説明

金属・樹脂組成物複合成型品、LED照明装置

【課題】放熱性に優れる金属と、光拡散性と難燃性を併せ持つ樹脂組成物を用い、軽量となる金属・樹脂組成物複合成型品または筐体を提供すること。更には防水性に優れ、適切な光学設計の為されたLED照明装置を提供する。
【解決手段】金属2素材と樹脂組成物1からなり、平均厚みが0.2〜2mmである金属素材と、平均厚みが0.5mm〜3mmであり、かつ分散度θが45度以上である樹脂組成物とを一体化成型してなる金属・樹脂組成物複合成型品であって、金属素材の熱搬送能力が0.02W/K以上であり、物樹脂組成物の難燃性が規格UL94V0を満たし、インサート成型法等により一体化してなる金属・樹脂組成物複合成型品。ならびに、金属・樹脂組成物複合成型品を放熱構造体または放熱筐体として用い、適切な光学系と組み合わせてなるLED照明装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量で、放熱性と光拡散性を併せ持つ金属・樹脂組成物複合成型品に関わるものである。金属・樹脂組成物複合成型品は特に好ましくはインサート成型法を用いて一体成型された放熱性と光拡散性を両立する金属・樹脂組成物複合成型品体である。また本発明は、従来、室内の間接照明、ショーケースや陳列棚の棚下灯として使用されてきた蛍光灯に代わる金属・樹脂組成物複合成型品を用いた発光ダイオード(LED)照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境の保全のために省エネルギーや温室効果ガスの削減が課題とされているが、照明の分野においても、白色LEDの普及に伴い、白熱電球、蛍光灯のLED化が進められている。
【0003】
このような蛍光灯の筐体素材として、金属と樹脂による複合成型品(例えば特許文献1)を用いているものがあるが、成型品と成型品の嵌合であるため防水性に難があり屋外での使用には課題が残る。
【0004】
また、筐体素材として樹脂組成物による複合成型品(例えば特許文献2)を用いているものがあるが、放熱性が不十分であり、長時間の使用には課題が残る。
【0005】
従来、樹脂組成物成型品による筐体では十分な光拡散性が得られておらず、照明器具を点灯すると、LEDから出射した光が筐体を通過するときに屈折方向が乱され、その結果、光の強度が強くなる部分と弱くなる部分が生じ、光に照らされた面にも影のスジが生じる等の課代が残る。
【0006】
さらに、現在市販されているLED直管照明の重量は、従来の蛍光管直管と比較し1.3〜1.5倍以上であり課題が残る。
【先行特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−138715
【特許文献2】特開2011−126262
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、軽量で、放熱性と光拡散性を併せ持つ金属・樹脂組成物複合成型品を提供することである。また、本発明のさらなる目的は該金属・樹脂組成物複合成型品を用いて放熱構造体または放熱筐体を提供することである。
また、本発明のさらなる目的は、軽量で、適切な光学設計の為されたLED照明装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に鑑み、本発明の金属・樹脂組成物複合成型品は、軽量で、放熱性を有する金属素材と、光拡散性を有する樹脂組成物を一体化成型してなることを特徴とする。金属・樹脂組成物成型品は、より好ましくは、インサート成型法により一体化してなる金属・樹脂組成物成型品である。
【0010】
本発明に使用される金属は以下の特性を持つものが望ましい。金属は、軽量で熱伝導率が高いアルミニウム合金を使用することが望ましい。より好ましくは合金番号が1000番台のアルミニウム合金であり、さらに好ましくは1050、1070、1080番である。
【0011】
金属の厚みは、筐体強度と放熱性、特に放熱性の指標である熱輸送能力のバランスが満足する0.2〜2.0mmが望ましく、より好ましくは1.0〜2.0mmであり、さらに好ましくは軽量化を実現する0.3〜0.6mmである。
【0012】
金属の熱輸送能力は、0.02W/K以上が望ましい。LED筐体においては各種文献によると、筐体としての熱輸送能力は0.02W/K以上が望ましいとされている。熱輸送能力とは金属の固有熱伝導率{単位:W/(m・K)}と平均肉厚(m)を乗じた値であり、放熱性の指標として広く知られている。より好ましくは0.03W/K以上であり、さらに好ましくは0.04K/W以上である。
【0013】
本発明に使用される樹脂組成物には以下の特性を持つものが望ましい。樹脂組成物は、ポリオレフィン類及びその共重合体(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン)ポリメタクリル酸類及びその共重合体、ポリエステル類及びその共重合体(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)ポリスチレン類及びその共重合体、芳香族ポリアミド類及びその共重合体、ポリカーボネート類及びその共重合体、ノルボルネン類(シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー)ポリサルフォン類及びその共重合体などが挙げられる。
【0014】
樹脂組成物の厚みは、筐体強度と光拡散性の指標である分散度θのバランスが満足する0.5〜3.0mmが望ましく、より好ましくは1.0〜2.0mmであり、さらに好ましくは1.2〜1.8mmである。
【0015】
樹脂組成物の分散度θは、45度以上が望ましい。分散度とは自動変角光度計にて1度毎の全光線透過率を測定し、相対透過率(%)=受光角θの全光線透過量/受光角0度の全光線透過量として、相対透過率が50%となる角度θを分散度とし、より好ましくは50度以上である。
【0016】
樹脂組成物の難燃性は、難燃性の指標であるUL94規格でV−0グレードを満足することが望ましい。UL規格とはアメリカのUnderwriters Laboratories社が定め、同社によって評価される規格であり、一般的な指標となっている。一般的にはUL−94にて規定される試験片に炎を当て燃焼時間と滴下物の有無を確認する試験である。
【0017】
本発明の金属・樹脂組成物複合成型品は、Tダイ押出成型、インジェクション成型、ブロー成型等どのような成型方法を用いても良い。好ましくは以下のような成型方法である。金属をシート状に押出し、該金属シートを連続した凹面形状が付与されているロール曲げ工程であるホーミング・マシンを経る事により、中空成型品の半径とし、次に該金属半径中空成型品を基材として、樹脂組成物のインサート成型が行われ、一体中空成型品となる。
【0018】
本発明の金属・樹脂組成物複合成型品は、一次元中空成型品であり、その断面は金属層と樹脂組成物の2層の組み合わせ構造となっており、成型された金属と樹脂組成物は一体化されている。
【0019】
本発明のLED照明装置は、前記の金属・樹脂組成物複合成型品を放熱構造体もしくは放熱筐体として用い、適切な光学系と組み合わせてなるLED照明装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の金属・樹脂組成物複合成型品は、従来になく優れた軽量成型品であり、放熱性と光拡散性を有しており、該金属・樹脂組成物複合成型品を用いて放熱構造体または放熱筐体を提供することができ、例えばLED照明装置の放熱構造、筐体等に好ましく用いることができる。また、インサート成型法により一体化成型された該金属・樹脂組成物複合成型品は防水性能を有し、かつ従来の製造方法と比較して安価での製造が可能である。そして、これら金属・樹脂組成物複合成型品を用い、適切な光学系を組み合わせて、配したLED照明装置は、従来の諸課題を解決した、より高性能なLED照明装置とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。本発明はこれにより何ら限定を受けるものではない。
【実施例1】
【0022】
アルミシート(大和金属工業社製の合金番号1070型)厚さ0.3mm、幅35.1mmと、ポリカーボネート樹脂(帝人化成社製パンライトML−4110Z,MVR=18cm3/10min)を用いて、インサート成型にて一体化した金属・樹脂組成物の中空パイプとした。図1(断面図)に示す様に金属と樹脂組成物がインサート成型されることにより十分な密閉性を確保した。LED実装基板をスライドして挿入でき、機械的に固定できるスライドスタンドを内面に配しており、スライドスタンドはポリカーボネート最大径の円内側に、肉厚1.5mm、長さ3.0mmの爪形状を1.5mmの間隔を置いて上下に配置する構造になっている。LED実装基板を該中空パイプの端部より、LEDチップが樹脂組成物内面方向を向く様に内部に挿入して配置した。底部(金属側)スタントとLED基板は耐熱接着され、更に両端はPBT(ポリブチレンテレフタレート)のキャップで封止し、金属・樹脂組成物複合成型品を筐体に用いた、LED照明用直管とした。
【実施例2】
【0023】
実施例1で用いた、樹脂組成物をポリカーボネート樹脂(帝人化成社製パンライトL−3120Z,MVR=8cm3/10min)を用いた以外は、実施例1と同様にして、金属・樹脂組成物複合成型品を筐体に用いた、LED照明用直管とした。
【比較例1】
【0024】
実施例1と同様の素材を用いて、金属と樹脂組成物を嵌合することにより、金属・樹脂組成物複合成型品を筐体に用いた、LED照明用直管とした。
【比較例2】
【0025】
アルミシート(大和金属工業社製の合金番号1070型)厚さ1.0mm、幅35.1mmと、ポリカーボネート樹脂(帝人化成社製パンライトML−4104Z,MVR=18cm3/10min)を用い、図5に示す様に、比較例1よりも嵌合が容易にできる金属・樹脂組成物複合成型品を筐体に用いた、LED照明用直管とした。
【0026】
実施例1・2、比較例1,2に対し、以下の試験を実施し評価を行った。
(1)寸法測定
平板厚みは、アンリツ社製の電子マイクロ膜厚計で測定した。
曲面厚みは、オリンパス社製超音波厚さ計で測定した。
(2)全光線透過率
日本電色工業(株)製濁度計NDH−2000型を用いた。測定は平板の状態で測定した。
(3)分散度
村上色彩技術研究所製の自動変角光度計にて1度毎の全光線透過率を測定し、相対透過率(%)=受光角θの全光線透過量/受光角0度の全光線透過量として、相対透過率が50%となる角度θを分散度とした。測定は平板の状態で測定した。
(4)難燃グレード
樹脂メーカーの光拡散難燃グレードの特性表からUL94の難燃規格を採用した。但し樹脂組成物の厚みは規格条件範囲内となっている。
(5)金属部熱輸送能力(W/K)
金属の厚み(m)×熱伝導率(W/m・K) で計算した。
(6)点灯明るさ
LED実装基板としてはOSRAM社のTOPLED Plus(0.5Watts)ChipをPCB基板上に12mm間隔に96個(16個/1Bar を直列に6Bar)並べて実装基板として使用した。基板の厚みは1.4mm 幅は22.5mmで長さは1,164mmであり、図1に示す金属部分の架台にスライドして挿入し、安定器など電源配線を施しAC100Vで点灯できる様にした。光拡散性、照明の明るさは順位は、20歳〜40歳の男女各5名、計10名の視力健康人の目視よって判断した。
(7)感水性
金属・樹脂組成物複合成型品の水の侵入に対する試験(防水試験)である。スプレーイングシステムズジャパン株式会社の感水試験紙「TeeJet」を直管の3か所に装着して、(76mmx26mmx3枚)、直管の両端を封し、直管をターンテーブルの上に設置して10リットル/分の水を散水ノズルから5分間散水した。評価は感水紙の色の変化で判定した。感水した場合は青く変色する。該感水性を防水性の指標とした。
【表1】

【0027】
表1の結果、実施例1、実施例2の比較例1の金属・樹脂組成物複合成型品を筐体に用いたLED照明用直管は、全ての項目において満足する結果であった。比較例1においては、防水性に難があり、比較例2においては重量及び金属部熱輸送能力及防水性に難があった。
【産業上の利用可能性】
【技術分野】
【0028】
本発明品の金属・樹脂組成物複合成型品は、特に直管型LED照明装置の筐体として有用であり、光拡散性と放熱性、難燃性を兼ね備え、軽量で防水性能も有することから、風呂場、洗面場、ホール、屋外照明、看板など、幅広く直管型LED照明装置として用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】インサート成型法により一体化成型された該金属・樹脂組成物複合成型品直管の断面図である。
【図2】上記、側面の断面図である。
【図3】上記、底面図である。
【図4】上記、天面図である。
【図5】金属・樹脂組成物嵌合方式の断面図である。
【符号の説明】
【0030】
図1:一体化成型・断面図
図2:一体化成型・側面の断面図
図3:一体化成型・底面図
図4:一体化成型・天面図
図5:金属・樹脂組成物嵌合方式・断面図
1.光拡散層(樹脂組成物)
2.放熱性層(金属)
3.LED基板挿入スタンド
4.一体化箇所
5.LEDチップ基板
6.嵌合箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属素材と樹脂組成物からなり、平均厚みが0.2〜2.0mmである金属素材と、平均厚みが0.5mm〜3mmであり、かつ分散度θが45度以上であることを特徴とする樹脂組成物とを一体化成型してなる金属・樹脂組成物複合成型品。
【請求項2】
インサート成型法を用いてなる請求項1に記載の金属・樹脂組成物複合成型品。
【請求項3】
金属素材がアルミニウム押出し成型品であり、かつ熱輸送能力が0.02W/K以上であることを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の金属・樹脂組成物複合成型品。
【請求項4】
樹脂組成物がポリカーボネート樹脂であり、かつ難燃性規格UL94 V0を満足することを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の金属・樹脂組成物複合成型品。
【請求項5】
金属素材がアルミニウム押出し成型品であり、かつ熱輸送能力が0.02W/K以上であり、さらに樹脂組成物がポリカーボネート樹脂であり、かつ難燃性規格UL94 V0を満足することを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の金属・樹脂組成物複合成型品。
【請求項6】
適切な光学系と組み合わせてなる請求項1〜5に記載の金属・樹脂組成物複合成型品を筐体として用いたLED照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−49258(P2013−49258A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201123(P2011−201123)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【特許番号】特許第5051556号(P5051556)
【特許公報発行日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【出願人】(502038989)ベスパック株式会社 (19)
【Fターム(参考)】