説明

金属シードを用いた金属ナノ粒子の製造方法及び金属シードを含む金属ナノ粒子

【課題】高濃度条件下で均一なサイズのナノ粒子を高収率で製造でき、金属ナノ粒子の大量生産に好適であり、分散安定性が高くて多様に応用可能な金属ナノ粒子の製造方法及び金属シードを含む金属ナノ粒子を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態に係る金属ナノ粒子の製造方法は、アルコール系溶媒に高分子界面活性剤を添加して溶液を製造するステップと、上記溶液を加熱するステップと、上記加熱した溶液に白金、パラジウム、及びイリジウムから選択される金属塩の少なくとも1種の第1金属塩を添加して金属シードを形成するステップと、上記金属シードが含まれている溶液に第2金属塩を添加するステップと、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属シードを用いた金属ナノ粒子の製造方法及び金属シードを含む金属ナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
金ナノ粒子を製造する方法には、化学的合成方法、機械的製造方法、電気的製造方法がある。機械的な力を用いて粉砕する機械的製造方法は、工程上不純物の混入により高純度の粒子を合成しにくく、ナノサイズの均一な粒子の形成が不可能である。また、電気分解による電気的製造方法は、製造時間は長く、濃度が低いので効率が低いという短所がある。化学的合成方法は、気相法と液相法で大きく分けられる。プラズマや気体蒸発法を用いる気相法は高価の装備を要する。このため、低費用で均一な粒子の合成が可能である液相法が主に用いられている。
【0003】
既存の液相法において最もよく知られている金ナノ粒子の合成法は、有機チオールを界面活性剤として用いる非水系合成法である。この合成法は、濃度に拘らず、比較的金ナノ結晶を均一に合成できるという長所はあるが、環境的に毒性があり、高価の還元剤及び相交換物質などを必要とするという問題点があった。特に、有機チオール分子は粒子表面からは除去しにくいという短所があるため、今後の導電性インクに適用するには問題点が存在する。
【0004】
一方、伝統的な水系合成法として知られているクエン酸を用いた水中での塩化金酸(HAuCl)還元法、及び水素化ホウ酸ナトリウム(NaBH)を用いた塩化金酸還元法などは比較的容易に均一なナノ粒子を合成できる方法として知られている。しかしながら、合成濃度が高くないため、大量合成には限界があり、また、大量に合成できたとしても、高濃度の溶液においては分散安定性が大幅に落ちるなどの問題点が存在する。
【0005】
その他にも紫外線(UV)、近赤外線(NIR)、超音波、及びマイクロ波などの別の外部エネルギーを用いた金ナノ粒子合成方法が提案されたが、合成濃度及び合成規模における問題点や、エネルギー伝達過程にて発生する不均一性に対する問題点が、依然として解決しなければならない課題として残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術の問題点に鑑み、本発明は、短い時間内に高濃度かつ大量の金属ナノ粒子を合成でき、反応条件を変更することにより金属ナノ粒子のサイズを調節できる金属ナノ粒子の製造方法を提供することを目的とする。本発明の他の目的は、均一な粒子サイズを有し、高揮発性の溶液で置換した場合にも分散安定性に優れた金属ナノ粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決するために、本発明の一実施形態によれば、アルコール系溶媒に高分子界面活性剤を添加して溶液を製造するステップと、上記溶液を加熱するステップと、上記加熱した溶液に白金、パラジウム、及びイリジウムから選択される金属塩の少なくとも1種の第1金属塩を添加して金属シード(metal seed)を形成するステップと、上記金属シードを含む溶液に第2金属塩を添加するステップと、を含む金属ナノ粒子の製造方法が提供される。
【0008】
ここで、上記高分子界面活性剤は、添加される第2金属塩の1当量に対して1〜100当量添加され、上記金属シードを形成する第1金属塩は、添加される第2金属塩の1当量に対して1/1000〜1当量添加されることができる。
【0009】
上記溶液の加熱温度は、100℃以上〜上記溶液の沸点以下の温度であることができる。
【0010】
上記高分子界面活性剤は、ポリビニルピロリドンまたはポリビニルピロリドンを含む共重合体であってもよい。
【0011】
上記金属シードを形成する第1金属塩は、塩化白金酸(HPtCl)、塩化白金(PtCl)、塩化白金酸カリウム(KPtCl)、塩化白金酸ナトリウム(NaPtCl)、塩化パラジウム(PdCl)、ヨウ化パラジウム(PdI)、臭化パラジウム(PdBr)、硝酸パラジウム(Pd(NO)、硫酸パラジウム(PdSO)、パラジウム(II)アセチルアセトネート、パラジウム(II)トリフルオロ酢酸塩、塩化イリジウム(III)、イリジウム(III)アセチルアセトネート、及び臭化イリジウム(III)から選択される少なくとも1種の金属塩であることができる。
【0012】
上記第2金属塩は、金、銀、銅、及びパラジウムから選択される少なくとも1種の金属塩でありうる。例えば、塩化金酸(HAuCl)、臭化金酸(HAuBr)、塩化金酸カリウム(KAuCl)、塩化金酸ナトリウム(NaAuCl)、硝酸銀(AgNO)、酢酸銀(AgCHCO)、銀アセチルアセトネート、塩化銅(CuCl)、硝酸銅(Cu(NO)、硫酸銅(CuSO)、塩化パラジウム(PdCl)、ヨウ化パラジウム(PdI)、臭化パラジウム(PdBr)、硝酸パラジウム(Pd(NO)、硫酸パラジウム(PdSO)、パラジウム(II)アセチルアセトネート、及びパラジウム(II)トリフルオロ酢酸塩から選択される少なくとも1種の金属塩であることができる。
【0013】
上記アルコール系溶媒は、好ましくは、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、テトラエチレングリコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、及びこれらの混合物から選択されうる。
【0014】
本発明の他の実施形態によれば、白金、パラジウム、及びイリジウムから選択される第1金属の金属シードを粒子中に含み、第2金属が上記金属シードを取り囲んでおり、上記金属シードの量が0.001〜50モル%である金属ナノ粒子が提供される。
【0015】
ここで、上記第2金属は、金、銀、銅、及びパラジウムから選択されることができる。
【0016】
上記金属ナノ粒子は、上述した製造方法により製造できる。
【0017】
本発明のまた他の実施形態によれば、上述した金属ナノ粒子を含むコロイド溶液が提供され、また、上述した金属ナノ粒子を含むナノインクが提供される。
【0018】
本発明のまた他の実施形態によれば、上述した金属ナノ粒子を用いた相互接続パッドまたはバイオセンサーが提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施形態による金属ナノ粒子の製造方法は、表面改質分子による分散安定性の問題がなく、高濃度条件下で均一なサイズのナノ粒子を高収率で製造できるため、金属ナノ粒子の大量生産に好適である。また、本発明の実施形態による金属ナノ粒子は高濃度のコロイド溶液においても分散安定性が非常に優れてナノインクなどへの応用にも好適である。また、本発明の実施形態による金属ナノ粒子を用いてコロイド溶液、導電性金属ナノ粒子、相互接続パッド、及びバイオセンサーなどへの多様な応用が可能である。
【0020】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例による金属ナノ粒子の製造方法を示す順序図である。
【図2】本発明の実施例1による金ナノ粒子の形成を確認できるUV−Vis分光器の吸光度グラフである。
【図3】本発明の一実施例による金ナノ粒子の断面図である。
【図4】本発明の実施例2の白金塩の添加量による金ナノ粒子のサイズを示すTEM撮影イメージである。
【図5】本発明の実施例3による金ナノ粒子のTEMイメージである。
【図6】本発明の実施例3による金ナノ粒子の蛍光X線元素分析のスペクトルグラフである。
【図7】本発明の実施例4による金ナノ粒子のTEMイメージである。
【図8】本発明の実施例5による金ナノ粒子のTEMイメージである。
【図9】本発明の実施例6による金ナノ粒子のTEMイメージである。
【図10】本発明の実施例7による銀、銅、及びパラジウムナノ粒子のTEMイメージである。
【図11】本発明の実施例8による金ナノ粒子のTEMイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0023】
以下では、本発明の実施例よる金属ナノ粒子の製造方法、及び金属ナノ粒子について具体的に説明する。
【0024】
本発明の実施形態による金属ナノ粒子を製造するためには、先ず、アルコール系溶媒に高分子界面活性剤を添加して溶液を製造する。
【0025】
ここで、アルコール系溶媒は金属ナノ粒子を製造するための溶媒、かつ有機還元剤として使用される。アルコール系溶媒の例としては、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、テトラエチレングリコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、及びこれらの混合物から選択することができ、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、テトラエチレングリコールのようなジオール類が好ましく、最も好ましいのはジエチレングリコールである。
【0026】
アルコール系溶媒は、高分子界面活性剤100重量部に対して100重量部〜2000重量部であることができ、好ましくは、アルコール系溶媒を200〜1000重量部添加することができる。100重量部未満であると、高分子界面活性剤を溶解しにくく、2000重量部を超えると、溶媒の使用が多過ぎて効率的ではない。
【0027】
高分子界面活性剤は、キャッピング分子(capping molecular)として機能することができる重合体分子である。キャッピング分子とは、金属粒子が溶媒中で安定的に成長してナノサイズを形成できるように、金属粒子を取り囲む分子のことである。本発明の実施形態では、公知の多様な高分子界面活性剤を用いることができる。本発明の実施形態によれば、上記高分子界面活性剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)またはポリビニルピロリドンを含む共重合体であることができる。これらポリビニルピロリドンまたはポリビニルピロリドンを含む共重合体は、金属ナノ粒子と結合することから得られる金属ナノ粒子の分散安定性を高めて、再分散の際に高い分散度が得られる。
【0028】
ナノ粒子の形状やサイズは、同一反応条件及び同一界面活性剤を用いる場合、高分子界面活性剤の量により影響を受ける。ポリオール法において、高分子界面活性剤の量が少な過ぎると、粒子を制御することができなくなり、粒子が過成長する。一方で、高分子界面活性剤の量が多過ぎると、反応溶液の粘度が増加し、またナノ粒子の生成が難しくなり、合成されたナノ粒子の分離精製が困難となる。
【0029】
高分子界面活性剤は、添加される第2金属塩に対して1〜1000当量添加可能である。1当量未満であると、粒子サイズや形状の制御が難しくなり、1000当量を超えると、過量の高分子界面活性剤を用いることになって非効率的である。好ましくは、添加される第2金属塩に対して1〜100当量の範囲で添加される。
【0030】
上述したように溶液を製造した後、上記溶液を加熱する。本発明の実施形態では別の還元剤を使用しなくても金属塩を還元できるが、このためには、溶液の加熱工程が必須である。このような加熱は、添加される高分子界面活性剤、金属塩、及び金塩を充分に還流させるためであって、加熱温度は、100℃〜溶液の沸点の範囲であることがよく、好ましくは、上記加熱温度は240℃〜250℃である。
【0031】
このようなポリオールを加熱する還元方法(ポリオール法)では、ポリオールのアルコール基がカルボン酸基に酸化されながら、金属イオンを還元させるので、高温が要求される。還元し易い金及び銀などは約200℃未満で還元される。メタノール、エタノール、及びプロパノールなどは沸点が低いため、溶液合成法ではこのような現象は発生しない。しかしながら、エチレングリコールのようなジオール類は、沸点が高いため金属イオンを還元させることができる。100℃以下では、このような還元反応が自発的に発生しにくい。
【0032】
上記加熱された溶液に白金、パラジウム、及びイリジウムから選択される第1金属塩を添加して金属シードを形成する。ここで、「金属シード」とは、製造しようとするナノ粒子よりもサイズがさらに小さいナノ粒子であって、所望するナノ粒子の形成を容易にする金属ナノ粒子を意味する(図3参照)。
【0033】
本発明の実施形態では、金属ナノ粒子のサイズを低減し、分散度を高めるために、金属塩を添加する前に前駆物質として上記金属シードを用いる。高温で、数ナノサイズの、表面が不安定な状態の金属シードを用いると、金属塩の還元速度が速くなり、この金属シードのために変わった還元速度は金属ナノ粒子の生成に重要な役割をすることができる。このような金属シードは、製造される金属ナノ粒子の中心部分に含まれているという点から、単なる触媒の機能だけを行うものではない。
【0034】
金属シードを形成する第1金属と、金属シードを取り囲んでナノ粒子を形成する第2金属とは互いに異なる金属であって、還元ポテンシャルが類似している金属から選択できる。例えば、第1金属として用いられる白金、パラジウム、及びイリジウムは、第2金属として用いられる金(Au)と還元ポテンシャルが類似している金属である。所望するナノ粒子金属の還元ポテンシャルと類似する還元ポテンシャルを有する金属を、そのナノ粒子を製造するための前駆物質として用いることができる。
【0035】
本発明の好ましい実施例によれば、上記金属シードを形成する第1金属塩は、塩化白金酸(HPtCl)、塩化白金(PtCl)、塩化白金酸カリウム(KPtCl)、塩化白金酸ナトリウム(NaPtCl)、塩化パラジウム(PdCl)、ヨウ化パラジウム(PdI)、臭化パラジウム(PdBr)、硝酸パラジウム(Pd(NO)、硫酸パラジウム(PdSO)、パラジウム(II)アセチルアセトネート、パラジウム(II)トリフルオロ酢酸塩、塩化イリジウム(III)、イリジウム(III)アセチルアセトネート、及び臭化イリジウム(III)から選択される少なくとも1種の金属塩であることができ、好ましくは白金塩を、さらに好ましくは塩化白金酸(HPtCl)を用いる。
【0036】
上記第1金属塩は、添加される第2金属塩に対して1/1000〜1当量添加されることが好ましい。1/1000当量未満であると、金属シードの量が少なくて金属シードを添加する効果が得にくくなる。一方で、1当量を超えると、過量の第1金属塩が使用されるため非常に小さいナノ粒子が形成されて分離が困難となり、また、過量の高価な金属を使用することになって、コスト面からも効率的ではない。
【0037】
上記金属シードが形成された溶液に第2金属塩を添加して、金属ナノ粒子を形成する。
【0038】
上記金属塩としては、金属ナノ粒子の製造に使用できる多様な金属塩を用いることができる。
【0039】
本発明の好ましい実施例によれば、上記第2金属塩は、金、銀、銅、パラジウム、及びこれらの混合物から選択することができる。さらに好ましくは、上記第2金属塩は、塩化金酸(HAuCl)、臭化金酸(HAuBr)、塩化金酸カリウム(KAuCl)塩化金酸ナトリウム(NaAuCl)、硝酸銀(AgNO)、酢酸銀(AgCHCO)、銀アセチルアセトネート、塩化銅(CuCl)、硝酸銅(Cu(NO)、硫酸銅(CuSO)、塩化パラジウム(PdCl)、ヨウ化パラジウム(PdI)、臭化パラジウム(PdBr)、硝酸パラジウム(Pd(NO)、硫酸パラジウム(PdSO)、パラジウム(II)アセチルアセトネート、及びパラジウム(II)トリフルオロ酢酸塩から選択される少なくとも1種の金属塩であることができる。
【0040】
反応は、溶液の加熱後の約5分以内で迅速に行われる。上記白金、パラジウム、及びイリジウムから選択される第1金属塩を添加し、約10秒経過後に、第2金属塩を添加する。上記溶液は、第2金属塩を添加する瞬間、溶液の色が変わって(例えば、第2金属塩が金塩である場合、黄色から濃い赤色または紫色に変わる)金属ナノ粒子の生成を示す。金ナノ粒子の形成の場合、金ナノ粒子の生成は、UV−Vis分光器を用いて、590nm波長領域で典型的な金ナノ粒子のプラズモン共鳴が起こることから確認できる(図2)。本発明者らは実験を通して、反応条件を多様に変更することにより、本発明の金属ナノ粒子のサイズを調節できることを確認できた。特に、添加される第1金属塩の量が少ないほど、金属ナノ粒子のサイズが大きくなることが分かった(実施例2及び図4を参照)。
【0041】
一方、上述した製造方法の他にも、加熱されたアルコール溶媒に上記高分子界面活性剤、上記第1金属塩、及び第2金属塩を同時に添加しても、金属シードを含む金属ナノ粒子を製造することができる。
【0042】
本発明のまた他の実施形態によれば、金属シードを粒子中に含む金属ナノ粒子が提供される。このような金属ナノ粒子は、白金、パラジウム、イリジウムから選択される少なくとも1種の金属シードを粒子中に含み、第2金属が上記金属シードを取り囲んでおり、上記金属シードの量は0.001〜50モル%である金属ナノ粒子であることができる。
【0043】
ここで、上記第2金属は、金、銀、銅、及びパラジウムから選択されることができ、また、このような金属ナノ粒子は、上述した金属ナノ粒子の製造方法により製造できる。
【0044】
好ましくは、図3に示すように、上記金属シードは金属ナノ粒子の中心部位に含まれる。
【0045】
金属ナノ粒子が金属シードを含むか否かは、透過電子顕微鏡(TEM)及び走査電子顕微鏡(SEM)のEDS(Energy Dispersive Spectroscopy)分析、蛍光X線元素分析器、および誘導カップリングプラズマ質量分光計(ICP−MS:Induced Coupled Plasma‐Mass Scepectroscopy)を用いて確認することができる。製造工程中に添加される金属塩の量に応じて金属の量が決定される。
【0046】
本発明の実施形態による金属ナノ粒子は、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、エチレングリコール、水などの多様な分散溶媒を用いて分散させた時、水を除いた全ての溶媒にて高い分散安定性を示した。
【0047】
分散安定性を評価する方法は多様である。例えば、製造された金属ナノ粒子を分散溶媒に分散させた後、遠心分離機で1000rpm以上の速度で5分以上遠心分離した時に沈殿物が発生しなかった場合は、分散安定性に優れると判断することができる。
【0048】
上述した本発明の実施形態による金属ナノ粒子は優れた分散安定性を有するため、金属ナノ粒子を含むコロイド溶液や、金属ナノ粒子を含む導電性ナノインクに応用可能である。また、本発明の実施形態による金属ナノ粒子は、相互接続パッドやバイオセンサーなどにも応用できることは当業者にとって自明なことである。
【0049】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明し、下記の実施例は、単に説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0050】
具体的な実施例において、第2金属として金を選択し、金ナノ粒子の合成条件には、0.1〜10gの塩化金酸または臭化金酸を金塩として選択し、これを4mL溶媒に溶かして使用した。高分子界面活性剤としてポリビニルピロリドンを金塩に対して1〜100当量(0.5〜50g)使用した。溶媒には、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、及びテトラエチレングリコールを総80mL使用した。第1金属としては白金を選択し、白金シードの前駆体としては塩化白金酸(HPtCl)または塩化白金(PtCl)を1〜10−3Mの濃度で使用した。この時、白金塩と金塩との割合は1〜1/1000であった。下記の具体的な実施例では反応条件を多様に変更して金ナノ粒子を合成した。
【実施例1】
【0051】
40gのポリビニルピロリドンをジエチレングリコール80mLに溶かして250℃に加熱した。溶液が沸騰すると、0.102Mの塩化白金酸0.5mLを添加した。約10秒後、1.270Mの金塩4mL(2.00gのHAuCl)を添加した。上記溶液の色は金塩が添加される瞬間、黄色から濃い赤色または紫色に変わり、これは金ナノ粒子が生成されたことを示す。
【0052】
このような金ナノ粒子の生成は、Uv−Vis分光器を用いて、590nmの波長領域で典型的な金ナノ粒子のプラズモン共鳴が起こることから確認することができた。
【実施例2】
【0053】
本発明の実施形態による金ナノ結晶製造法において、白金塩の影響を用いて金ナノ粒子のサイズを調節するために、白金塩の量を調節する実験を行った。それぞれ40gのポリビニルピロリドンをジエチレングリコール80mLに溶かして二つの溶液を製造し、250℃に加熱した。溶液が沸騰すると、それぞれ1.020×10−1Mの塩化白金酸0.5mL(実施例2a)及び1.020×10−3Mの塩化白金酸0.5mL(実施例2b)を添加した。約10秒後、1.270Mの金塩4mL(2.00gのHAuCl)をそれぞれの溶液に添加した。
【0054】
上記実施例1、実施例2a、及び実施例2bにより製造された金ナノ粒子のTEMイメージを図4に示し、白金塩の濃度による金ナノ粒子のサイズを下記表1に示す。
【表1】

【0055】
また、上記反応により製造された金ナノ粒子の元素分析のために、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)を用いて測定し、その結果を下記表2に示す。ICP−MSは、金属の含量を0.1%まで測定できると知られており、実際に1/1000当量までも比較的に信用できる結果が得られた。また、蛍光X線元素分析器よりも金ナノ粒子中の白金の存在を確認することもできた。図5に、上記実施例2aにより合成されたナノ粒子のXRF結果を示す。
【表2】

【実施例3】
【0056】
本発明の実施形態による金属ナノ粒子の製造方法において、過量のポリビニルピロリドンの使用を防止するために、金塩の添加方法を変更して実験を行った。4gのポリビニルピロリドンをジエチレングリコール80mLに溶かして250℃に加熱した。溶液が沸騰すると、1.020×10−1Mの塩化白金酸0.5mLを添加した。約10秒後に、1.270Mの金塩4mL(2.00gのHAuCl)を30秒ごとに0.4mLずつゆっくり添加した。このように製造された金ナノ粒子のTEMイメージを図6に示す。
【0057】
約20wt%の高濃度の金ナノ粒子のコロイド溶液の分散安定性が非常に優れていることを確認できた。この時、使用された分散溶媒は、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、エチレングリコール、及び水であって、水を除いた全ての溶媒にて高い分散安定性を示した。
【実施例4】
【0058】
本発明の実施形態による金属ナノ粒子の製造方法において、溶媒の影響を調べるために、多様なジオール溶媒を用いて実験を行った。2gのポリビニルピロリドンを溶媒4mLに溶かして250℃に加熱した。溶液が沸騰すると、2.54×10−2Mの塩化白金酸0.1mL(金塩に対して1/100当量)を添加した。約10秒後に、金塩0.2mL(100mgのHAuCl)を添加した。この時、溶媒としては、それぞれ1,5−ペンタンジオール(実施例4a)及びテトラエチレングリコール(実施例4b)を使用した。上記それぞれの溶媒による金ナノ粒子のTEMイメージを図7に示す。
【実施例5】
【0059】
本発明の実施例による金ナノ粒子の製造方法において、白金塩の影響を調べるために、他の白金塩を用いて実験を行った。2gのポリビニルピロリドンをジエチルグリコール4mLに溶かして250℃に加熱した。溶液が沸騰すると、2.54×10−2Mの塩化白金(PtCl)0.1mL(金塩に対して1/100当量)を添加した。約10秒後に、金塩0.2mL(100mgのHAuCl)を添加した。上記塩化白金(PtCl)を用いて製造された金ナノ粒子のTEMイメージを図8に示す。
【実施例6】
【0060】
本発明の実施例による金ナノ粒子の製造方法において、金塩の影響を調べるために、他の金塩を用いて実験を行った。2gのポリビニルピロリドンをジエチルグリコール4mLに溶かして250℃に加熱した。溶液が沸騰すると、2.54×10−2Mの塩化白金酸0.1mLを添加した。約10秒後に、金塩0.2mL(100mgのHAuBr)を添加した。上記臭化金酸(HAuBr)を用いて製造された金ナノ粒子のTEM撮影イメージを図9に示す。
【実施例7】
【0061】
上述した実施例の金ナノ粒子の製造において、白金塩の影響が金以外の多様な貴金属ナノ粒子の製造にも応用できるかを調べるための実験を行った。0.198gのポリビニルピロリドンをジエチレングリコール4.0mLに溶かして250℃に加熱した。溶液が沸騰すると、0.127Mの塩化白金酸0.20mLを添加した。約10秒後に、0.127Mの銀塩2.0mL(0.0431gのAgNO)(実施例7a)、0.127Mの銅塩2.0mL(0.0405gのCuSO)(実施例7b)、及び0.127Mのパラジウム塩2.0mL(0.0450gのPdCl)(実施例7c)をそれぞれ30秒ごとに0.2mLずつ10回添加した。上記塩化白金酸を用いて製造された銀、銅、パラジウムナノ粒子のTEMイメージを図10に示す。
【実施例8】
【0062】
金ナノ粒子の製造において、白金塩以外のパラジウム塩も金ナノ粒子の製造に応用できるかを調べるための実験を行った。0.198gのポリビニルピロリドンをジエチレングリコール4.0mLに溶かして250℃に加熱した。溶液が沸騰すると、0.127Mの硝酸パラジウム0.20mLを添加した。約10秒後に、0.127Mの金塩2.0mL(0.100gのHAuCl)を30秒ごとに0.2mLずつ10回添加した。金ナノ粒子のTEMイメージを図11に示す。
【0063】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0064】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した方法における動作、手順、ステップ、および工程等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「先ず」、「次に」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール系溶媒に高分子界面活性剤を添加して溶液を製造するステップと、
前記溶液を加熱するステップと、
前記加熱した溶液に白金、パラジウム、及びイリジウムから選択される金属塩の少なくとも1種の第1金属塩を添加して金属シードを形成するステップと、
前記金属シードを含む溶液に第2金属塩を添加するステップと、
を含む、金属ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記高分子界面活性剤は、添加される前記第2金属塩1当量に対して1〜100当量添加され、前記金属シードを形成する前記第1金属塩は、添加される前記第2金属塩1当量に対して1/1000〜1当量添加される、請求項1に記載の金属ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記溶液の加熱温度は、100℃以上、前記溶液の沸点以下である、請求項1に記載の金属ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記高分子界面活性剤は、ポリビニルピロリドンまたはポリビニルピロリドンを含む共重合体である、請求項1に記載の金属ナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
前記金属シードを形成する前記第1金属塩は、塩化白金酸(HPtCl)、塩化白金(PtCl)、塩化白金酸カリウム(KPtCl)、塩化白金酸ナトリウム(NaPtCl)、塩化パラジウム(PdCl)、ヨウ化パラジウム(PdI)、臭化パラジウム(PdBr)、硝酸パラジウム(Pd(NO)、硫酸パラジウム(PdSO)、パラジウム(II)アセチルアセトネート、パラジウム(II)トリフルオロ酢酸塩、塩化イリジウム(III)、イリジウム(III)アセチルアセトネート、及び臭化イリジウム(III)からなる群から選択される少なくとも1種の金属塩である、請求項1に記載の金属ナノ粒子の製造方法。
【請求項6】
前記第2金属塩は、金、銀、銅、及びパラジウムからなる群から選択される金属塩である、請求項1に記載の金属ナノ粒子の製造方法。
【請求項7】
前記第2金属塩は、塩化金酸(HAuCl)、臭化金酸(HAuBr)、塩化金酸カリウム(KAuCl)、塩化金酸ナトリウム(NaAuCl)、硝酸銀(AgNO)、酢酸銀(AgCHCO)、銀アセチルアセトネート、塩化銅(CuCl)、硝酸銅(Cu(NO)、硫酸銅(CuSO)、塩化パラジウム(PdCl)、ヨウ化パラジウム(PdI)、臭化パラジウム(PdBr)、硝酸パラジウム(Pd(NO)、硫酸パラジウム(PdSO)、パラジウム(II)アセチルアセトネート、及びパラジウム(II)トリフルオロ酢酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の金属塩である、請求項1に記載の金属ナノ粒子の製造方法。
【請求項8】
前記アルコール系溶媒は、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、テトラエチレングリコール、エチレングリコール、及びトリエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒である、請求項1に記載の金属ナノ粒子の製造方法。
【請求項9】
白金、パラジウム、及びイリジウムから選択される第1金属の金属シードを粒子中に含み、第2金属が前記金属シードを取り囲んでおり、前記金属シードの量が0.001〜50モル%であることを特徴とする、金属ナノ粒子。
【請求項10】
前記第2金属は、金、銀、銅、及びパラジウムからなる群から選択される、請求項9に記載の金属ナノ粒子。
【請求項11】
前記金属ナノ粒子は、請求項1乃至8の何れか一項に記載の方法で製造される、請求項9に記載の金属ナノ粒子。
【請求項12】
請求項9に記載の金属ナノ粒子を含む、ナノ粒子コロイド溶液。
【請求項13】
請求項9に記載の金属ナノ粒子を含む、ナノインク。
【請求項14】
請求項9に記載の金属ナノ粒子を用いた、相互接続パッド。
【請求項15】
請求項9に記載の金属ナノ粒子を用いた、バイオセンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−77526(P2010−77526A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138608(P2009−138608)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】