説明

重金属の抽出及び処置

汚染された廃棄物流または土壌若しくはスラッジを、2未満のpH及び5〜30%の固体含有量で、酸液との第一の処理段階にかける;次いで前記第一の処理段階からの液相と固相を分離する;前記第一の処理段階からの固体を、2未満のpH及び5〜30%の固体含有量で、新しい酸液と混合する;前記第二の処理段階からの液相と固相を分離する;前記第一の処理段階から分離した液体を塩基と反応させて、金属を沈殿させる;沈殿した金属を分離し、液体をプロセスで再利用するためにリサイクルする;前記第二の処理段階から分離した固体を中和して、そのpHを土壌改良剤若しくは肥料または他の別注製品の許容レベルに調節する;前記第二の段階由来の液体を、前記第一の処理段階での酸性液として使用する。スラッジが硫化水素を含む場合、この処理段階は、この硫化水素を可溶性亜硫酸または硫酸に転換させるために、ヘッドスペースにオゾン供給源を含有する閉鎖容器内で実施する。本プロセスは、廃液を出さないという利点がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水スラッジ(sewage sludge)及び汚染された土壌から重金属を分離して、土壌改良剤(soil enhancer)及び肥料を製造することに関する。
【背景技術】
【0002】
汚水スラッジは、通常、沈殿池の底に廃棄される。古いスラッジは、生分解しており、高レベルの重金属を含むことがあるため、有用な有機物含有量の観点からは殆ど価値がない。これらは通常、廃水処理の嫌気的に消化、または曝気された最終生成物である。これらのスラッジは、有用な栄養分含有量のリン酸塩及び硝酸塩を含むことが多い。新しいスラッジはまだ有機物含有量が高く、硫黄ガス、特に硫化水素を発生する。
【0003】
米国特許第3942970号及び同第5387257号は、肥料での汚水スラッジの利用について提案する。
しかしながら、殆どの関係官庁は、ヒ素、カドミウム、クロム、銅、水銀、モリブデン、ニッケル、鉛、セレン及び亜鉛などの金属が食物連鎖に入り込むため、特にこれらの金属に関して肥料及び土壌改良剤中の金属含有量の最大許容レベルを設定している。
【0004】
米国特許第5009793号は、スラッジ及び汚染された土壌からの重金属の分離に関して記載する。
米国特許第5178776号は、酸性化し、続いて処理した固体を滅菌するための加熱段階によって、スラッジから金属を除去することについて開示する。
【0005】
米国特許第5051191号は、低固体含有量で非酸化汚水スラッジを処理して、酸可溶化、続いて液相から沈殿させることによって重金属を除去して、浄化スラッジを残し、これを中和し、次いで土壌改良剤または肥料として使用することを開示する。
【0006】
米国特許出願第2002/0153307号は、スラッジ中の肥沃な元素の可溶化を減少させるために、高い酸性pHで操作することによって本プロセスを改良している。
従来プロセスに伴う問題点は、廃棄物流(ゴミの流れ:waste stream)がまだ生産されるという点である。また、浄化されたスラッジの価値は高くないので、本プロセスを実施するコストは最小に維持しなければならない。幾つかの従来プロセスでは、高価な薬品を使用し、スラッジには加熱が必要で、その全てが加工費を押し上げている。
【0007】
本発明の目的は、従来法の欠点を克服するプロセスを提供することである。
発明の詳細な説明
本目的のために、本発明は、重金属で汚染された土壌またはスラッジの浄化方法であって、
a)第一の処理段階において、2未満のpH及び5〜30%の固体含有量で、土壌またはスラッジを酸液で処理する;
b)前記第一の処理段階からの液相と固相を分離する;
c)前記第一の処理段階からの固体を、第二の処理段階において、2未満のpH及び5〜30%の固体含有量で新しい酸液と混合する;
d)前記第二の処理段階からの液相と固相とを分離する;
e)前記第一の処理段階からd)で分離した液体を処理して、金属を沈殿させる;
f)段階e)の液体から沈殿した金属を分離し、この液体をプロセスで再利用するためにリサイクルする;
g)段階d)からの固体を処理して、そのpHを土壌改良剤または肥料の許容レベルに調節する;
h)段階d)からの液体を、土壌またはスラッジの新しいバッチ用の前記第一の処理段階での酸性液として使用する、各段階を含む前記方法を提供する。
【0008】
本発明の方法は、固体重金属混合物を製造し、これは他のプロセスで使用するための金属を製造するために、更に処理することができる。本プロセスでは全ての液体が再利用されるので、廃液は出ない。段階f)からの液体は、通常、新しい酸と混合して、そのpHが2未満であるように確保する。この処理段階でpHが低いと、スラッジ中に存在するすべての病原体の99%以上を破壊するという追加の利点があり、これは新しいスラッジでは最も可能性が高い。
【0009】
使用する酸は、金属を溶解するのに好適な任意の酸であってもよく、リン酸、硝酸、クエン酸、酢酸または硫酸から選択することができる。工業的副生成物として製造された硫酸は、安価であるので好ましい。
【0010】
酸溶液の濃度は、通常0.2%〜10%、好ましくは1%であり、通常、重金属の汚染度に依存して、酸溶液10重量部対乾燥重量ベースでスラッジ1重量部以下の割合で使用する。この範囲は、酸溶液3〜6部対スラッジ1重量部であるのが好ましい。
【0011】
この二つの向流プロセスは、殆どのスラッジまたは汚染された土壌の金属含有量を許容可能なレベルに確実に減らす。
新しいスラッジは通常、金属汚染レベルが低く、単一処理段階で十分かもしれない。しかしながら、新しいスラッジは汚水処理プラントで使用される凝集剤を含むことがあるので、これらは古いスラッジよりも低い固体含有量で処理しなければならないかもしれない。この汚染度が古いスラッジのように特に高い場合には、追加の第三の処理段階が必要になることがある。
【0012】
反応容器中の滞留時間は10分から12時間を変動し得、容器を充填及び空にする時間に一部依存する。容器中の混合物は、撹拌して、スラッジと酸液とが十分に混合できるようにするのが好ましい。新しいスラッジは有機物含有量が高く、硫化水素が含まれるため、不快な臭いがあることが多い。新しいスラッジを処理するには、硫化水素及びこの溶解段階の間に発生した他のガスを収容するために閉鎖反応容器を使用するのが好ましい。この閉鎖反応器のヘッドスペースは、硫化水素を液相に溶解する亜硫酸及び硫酸に転換させるオゾン発生系を含むことができる。このオゾン発生系は、任意の慣用のオゾン発生系であってもよいが、酸素をオゾンに転換する波長を放出するひとそろいの紫外光ランプであるのが好ましい。あるいは、オゾンは外部発生器または供給源からヘッドスペース内に供給することができる。古いスラッジだけを処理する場合には、開放容器も可能である。
【0013】
古いスラッジと新しいスラッジの両方または汚染された土壌が利用可能な場合、このスラッジと土壌をブレンドして、ブレンド物を処理することができる。これによって古いスラッジと比較して汚染度レベルが低下し、且つ新しいスラッジと比較して硫化水素量が低下する。場所によっては古いスラッジと新しいスラッジの両方が利用可能であるので、スラッジをブレンドして二つの閉鎖容器の最適プラント配置を使用するのが好ましい。
【0014】
二つの分離段階b)とd)は、フィルタープレスまたは遠心分離を含む任意の好適な固液分離方法を使用することができる。
約7のpH値にするために、水酸化カリウムなどの塩基を、第一の処理段階からの二度使用した液体に添加することによって金属を沈殿させる。カリウムは植物の栄養源であるので、塩基として好ましい。沈殿した金属を、フィルタープレスによる濾過を含む任意の好適な物理的手段または遠心分離器によって分離する。金属の抽出を容易にするために、本プロセスの任意の段階で金属イオン封鎖剤及び錯形成剤を0.5重量%〜10重量%の濃度で溶液に添加することができ、これは第一処理段階で添加するのが好ましい。これらの薬剤としては、アセトジホスホン酸、アミノトリス(メチレンホスホン酸)、(2ヒドロキシエチル)イミノビス-(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス-(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラキス-(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタキス-(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミン四酢酸及びその塩が挙げられる。
【0015】
沈殿物は通常、重金属が除去された鉄-アルミニウム-リン酸塩水酸化物を含有する。リン酸塩を浄化されたスラッジに戻せるように、pHを注意深く調整することによって、場合によってはリン酸塩から金属を分離することが可能である。抽出された金属は、ドロクレート(dolocrete)などの建設用盛り土(construction fill)として被包することによって固定化することができる。場合によっては、溶解化(smelting)によって特定の金属を抽出することも経済的に実現可能である。
【0016】
段階d)から回収した固体は通常、酸性度が高すぎるので、乾燥重量ベースで粉末石灰岩5重量%〜75重量%と混合することによって中和する。この生成物は、土壌改良剤(soil amendment material)として許容可能であり、土壌改良剤、堆肥または肥料などの一連の材料を製造するためにリン酸塩または窒素肥料などの他の材料とブレンドすることができる。
【0017】
発明の詳細な説明
本発明の好ましい態様を、本発明のプラント及びプロセスの略図である図面1を参照して記載する。
【0018】
本プラントは、古いスラッジと新しいスラッジの両方と、汚染された土壌と廃棄物流を処理するのに使用するものである。
本プラントは、二つの閉鎖反応容器11及び13と、重金属沈殿タンク16と、遠心分離デカンター分離器12、14及び17と、固体ブレンド容器15とからなる。
【0019】
廃棄物処理堆積物からの古いスラッジと、処理プラントからの新しいスラッジとをブレンドし、ライン20を介して反応容器11に導入する。硫酸を含むpH1の溶液を、ライン25を介してこのタンクに導入する。約25%の固体含有量で、この溶液を約30分〜2時間、撹拌する。金属イオン封鎖剤をこの段階で添加して、重金属を分離しやすくする。次いでこのスラリーを、ライン21を介して遠心分離器12に送出し、そこで固体を分離して、ライン22を介して第二の処理容器12に送出する。
【0020】
13における処理条件は、容器11と同一である。
ブレンドしたスラッジは、酸処理の間に硫化水素を発生するので、充填及び混合段階の間は容器11及び13を閉鎖し、容器のヘッドスペースに配置された紫外線オゾン発生器31を作動させて硫化水素を水溶性の亜硫酸及び硫酸に酸化させる。ヘッドスペースにオゾン発生器を準備する別法としては、容器11及び13に隣接して外部オゾン発生器を据え付け、オゾンをヘッドスペースに配管することがある。これによって、ヘッドスペース内のランプまたは発生器を定期的に洗浄する必要性が避けられ、また、容器11及び13のヘッドスペースの酸性雰囲気によるランプまたは発生器の腐食も避けられる。もう一つの別法としては、ヘッドスペースからのガスをガス洗浄器へくみ出して、有毒ガスを除去することである。硫黄ガスを硫酸に転換して、リサイクルされた処理液の酸性度が高まるように、オゾンをヘッドスペースに導入するのが好ましい。
【0021】
遠心分離器12で分離された液体はライン26を介して重金属保持及び沈殿タンク16へ送出し、そこで水酸化カリウムを添加して、溶液のpHを調節し、金属塩として金属を沈殿させる。
【0022】
次いで沈殿タンク16からのスラリーはライン27を介して遠心分離器17へ送出し、そこで金属を残渣28として抽出し、液体はライン29を介して反応容器13にリサイクルする。新しい硫酸と補給水(make up water)をライン29に添加して、反応容器13へ添加した溶液の酸性度がpH1未満になるように確保する。プラント廃水であってもよい追加の補給水と酸は、ライン30を介して処理容器11及び13に導入する。残渣28は、リサイクルするために亜鉛金属塊(zinc matte)として販売するか、または建設用盛り土として分離することができる。
【0023】
処理したスラリーは、ライン23を介して反応チャンバ13から遠心分離器14へ出る。14で分離された液体は、ライン25を介して第一の反応容器11へ送出される。
分離器14を出る浄化された固体24は、中和ミキサー15へ送出され、そこでこれらは粉砕石灰石とブレンドされて所望の土壌pHを達成する。この生成物を、ブレンド設備32でさらにブレンドして、一連の商業的に満足できる土壌改良剤及び肥料33を提供する。
【0024】
上記記載から、当業者は、不快な臭いも廃液流もなく、汚水スラッジ又は汚染された土壌を処理する本発明が環境保全型の方法を提供することを理解するだろう。さらに、産業廃棄物または副産物として通常利用可能な硫酸、水酸化カリウム及び、粉砕石灰岩などの低コスト試薬を使用して、これらの好都合な点が提供される。
【0025】
当業者は、本発明の核となる教示から逸脱することなく、種々の態様で本発明を実施し得ることも理解するだろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明のプラント及びプロセスの略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属で汚染された土壌またはスラッジの浄化方法であって、
a)第一の処理段階において、2未満のpH及び5〜30%の固体含有量で、土壌またはスラッジを酸液で処理する;
b)前記第一の処理段階からの液相と固相とを分離する;
c)第二の処理段階において、2未満のpH及び5〜30%の固体含有量で、前記第一の処理段階からの固体と新しい酸液とを混合する;
d)前記第二の処理段階からの液相と固相を分離する;
e)前記第一の処理段階からの段階b)で分離した液体を処理して、重金属を沈殿させる;
f)沈殿した前記重金属を前記段階e)の液体から分離し、前記プロセスで使用するためにその液体をリサイクルする;
g)前記段階d)からの固体を処理して、そのpHを土壌改良剤または肥料の許容レベルに調節する;
h)前記段階d)からの液体を、土壌またはスラッジの新しいバッチ用の前記第一の処理段階の酸性液として使用する、各段階を含む前記方法。
【請求項2】
前記酸が硫酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
塩として金属を沈殿させるために塩基を添加することによって液体のpHを調節して前記重金属を沈殿させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記塩基が水酸化カリウムである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記段階d)からの固体を粉砕石灰岩とブレンドする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第一の処理段階と第二の処理段階を、閉鎖容器のヘッドスペースにオゾン供給源を含有する閉鎖容器中で実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
汚染された土壌またはスラッジを浄化するための方法であって、
a)閉鎖容器のヘッドスペースにオゾン供給源を含む閉鎖容器中、2未満のpH及び5〜30%の固体含有量で、土壌またはスラッジを酸液で処理する;
b)前記処理段階からの前記液相と固相を分離する;
c)前記処理段階からの段階b)で分離した液体を処理して、重金属を沈殿させる;
d)沈殿した金属を段階c)の液体から分離し、前記プロセスで再利用するために液体をリサイクルする;
e)段階b)からの固体を処理して、そのpHを土壌改良剤または肥料の許容レベルに調節する、各段階を含む、前記方法。
【請求項8】
前記オゾンを外部で発生させて、前記ヘッドスペースに導入する、請求項7に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−515799(P2006−515799A)
【公表日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500410(P2006−500410)
【出願日】平成16年1月19日(2004.1.19)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000059
【国際公開番号】WO2004/065028
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(505271851)オーストラリアン・オーガニック・リソーシズ・プロプライエタリー・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】