説明

量子ドット−フラーレン接合ベースの光検出器

光検出器は、1つ以上のフォトダイオードと、信号処理回路とを含む。各フォトダイオードは、透明な第1の電極、第2の電極、および第1の電極と第2の電極との間に挿入されるヘテロ接合を含む。各ヘテロ接合は、量子ドット層、および量子ドット層上に直接配置されるフラーレン層を含む。信号処理回路は、各第2の電極と信号通信状態にある。光検出器は、赤外線、可視、および/または紫外線範囲内の波長に応答してもよい。量子ドット層は、量子ドット層の電荷キャリア移動度を向上させる化学物質によって処置されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国仮特許出願第61/246,679号(名称「QUANTUM DOT−FULLERENE JUNCTION OPTOELECTRONIC」、2009年9月29日出願)および米国仮特許出願第61/312,494号(名称「QUANTUM DOT−FULLERENE JUNCTION BASED PHOTODETECTORS」、2010年3月10日出願)の利益を主張し、これらの出願の内容の両方が、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、概して、光検出器に関する。特に、本発明は、量子ドットおよびフラーレン層によって形成されるヘテロ接合を含む光検出器と、そのようなヘテロ接合および光検出器を加工するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
光電子素子は、光起電(PV)素子(太陽電池)、光検出器、および同類素子、ならびに発光ダイオード(LED)およびレーザダイオード(LD)等のエレクトロルミネセント(EL)素子を含む。PV素子は、電磁場放射がその活性層に入射すると、電力を生成する。電力は、PV素子にわたって接続される抵抗負荷(例えば、バッテリ、電力消費素子等)によって利用され得る。太陽光が、入射電磁放射源として利用されるとき、PV素子は、太陽電池と称される場合がある。光検出器は、PV素子と同様に動作するが、入射光の発生を感知する、および/または入射光の強度、減衰、あるいは伝達を測定するように構成され、したがって、種々の光学感知および撮像用途において利用されてもよい。光検出器の動作は、典型的には、外部バイアス電圧の印加を伴う一方、PV素子の動作は、そうではない。さらに、光検出器は、多くの場合、狭い範囲の波長のみ検出する一方(例えば、赤外線(IR)検出器または紫外線(UV)検出器)、PV素子は、典型的には、電力の最大生成のために可能な限りの広い範囲の波長に応答するように所望される。しかしながら、可視からIRまたはUVからIR等、広範囲の波長を検出可能な光検出器を提供することが望ましいであろう。
【0004】
光検出器、PV素子、または関連光電子素子は、一対の2つの異なる種類の半導体(例えば、n−型およびp−型材料、または電子アクセプタおよび電子ドナー材料)によって形成される接合に基づいてもよい。光子のエネルギーが、半導体のバンドギャップ値より高いとき、光子は、半導体中に吸収され、光子のエネルギーは、負電荷(電子)および正電荷(正孔)を励起させることができる。励起された電子−正孔対が、外部電気回路内で正常に利用されるために、電子および正孔は、最初に、それぞれの対向電極によって収集および抽出される前に分離されなければならない。本プロセスは、電荷分離と呼ばれ、光伝導および光起電効果が生じるために必要とされる。電荷が分離しない場合、再結合し、したがって、素子によって生成される電流応答に寄与することができない。
【0005】
光検出器、PV素子、および関連光電子素子では、重要となる性能指数は、量子効率であって、これは、外部量子効率(EQE)および内部量子効率(IQE)の両方を含む。EQEは、電流に変換される全入射光子の割合に対応し、IQEは、電流に変換されるすべての吸収された光子の割合に対応する。別の性能関連基準は、素子の信号対雑音(S/N)比であって、これは、概して、EQEを最大にし、暗電流を最小にすることによって最大にされてもよい。加えて、成分層内の電荷キャリア移動度は、素子の性能に影響を及ぼす、重要となる材料特性である。電荷キャリア移動度は、電場の存在下の電荷キャリアの速度を説明する。移動度の値が大きいほど、電荷キャリアは、より自由に移動し、より効率的に素子から抽出されることができることを意味する。これは、より低い電荷キャリア移動度を伴う素子と比較して、より高い素子性能をもたらす。関連特性は、電荷キャリアが再結合する前に、励起子(結合電子−正孔対)が進行する平均距離を説明する、励起子拡散長である。励起子が有意な役割を果たす光検出器または関連素子では、値が高いほど、光生成励起子が、再結合に先立って、電荷分離領域に到達する確率が高くなり、また、より低い励起子拡散長を伴う光検出器素子と比較して、より高い素子性能をもたらすことを意味する。移動度および励起子拡散は、別個の特性であるが、その値は、類似材料属性によって影響を受ける。例えば、欠陥、電荷捕獲サイト、および粒界はすべて、キャリア輸送を妨害し、より低い移動度ならびにより低い励起子拡散長をもたらす。向上した移動度について、本書を通して論じられるが、類似結果が、向上した励起子拡散長に対しても得られることを理解されたい。
【0006】
従来、光検出器素子および他の光電子素子は、バルク薄膜無機半導体材料を利用し、光子の吸収に応答して、電子および正孔を分離するために、p−n接合を提供していた。特に、電子的接合は、典型的には、固有のp−型ドープおよびn−型ドープシリコンの種々の組み合わせによって形成される。そのような無機半導体のための加工技法は、マイクロエレクトロニクスにおける長年にわたる経験および専門知識から導出され、周知である。シリコンベースのp−n接合から構成される検出器は、素子が小型の場合、比較的に安価であるが、コストは、ほぼ検出器の面積に比例して増加する。さらに、Siのバンドギャップは、IR感度の範囲を〜1.1μmに制限する。シリコンは、間接バンドギャップを有し、光子の比較的に非効率的吸収体であるため、波長の関数として、吸収長が広範囲に分布し、UVおよびIRにおいて同時に効率的である検出器を生産することを困難にする。インジウムガリウムヒ化物[InGaAs(x+y=1、0≦x≦1、0≦y≦1)]、ゲルマニウム(Ge)、およびシリコンゲルマニウム(SiGe)等のIII−V族材料は、検出をさらにIRに拡張するために利用されているが、より高価かつ複雑な加工問題に悩まされている。AlGaInN(x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)、SiC、およびTiO等の他の無機材料は、より効率的UV検出のために使用されているが、同様に、複雑な加工およびコスト問題に悩まされている。
【0007】
近年、有機材料(ポリマーおよび小分子)から形成される光電子素子について調査されているが、光検出器として、限られた成功に留まっている。これらの素子内の活性領域は、有機電子ドナー層および有機電子アクセプタ層によって形成される、ヘテロ接合に基づく。活性領域内に吸収される光子は、準粒子として輸送することができる束縛状態における電子−正孔対である、励起子を励起する。光生成励起子は、ヘテロ接合界面に拡散すると、分離(解離または「イオン化」)状態となる。無機PV素子および光検出器素子の場合と同様に、可能な限り多くの光生成励起子として分離し、再結合する前に、それぞれの電極において収集することが望ましい。したがって、励起子を電荷分離領域に閉じ込めるのを支援する素子構造内に層を含めることが有利となる可能性がある。これらの層はまた、1種類の電荷キャリアを一方の電極に輸送するのを支援する一方、他の電荷キャリアをブロッキングし、それによって、電荷キャリア抽出の効率を改善する役割を果たす場合がある。多くの種類の有機半導体層が、比較的に低コストで加工することができるが、ほとんどの有機半導体層は、IR光子に対して十分に敏感ではなく、これは、IR撮像用途では不利である。さらに、有機材料は、多くの場合、UV放射または熱によって劣化する傾向にある。
【0008】
さらに近年、種々の種がIR感度を呈し、その光電子特性(例えば、バンドギャップ)が、そのサイズを制御することによって調整可能であるため、量子ドット(QD)、すなわち、ナノ結晶が、光検出器において利用するために調査されている。これまで、QDは、ほとんどが、可視またはIR放出、可視またはIR吸収、あるいは赤方偏移等の具体的機能を果たす個々の層として、プロトタイプ光電子素子内で採用されていた。さらに、QDを組み込む光電子素子は、典型的には、低キャリア移動度および短拡散長を呈する。
【0009】
光検出器は、例えば、スチール写真を生成可能なデジタルカメラおよび/または観察場面からのビデオストリーム等の撮像素子の基礎を形成してもよい。そのような用途における撮像素子は、典型的には、多くの光検出器から構成され、撮像電子機器(例えば、読出チップ)に連結される、感光性焦点面アレイ(FPA)を含む。典型的デジタルカメラの光検出器は、シリコン技術に基づく。シリコンデジタルカメラは、シリコン技術改良のムーアの法則を利用することによって、低コストで顕著な性能をもたらしている。しかしながら、そのようなカメラにおける光吸収材料としてのシリコン単独の使用は、赤外線スペクトルにおけるこれらのカメラの効率的動作を制限する。したがって、シリコンは、〜1.5乃至2.5μmの波長に及ぶ、短波長赤外線(SWIR)として知られる電磁スペクトルの部分では有用ではない。SWIR帯域は、夜光および反射光を使用する撮像は、より長い熱赤外線波長に勝る利点をもたらす、暗視用途に対して着目される。同様に、例えば、InGaAs、InSb、またはHgCdTeから構成される、典型的IR敏感撮像素子は、可視およびUV範囲における撮像タスクを行うことができない。故に、昼間および夜間の撮像の両方ための多くの撮像システムにおける要件は、シリコンベースの撮像装置および別個の特殊IR撮像装置を含有する、多構成要素システムの使用をもたらしている。複数の技術を利用する必要性は、コストおよび複雑性を増加させる。さらに、SWIR撮像は、例えば、軍事偵察および商業用安全監視用途において有用であって、MWIRおよびLWIR撮像に勝る技術的利点を有すると考えられるが、したがって、これまで、従来の設計および加工アプローチと関連付けられた高コストによって、高性能軍事用途における使用が制限されてきた。加えて、入射IR放射に対して良好な感度を呈するFPAは、種々の結晶性半導体に基づいて開発されてきたが、そのようなFPAは、従来、読出チップから別個に加工されることが要求されてきた。従来、FPAおよび読出チップを別個に加工後、続いて、これらの2つの構成要素は、整合ツールおよびインジウムはんだバンプ、または他のフリップチップまたは混成技法によって、ともに結合される。これもまた、加工の複雑性および費用を増加させる。
【0010】
改良された材料特性ならびにより効率的電荷分離、より大きな電荷キャリア移動度、より長い拡散長、より高い量子効率、および所望の範囲の電磁スペクトルに調整可能な感度等の性能関連パラメータを伴う、光検出器の継続的必要性が存在する。そのような光検出器素子を加工するためのより低いコストで、より信頼性があって、より容易な方法、ならびに感知要素と信号処理電子機器の改良された統合、大面積アレイのための改良されたスケーラビリティ、および湾曲、可撓性、または折り畳み式基板への可用性の必要性も存在する。また、単一光検出器素子によるこれらの範囲内の同時検出を可能にするために、可視およびIRの両方、またはUV、可視、およびIR等、広スペクトル範囲に及ぶ感度を呈する、光検出器素子の必要性も存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
全体的または部分的に、前述の問題および/または当業者によって観察され得る他の問題を解決するために、本開示は、後述の実装において、一例として説明される、方法、プロセス、システム、装置、器具、および/または素子を提供する。
【0012】
一実装によると、光検出器は、フォトダイオードと、信号処理回路とを含む。フォトダイオードは、透明な第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に挿入される、ヘテロ接合とを含む。ヘテロ接合は、量子ドット層と、量子ドット層上に直接配置されるフラーレン層とを含む。信号処理回路は、第2の電極と連通状態にある。
【0013】
別の実装によると、光検出器は、第2の電極と信号処理回路との間に挿入される、電気絶縁層と、絶縁層を通して形成されるビア内に配置される、導電性相互接続とを含み、信号処理回路は、相互接続を通して、第2の電極と連通状態にある。光検出器はさらに、第1の電極上に配置される、封入層を含んでもよい。
【0014】
量子ドットは、可視光感光性量子ドット、赤外線感光性量子ドット、紫外線感光性量子ドット、または前述の2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0015】
別の実装によると、電子ブロッキング層は、第2の電極と量子ドット層との間に挿入される。いくつかの実装では、電子ブロッキング層は、不連続層である。
【0016】
別の実装によると、フォトダイオードは、量子ドット−フラーレン接合を含み、量子ドット層は、1x10−4V/cm−秒よりも大きい電荷キャリア移動度を呈する。
【0017】
別の実装によると、フォトダイオードは、量子ドット−フラーレン接合を含み、量子ドット層は、5x10−4V/cm−秒よりも大きい電荷キャリア移動度を呈する。
【0018】
別の実装によると、フォトダイオードは、量子ドット−フラーレン接合を含み、量子ドット層は、1x10−4V/cm−秒超乃至10V/cm−秒の範囲の電荷キャリア移動度を呈する。
【0019】
別の実装によると、フォトダイオードは、量子ドット−フラーレン接合を含み、量子ドット層は、2nm以下の粒子間間隔を有する。
【0020】
別の実装によると、正孔ブロッキング層は、第1の電極とフラーレン層との間に挿入される。
【0021】
別の実装によると、光検出器は、複数のフォトダイオードと、信号処理回路とを含む。各フォトダイオードは、透明な第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に挿入される、ヘテロ構造とを含む。各ヘテロ構造は、量子ドット層と、量子ドット層上に直接配置される、フラーレン層とを含む。信号処理回路は、各第2の電極と連通状態にある。
【0022】
一実装では、フォトダイオードは、線形アレイに配設される。別の実装では、フォトダイオードは、2次元アレイに配設される。
【0023】
別の実装によると、複数のフォトダイオードは、赤外線波長の入射光子に応答して、それぞれの信号を出力するように構成される、第1の群のフォトダイオードと、可視波長の入射光子に応答して、それぞれの信号を出力するように構成される、第2の群のフォトダイオードと、紫外線波長の入射光子に応答して、それぞれの信号を出力するように構成される、第3の群のフォトダイオードとを含む。
【0024】
別の実装によると、それぞれの第1の電極は、各ヘテロ構造と連通状態にある単一接地面として、集合的に構築される。封入層は、接地面上に配置されてもよい。
【0025】
別の実装によると、光検出器を加工するための方法が提供される。テロ構造は、第1の電極上に形成され、相互に接触する、量子ドット層と、フラーレン層とを含む。透明な第2の電極は、第1の電極と反対のヘテロ構造の面に形成される。第1の電極は、信号処理回路と連通状態にされる。
【0026】
一実装では、第1の電極は、信号処理回路に結合される。別の実装では、第1の電極は、ヘテロ構造の形成に先立って、信号処理回路上に成膜される。
【0027】
別の実装によると、電子ブロッキング層は、第1の電極上に形成され、量子ドット層は、電子ブロッキング層上に形成される。いくつかの実装では、電子ブロッキング層の有効性は、電子ブロッキング層を種々の酸化または還元雰囲気中でアニーリングする、あるいは電子ブロッキング層を酸化または還元プラズマに曝露することによって等、電子ブロッキング層を酸化または還元処置に曝すことによって改良されてもよい。
【0028】
別の実装によると、正孔ブロッキング層は、フラーレン層上に形成される。
【0029】
別の実装によると、量子ドット層を成膜後、量子ドット層は、量子ドット層の電荷キャリア移動度を増加させるように化学的に処置される。
【0030】
別の実装によると、量子ドット層は、量子ドット間の粒子間間隔を減少させる、化学物質によって処置される。いくつかの実装では、結果として生じる粒子間間隔は、2nm以下である。
【0031】
別の実装によると、量子ドット層は、量子ドット層の成膜直後の状態の厚さを減少させる、化学物質によって処置される。いくつかの実装では、厚さは、20乃至80%減少される。
【0032】
別の実装によると、電気絶縁層は、信号処理回路上に成膜され、ビアは、絶縁層を通して形成され、ビアは、導電性材料によって充填され、相互接続を形成し、第1の電極は、絶縁層上に、かつ相互接続と接触して、成膜される。
【0033】
別の実装によると、複数のフォトダイオードは、複数のそれぞれの第1の電極上に複数のヘテロ構造を形成することによって加工され、各ヘテロ構造は、相互に接触する、それぞれの量子ドット層と、それぞれのフラーレン層とを含む。透明な第2の電極は、第1の電極と反対のヘテロ構造の面に形成される。各第1の電極は、信号処理回路と連通状態にされる。透明な第2の電極は、各ヘテロ構造と連通状態にあるように形成されてもよい。
【0034】
別の実装によると、正孔ブロッキング層または励起子ブロッキング層は、フラーレン層と第1の電極との間に挿入されるように成膜される。
【0035】
別の実装によると、電子ブロッキング層または励起子ブロッキング層は、量子ドット層と第2の電極との間に挿入される。
【0036】
本発明の他の素子、装置、システム、方法、特徴、および利点は、当業者に明白である、または以下の図および発明を実施するための形態の検証によって、明白となるであろう。そのような付加的なシステム、方法、および利点はすべて、本説明内に含まれ、本発明の範囲内であって、付随の請求項によって保護されることが意図される。
【0037】
本発明は、以下の図面を参照することによって、より理解することができる。図中の構成要素は、必ずしも、正確な縮尺ではなく、代わりに、本発明の原理を例示する際、強調される。図中、同一参照番号は、異なる図を通して、対応する部品を指す。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本開示のある実装による、光検出器の実施例の断面図である。
【図2】図2は、硫化鉛量子ドットのサイズ範囲に対する波長の関数としての一式の吸収強度測定である。
【図3】図3は、本開示のある実装による、フォトダイオードのアレイを含む、光検出器の実施例の平面図である。
【図4】図4は、本開示のある実装による、フォトダイオード素子の実施例の断面図である。
【図5】図5は、本開示のある実装による、フォトダイオード素子の別の実施例の断面図である。
【図6】図6は、本開示一実装による、加工されたフォトダイオード素子の実施例の暗条件および照射条件下の電圧の関数としての電流密度の一式のプロットである。
【図7A】図7Aは、本開示に従って加工された量子ドット/フラーレンヘテロ接合を含む、複合構造のSEM画像である。
【図7B】図7Bは、図7Aに類似するSEM画像であるが、量子ドットは、本明細書に開示される技法に従って処置されている。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本開示の目的のために、ある層(または、膜、領域、基板、構成要素、素子等)が、別の層「上」またはそれを「覆って」いると言及されるとき、その層は、直接または実際に、他の層上に(または、それを覆って)存在してもよく、あるいは代替として、挿入層(例えば、バッファ層、遷移層、中間層、犠牲層、エッチング停止層、マスク、電極、相互接続、接点等)もまた、存在してもよいことを理解されたい。別の層「上に直接」存在する層は、別様に示されない限り、挿入層が存在しないことを意味する。また、ある層が、別の層「上」に(または、それを「覆って」)存在すると言及されるとき、その層は、他の層の表面全体または他の層の一部のみ被覆してもよいことを理解されたい。さらに、「上に形成される」または「上に配置される」等の用語は、材料輸送、成膜、加工、表面処置、あるいは物理的、化学的、またはイオン的結合もしくは相互作用の特定の方法に関連する何らかの制限を導入することを意図するものではないことを理解されたい。用語「間に挿入される」も同様に解釈される。
【0040】
本明細書で使用されるように、用語「光電子素子」は、概して、光/電気変換器または電気/光変換器として作用する、任意の素子を指す。故に、用語「光電子素子」は、例えば、光起電(PV)素子(例えば、太陽電池)、光検出器、熱起電電池、あるいは発光ダイオード(LED)またはレーザダイオード(LD)等のエレクトロルミネセント(EL)素子を指してもよい。PVおよび光検出器素子については、簡単に前述されており、ある光検出器素子の詳細な実施例は、後述される。一般的に、EL素子は、PVおよび光検出器素子と逆に動作する。電子および正孔は、印加されたバイアス電圧の影響下、それぞれの電極から、半導体領域中に注入される。半導体層のうちの1つは、光吸収特性ではなく、その発光特性のために選択される。注入された電子および正孔の放射再結合は、本層内に光の放出を生じさせる。PVおよび光検出器素子内で採用される同一種類の材料の多くは、同様に、EL素子内で採用されてもよいが、層厚および他のパラメータは、EL素子の異なる目標を達成するために適応されなければならない。前述等の光電子素子はさらに、2009年9月29日出願の米国暫定出願第61/246,679号に説明されており、参照することによって、全体として本明細書に組み込まれる。
【0041】
本明細書で使用されるように、用語「フラーレン」は、バックミンスターフラーレンC60、ならびにC70、C84、および類似ケージ状炭素構造等の他の形態の分子炭素を指し、より一般的には、20乃至数百個の炭素原子、すなわち、C(nは、20以上)の範囲であってもよい。フラーレンは、例えば、溶解度または分散性を改善する、あるいはフラーレンの電気特性を修飾する等の具体的目的のために所望されるように、官能化もしくは化学的に修飾されてもよい。用語「フラーレン」はまた、非炭素原子または原子群が、炭素ケージ内に封入される内包フラーレンを指してもよい。用語「フラーレン」はまた、フラーレン誘導体を指してもよい。フラーレン誘導体のいくつかの非限定的実施例は、[6,6]−フェニル−C61−酪酸メチルエステル(PCBM)およびフェニル−C61−酪酸コレステロールエステル(PCBCR)である。用語「フラーレン」はまた、フラーレンの前述の形態の混成物を指してもよい。
【0042】
本明細書で使用されるように、用語「量子ドット」または「QD」は、その中に、励起子が、量子細線(2次元においてのみの量子閉じ込め)、量子井戸(1次元寸法においてのみの量子閉じ込め)、およびバルク半導体(非閉じ込め)に区別されるように、全3つの空間次元において閉じ込められる、半導体ナノ結晶材料を指す。また、量子ドットの多くの光学、電気、および化学特性は、そのサイズに大きく依存する場合があり、故に、そのような特性は、そのサイズを制御することによって、修飾または調整されてもよい。量子ドットは、概して、粒子として特徴付けられてもよく、その形状は、球状、楕円系、または他の形状であってもよい。量子ドットの「サイズ」は、その形状の寸法特色またはその形状の近似を指してもよく、したがって、直径、主軸、主要長等であってもよい。量子ドットのサイズは、約数ナノメートルであって、すなわち、概して、1−1000nmの範囲であるが、より典型的には、1−100nm、1−20nm、または1−10nmの範囲である。複数の量子ドットまたは量子ドット集合では、量子ドットは、平均サイズを有するように特徴付けられてもよい。複数の量子ドットのサイズ分布は、単分散であってもよく、またはそうでなくてもよい。量子ドットは、コアシェル構成を有してもよく、その中で、コアおよび囲繞シェルは、固有の組成物を有してもよい。量子ドットはまた、その外側表面に付着されるリガンドを含んでもよく、または具体的目的のために、他の化学部分によって、官能化されてもよい。
【0043】
本明細書で使用されるように、用語「電子的ヘテロ接合」は、並列され、相互に直接接触する、異なる材料の2つの層を指す。フォトダイオードを形成するために利用され得る等のように、一方の層は、電子ドナーとしての役割を果たす一方、他方の層は、電子アクセプタとしての役割を果たす。用語「電子的ヘテロ接合」は、用語「光起電ヘテロ接合」を包含するだけではなく、また、1つの層が、励起子減衰または励起子のその非励起状態への復帰に応答して、光放出層としての役割を果たす、EL素子において使用され得るようなヘテロ接合も指す。
【0044】
本開示の目的のために、電磁放射のスペクトル範囲または帯域は、隣接するスペクトル範囲または帯域が、ある程度、相互に重複すると考えられ得るという理解の下、概して、以下のように見なされる:UV放射は、約10−400nmの範囲内にあると見なされてもよいが、実践的用途(真空を上回る)では、範囲は、約200−400nmである。可視放射は、約380−760nmの範囲内にあると見なされてもよい。IR放射は、約750−100,000nmの範囲内にあると見なされてもよいIR放射はまた、下位範囲の観点から検討されてもよく、その実施例は、以下のようになる。SWIR放射は、約1,000−3,000nmの範囲内にあると見なされてもよい。MWIR放射は、約3,000−5,000nmの範囲内にあると見なされてもよい。LWIR放射は、約8,000−12,000nmの範囲内にあると見なされてもよい。
【0045】
一例として後述されるように、量子ドットフォトダイオード(QDP)技術は、低コストナノ技術対応光検出器を提供するために実装される。いくつかの実装では、光検出器は、約250−2400nmの範囲のスペクトル領域に及ぶ感度を有する光を効率的に検出するように構成されてもよい。したがって、光検出器は、入射紫外線(UV)、可視、および/または赤外線(IR)電磁放射から画像を生成可能な多重スペクトル素子として構成されてもよい。いくつかの実装では、感度のスペクトル範囲は、X線エネルギーまで下がって、および/または2400nmより長いIR波長に至るまで、拡大してもよい。本明細書に教示されるような光検出器は、コスト効果的であって、大面積アレイにスケーラブルであって、可撓性基板に適用可能である。
【0046】
図1は、本開示のある実装による、光検出器100の実施例の概略断面図である。光検出器100は、概して、信号処理回路(または、電子機器)108と連通状態にあるフォトダイオード104を含む。フォトダイオード104は、概して、フォトダイオード104のための電極としての役割を果たす、2つの導電性層116、120間に挟入される、センサ層112を含む。センサ層112は、フォトダイオード104の活性または光伝導性領域として特徴付けられてもよい。すなわち、センサ層112内では、入射光子は、吸収され、励起子の生成をもたらし、励起子は、解離され、自由電子および正孔の生成をもたらし、電子および正孔は、それぞれの伝導性層120、116に輸送される。これらの目的のために、センサ層112は、1つ以上の光子吸収層と、励起子を個々の電荷キャリアに分離するために好適な1つ以上の電子的ヘテロ接合とを含む、複数の機能特異的層を含んでもよい。例示される実施例では、正孔は、この場合、アノードとして機能し、下層信号処理回路108と連通状態にある、下方導電層または電極116で収集される。電子は、この場合、カソードとして機能し、検出される入射電磁放射に曝露される光検出器100の側にあって、透明であるべきである、上方導電層または電極120で収集される。他の電極116および基板124もまた、透明であってもよい。本文脈では、用語「透明」は、所与の材料が、光検出器100によって検出されることが意図される波長を有する少なくともそれらの光子を効率的に通過することが可能であることを意味する。典型的実装では、電圧源(具体的には、図示せず)は、上方導電層120および下方導電層116と連通状態にされ、フォトダイオード104の層にわたって、電圧バイアス(ひいては、外部電場)を印加し、フォトダイオード104からの光生成された電荷の抽出を助長し、したがって、信号処理回路108による入射光子の検出を促進する。電圧源は、信号処理回路108と統合されてもよい。
【0047】
後述のある実施例では、フォトダイオード104の主要光子吸収要素は、量子ドット(QD)の1つ以上の層である。QDは、関連付けられた光検出器100が、精巧な冷却手段を必要としないように、比較的に高温で機能し、概して、低暗電流、その結果、良好な信号対雑音比を呈するため、有利である。さらに、QDは、溶液処理されたコロイドQDの実施例におけるように、比較的に低コストかつ容易に実装される処理技法を利用して生成されてもよい。さらに、QDの電気および光学特性は、合成の際、例えば、そのサイズおよび/または組成物を制御することによって調整可能である。実施例として、(Levina,L.& Sargent Edward,H.,unpublished data−PbS Nanocrystals of Varying Sizes、University of Toronto(2007)からの)図2は、硫化鉛(PbS)量子ドットのサイズ範囲に対する波長の関数としての一式の吸収強度測定である。図2に示されるように、そのサイズが増加するのに伴って、PbS QDは、より長い波長に敏感となる。したがって、QDのサイズおよび/または組成物は、所与のQD層が、着目最大波長までの光子を吸収するように選択されてもよい。加えて、同一種類(サイズ、組成物等)のQDを含有する2つ以上のQD層は、フォトダイオード104のセンサ層112内の別個の垂直レベルに提供され、着目波長に対する光伝導性応答を向上させてもよい。代替として、所与のQD層は、その特定のQD層をある範囲の波長に敏感にするように、異なるQDの混合物(組成物および/またはサイズについて異なる)を含んでもよい。例えば、単一QD層は、UV、可視、およびIR放射を検出するように構成されてもよい。加えて、または代替として、フォトダイオード104は、ある範囲の波長に敏感な1つのQD層と、1つ以上の異なる範囲の波長に敏感な1つ以上の付加的なQD層とを含んでもよい。
【0048】
後述のある実施例では、各QD層は、フラーレンの層と直接接触して形成され、電子的ヘテロ接合を形成してもよい。フラーレン層はまた、光子吸収層であってもよい。本開示における便宜上、結果として生じるQD−フラーレン二重層構造は、ヘテロ構造と称される。センサ層112は、単一QD−フラーレンヘテロ構造または一連の2つ以上の垂直に積層されたQD−フラーレンヘテロ構造を含んでもよい。2つ以上のヘテロ構造の場合、ヘテロ構造は、電荷キャリア輸送層または他の種類の介入層によって、相互に分離されてもよく、あるいは相互にQD層またはフラーレン層を共有してもよい、すなわち、一連の垂直に積層された交互QDおよびフラーレン層を備えてもよい。
【0049】
信号処理回路108は、場面を監視する、場面の画像を記録する、画像をリアルタイムで表示する等の目的のために、入射電磁放射の強度と相関され得るように、下方導電層116から信号を受信し(または、読み取り)、これらの信号を測定するように構成される、任意の回路であってもよい。信号処理回路108は、例えば、1つ以上のトランジスタ、電圧バッファ、ソースフォロアー等、1つ以上の増幅器、1つ以上のマルチプレクサおよび/または列/行セレクタ、1つ以上のアナログ/デジタル変換器、制御論理およびタイミング回路、センサデータ融合回路および他の種類の画像処理回路(例えば、光検出器によって検出される場面を表す電子的画像を構築するため)、ディスプレイインターフェース回路、ならびに他の種類のアナログおよび/またはデジタル処理回路等、光検出器100(例えば、デジタルカメラ等)を組み込む最終用途製品を実現化するために必要な任意の機能性を含んでもよい。信号処理回路108は、例えば、読出集積回路(ROIC)を含んでもよい。信号処理回路108は、バルク半導体技術等の任意の周知の技術に従って、好適な基板124上に加工されてもよく、その非限定的実施例として、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)技術、CCD(電荷結合素子)技術、およびTFT(薄膜電界効果トランジスタ)技術が挙げられる。
【0050】
次に、光検出器100を加工するための実施例について説明する。本実施例では、ROICが、任意の好適な加工技法を利用して、シリコン等の好適な基板124上に信号処理回路108を加工することによって提供される。フォトダイオード104は、別個に加工され、次いで、はんだバンプ(例えば、フリップチップ技術)または他の混成技術によって、ROICに接合されてもよい。より有利には、フォトダイオード104は、ROICを基板として利用して、下方電極層116およびフォトダイオード104の後続層をその上に成長または成膜させることによって、ROICと直接統合される。本実施例では、平坦化層128が、最初に、ROIC上に成膜され、信号処理回路108と下方電極層116との間に平滑化および/または不動態化界面を提供する。平坦化層128は、種々の酸化物および窒化物等の任意の好適な電気絶縁材料であってもよい。本明細書で使用されるように、用語「絶縁」は、従来、「絶縁」または「誘電」のいずれかとして特徴付けられていた材料を包含する。ビア132は、平坦化層128の厚さを通して形成され、それと下方電極層116からの信号通信が要求される、信号処理回路108の面積に曝露される。ビア132は、任意の好適な技法(例えば、マスキング、エッチング、リソグラフィ等)によって形成されてもよい。垂直に配向された導電性相互接続136は、任意の好適な技法に従って、金属または金属状材料でビア132を充填することによって形成される。次いで、金属化ステップが、下方電極層116が相互接続136と、その結果、信号処理回路108と連通状態となるように、平坦化層128上に下方電極層116を成膜するように行われる。次いで、センサ層112を備える1つ以上の活性ヘテロ構造および任意の他の層が、後述の技法等の任意の手段によって、下方電極層116上に成膜される。次いで、上方電極層120は、センサ層112上に成膜される。随意に、封入材料140の層が、上方電極120上に成膜され、光検出器100のための保護層としての役割を果たしてもよい。封入層140は、任意の好適な絶縁材料から構成されてもよく、本実施例の配設では、透明であるべきである。どの最終パッケージ化ステップが行われるかに応じて、封入層140は、光検出器100の両側に沿って、垂直に下方に延在する、共形層(図示せず)であってもよい。
【0051】
図1に例示される光検出器100は、単一フォトダイオード104を含む、完全光検出器であってもよい。代替として、光検出器100は、多くのフォトダイオード104を含んでもよく、その場合、図1に例示されるフォトダイオード104は、より大きなセルまたは画素の一部である、1つのセルまたは画素を表すように見なされてもよい。
【0052】
図3は、本開示のある実装による、フォトダイオード104のアレイを含む、光検出器300の実施例の平面図である。図3では、フォトダイオード104は、共通平面304上に配設されて概略的に描写される。フォトダイオード104は、線形アレイとして、すなわち、単一行または列に沿ってのみ配設されてもよい、あるいは例示される実施例におけるように、2次元アレイ(一般に、焦点面アレイまたはFPAと称される)として配設されてもよい。任意の数のフォトダイオード104が、光検出器300の所望の解像度に従って、アレイ内に提供されてもよい。列の数は、行の数と整合する必要はない、すなわち、光検出器300は、MxNアレイのフォトダイオード104を含んでもよい(式中、Mは、Nに等しくない)。さらに、アレイは、任意の形状を有してもよい(例えば、四角形、直線、多角形、円形、楕円等)。
【0053】
図3に例示されるアレイの各フォトダイオード104は、その独自の信号処理回路108、あるいはその特定のフォトダイオード104の信号出力を読み出す、または測定する、信号処理回路108の少なくともその一部を含んでもよい。アレイ内のフォトダイオード104のそれぞれの信号出力は、それぞれの信号処理回路108と統合される、または連通状態にある多の回路によって、多重化され、さらに処理されてもよい。すべての信号処理回路108は、共通基板上に同時に加工されてもよい。次いで、すべてのフォトダイオード104が、同一共通基板上に同時に加工されてもよい。各フォトダイオード104は、単一導電層(または、電極再分配層)を下層基板上に成膜し、任意の周知の手段によって、導電層をパターン化すること等によって、その独自の下方電極116を含んでもよい。センサ層112が、アレイ(または、アレイの一部)のすべてのフォトダイオード104に対して同一であるべき実装では、すべてのフォトダイオード104(または隣接するフォトダイオード104の群)に共通する単一センサ層112は、下方電極116のパターン化された層上に成膜されてもよい。この場合、各下方電極116は、その関連付けられたフォトダイオード104のサイズおよび形状を画定してもよい。そのような構成は、隣接する下方電極116間の側方間隔(例えば、数ミクロン)と、センサ層112が、側方方向に非常に低伝導性を呈するという事実に照らして、それぞれのフォトダイオード104の個々の画素化性質に悪影響を及ぼすことはなく、クロストークは、問題ではない。代替として、異なる種類のセンサ層112は、現在周知または後に開発される任意の手段によって、異なるフォトダイオード104またはフォトダイオード104群のために成膜されてもよい。個々の上方電極120は、各フォトダイオード104のために形成されてもよいが、他の実装では、上方電極120は、形成直後の状態のセンサ層112のすべてを覆って単一導電層を成膜することによって、共通透明接地面として、集合的に提供される。共通接地面の成膜後、単一封入層140の成膜が続いてもよい。
【0054】
図3に例示される多重フォトダイオード光検出器300の場合、フォトダイオード104は、本明細書に開示されるQDP技術を利用することによって、任意の所望の範囲の波長を検出するように構成されてもよい。各フォトダイオード104は、他のフォトダイオード104として、同一波長または波長範囲に敏感であってもよい。実施例として、すべてのフォトダイオード104は、同一の広範囲の波長(例えば、UV、可視、およびIR、またはUVからSWIR等)に対して敏感であってもよい。代替として、1つ以上のフォトダイオード104は、センサ層112のQD組成物および加工ステップの適切な選択を通して、または適切な光学フィルタの使用を通して、他のフォトダイオード104のものと異なる感度を有してもよい。実施例として、1つのフォトダイオード104またはフォトダイオード104群は、IR放射に敏感であってもよい一方、他のフォトダイオード104は、可視および/またはUV放射に敏感である。したがって、光検出器300のフォトダイオード104が、光検出器300の最終用途のために所望されるようなスペクトル感度の任意の組み合わせに従って構成されてもよいことは明白である。用途の一実施例では、多重スペクトル光検出器300は、デジタルカメラまたは他の種類の撮像素子内で利用されてもよく、それによって、同一デジタルカメラが、昼間および夜間撮像の両方、ならびに種々の悪環境条件下の撮像を可能にする。
【0055】
図4は、本開示のある実装による、フォトダイオード400の実施例の断面図である。いくつかの実装では、フォトダイオード400は、図1に例示されるフォトダイオード104または図3に例示されるフォトダイオード104の任意の1つ以上に対応してもよい。概して、フォトダイオード400は、上方電極420と下方電極416との間に挿入される、ヘテロ構造404を含む。ことを理解されるであろう用語「上方」および「下方」は、フォトダイオード400の配向に制限を課すものではないという点において、任意であることを理解されるであろう。ヘテロ構造404は、量子ドット(QD)層454と直接界面接触されるフラーレン層452を含み、電子的ヘテロ接合456を形成する。本QD−フラーレンヘテロ構造404では、QD層454は、電子ドナー(または、正孔輸送)層としての役割を果たし、フラーレン層452は、電子アクセプタ(または、電子輸送)層としての役割を果たす。QD層454およびフラーレン層452は、感光性であって、光460の吸収に応答して、励起子を形成する。本実施例では、QD層454は、電極416(アノードとしての役割を果たす)上に配置され、フラーレン層452は、QD層454上に配置され、電極420(カソードとしての役割を果たす)は、フラーレン層452上に配置される。本実施例では、電極420は、入射光460を伝達するように意図され、したがって、透明材料から構成される。この場合、電極420は、図1および3に関連して前述の透明接地面に対応してもよい。他の電極416もまた、透明であってもよいが、前述で例示された配設である必要はない。電極416は、任意の好適な基板464上に形成された後、他の層の成膜が続いてもよい。
【0056】
当業者によって理解されるように、フォトダイオード400は、正孔および電子のそのそれぞれの電極416および420への高速伝播を促進する、および/または電子−正孔再結合の確率を低減させる、付加的層(図4に図示せず)を含んでもよい。また、フォトダイオード400または多くのそのような素子400の相互接続されたアレイは、図3に例示されるアレイの実施例におけるように、当業者に周知の任意の好適な手段によって必要とされるように、パッケージ化または封入されてもよい(図示せず)。
【0057】
動作時、電極420を通過する電磁放射460は、QD層454およびフラーレン層452内に吸収され、したがって、QD層454およびフラーレン層452内の励起子(電子−正孔対)の光生成を誘発する。励起子は、QD層454とフラーレン層452との間の接合またはその近傍において、あるいはそれぞれの層内に存在する電場によって、電子および正孔に分離される。電子は、フラーレン層452を通して、電極420に輸送され、正孔は、QD層454を通して、電極416に輸送される。その結果、電流は、電極416から、基板464を備え得る下層信号処理回路に流動する。本プロセスを向上させるために、フォトダイオード400は、それぞれ、適切な取着手段によって、電極420および電極416に接続される、送電線(電線等)を介して、電圧源468と連通状態にされてもよい。当業者によって理解されるように、信号処理回路は、電極416における電流または電圧等の出力信号(または、画像信号)を測定し、測定値をフォトダイオード400上に入射する光子の数と相関させるように構成されてもよい。
【0058】
基板464は、概して、電極416を加工するために好適な任意の組成物を有してもよく、利用される種類の成膜技法、基板464が透明である必要があるかどうか、基板464が、加工後、電極416から除去される必要があるかどうか、フォトダイオード400の最終用途等の要因に依存してもよい。したがって、基板464の組成物は、概して、種々のガラス(光学グレードを含む)、セラミック(例えば、サファイア)、金属、誘電材料、導電性または絶縁ポリマー、半導体、半絶縁材料等を含んでもよい。いくつかの実装では図1および3に関連して前述のように、基板464は、光検出器内で利用されるROICまたは同等回路の典型であり得るような好適な基板124上に加工される、信号処理回路108に対応してもよい。
【0059】
電極420は、電気的に伝導性である任意の材料であってもよく、電極420が、入射光460を受光するように意図される場合、光学的に透明である。本文脈では、電気的に伝導性である材料は、概して、商業または産業グレード、すなわち、容認可能な低レベルの抵抗損失を有する回路内に電流を通過させるための電極または接点として使用するために容認可能であると見なされるであろうものである。光学的に透明な材料は、概して、十分な量の入射光460が、その厚さを通して通過し、QD層454のQDを照射する、すなわち、着目波長における光子の有意な反射および吸収を伴わないものである。一非限定的実施例として、透明材料は、(所望の波長または波長の範囲の)入射電磁放射460の少なくとも50%を材料の厚さを通して伝達させるものであってもよい。電極420はまた、その作用機能に基づいて選択されてもよい。電極420は、入射光子を効果的に通過させ、十分な量の光生成された正孔を収集するために必要なように、下層フラーレン層452の表面全体、または本表面の一部を被覆してもよい。さらに、2つ以上の物理的に別個の電極420が提供されてもよい。
【0060】
電極420の実施例として、透明導電性酸化物(TCO)、透明金属、および透明導電性ポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。TCOsは、例えば、酸化スズ(TO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、亜鉛インジウム酸化物(ZIO)、亜鉛インジウムスズ酸化物(ZITO)、ガリウムインジウム酸化物(GIO)、および前述の合金または誘導体をさらに含んでもよい。酸化スズはまた、フッ素(F)によってドープされてもよい。ZnOは、ガリウム(Ga)および/またはアルミニウム(Al)等の第III族元素によってドープされてもよく、したがって、より一般的には、ZnAlGaO(式中、x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、および0≦z≦1)として化学量論的に表されてもよい。他の金属酸化物ならびに非酸化物薄膜半導体も好適である場合がある。金属の場合、種々の金属(例えば、銀、金、白金、チタン、リチウム、アルミニウム、マグネシウム、銅、ニッケル、およびその他)、金属含有合金(多層または2つ以上の異なる金属を含む、タングステン等の接着促進層の有無を問わず)、あるいは金属含有化合物が、金属電極420が、透明であるために十分に薄く、すなわち、「透明厚」を有する限り、電極420として採用されてもよい。フォトダイオード400が、IR範囲内で敏感であるように所望される場合、電極420は、IR波長に対して十分に透明であるべきである。電極420は、典型的には、例えば、化学気相成膜(CVD)、金属有機CVD(MOCVD)、高周波(RF)またはマグネトロンスパッタリング、分子線エピタキシャル成長法(MBE)、イオンビームエピタキシ、レーザMBE、パルスレーザ成膜(PLD)等の真空成膜技法によって、下層表面上に加工される。組成物に応じて、熱蒸発または凝華等の他の成膜技法が好適であり得る。導電性ポリマーは、十分に透明である場合、代替として、電極420として採用されてもよく、溶液ベースのプロセス、スピンコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティング等によって成膜されてもよい。透明導電性ポリマーの他の非限定的実施例は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホナート(PEDOT:PSS)、ならびにその化学類縁体および誘導体である。導電性カーボンナノチューブ(CNT)またはナノシート(例えば、グラフェン)の層は、電極420として採用されてもよく、CNTまたはナノシートを囲繞するマトリクス材を含んでもよく、またはそうでなくてもよい。電極材料はまた、複合電極120を形成するように組み合わせられてもよい。一実施例は、PEDOT:PSS等の界面の質を改善するように導電性ポリマーと組み合わせられたITO等のTCOの使用である。別の実施形態(例えば、反転または逆配設)では、導体420は、透明である必要はなく、金属、金属含有合金、または金属含有化合物から選択されてもよい。いくつかの実装では、電極420は、4.5eV未満の仕事関数を有する。電極420または416の一方あるいは両方が、透明であるべきである。
【0061】
電極416はまた、電極420に関して前述の説明に従って提供されてもよい。フォトダイオードの例示される実装では、電極416は、透明である必要はなく、したがって、その組成物は、典型的には、金属、金属含有合金、または金属含有化合物から選択される。電極416は、オーム接点としてのその仕事関数またはその可用性に基づいて選択されてもよい。電極416は、光生成された電子を収集し、正確に測定可能な出力を提供され得る任意の信号処理回路に提供するための必要に応じて、上層QD層454および/または下層基板464の表面全体、あるいは上層および/または下層表面の一部を被覆してもよい。さらに、2つ以上の物理的に別個の電極416が提供されてもよい。いくつかの実装では、電極416は、4.5eVよりも大きい仕事関数を有する。一具体的実施例では、電極416は、アルミニウムから構成される。
【0062】
フラーレン層452は、複数のフラーレンを含む。フラーレン層452は、3nm乃至300nmの範囲の厚さを有してもよい。本文脈では、厚さは、図1の斜視図から垂直方向に定義されるが、任意の特定の基準フレームに対して、フォトダイオード400の特定の配向に限定されるものではないことを理解されたい。フラーレンは、黒鉛電極間のアーク放電等の種々の周知の技法によって形成されてもよい。フラーレン層452はさらに、ポリマー膜またはその中にフラーレンが分散される他の好適なマトリクス材を含んでもよい。フラーレン層452は、例えば、熱蒸発、スピンコーティング、あるいは所望の厚さのフラーレン含有層を提供するために好適な任意の他の成膜または膜形成技法によって、QD層454上に形成されてもよい。
【0063】
QD層454は、複数の量子ドット(QD)を含む。QD層454は、5nm乃至5μmの範囲の長さを有してもよい。本教示に典型的実装では、QDは、無機半導体材料から構成される。一特定の有利であるが非限定的実施例では、QDは、硫化鉛(PbS)またはセレン化鉛(PbSe)結晶あるいは粒子である。より一般的には、QDは、種々のII−VI族、I−III−VI族、III−V族、IV族、IV−VI族、およびV−VI族材料から選択されてもよい。実施例として、II−VI族材料、例えば、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、CdS、CdSe、CdTe、CdO、HgS、HgSe、HgTe、HgO、MgS、MgSe、MgTe、MgO、CaS、CaSe、CaTe、CaO、SrS、SrSe、SrTe、SrO、BaS、BaSe、BaTe、およびBaO;I−III−VI族材料、例えば、CuInS、Cu(In,Ga)S、CuInSe、およびCu(In,Ga)Se;III−V族材料、例えば、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、およびInSb;IV族材料、例えば、Si、Ge、およびC;IV−VI族材料、例えば、GeSe、PbS、PbSe、PbTe、PbO、SnSe、SnTe、およびSnS;ならびにV−VI族材料、例えば、SbTe、BiTe、およびBiSeが挙げられるが、それらに限定されない。Fe、Ni、およびCuの酸化物、硫化物、ならびにリン化物等の遷移金属化合物が、適用可能であってもよい。QDの実施例としてさらに、前述の種を含む、二元、三元、四元等の合金または化合物(例えば、SiGe、InGaAs、InGaN、InGaAsP、AlInGaP等)が挙げられる。他のQDは、他の種類の半導体材料(例えば、ある有機およびポリマー材料)を含んでもよい。コアシェル構造を有するQDの場合、シェルは、前述の種または他の種のうちの1つから構成されてもよく、コアおよびシェルのそれぞれの組成物は、異なってもよく、例えば、コアシェル組成物は、CdSe−ZnSである場合がある。
【0064】
当業者によって理解されるように、QDのために選択される組成物は、バンドギャップエネルギーまたは波長感度等の所望の特性に基づいてもよい。実施例として、PbS、PbSe、PbTe、HgTe、InAs、InP、InSb、InGaAsP、Si、Ge、またはSiGe等のQDが、IR感度のために選択されてもよい一方、CdS、CdSe、またはCdTe等のQDは、可視感度のために、ZnSまたはZnSe等のQDは、UV感度のために選択されてもよい。PbSおよび他のIR感光性QDは、IR撮像素子において特に有用である。青色、UV、および近IR吸収QDもまた、選択されてもよい。さらに、QDのサイズは、所望の範囲の電磁放射を吸収するように選択されてもよい。概して、臨界サイズを下回る所与の種のQDの場合、図2の実施例に実証されるように、サイズが小さいほど、より短い(より青い)波長に対してより敏感であって、サイズが大きいほど、より長い(より赤い)波長に対してより敏感である。さらに、QDの光電子挙動は、QD層454内のその形状およびそのサイズ分布に応じて、カスタマイズされてもよい。加えて、QD層454は、2つ以上の異なる種(組成物)および/または2つ以上の異なる具体的サイズのQDを含んでもよい。これは、QD層454の特性、挙動、または性能の範囲を拡大することが所望されるときに有用である。例えば、QD層454内のQDの混合物は、QD層454が、異なる帯域の電磁スペクトル(例えば、可視およびIR放射、可視およびUV放射等)に対して、向上した応答性を有するように選択されてもよい。代替として、または加えて、2つ以上の個別のQD層454が提供されてもよく、それぞれ、異なる組成物またはサイズのQDを有する。2つ以上のQD層454は、フォトダイオード400内に、対応する数の別個のQD−フラーレン接合456の一部を形成してもよい。
【0065】
QDは、例えば、コロイド合成、プラズマ合成、蒸着、エピタキシャル成長、およびナノリソグラフィ等の種々の周知の技法によって形成されてもよい。QDのサイズ、サイズ分布、形状、表面化学物質、または他の属性は、現在周知または後に開発される任意の好適な技法によって、所望の特性(例えば、光子吸収および/または放出)を有するように設計または調整されてもよい。QD層454は、任意の好適な方法、特に、種々の周知の塗膜および印刷方法またはドクターブレーディング等の溶液ベースの方法によって、下層(例えば、電極416または挿入層)上に形成されてもよい。一実施例では、QDは、マトリクス材または母材の有無を問わず、アニソール、オクタン、ヘキサン、トルエン、ブチルアミン、水等の有機キャリア溶媒の溶液中に提供され、スピンコーティングによって、所望の厚さに成膜される。その後、過剰溶媒は、蒸発、真空、または熱処置によって排除されてもよい。形成後、QD層454は、残留溶媒を含んでもよく、またはそうでなくてもよい。成膜直後の状態のQD層454は、複数のQD、QDの集合、またはQDのアレイを含むように特徴付けられてもよい。QDは、マトリクス材を含有せず、緊密に、但し、多少独立して、包填されてもよい。マトリクス材がない場合、QD層454は、ロンドンの力またはファン・デル・ワールス力によって安定化されてもよく、あるいは隣接QD間の共有結合を形成する分子種によって連結されてもよい。代替として、QDは、ポリマー、ゾルゲル、または意図された下層表面上に膜を容易に形成することができる他の材料から構成され得る、マトリクス材内に所望の密度または濃度に分散されてもよい。概して、選択されるマトリクス材は、光/電気または電気/光変換、あるいはQDおよび全体的光検出器400の想定される他の性能パラメータを向上させるように選定される。そのようなマトリクス材の一実施例は、ポリ−3−ヘキシルチオフェン等の半導体ポリマーである。代替として、QDは、後述のように処置し、膜を低溶解性にすることによって、安定化されてもよい。
【0066】
本教示の側面によると、QD層454は、低欠陥密度をもたらすように形成され、それによって、QD層454内の局所ピンホールおよび短絡を減少させる。一実施例として、QDは、比較的低揮発性(例えば、アニソール等)または下層基板に対する改良された湿潤性(例えば、オクタンまたは他のアルカン等)を有する、少なくとも1つの溶媒構成要素を含む、溶液中に提供される。別の実施例では、QD含有溶液は、膜厚を増加させる、および/またはピンホールを減少させるための多重塗膜として適用される。別の実施例では、QD膜は、第1の塗膜として成膜され、次いで、後述のように、成膜後処置に曝され、膜を低溶解性にする。次いで、付加的なQD膜が、処置された第1の塗膜上の第2の塗膜として成膜され、QD層454内の任意の欠陥/ピンホールを不動態化するのを支援する。QD含有膜の成膜反復後の各膜の成膜後処置は、所望の層厚を達成する、または欠陥密度を減少させるための必要に応じて、ある回数反復されてもよい。
【0067】
本教示の側面によると、形成直後の状態のQD層454は、QDの電子的輸送特性を改善し、その結果、フォトダイオード400の性能を改良する、成膜後プロセスまたは処置に曝されてもよい。これは、QD層454(および、下層構造)を化学溶液中に浸漬することによって等、QDを選択された化学物質に曝露することによって達成される。代替として、形成直後の状態のQD層454は、選択された化学物質または複数の化学物質を含む、気相雰囲気に曝露することによって、処置を受けてもよい。QD層454を処置するために利用される化学物質は、電荷キャリア移動度を改善し、QD層454内の欠陥または不飽和表面結合を不動態化してもよい。QDの電子的特性の改善に加え、化学処置は、膜形態の実質的修飾をもたらしてもよい。化学処置後、QD層454は、向上した光密度、向上したドット比質量偏差、および/または向上した機械的および化学的ロバスト性を示してもよい。QD膜形態におけるこれらの変化はさらに、電荷キャリア移動度の有意な増加および素子性能の改良に寄与する。成膜後処置のために利用され得る化学物質の実施例として、以下のうちの1つ以上が挙げられる:エタンチオール、アルキルチオール、アルキルチオール、アルキニルチオール、アリールチオール、エタンジチオール、ベンゼンジチオール、アルキルポリチオール、アルケニルポリチオール、アルキニルポリチオール、アリールポリチオール、カルボン酸、ギ酸、メタノール、トルエン、イソプロピルアルコール、クロロホルム、アセトニトリル、酢酸、ブチルアミン、1,4ブチルジアミン、アルキルアミン、アルケニルアミン、アルキニルアミン、アリールアミンアルキルポリアミン、アルケニルポリアミン、アルキニルポリアミン、およびアリールポリアミン。処置は、液体溶液または蒸気として適用されてもよい。
【0068】
成膜後プロセスに先立って、Q>層454は、例えば、10−6乃至10−4cm/V−秒の範囲内の電荷キャリア移動度を有してもよい。成膜後プロセスの結果として、QD層454は、例えば、1x10−4cm/V−秒よりも大きい範囲内、または別の実施例では、1x10−4超乃至10cm/V−秒の範囲内の電荷キャリア移動度を有してもよい。本明細書では、成膜後化学処置を受け、移動度>10−4cm/V−秒を達成するQD層は、高移動度QD層と見なされることを理解されたい。高移動度QD層の特色の1つは、2つの隣接するQDの表面間の距離がより短いことであり得る。この距離は、粒子間間隔と呼ばれ、成膜直後の状態のQD層の場合、3nm以上であって、高移動度QD層の場合、2nm以下であってもよい。高移動度QD層の厚さは、粒子間間隔の減少のため、成膜直後の状態のQD層と比較して、20%乃至80%減少されてもよい。別の実施例では、移動度QD層の厚さは、成膜直後の状態のQD層と比較して、40%乃至70%減少されてもよい。QD層の処置の結果としての厚さの減少の実施例は、図7Aおよび7Bと併せて後述される。
【0069】
図5は、本開示のある実装による、フォトダイオード500の別の実施例の概略断面図である。本実装では、材料の1つ以上の付加的層が提供され、量子効率等の性能関連属性を改善する。例えば、正孔ブロッキング層576は、フラーレン層452と電極420との間に挿入され、正孔が電極420に向かって進行し、可能性として、電極表面近傍の自由電子と結合するのを防止してもよい。正孔ブロッキング層576は、正孔ブロッキング機能を提供するために好適な任意の有機または無機材料から構成されてもよい。実施例として、無機化合物、例えば、TiOまたはZnO、有機化合物、例えば、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バトクプロインまたはBCP)、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バトフェナントロリンまたはBPhen)、2,9−ビス(ナフタレン−2−yl)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(NBPhen)、あるいは金属キレート錯体、例えば、トリス−8−ヒドロキシキノリナトアルミニウム(Alq3)、ならびに前述の化学類縁体および誘導体が挙げられるが、それらに限定されない。有機光電子素子内で電子輸送または正孔ブロッキング層として従来利用されているいくつかの有機化合物は、本実装では、正孔ブロッキング層576として有効であってもよい。正孔ブロッキング層576はまた、向上したキャリア濃度を提供する、ドープ層を含んでもよい。ドーパントは、有機分子あるいはリチウムまたはセシウム等のアルカリ金属を含んでもよい。正孔ブロッキング層576の厚さは、概して、その組成物に依存するであろう。いくつかの実施例では、正孔ブロッキング層576の厚さは、1nm乃至100nmの範囲である。
【0070】
他の実装では、正孔ブロッキング層576に加えて、またはその代替として、フォトダイオード500は、電極416とQD層454との間に挿入され、電極416に向かって進行し、可能性として、正孔と結合するのを防止する、電子ブロッキング層572を含んでもよい。電子ブロッキング層572は、電子ブロッキング機能を提供するために好適な任意の有機または無機材料から構成されてもよい。実施例として、三酸化モリブデン(MoO)、三酸化タングステン(WO)、酸化銅(CuO)、酸化ニッケル(NiO)、フタロシアニン、例えば、フタロシアニン銅(CuPc)またはフタロシアニンスズ(SnPc)(しかしながら、金属−Pc化合物に限定されない)、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)−トリフェニルアミン(m−MTDATA)、N,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(α−NPD)、ならびに前述の化学的類縁体および誘導体が挙げられるが、それらに限定されない。加えて、層108内のQDとは異なる電位エネルギーを有するQDが、電子ブロッキング層244として採用されてもよい。電荷再結合が、これらの層内またはそれに隣接して生じ得るため、高導電性を有する材料は、概して、好適ではない。成膜後、電子ブロッキング層244の特性を修飾し、その有効性を改善することが望ましい場合がある。これらの処置は、種々の酸化または還元雰囲気中におけるアニーリングあるいは酸化または還元プラズマへの曝露を含むことができる。適切な酸化または還元種および反応チャンバは、当業者に周知であって、したがって、本明細書で詳細に説明される必要はない。有機光電子素子内で正孔輸送または電子ブロッキング層として従来利用されるいくつかの有機化合物は、本実装では、電子ブロッキング層572として有効であってもよい。電子ブロッキング層572の厚さは、概して、その組成物に依存するであろう。いくつかの実施例では、電子ブロッキング層572の厚さは、1nm乃至100nmの範囲である。
【0071】
いくつかの実装では、電子ブロッキング層572が電極416を部分的にのみ被覆するように加工されることが有利であり得る。部分的被覆を提供する電子ブロッキング層572は、不連続層または膜と称されてもよい。不連続電子ブロッキング層572は、励起子および/または電子ブロッキング能力の最良の組み合わせを提供する一方、電極416への正孔の効率的輸送を可能にし得る。本部分的被覆は、周知のパターン化技法によって、または部分的被覆のみもたらすような好適な条件下、膜を成膜することによって、形成されてもよい。パターン化技法の実施例として、マスクの使用、インクジェット印刷による成膜等が挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの実装では、不連続電子ブロッキング層572は、その中で、電子ブロッキング材料の島または領域が、電子ブロッキング材料を含有しない面積(すなわち、電子ブロッキング層572の平面レベルにおける電子ブロッキング材料の欠如)によって分離または囲繞される、構成を有する。他の実装では、不連続電子ブロッキング層572は、その中で、電子ブロッキング材料を含有しない面積が、電子ブロッキング材料によって囲繞される、構成を有する。故に、不連続電子ブロッキング層572では、電子ブロッキング層572の平面面積の大部分は、電子ブロッキング材料によって占有されてもよく、またはそうでなくてもよい。不連続電子ブロッキング層572が、パターンとして提供されるとき、パターンは、規則的または不規則的であってもよい。パターンの実施例として、一連のストライプ、多角形のアレイ、円形またはドットのアレイ等が挙げられるが、それらに限定されない。
【0072】
それと界面接触される半導体層のその組成物および特性に応じて、前述のもの等の正孔ブロッキング層576および/または電子ブロッキング層572はまた、励起子ブロッキング層としての役割を果たし、解離され、電極/半導体界面から遠ざける必要がある場合、光生成励起子をヘテロ接合の領域に閉じ込めてもよい。アノード側および/またはカソード側励起子ブロッキング層もまた、正孔ブロッキング層576および/または電子ブロッキング層572に加え、提供されてもよい。当業者によって理解されるように、励起子ブロッキング層の組成物は、励起子ブロッキング層が、関連方向における正孔輸送または電子輸送を害することがないように、アノード(例えば、電極416)またはカソード(例えば、電極420)に隣接して位置付けられるかどうかによって決定されてもよい。また、正孔ブロッキング層、電子ブロッキング層、および励起子ブロッキング層は、移動度を向上させる、またはその構造を安定化させる等の種々の目的のために必要とされるような他の化合物によってドープされてもよいことを理解されたい。さらに、これらの種類の層はまた、加工プロセスの際、成膜直後の状態の下層を保護するための保護層として望ましい場合がある。当業者は、前述の材料の実施例の化学的誘導体または類縁体の可用性、ならびに正孔ブロッキング層、電子ブロッキング層、および励起子ブロッキング層として利用され得る、そのような材料の同様に挙動する代替を理解するであろう。
【0073】
有機組成物が、正孔ブロッキング層576、電子ブロッキング層572、および/または任意の付加的な励起子ブロッキング層のために選択される場合、そのような有機層は、電極420および/または416を成長あるいは成膜するために利用されるのと同一成膜チャンバ内で成膜されてもよい。この場合、有機層は、有機気相成膜(OPVD)、有機分子ビーム成膜、または任意の他の好適な成膜技法によって成膜されてもよい。代替として、有機層は、スピンコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティング、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、密着印刷、蒸発、凝華等によって成膜されてもよい。
【0074】
別の実装では、フォトダイオード400または500は、QD層454がフラーレン層452上に成膜されるように、本明細書に説明される層の順番を逆にすることによって加工されてもよい。ヘテロ接合456の特性および成分層の機能は、同一のままであることを理解されたい。
【0075】
独特のQD−フラーレンヘテロ接合456は、周知のヘテロ接合に勝る実質的改良を構成する。特に、QD−フラーレンヘテロ接合456は、向上した光吸収および他のヘテロ接合によって典型的にはアクセス可能ではない波長における光吸収を呈する。改良された光吸収の結果、より高い光電流密度がもたらされる。ヘテロ接合456は、他の種類のヘテロ接合に基づく素子と比較して、光生成された励起子のより効率的電荷分離およびより効率的電荷キャリア収集を呈する。
一実施例では、改良として、本層454の電荷輸送特性を改善するためのQD層454の成膜後処置を含む。本技法は、電荷分離効率を増加させ、電荷抽出効率を増加させ、直列抵抗を低下させ、効率を低減させることなく、より厚いQD層454の使用を可能にする。別の改良は、前述のような電子ブロッキング層572の使用であって、電極−QD層界面における励起子再結合を低下させることによって、電荷分離効率を増加させ、QD層454内の欠陥の悪影響を制限するのを支援する。電子ブロッキング層572は、光生成された正孔の抽出において、トンネル接合またはオーム接合として機能し、高効率光検出を可能にする一方、非常に低い暗電流、したがって、非常に高い信号対雑音比を維持する。
【0076】
本明細書に説明されるようなフォトダイオードに基づく光検出器は、特定の用途のために、所望に応じて、IR、可視、およびUV範囲の任意の組み合わせに応答するように構成されてもよい。スペクトル応答性は、サイズ、組成物、ドーピング、あるいは他の化学または表面修飾(該当する場合)、ならびに他の特性または特色の観点から、利用されるQDに依存する。前述のように、所与の層内で利用されるQDの種類は、所望の性能を達成するために、必要に応じて、均一であってもよく、または異なる種類のQD群であってもよい。いくつかの実施例では、本開示に従って提供されるようなフォトダイオードは、250−1400nmまたは250−1500nmの範囲の波長における入射光子に応答する。近似的に定寸されたPbSまたは類似QDの使用は、前述の具体的実施例である。他の実施例では、フォトダイオードは、250−1700nmの範囲に応答してもよい。他の実施例では、フォトダイオードは、250−2400nmの範囲に応答してもよい。さらに、所与の光検出器は、入射波長に依存する量子効率の範囲を呈してもよい。例えば、光検出器は、15%以上の外部量子効率を呈してもよい一方、他の実施例では、25%−95%の外部量子効率を呈してもよい。
【0077】
本明細書に説明されるように、QD−フラーレンヘテロ接合456を実装する光電子素子は、本ヘテロ接合の利点のうちのいくつかを実証する性能特色を呈している。一実施例では、フォトダイオード素子は、図4に例示される構造に基づいて、試験目的のために加工され、図5に例示される電子ブロッキング層572を含んでいる。試験素子では、基板464は、透明であった。2nm厚のMoO電子ブロッキング層572は、ITO電極416で塗膜されたガラス基板464上に成膜された。QD層454は、50mg/mlの濃度を有するオクタン中、ブチルアミン被膜PbS QDの溶液をスピンコーティングすることによって、電子ブロッキング層572上に形成された。過剰な溶媒を蒸発させた後、結果として生じるQD層454は、約80nmの厚さを有していた。次いで、QD層454は、5分間、アセトニトリル中5%ギ酸に浸漬することによって処置された。次いで、フラーレン層452は、50nm層のC60フラーレンの熱蒸発によって、QD層454上に形成された。次いで、13nm層のBCPが、正孔ブロッキング層576としての役割を果たすために、熱蒸発によって、フラーレン層452上に形成された。次いで、電極420が、50nm厚層のAlに続いて、50nm厚層のAgから構成される、BCP上に成膜された。レーザ源は、種々の電力レベル(mW)での照射をもたらすように構成された。本レーザ源を使用して、フォトダイオード素子のガラス側は、980nm照明で照射された(試料は、周囲温度であって、周囲酸素および湿度からの保護を伴わない)。電極420の面積は、較正された顕微鏡を使用して測定され、〜0.8mmであった。図6は、異なる屈折力の暗条件および照射条件下の電圧の関数としての電流密度の一式のプロットである。具体的なI−V曲線は、照射条件下、以下のように得られた:601(暗条件);602(30μW/cm);603(400μW/cm);および604(1700μW/cm)。電流は、Keithley 2400 SourceMeter電源/計測器を使用して、印加された電圧の関数として測定され、図6におけるI−Vデータをもたらした。
【0078】
本試料フォトダイオード素子は、980nmにおいて、約21%の量子効率(測定された電子対入射光子の比)を呈した。
【0079】
QD層の電荷キャリア移動度は、電界効果移動度法を使用して測定した。QD膜は、別個の基板上に加工されたが、フォトダイオード内のものと等しいQD層のためのプロセスステップを採用する。本方法では、薄膜電界効果トランジスタ(FET)は、QDを使用して加工され、FET移動度は、素子のゲート電圧対ドレイン電流伝達曲線の測定から抽出される。電荷キャリア移動度が、他の技法によって、またはQD層の異なる物理的実装を使用して、あるいは異なる温度等の異なる条件下、測定される場合、異なる測定値が得られてもよい。したがって、用語「移動度」は、本文脈では、電界効果法および本明細書に説明される素子構造を使用して測定された値を指し、測定は、周囲温度において行われ、PV素子において使用されたQD層と同じ方法で処理されるFET素子内のQD層を使用する。さらに、ある材料系における移動度は、印加電圧に対して依存性を有することが知られている。本明細書に説明される移動度値はすべて、−20V乃至+20Vの範囲に及ぶ、ソース−ゲートおよびソース−ドレイン電圧を有する素子に対するものである。
【0080】
FET素子は、以下のように加工される。最初に、50nm厚のSiO層が、伝導性結晶性シリコン基板の熱酸化によって成長される。基板は、ゲート電極としての役割を果たし、SiOは、ゲート誘電体としての役割を果たす。金(Au)ソースおよびドレイン電極は、パターン化され、SiO上に成膜される。ソースおよびドレイン電極は、FETチャネル長である5μm幅の空隙およびFETチャネル幅である2.5mm幅によって分離される。QD層は、QDの溶液をFET基板上にスピンコーティングし、ゲート誘電体の上部にあって、ソースおよびドレイン電極を接続する、材料の膜を形成することによって成膜される。ゲート電極、ゲート誘電体、ソースおよびドレイン電極、ならびにQD膜の組み合わせは、FET素子を形成する。
【0081】
QD膜の移動度を測定するために、固定電圧が、ソースとドレイン電極との間に印加され、それらの間の電流が測定される。固定電圧は、線形領域として一般的に知られる、ソース−ドレイン電流が、ドレイン電圧に伴って、線形に変動する、FET応答の部分内にあるように選定される。次いで、ゲート電圧は、変化し、ソース−ドレイン電流が、ゲート電圧の各値に対して測定される。ゲート電圧対ソースドレイン電流のプロットは、FET素子の伝達曲線である。QD移動度は、伝達曲線の勾配、ソースとドレイン電極との間に印加される電圧の値、および式
【0082】
【数1】

(式中、g(相互コンダクタンス)は、伝達曲線の勾配であって、Wは、トランジスタ幅であって、Cは、ゲート酸化物容量であって、Lは、トランジスタ長であって、Vdsは、印加されたドレイン−ソース電圧であって、およびμは、FET移動度である)に従う素子構造の幾何学形状を使用して、抽出される。
【0083】
高QD移動度を伴って加工された素子は、4.5x10−3cm/V−sの測定されたFET移動度を有していた。本実施例において、QD膜の加工において採用されるギ酸処置は、1x10−4cm/V−sを超える移動度を有するQD膜を得るための方法の1つであるが、しかしながら、前述に示されるように、他の方法および変形例もまた、可能である。
【0084】
図7Aは、目的を試験するために、本開示に従って加工された量子ドット/フラーレンヘテロ接合を含む、複合構造700のSEM(走査電子顕微鏡法)画像である。図7Bは、図7Bに類似する複合構造705のSEM画像であるが、量子ドットは、本明細書に開示される技法に従って処置された。いずれの場合も、材料系は、以下のようになる:シリコン基板728/硫化鉛(PbS)QD層708/C60および正孔ブロッキング層712/金属接点724。2つの複合構造700および705は、QD層708以外、同様に加工された。図7Aの複合構造700では、PbS QDは、未処置であって、QD層708は、92nmの厚さを有していた。対照的に、図7Bの複合構造705では、成膜後のPbS QDは、ギ酸の処置によって修飾された。本処置は、複合構造705のQD層708内の粒子間間隔を減少させ、それによって、膜厚の減少をもたらした。複合構造705内の結果として生じるギ酸処置されたQD層708の厚さは、52nmであった。
【0085】
他の実装では、フォトダイオード素子400または500は、本明細書に説明されるように、複数の活性電子接合またはサブセルを含んでもよく、これは、効率を改善させ得る。例えば、フォトダイオード素子は、交互または周期的フラーレン層452およびQD層454を含む、積層構成を有してもよい。随意に、導電性(電荷輸送)層は、各QD−フラーレン二重層ヘテロ構造404間に挿入されてもよい。別の代替として、フォトダイオード素子は、少なくとも1つのQD−フラーレン二重層ヘテロ構造404と、他の種類の電子ドナーおよび電子アクセプタ材料(例えば、有機ヘテロ接合、無機ヘテロ接合)によって形成される、1つ以上の付加的なヘテロ接合とを含む、積層構成を有してもよい。本後者の場合、QD−フラーレン二重層ヘテロ構造404は、具体的目的(例えば、IR感度)のために提供されてもよい一方、他の種類のヘテロ構造は、異なる目的(例えば、可視光感度)のために提供される。
【0086】
材料の種々の層は、平面であるように、図4および5に図式的に描写される。しかしながら、本明細書に開示されるフォトダイオードおよび関連付けられた光検出器は、任意の特定の幾何学形状に限定されないことを理解されたい。フォトダイオードおよび関連付けられた光検出器は、湾曲プロファイルまたはある他の形状を有してもよい。さらに、利用される材料に応じて、フォトダイオードおよび関連付けられた光検出器は、可撓性であってもよい。
【0087】
フラーレン層452とQD層454との間の界面は、平面であるように、図4および5に図式的に描写される。しかしながら、接合は、平滑または切形でなくてもよいことを理解されたい。接合は、量子ドットおよびフラーレンの両方を含有する、混合領域を含むことが可能である。また、量子ドットおよびフラーレンの領域が、それぞれ、主に量子ドットおよび主にフラーレンである、相互貫入領域の網状体を形成するように、層が形成されることも可能である。加えて、単位基板面積あたりの向上したヘテロ接合面積を提供する、ピラー、孔、メサ、あるいは他のマイクロスケールまたはナノスケール構造等の垂直構造を使用して、光吸収を向上もしくは操作してもよい。そのような構造は、平面構造と同一ヘテロ接合を採用してもよいが、これらの他の実施例では、接合は、3次元に拡張されてもよい。
【0088】
他の実装では、図4および5に例示される層のシステムは、前述で参照された米国暫定出願第61/246,679号に説明されるように、PV素子、または発光ダイオード(LED)、あるいは他の種類のエレクトロルミネセント、もしくは光源として、または情報の伝達のために有用な光輝性素子を生成するために利用され、あるいは必要に応じて、修飾され、省略または追加されてもよい。
【0089】
QD−フラーレン接合ベースの素子の実施例が、主に、光電子機器の文脈において、本明細書に説明されたが、当業者は、本明細書で教示されたQD−フラーレンヘテロ構造404が、一般に、マイクロ電子素子に適用されてもよいことを理解するであろう。すなわち、電子的接合としてのQD−フラーレンヘテロ構造404の使用は、光特異的用途に限定されない。非限定的実施例として、QD−フラーレン構造404は、ディスプレイ素子(例えば、フラットパネルディスプレイ)、トランジスタ、光学MEMS素子、マイクロ流体素子、ラボチップ、外科的に埋入される素子等において利用されてもよい。
【0090】
一般に、「連通する」および「連通している」(例えば、第1の構成要素は、第2の構成要素と「連通する」または「連通している」)等の用語は、本明細書では、2つ以上の構成要素または要素間の構造的、機能的、機械的、電気的、信号的、光学的、磁気的、電磁気的、イオン的、または流体的関係を指すために使用される。したがって、1つの構成要素が、第2の構成要素と連通すると言われる場合、付加的な構成要素が、第1と第2の構成要素との間に存在する、および/または動作可能に関連付けられる、あるいは係合され得る可能性を排除することを意図するものではない。
【0091】
本発明の種々の側面または詳細は、本発明の範囲から逸脱することなく、変更されてもよいことを理解されたい。さらに、前述の説明は、例示の目的にすぎず、制限の目的のためではなく、本発明は、請求項によって定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトダイオードであって、透明な第1の電極、第2の電極、および該第1の電極と該第2の電極との間に挿入されるヘテロ接合を備え、該ヘテロ接合は量子ドット層、および該量子ドット層上に直接配置されるフラーレン層を備え、該量子ドット層は複数の量子ドットを備え、該フラーレン層は複数のフラーレンを備える、フォトダイオードと、
該第2の電極と信号通信状態にある信号処理回路と
を備える、光検出器。
【請求項2】
前記フォトダイオードは、赤外線範囲、可視範囲、紫外線範囲、および前述のもののうちの2つ以上の組み合わせから成る群から選択される波長における入射光子に応答する前記信号処理回路に信号を出力するように構成される、請求項1に記載の光検出器。
【請求項3】
約250nm乃至約2400nmの範囲の波長における入射光子に応答する前記信号処理回路に信号を出力するように構成される、請求項1に記載の光検出器。
【請求項4】
前記第1の電極または前記第2の電極は、導電性酸化物、金属、金属合金、金属含有化合物、CNT、グラフェン、および導電性ポリマーから成る群から選択される、請求項1に記載の光検出器。
【請求項5】
前記量子ドットは、II−VI族、I−III−VI族、III−V族、IV族、IV−VI族、およびV−VI族材料から成る群から選択される組成物を有する、請求項1に記載の光検出器。
【請求項6】
前記量子ドットは、硫化鉛、セレン化鉛、テルル化鉛、テルル化水銀、またはそれらの合金から構成される、請求項1に記載の光検出器。
【請求項7】
前記量子ドット層は、5nm乃至5μmの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の光検出器。
【請求項8】
前記複数の量子ドットは、複数の第1の量子ドットと複数の第2の量子ドットとを備え、該第1の量子ドットは、第1の平均サイズを有し、該第2の量子ドットは、該第1の平均サイズとは異なる第2の平均サイズを有するか、または該第1の量子ドットは、第1の組成物を有し、該第2の量子ドットは、該第1の組成物とは異なる第2の組成物を有する、請求項1に記載の光検出器。
【請求項9】
前記フラーレンは、nが20以上であるCフラーレン、内包フラーレン、フラーレン誘導体、および前述のもののうちの2つ以上の組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載の光検出器。
【請求項10】
前記フラーレン層は、3nm乃至300nmの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の光検出器。
【請求項11】
前記フラーレン層と前記第2の電極との間に挿入される正孔ブロッキング層をさらに備える、請求項1に記載の光検出器。
【請求項12】
前記第1の電極と前記量子ドット層との間に挿入される電子ブロッキング層をさらに備える、請求項1に記載の光検出器。
【請求項13】
前記電子ブロッキング層は、不連続層を備える、請求項12に記載の光検出器。
【請求項14】
前記電子ブロッキング層は、あるパターンの電子ブロッキング材料を備える、請求項13に記載の光検出器。
【請求項15】
前記量子ドット層は、1x10−4cm/V−秒よりも大きい電荷キャリア移動度を呈する、請求項1に記載の光検出器。
【請求項16】
前記量子ドット層は、2nm以下の粒子間間隔を呈する、請求項1に記載の光検出器。
【請求項17】
複数のフォトダイオードであって、各フォトダイオードは、透明な第1の電極、第2の電極、および該第1の電極と該第2の電極との間に挿入されるヘテロ構造とを備え、各ヘテロ構造は、量子ドット層と該量子ドット層上に直接配置されるフラーレン層とを備え、各量子ドット層は、複数の量子ドットを備え、各フラーレン層は、複数のフラーレンを備える、複数のフォトダイオードと、
各第2の電極と信号通信状態にある信号処理回路と
を備える、光検出器。
【請求項18】
前記複数のフォトダイオードは、第1の波長範囲の入射光子に応答するそれぞれの信号を出力するように構成される、第1の群のフォトダイオードと、前記第1の波長範囲と異なる第2の波長範囲の入射光子に応答するそれぞれの信号を出力するように構成される、第2の群のフォトダイオードとを備え、該第1の波長範囲および該第2の波長範囲は、赤外線、可視、紫外線、および前述のもののうちの2つ以上の組み合わせから成る群から選択される、請求項17に記載の光検出器。
【請求項19】
光検出器を加工する方法であって、該方法は、
第1の電極上にヘテロ構造を形成することであって、該ヘテロ構造は、相互に接触する量子ドット層とフラーレン層とを備え、該量子ドット層は、複数の量子ドットを備え、該フラーレン層は、複数のフラーレンを備える、ことと、
該第1の電極と反対の該ヘテロ構造の面に第2の電極を形成することであって、該第1もしくは第2の電極のうちの一方または両方が透明である、ことと、
該第1の電極を信号処理回路と信号通信状態に置くことと
を含む、方法。
【請求項20】
複数のそれぞれの第1の電極上に複数のヘテロ構造を形成することによって、複数のフォトダイオードを加工することを含み、各ヘテロ構造は、相互に接触するそれぞれの量子ドット層とそれぞれのフラーレン層とを備え、前記透明な第2の電極は、該第1の電極と反対の該ヘテロ構造の面に形成され、各第1の電極は、前記信号処理回路と信号通信状態に置かれる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
複数のそれぞれの第1の電極上にヘテロ構造を形成することによって、複数のフォトダイオードを加工することを含み、各第1の電極は、前記信号処理回路と信号通信状態に置かれ、それぞれのフォトダイオードを画定する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記ヘテロ構造を形成することは、前記複数の量子ドットおよび溶媒を備える溶液を成膜することによって、前記量子ドット層を成膜することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記溶媒は、トルエン、アニソール、アルカン、ブチルアミン、および水から成る群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ヘテロ構造を形成することは、前記量子ドット層を成膜後に、該量子ドット層の電荷キャリア移動度を向上させる化学物質によって、該量子ドット層を処置することを備える、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記量子ドット層は、エタンチオール、アルキルチオール、アルキルチオール、アルキニルチオール、アリールチオール、エタンジチオール、ベンゼンジチオール、アルキルポリチオール、アルケニルポリチオール、アルキニルポリチオール、アリールポリチオール、カルボン酸、ギ酸、メタノール、トルエン、イソプロピルアルコール、クロロホルム、アセトニトリル、酢酸、ブチルアミン、1,4ブチルジアミン、アルキルアミン、アルケニルアミン、アルキニルアミン、アリールアミンアルキルポリアミン、アルケニルポリアミン、アルキニルポリアミン、アリールポリアミンから成る群から選択される組成物を有する溶液または蒸気によって処置される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ヘテロ構造を形成することは、第1の量子ドット層を成膜後に、該第1の量子ドット層上に1つ以上の付加的な量子ドット層を成膜することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の量子ドット層および前記付加的な量子ドット層を成膜後に、エタンチオール、アルキルチオール、アルキルチオール、アルキニルチオール、アリールチオール、エタンジチオール、ベンゼンジチオール、アルキルポリチオール、アルケニルポリチオール、アルキニルポリチオール、アリールポリチオール、カルボン酸、ギ酸、メタノール、トルエン、イソプロピルアルコール、クロロホルム、アセトニトリル、酢酸、ブチルアミン、1,4ブチルジアミン、アルキルアミン、アルケニルアミン、アルキニルアミン、アリールアミンアルキルポリアミン、アルケニルポリアミン、アルキニルポリアミン、アリールポリアミンから成る群から選択される組成物を有する溶液または蒸気によって、成膜直後の状態の量子ドット層を同時に処置することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の量子ドット層および各付加的な量子ドット層を成膜後に、次の量子ドット層を成膜することに先立って、溶液または蒸気によって成膜直後の状態の量子ドット層を同時に処置することをさらに含み、該溶液または蒸気は、エタンチオール、アルキルチオール、アルキルチオール、アルキニルチオール、アリールチオール、エタンジチオール、ベンゼンジチオール、アルキルポリチオール、アルケニルポリチオール、アルキニルポリチオール、アリールポリチオール、カルボン酸、ギ酸、メタノール、トルエン、イソプロピルアルコール、クロロホルム、アセトニトリル、酢酸、ブチルアミン、1,4ブチルジアミン、アルキルアミン、アルケニルアミン、アルキニルアミン、アリールアミンアルキルポリアミン、アルケニルポリアミン、アルキニルポリアミン、アリールポリアミンから成る群から選択される組成物を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の電極上に電子ブロッキング層を成膜することを含み、前記量子ドット層は、該電子ブロッキング層上に成膜される、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記電子ブロッキング層を酸化または還元処置に曝すことを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記フラーレン層上に正孔ブロッキング層を成膜することをさらに含み、前記第2の電極は、該正孔ブロッキング層上に成膜される、請求項19に記載の方法。
【請求項32】
量子ドット間の粒子間間隔を減少させる化学物質、前記量子ドット層の成膜直後の状態の厚さを減少させる化学物質、または該量子ドット層の該粒子間間隔および該成膜直後の状態の厚さの両方を減少させる化学物質から選択される化学物質によって、該量子ドット層を処置することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項33】
前記粒子間間隔を2nm以下まで減少させるか、または前記成膜直後の状態の厚さを20乃至80%減少させることを含む、請求項32に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2013−506303(P2013−506303A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531123(P2012−531123)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/050731
【国際公開番号】WO2011/041421
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(512079369)リサーチ トライアングル インスティテュート, インターナショナル (2)
【Fターム(参考)】