説明

金ナノ粒子と血清アルブミンおよび/またはコラーゲンとを含有するレーザー組織接合のための水性組成物

本発明は、結合性繊維組織のレーザー修復治療に用いられる水性組成物に係り、1ml当たり1.5×109粒子から1ml当たり1×1010粒子の間の濃度での金ナノ粒子と、30wt%から45wt%の間の濃度でのアルブミンおよび/またはコラーゲンを含有する。また、本発明は、かかる組成物を含むアセンブリーに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維性結合組織の修復治療において用いられる水性組成物に関する。
【0002】
本発明のさらなる対象は、繊維性結合組織の修復治療のために用いられるアセンブリーである。
【0003】
繊維性結合組織は、比較的固い支持組織であり、その役割は、人体器官をその周囲から保護することである。繊維性結合組織は、主にコラーゲンで構成することができ、例えば、軟骨、真皮、靭帯、腱、および角膜などである。
【0004】
徐々に、繊維性結合組織は、亀裂(fissuring)または断裂(tearing)の点で弱くなり、それによって構造中に組織欠陥を生じ、その中を通って、結合性繊維の内側に存在する臓器構造は移動するかもしれない。すなわち、要素(element)または断片の異常な痛みをもたらす。
【0005】
例えば、椎間板ヘルニア(disc herniation)の場合、脊椎円板(spinal disc)(「髄核」と称される)は、周囲の靭帯の輪(「線維輪」)の外に、前述の輪における亀裂(fissure)を介して抜け出す。
【0006】
通常、このヘルニアの原因である開口部(orifice)は、椎間板材料(disc material)の突起部および痛みを治療する外科手術時には治療されない。
【0007】
例えば、治療される組織の縫合からなる侵入的な外科手段を使用することが知られている。その手段は、力学的に弱められた損傷した組織に行なわれるので、治療される組織の周囲の組織に損傷を与え、開口部の不完全な閉鎖を許すにすぎない。
【0008】
病変へのポリマーステープルの挿入、損傷した部分へ取り付けられるメッシュまたは金属バリアを用いて、前述の組織を治療するためのもう1つの特別な方法が存在する。これらの加えられた要素は、比較的侵入的な方法を必要とし、機械的な治療が損傷した組織内で長持ちしないであろうという危険性が生じる。
【0009】
しかしながら、これらの技術は、亀裂または断裂を表面的に封鎖し、痛みを伴なう術後の回復を防止せず、または不十分に防止し、修復された組織を介して移動を再発する。
【0010】
実験室においては、生物学的またはシアノアクリレート接着剤は、単独でまたは標準の縫合と組み合わせて用いることが知られている。しかしながら、「ゴールドスタンダード(Gold standard)」と呼ばれるこの技術は、接着剤が生体適合性でないので、外科医が用いることができない。
【0011】
修復技術は、内臓および目のようないくつかのタイプの組織のために用いられることが知られており、それはレーザーに使用に基づく。このレーザーは、標的組織を正確な方式で局所的に加熱できるように調整することができる。生じる加熱は、衝撃面における組織を破壊するようなものである。それゆえ、腫瘍を破壊すること、または切り込み(incision)を非常に正確に形成することが可能である。また、レーザーは、より少ないエネルギーで用いることができ、生物組織の結合または接合を得るために、それほど強くない熱を局所的に生じることができる。
【0012】
レーザーが、局所的に正確に選ばれた深さにおいて加熱する限りにおいて、それが通過する組織は、周囲の組織の一部の切り込みを必要とする従来の外科技術を用いる場合より、損傷がより少ない。加えて、レーザービームは、光学ファイバーにより伝えることができ、経皮法においても、超微細侵入法(micro-invasive techniques)を可能とし、標準の外科技術より非常に損傷が少ない。
【0013】
繊維性結合組織の修復および接合のために、接着(cementing)と同様に、組織を修復するためにレーザーを生体適合性組成物と組み合わせる必要がある。また、この組成物は、手術の繰り返しを避けるために耐久性のある密封された治療箇所が得られるのを可能にしなければならない。
【0014】
レーザーによる繊維性結合組織の治療のために、亀裂または断裂などの組織欠陥を塞ぐことができ、これらの欠陥が再度開くのを避けるために固定化が可能な組成物の必要性が生じる。
【0015】
それゆえ、本発明の目的は、繊維性結合組織の修復に用いることができ、上述した不利益なしに、組織欠陥の効果的かつ安定な修復が可能な組成物を提供することにある。
【0016】
この目的のために、第一の態様によれば、本発明の対象は、レーザーを用いた繊維性結合組織の修復治療に用いるための水性組成物であって、以下を含有する:
1ml当たり1.5×109粒子を超え、厳密には1ml当たり1×1010粒子未満の濃度での金ナノ粒子、および
重量で30%から45%の間の濃度でのアルブミンおよび/またはコラーゲン。
【0017】
本発明の組成物は、レーザーを用いた繊維性結合組織の修復のために特に適切である。金ナノ粒子、およびアルブミンおよび/またはコラーゲンの濃度は、これら2つの成分によって、より流体密封の密閉状態の発生を可能とし、これは従来技術におけるより耐久性が高い。驚くべきことに、これらの濃度の外側では、接合は得られない、あるいは、接合はわずかに耐久性の乏しい密閉状態を有する。
【0018】
これらの濃度範囲内において、アルブミンおよび/またはコラーゲンの架橋は、外科的な使用に適合する暴露時間、すなわち30秒から40秒の間で効果的に生じる。この架橋時間は、接合部の保証された密閉を可能にする。
【0019】
さらに、金ナノ粒子の濃度が1ml当たり1.5×109粒子より低い場合には、接合部を得るために必要な暴露時間は増加し、それゆえ、より乏しい密閉が達成される。
【0020】
一方、1ml当たり1×1010粒子を超える金ナノ粒子の濃度においては、接合に関連する加熱は、制御するのが次第により困難になる。この場合、熱は、加えられたアルブミンおよび/またはコラーゲンと繊維性結合組織、特に熱の作用のもとで衰える脊椎円板の線維輪との間の密着性を減少させる影響が、次第に強くなる。このような訳で、接合部の密閉性は減少する。暴露が続けられると、誘導された熱は、繊維性結合組織の細胞に加えて周囲の細胞も損なう。
【0021】
アルブミンおよび/またはコラーゲンの重量濃度が30%より下に低くなると、その架橋は、接合の流体密閉性を保証するのに十分な耐性のあるフィルムをもはや形成しない。
【0022】
アルブミンおよび/またはコラーゲンの重量濃度が45%を超えて増加すると、架橋は強くなりすぎ、繊維性結合組織との架橋はもはや生じず、それによって流体密封性が減少する。
【0023】
本発明の組成物の金ナノ粒子は、熱の状態にエネルギーを安定にすることによって、レーザー波長を吸収するのに適応され、その熱は組成物のアルブミンおよび/またはコラーゲンの架橋を発生させる架橋において、アルブミンおよび/またはコラーゲンは生体適合性マトリックスを形成し、亀裂または断裂などの組織欠陥を塞いで、結合組織の亀裂の壁に付着する。それゆえ、上述したような濃度において用いられる本発明の組成物は、それらの架橋のためにアルブミンおよび/またはコラーゲンを十分に加熱するために、レーザー波長の所望の吸収を可能十分な金ナノ粒子の維持を許容し、これは耐久性を有する密閉状態の接合部を得るために十分な量である。本発明の特定の組成物は、従来技術におけるように、これらの欠陥を表面的のみではなく、組織欠陥を深部において固定することができる。
【0024】
それゆえ、閉鎖および固定化は、単一の工程で正確な仕方で付随して行なわれる。
【0025】
しかも、金ナノ粒子は、化学的に不活性であり、周囲の組織に潜在的に毒性の副生成物は何も生じない。アルブミンおよびコラーゲンは、その強度を長時間維持する固定マトリックス(cement matrix)を有利に形成でき、それは同様に、架橋の際に有害な副生成物を生じない。
【0026】
本発明の他の特徴によれば、本発明の組成物は、以下の任意の1またはこれ以上を単独で、または組み合わせて含有する:
−アルブミンおよび/またはコラーゲンは、ウシまたはヒト由来のものであり、修復されるべき組織に優れた生体適合性を保証する:
−金ナノ粒子は、「赤方偏移」に関して有する所望の吸収を保証できるように、球状、三角形状、またはロッド状のものである;
−金ナノ粒子の最大寸法は、3nmから250nmの間であり、これは、熱拡散を低減し、接合界面に熱を集中することを可能にする;
−繊維性結合組織は、軟骨、靭帯、または腱である。
【0027】
他の態様によれば、本発明の対象は用いられるアセンブリーであり、以下を含む:
−本発明の水性組成物;
−0.78μmから1.4μmの間の波長において放射するレーザー。
【0028】
本発明のアセンブリーは、繊維性結合組織の効果的で安定な修復のために特に適切である。用いられるレーザーは、周囲の組織を損傷せずにこれを通過する一方、所望の深さに届くことができる波長における光ビームを放射する。本発明の組成物を用いると、発色団金ナノ粒子の存在によって波長を短くすることが可能である。加えて、レーザーとの接触により組成物がいったん変性したとしても、この組成物は周囲の組織と生体適合性である。このような理由で、本発明のアセンブリーで得られる修復および硬化は、損傷を受けた組織の上に集中し、周囲の組織に触れることはない。
【0029】
本発明の他の特徴によれば、本発明のアセンブリーは、以下の任意の1またはこれ以上を単独で、または組み合わせて含む:
−レーザーは、周囲の組織への損傷を防ぐ約808nmの波長において放射する;
−レーザーは、パルス状または連続的である;
−レーザーは、小さな組織表面の正確な修復を可能にする3mm2から7mm2の間の直径のビームを有するように構成される;
−レーザーは、コリメーター、および光ビームの容易な取り扱いを可能にするためのファイバー光学系を伴なう;
−レーザーは、繊維性結合組織の衝突面の垂線に対して45°から60°の間の入射角を有するように構成され、これは本発明の組成物に最適な入射角度を与える。
【0030】
本発明は、添付された図面を参照した限定されない以下の説明を解釈すれば、より理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、正常な脊椎円板の模式的な断面図である。
【図2】図2は、ヘルニア状態の脊椎円板の模式的な断面図である。
【図3】図3は、脊椎円板中に作られた切り込みを修復するために用いられる本発明のアセンブリーの模式的な斜視図である。
【図4】図4は、開いた切り込みを有する脊椎円板の模式的な断面図である。
【図5】図5は、本発明のアセンブリーを用いたレーザー技術で修復された切り込みを有する脊椎円板の模式的な断面図である。
【図6】図6は、本発明のアセンブリーを用いたレーザー技術で修復された切り込みを有する脊椎円板の模式的な断面図であり、その中に管が挿入される環状流路(annular passageway)を含み、管は、エチレンブルーを含む食塩水の神経核への注入を許す加圧された注射器に接続される。
【発明の詳細な説明】
【0032】
本発明は、軟骨、例えば、膝関節の中央または側部半月板、靭帯、例えば脊椎円板の線維輪、真皮、腱、角膜のような繊維性結合組織の組織欠陥の修復を可能にする。
【0033】
組織欠陥は、典型的には、組織の徹底的な悪化を引き起こす断裂または亀裂の状態である。
【0034】
本発明の組成物は、それゆえ、レーザーを用いた繊維性結合組織の修復治療のために用いられ、以下を含む:
−1ml当たり1.5×109粒子から1ml当たり1×1010粒子の間の濃度での金ナノ粒子、および
−30重量%から45重量%の間の濃度でのアルブミンおよび/またはコラーゲン。
【0035】
本発明の組成物は、レーザーを用いた繊維性結合組織の修復のために特に適切である。繊維性結合組織は、断裂または亀裂のような繊維欠陥を、事実上、有することができる。
【0036】
本発明の組成物の金ナノ粒子は、レーザーの波長を吸収するため、および、本発明の組成物のアルブミンおよび/またはコラーゲンの架橋を生じる熱の状態のエネルギーを安定にするのに特に適合する。架橋において、アルブミンおよび/またはコラーゲンは、亀裂または断裂のような組織欠陥を塞ぐ生体適合性のマトリックスを形成する。それゆえ、レーザーとともに用いられる本発明の組成物は、深部における組織欠陥を固定することができ、従来技術の場合のような、これらの欠陥を表面的にのみ塞ぐことは行なわない。
【0037】
それゆえ、単一段階において、非毒性成分を含む組成物を用いて永続的な方法で組織欠陥を安定にすることが可能であり、周囲の組織に有害な副生成物は何も生じない。
【0038】
金ナノ粒子およびアルブミンおよび/またはコラーゲンの濃度は、これら2つの成分が、従来技術の場合よりも流体密封で耐久性のある接合部を生み出すのを可能にする。驚くべきことに、この濃度範囲の外では、接合部は得られず、あるいは密封されず耐久性が得られない、あるいは、辛うじて密封されて耐久性を示すにとどまる。
【0039】
これらの濃度範囲の中において、アルブミンおよび/またはコラーゲンの架橋は、外科的な使用に適合する暴露時間、すなわち30秒から40秒の間で起こる。この架橋時間は、接合部の保証された密閉を可能にする。
【0040】
同様に、金ナノ粒子の濃度が1ml当たり1.5×109粒子より低い場合には、接合部を得るために必要とされる暴露時間が増加し、より乏しい密閉が達成される。
【0041】
一方、1ml当たり1×1010粒子より多い金ナノ粒子の濃度においては、接合に関連する加熱は、制御するのが次第により困難になる。熱が次第に強くなるこの場合において、その影響は、加えられたアルブミンおよびコラーゲンと繊維性結合組織、特に熱の影響のもとで悪化する脊椎円板の線維輪との間の密着性を弱める。この理由により、接合部の流体密閉性が低下する。暴露が継続されると、誘導された熱は、繊維性結合組織の細胞のみならず周囲の細胞も破壊する。
【0042】
アルブミンおよび/またはコラーゲンの重量濃度が30%より低くなると、その架橋は、もはや接合部の密閉を保証するのに十分に耐性のあるフィルムを形成しない。
【0043】
アルブミンおよび/またはコラーゲンの重量濃度が45%を超えて増加すると、架橋は強すぎて、もはや繊維性結合組織とは起こらず、これは流体密閉性を弱める。
【0044】
アルブミンおよび/またはコラーゲンは、組織欠陥内に形成される接合部の強度を改善し、信頼性のある接合部を得るという利点を有する。架橋後、アルブミンおよびコラーゲンは、膠状の接着剤のように作用して、繊維性結合組織内にすでに存在するコラーゲン繊維の間に結合マトリックスを形成する。
【0045】
さらに、コラーゲンが結合組織の内因性物質の一部であるので、コラーゲンの使用によって、構造の支持(structural support)は改善される一方でポスト接合修復の速度が増加する。
【0046】
アルブミンおよび/またはコラーゲンは、ウシまたはヒトに由来のものとすることができ、これは、修復されるべき組織に優れた生体適合性を保証する。
【0047】
金ナノ粒子は、短い波長、一般的には820nm未満を選択することによって、レーザーのパワーの低減を可能にする。金ナノ粒子は、熱に変換するための光スペクトルの波長を選択的に吸収して、周囲のコラーゲンおよび/またはアルブミンへ熱を運ぶことができる。金ナノ粒子は、光ビームと組織との間の相互作用を制限するように、レーザービームの波長が減少するのを可能にする。これは、不均質媒体について特に重要であり、その中では、修復されるべき組織を囲む組織は、修復されるべき組織に許容される波長より短い波長に敏感である。例えば、ヘルニア状態の脊椎円板の線維輪の治療のケースが挙げられる。
【0048】
さらに、金ナノ粒子は、化学的に不活性で非毒性であるという利点を有する。また、それらは、組織細胞に有害または毒性のある分解副生成物は何も生じない。
【0049】
「ナノ粒子」は、その最大寸法が3nmから1000nmの間、さらには3nmから250nmの間のナノ粒子が意図される。これらのナノ粒子の小さなサイズは、治療部位から生じる熱拡散の減少を許し、接合界面に熱を集中し、それによって修復されるべき組織の周囲の組織に引き起こされる損傷を抑える。
【0050】
金ナノ粒子は、典型的には、金原子の凝集により形成された金ナノ粒子である。
【0051】
金ナノ粒子は、中空とすることができ、または、それらはシリカもしくはシリケートのコアを被覆するために用いることができる。
【0052】
金ナノ粒子は、ポリエチレングリコール(PEG)で被覆することによって機能付与することができる。このように、ナノ粒子は、これらナノ粒子の凝集を避ける水性組成物中に安定化されることは有利なことであり、これは、ナノ粒子の容易な取り扱いを与える。
【0053】
金ナノ粒子は、所望される吸収を保証する任意の適切な形状とすることができ、一方、赤色波長の方向、すなわち800nm未満にシフトするスペクトル吸収に相当する「赤方偏移」を制限する。それゆえ、これら粒子は、球状、三角形状、またはロッド形状のものとすることができる。
【0054】
本発明の組成物は、金ナノ粒子を脱イオン水中に希釈して、1ml当たり1.5×109粒子から1mml当たり1×1010粒子の間の濃度を得、30%から45%の間の最終組成に関連する重量濃度を得るようなアルブミンおよび/またはコラーゲンによって調製される。
【0055】
本発明の組成物は、程度の差はあるが粘性を有することができ、特にゲル状とすることができる。ゲルについては、本発明の組成物を所望の点に注入でき、その組成物は流動または漏れなしに注入された点にとどまることができることが有利である。これは、液体組成物と比較して、組織のより深部における修復を可能にする。ゲルは、接合が得られる前に体液が組成物を運び去るのを防いで、インビボでの組織欠陥の治療を有利に許す。このような外科的治療は、簡素化され、処置されるべき領域が「乾燥状態」に維持されるのを避ける。
本発明の他の態様によれば、また本発明は、繊維性結合組織の修復治療に用いられるアセンブリーに係り、以下を含む:
−本発明の水性組成物、および
−近赤外、すなわち0.78μmから1.4μmの間の波長において放射するレーザー。
【0056】
本発明の組成物は、繊維性結合組織の効率的な安定な修復のために特に適切である。レーザーおよび本発明に用いられる組成物は、有利なことに、周囲の組織に害がない。レーザービームは、加熱のような異なる組織との有害な相互作用を引き起こすことなく、修復されるべき組織に達する前にこれら異なる組織を通過する。組成物は、生体適合性であるのに加えて、毒性副生成物は何も生じないように構成される。修復、および本発明のアセンブリーで達成される硬化は、それゆえ、損傷組織に集中した。
【0057】
より具体的には、レーザーは、修復が行なわれる点、すなわち組織欠陥内で、本発明の組成物上に焦点が合わせられる。金ナノ粒子は、レーザービームにより放射された波長を吸収し、金ナノ粒子を囲むアルブミンおよび/またはコラーゲンの分子により捕捉された熱を放射する。熱の影響の下、アルブミンおよび/またはコラーゲンの巨大分子は、重合して接着剤マトリックスとなって、繊維性結合組織内の亀裂または断裂を塞いで硬化する。それゆえ、繊維性結合組織の修復された部分において、この組織の耐久性のある構造的な密着が保証され、これは組織欠陥を塞ぐ。
【0058】
レーザーは、約808nmの波長、すなわち、金ナノ粒子がアルブミンおよび/またはコラーゲンへ熱を戻すために吸収できる最適な波長において放射する。加えて、この波長においては、修復されるべき組織の周囲の組織との相互作用はより小さい。
【0059】
レーザーは、例えばダイオードレーザーとすることができる。
【0060】
レーザーは、パルス状または連続的とすることができる。適用できる場合には、パルス状のレーザーは、より大きなエネルギーパワーを有する光パルスを発生して、極めて短時間でエネルギーを集中でき、その一方、連続的なレーザーより高い温度における上昇を引き起こさない。
【0061】
レーザーのパワーは、10kWから12kWの間である。
【0062】
レーザーは、3mm2から7mm2の間の直径、または治療されるべき領域のサイズに適合した直径のビームを有する一方で、小さな組織表面の正確な修復を可能にする同一の表面パワー(cm2当たり)を維持するように構成される。
【0063】
レーザーは、表面の与えられた場所に焦点を合わせるコリメーターを伴なうことができる。
【0064】
外科手術の間、外科医は、必ずしも常に病変点にビームを向けることはできないが、例えば椎間板ヘルニアを治療するための針などを、人体の器官または骨を通過させることによって、病変に向けてレーザービームを位置付けなければならない。そのような目的のために、光ビームが内視鏡、または修復されるべき領域に近いハンドピースを通過するのを引き起こすことができる。
【0065】
レーザーは、ビームのより容易な取り扱いを可能にするファイバー工学系と、修復されるべき組織の点の上の光ビームから生じた光点のアジャストメントとを伴なうことができる。
【0066】
レーザーは、繊維性結合組織の衝突面の垂線に対して45°から90°の間、好ましくは45°から60°の間の入射角を有するように構成することができ、これは、本発明の組成物によって得られる最適な入射を可能にする。
【0067】
1つの変形によれば、コラーゲンおよび/またはアルブミンを含有するパッチを、断裂または亀裂の上に直接接着することができる。そのようなパッチの使用は、接合の機械的抵抗に50%までのさらなる増加を許し、水和した組成物の場合でも水性組成物の損失を防止する。
【0068】
椎間板ヘルニア型の病変の修復強度(repair strength)の比較例
<脊椎板ヘルニアの説明>
図1に示されるように、健全なまたは正常な脊椎円板5は、脊柱靭帯7(「線維輪」)で囲まれた中心3(「髄核」)を含む。脊椎円板は、また、脊椎骨9によって囲まれ、これは、神経根11が現れる脊髄を保護する。線維輪7は、筋肉および組織によって囲まれる。図3に示されるように、椎間板ヘルニアは、脊柱靭帯7を通過した中心部3の突出13に対応する。
【0069】
<本発明の水性組成物の例の調製>
この例で用いられる組成物は、以下のように調製する。
【0070】
アルブミン溶液は、約2gのウシアルブミン血清を5mlの脱イオン水で希釈して調製する。得られた最終濃度は、約40重量%、すなわち100ml当たり40gである。
【0071】
金ナノ粒子の溶液は、約2.47×109粒子の濃度を有する約11mlの脱イオン水からなる溶液を、30分間、10000rpmで遠心分離することによって調製する。金ナノ粒子の沈殿物が得られ、脱イオン水がその上に上澄みとなる。約10.61mlの上澄み水を除去し、残留水中に沈殿物を溶解する。水性組成物は、その後、1ml当たり約7×1010粒子の濃度の金ナノ粒子を含んで得られる。
【0072】
約142.9μlの金ナノ粒子の溶液を採取して1.5mlの管に収容し、約857.1μlの最終アルブミン溶液でその体積を完成させて、1ml当たり約1×1010ナノ粒子のナノ粒子濃度と、約34%のアルブミン重量濃度とを有する約1mlの最終溶液を得る。
【0073】
<用いられるレーザー>
用いられる医療ダイオードレーザーは、約808nmにおいて放射し、ダイオードレーザー源15に接続された約7kWの電源、レーザードライバー、および温度コントローラーを有する。図3に示される実施形態においては、ダイオードレーザー、ダイオードレーザー源、レーザードライバー、および温度コントローラーは、1つの同じ容器15内に含まれる。レーザーは、約3.1mmの直径を有する光点を形成するコリメーター16、およびファイバー光学ケーブル17と連結される。
【0074】
光ビームの光出力点は、修復されるべき線維輪の衝突面の垂線に対して約50°の角度で配置された金属ロッドに固定することができ、表面は、光学ファイバーからの光ビームの出力から約10cmに配置される。
【0075】
2つの熱電対は、温度データレコーダーに接続される。直径約0.4mmの熱電対は、治療される領域を発端として約55mmまでの深さで環の中に、および組織欠陥の2つの側の上に挿入することができる。温度はリアルタイムで記録され、約45℃の最大値に達する。
【0076】
<ブタ脊椎円板の製造>
脊椎円板は、40kgから80kgの重さのあるブタから、死後4時間以内に取り出す。
【0077】
採取された脊椎円板は、特別に外科用メスを用いて全ての肉を落とす。
【0078】
脊椎円板は、約−18℃に冷凍して使用まで保存する。
【0079】
<サンプルの調製>
椎間板ヘルニアの治療は、線維輪6(図4参照)に切り込みを形成して、ブタ脊椎円板でシミュレートする。切り込みは、非修復、または2つの異なる方法による修復済み21(図5参照)とする。
【0080】
図4に示されるように、切り込みは、外科用メス31を用いて、中心3に対して半径方向(矢印33)に形成する。
【0081】
第1の対照椎間板は、開放した切り込みを伴なって、すなわち修復せずに準備する。
【0082】
第2の椎間板は、「ゴールドスタンダード」技術で切り込みを修復して準備する。すなわち、切り込みの中に注入された2滴のシアンアクリレート接着剤の切り込み内への直接注入であり、切り込みは縫合点によって塞がれる。
【0083】
図5に示されるように、第3の脊椎板は、以下の手法における本発明のアセンブリーで切り込み21を修復することにより準備する。切り込みを形成した後、本発明の組成物41は、適切な手段43を用いて切り込み内に直接注入する。その後、上述したようにレーザーを用いて、切り込み上にビームの焦点を合わせて接合を達成する。
【0084】
外科用メスを用いて環状流路51を同様に形成し、これは管またはセンサー53(図6参照)を受け入れることが意図される。
【0085】
こうして準備されるサンプルは、固定され、線維輪7内に形成された環状流路51の1つの中に、切り込みの両側から横方向に約1cm、約0.75cmの深さまで可撓管55を挿入する。管55は加圧された注射器57に接続し、管55を介して神経核内へのメチレンブルーを含有する食塩水の注入を可能にする。注射器55は、約3ml.min-1に調整する。
【0086】
食塩水は、約2.16gの塩化ナトリウムを約250mlに希釈し、染色のためにメチレンブルーを加える。脊椎円板の中心部の中への注入が意図される食塩水の染色は、組織欠陥が液体を漏らす際の視覚的な識別を可能にする。
【0087】
注入の間、コンピュータータイプのデータプロセッサ装置60に接続可能な圧力センサー59で、椎間板内圧を測定する。1つの環状流路51のみを使用するために、Y型のバイパス装置61を使用して注入と圧力測定との間を選ぶことができる。
【0088】
健全な椎間板5、すなわち損傷のないものは、弾性的に変形して食塩水を含有できる線維輪7を有する。一方、椎間板ヘルニアを患って修復された椎間板は、切り込みの点で弱められ、修復が不十分な効果を有すると、修復された切り込みを通した食塩水の漏れとして置き換えられる。比較例について圧力を測定して、最大圧力を検出する。この最大圧力は、線維輪によって保持され得る注入された食塩水の最大量に相当する。最大圧力を超えると、食塩水は前述の輪の外に漏れる。それゆえ、最大圧力の測定は、切り込みの修復の頑健性および密閉性の検出を可能にする。
【0089】
健全な脊椎円板が耐え得る最大椎間板内圧は、一般的に32バールを超え、それゆえ、この例で用いられる最大圧力に対応する。.典型的には、健全な輪によって放出される前に注入された食塩水の体積は、実質的に5mlに等しい。
【0090】
<圧力測定の結果>
修復された、または修復されないそれぞれのタイプの椎間板について、約15試験を行なった。以下に与えられる値は、15試験について得られた結果の平均である。
【0091】
測定された最大圧力は、脊椎円板の線維輪の外に溶液が漏れる食塩水の圧力を超える。
【0092】
未修復の切り込みを含む脊椎円板は、約4.4バールから1.5バール以内までの最大圧力に耐える。
【0093】
ゴールドスタンダード法にしたがって修復された切り込みを含む脊椎円板は、約10バールから5バール以内までの最大圧力に耐える。
【0094】
本発明のアセンブリーで修復された切り込みを含む脊椎円板は、約25バールから2バール以内までの最大圧力に耐える。
【0095】
上述したように、健全な脊椎円板は、32バールを超える、特に実質的に34.5バールに等しい圧力に耐える。
【0096】
それゆえ、本発明のアセンブリーで修復された脊椎円板は、健全な脊椎円板、すなわち非損傷の輪が耐え得る圧力に近い圧力に耐える接合部を有する。結果として、本発明のアセンブリーにより形成された接合部は、非常に有効である。
【0097】
本発明は、椎間板ヘルニアの修復に限定されるものではなく、軟骨または他の繊維性結合組織の修復のためにもまた、使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーによる線維性結合組織の修復治療における使用のための水性組成物であって、
1ml当たり1.5.109粒子を超え、厳密には1ml当たり1.1010粒子未満の濃度での金ナノ粒子、および
30%から45%の間の重量濃度でのアルブミンおよび/またはコラーゲン
を含有する組成物。
【請求項2】
先立つ請求項に記載の組成物であって、前記アルブミンおよび/またはコラーゲンは、ウシまたはヒト由来のものである組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物であって、前記金ナノ粒子は、球状、三角形状、またはロッド形状のものである組成物。
【請求項4】
先立つ請求項のいずれかに記載の組成物であって、前記金ナノ粒子の最大寸法は3nmから250nmの間である組成物。
【請求項5】
先立つ請求項のいずれかに記載の組成物であって、前記繊維性結合組織は、軟骨、靭帯、または腱である組成物。
【請求項6】
先立つ請求項のいずれかに記載の水性組成物、
0.78μmから1.4μmの波長において放射するレーザー
を具備するアセンブリー。
【請求項7】
先立つ請求項に記載のアセンブリーであって、前記レーザーは、約808nmの波長において放射するアセンブリー。
【請求項8】
請求項6または7に記載のアセンブリーであって、前記レーザーは、パルス状または連続的であるアセンブリー。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項に記載のアセンブリーであって、前記レーザーは、3mm2から7mm2の間の直径を有するビームを有するように構成されているアセンブリー。
【請求項10】
先立つ請求項のいずれかに記載のアセンブリーであって、前記レーザーは、コリメーターおよびファイバー光学系を伴なうアセンブリー。
【請求項11】
請求項6乃至10のいずれか1項に記載のアセンブリーであって、前記レーザーは、繊維組織の衝撃面の法線に対して、45°から60°の間の入射角を有するように構成されているアセンブリー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−510186(P2013−510186A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538378(P2012−538378)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051792
【国際公開番号】WO2011/055047
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(508189212)
【氏名又は名称原語表記】CREASPINE
【出願人】(512120719)
【氏名又は名称原語表記】BERNARD Marc
【住所又は居所原語表記】20 chemin de Jacquin, 33850 LEOGNAN, FRANCE
【出願人】(512120720)
【氏名又は名称原語表記】TRICOT Franck
【住所又は居所原語表記】81 avenue du Marechal Leclerc, 33400 TALENCE, FRANCE
【Fターム(参考)】