金型の加工方法、金型及び光ピックアップ装置用の光学素子
【課題】例えばBD/DVD/CDの3種類の光ディスク互換用の対物レンズ等の光学素子を成形する金型であって、光学素子の効率低下を極力抑えることができる金型の加工方法、加工された金型、及び金型から転写された光学素子を提供する。
【解決手段】直線状の第1の縁部と該第1の縁部に交差する方向に延在する第2の縁部とから少なくとも一部が輪郭づけられるすくい面を備えた工具にて、前記第1の縁部を回転軸線に対して傾けてセットした工具により前記素材を切削することにより、前記第1の縁部により切削された第1の周面が回転軸線と平行になるので、かかる金型を用いて光学素子を転写すれば、前記第1の周面が光軸と平行にできる。
【解決手段】直線状の第1の縁部と該第1の縁部に交差する方向に延在する第2の縁部とから少なくとも一部が輪郭づけられるすくい面を備えた工具にて、前記第1の縁部を回転軸線に対して傾けてセットした工具により前記素材を切削することにより、前記第1の縁部により切削された第1の周面が回転軸線と平行になるので、かかる金型を用いて光学素子を転写すれば、前記第1の周面が光軸と平行にできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型の加工方法、金型及び光ピックアップ装置用の光学素子に関し、特に異なる種類の光ディスクに対して互換可能に情報の記録及び/又は再生(記録/再生)を行える光ピックアップ装置用の光学素子を成形するのに好適な金型、その金型の加工方法及び光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ピックアップ装置において、光ディスクに記録された情報の再生や、光ディスクへの情報の記録のための光源として使用されるレーザ光源の短波長化が進み、例えば、青紫色半導体レーザ等、波長390〜420nmのレーザ光源が実用化されている。これら青紫色レーザ光源を使用すると、DVD(デジタルバーサタイルディスク)と同じ開口数(NA)の対物レンズを使用する場合で、直径12cmの光ディスクに対して、15〜20GBの情報の記録が可能となり、対物光学素子のNAを0.85にまで高めた場合には、直径12cmの光ディスクに対して、23〜25GBの情報の記録が可能となる。
【0003】
上述のようなNA0.85の対物レンズを使用する光ディスクの例として、BD(ブルーレイディスク)が挙げられる。光ディスクの傾き(スキュー)に起因して発生するコマ収差が増大するため、BDでは、DVD における場合よりも保護基板を薄く設計し(DVDの0.6mmに対して、0.1mm)、スキューによるコマ収差量を低減している。
【0004】
ところで、BDに対して適切に情報の記録/再生ができると言うだけでは、光ディスクプレーヤ/レコーダ(光情報記録再生装置)の製品としての価値は十分なものとはいえない。現在において、多種多様な情報を記録したDVDやCD(コンパクトディスク)が販売されている現実をふまえると、BDに対して情報の記録/再生ができるだけでは足らず、例えばユーザが所有しているDVDやCDに対しても同様に適切に情報の記録/再生ができるようにすることが、BD用の光ディスクプレーヤ/レコーダとしての商品価値を高めることに通じるのである。このような背景から、BD用の光ディスクプレーヤ/レコーダに搭載される光ピックアップ装置は、BDとDVD、更にはCDの何れに対しても互換性を維持しながら適切に情報を記録/再生できる性能を有することが望まれる。
【0005】
BDとDVD、更にはCDの何れに対しても互換性を維持しながら適切に情報を記録/再生できるようにする方法として、BD用の光学系とDVDやCD用の光学系とを情報を記録/再生する光ディスクの記録密度に応じて選択的に切り替える方法が考えられるが、複数の光学系が必要となるので、小型化に不利であり、またコストが増大する。
【0006】
従って、光ピックアップ装置の構成を簡素化し、低コスト化を図るためには、互換性を有する光ピックアップ装置においても、BD用の光学系とDVDやCD用の光学系とを共通化して、光ピックアップ装置を構成する光学部品点数を極力減らすのが好ましい。そして、光ディスクに対向して配置される対物レンズを共通化することが光ピックアップ装置の構成の簡素化、低コスト化に最も有利となる。尚、記録/再生波長が互いに異なる複数種類の光ディスクに対して共通な対物レンズを得るためには、球面収差の波長依存性を有する回折構造等の光路差付与構造を対物レンズに形成する必要がある。
【0007】
ところで、このような対物レンズの光路差付与構造は、一般的に微細な構造であるため、金型の加工が難しいという問題がある。これに対し特許文献1には、ダイヤモンド工具を用いて断面が鋸歯状の、いわゆるブレーズ形状の回折格子に対応する微細溝を切削加工する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−62707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、本発明者らの研究によれば、上述した特許文献1の技術にて微細溝を加工した場合、例えばBD/DVD/CD互換用の対物レンズにおける設計上の効率に対し、実際に加工した金型により転写成形された対物レンズの実効率の低下が大きいことが判明した。特に、単なるブレーズ形状ではなく、略光軸方向に延在し互いに向かい合う周壁を備えた構造において特に実効率の低下が著しいことも見出した。例えば、DVDやCD等においても、光路差付与構造を有する対物レンズは用いられているが、特許文献1の技術にて微細溝の加工を行っても、設計効率に対して実効率は、特に著しい低下は見られないという実情がある。
【0010】
本発明は、上述の課題を解決することを目的としたものであり、例えばBD/DVD/CDの3種類の光ディスク互換用の対物レンズ等の光学素子を成形する金型であって、光学素子の効率低下を極力抑えることができる金型の加工方法、加工された金型、及び金型から転写された光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の金型の加工方法は、光学素子を成形する金型の素材を、第1の縁部と該第1の縁部に交差する方向に延在する第2の縁部とから少なくとも一部が輪郭づけられるすくい面を備えた工具にて切削する金型の加工方法において、
前記第1の縁部が、前記第2の縁部よりも金型の素材の回転軸線より遠い位置になり、且つ前記すくい面の先端が回転軸線より離れるように、前記工具の軸線を前記回転軸線に対して傾けてセットした前記工具により、金型の素材を回転させながら切削することにより、前記第1の縁部により切削された第1の周面と、前記第2の縁部により切削された第2の周面とを有する凹状の輪帯構造を少なくとも一部形成することを特徴とする。
【0012】
本発明者は、鋭意研究により、実際の対物レンズにて効率が低下する理由を解析した。その結果、以下のことが判明した。図1は、従来の技術により加工した金型より成形した対物レンズの光学面S1の拡大図である。この対物レンズは、内側壁IWと外側壁OWとを有する輪帯凸部を複数個備えた回折構造Dを有しており、内側壁IWと外側壁OWとは対向し合う方向に延在している。ここで、対物レンズに平行光束Lを入射させたとき、内側壁IWと外側壁OW以外の光学面に入射した光束は、光ディスクの集光に用いられるが、内側壁IWと外側壁OWに入射した光束(ハッチングで示す)は、集光に用いられることはほとんどない。これを影の効果といい、効率低下の要因となっている。しかるに、影の効果による効率低下は、DVDやCD用の対物レンズでは一般的に無視できるが、BD/DVD/CD互換用の対物レンズなどでは、各波長の光束で効率を取り合いになるため、より実効率を高める必要があるといえる。
【0013】
ここで、本発明者らは、外側壁OWに着目した。点線で示すように外側壁OWを光軸に対して平行に形成すれば、平行光束が外側壁OWに入射することが抑制され、その分、対物レンズの効率低下を抑制できる。ところが、従来技術によれば、図1に示すように外側壁OWが傾くような金型の加工が行われていたのである。
【0014】
より具体的に説明すると、模式図である図2(a)において、金型の素材WKに対して、工具の軸線BXを回転軸線と平行とした状態で切削する従来技術の例である。従来技術では、切削用のダイヤモンド工具BTの軸線BXを、素材WKの回転軸線ROと平行に設定していたので、輪帯状の凹部PJの外側壁OW’が、ダイヤモンド工具BTのすくい面の縁部に沿って、工具先端に向かうに連れて回転軸線に近づくように傾いてしまっていた。このような切削加工により形成された金型を用いて対物レンズを転写成形すると、図1に示すように外側壁OWが光軸に対して傾いた輪帯溝が形成されるのである。
【0015】
そこで本発明者らは、以上の知見に基づいて、工具BTのすくい面を回転させて、回折効率を向上させることを思いついたのである。つまり、図2(b)に示すように、回転軸線ROに直交する面内で、工具BTのすくい面の軸線BXを回転(θ)させれば、設計状態に近い対物レンズを成形できる金型を加工できるのである。より具体的には、第1の縁部BT1と該第1の縁部BT1に交差する方向に延在する第2の縁部BT2とから少なくとも一部が輪郭づけられるすくい面BT3を備えた工具BTを、第1の縁部BT1が、第2の縁部BT2よりも金型の素材WKの回転軸線ROより遠い位置になり、且つすくい面BT3の先端が回転軸線ROより離れるように、金型の素材WKの回転軸線に対して傾けてセットして、素材WKを切削することにより、第1の縁部BT1により切削された第1の周面OW’を回転軸線と略平行にできるので、かかる金型を用いて光学素子を転写すれば、その第1の周面により転写された輪帯溝の外側OIW(図1参照)を光軸と平行にできる。これにより光学素子の効率を高めることができるのである。
【0016】
請求項2に記載の金型の加工方法は、請求項1に記載の発明において、前記素材の被加工部における外周から中央まで、前記工具の軸線を前記回転軸線に対して傾けてセットした状態で切削することを特徴とする。これにより、前記工具の設定の手間が省ける。
【0017】
請求項3に記載の金型の加工方法は、前記工具の軸線の前記回転軸線に対する傾き角を、前記素材の被加工部の切削途中で変更することを特徴とする。このような構成にすることによって、例えばブレーズ型構造しかない領域は、工具の軸線を回転軸線に平行にし、互いに向かい合う周壁を有する凹部を有する領域では、工具の軸線を回転軸線に対して傾ける等、構造に応じて最も好ましい工具の軸線の角度で切削でき、より設計形状に近い金型を得ることが可能となり、光の利用効率をさらに向上できるため好ましい。
【0018】
請求項4に記載の金型の加工方法は、請求項3に記載の発明において、前記素材の被加工部における外周から中間部まで、前記工具の軸線を前記回転軸線に平行にセットした状態で切削し、前記中間部から中央まで、前記工具の軸線を前記回転軸線に対して傾けてセットした状態で切削することを特徴とする。特に光学素子の中央付近は、互換用の光路差付与構造を有していることが多いので、本発明の効果が期待できる。
【0019】
請求項5に記載の金型の加工方法は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、少なくとも一部の凹状の輪帯構造の周壁において、少なくとも前記輪帯構造の光軸から遠い側の周壁は、光軸に対して平行であることを特徴とする。本構成によって上述のように輪帯溝の外側壁による影の効果を低減できるため、光学素子の効率を高めることができ好ましい。
【0020】
請求項6に記載の金型の加工方法は、請求項5に記載の発明において、少なくとも前記輪帯構造の光軸に近い側の周壁は、光軸に対して傾いていることを特徴とする。光軸に近い側の周壁、例えば、図1でいうところの内側壁IWにおいては、例え、内側壁を光軸と平行にしたとしても、影の効果は避けられない。従って、内側壁IWを光軸に対して平行にする必要性は、外側壁OWに比して低い。そのため、内側壁IWは、光軸に対して傾いたままとすることにより、工具の軸線の回転軸線に対する傾け角の設定についてより多くの自由度を確保することができ、好ましい。例えば、工具の軸線の回転軸線に対する傾け角を、外側壁が光軸に平行になるように設定し、その傾け角のまま、全段差を切削することも可能となるため、切削中の工具の操作がより容易となる。
【0021】
請求項7に記載の金型の加工方法は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、前記工具のすくい面は、前記第1の縁部端部と前記第2の縁部端部とを結ぶ円弧状の第3の縁部を有し、前記第3の縁部の半径は、0.1〜0.5μmであることを特徴とする。これにより、加工のダレが減少し、微細な構造を精度良く加工できる。
【0022】
請求項8に記載の金型の加工方法は、請求項1乃至7のいずれかに記載の発明において、前記工具の軸線の前記回転軸線に対する傾け角が、前記第1の縁部と前記第2の縁部とがなす頂角の約半分であることを特徴とする。本構成によって、第1の縁部が回転軸線に対して平行となるため、第1の縁部で切削した段差を回転軸線に対して平行にしやすくなる。
【0023】
請求項9に記載の金型の加工方法は、請求項1乃至8のいずれかに記載の発明において、前記第1の縁部と前記第2の縁部とがなす頂角は、20〜30°であることを特徴とする。これにより、微細形状への干渉が減少し、より設計形状に近い加工が可能になる。
【0024】
請求項10に記載の金型の加工方法は、請求項9に記載の発明であって、前記工具の軸線の前記回転軸線に対する傾け角が、8〜18°であることを特徴とする。
【0025】
請求項11に記載の金型は、請求項1乃至5のいずれかに記載の加工方法により加工されたことを特徴とする。
【0026】
請求項12に記載の光学素子は、第1波長λ1(390nm≦λ1≦415nm)の第1光束を射出する第1光源と、第2波長λ2(630nm≦λ2≦670nm)の第2光束を射出する第2光源と、第3波長λ3(760nm≦λ3≦820nm)の第3光束を射出する第3光源とを有し、前記第1光束を用いて厚さがt1の保護基板を有するBDの情報の記録及び/又は再生を行い、前記第2光束を用いて厚さがt2(t1<t2)の保護基板を有するDVDの情報の記録及び/又は再生を行い、前記第3光束を用いて厚さがt3(t2<t3)の保護基板を有するCDの情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において用いられる光学素子であって、前記光学素子の少なくとも一つの光学面は、中央領域と、中央領域の周りの中間領域と、中間領域の周りの周辺領域とを少なくとも有し、前記光学素子は、前記中央領域を通過する前記第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中間領域を通過する前記第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中間領域を通過する前記第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中間領域を通過する前記第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、前記周辺領域を通過する前記第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記周辺領域を通過する前記第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、前記周辺領域を通過する前記第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、前記中央領域は、第1光路差付与構造を備え、前記第1光路差付与構造は、ブレーズ型構造を有する第1基礎構造とブレーズ型構造を有する第2基礎構造を互いに逆向きに重ね合わせた構造であり、前記第1基礎構造の段差は光軸とは逆の方向を向いており、前記第2基礎構造の段差は光軸の方向を向いており、前記第1基礎構造を通過した前記第1光束の1次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、前記第1基礎構造を通過した前記第2光束の1次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、前記第1基礎構造を通過した前記第3光束の1次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、前記第2基礎構造を通過した前記第1光束の2次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、前記第2基礎構造を通過した前記第2光束の1次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、前記第1基礎構造を通過した前記第3光束の1次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、前記第1光路差付与構造は、略光軸方向に延在し互いに向かい合う周壁を備えた輪帯凸部を有し、少なくとも前記輪帯凸部の光軸から遠い側の周壁は、光軸に対して平行であり、前記輪帯凸部の光軸に近い側の周壁は、光軸に対して前記輪帯凸部の先端に向かうにつれて光軸から離れるように傾いていることを特徴とする。
【0027】
光軸に近い側の周壁は、理想形状であっても、影の効果による効率ロスを免れないため、理想形状にしなくても光量のロスはあまり変化がない。つまり、光軸に近い側の傾きによる効率の寄与度は、光軸から遠い側の周壁の傾きによる効率の寄与度より小さい。そのため、輪帯凸部の光軸に近い側の周壁を傾けていることにより、工具の角度をあまりに細かく制御する必要がなく、製造しやすく、それでいて、影の効果による光利用効率のロスを大きくすることはない。また、輪帯凸部の光軸に近い側の周壁を、光軸に対して輪帯凸部の先端に向かうにつれて光軸から離れるように傾けていることにより、射出成形の際、金型から光学素子をスムーズに離型できため成形性を良くできる。更に、輪帯凸部の光軸から遠い側の周壁を光軸に平行にすることにより、影の効果による効率のロスを大幅に低減でき、設計値に近い理想的な光利用効率を得ることが可能となる。即ち、製造及び成形しやすく、それでいて、光利用効率の高い光学素子を得ることが可能となるのである。
【0028】
また、第1光路差付与構造は、ブレーズ型構造を有する第1基礎構造とブレーズ型構造を有する第2基礎構造を互いに逆向きに重ね合わせた構造であり、かつ、第1基礎構造は、第1基礎構造を通過した第1光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする(以下、「1/1/1」とも記載する。)回折構造であり、前記第2基礎構造は、第2基礎構造を通過した第1光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第2基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第2基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする(以下、「2/1/1」とも記載する)回折構造である。このように、ブレーズ型構造を有する「1/1/1」の回折構造とブレーズ型構造を有する「2/1/1」の回折構造を互いに逆向きに重ね合わせた場合、第1光路差付与構造の段差を低くすることできる。光路差付与構造の段差を低くできると、製造誤差による効率のロスを低減できるため、よりいっそう光利用効率の高い光学素子を得ることが可能となる。
【0029】
また、ブレーズ型構造を有する第1基礎構造とブレーズ型構造を有する第2基礎構造を互いに逆向きに重ね合わせる際、「1/1/1」の回折構造を有する第1基礎構造の段差は光軸とは逆の方向を向いていて、「2/1/1」の回折構造を有する第2基礎構造の段差は光軸の方向を向いている。この場合、「1/1/1」の回折構造を有する第1基礎構造の段差が光軸の方向を向いていて、「2/1/1」の回折構造を有する第2基礎構造の段差が光軸とは逆の方向を向いている場合に比べて、第1光路差付与構造が有する輪帯凸部の光軸から遠い側の周壁の数が多くなる。そのため、輪帯凸部の光軸から遠い側の周壁を光軸に平行にすることにより、影の効果による効率のロスを大幅に低減し、設計値に近い理想的な光利用効率を得るという本発明がより有用となる。
【0030】
請求項13に記載の光学素子は、請求項12に記載の発明において、前記輪帯溝は光路差付与構造であることを特徴とする。
【0031】
請求項14に記載の光学素子は、請求項12又は13に記載の発明において、前記光学素子は対物レンズであることを特徴とする。
【0032】
本発明に係る光学素子が用いられる光ピックアップ装置は、第1光源、第2光源、第3光源の少なくとも3つの光源を有する。さらに、本発明の光ピックアップ装置は、第1光束をBDの情報記録面上に集光させ、第2光束をDVDの情報記録面上に集光させ、第3光束をCDの情報記録面上に集光させるための集光光学系を有する。また、本発明の光ピックアップ装置は、BD、DVD又はCDの情報記録面からの反射光束を受光する受光素子を有する。
【0033】
BDは、厚さがt1の保護基板と情報記録面とを有する。DVDは厚さがt2(t1<t2)の保護基板と情報記録面とを有する。CDは、厚さがt3(t2<t3)の保護基板と情報記録面とを有する。なお、BD、DVD又はCDは、複数の情報記録面を有する複数層の光ディスクでもよい。
【0034】
本明細書において、BDとは、波長390〜415nm程度の光束、NA0.8〜0.9程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.05〜0.125mm程度であるBD系列光ディスクの総称であり、単一の情報記録層のみ有するBDや、2層又はそれ以上の情報記録層を有するBD等を含むものである。更に、本明細書においては、DVDとは、NA0.60〜0.67程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.6mm程度であるDVD系列光ディスクの総称であり、DVD−ROM、DVD−Video、DVD− Audio、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW等を含む。また、本明細書においては、CDとは、NA0.45〜0.51程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが1.2mm 程度であるCD系列光ディスクの総称であり、CD−ROM、CD−Audio、CD−Video、CD−R、CD−RW等を含む。尚、記録密度については、BDの記録密度が最も高く、次いでDVD、CDの順に低くなる。
【0035】
なお、保護基板の厚さt1、t2、t3に関しては、以下の条件式(1)、(2)、(3)を満たすことが好ましいが、これに限られない。尚、ここで言う、保護基板の厚さとは、光ディスク表面に設けられた保護基板の厚さのことである。即ち、光ディスク表面から、表面に最も近い情報記録面までの保護基板の厚さのことをいう。
0.050mm ≦ t1 ≦ 0.125mm (1)
0.5mm ≦ t2 ≦ 0.7mm (2)
1.0mm ≦ t3 ≦ 1.3mm (3)
【0036】
本明細書において、第1波長λ1の光束を出射するBD用の第1光源、第2波長λ2の光束を出射するDVD用の第2光源、第3波長λ3の光束を出射するCD用の第3光源は、好ましくはレーザ光源である。レーザ光源としては、好ましくは半導体レーザ、シリコンレーザ等を用いることが出来る。第1光源から出射される第1光束の第1波長λ1、第2光源から出射される第2光束の第2波長λ2(λ2>λ1)、第3光源から出射される第3光束の第3波長λ3(λ3>λ2)は以下の条件式(4)、(5) を満たすことが好ましい。
1.5・λ1 < λ2 < 1.7・λ1 (4)
1.8・λ1 < λ3 < 2.0・λ1 (5)
【0037】
第1光源の第1波長λ1は好ましくは、350nm 以上、440nm以下、より好ましくは、390nm以上、415nm以下であって、第2光源の第2波長λ2は好ましくは570nm以上、680nm以下、より好ましくは、630nm以上、670nm以下であって、第3光源の第3波長λ3は好ましくは、750nm以上、880nm以下、より好ましくは、760nm以上、820nm以下である。
【0038】
光ピックアップ装置の集光光学系は、対物レンズを有する。集光光学系は、対物レンズの他にコリメータ等のカップリングレンズを有していることが好ましい。カップリングレンズとは、対物レンズと光源の間に配置され、光束の発散角を変える単レンズ又はレンズ群のことをいう。コリメータは、カップリングレンズの一種で、コリメータに入射した光を平行光にして出射するレンズである。これらはいずれも光学素子である。本明細書において、対物レンズとは、光ピックアップ装置において光ディスクに対向する位置に配置され、光源から射出された光束を光ディスクの情報記録面上に集光する機能を有する光学系を指す。また、対物レンズは、単玉又は複数枚からなるプラスチック又はガラス製のレンズであることが好ましい。好ましくは、凸レンズである。また、対物レンズは、屈折面が非球面であることが好ましい。また、対物レンズは、光路差付与構造が設けられるベース面が非球面であることが好ましい。
【0039】
光学素子の素材に樹脂を用いる場合、シクロオレフィン樹脂が好適に用いられ、具体的には、日本ゼオン社製のZEONEXや、三井化学社製のAPEL、TOPAS ADVANCED POLYMERS社製のTOPAS、JSR社製ARTONなどが好ましい例として挙げられる。
【0040】
また、対物レンズを構成する材料のアッベ数は、50以上であることが好ましい。
【0041】
3互換用対物レンズについて、以下に記載する。3互換用対物レンズの少なくとも一つの光学面が、中央領域と、中央領域の周りの中間領域と、中間領域の周りの周辺領域とを少なくとも有する。中央領域は、3互換用対物レンズの光軸を含む領域であることが好ましいが、光軸を含む微小な領域を未使用領域や特殊な用途の領域とし、その周りを中心領域(中央領域ともいう)としてもよい。中央領域、中間領域、及び周辺領域は同一の光学面上に設けられていることが好ましい。図3に示されるように、中央領域CN、中間領域MD、周辺領域OTは、同一の光学面上に、光軸を中心とする同心円状に設けられていることが好ましい。また、3互換用対物レンズの中央領域には3波長共用の第一光路差付与構造が設けられ、中間領域には2波長共用の第二光路差付与構造が設けられている。周辺領域は屈折面であってもよいし、周辺領域に第三光路差付与構造が設けられていてもよい。中央領域、中間領域、周辺領域はそれぞれ隣接していることが好ましいが、間に僅かに隙間があっても良い。
【0042】
3互換用対物レンズの中央領域は、BD、DVD及びCDの記録/再生に用いられると好ましいBD/DVD/CD共用領域と言える。即ち、3互換用対物レンズは、中央領域を通過する第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光し、中央領域を通過する第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光し、中央領域を通過する第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光すると好ましい。また、中央領域に設けられた第1光路差付与構造は、第1光路差付与構造を通過する第1光束及び第2光束に対して、BDの保護基板の厚さt1とDVDの保護基板の厚さt2の違いにより発生する球面収差/第1光束と第2光束の波長の違いにより発生する球面収差を補正することが好ましい。さらに、第1光路差付与構造は、第1光路差付与構造を通過した第1光束及び第3光束に対して、BDの保護基板の厚さt1とCDの保護基板の厚さt3との違いにより発生する球面収差/第1光束と第3光束の波長の違いにより発生する球面収差を補正することが好ましい。
【0043】
3互換用対物レンズの中間領域は、BD、DVDの記録/再生に用いられ、CDの記録/再生に用いられないと好ましいBD/DVD共用領域と言える。即ち、3互換用対物レンズは、中間領域を通過する第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光し、中間領域を通過する第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光すると好ましい。その一方で、中間領域を通過する第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光しないと好ましい。3互換用対物レンズの中間領域を通過する第3光束は、CDの情報記録面上でフレアを形成することが好ましい。図4に示すように、3互換用対物レンズを通過した第3光束がCDの情報記録面上で形成するスポットにおいて、光軸側(又はスポット中心部)から外側へ向かう順番で、光量密度が高いスポット中心部SCN、光量密度がスポット中心部より低いスポット中間部SMD、光量密度がスポット中間部よりも高くスポット中心部よりも低いスポット周辺部SOTを有することが好ましい。スポット中心部が、光ディスクの情報の記録/再生に用いられ、スポット中間部及びスポット周辺部は、光ディスクの情報の記録/再生には用いられない。上記において、このスポット周辺部をフレアと言っている。但し、スポット中心部の周りにスポット中間部が存在せずスポット周辺部があるタイプ、即ち、集光スポットの周りに薄く光が大きなスポットを形成する場合も、そのスポット周辺部をフレアと呼んでもよい。つまり、3互換用対物レンズの中間領域を通過した第3光束は、CDの情報記録面上でスポット周辺部を形成することが好ましいとも言える。
【0044】
3互換用対物レンズの周辺領域は、BDの記録/再生に用いられ、DVD及びCDの記録/再生に用いられないと好ましいBD専用領域と言える。即ち、3互換用対物レンズは、周辺領域を通過する第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光すると好ましい。その一方で、周辺領域を通過する第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光せず、周辺領域を通過する第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光しないと好ましい。3互換用対物レンズの周辺領域を通過する第2光束及び第3光束は、DVD及びCDの情報記録面上でフレアを形成することが好ましい。つまり、3互換用対物レンズの周辺領域を通過した第2光束及び第3光束は、DVD及びCDの情報記録面上でスポット周辺部を形成することが好ましい。
【0045】
第1光路差付与構造は、3互換用対物レンズの中央領域の面積の70%以上の領域に設けられていることが好ましく、90%以上がより好ましい。より好ましくは、第1光路差付与構造が、中央領域の全面に設けられていることである。第2光路差付与構造は、3互換用対物レンズの中間領域の面積の70%以上の領域に設けられていることが好ましく、90%以上がより好ましい。より好ましくは、第2光路差付与構造が、中間領域の全面に設けられていることである。周辺領域が第3光路差付与構造を有する場合、第3光路差付与構造は、3互換用対物レンズの周辺領域の面積の70%以上の領域に設けられていることが好ましく、90%以上がより好ましい。より好ましくは、第3光路差付与構造が、周辺領域の全面に設けられていることである。
【0046】
なお、本明細書でいう光路差付与構造とは、入射光束に対して光路差を付加する構造の総称であって、輪帯溝を有するものをいう。光路差付与構造には、位相差を付与する位相差付与構造も含まれる。また、位相差付与構造には回折構造が含まれる。本発明の光路差付与構造は回折構造であることが好ましい。光路差付与構造は、段差を有し、好ましくは段差を複数有する。この段差により入射光束に光路差及び/又は位相差が付加される。光路差付与構造により付加される光路差は、入射光束の波長の整数倍であっても良いし、入射光束の波長の非整数倍であっても良い。段差は、光軸垂直方向に周期的な間隔をもって配置されていてもよいし、光軸垂直方向に非周期的な間隔をもって配置されていてもよい。また、光路差付与構造を設けた対物レンズが単玉非球面レンズの場合、光軸からの高さによって光束の対物レンズへの入射角が異なるため、光路差付与構造の段差量は各輪帯毎に若干異なることとなる。例えば、対物レンズが単玉非球面の凸レンズである場合、同じ光路差を付与させる光路差付与構造であっても、一般的に光軸から離れる程、段差量が大きくなる傾向となる。
【0047】
また、本明細書でいう回折構造とは、段差を有し、回折によって光束を収束あるいは発散させる作用を持たせる構造の総称である。例えば、単位形状が光軸を中心として複数並ぶことによって構成されており、それぞれの単位形状に光束が入射し、透過した光の波面が、隣り合う輪帯毎にズレを起こし、その結果、新たな波面を形成することによって光を収束あるいは発散させるような構造を含むものである。回折構造は、好ましくは段差を複数有し、段差は光軸垂直方向に周期的な間隔をもって配置されていてもよいし、光軸垂直方向に非周期的な間隔をもって配置されていてもよい。また、回折構造を設けた対物レンズが単玉非球面レンズの場合、光軸からの高さによって光束の対物レンズへの入射角が異なるため、回折構造の段差量は各輪帯毎に若干異なることとなる。例えば、対物レンズが単玉非球面の凸レンズである場合、同じ回折次数の回折光を発生させる回折構造であっても、一般的に光軸から離れる程、段差量が大きくなる傾向となる。
【0048】
ところで、光路差付与構造は、光軸を中心とする同心円状の複数の輪帯を有することが好ましい。また、光路差付与構造は、一般に、様々な断面形状(光軸を含む面での断面形状) をとり得、光軸を含む断面形状がブレーズ型構造と階段型構造とに大別される。
【0049】
ブレーズ型構造とは、図5(a)、(b)に示されるように、光路差付与構造を有する光学素子の光軸を含む断面形状が、鋸歯状の形状ということである。尚、図5の例においては、上方が光源側、下方が光ディスク側であって、母非球面としての平面に光路差付与構造が形成されているものとする。ブレーズ型構造において、1つのブレーズ単位の光軸垂直方向の長さをピッチPという。(図5(a)、(b)参照)また、ブレーズの光軸に平行方向の段差の長さを段差量Bという。(図5(a)参照)このような単一のブレーズ型構造では互いに向かい合う周壁は存在しない。
【0050】
また、階段型構造とは、図5(c)、(d)に示されるように、光路差付与構造を有する光学素子の光軸を含む断面形状が、小階段状のもの(階段単位と称する)を複数有するということである。尚、本明細書中、「Vレベル」とは、階段型構造の1つの階段単位において光軸垂直方向に対応する(向いた)輪帯状の面(以下、テラス面と称することもある)が、段差によって区分けされV個の輪帯面毎に分割されていることをいい、特に3レベル以上の階段型構造は、小さい段差と大きい段差を有することになる。例えば、図5(c)に示す光路差付与構造を、5レベルの階段型構造といい、図5(d)に示す光路差付与構造を、2レベルの階段型構造(バイナリ構造ともいう)という。
【0051】
尚、光路差付与構造は、ある単位形状が周期的に繰り返されている構造であることが好ましい。 ここでいう「単位形状が周期的に繰り返されている」とは、同一の形状が同一の周期で繰り返されている形状は当然含む。さらに、周期の1単位となる単位形状が、規則性を持って、周期が徐々に長くなったり、徐々に短くなったりする形状も、「単位形状が周期的に繰り返されている」ものに含まれているとする。
【0052】
また、第1光路差付与構造及び第2光路差付与構造を設ける場合は、それぞれ対物レンズの異なる光学面に設けてもよいが、同一の光学面に設けることが好ましい。更に、第3光路差付与構造を設ける場合も、第1光路差付与構造及び第2光路差付与構造と同じ光学面に設けることが好ましい。同一の光学面に設けることにより、製造時の偏芯誤差を少なくすることが可能となるため好ましい。また、第1光路差付与構造、第2光路差付与構造及び第3光路差付与構造は、対物レンズの光ディスク側の面よりも、対物レンズの光源側の面に設けられることが好ましい。別の言い方では、第1光路差付与構造、第2光路差付与構造及び第3光路差付与構造は、対物レンズの曲率半径の絶対値が小さい方の光学面に設けることが好ましい。尚、第1基礎構造と第2基礎構造を重畳せずに、それぞれ異なる光学面に設けることも考えられる。第3基礎構造と第4基礎構造も、同様に重畳せずにそれぞれ異なる光学面に設けることも考えられる。
【0053】
光路差付与構造は、複数の基礎構造(例えば図6(d)の第1基礎構造と第2基礎構造)を重ね合わせた構造としても良い。
【0054】
光路差付与構造の重畳例をいくつか図6(a)、(b)、(c)として示す。これらは2種類のブレーズ型構造を重畳した例である。尚、図6は、便宜上、第1光路差付与構造ODS1が平板状に設けられたものとして示されているが、単玉非球面の凸レンズ上に設けられていてもよい。第2基礎構造を通過した第1光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第2基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第2基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする(「2/1/1」)回折構造である第2基礎構造BS2に、第1基礎構造を通過した第1光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする(「1/1/1」)回折構造である第1基礎構造BS1が重ねあわされた例である。図6(a)においては、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAの方向を向いており、第1基礎構造BS1の段差は光軸OAとは逆の方向を向いている。更に、第2基礎構造BS2の全ての段差の位置と、第1基礎構造BS1の段差の位置が合っていることがわかる。次に、図6(b)においては、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAの方向を向いており、第1基礎構造BS1の段差も光軸OAの方向を向いている。更に、第2基礎構造BS2の全ての段差の位置と、第1基礎構造BS1の段差の位置が合っていることがわかる。次に、図6(c)においては、第1基礎構造BS1の段差は光軸OAと逆の方向を向いており、第2基礎構造BS2の段差も光軸OAと逆の方向を向いている。更に、第2基礎構造BS2の全ての段差の位置と、第1基礎構造BS1の段差の位置が合っていることがわかる。
【0055】
光路差付与構造の種々の例を述べてきたが、本明細書において、「向かい合う周壁を備えた輪帯溝を有する光路差付与構造」というときは、特に図5(c)、(d)、図6(a)に示す構造をいう。
【0056】
BDに対して情報を再生/記録するために必要な対物レンズの像側開口数をNA1とし、DVDに対して情報を再生/記録するために必要な対物レンズの像側開口数をNA2(NA1>NA2)とし、CDに対して情報を再生/記録するために必要な対物レンズの像側開口数をNA3(NA2>NA3)とする。NA1は、0.75以上、0.9以下であることが好ましく、より好ましくは、0.8以上、0.9以下である。特にNA1は0.85であることが好ましい。NA2は、0.55以上、0.7以下であることが好ましい。特にNA2は0.60又は0.65であることが好ましい。また、NA3は、0.4以上、0.55以下であることが好ましい。特にNA3は0.45又は0.53であることが好ましい。
【0057】
対物レンズの中央領域と中間領域の境界は、第3光束の使用時において、0.9・NA3以上、1.2・NA3以下(より好ましくは、0.95・NA3以上、1.15・NA3以下)の範囲に相当する部分に形成されていることが好ましい。より好ましくは、対物レンズの中央領域と中間領域の境界が、NA3に相当する部分に形成されていることである。また、対物レンズの中間領域と周辺領域の境界は、第2光束の使用時において、0.9・NA2以上、1.2・NA2以下(より好ましくは、0.95・NA2以上、1.15・NA2以下)の範囲に相当する部分に形成されていることが好ましい。より好ましくは、対物レンズの中間領域と周辺領域の境界が、NA2に相当する部分に形成されていることである。
【0058】
対物レンズを通過した第3光束をCDの情報記録面上に集光する場合に、球面収差が少なくとも1箇所の不連続部を有することが好ましい。その場合、不連続部は、第3光束の使用時において、0.9・NA3以上、1.2・NA3以下(より好ましくは、0.95・NA3以上、1.15・NA3以下)の範囲に存在することが好ましい。
【0059】
また、本発明は、薄いスリム型の光ピックアップ装置に用いられる対物レンズにおいて特に好適である。スリム型の光ピックアップ装置に用いられる対物レンズは、必然的に小径になるため、輪帯のピッチも小さくなり、加工が困難となる。そのため、加工しやすく、それでいて、光利用効率のロスが少ない本発明の効果がより顕著となるのである。
【0060】
尚、スリム型の光ピックアップ装置に用いられる対物レンズは、フランジ及び光学面すべて含めた対物レンズ全体の光軸直交方向の直径が、1.45mm以上、4.05mm以下であることが好ましい。より好ましくは、2.95mm以上、4.05mm以下である。また、光路差付与構造の光軸直交方向のピッチの最小値が、2.5μm以上、10μm以下であることが好ましい。また、ピッチの最大値が、110μm以下であることが好ましい。更に、対物レンズ全体における光路差付与構造の全輪帯数が、150以上、250以下であることが好ましい。
【0061】
本発明で用いる工具は、第1の縁部と該第1の縁部に交差する方向に延在する第2の縁部とから少なくとも一部が輪郭づけられるすくい面を備えている。取り付けた状態で、第1の縁部が、第2の縁部よりも金型の素材の回転軸線より遠い位置になる。第1の縁部と第2の縁部とは工具軸線を境界として直接接続していても良いし、工具軸線をまたぐ第3の縁部を介して接続していても良い。第1の縁部と第2の縁部は、それぞれストレート形状であると好ましいが、一部が円弧状であっても良い。
【発明の効果】
【0062】
本発明によれば、例えばBD/DVD/CDの3種類の光ディスク互換用の対物レンズ等の光学素子を成形する金型であって、光学素子の効率低下を極力抑えることができる金型の加工方法、加工された金型、及び金型から転写された光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】従来の技術により加工した金型より成形した対物レンズの光学面S1の拡大図である。
【図2】本発明の切削加工と従来技術の切削加工との差を説明するための模式図で、(a)が従来技術の例を示し、(b)が本発明の例を示し、矢印で工具の軌跡を示している。
【図3】単玉の対物レンズOLを光軸方向に見た図(a)及び光軸直交方向に見た図(b)である。
【図4】対物レンズを通過した第3光束が第3光ディスクの情報記録面上で形成するスポットを形成する状態を示す図である。
【図5】光路差付与構造の例を示す軸線方向断面図で、(a)、(b)はブレーズ型構造の例を示し、(c)、(d)は階段型構造の例を示す。
【図6】基礎構造を重畳した第1光路差付与構造の概念図で、(a)、(b)、(c)は光路差付与構造の重畳例を示し、(d)は第1基礎構造と第2基礎構造との重畳例を示す。
【図7】ダイヤモンド工具を示す図で、(a)は本実施の形態にかかる金型の加工方法で用いるダイヤモンド工具の切れ刃を示す斜視図、(b)はすくい面3aの先端部形状を示す拡大図である。
【図8】実施の形態にかかるXZB軸超精密旋盤の斜視図である。
【図9】金型と工具のセッティング位置関係を示す図である。
【図10】加工したい金型の一部にかかる拡大断面形状を示す図である。
【図11】加工したい金型の一部にかかる拡大断面形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。先ず、codeV等の光学設計ソフトウェアを用いて、BD/DVD/CD互換対物レンズの設計を行う。そして、当該設計結果に基づいて、金型の加工を行っていく。図7(a)は、本実施の形態にかかる金型の加工方法で用いるダイヤモンド工具の切れ刃を示す斜視図であり、図7(b)は、すくい面3aの先端部形状を示す拡大図である。ダイヤモンド工具の切れ刃3は、図に示すようにシャンクSに対してろう付けされており、切削されるべき型の回転方向に正対するすくい面3aを有している。かかるすくい面3aの先端部は、第1の縁部である縁部3b及び第2の縁部である縁部3cと、縁部3bの端部Aと縁部3cの端部Bとを結ぶ第3の縁部である円弧部3dとから輪郭づけられている。
【0065】
すくい面3aの円弧部3dの半径rを0.1〜0.5μm(好ましくは0.1〜0.3、μm)とすることで、刃先を鋭利にして高精度な微細形状を切削できる。第1の縁部3bと、第2の縁部3cとのはさみ角(頂角)は20〜30°(好ましくは29°以下)とするのがよい。尚、第1の縁部3bと第2の縁部3cの二等分線を、工具3の軸線BXとする。
【0066】
図8は、型の加工に用いるXZB軸超精密旋盤の斜視図である。図9は、ダイヤモンド工具を用いて金型を切削する際の拡大断面図である。図8において、定盤10に対して、Z軸方向に移動自在なZ軸ステージ5上には、回転駆動機構9が設けられ、回転駆動機構9は、切削すべき金型素材1を、回転軸線AX回りで回転駆動するようになっている。一方、定盤10に対して、B軸回りに回転可能なB軸ステージ11が設けられ、B軸ステージ11上にはX方向に移動自在なX軸ステージ6が設けられ、X軸ステージ6上には工具取付部7が設けられて、ダイヤモンド工具3を把持している。B軸ステージ11により、ダイヤモンド工具3の工具軸線を傾けた状態に維持し、回転駆動機構9により金型素材1を回転させながら、Z軸ステージ5,X軸ステージ6によりダイヤモンド工具3を金型素材1に対して相対的に移動させることで、光学転写面の加工を行えるようになっている。
【0067】
本実施の形態では、金型素材1は鉄系の母材を使用し、切削面に対して要求形状を粗取りした後、加工層として無電解ニッケルメッキを約50μmの厚さで施している。
【0068】
金型素材1の光学面(被加工面)1aに要求される形状は、BD/DVD/CD互換用プラスチック対物レンズの回折光学面形状である。
【0069】
金型素材1を例えば1000回転毎分で回転させると共に、X軸ステージ6及びZ軸ステージ5をプログラム制御により、ダイヤモンド工具3の先端部が、図9の矢印で示すように、金型素材1の外周側から中心部に向かって、毎分0.1mmの移動速度で並進移動して、所望の回折光学面形状が得られるように移動させる。
【0070】
ここで、第1の加工態様によれば、ダイヤモンド工具3の頂角の2等分線BX(図7(b)参照)を、金型素材1の回転軸線AXに対して傾けたまま、外周から中央まで切削加工を行う。この時、頂角の2等分線BXの回転軸線に対する傾け角度は、頂角の約半分であることが好ましい。この場合、8°〜18°である。かかる場合、図9において、第1の縁部3b(但し、傾け角によっては第3の縁部3dにて切削する場合もあるが、この場合、工具軸線を挟んで回転軸線から遠い側で切削する縁部を第1の縁部と定義する)により、輪帯状の凸部1dにおける光軸に近い側の周面(第1の周面)(凹部においては光軸から離れた側の周面となる)1bを回転軸線AXに対して平行に形成できる。つまり、かかる加工により切削された金型を用いて対物レンズを成形すると、輪帯凸部の光軸から遠い側の周壁(図1の外側壁OWに相当)が光軸と平行になる対物レンズを形成できる。一方、第2の縁部3cにより、輪帯状の凸部1dにおける光軸から遠い側の周面(第2の周面)(凹部においては光軸に近い側の周面となる)1cを形成できる。つまり、かかる加工により切削された金型を用いて対物レンズを形成すると、輪帯凸部の光軸から近い側の周壁(図1の内側壁IWに相当)が光軸に対して輪帯凸部の先端に向かうにつれて光軸から離れるように傾いている対物レンズを形成できる。尚、第1の縁部3bを回転軸線AXとを、厳密に平行とする必要はない。第1の縁部3bが回転軸線AXと平行になる位置よりも、すくい面の先端が回転軸線AXに近づく方向に傾けなければ、ダイヤモンド工具3のZ方向への相対移動によって、光軸に近い側の周面1bを回転軸線AXに対して平行に形成できるからである。
【0071】
更に、第2の加工態様によれば、金型素材1の加工面1aの外周から中間部までは、ダイヤモンド工具3の頂角の2等分線BXを、金型素材1の回転軸線AXに平行においた状態で切削加工を行い、次いで、図8におけるB軸を中心にダイヤモンド工具3を回転させ、中間部から中央までは、ダイヤモンド工具3の頂角の2等分線BXを、金型素材1の回転軸線AXに対して傾けた状態に角度を変更して切削加工を行うこともできる。かかる場合、第1の縁部3bにより、中間部から中央までの範囲で、輪帯状の凸部1dにおける光軸に近い側の周面1bを回転軸線AXに対して平行に形成できる。つまり、かかる加工により切削された金型を用いて対物レンズを成形すると、中間部から中央までの範囲で輪帯溝の光軸に近い側の周壁が光軸と平行になる対物レンズを形成できる。
【0072】
図10,11は、加工したい金型の一部にかかる拡大断面形状を示しており、金型の形状をハッチングで示す。
【0073】
本発明者らは、ダイヤモンド工具3の頂角の2等分線BXを、金型素材1の回転軸線AXに対して傾けない比較例の金型と、ダイヤモンド工具3の頂角の2等分線BXを、金型素材1の回転軸線AXに対して傾けた実施例の金型とをそれぞれ製造し、両金型にて互換用の回折構造を有する対物レンズを成形した。比較例の金型から成形した対物レンズの回折効率を測定したところ、BD使用時の回折効率:74.1%、DVD使用時の回折効率:56.4%、CD使用時の回折効率:52.1%であった。一方、実施例の金型から成形した対物レンズの回折効率を測定したところ、BD使用時の回折効率:76.2%(+2.1%)、DVD使用時の回折効率:62.8%(+6.4%)、CD使用時の回折効率:58.3%(+6.2%)であり、いずれの波長域でも回折効率が増大し、本発明の効果が確認された。
【0074】
本発明は、明細書に記載の実施例に限定されるものではなく、他の実施例・変形例を含むことは、本明細書に記載された実施例や思想から本分野の当業者にとって明らかである。明細書の記載及び実施例は、あくまでも例証を目的としており、本発明の範囲は後述するクレームによって示されている。例えば光学素子とは対物レンズに限られない。
【符号の説明】
【0075】
1 金型素材
1a 加工面
1b 周面
3 ダイヤモンド工具
3a すくい面
3b 第1の縁部
3c 第2の縁部
3d 円弧部(第3の縁部)
4 光学面
5 Z軸ステージ
6 X軸ステージ
7 工具取付部
9 回転駆動機構
10 定盤
11 B軸ステージ
A 端部
AX 回転軸線
B 端部
BX 2等分線
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型の加工方法、金型及び光ピックアップ装置用の光学素子に関し、特に異なる種類の光ディスクに対して互換可能に情報の記録及び/又は再生(記録/再生)を行える光ピックアップ装置用の光学素子を成形するのに好適な金型、その金型の加工方法及び光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ピックアップ装置において、光ディスクに記録された情報の再生や、光ディスクへの情報の記録のための光源として使用されるレーザ光源の短波長化が進み、例えば、青紫色半導体レーザ等、波長390〜420nmのレーザ光源が実用化されている。これら青紫色レーザ光源を使用すると、DVD(デジタルバーサタイルディスク)と同じ開口数(NA)の対物レンズを使用する場合で、直径12cmの光ディスクに対して、15〜20GBの情報の記録が可能となり、対物光学素子のNAを0.85にまで高めた場合には、直径12cmの光ディスクに対して、23〜25GBの情報の記録が可能となる。
【0003】
上述のようなNA0.85の対物レンズを使用する光ディスクの例として、BD(ブルーレイディスク)が挙げられる。光ディスクの傾き(スキュー)に起因して発生するコマ収差が増大するため、BDでは、DVD における場合よりも保護基板を薄く設計し(DVDの0.6mmに対して、0.1mm)、スキューによるコマ収差量を低減している。
【0004】
ところで、BDに対して適切に情報の記録/再生ができると言うだけでは、光ディスクプレーヤ/レコーダ(光情報記録再生装置)の製品としての価値は十分なものとはいえない。現在において、多種多様な情報を記録したDVDやCD(コンパクトディスク)が販売されている現実をふまえると、BDに対して情報の記録/再生ができるだけでは足らず、例えばユーザが所有しているDVDやCDに対しても同様に適切に情報の記録/再生ができるようにすることが、BD用の光ディスクプレーヤ/レコーダとしての商品価値を高めることに通じるのである。このような背景から、BD用の光ディスクプレーヤ/レコーダに搭載される光ピックアップ装置は、BDとDVD、更にはCDの何れに対しても互換性を維持しながら適切に情報を記録/再生できる性能を有することが望まれる。
【0005】
BDとDVD、更にはCDの何れに対しても互換性を維持しながら適切に情報を記録/再生できるようにする方法として、BD用の光学系とDVDやCD用の光学系とを情報を記録/再生する光ディスクの記録密度に応じて選択的に切り替える方法が考えられるが、複数の光学系が必要となるので、小型化に不利であり、またコストが増大する。
【0006】
従って、光ピックアップ装置の構成を簡素化し、低コスト化を図るためには、互換性を有する光ピックアップ装置においても、BD用の光学系とDVDやCD用の光学系とを共通化して、光ピックアップ装置を構成する光学部品点数を極力減らすのが好ましい。そして、光ディスクに対向して配置される対物レンズを共通化することが光ピックアップ装置の構成の簡素化、低コスト化に最も有利となる。尚、記録/再生波長が互いに異なる複数種類の光ディスクに対して共通な対物レンズを得るためには、球面収差の波長依存性を有する回折構造等の光路差付与構造を対物レンズに形成する必要がある。
【0007】
ところで、このような対物レンズの光路差付与構造は、一般的に微細な構造であるため、金型の加工が難しいという問題がある。これに対し特許文献1には、ダイヤモンド工具を用いて断面が鋸歯状の、いわゆるブレーズ形状の回折格子に対応する微細溝を切削加工する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−62707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、本発明者らの研究によれば、上述した特許文献1の技術にて微細溝を加工した場合、例えばBD/DVD/CD互換用の対物レンズにおける設計上の効率に対し、実際に加工した金型により転写成形された対物レンズの実効率の低下が大きいことが判明した。特に、単なるブレーズ形状ではなく、略光軸方向に延在し互いに向かい合う周壁を備えた構造において特に実効率の低下が著しいことも見出した。例えば、DVDやCD等においても、光路差付与構造を有する対物レンズは用いられているが、特許文献1の技術にて微細溝の加工を行っても、設計効率に対して実効率は、特に著しい低下は見られないという実情がある。
【0010】
本発明は、上述の課題を解決することを目的としたものであり、例えばBD/DVD/CDの3種類の光ディスク互換用の対物レンズ等の光学素子を成形する金型であって、光学素子の効率低下を極力抑えることができる金型の加工方法、加工された金型、及び金型から転写された光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の金型の加工方法は、光学素子を成形する金型の素材を、第1の縁部と該第1の縁部に交差する方向に延在する第2の縁部とから少なくとも一部が輪郭づけられるすくい面を備えた工具にて切削する金型の加工方法において、
前記第1の縁部が、前記第2の縁部よりも金型の素材の回転軸線より遠い位置になり、且つ前記すくい面の先端が回転軸線より離れるように、前記工具の軸線を前記回転軸線に対して傾けてセットした前記工具により、金型の素材を回転させながら切削することにより、前記第1の縁部により切削された第1の周面と、前記第2の縁部により切削された第2の周面とを有する凹状の輪帯構造を少なくとも一部形成することを特徴とする。
【0012】
本発明者は、鋭意研究により、実際の対物レンズにて効率が低下する理由を解析した。その結果、以下のことが判明した。図1は、従来の技術により加工した金型より成形した対物レンズの光学面S1の拡大図である。この対物レンズは、内側壁IWと外側壁OWとを有する輪帯凸部を複数個備えた回折構造Dを有しており、内側壁IWと外側壁OWとは対向し合う方向に延在している。ここで、対物レンズに平行光束Lを入射させたとき、内側壁IWと外側壁OW以外の光学面に入射した光束は、光ディスクの集光に用いられるが、内側壁IWと外側壁OWに入射した光束(ハッチングで示す)は、集光に用いられることはほとんどない。これを影の効果といい、効率低下の要因となっている。しかるに、影の効果による効率低下は、DVDやCD用の対物レンズでは一般的に無視できるが、BD/DVD/CD互換用の対物レンズなどでは、各波長の光束で効率を取り合いになるため、より実効率を高める必要があるといえる。
【0013】
ここで、本発明者らは、外側壁OWに着目した。点線で示すように外側壁OWを光軸に対して平行に形成すれば、平行光束が外側壁OWに入射することが抑制され、その分、対物レンズの効率低下を抑制できる。ところが、従来技術によれば、図1に示すように外側壁OWが傾くような金型の加工が行われていたのである。
【0014】
より具体的に説明すると、模式図である図2(a)において、金型の素材WKに対して、工具の軸線BXを回転軸線と平行とした状態で切削する従来技術の例である。従来技術では、切削用のダイヤモンド工具BTの軸線BXを、素材WKの回転軸線ROと平行に設定していたので、輪帯状の凹部PJの外側壁OW’が、ダイヤモンド工具BTのすくい面の縁部に沿って、工具先端に向かうに連れて回転軸線に近づくように傾いてしまっていた。このような切削加工により形成された金型を用いて対物レンズを転写成形すると、図1に示すように外側壁OWが光軸に対して傾いた輪帯溝が形成されるのである。
【0015】
そこで本発明者らは、以上の知見に基づいて、工具BTのすくい面を回転させて、回折効率を向上させることを思いついたのである。つまり、図2(b)に示すように、回転軸線ROに直交する面内で、工具BTのすくい面の軸線BXを回転(θ)させれば、設計状態に近い対物レンズを成形できる金型を加工できるのである。より具体的には、第1の縁部BT1と該第1の縁部BT1に交差する方向に延在する第2の縁部BT2とから少なくとも一部が輪郭づけられるすくい面BT3を備えた工具BTを、第1の縁部BT1が、第2の縁部BT2よりも金型の素材WKの回転軸線ROより遠い位置になり、且つすくい面BT3の先端が回転軸線ROより離れるように、金型の素材WKの回転軸線に対して傾けてセットして、素材WKを切削することにより、第1の縁部BT1により切削された第1の周面OW’を回転軸線と略平行にできるので、かかる金型を用いて光学素子を転写すれば、その第1の周面により転写された輪帯溝の外側OIW(図1参照)を光軸と平行にできる。これにより光学素子の効率を高めることができるのである。
【0016】
請求項2に記載の金型の加工方法は、請求項1に記載の発明において、前記素材の被加工部における外周から中央まで、前記工具の軸線を前記回転軸線に対して傾けてセットした状態で切削することを特徴とする。これにより、前記工具の設定の手間が省ける。
【0017】
請求項3に記載の金型の加工方法は、前記工具の軸線の前記回転軸線に対する傾き角を、前記素材の被加工部の切削途中で変更することを特徴とする。このような構成にすることによって、例えばブレーズ型構造しかない領域は、工具の軸線を回転軸線に平行にし、互いに向かい合う周壁を有する凹部を有する領域では、工具の軸線を回転軸線に対して傾ける等、構造に応じて最も好ましい工具の軸線の角度で切削でき、より設計形状に近い金型を得ることが可能となり、光の利用効率をさらに向上できるため好ましい。
【0018】
請求項4に記載の金型の加工方法は、請求項3に記載の発明において、前記素材の被加工部における外周から中間部まで、前記工具の軸線を前記回転軸線に平行にセットした状態で切削し、前記中間部から中央まで、前記工具の軸線を前記回転軸線に対して傾けてセットした状態で切削することを特徴とする。特に光学素子の中央付近は、互換用の光路差付与構造を有していることが多いので、本発明の効果が期待できる。
【0019】
請求項5に記載の金型の加工方法は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、少なくとも一部の凹状の輪帯構造の周壁において、少なくとも前記輪帯構造の光軸から遠い側の周壁は、光軸に対して平行であることを特徴とする。本構成によって上述のように輪帯溝の外側壁による影の効果を低減できるため、光学素子の効率を高めることができ好ましい。
【0020】
請求項6に記載の金型の加工方法は、請求項5に記載の発明において、少なくとも前記輪帯構造の光軸に近い側の周壁は、光軸に対して傾いていることを特徴とする。光軸に近い側の周壁、例えば、図1でいうところの内側壁IWにおいては、例え、内側壁を光軸と平行にしたとしても、影の効果は避けられない。従って、内側壁IWを光軸に対して平行にする必要性は、外側壁OWに比して低い。そのため、内側壁IWは、光軸に対して傾いたままとすることにより、工具の軸線の回転軸線に対する傾け角の設定についてより多くの自由度を確保することができ、好ましい。例えば、工具の軸線の回転軸線に対する傾け角を、外側壁が光軸に平行になるように設定し、その傾け角のまま、全段差を切削することも可能となるため、切削中の工具の操作がより容易となる。
【0021】
請求項7に記載の金型の加工方法は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、前記工具のすくい面は、前記第1の縁部端部と前記第2の縁部端部とを結ぶ円弧状の第3の縁部を有し、前記第3の縁部の半径は、0.1〜0.5μmであることを特徴とする。これにより、加工のダレが減少し、微細な構造を精度良く加工できる。
【0022】
請求項8に記載の金型の加工方法は、請求項1乃至7のいずれかに記載の発明において、前記工具の軸線の前記回転軸線に対する傾け角が、前記第1の縁部と前記第2の縁部とがなす頂角の約半分であることを特徴とする。本構成によって、第1の縁部が回転軸線に対して平行となるため、第1の縁部で切削した段差を回転軸線に対して平行にしやすくなる。
【0023】
請求項9に記載の金型の加工方法は、請求項1乃至8のいずれかに記載の発明において、前記第1の縁部と前記第2の縁部とがなす頂角は、20〜30°であることを特徴とする。これにより、微細形状への干渉が減少し、より設計形状に近い加工が可能になる。
【0024】
請求項10に記載の金型の加工方法は、請求項9に記載の発明であって、前記工具の軸線の前記回転軸線に対する傾け角が、8〜18°であることを特徴とする。
【0025】
請求項11に記載の金型は、請求項1乃至5のいずれかに記載の加工方法により加工されたことを特徴とする。
【0026】
請求項12に記載の光学素子は、第1波長λ1(390nm≦λ1≦415nm)の第1光束を射出する第1光源と、第2波長λ2(630nm≦λ2≦670nm)の第2光束を射出する第2光源と、第3波長λ3(760nm≦λ3≦820nm)の第3光束を射出する第3光源とを有し、前記第1光束を用いて厚さがt1の保護基板を有するBDの情報の記録及び/又は再生を行い、前記第2光束を用いて厚さがt2(t1<t2)の保護基板を有するDVDの情報の記録及び/又は再生を行い、前記第3光束を用いて厚さがt3(t2<t3)の保護基板を有するCDの情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において用いられる光学素子であって、前記光学素子の少なくとも一つの光学面は、中央領域と、中央領域の周りの中間領域と、中間領域の周りの周辺領域とを少なくとも有し、前記光学素子は、前記中央領域を通過する前記第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中間領域を通過する前記第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中間領域を通過する前記第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中間領域を通過する前記第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、前記周辺領域を通過する前記第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記周辺領域を通過する前記第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、前記周辺領域を通過する前記第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、前記中央領域は、第1光路差付与構造を備え、前記第1光路差付与構造は、ブレーズ型構造を有する第1基礎構造とブレーズ型構造を有する第2基礎構造を互いに逆向きに重ね合わせた構造であり、前記第1基礎構造の段差は光軸とは逆の方向を向いており、前記第2基礎構造の段差は光軸の方向を向いており、前記第1基礎構造を通過した前記第1光束の1次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、前記第1基礎構造を通過した前記第2光束の1次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、前記第1基礎構造を通過した前記第3光束の1次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、前記第2基礎構造を通過した前記第1光束の2次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、前記第2基礎構造を通過した前記第2光束の1次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、前記第1基礎構造を通過した前記第3光束の1次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、前記第1光路差付与構造は、略光軸方向に延在し互いに向かい合う周壁を備えた輪帯凸部を有し、少なくとも前記輪帯凸部の光軸から遠い側の周壁は、光軸に対して平行であり、前記輪帯凸部の光軸に近い側の周壁は、光軸に対して前記輪帯凸部の先端に向かうにつれて光軸から離れるように傾いていることを特徴とする。
【0027】
光軸に近い側の周壁は、理想形状であっても、影の効果による効率ロスを免れないため、理想形状にしなくても光量のロスはあまり変化がない。つまり、光軸に近い側の傾きによる効率の寄与度は、光軸から遠い側の周壁の傾きによる効率の寄与度より小さい。そのため、輪帯凸部の光軸に近い側の周壁を傾けていることにより、工具の角度をあまりに細かく制御する必要がなく、製造しやすく、それでいて、影の効果による光利用効率のロスを大きくすることはない。また、輪帯凸部の光軸に近い側の周壁を、光軸に対して輪帯凸部の先端に向かうにつれて光軸から離れるように傾けていることにより、射出成形の際、金型から光学素子をスムーズに離型できため成形性を良くできる。更に、輪帯凸部の光軸から遠い側の周壁を光軸に平行にすることにより、影の効果による効率のロスを大幅に低減でき、設計値に近い理想的な光利用効率を得ることが可能となる。即ち、製造及び成形しやすく、それでいて、光利用効率の高い光学素子を得ることが可能となるのである。
【0028】
また、第1光路差付与構造は、ブレーズ型構造を有する第1基礎構造とブレーズ型構造を有する第2基礎構造を互いに逆向きに重ね合わせた構造であり、かつ、第1基礎構造は、第1基礎構造を通過した第1光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする(以下、「1/1/1」とも記載する。)回折構造であり、前記第2基礎構造は、第2基礎構造を通過した第1光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第2基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第2基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする(以下、「2/1/1」とも記載する)回折構造である。このように、ブレーズ型構造を有する「1/1/1」の回折構造とブレーズ型構造を有する「2/1/1」の回折構造を互いに逆向きに重ね合わせた場合、第1光路差付与構造の段差を低くすることできる。光路差付与構造の段差を低くできると、製造誤差による効率のロスを低減できるため、よりいっそう光利用効率の高い光学素子を得ることが可能となる。
【0029】
また、ブレーズ型構造を有する第1基礎構造とブレーズ型構造を有する第2基礎構造を互いに逆向きに重ね合わせる際、「1/1/1」の回折構造を有する第1基礎構造の段差は光軸とは逆の方向を向いていて、「2/1/1」の回折構造を有する第2基礎構造の段差は光軸の方向を向いている。この場合、「1/1/1」の回折構造を有する第1基礎構造の段差が光軸の方向を向いていて、「2/1/1」の回折構造を有する第2基礎構造の段差が光軸とは逆の方向を向いている場合に比べて、第1光路差付与構造が有する輪帯凸部の光軸から遠い側の周壁の数が多くなる。そのため、輪帯凸部の光軸から遠い側の周壁を光軸に平行にすることにより、影の効果による効率のロスを大幅に低減し、設計値に近い理想的な光利用効率を得るという本発明がより有用となる。
【0030】
請求項13に記載の光学素子は、請求項12に記載の発明において、前記輪帯溝は光路差付与構造であることを特徴とする。
【0031】
請求項14に記載の光学素子は、請求項12又は13に記載の発明において、前記光学素子は対物レンズであることを特徴とする。
【0032】
本発明に係る光学素子が用いられる光ピックアップ装置は、第1光源、第2光源、第3光源の少なくとも3つの光源を有する。さらに、本発明の光ピックアップ装置は、第1光束をBDの情報記録面上に集光させ、第2光束をDVDの情報記録面上に集光させ、第3光束をCDの情報記録面上に集光させるための集光光学系を有する。また、本発明の光ピックアップ装置は、BD、DVD又はCDの情報記録面からの反射光束を受光する受光素子を有する。
【0033】
BDは、厚さがt1の保護基板と情報記録面とを有する。DVDは厚さがt2(t1<t2)の保護基板と情報記録面とを有する。CDは、厚さがt3(t2<t3)の保護基板と情報記録面とを有する。なお、BD、DVD又はCDは、複数の情報記録面を有する複数層の光ディスクでもよい。
【0034】
本明細書において、BDとは、波長390〜415nm程度の光束、NA0.8〜0.9程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.05〜0.125mm程度であるBD系列光ディスクの総称であり、単一の情報記録層のみ有するBDや、2層又はそれ以上の情報記録層を有するBD等を含むものである。更に、本明細書においては、DVDとは、NA0.60〜0.67程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.6mm程度であるDVD系列光ディスクの総称であり、DVD−ROM、DVD−Video、DVD− Audio、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW等を含む。また、本明細書においては、CDとは、NA0.45〜0.51程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが1.2mm 程度であるCD系列光ディスクの総称であり、CD−ROM、CD−Audio、CD−Video、CD−R、CD−RW等を含む。尚、記録密度については、BDの記録密度が最も高く、次いでDVD、CDの順に低くなる。
【0035】
なお、保護基板の厚さt1、t2、t3に関しては、以下の条件式(1)、(2)、(3)を満たすことが好ましいが、これに限られない。尚、ここで言う、保護基板の厚さとは、光ディスク表面に設けられた保護基板の厚さのことである。即ち、光ディスク表面から、表面に最も近い情報記録面までの保護基板の厚さのことをいう。
0.050mm ≦ t1 ≦ 0.125mm (1)
0.5mm ≦ t2 ≦ 0.7mm (2)
1.0mm ≦ t3 ≦ 1.3mm (3)
【0036】
本明細書において、第1波長λ1の光束を出射するBD用の第1光源、第2波長λ2の光束を出射するDVD用の第2光源、第3波長λ3の光束を出射するCD用の第3光源は、好ましくはレーザ光源である。レーザ光源としては、好ましくは半導体レーザ、シリコンレーザ等を用いることが出来る。第1光源から出射される第1光束の第1波長λ1、第2光源から出射される第2光束の第2波長λ2(λ2>λ1)、第3光源から出射される第3光束の第3波長λ3(λ3>λ2)は以下の条件式(4)、(5) を満たすことが好ましい。
1.5・λ1 < λ2 < 1.7・λ1 (4)
1.8・λ1 < λ3 < 2.0・λ1 (5)
【0037】
第1光源の第1波長λ1は好ましくは、350nm 以上、440nm以下、より好ましくは、390nm以上、415nm以下であって、第2光源の第2波長λ2は好ましくは570nm以上、680nm以下、より好ましくは、630nm以上、670nm以下であって、第3光源の第3波長λ3は好ましくは、750nm以上、880nm以下、より好ましくは、760nm以上、820nm以下である。
【0038】
光ピックアップ装置の集光光学系は、対物レンズを有する。集光光学系は、対物レンズの他にコリメータ等のカップリングレンズを有していることが好ましい。カップリングレンズとは、対物レンズと光源の間に配置され、光束の発散角を変える単レンズ又はレンズ群のことをいう。コリメータは、カップリングレンズの一種で、コリメータに入射した光を平行光にして出射するレンズである。これらはいずれも光学素子である。本明細書において、対物レンズとは、光ピックアップ装置において光ディスクに対向する位置に配置され、光源から射出された光束を光ディスクの情報記録面上に集光する機能を有する光学系を指す。また、対物レンズは、単玉又は複数枚からなるプラスチック又はガラス製のレンズであることが好ましい。好ましくは、凸レンズである。また、対物レンズは、屈折面が非球面であることが好ましい。また、対物レンズは、光路差付与構造が設けられるベース面が非球面であることが好ましい。
【0039】
光学素子の素材に樹脂を用いる場合、シクロオレフィン樹脂が好適に用いられ、具体的には、日本ゼオン社製のZEONEXや、三井化学社製のAPEL、TOPAS ADVANCED POLYMERS社製のTOPAS、JSR社製ARTONなどが好ましい例として挙げられる。
【0040】
また、対物レンズを構成する材料のアッベ数は、50以上であることが好ましい。
【0041】
3互換用対物レンズについて、以下に記載する。3互換用対物レンズの少なくとも一つの光学面が、中央領域と、中央領域の周りの中間領域と、中間領域の周りの周辺領域とを少なくとも有する。中央領域は、3互換用対物レンズの光軸を含む領域であることが好ましいが、光軸を含む微小な領域を未使用領域や特殊な用途の領域とし、その周りを中心領域(中央領域ともいう)としてもよい。中央領域、中間領域、及び周辺領域は同一の光学面上に設けられていることが好ましい。図3に示されるように、中央領域CN、中間領域MD、周辺領域OTは、同一の光学面上に、光軸を中心とする同心円状に設けられていることが好ましい。また、3互換用対物レンズの中央領域には3波長共用の第一光路差付与構造が設けられ、中間領域には2波長共用の第二光路差付与構造が設けられている。周辺領域は屈折面であってもよいし、周辺領域に第三光路差付与構造が設けられていてもよい。中央領域、中間領域、周辺領域はそれぞれ隣接していることが好ましいが、間に僅かに隙間があっても良い。
【0042】
3互換用対物レンズの中央領域は、BD、DVD及びCDの記録/再生に用いられると好ましいBD/DVD/CD共用領域と言える。即ち、3互換用対物レンズは、中央領域を通過する第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光し、中央領域を通過する第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光し、中央領域を通過する第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光すると好ましい。また、中央領域に設けられた第1光路差付与構造は、第1光路差付与構造を通過する第1光束及び第2光束に対して、BDの保護基板の厚さt1とDVDの保護基板の厚さt2の違いにより発生する球面収差/第1光束と第2光束の波長の違いにより発生する球面収差を補正することが好ましい。さらに、第1光路差付与構造は、第1光路差付与構造を通過した第1光束及び第3光束に対して、BDの保護基板の厚さt1とCDの保護基板の厚さt3との違いにより発生する球面収差/第1光束と第3光束の波長の違いにより発生する球面収差を補正することが好ましい。
【0043】
3互換用対物レンズの中間領域は、BD、DVDの記録/再生に用いられ、CDの記録/再生に用いられないと好ましいBD/DVD共用領域と言える。即ち、3互換用対物レンズは、中間領域を通過する第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光し、中間領域を通過する第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光すると好ましい。その一方で、中間領域を通過する第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光しないと好ましい。3互換用対物レンズの中間領域を通過する第3光束は、CDの情報記録面上でフレアを形成することが好ましい。図4に示すように、3互換用対物レンズを通過した第3光束がCDの情報記録面上で形成するスポットにおいて、光軸側(又はスポット中心部)から外側へ向かう順番で、光量密度が高いスポット中心部SCN、光量密度がスポット中心部より低いスポット中間部SMD、光量密度がスポット中間部よりも高くスポット中心部よりも低いスポット周辺部SOTを有することが好ましい。スポット中心部が、光ディスクの情報の記録/再生に用いられ、スポット中間部及びスポット周辺部は、光ディスクの情報の記録/再生には用いられない。上記において、このスポット周辺部をフレアと言っている。但し、スポット中心部の周りにスポット中間部が存在せずスポット周辺部があるタイプ、即ち、集光スポットの周りに薄く光が大きなスポットを形成する場合も、そのスポット周辺部をフレアと呼んでもよい。つまり、3互換用対物レンズの中間領域を通過した第3光束は、CDの情報記録面上でスポット周辺部を形成することが好ましいとも言える。
【0044】
3互換用対物レンズの周辺領域は、BDの記録/再生に用いられ、DVD及びCDの記録/再生に用いられないと好ましいBD専用領域と言える。即ち、3互換用対物レンズは、周辺領域を通過する第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光すると好ましい。その一方で、周辺領域を通過する第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光せず、周辺領域を通過する第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録/再生ができるように集光しないと好ましい。3互換用対物レンズの周辺領域を通過する第2光束及び第3光束は、DVD及びCDの情報記録面上でフレアを形成することが好ましい。つまり、3互換用対物レンズの周辺領域を通過した第2光束及び第3光束は、DVD及びCDの情報記録面上でスポット周辺部を形成することが好ましい。
【0045】
第1光路差付与構造は、3互換用対物レンズの中央領域の面積の70%以上の領域に設けられていることが好ましく、90%以上がより好ましい。より好ましくは、第1光路差付与構造が、中央領域の全面に設けられていることである。第2光路差付与構造は、3互換用対物レンズの中間領域の面積の70%以上の領域に設けられていることが好ましく、90%以上がより好ましい。より好ましくは、第2光路差付与構造が、中間領域の全面に設けられていることである。周辺領域が第3光路差付与構造を有する場合、第3光路差付与構造は、3互換用対物レンズの周辺領域の面積の70%以上の領域に設けられていることが好ましく、90%以上がより好ましい。より好ましくは、第3光路差付与構造が、周辺領域の全面に設けられていることである。
【0046】
なお、本明細書でいう光路差付与構造とは、入射光束に対して光路差を付加する構造の総称であって、輪帯溝を有するものをいう。光路差付与構造には、位相差を付与する位相差付与構造も含まれる。また、位相差付与構造には回折構造が含まれる。本発明の光路差付与構造は回折構造であることが好ましい。光路差付与構造は、段差を有し、好ましくは段差を複数有する。この段差により入射光束に光路差及び/又は位相差が付加される。光路差付与構造により付加される光路差は、入射光束の波長の整数倍であっても良いし、入射光束の波長の非整数倍であっても良い。段差は、光軸垂直方向に周期的な間隔をもって配置されていてもよいし、光軸垂直方向に非周期的な間隔をもって配置されていてもよい。また、光路差付与構造を設けた対物レンズが単玉非球面レンズの場合、光軸からの高さによって光束の対物レンズへの入射角が異なるため、光路差付与構造の段差量は各輪帯毎に若干異なることとなる。例えば、対物レンズが単玉非球面の凸レンズである場合、同じ光路差を付与させる光路差付与構造であっても、一般的に光軸から離れる程、段差量が大きくなる傾向となる。
【0047】
また、本明細書でいう回折構造とは、段差を有し、回折によって光束を収束あるいは発散させる作用を持たせる構造の総称である。例えば、単位形状が光軸を中心として複数並ぶことによって構成されており、それぞれの単位形状に光束が入射し、透過した光の波面が、隣り合う輪帯毎にズレを起こし、その結果、新たな波面を形成することによって光を収束あるいは発散させるような構造を含むものである。回折構造は、好ましくは段差を複数有し、段差は光軸垂直方向に周期的な間隔をもって配置されていてもよいし、光軸垂直方向に非周期的な間隔をもって配置されていてもよい。また、回折構造を設けた対物レンズが単玉非球面レンズの場合、光軸からの高さによって光束の対物レンズへの入射角が異なるため、回折構造の段差量は各輪帯毎に若干異なることとなる。例えば、対物レンズが単玉非球面の凸レンズである場合、同じ回折次数の回折光を発生させる回折構造であっても、一般的に光軸から離れる程、段差量が大きくなる傾向となる。
【0048】
ところで、光路差付与構造は、光軸を中心とする同心円状の複数の輪帯を有することが好ましい。また、光路差付与構造は、一般に、様々な断面形状(光軸を含む面での断面形状) をとり得、光軸を含む断面形状がブレーズ型構造と階段型構造とに大別される。
【0049】
ブレーズ型構造とは、図5(a)、(b)に示されるように、光路差付与構造を有する光学素子の光軸を含む断面形状が、鋸歯状の形状ということである。尚、図5の例においては、上方が光源側、下方が光ディスク側であって、母非球面としての平面に光路差付与構造が形成されているものとする。ブレーズ型構造において、1つのブレーズ単位の光軸垂直方向の長さをピッチPという。(図5(a)、(b)参照)また、ブレーズの光軸に平行方向の段差の長さを段差量Bという。(図5(a)参照)このような単一のブレーズ型構造では互いに向かい合う周壁は存在しない。
【0050】
また、階段型構造とは、図5(c)、(d)に示されるように、光路差付与構造を有する光学素子の光軸を含む断面形状が、小階段状のもの(階段単位と称する)を複数有するということである。尚、本明細書中、「Vレベル」とは、階段型構造の1つの階段単位において光軸垂直方向に対応する(向いた)輪帯状の面(以下、テラス面と称することもある)が、段差によって区分けされV個の輪帯面毎に分割されていることをいい、特に3レベル以上の階段型構造は、小さい段差と大きい段差を有することになる。例えば、図5(c)に示す光路差付与構造を、5レベルの階段型構造といい、図5(d)に示す光路差付与構造を、2レベルの階段型構造(バイナリ構造ともいう)という。
【0051】
尚、光路差付与構造は、ある単位形状が周期的に繰り返されている構造であることが好ましい。 ここでいう「単位形状が周期的に繰り返されている」とは、同一の形状が同一の周期で繰り返されている形状は当然含む。さらに、周期の1単位となる単位形状が、規則性を持って、周期が徐々に長くなったり、徐々に短くなったりする形状も、「単位形状が周期的に繰り返されている」ものに含まれているとする。
【0052】
また、第1光路差付与構造及び第2光路差付与構造を設ける場合は、それぞれ対物レンズの異なる光学面に設けてもよいが、同一の光学面に設けることが好ましい。更に、第3光路差付与構造を設ける場合も、第1光路差付与構造及び第2光路差付与構造と同じ光学面に設けることが好ましい。同一の光学面に設けることにより、製造時の偏芯誤差を少なくすることが可能となるため好ましい。また、第1光路差付与構造、第2光路差付与構造及び第3光路差付与構造は、対物レンズの光ディスク側の面よりも、対物レンズの光源側の面に設けられることが好ましい。別の言い方では、第1光路差付与構造、第2光路差付与構造及び第3光路差付与構造は、対物レンズの曲率半径の絶対値が小さい方の光学面に設けることが好ましい。尚、第1基礎構造と第2基礎構造を重畳せずに、それぞれ異なる光学面に設けることも考えられる。第3基礎構造と第4基礎構造も、同様に重畳せずにそれぞれ異なる光学面に設けることも考えられる。
【0053】
光路差付与構造は、複数の基礎構造(例えば図6(d)の第1基礎構造と第2基礎構造)を重ね合わせた構造としても良い。
【0054】
光路差付与構造の重畳例をいくつか図6(a)、(b)、(c)として示す。これらは2種類のブレーズ型構造を重畳した例である。尚、図6は、便宜上、第1光路差付与構造ODS1が平板状に設けられたものとして示されているが、単玉非球面の凸レンズ上に設けられていてもよい。第2基礎構造を通過した第1光束の2次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第2基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第2基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする(「2/1/1」)回折構造である第2基礎構造BS2に、第1基礎構造を通過した第1光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第2光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくし、第1基礎構造を通過した第3光束の1次の回折光量を他のいかなる次数の回折光量よりも大きくする(「1/1/1」)回折構造である第1基礎構造BS1が重ねあわされた例である。図6(a)においては、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAの方向を向いており、第1基礎構造BS1の段差は光軸OAとは逆の方向を向いている。更に、第2基礎構造BS2の全ての段差の位置と、第1基礎構造BS1の段差の位置が合っていることがわかる。次に、図6(b)においては、第2基礎構造BS2の段差は光軸OAの方向を向いており、第1基礎構造BS1の段差も光軸OAの方向を向いている。更に、第2基礎構造BS2の全ての段差の位置と、第1基礎構造BS1の段差の位置が合っていることがわかる。次に、図6(c)においては、第1基礎構造BS1の段差は光軸OAと逆の方向を向いており、第2基礎構造BS2の段差も光軸OAと逆の方向を向いている。更に、第2基礎構造BS2の全ての段差の位置と、第1基礎構造BS1の段差の位置が合っていることがわかる。
【0055】
光路差付与構造の種々の例を述べてきたが、本明細書において、「向かい合う周壁を備えた輪帯溝を有する光路差付与構造」というときは、特に図5(c)、(d)、図6(a)に示す構造をいう。
【0056】
BDに対して情報を再生/記録するために必要な対物レンズの像側開口数をNA1とし、DVDに対して情報を再生/記録するために必要な対物レンズの像側開口数をNA2(NA1>NA2)とし、CDに対して情報を再生/記録するために必要な対物レンズの像側開口数をNA3(NA2>NA3)とする。NA1は、0.75以上、0.9以下であることが好ましく、より好ましくは、0.8以上、0.9以下である。特にNA1は0.85であることが好ましい。NA2は、0.55以上、0.7以下であることが好ましい。特にNA2は0.60又は0.65であることが好ましい。また、NA3は、0.4以上、0.55以下であることが好ましい。特にNA3は0.45又は0.53であることが好ましい。
【0057】
対物レンズの中央領域と中間領域の境界は、第3光束の使用時において、0.9・NA3以上、1.2・NA3以下(より好ましくは、0.95・NA3以上、1.15・NA3以下)の範囲に相当する部分に形成されていることが好ましい。より好ましくは、対物レンズの中央領域と中間領域の境界が、NA3に相当する部分に形成されていることである。また、対物レンズの中間領域と周辺領域の境界は、第2光束の使用時において、0.9・NA2以上、1.2・NA2以下(より好ましくは、0.95・NA2以上、1.15・NA2以下)の範囲に相当する部分に形成されていることが好ましい。より好ましくは、対物レンズの中間領域と周辺領域の境界が、NA2に相当する部分に形成されていることである。
【0058】
対物レンズを通過した第3光束をCDの情報記録面上に集光する場合に、球面収差が少なくとも1箇所の不連続部を有することが好ましい。その場合、不連続部は、第3光束の使用時において、0.9・NA3以上、1.2・NA3以下(より好ましくは、0.95・NA3以上、1.15・NA3以下)の範囲に存在することが好ましい。
【0059】
また、本発明は、薄いスリム型の光ピックアップ装置に用いられる対物レンズにおいて特に好適である。スリム型の光ピックアップ装置に用いられる対物レンズは、必然的に小径になるため、輪帯のピッチも小さくなり、加工が困難となる。そのため、加工しやすく、それでいて、光利用効率のロスが少ない本発明の効果がより顕著となるのである。
【0060】
尚、スリム型の光ピックアップ装置に用いられる対物レンズは、フランジ及び光学面すべて含めた対物レンズ全体の光軸直交方向の直径が、1.45mm以上、4.05mm以下であることが好ましい。より好ましくは、2.95mm以上、4.05mm以下である。また、光路差付与構造の光軸直交方向のピッチの最小値が、2.5μm以上、10μm以下であることが好ましい。また、ピッチの最大値が、110μm以下であることが好ましい。更に、対物レンズ全体における光路差付与構造の全輪帯数が、150以上、250以下であることが好ましい。
【0061】
本発明で用いる工具は、第1の縁部と該第1の縁部に交差する方向に延在する第2の縁部とから少なくとも一部が輪郭づけられるすくい面を備えている。取り付けた状態で、第1の縁部が、第2の縁部よりも金型の素材の回転軸線より遠い位置になる。第1の縁部と第2の縁部とは工具軸線を境界として直接接続していても良いし、工具軸線をまたぐ第3の縁部を介して接続していても良い。第1の縁部と第2の縁部は、それぞれストレート形状であると好ましいが、一部が円弧状であっても良い。
【発明の効果】
【0062】
本発明によれば、例えばBD/DVD/CDの3種類の光ディスク互換用の対物レンズ等の光学素子を成形する金型であって、光学素子の効率低下を極力抑えることができる金型の加工方法、加工された金型、及び金型から転写された光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】従来の技術により加工した金型より成形した対物レンズの光学面S1の拡大図である。
【図2】本発明の切削加工と従来技術の切削加工との差を説明するための模式図で、(a)が従来技術の例を示し、(b)が本発明の例を示し、矢印で工具の軌跡を示している。
【図3】単玉の対物レンズOLを光軸方向に見た図(a)及び光軸直交方向に見た図(b)である。
【図4】対物レンズを通過した第3光束が第3光ディスクの情報記録面上で形成するスポットを形成する状態を示す図である。
【図5】光路差付与構造の例を示す軸線方向断面図で、(a)、(b)はブレーズ型構造の例を示し、(c)、(d)は階段型構造の例を示す。
【図6】基礎構造を重畳した第1光路差付与構造の概念図で、(a)、(b)、(c)は光路差付与構造の重畳例を示し、(d)は第1基礎構造と第2基礎構造との重畳例を示す。
【図7】ダイヤモンド工具を示す図で、(a)は本実施の形態にかかる金型の加工方法で用いるダイヤモンド工具の切れ刃を示す斜視図、(b)はすくい面3aの先端部形状を示す拡大図である。
【図8】実施の形態にかかるXZB軸超精密旋盤の斜視図である。
【図9】金型と工具のセッティング位置関係を示す図である。
【図10】加工したい金型の一部にかかる拡大断面形状を示す図である。
【図11】加工したい金型の一部にかかる拡大断面形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。先ず、codeV等の光学設計ソフトウェアを用いて、BD/DVD/CD互換対物レンズの設計を行う。そして、当該設計結果に基づいて、金型の加工を行っていく。図7(a)は、本実施の形態にかかる金型の加工方法で用いるダイヤモンド工具の切れ刃を示す斜視図であり、図7(b)は、すくい面3aの先端部形状を示す拡大図である。ダイヤモンド工具の切れ刃3は、図に示すようにシャンクSに対してろう付けされており、切削されるべき型の回転方向に正対するすくい面3aを有している。かかるすくい面3aの先端部は、第1の縁部である縁部3b及び第2の縁部である縁部3cと、縁部3bの端部Aと縁部3cの端部Bとを結ぶ第3の縁部である円弧部3dとから輪郭づけられている。
【0065】
すくい面3aの円弧部3dの半径rを0.1〜0.5μm(好ましくは0.1〜0.3、μm)とすることで、刃先を鋭利にして高精度な微細形状を切削できる。第1の縁部3bと、第2の縁部3cとのはさみ角(頂角)は20〜30°(好ましくは29°以下)とするのがよい。尚、第1の縁部3bと第2の縁部3cの二等分線を、工具3の軸線BXとする。
【0066】
図8は、型の加工に用いるXZB軸超精密旋盤の斜視図である。図9は、ダイヤモンド工具を用いて金型を切削する際の拡大断面図である。図8において、定盤10に対して、Z軸方向に移動自在なZ軸ステージ5上には、回転駆動機構9が設けられ、回転駆動機構9は、切削すべき金型素材1を、回転軸線AX回りで回転駆動するようになっている。一方、定盤10に対して、B軸回りに回転可能なB軸ステージ11が設けられ、B軸ステージ11上にはX方向に移動自在なX軸ステージ6が設けられ、X軸ステージ6上には工具取付部7が設けられて、ダイヤモンド工具3を把持している。B軸ステージ11により、ダイヤモンド工具3の工具軸線を傾けた状態に維持し、回転駆動機構9により金型素材1を回転させながら、Z軸ステージ5,X軸ステージ6によりダイヤモンド工具3を金型素材1に対して相対的に移動させることで、光学転写面の加工を行えるようになっている。
【0067】
本実施の形態では、金型素材1は鉄系の母材を使用し、切削面に対して要求形状を粗取りした後、加工層として無電解ニッケルメッキを約50μmの厚さで施している。
【0068】
金型素材1の光学面(被加工面)1aに要求される形状は、BD/DVD/CD互換用プラスチック対物レンズの回折光学面形状である。
【0069】
金型素材1を例えば1000回転毎分で回転させると共に、X軸ステージ6及びZ軸ステージ5をプログラム制御により、ダイヤモンド工具3の先端部が、図9の矢印で示すように、金型素材1の外周側から中心部に向かって、毎分0.1mmの移動速度で並進移動して、所望の回折光学面形状が得られるように移動させる。
【0070】
ここで、第1の加工態様によれば、ダイヤモンド工具3の頂角の2等分線BX(図7(b)参照)を、金型素材1の回転軸線AXに対して傾けたまま、外周から中央まで切削加工を行う。この時、頂角の2等分線BXの回転軸線に対する傾け角度は、頂角の約半分であることが好ましい。この場合、8°〜18°である。かかる場合、図9において、第1の縁部3b(但し、傾け角によっては第3の縁部3dにて切削する場合もあるが、この場合、工具軸線を挟んで回転軸線から遠い側で切削する縁部を第1の縁部と定義する)により、輪帯状の凸部1dにおける光軸に近い側の周面(第1の周面)(凹部においては光軸から離れた側の周面となる)1bを回転軸線AXに対して平行に形成できる。つまり、かかる加工により切削された金型を用いて対物レンズを成形すると、輪帯凸部の光軸から遠い側の周壁(図1の外側壁OWに相当)が光軸と平行になる対物レンズを形成できる。一方、第2の縁部3cにより、輪帯状の凸部1dにおける光軸から遠い側の周面(第2の周面)(凹部においては光軸に近い側の周面となる)1cを形成できる。つまり、かかる加工により切削された金型を用いて対物レンズを形成すると、輪帯凸部の光軸から近い側の周壁(図1の内側壁IWに相当)が光軸に対して輪帯凸部の先端に向かうにつれて光軸から離れるように傾いている対物レンズを形成できる。尚、第1の縁部3bを回転軸線AXとを、厳密に平行とする必要はない。第1の縁部3bが回転軸線AXと平行になる位置よりも、すくい面の先端が回転軸線AXに近づく方向に傾けなければ、ダイヤモンド工具3のZ方向への相対移動によって、光軸に近い側の周面1bを回転軸線AXに対して平行に形成できるからである。
【0071】
更に、第2の加工態様によれば、金型素材1の加工面1aの外周から中間部までは、ダイヤモンド工具3の頂角の2等分線BXを、金型素材1の回転軸線AXに平行においた状態で切削加工を行い、次いで、図8におけるB軸を中心にダイヤモンド工具3を回転させ、中間部から中央までは、ダイヤモンド工具3の頂角の2等分線BXを、金型素材1の回転軸線AXに対して傾けた状態に角度を変更して切削加工を行うこともできる。かかる場合、第1の縁部3bにより、中間部から中央までの範囲で、輪帯状の凸部1dにおける光軸に近い側の周面1bを回転軸線AXに対して平行に形成できる。つまり、かかる加工により切削された金型を用いて対物レンズを成形すると、中間部から中央までの範囲で輪帯溝の光軸に近い側の周壁が光軸と平行になる対物レンズを形成できる。
【0072】
図10,11は、加工したい金型の一部にかかる拡大断面形状を示しており、金型の形状をハッチングで示す。
【0073】
本発明者らは、ダイヤモンド工具3の頂角の2等分線BXを、金型素材1の回転軸線AXに対して傾けない比較例の金型と、ダイヤモンド工具3の頂角の2等分線BXを、金型素材1の回転軸線AXに対して傾けた実施例の金型とをそれぞれ製造し、両金型にて互換用の回折構造を有する対物レンズを成形した。比較例の金型から成形した対物レンズの回折効率を測定したところ、BD使用時の回折効率:74.1%、DVD使用時の回折効率:56.4%、CD使用時の回折効率:52.1%であった。一方、実施例の金型から成形した対物レンズの回折効率を測定したところ、BD使用時の回折効率:76.2%(+2.1%)、DVD使用時の回折効率:62.8%(+6.4%)、CD使用時の回折効率:58.3%(+6.2%)であり、いずれの波長域でも回折効率が増大し、本発明の効果が確認された。
【0074】
本発明は、明細書に記載の実施例に限定されるものではなく、他の実施例・変形例を含むことは、本明細書に記載された実施例や思想から本分野の当業者にとって明らかである。明細書の記載及び実施例は、あくまでも例証を目的としており、本発明の範囲は後述するクレームによって示されている。例えば光学素子とは対物レンズに限られない。
【符号の説明】
【0075】
1 金型素材
1a 加工面
1b 周面
3 ダイヤモンド工具
3a すくい面
3b 第1の縁部
3c 第2の縁部
3d 円弧部(第3の縁部)
4 光学面
5 Z軸ステージ
6 X軸ステージ
7 工具取付部
9 回転駆動機構
10 定盤
11 B軸ステージ
A 端部
AX 回転軸線
B 端部
BX 2等分線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子を成形する金型の素材を、第1の縁部と該第1の縁部に交差する方向に延在する第2の縁部とから少なくとも一部が輪郭づけられるすくい面を備えた工具にて切削する金型の加工方法において、
前記第1の縁部が、前記第2の縁部よりも金型の素材の回転軸線より遠い位置になり、且つ前記すくい面の先端が回転軸線より離れるように、前記工具の軸線を前記回転軸線に対して傾けてセットした前記工具により、金型の素材を回転させながら切削することにより、前記第1の縁部により切削された第1の周面と、前記第2の縁部により切削された第2の周面とを有する凹状の輪帯構造を少なくとも一部形成することを特徴とする金型の加工方法。
【請求項2】
前記素材の被加工部における外周から中央まで、前記工具の軸線を前記回転軸線に対して傾けてセットした状態で切削することを特徴とする請求項1に記載の金型の加工方法。
【請求項3】
前記工具の軸線の前記回転軸線に対する傾き角を、前記素材の被加工部の切削途中で変更することを特徴とする請求項1に記載の金型の加工方法。
【請求項4】
前記素材の被加工部における外周から中間部まで、前記工具の軸線を前記回転軸線に平行にセットした状態で切削し、前記中間部から中央まで、前記工具の軸線を前記回転軸線に対して傾けてセットした状態で切削することを特徴とする請求項3に記載の金型の加工方法。
【請求項5】
少なくとも一部の凹状の輪帯構造の周壁において、少なくとも前記輪帯構造の光軸から遠い側の周壁は、光軸に対して平行であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の金型の加工方法。
【請求項6】
前記凹状の輪帯構造の周壁において、少なくとも前記輪帯構造の光軸に近い側の周壁は、光軸に対して傾いていることを特徴とする請求項5に記載の金型の加工方法。
【請求項7】
前記工具のすくい面は、前記第1の縁部端部と前記第2の縁部端部とを結ぶ円弧状の第3の縁部を有し、前記第3の縁部の半径は、0.1〜0.5μmであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の金型の加工方法。
【請求項8】
前記工具の軸線の前記回転軸線に対する傾け角が、前記第1の縁部と前記第2の縁部とがなす頂角の約半分であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の金型の加工方法。
【請求項9】
前記第1の縁部と前記第2の縁部とがなす頂角は、20〜30°であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の金型の加工方法。
【請求項10】
前記工具の軸線の前記回転軸線に対する傾け角が、8〜18°であることを特徴とする請求項9に記載の金型加工方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の加工方法により加工されたことを特徴とする金型。
【請求項12】
第1波長λ1(390nm≦λ1≦415nm)の第1光束を射出する第1光源と、第2波長λ2(630nm≦λ2≦670nm)の第2光束を射出する第2光源と、第3波長λ3(760nm≦λ3≦820nm)の第3光束を射出する第3光源とを有し、前記第1光束を用いて厚さがt1の保護基板を有するBDの情報の記録及び/又は再生を行い、前記第2光束を用いて厚さがt2(t1<t2)の保護基板を有するDVDの情報の記録及び/又は再生を行い、前記第3光束を用いて厚さがt3(t2<t3)の保護基板を有するCDの情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において用いられる光学素子であって、
前記光学素子の少なくとも一つの光学面は、中央領域と、中央領域の周りの中間領域と、中間領域の周りの周辺領域とを少なくとも有し、
前記光学素子は、前記中央領域を通過する前記第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記中間領域を通過する前記第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中間領域を通過する前記第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中間領域を通過する前記第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、
前記周辺領域を通過する前記第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記周辺領域を通過する前記第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、前記周辺領域を通過する前記第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、 前記中央領域は、第1光路差付与構造を備え、
前記第1光路差付与構造は、ブレーズ型構造を有する第1基礎構造とブレーズ型構造を有する第2基礎構造を互いに逆向きに重ね合わせた構造であり、
前記第1基礎構造の段差は光軸とは逆の方向を向いており、前記第2基礎構造の段差は光軸の方向を向いており、
前記第1基礎構造を通過した前記第1光束の1次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、前記第1基礎構造を通過した前記第2光束の1次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、前記第1基礎構造を通過した前記第3光束の1次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、
前記第2基礎構造を通過した前記第1光束の2次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、前記第2基礎構造を通過した前記第2光束の1次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、前記第1基礎構造を通過した前記第3光束の1次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、
前記第1光路差付与構造は、略光軸方向に延在し互いに向かい合う周壁を備えた輪帯凸部を有し、少なくとも前記輪帯凸部の光軸から遠い側の周壁は、光軸に対して平行であり、前記輪帯凸部の光軸に近い側の周壁は、光軸に対して前記輪帯凸部の先端に向かうにつれて光軸から離れるように傾いていることを特徴とする光学素子。
【請求項13】
前記輪帯凸部は光路差付与構造であることを特徴とする請求項12に記載の光学素子。
【請求項14】
前記光学素子は対物レンズであることを特徴とする請求項12又は13に記載の光学素子。
【請求項1】
光学素子を成形する金型の素材を、第1の縁部と該第1の縁部に交差する方向に延在する第2の縁部とから少なくとも一部が輪郭づけられるすくい面を備えた工具にて切削する金型の加工方法において、
前記第1の縁部が、前記第2の縁部よりも金型の素材の回転軸線より遠い位置になり、且つ前記すくい面の先端が回転軸線より離れるように、前記工具の軸線を前記回転軸線に対して傾けてセットした前記工具により、金型の素材を回転させながら切削することにより、前記第1の縁部により切削された第1の周面と、前記第2の縁部により切削された第2の周面とを有する凹状の輪帯構造を少なくとも一部形成することを特徴とする金型の加工方法。
【請求項2】
前記素材の被加工部における外周から中央まで、前記工具の軸線を前記回転軸線に対して傾けてセットした状態で切削することを特徴とする請求項1に記載の金型の加工方法。
【請求項3】
前記工具の軸線の前記回転軸線に対する傾き角を、前記素材の被加工部の切削途中で変更することを特徴とする請求項1に記載の金型の加工方法。
【請求項4】
前記素材の被加工部における外周から中間部まで、前記工具の軸線を前記回転軸線に平行にセットした状態で切削し、前記中間部から中央まで、前記工具の軸線を前記回転軸線に対して傾けてセットした状態で切削することを特徴とする請求項3に記載の金型の加工方法。
【請求項5】
少なくとも一部の凹状の輪帯構造の周壁において、少なくとも前記輪帯構造の光軸から遠い側の周壁は、光軸に対して平行であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の金型の加工方法。
【請求項6】
前記凹状の輪帯構造の周壁において、少なくとも前記輪帯構造の光軸に近い側の周壁は、光軸に対して傾いていることを特徴とする請求項5に記載の金型の加工方法。
【請求項7】
前記工具のすくい面は、前記第1の縁部端部と前記第2の縁部端部とを結ぶ円弧状の第3の縁部を有し、前記第3の縁部の半径は、0.1〜0.5μmであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の金型の加工方法。
【請求項8】
前記工具の軸線の前記回転軸線に対する傾け角が、前記第1の縁部と前記第2の縁部とがなす頂角の約半分であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の金型の加工方法。
【請求項9】
前記第1の縁部と前記第2の縁部とがなす頂角は、20〜30°であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の金型の加工方法。
【請求項10】
前記工具の軸線の前記回転軸線に対する傾け角が、8〜18°であることを特徴とする請求項9に記載の金型加工方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の加工方法により加工されたことを特徴とする金型。
【請求項12】
第1波長λ1(390nm≦λ1≦415nm)の第1光束を射出する第1光源と、第2波長λ2(630nm≦λ2≦670nm)の第2光束を射出する第2光源と、第3波長λ3(760nm≦λ3≦820nm)の第3光束を射出する第3光源とを有し、前記第1光束を用いて厚さがt1の保護基板を有するBDの情報の記録及び/又は再生を行い、前記第2光束を用いて厚さがt2(t1<t2)の保護基板を有するDVDの情報の記録及び/又は再生を行い、前記第3光束を用いて厚さがt3(t2<t3)の保護基板を有するCDの情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置において用いられる光学素子であって、
前記光学素子の少なくとも一つの光学面は、中央領域と、中央領域の周りの中間領域と、中間領域の周りの周辺領域とを少なくとも有し、
前記光学素子は、前記中央領域を通過する前記第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中央領域を通過する前記第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、
前記中間領域を通過する前記第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中間領域を通過する前記第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記中間領域を通過する前記第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、
前記周辺領域を通過する前記第1光束を、BDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光し、前記周辺領域を通過する前記第2光束を、DVDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、前記周辺領域を通過する前記第3光束を、CDの情報記録面上に情報の記録及び/又は再生ができるように集光せず、 前記中央領域は、第1光路差付与構造を備え、
前記第1光路差付与構造は、ブレーズ型構造を有する第1基礎構造とブレーズ型構造を有する第2基礎構造を互いに逆向きに重ね合わせた構造であり、
前記第1基礎構造の段差は光軸とは逆の方向を向いており、前記第2基礎構造の段差は光軸の方向を向いており、
前記第1基礎構造を通過した前記第1光束の1次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、前記第1基礎構造を通過した前記第2光束の1次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、前記第1基礎構造を通過した前記第3光束の1次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、
前記第2基礎構造を通過した前記第1光束の2次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、前記第2基礎構造を通過した前記第2光束の1次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、前記第1基礎構造を通過した前記第3光束の1次の回折光量は他のいかなる次数の回折光量よりも大きくなり、
前記第1光路差付与構造は、略光軸方向に延在し互いに向かい合う周壁を備えた輪帯凸部を有し、少なくとも前記輪帯凸部の光軸から遠い側の周壁は、光軸に対して平行であり、前記輪帯凸部の光軸に近い側の周壁は、光軸に対して前記輪帯凸部の先端に向かうにつれて光軸から離れるように傾いていることを特徴とする光学素子。
【請求項13】
前記輪帯凸部は光路差付与構造であることを特徴とする請求項12に記載の光学素子。
【請求項14】
前記光学素子は対物レンズであることを特徴とする請求項12又は13に記載の光学素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−49272(P2013−49272A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−200134(P2012−200134)
【出願日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【分割の表示】特願2012−540200(P2012−540200)の分割
【原出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【分割の表示】特願2012−540200(P2012−540200)の分割
【原出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】
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