説明

金型冷却装置と残液排出方法

【課題】金型交換の際に金型内にある残液を容易に排出可能な金型冷却装置と残液排出方法の提供する。
【解決手段】冷却手段4と、冷却手段4によって冷却される冷却液を貯蔵するタンク5と、タンク5内の冷却液を吸込んで金型3に圧送するための液送ポンプ7とを、備えた金型冷却装置に於て、金型交換の際に金型3内の残液を排出させるためのエアーポンプを省略して、液送ポンプ7の吸入側又は吐出側からエアーを吸入するように切換える切換弁6を付設して、液送ポンプ7にてエアーを金型3内へ送るように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型冷却装置と残液(冷却液)排出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形金型の金型冷却装置は、圧縮機や凝縮器及び蒸発器を使用した冷却手段によって冷却液を冷却させて貯蔵タンクに貯蔵し、液送ポンプにてタンク内の冷却液を金型内の冷却路に流水させて、金型を冷却し、さらに、金型内を通過した冷却水を貯蔵タンクに回収して再度冷却して金型に送流させる循環状配管となったものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3218438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、成形機に取付された金型を交換する際に、送水ポンプを停止させていても、取り外した配管や金型から冷却液の残液が流出して周囲を汚染し清掃作業の必要があった。また、金型や配管の水切り作業や、流出した冷却液(残液)の廃棄作業などにも時間や手間がかかるという欠点があった。
【0004】
そこで、本発明は、金型交換の際に金型内にある残液を容易に排出可能な金型冷却装置と残液排出方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成させるために、本発明に係る金型冷却装置は、冷却手段と、該冷却手段によって冷却される冷却液を貯蔵するタンクと、該タンク内の冷却液を吸込んで金型に圧送するための液送ポンプとを、備えた金型冷却装置に於て、金型交換の際に上記金型内の残液を排出させるためのエアーポンプを省略して、上記液送ポンプの吸入側又は吐出側からエアーを吸入するように切換える切換弁を付設して、上記液送ポンプにてエアーを上記金型内へ送るように構成したものである。
【0006】
また、上記液送ポンプと上記金型とを連通連結する配管の途中に、金型交換の際離脱可能な着脱自在管継手を介設し、該管継手には逆止弁を省略したものである。
【0007】
次に、本発明に係る残液排出方法は、冷却手段と、該冷却手段によって冷却される冷却液を貯蔵するタンクと、該タンク内の冷却液を吸込んで金型に圧送するための液送ポンプとを、備えた金型冷却装置に於ける上記金型を交換する前に、上記タンクからの冷却液の吸入を遮断すると共に、上記液送ポンプの吸込側又は吐出側からエアーを吸入して、上記金型内にエアーを送って残液を排出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の金型冷却装置と残液排出方法によれば、残液を排出させるエアーポンプを省略しているので小型化でき、低コストで製作できる。また、エアーを吸入するように切換える切換弁を付設して、液送ポンプにて金型内にエアーを送るように構成しているので、液送ポンプをエアーポンプとして併用できる。
また、ポンプと金型とを連通連結する配管の途中に逆止弁を省略した着脱自在管継手を介設しているので、冷却液の圧送の際に、液圧・液量が安定して金型に送ることができる。また、冷却液の液送ポンプを利用して金型内にエアーを送って残水を排出させるので、金型や配管の液切り作業や流出した冷却液の清掃の手間が軽減できる。また、冷却液排出用のエアー配管を省略できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に基づき本発明を詳説する。
図1は本発明の使用状態の一例を説明する簡略構成説明図であり、図2は本発明の第1の実施の形態を説明する配管説明図である。
図1と図2において、1は、圧縮機と凝縮器及び蒸発器を冷媒配管で接続し、圧縮機の運転により液体を冷却できる冷却手段4を内装している冷却水発生装置である。冷却水発生装置1は、冷却手段4によって冷却される冷却液を貯蔵するタンク5と、タンク5の冷却水を射出成形機2に取付られた金型3に圧送可能な液送ポンプ7と、ポンプ7を起動させるモータ9と、を備えている。さらに、タンク5とポンプ7の吸入側の間にタンク5内の冷却液を送流可能な切換弁6を介設している。この切換弁6は、冷却液をポンプ7に送流可能な状態と、タンク5からの冷却液の送流を遮断すると共に液送ポンプ7の吸込側からエアーを吸入可能な状態とに、切換が可能なものである。この切換弁6は電気信号によって自動切換制御が可能なものが望ましい。
【0010】
また、ポンプ7と分岐用の分岐中継ボックス12Aとを往路配管10aで接続し、分岐中継ボックス12Aの各々の分岐口から吸入配管10b,10bが金型3に接続されている。吸入配管10b,10bは分岐中継ボックス12Aに離脱可能な着脱自在管継手11,11(例えばカプラ)を介して金型3の冷却液路の吸入口に各々接続されている。さらに、金型3に設けた冷却液路の排出口と合流用の合流中継ボックス12Bを、排出配管10c,10cを介して接続している。ここで、排出配管10c,10cは、吸入配管10b,10bと同様に離脱可能な着脱自在管継手11,11を介して合流中継ボックス12Bに各々接続されている。そして、合流中継ボックス12Bの合流口とタンク5とを復路配管10dで接続している。つまり、ポンプ7と金型3とを連通連結し、タンク5を介して循環状となった配管10の途中に離脱可能な着脱自在管継手11を介設している。ここで、着脱自在な管継手11は、逆止弁を省略したものである。
【0011】
上述した本発明の第1の実施の形態の装置の作用と残液排出方法について説明する。
まず、金型3を冷却する際は、冷却手段4によって冷却された冷却液が貯蔵されるタンク5から液送ポンプ7に吸入可能に切換弁6を設定する。すると、モータ9によって駆動される液送ポンプ7により冷却液が往路配管10aを送流し、分岐中継ボックス12Aによって各々の分岐口から着脱自在な管継手11,11を介して吸入配管10b,10bに送流され、金型3内にある冷却液路を流れ、金型3を冷却する。そして、金型3を流れた冷却液は、金型3の冷却液排出口に取付された排出配管10c,10cを通過し、着脱自在な管継手11,11を介して合流中継ボックス12Bに送流される。冷却液は、合流中継ボックス12Bによって合流し復路配管10dを通過してタンク5に回収される。回収された冷却液は再び冷却手段4によって冷却され、金型3を冷却するために液送ポンプ7によって再び金型3に送流される。つまり、これらの配管10は、液送ポンプ7と金型3とを連通連結し、タンク5を介して冷却液を循環させている。
【0012】
この際、吸入配管10b,10bに接続されている管継手11,11は逆止弁を省略したものなので、金型3内へ流れる冷却液は、逆止弁の抵抗による圧損や流量の損失が起こらずに安定した量の冷却液を金型3に供給している。また、排出配管10c,10cに接続される管継手11,11も同様に逆止弁を省略したものなので、金型3から安定した量の冷却液を排出している。
【0013】
次に、金型3の段取り換えやメンテナンスの際は、金型3を取り外す(交換する)前に、切換弁6を切り換えて、液送ポンプ7へタンク5から流れる冷却液を遮断すると共に、切換弁6のエアー吸入口8から液送ポンプ7の吸入側にエアーを吸入させる。すると、液送ポンプ7がエアーポンプの替わりとなって、金型3を冷却する際に冷却液が送流していた配管10内にエアーを圧送し、金型3内の冷却液路内や配管10内に残っていた冷却液の残水をタンク5に吹き出すように排出させる。また、配管10の途中に介設している着脱自在な管継手11は、逆止弁がないので、逆止弁による抵抗が減少し、エアーや残水はスムーズにタンク5に排出される。
【0014】
復路配管10dからタンク排出される残水がなくなったら(少なくなったら)、液送ポンプ7を起動させるモータ9を停止させて、管継手11を離脱させて金型3を成型機2から取り外す。すると、金型3内や配管10内の残水はエアーによってタンク5に排出されているので、金型3や管継手11を離脱させた吸入配管10b,10bや排出配管10c,10cからまた中継ボックス12A,12Bから残水は溢れない(流出しない)。そして、取り外した金型3の収納または、メンテナンスをおこなって作業を終了する。
【0015】
次に、本発明の第2の実施の形態について詳説する。図3は本発明の第2の実施の形態を説明する配管説明図である。
図3において、第1の実施の形態と同様に、圧縮機と凝縮器及び蒸発器を冷媒配管で接続し、圧縮機の運転により液体を冷却できる冷却手段4と、冷却手段4によって冷却される冷却液を貯蔵するタンク5と、タンク5の冷却水を射出成型機2に取付られた金型3に圧送可能な液送ポンプ7と、ポンプ7を起動させるモータ9と、を有している冷却水発生装置1を備えている。
【0016】
そして、タンク5と液送ポンプ7の吸入側の間に、タンク5内の冷却液を送流可能状態と送流を遮断する状態とに切換可能な遮断切換弁13を介設している。また、ポンプ7と分岐用の分岐中継ボックス12Aとを接続する往路配管10aから分岐される分岐配管10eに、エアーを吸入するように切り換えることができる切換弁6を付設している。つまり、タンク5からの冷却液を遮断切換弁13で遮断すると共に、切換弁6を切換えて、液送ポンプ7の吐出側からエアーを吸入して、液送ポンプ7にてエアーを圧送可能に構成している。また、切換弁6及び遮断切換弁13は、電気信号によって同時に切換える。
【0017】
また、ポンプ7に往路配管10aを介して接続される分岐用の分岐中継ボックス12Aの分岐口から吸入配管10b,10bが金型3に接続されている。吸入配管10b,10bは分岐中継ボックス12Aに離脱可能な着脱自在管継手11,11(例えばカプラ)を介して金型3の冷却液路の吸入口に各々接続されている。さらに、金型3に設けた冷却液路の排出口と合流用の合流中継ボックス12Bを、排出配管10c,10cを介して接続している。ここで、排出配管10c,10cは、吸入配管10b,10bと同様に離脱可能な着脱自在管継手11,11を介して合流中継ボックス12Bに各々接続されている。そして、合流中継ボックス12Bの合流口とタンク5とを復路配管10dで接続している。つまり、ポンプ7と金型3とを連通連結する循環状となった配管10の途中に離脱可能な着脱自在管継手11を介設している。ここで、着脱自在な管継手11は、逆止弁を省略したものである。
【0018】
上述した本発明の第2の実施の形態の装置の作用と残液排出方法について説明する。
第1の実施の形態と同様に、冷却手段4によって冷却された冷却水を液送ポンプ7によって送流させ、金型3を冷却させた後、タンク5に回収させる。そして、金型3の残液を排出する際は、遮断切換弁13を切換えて液送ポンプ7への冷却水の流入を遮断すると共に、切換弁6を切換えて液送ポンプ7の吸入側からエアーを吸入する。すると、冷却液が流れていた配管10や金型3にエアーが圧送されて、残液をタンク5に排出させ回収する。
【0019】
また、第1の実施の形態と同様に、配管10に介設される着脱自在管継手11に冷却液やエアーまたは残液が流れる際は、逆止弁による抵抗がないので、安定した流量でスムーズに流れている。
【0020】
なお、本発明は、設計変更自由であって、例えば、切換弁6や遮断切換弁13は手動操作でも良い。また、管継手11は金型3の取り外しを容易にする箇所であればよく、配管のメンテナンスを容易にする箇所に付設しても良い。
【0021】
以上のように、本発明は、冷却手段4と、冷却手段4によって冷却される冷却液を貯蔵するタンク5と、該タンク5内の冷却液を吸込んで金型3に圧送するための液送ポンプ7とを、備えた金型冷却装置に於て、金型交換の際に金型3内の残液を排出させるためのエアーポンプを省略して、液送ポンプ7の吸入側又は吐出側からエアーを吸入するように切換える切換弁6を付設して、液送ポンプ7にてエアーを金型3内へ送るように構成したので、液送ポンプ7をエアーポンプに流用して、装置が安価かつ簡略化できる。
【0022】
また、液送ポンプ7と金型3とを連通連結する配管10の途中に、金型交換の際離脱可能な着脱自在管継手11を介設し、管継手11には逆止弁を省略したので、逆止弁の抵抗を受けず、定量・定圧の冷却液が金型3内をスムーズに流れることができ、金型3の冷却効果を安定して確実に得ることができる。また、低圧エアーでも配管内に圧送できる。また、逆止弁に邪魔されずに残水を排出できる。また、管継手11は逆止弁が必要ないので安価で軽量かつ着脱が容易な構造のもの(例えば、ワンタッチ式カプラ)を使用できる。
【0023】
また、冷却手段4と、該冷却手段4によって冷却される冷却液を貯蔵するタンク5と、該タンク5内の冷却液を吸込んで金型3に圧送するための液送ポンプ7とを、備えた金型冷却装置に於ける金型3を交換する前に、タンク5からの冷却液の吸入を遮断すると共に、液送ポンプ7の吸込側又は吐出側からエアーを吸入して、金型3内にエアーを送って残液を排出させることで、液送ポンプ7をエアーポンプとして使用し、エアーを金型3に送るエアー配管を冷却液の液送配管と併用することができるので、装置が安価で簡素なものができる。また、金型3や配管10の残水を冷却水の循環配管を利用して回収できるので、金型3を取り外した際に、金型3や配管10から残水が溢れず、残水の清掃作業や回収・廃棄作業がなくなり、金型交換の作業時間が短縮できる。また、残水を直接作業者が触れずに衛生的に排出作業ができる。また、金型3の水切り(液切り)作業の必要がなくなり、成型機2からの取り外し後に素早く所定の位置に収納できる。また、残液を確実に回収でき、冷却液を節約できると共に、さらに、配管内の冷却水がなくならないため、金型交換後に生じる液の補充も不要となる。また、切換弁6や遮断切換弁13を液送ポンプ7と連動させることで、残液の自動排出ができる。また、金型3や配管10にドレイン(液抜き)バルブを省略できる。また、液送ポンプ7を停止させた際に配管10から金型3へ残液が逆流して金型3内に残液が貯まるのを防止するための逆止弁が、液送ポンプ7の停止後に残液をエアーで圧送するので、必要がなくなる。つまり、金型交換の際や、配管のメンテナンスの際に取り外される着脱自在管継手11は逆止弁を省略したものが使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る冷却装置の使用状態の一例を説明する簡略構成説明図である。
【図2】本発明に係る冷却装置の第1の実施の形態を説明する配管説明図である。
【図3】本発明に係る冷却装置の第2の実施の形態を説明する配管説明図である。
【符号の説明】
【0025】
3 金型
4 冷却手段
5 タンク
6 切換弁
7 液送ポンプ
10 配管
11 管継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却手段(4)と、該冷却手段(4)によって冷却される冷却液を貯蔵するタンク(5)と、該タンク(5)内の冷却液を吸込んで金型(3)に圧送するための液送ポンプ(7)とを、備えた金型冷却装置に於て、金型交換の際に上記金型(3)内の残液を排出させるためのエアーポンプを省略して、上記液送ポンプ(7)の吸入側又は吐出側からエアーを吸入するように切換える切換弁(6)を付設して、上記液送ポンプ(7)にてエアーを上記金型(3)内へ送るように構成したことを特徴とする金型冷却装置。
【請求項2】
上記液送ポンプ(7)と上記金型(3)とを連通連結する配管(10)の途中に、金型交換の際離脱可能な着脱自在管継手(11)を介設し、該管継手(11)には逆止弁を省略した請求項1記載の金型冷却装置。
【請求項3】
冷却手段(4)と、該冷却手段(4)によって冷却される冷却液を貯蔵するタンク(5)と、該タンク(5)内の冷却液を吸込んで金型(3)に圧送するための液送ポンプ(7)とを、備えた金型冷却装置に於ける上記金型(3)を交換する前に、上記タンク(5)からの冷却液の吸入を遮断すると共に、上記液送ポンプ(7)の吸込側又は吐出側からエアーを吸入して、上記金型(3)内にエアーを送って残液を排出させることを特徴とする残液排出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−18462(P2009−18462A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181738(P2007−181738)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(393027729)株式会社カンネツ (8)
【Fターム(参考)】