジカルボニル類;p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ナフチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−s−トリアジン等のトリアジン類;特開2000−80068号公報、特開2001−233842号公報、特開2005−97141号公報、特表2006−516246号公報、特許第3860170号公報、特許第3798008号公報、国際公開第2006/018973号に記載の化合物等のα−アシルオキシムエステル類;過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、エチルアントラキノン、1,7−ビス(9’−アクリジニル)ヘプタン、チオキサントン、1−クロル−4−プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、フェニルビフェニルケトン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、チオキサントン/アミン等が挙げられる。これらの中でも、ベンゾインエーテル類、ベンジルケタール類、α−ヒドロキシアセトフェノン類及びα−アミノアセトフェノン類が好ましい。
【0059】
また、上記光重合開始剤と増感剤との組合せも好ましく使用することができる。該増感剤としては、例えば、チオキサントン、フェノチアジン、クロロチオキサントン、キサントン、アントラセン、ジフェニルアントラセン、ルプレン等が挙げられる。
上記光重合開始剤及び/又は上記増感剤を添加する場合、それらの添加量は、合計で、上記一般式(I)で表される重合性化合物及びその他の重合性化合物の合計100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下がさらに好ましく、0.1〜3質量部の範囲内がより好ましい。
【0060】
また、本発明の液晶組成物には、必要に応じて添加物をさらに含有させてもよい。液晶組成物の特性を調整するための添加物としては、例えば、保存安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、無機物及び有機物等の微粒子化物、並びにポリマー等の機能性化合物が挙げられる。
【0061】
上記保存安定剤は、液晶組成物の保存安定性を向上させる効果を付与することができる。使用できる保存安定剤としては、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、2−ナフチルアミン類、2−ヒドロキシナフタレン類等が挙げられる。これらを添加する場合は、上記一般式(I)で表される重合性化合物及びその他の重合性化合物の合計100質量部に対して、1質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下が特に好ましい。
【0062】
上記酸化防止剤としては、特に制限がなく公知の化合物を使用することができ、例えば、ヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、トリフェニルホスファイト、トリアルキルホスファイト等が挙げられる。
【0063】
上記紫外線吸収剤としては、特に制限がなく公知の化合物を使用することができ、例えば、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物又はニッケル錯塩系化合物等によって紫外線吸収能をもたせたものを用いることができる。
【0064】
本発明の液晶組成物に必要に応じて含有させる上記添加物は、特に制限無く、作製される重合体の特性を損なわない範囲で適宜使用することができるが、好ましくは、誘電率異方性(Δε)が負である上記ネマチック液晶組成物、上記一般式(I)で表される重合性化合物及びその他の重合性化合物の合計量100質量部に対して、全任意成分の合計で好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下となるようにする。
【0065】
本発明の液晶組成物は、光、電磁波又は熱を用いる公知の方法を適用して上記重合性化合物を重合させて用いられる。上記光の好ましい種類は、紫外線、可視光線、赤外線等である。電子線、X線等の電磁波を用いてもよい。通常は、紫外線又は可視光線が好ましい。好ましい波長の範囲は150〜500nmである。さらに好ましい範囲は250〜450nmであり、最も好ましい範囲は300〜400nmである。光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)等が挙げられるが、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプが好ましく使用することができる。光源からの光はそのまま液晶組成物に照射してもよく、フィルターによって選択した特定の波長(又は特定の波長領域)を液晶組成物に照射してもよい。好ましい照射エネルギー密度は、10〜50000mJ/cm2であり、さらに好ましい範囲は10〜20000mJ/cm2である。好ましい照度は0.1〜5000mW/cm2であり、さらに好ましい照度は1〜2000mW/cm2である。露光量が少ないと重合が不十分となる恐れがあり、露光量が多いと電圧保持率(VHR)が低下する恐れがある。
【0066】
次に、本発明の電気光学表示素子について説明する。本発明の電気光学表示素子は、本発明の液晶組成物を、少なくとも一方の基板上に、液晶分子に電圧を印加するための電極を備えた一対の基板で挟持した後、紫外線等のエネルギー線照射により、上記一般式(I)で表される重合性化合物を重合して作製されたものである。
【0067】
上記基板としては、特に制限はなく、従来から電気光学表示素子に用いられているものを用いることができ、目的の駆動方式及び表示方式に適したものを用いればよい。上記エネルギー線としては、紫外線のほかに、上述の光、電磁波又は熱によるものが挙げられる。
【0068】
本発明の電気光学表示素子は、AM方式、パッシブマトリクス(PM)方式のいずれで駆動をしてもよい。AM方式又はPM方式で駆動する液晶表示素子は、反射型、透過型、半透過型、いずれの液晶ディスプレイ等にも適用ができる。
【0069】
また、本発明の電気光学表示素子は、導電剤を添加した液晶組成物を用いたDS(dynamic scattering)モード素子や、液晶組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)素子や、液晶組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)素子、例えばPN(polymer network)素子としても使用できる。
【0070】
本発明の液晶組成物は上述のような特性を有するので、中でも負の誘電率異方性を利用した表示モード、例えば、VAモード、IPSモード等で表示するAM方式の液晶表示素子に好適に使用でき、特に、VAモードで表示するAM方式の液晶表示素子に好適に使用できる。
【0071】
VAモード等で表示する液晶表示素子においては、電場の方向は、液晶層に対して垂直である。一方、IPSモード等で表示する液晶表示素子においては、電場の方向は、液晶層に対して平行である。VAモードで表示する液晶表示素子の構造は、例えば、K. Ohmuro, S. Kataoka, T. Sasaki and Y. Koike, SID ’97 Digest of Technical Papers, 28, 845 (1997)に報告されており、IPSモードで表示する液晶表示素子の構造は、例えば、国際公開第91/10936号(ファミリー:US5576867)に報告されている。
【0072】
本発明の液晶組成物を用いてなる電気光学表示素子は、時計、電卓、測定器、自動車用計器、複写機、カメラ、OA機器、PDA、ノートパソコン、モニター、テレビ、携帯電話、調光窓、光シャッタ、偏光交換素子等の用途に使用することができるが、特にその特性から、大型なPDA、ノートパソコン、モニター、テレビ用途に好適に使用される。
【実施例】
【0073】
以下、実施例等を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等により限定されるものではない。
【0074】
下記参考例においては、Δεが負である本発明に係るネマチック液晶組成物を作製し、下記合成例1及び2においては、上記一般式(I)で表される重合性化合物を合成した。
下記実施例1〜2及び比較例1〜2では、本発明に係る重合性化合物又は比較用重合性化合物を、本発明に係るネマチック液晶組成物に配合して、重合性化合物を含有する液晶組成物(以下、重合性液晶組成物ともいう)を作製し、該重合性液晶組成物の溶解性、配向性、重合性化合物の反応率を比較評価した。
下記実施例3及び比較例3では、本発明に係る重合性化合物又は比較用重合性化合物を、本発明に係るネマチック液晶組成物に配合して、重合性液晶組成物を作製し、該重合性液晶組成物の配向安定性(VTシフト)を比較評価した。
【0075】
[参考例]
液晶化合物No.1〜No.10を下記の配合(合計100質量部)に従って混合して、液晶組成物No.1を作成した。なお、液晶化合物No.1〜No.4は上記一般式(IV)に該当する化合物であり、液晶化合物No.5〜No.10は上記一般式(II)に該当する化合物である。
【0076】
【化27】

【0077】
[合成例1]化合物No.6の合成
下記反応式1に従って、以下の手順で化合物No.6を合成した。
【0078】
【化28−1】

【0079】
滴下ロートに、原料1の4.82g(18.8mmol)、トリエチルアミン2.12g(21mmol)、3,5−ジブチル−4−ヒドロキシトルエン1mg及びテトラヒドロフラン7.14gの混合溶液を調製した。別途200ml反応フラスコに、メシルクロライド2.44g(21mmol)、テトラヒドロフラン7.14g仕込み、撹拌させながら窒素気流下で冷却(−30℃)した後、そこへ上記の滴下ロートに調製した混合溶液を滴下した。1.5時間撹拌後に、ジメチルアミノピリジン21mg(0.17mmol)、トリエチルアミン2.12g(21mmol)、原料2の3.05g(17.1mmol)及びテトラヒドロフラン14.28gの混合溶液を滴下した。2時間撹拌後に室温まで昇温し、10時間撹拌を行った。0.1M−塩酸及び酢酸エチルを加え油水分離による水洗を4回行った。得られた有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥後、濾別し脱溶媒した。得られた抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル=10/1)、活性炭処理及び晶析で精製し、目的物を収量2.9g(収率40.7%)で得た。得られた物質が目的の化合物No.6であることは1H−NMR及びATR−IRで確認した。また、得られた化合物No.6の相転移挙動をDSCで測定した。結果を以下に示す。
【0080】
1H−NMR[CDCl3]:ケミカルシフトppm(多重度;プロトン数)>
2.1(d;6H),5.8(d;2H),6.4(d;2H),7.1−7.2(m;2H),7.2−7.3(m;2H),7.4(m;1H),7.7(d;1H),7.9−8.0(d;1H),8.0−8.1(d;1H),8.2−8.3(d;1H)、8.8(s;1H)
<IR[ATR](cm-1)>
435,452,480,497,524,608,634,704,741,764,791,806,824,835,857,887,902,918,1005,1079,1092,1118,1140,1155,1186,1235,1272,1298,1320,1377,1405,1474,1507,1635,1723,2925,2986,3060
【0081】
【化28−2】

【0082】
[合成例2]化合物No.7の合成
下記反応式2に従って、以下の手順で化合物No.7を合成した。
【0083】
【化29−1】

【0084】
100ml反応フラスコに窒素気流下、原料3の5.0g(12.8mmol)、トリエチルアミン1.43g及びテトラヒドロフラン30gを仕込み、撹拌しながら−30℃まで冷却した。その反応溶液にメタクリル酸クロリド1.47g(14.1mmol)を滴下した。滴下終了後室温まで昇温し1時間攪拌した。0.1M−塩酸及び酢酸エチルを加え油水分離後、水洗を3回行った。得られた有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥後、濾別し、脱溶媒を行った。得られた抽出物をカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル=10/1)、活性炭処理及び晶析により精製し、目的物を収量2.4g(収率40.9%)で得た。得られた物質が目的の化合物No.7であることは1H−NMR及びFT−IRで確認した。また、得られた化合物No.7の相転移挙動をDSCで測定した。結果を以下に示す。
【0085】
1H−NMR[CDCl3]:ケミカルシフトppm(多重度;プロトン数)>
0.9(t;3H),1.7(q;2H),2.1(d;6H)2.6(t;2H),5.7(d;2H),6.4(d;2H),7.1(m;2H),7.2(d;1H),7.4(d;1H),7.7(s;1H),7.9(d;1H),8.0(d;1H),8.2(d;1H),8.8(s;1H)
<IR[ATR](cm-1)>
453,482,570,604,637,744,766,812,893,904,921,950,1002,1079,1114,1138,1150,1191,1244,1268,1294,1319,1376,1406,1476,1492,1633,1725,2871,2926,2959
【0086】
【化29−2】

【0087】
以上の参考例で得られた液晶組成物No.1、合成例1で得られた化合物No.6及び合成例2で得られた化合物No.7、並びに下記に示す比較化合物No.1及びNo.2を用い、以下の実施例及び比較例を行なった。
【0088】
【化30】

【0089】
[実施例1〜2及び比較例1〜2]
液晶組成物No.1の100質量部に対し、〔表1〕に示す重合性化合物を0.5質量部加え、加温して溶解を確認した後、室温まで冷却して重合性液晶組成物を得た。得られた重合性液晶組成物について、下記試験方法に従って、溶解性、配向性及び反応率の各試験を行った。それらの結果を〔表1〕に示す。
【0090】
(試験方法)
<溶解性>
重合性液晶組成物をさらに1日室温放置後、析出の有無を目視で確認し、析出の無いものを○、析出の有るものを×とした。
<配向性>
重合性液晶組成物を液晶評価用テストセル(セル厚5μm、電極面積8mm×8mm、配向膜JALS−2096、ラビングなし)に注入し、注入口を封止剤で封止した。電圧印加しない状態で高圧水銀ランプ(照度40mW/cm2、光量20J/cm2)にてエネルギー線照射した。照射後の液晶評価用テストセルについて、偏光顕微観察(クロスニコル下にて電圧OFF時の配向状態)を目視で行い、配向性を確認し、配向が良好だったものを○、配向が乱れていたものを×とした。
<反応率>
配向性の試験で用いた液晶評価用テストセルを解体し、液晶組成物をアセトニトリルで抽出した。抽出物をHPLCで分析し、重合性化合物の残量から反応率を算出した。
【0091】
【表1】

【0092】
表1の結果の通り、上記一般式(I)で表される重合性化合物を含有する液晶組成物は、溶解性、配向性及び反応率が良好であった。尚、比較化合物No.2を含有する液晶組成物は、室温で析出があったため、配向性及び反応率の試験は出来なかった。
【0093】
[実施例3及び比較例3]配向安定性(VTシフト)
液晶組成物No.1の100質量部に対し、〔表2〕に示す重合性化合物を0.5質量部加え、加温して溶解を確認した後、室温まで冷却して重合性液晶組成物を得た。
得られた重合性液晶組成物を液晶評価用テストセル(セル厚5μm、電極面積8mm×8mm、配向膜JALS−2096、アンチパラレルラビング)に注入し、電圧印加しない状態で高圧水銀ランプ(照度40mW/cm2、光量20J/cm2)にてエネルギー線照射した。テストセルをエージング(AC矩形波、10V、30Hz)した後、電圧−透過率特性(VT特性)を測定して初期値とした。テストセルにAC矩形波、10V、30Hzの条件でストレスを40時間、110時間与えた後、VT特性を測定して初期値との差を調べた。VTシフトは、測定したVT特性のV10、V50、V90における変化を平均して求めた。結果を〔表2〕に示す。
【0094】
【表2】

【0095】
表2の結果から、上記一般式(I)で表される重合性化合物を用いて固定化された液晶表示素子は配向が安定していることが明らかである。
【0096】
以上の実施例及び比較例より、本発明の液晶組成物は、析出物が発生し難く、また、含有する重合性化合物の重合性基の反応性が高く、電気的ストレスに対しても耐久性に優れ、固定化された重合性化合物が液晶組成物中で動きにくいため、コントラストの低下が抑制された液晶表示素子を与え得ることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電率異方性(Δε)が負であるネマチック液晶組成物100質量部に対し、下記一般式(I)で表される重合性化合物を0.01〜3質量部含有させてなる液晶組成物。
【化1】

(式中、C1、C2及びC3は、それぞれ独立に、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基又はナフタレン−2,6−ジイル基を表し、これらの環の水素原子は、炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数1〜3のアルコキシ基、炭素原子数1〜3のアシル基、シアノ基又はハロゲン原子で置換されていてもよく、
1及びM2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、
1は、−O−CO−、−CO−O−、−L1−、−L1O−、−L1O−CO−、−L1CO−O−、−OL1−、−O−COL1−又は−CO−OL1−であり、
2は、直接結合、−O−CO−、−CO−O−、−L1−、−L1O−、−L1O−CO−、−L1CO−O−、−OL1−、−O−COL1−又は−CO−OL1−であり、
1に含まれるL1及びZ2に含まれるL1は、それぞれ独立に、分岐を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し、該アルキレン基は酸素原子で中断されてもよく、該中断は酸素原子が隣り合わず、
qは、0又は1を表す。)
【請求項2】
上記一般式(I)において、Z1が−O−CO−又は−CO−O−であり、qが0である請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
上記一般式(I)において、C1、C2及びC3の少なくとも一つがナフタレン環である請求項1又は2に記載の液晶組成物。
【請求項4】
上記一般式(I)において、C1、C2及びC3が有する少なくとも一つの水素原子が、炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数1〜3のアルコキシ基、炭素原子数1〜3のアシル基、シアノ基又はハロゲン原子で置換されている請求項1〜3のいずれかに記載の液晶組成物。
【請求項5】
上記マチック液晶組成物が、下記一般式(II)で表される液晶化合物を30〜100質量%含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載の液晶組成物。
【化2】

(式中、環B1、B2、B3及びB4は、それぞれ独立に、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は2,5−インダニレン基を表し、これらの環の水素原子は、炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数1〜3のアルコキシ基、塩素原子又はフッ素原子で置換されていてもよく、これらの環中の−CH=は、−N=で置換されていてもよく、これらの環中の−CH2−は、−S−、−N=又は−O−で置換されていてもよく、環B3及びB4の少なくとも一つの環の二つ以上の水素原子が塩素原子、フッ素原子、−CF3、−OCF3又は−OCF2Hで置換されており、これらの置換される基は1種でも2種以上でもよく、
1、Y2及びY3は、それぞれ独立に、直接結合、−CH2−CH2−、−CF2−CF2−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CH2−O−、−O−CH2−、−CF2−O−、−O−CF2−、−CH2−S−、−S−CH2−、−CF2−S−、−S−CF2−、−O−CF2−C24−、−C24−CF2−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CH2−CH2−CO−O−、−O−CO−CH2−CH2−又は−C≡C−を表し、
3及びR4は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基又は炭素原子数2〜6のアルケニル基を表し、
j、k及びmは、それぞれ独立に、0又は1であり、かつj+k+m≧1であり、nは0又は1である。)
【請求項6】
上記一般式(II)で表される液晶化合物が下記一般式(III)で表される液晶化合物である請求項5に記載の液晶組成物。
【化3】

(式中、環B1、B2、Y1、Y2、Y3、R3、R4、j、k、m及びnは上記一般式(II)と同じであり、E1、E2、E3及びE4は、水素原子、塩素原子、フッ素原子、−CF3、−OCF3又は−OCF2Hを表し、E1とE2、E3とE4の組み合わせのうち、少なくとも一組が水素原子以外からなる組み合わせである。)
【請求項7】
上記一般式(III)において、E1、E2、E3及びE4が水素原子又はフッ素原子である請求項6記載の液晶組成物。
【請求項8】
上記一般式(III)において、E3及びE4がフッ素原子であり、Y2が直接結合であり、kが1であり、mが0である請求項7記載の液晶組成物。
【請求項9】
上記ネマチック液晶組成物が、さらに下記一般式(IV)で表される液晶化合物を5〜50質量%含有するものである請求項5〜8のいずれかに記載の液晶組成物。
【化4】

(式中、環A1、A2及びA3は、それぞれ独立に、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又はテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表し、これらの環の水素原子は、炭素原子数1〜3のアルキル基又は炭素原子数1〜3のアルコキシ基で置換されていてもよく、これらの環中の−CH=は、−N=で置換されていてもよく、これらの環中の−CH2−は、−S−、−N=又は−O−で置換されていてもよく、
1及びX2は、それぞれ独立に、直接結合、−CH2−CH2−、−CF2−CF2−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CH2−O−、−O−CH2−、−CF2−O−、−O−CF2−又は−C≡C−を表し、
1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基又は炭素原子数2〜6のアルケニル基を表し、
g及びhは、それぞれ独立に、0又は1である。)
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の液晶組成物を、少なくとも一方の基板上に、液晶分子に電圧を印加するための電極を備えた一対の基板で挟持した後、該液晶組成物にエネルギー線を照射して、該液晶組成物が含有する上記一般式(I)で表される重合性化合物を重合させてなる電気光学表示素子。

【公開番号】特開2012−1623(P2012−1623A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137401(P2010−137401)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】