説明

金属加工品の熱処理のためのレトルト炉

【課題】炉ハウジング(I.2,II.2,III.2)によって取り囲まれた筒状レトルト(I.3,II.3,III.3)を用いる金属加工品の熱処理のためのレトルト炉(I.1,II.1,III.1)の実際的な価値を増加させ、かつ使用可能性を増加させる。
【解決手段】第1の変形形態に従って装入物の重量がレトルト(I.3)に加わらないようにし、第2の変形形態に従って第2の循環装置(II.18.2)をレトルト(II.3)の加熱素子(II.6)に対して配置し、第3の変形形態に従ってレトルト(III.3)の底部(III.9)に第2の底部(III.9.1)及び/または調整弁(III.20,III.21)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属加工品の熱処理、例えば、光輝焼なまし、窒素または窒素/水素下での焼鈍(アニール処理)、窒化または炭窒化処理のためのレトルト炉であって、個々のレトルト炉が、レトルトを備える炉ハウジングと、加熱装置と、循環装置とを含み、場合によってはそれらの組合せを含み、熱処理効率が向上するようにした該レトルト炉に関する。
【背景技術】
【0002】
金属加工品の熱処理のためのレトルト炉は、従来技術において、例えば特許文献1ないし特許文献6に記載されているような様々な構成が知られている。
【0003】
本発明は、横方向に配置された筒状レトルトと、レトルトを断熱しながら取り囲む炉ハウジングと、レトルトを加熱するための装置とを備える水平型のレトルト炉に好ましいが、他の種類のレトルト炉の構成にも転用可能である。
【0004】
通常、レトルトは、保護ガス及び反応ガスを収容し、装入物などの加工品を熱処理するための気密シール可能な処理室すなわち装入室と、装入物を有利に載置しかつ収容/搭載する対応する台とを加熱する。
【0005】
レトルト炉内の複雑な熱処理工程には、加工品の全ての面に接触する炉雰囲気の循環による冷却も常に含まれる。それらの脆弱性は、熱処理効率にかなり影響するが、その理由は、影響の原因をより綿密に調べなければならない。
【0006】
1.熱処理では、650℃までの温度での加熱は、実質的に対流によって支援される。レトルト内部では、炉雰囲気の集中的かつ加工品の全ての面に接触する循環が望ましい。このため、レトルトの領域内に配置された循環ユニットと、ガス誘導補助部材とが設置されている。
【0007】
特に、熱処理時には、レトルトは高い負荷に曝される。これらのレトルトは、形状を安定させるために、8mm以上の壁厚を有して実施されている。
【0008】
これに反して、少なくとも上述の種類のレトルト炉では、装入物の重量によって、かつ収容台の支持部材によって、局所的な負荷が、この場合は水平に配置されたレトルトの下部に生じる。不利な点は、装入物の重量が増大するにつれて負荷が大きくなる点である。逆に、レトルトの材料の最大負荷は、炉温度の上昇とともに減少する。このため、このようなレトルト炉の負荷容量は制限され、加工品装入物の熱処理の効率は比較的小さい。
【0009】
当技術分野では、既に、金属加工品の熱処理時にレトルトを損なうような負荷を回避することに対する取り組みがなされている。しかし、このような解決法は、垂直に配置されたレトルトにおいて、レトルト底部の負荷を、ハウジングに対して支持する支持台及び/または支持手段によって除去することだけに関連している。これは、例えば特許文献7に記載されている。
【0010】
ここでは、レトルトの負荷については装入物の重量自体及びその収容台により考慮されているが、熱処理効率の増加については考慮されていない。
【0011】
さらに、垂直型の炉構成の場合のみ、補償器技術(IHU)が知られている。この技術では、装入物の全荷重は、コンクリートから成る耐熱性の土台にかかり、該土台によって支持される。レトルトは、その突出が補償器によって補償されるが、薄い壁厚で構成され得、負荷が少ないために、その耐用年数は延びる。
【0012】
明白な利点の他に、この解決法には欠点もある。例えば、
−この解決法は、水平型の構成には転用できない。
−土台及び他のセラミック断熱材及び支持材は、後のプロセスにとって有害な湿気を形成し得る。
−補償器の構造は比較的大きくかつ費用がかかり、補償器はヒートブリッジを形成してエネルギー損失を生じさせる。
−底部の構成は、低温度に遷移しやすく、凝縮液の形成を助長する。凝縮液は、水蒸気よりも、レトルトからの除去が困難である。
【0013】
2.レトルト炉内の加熱装置及び循環装置は、レトルト内部において処理される加工品の均一な加熱のために、特に重要である。
【0014】
このようなレトルト炉は、電気加熱素子またはガスバーナによって加熱することが可能である。加熱装置は、通常、断熱材を備えた炉ハウジングと、内側に配置されたレトルトとの間の空間に存在する。
【0015】
ガスバーナによる比較加熱では、炉ハウジングとレトルトとの間の空間に炎が生成され、ガス流が生成される。このガス流の結果、レトルトの加熱が放射及び対流によって行われ、レトルトの均一な加熱が実現される。
【0016】
電気加熱式レトルト炉でも、電気加熱素子は同様に、炉ハウジングとレトルトとの間の空間に配置される。例えば、加熱素子は、蛇行形状に構成され、炉ハウジングの内部に導かれており、レトルトの炉室内で処理される加工品を例えば所望の650℃まで均一に加熱させるようになっている。
【0017】
しかし、ここでは、加熱素子のレトルトへの熱伝達は放射によってのみ行われ、ガス加熱中により均一にするのに重要な貢献をする対流部は、電気加熱にはない。強力な循環装置を用いて、レトルト内での炉雰囲気の集中的かつ加工品の全ての面に接触する循環を生じさせる。循環装置と加熱装置との機能的協力は、熱的に決定されなければならない。よって、レトルト内の炉室内での炉雰囲気の循環を達成することは、従来技術にとってより好ましいことであった。従って、循環装置及びガス誘導補助具などの付随する機構がレトルト内でのみ用いられることになった。
【0018】
レトルト炉では、主に、熱処理の効率を高めることが、すでに何回も提案されている。しかし、レトルト炉では、被熱処理加工品の均一加熱が達成された後、引き続き、加工品を均一かつ集中的に冷却することが特に重要である。これは、それ自体、非生産的な処理ステップであるため、より慎重な検討が望まれている。
【0019】
金属加工品の熱処理のためのレトルト炉は、炉ハウジングによって取り囲まれたレトルトを含む。レトルトは、円筒形状に形成されており、その一端において、底部によって気密シールされている。同時に、レトルトは、装入口を有している。装入口は、被熱処理加工品を、レトルト内に導入するかまたはレトルトから取り出すように機能する。この装入口は、旋回可能に構成された蓋によって気密シール可能であることが好ましい。
【0020】
炉ハウジングは、基本的に、容積空間を提供するものである。この容積空間の内部には、数ある中でも特に、レトルトが配置されている。このレトルトが、基本的な熱処理室である容積空間を提供する。炉ハウジングによって構成された容積空間の内部には、レトルトの他にも、さらに加熱素子が設けられている。この加熱素子は、レトルト炉の所定の適用例において、レトルトを加熱させるように機能し、従って、レトルトによって包囲された処理室を加熱させるように機能する。
【0021】
加工品の熱処理は、基本的にガスの影響下で行われる。このため、レトルトは、好ましくは底部(ガスの下流端部)側において、ガス誘導管の連結を可能にする連結パイプを有している。この管を通って、レトルトによって画定される処理室に、ガス及び/またはガス混合物を選択的に流入させることが可能である。このようなガスは、例えば、処理ガス、酸化ガス、冷却ガス、及び/または、対応するガス混合物であってよい。
【0022】
金属加工品を熱処理するための所定の方法の実施の範囲では、通常、加工品を加熱するステップの後に、加工品を、(熱処理に応じて)1若しくは複数の温度レベルに維持するステップが実行され、その後、加工品を冷却するステップが実行される。
【0023】
加熱時にも冷却時にも、加工品の加熱または冷却を可能な限り急速かつ均一に行うことが求められている。所定の温度レベルに維持するステップの間、装入物内において加工品の温度を最大限に均一化することと、装入物のどの位置にもガスを可能な限り均一に供給することとが求められる。この目的のために、気密シールされたレトルト内部に存在する雰囲気が循環される。これは循環装置によって行われる。循環装置は、基本的に、レトルトの内部に配置されている。
【0024】
炉雰囲気及び炉温度の循環及び均一性を改善するために、従来技術からは、いわゆるガス誘導シリンダを設置することが知られている。ガス誘導シリンダは、循環ユニットと組み合わせることによって、炉雰囲気を確実に強制的に誘導する。
【0025】
また、従来技術によれば、レトルトが、少なくとも1つのガス誘導管と流体連通されていることが分かる。このガス誘導管は、いわゆる調整弁によってシール可能である。従って、例えば、加工品を冷却するために、ガスをレトルトからガス誘導管を介して吸引し、冷却装置を通して誘導し、第2のガス誘導管を介してレトルト内に戻すことが可能である。
【0026】
上述のレトルト炉を用いて金属加工品を熱処理するための所定の方法の実施の範囲では、ガス誘導管を、レトルトの内部空間に対して分離させ、ガスがレトルトの内部空間に流入することを回避するか、または、レトルトの内部空間に存在するガス雰囲気がガス誘導管を介して流出することを回避する必要がある。ガス誘導管をレトルトの内部空間に対して分離させるために、従来技術からは、いわゆる調整弁が知られている。調整弁は、各ガス誘導管内に旋回可能に配置された板として構成されている。この板は、少なくとも90°回転可能であり、開位置または閉位置に配置されることが可能である。閉位置では、ガス誘導管の流れ断面は実質的にシールされており、そのため、ガス誘導管をレトルト内部空間に対して分離させることが実現される。開位置では、ガス誘導管の流れ断面は実質的に開放され、そのため、一方のガス誘導管と、他方のレトルトの内部空間とが連通される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】DE−AS 2 010 433
【特許文献2】DE−OS 27 54 034
【特許文献3】DE 30 28 952 C2
【特許文献4】DE 31 43 532 A1
【特許文献5】DE 36 31 389 C2
【特許文献6】DE 103 38 431 A1
【特許文献7】DE 2 054 666 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
ここでも、従来技術から公知の、レトルト炉のレトルトと流体連通されたガス誘導管を閉じるための調整弁が有効であることが実証されていると思われる。しかし、この調整弁は、特に機能に応じた操作及び流体技術的な構成に関して、改善が求められている。
【0029】
本発明の目的は、金属製の筒状レトルトと、レトルトを取り囲む炉ハウジングと、レトルトの加熱機構とを実質的に備えたレトルト炉を用いて、加工品装入物の冷却及びレトルトの負荷容量を考慮した熱処理効率を増加させることである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
そのようにして達成される利点は、
−レトルトの壁厚及び質量を減少させ、
−レトルトを気密シール可能な処理室すなわち装入室の機能に向け、かつ/または
−迅速な空気の移動を実現し、不活性ガス雰囲気の不純物及び熱処理工程に対する悪影響を回避する。
【0031】
本発明の目的は、電気加熱レトルト炉において、レトルトを、ひいてはレトルトの内部に設置される加工品装入物を均一に加熱することによって、熱処理の効率を向上させ、レトルトを可能な限り均一に加熱することによって、レトルトの耐久年数に悪影響を及ぼす局部過熱および熱応力を回避することにある。
【0032】
最後に、被熱処理加工品の冷却をできる限り急速にかつ均一に行うことは、熱処理の一部であり、それによって冷却がより有効に実行されることになる。
【0033】
加工品を冷却するために、レトルトから吸引され、外部の冷却装置を通して誘導された後にレトルト内に戻されるガス流は、良好に循環されることができる冷却ガスであり、冷却体積流量を妨害する流れ抵抗は回避される。
【0034】
また、レトルトの底部の本発明に係る構成及び/またはレトルト炉のレトルトに連結された、ガス誘導管を機能信頼性を有して閉じるための調整弁が、全体として、流体力学的により有利な状態を作り出す。
【0035】
熱処理効率を増加させるためのこの熱条件は、次の変形形態によって決められる。
【0036】
変形形態I
【0037】
本発明は、原則的に、装入物及び収容台の重量がレトルトに加わらず、収容台を、炉ハウジングに対して支持するための支持手段に連結させ、支持手段を、レトルトの壁の貫通ブッシュ内及び取り囲んでいる炉ハウジング内に気密に導くことによって、上記の課題を解決する。
【0038】
従って、従来技術とは異なり、レトルトは、装入物及び収容台の重量から解放されるだけでなく、さらに、加工品装入物の熱処理の効率を向上させ、レトルトの質量及び壁厚を減少させ、レトルトを気密シール可能な処理室すなわち装入室の機能に向け、全体として、レトルトの積載能力の向上を実現するという課題を解決する。
【0039】
本発明に係る構成では、収容台は、吊り下げによって、炉ハウジングに対して支持するための支持手段に連結されている。このため、炉ハウジングは、この手段を取り付けるための横方向部材を備えており、この手段は、収容台に連結されているし、横方向部材を介して炉ハウジングにも、継手で連結されている。壁内の貫通ブッシュは、気密式の補償器を備える、嵌め込まれたパイプを備えている。これらの補償器は、線膨張を等しくし、特にレトルトが熱により膨張した際に、パイプ内の手段が自由に動くことを保障するものである。
【0040】
さらに、気密式の補償器を備えるパイプに応じた密封材と、さらに水などの冷媒が充填された冷却部と、補償器を高温から保護するための断熱材とが割当てられている。
【0041】
本発明に従って完備された形態は、壁に嵌め込まれたパイプが、取り外し可能なフランジ継手によって、それぞれ、第1の部分すなわち下部と、第2の部分すなわち上部とに、分割されることを提供する。ここで、下部は、少なくとも1つの壁に嵌め込まれており、上部は、横方向部材に嵌め込まれている。ここで、上部は、補償器の機能を引き受ける折り畳み式ベローズスリーブを備え、下部は、冷却部によって包囲されている。
【0042】
例えば、補償器の機能を引き受ける折り畳み式ベローズスリーブを備える上部や、冷却部によって包囲された下部などの、補償器を備えるパイプを形成する少なくとも1つのユニットが、交換可能に配置されている。
【0043】
最終的に、本発明は、炉ハウジングに対して支持するための支持手段を有するレトルトを、これを分解することなく、取り出し可能であることによって、さらに完全になる。レトルトの取り外しは、炉ハウジングの壁が、貫通ブッシュの或る領域を取り囲む取り外し可能に設けられた部分を有することによって、可能である。
【0044】
ここで、当業者は、
−収容台が、炉ハウジングに対して支持するための支持手段に連結された状態で維持されること、
−支持手段が、炉ハウジングの壁の貫通ブッシュ内及びレトルトの壁の貫通ブッシュ内に気密に挿通された状態で維持されること、
−収容台が、吊り下げによって、炉ハウジングに対して支持するための支持手段に連結されたまま維持されること、
−支持手段が、横方向部材を介して、炉ハウジングに対して支持されること、及び/または、
−支持手段が、収容台及び横方向部材において、継手を介して、炉ハウジングに対して支持されること、
という、本発明の対象に関する特徴のうちの少なくとも1つを確実に満たす、様々な構成的解決法を実施可能である。
【0045】
これらの本発明に係る構造的方策だけによっても、レトルトの機能は、処理室を気密シールすることに減少され、これによって、レトルトの壁厚は、例えば10mmから5mmまで減少される。
【0046】
さらに、レトルトの壁が薄くなることは、壁を介した急速な熱伝達を生じさせる。これによって、熱伝達速度は、上昇する。
【0047】
熱がレトルトの薄くなった壁の間を装入物まで直接的に伝達することによって、ガス誘導シリンダなどのガス誘導拡散装置を省くことも可能になる。ガス誘導拡散装置は、ここでは、放射覆面として機能するという悪影響を生じさせるものである。ガス誘導拡散装置を省くことは、より冷たい炉ガスが、レトルトとの接触によってより速く加熱されることを引き起こす。
【0048】
本変形形態単独でも、熱処理効率を増加させることができる。
【0049】
変形形態II
【0050】
本発明によれば、金属加工品の熱処理のためのレトルト炉であって、断熱された炉ハウジングを備え、該炉ハウジングが、第1の容積空間を取り囲み、レトルトのための加熱装置と、レトルトの内部にある第1の循環装置とを備えたレトルト炉が提供される。第1の容積空間に取り囲まれているレトルトは、変形形態Iによれば、装入物受台の上に存在する加工品を熱処理するための処理室すなわち装入室として、保護ガス及び反応ガスを受容し、加工品の装入物を装入するためのドアによって気密シール可能であるような第2の容積空間を取り囲んでいる。
【0051】
本発明においては、
a)加熱装置は、複数の加熱素子を備え、該複数の加熱素子は、炉ハウジングに設けられた閉鎖可能な第1の開口部を用いて、少なくとも個々に交換可能であるように、第1の容積空間内に配置されており、
b)第1の容積空間内の空気を循環させるための第2の循環装置が、炉ハウジングによって収容されていると共に、第2の循環装置が、閉鎖可能な第2の開口部を用いて、ユニットとして交換可能であるように設けられており、
c)加熱素子及び循環装置は、レトルトに均一な熱伝達を導く構成をなして、第1の容積空間内に収容されている。
【0052】
請求項2〜5によれば、本発明は、加熱素子がレトルトの長手方向に直交するように整合され、加熱素子の長手方向長さが、レトルトの直径よりも大きく、加熱素子が、その長手方向に関して、加熱されない中間領域等のような領域を備え、かつ/またはレトルトの長手方向の側面1つにつき少なくとも2つの加熱素子が設けられるように構成されている。
【0053】
請求項5及び6によれば、本発明は、循環装置が循環ユニット及び通気手段を備えることによって、かつ/または通気手段が炉室内の空気をレトルトの長手方向に対して横方向に循環させるように構成されていることによって、さらに発展される。
【0054】
請求項7によれば、第2の開口部は、炉ハウジングに取り外し可能に配置された部材内に収容されている。
【0055】
従って、本発明に係るレトルト炉による加熱装置は、複数の加熱素子を備えている。これらの各加熱素子は棒状に構成されており、各加熱素子の長手方向は、ほぼ垂直に、すなわちレトルトの長手方向に直交するように整合されている。ここで、各レトルトの長手方向の側面には、個々の加熱素子が複数設けられ得る。各レトルトの長手方向の側面1つにつき3つの棒状加熱素子が用いられ、すなわち全部で6つの加熱素子が用いられることが好ましい。
【0056】
本発明に従って構成された加熱装置は、従来技術から公知の蛇行形状に構成された加熱管とは異なり、炉室の均一なひいては改善された加熱を可能にする。これは、レトルト内に配置された被熱処理加工品のより均一な加熱を導くことが有効である。この均一な加熱によって、実質的に2つの利点がもたらされる。1つの利点は、従来技術と異なり、レトルトのより均一な加熱が、熱誘導された応力をより少なくし、これによって、レトルトの耐久年数、従って、レトルト炉全体の耐久年数を延長させる。もう1つの利点は、このより均一な加熱によって、被熱処理加工品をより均一に加熱することが実現される。これによって、熱処理効果の再生をより良好に行うことができる。ここで、本発明に従って装備された加熱装置によって、所定の方法をより良好に実施可能にする炉構成がもたらされる。
【0057】
レトルトは、炉ハウジングによって、間隔をおいて収容されている。加熱素子は、この間隔に、すなわち、一方のレトルトと他方の炉ハウジング内側との間に配置されている。ここで、加熱素子は、好ましくは、互いに平行に並んでおり、第1の区域、第2の区域、及び、第1の区域と第2の区域との間に構成された中間区域を備えている。この中間区域は、中間領域とも呼ぶことが可能である。この加熱素子のこの中間領域は、本発明の一特性によれば、加熱されない。この構成は、この領域にあるレトルトが過熱することを回避するという利点をもたらす。この領域は、加熱素子が、レトルトの当該領域のすぐ隣に存在するため、設置されるものである。
【0058】
加熱素子は、交換可能に構成されている。「交換可能に」とは、本発明の意味するところにおいて、個々の加熱素子自体、すなわち個々の加熱素子が、別の加熱素子とは無関係に、取り外されるか、または修理の際に新しい加熱素子と交換可能であるという意味に理解される。このことは従来技術の公知の加熱装置では不可能であり、これが従来技術の公知の加熱装置の不利な点である。
【0059】
従来技術から、レトルトの内部空間内の炉雰囲気、すなわち、本来の作業室つまり処理室内の雰囲気を循環させることが知られている。ここで、本発明に係るレトルト炉によれば、場合によっては存在するレトルトの内部の雰囲気循環に無関係に、循環装置を設けることが提案される。この循環装置によって、炉ハウジングに包囲された容積空間の雰囲気、すなわち、レトルトを取り囲む雰囲気の循環が実現される。この循環は、レトルトのより均一及び従って改善された加熱を実現し、これによって、レトルトの内部に配置された、被熱処理加工品のより均一な加熱を実現するという目的を達成する。
【0060】
この本発明に係る構成は、さらに、循環装置による、従来技術よりも著しく均一なレトルトの加熱が、同じく従来技術よりも低い熱応力をもたらすという利点を有している。レトルトの耐久年数ひいてはレトルト炉全体の耐久年数が延びることが有効である。
【0061】
循環装置は、本発明の一特徴によれば、一方では循環ユニットと、他方では通気手段とを備えている。循環ユニットは、例えば、送風機または類似のものであってよい。通気手段は、例えば、デフレクタから成るアセンブリであり、循環ユニットによって循環された雰囲気を強制的に誘導するように機能する。ここで、通気手段は、空気を、レトルトの長手方向に対して横方向に循環させるように構成されていることが好ましい。レトルトの柱面に沿ってレトルトの周りを周回する横方向のこの循環によって、有利には、循環されたガス雰囲気が、加熱素子の長手方向に、加熱素子を通り過ぎて導かれることになる。その結果、一方の加熱素子と他方の炉雰囲気との間の熱交換が最適に行われる。
【0062】
循環装置は、モジュール式の構成部材、すなわちアセンブリとして構成されている。循環装置は、炉ハウジング内の対応する第2の開口部内に嵌め込まれており、炉ハウジングを、炉ハウジングによって取り囲まれた雰囲気に対して断熱するために、対応する断熱材を備えている。断熱材は、例えばストッパの形に構成されており、炉ハウジング内に構成された開口部を、本発明に係る循環装置の特定の一構成に従って、熱的に閉じ、すなわち密閉している。この構成によって、本発明に係る循環装置の容易な取り付けまたは取り外しが可能になる。これは、修理の際に特に有利である。
【0063】
本発明によれば、加熱装置と循環装置とを組み合わせることが提案される。この組み合わせは、全体的な作用へと機能的に融合することが有効である。つまり、レトルトの均一な、ひいては従来技術と比べてより良好な加熱、及びこれによって、レトルト内に配置された被熱処理加工品のより良好な加熱へと融合する。
【0064】
変形形態III
【0065】
最後に、熱処理効率の増加に関して、第1の態様によれば、金属加工品の熱処理のためのレトルト炉において、底部は、該底部との間に中間空間を形成するようにして第2の底部を備えており、すなわち底部が二重壁に構成されている。中間空間は、第1の容積空間及び第2の容積空間によって、互いから気密に分離された2つの環状空間に分割されている。第1の容積空間は第1の管に連結されており、第2の容積空間は第1の管に連結されている。これによって、流体力学的に有利な冷却体積流量を用いて冷却ガスの循環を加速することができ、その結果、装入物の冷却をすることができる。
【0066】
第2の態様によれば、この種のレトルト炉は、第1及び第2の調整弁がそれぞれ、受容空間を含むハウジングを形成し、該ハウジング内へ、蓋が、該蓋が開位置にあるときに各管の流れ断面が完全に開放されるようにして、移動可能であり、流体力学的に有利な流れのための受容空間が提供され、ガス体積流量を各管内において流体力学的に有利に誘導することができる。
【0067】
第3の態様は、上述の複数の構成を組み合わせて、これらの有利な特徴を機能的に融合させて、全体的に作用させることである。ここで、レトルト炉は、
−底部が、該底部との間に中間空間を形成するようにして第2の底部を備えており、この中間空間は、第1の容積空間及び第2の容積空間によって、互いから気密に分離された2つの環状空間に分割されており、第1の容積空間は第2の管に連結されており、第2の容積空間は第1の管に連結されているような特徴群と、
−第1及び第2の調整弁が、それぞれ、受容空間を包含する1つのハウジングを形成する特徴群であって、ハウジング内へ、蓋が、該蓋が開位置にあるときに各管の流れ断面が完全に開放されるようにして、移動可能であるような特徴群と、
−両特徴群を組み合わせると、第1の容積空間及び第2の容積空間が、蓋が開位置にあるときに各管の流れ断面を完全に開放するという蓋の機能と流体技術的に相互作用し、冷却ガスを流体力学的に有利に循環させ、その結果、装入物を急冷できる。
【0068】
第1及び第3の態様では、底部の第2の底部の外径は、レトルトの内径よりも小さくなっている。
【0069】
さらに、外側の第1の容積空間は、第2の管を介して、外部の冷却ガス送風機に連通され得、内側の第2の容積空間は、第1の管を介して、外部の冷却器に連通され得る。これによって、レトルト内に存在する高温ガスは、排出され、外部の冷却器に輸送されることが可能になる。
【0070】
有利には、内側の第2の容積空間は、レトルトによって包囲された処理室に連結されている吸引パイプに連結され得る。
【0071】
最終的に、第1及び第2の態様は、第1及び第2の容積空間が、リングによって、互いから気密に分離された2つの環状空間に気密に分割されている場合により完全になる。このリングは、加工技術的に有利に、例えば溶接によって、導入可能である。
【0072】
第2及び第3の態様では、各調整弁のハウジングの受容空間内へ移動可能な蓋は、ピボットアームを有している。ピボットアームは、回転軸の回りを旋回可能であるように支持アーム上に配置されている。ピボットアームは、90°以上旋回可能であるように支持アーム上に設置され得、駆動装置に連結されることが有効である。駆動装置は、空気圧式のコントロールシリンダによって形成され得る。
【0073】
ハウジングは、交換可能に、第1のフランジ継手及び第2のフランジ継手によって、それぞれ1つの管内に取り外し可能に配置されている必要があり、取り付けに有利なように、弁によって閉鎖可能な取付開口部を有している必要がある。
【0074】
上述の駆動装置は、有利には、弁の上に配置されていることが可能である。ここで、弁は、ピストン棒の気密式の形態を有している。ピストン棒は、蓋を作動させるために、ピストン棒の連結素子及びピボットアームのスロットによってヒンジ接続されている。ここで、支持アームは、機能的に有利に、弁に配置され得る。
【0075】
本発明に係るレトルトの底部の構成、すなわち、レトルトの底部が、容積空間の形成によって、二重壁に構成され、互いから気密に分離された2つの環状空間に分割されている構成と、本発明に従って変形された構造原理、すなわち、調整弁によって開閉可能なガス誘導管が、受容空間を包含するハウジングに連結されており、ここでは、蓋が内側へ移動可能であるため、蓋が開位置にある場合に、各管の流れ断面は完全に開放されるという構成原理とによって、上述の課題は、レトルト炉内の流れの関係を全体的に改善することに関して、最適に解決される。
【0076】
底部を二重壁に構成するだけで、既に成功がもたらされる。その理由は、冷却ガスが極めて良好に循環され、有利には、炉雰囲気の著しく良好な循環、ひいては被熱処理加工品の間を流れる流れが実現されるからである。
【0077】
また他方では、冷却ガス用の調整弁における蓋の動きを変えるだけで、既に、全体として、流体技術的に有利な条件が実現される。
【0078】
しかし、これらを組み合わせた実施形態では、底部を二重壁に構成することと、蓋の動きを変えることとが、流体技術的な作用において、機能的に互いに融合する。
【0079】
冷却ガスまたは冷却ガス混合物が、外部の冷却ガス送風機によって、外部から、外側の環状空間内に供給されることが可能である点を、強調する。
【0080】
内側の環状空間は、レトルトによって包囲された、装入物の実際の処理室と流体連通されている。このために、内側の環状空間をレトルトの処理室と流体連通させる吸引パイプが設けられている。
【0081】
外側の環状空間に供給された冷却ガスは、開口部を通って、レトルトによって包囲された処理室内に流入することが可能である。ここで、これらの連結口の寸法は、冷却送風機の性能に応じて、外側の環状空間に存在する冷却ガスが、比較的高い速度で、開口部から流出し、レトルトによって包囲された処理室内に流入することが可能なように定められている。
【0082】
外側の環状空間をレトルトの処理室と流体連通している貫通口が、二重壁の底部の内壁の正面側に、すなわち、一方の内側の壁と、他方のレトルトの柱面との間に、形成されていることが好ましい。
【0083】
この構成は、例えば、レトルト側の壁の外径すなわち二重壁の底部の内壁を、レトルトの内径よりも小さく構成することによって、実現可能である。その結果、一方の二重壁の底部の内壁と、他方のレトルトの柱面の内側との間に、環状隙間が形成される。この環状隙間は、個々の貫通口に分割されていてよい。これは、例えば、二重壁の底部の内壁を、正面側においてレトルトの柱面に所定の間隔をおいて連結させることによって、例えば溶接することによって、達成される。
【0084】
環状隙間、すなわち外側の環状空間をレトルトの処理室と流体連通させる貫通口の上述の構成は、外側の環状空間を介して流入する冷却ガスが、レトルトの柱面に近接してかつレトルトの柱面に平行に、レトルトの処理室内に導入されるという利点を有している。
【0085】
これによって、全体として、極めて良好な、レトルト内に存在する加工品装入物のの間を流れる流れが実現される。これは、対応して、一方のガス流と、他方の加工品装入物との間の熱伝達を極めて良好にする。
【0086】
上述の構成は、レトルトによって包含される容積空間内に連結された吸引パイプによって、レトルト内に存在する高温ガス、すなわちレトルト内に存在する高温の雰囲気を、吸引することを可能にする。ここで、吸引されたガス、すなわち吸引された雰囲気は、レトルトの二重壁に構成された底部の内側の環状空間を介して、誘導される。
【0087】
吸引のために、内側の環状空間は、冷却器に連結されている。吸引されたガスは、冷却器を通って導かれ、冷却される。このガス、すなわち以前の処理雰囲気を、好ましくは、レトルトの二重壁の底部の外側の環状空間に再び供給される冷却ガスとして、再利用することが可能である。これは、上述の冷却ガス送風機の支援によって行われ得る。
【0088】
外側の環状空間に搬送された冷却ガスは、レトルトの作業室、すなわち処理室内に再び流れ出て、好ましくは、レトルトの柱面の近傍に流れ出て、その結果、レトルトの柱面の内部の近傍に流入した冷却ガスは、レトルトに平行に強制的に誘導される。結果的に、レトルトの内部には、ある流れが生じる。この流れは、高温ガスまたは高温の炉雰囲気が、レトルトによって包囲された容積空間の内部領域から流出すると同時に、冷却ガスが、レトルトによって包囲された容積空間の外側の端部領域内に導かれることを特徴とする流れである。その結果、レトルト内には、流れの循環が、すなわち、一方の、外部の冷却送風機の体積流量と、他方の、レトルト内に存在する循環装置の体積流量とが加わったものとして形成される。この流れの循環の結果、レトルト内にある加工品装入物の間を流れるガスの流れが、従来技術と比べて改善される。これによって、加工品装入物とガスまたはガス混合物との間の熱伝達が、より良好になる。すなわち、装入物の急冷が導かれる。
【0089】
上述の構造は、レトルト炉において、一般的な用途を見出すことが可能である。すなわち上述の構造は、水平型のレトルト炉だけでなく、垂直型のレトルト炉にも利用可能である。
【0090】
この有利な機能は、本発明に係る調整弁の構成を支援する。調整弁には、受容空間を提供する、ハウジングの形をした拡張部が設けられている。蓋は、このハウジング内または受容空間内へ移動可能である。すなわち蓋は、蓋が開位置にあるときにガス誘導管の流れ断面が完全に開放されるようにして、移動可能である。
【0091】
この構成は、公知の従来技術と異なり、有利にも、不必要な流れ抵抗を回避することを可能にする。従来技術から公知の回転弁を開放する際、この回転弁は、横方向の位置から、少なくとも部分的にガス誘導管の流れ断面を覆ってしまう長手方向の位置にずれてしまうという欠点を有している。これは、不必要な流れ抵抗を導くという欠点を有している。これによって、ガス誘導管に連結されたガス送風機の効率は制限され、ガス体積流量の減少が導かれることになる。
【0092】
本発明に係る構造では、これらの欠点は解消される。なぜなら、蓋は、開位置にある場合、受容空間を提供する拡張部の内側に移動されるからである。このため、ガス誘導管の流れ断面は、完全に開放され、不必要な流れ抵抗が生成されることは、完全に回避される。
【0093】
本発明によれば、蓋が旋回可能に構成されることが提供される。この後、受容空間を提供するハウジング内への旋回運動として蓋の移動が行われる。この蓋の旋回可能性は、例えば、蓋が、ピボットアームに配置されると共に、蓋が、例えば支持アームに、ヒンジ接続されて配置されることによって、実現可能である。
【0094】
こうすることによって、ピボットアーム、及び従ってピボットアームに配置された蓋は、支持アームに対して容易に旋回可能である。この際、ピボットアームが、少なくとも90°、より好適には95°旋回運動可能であることが好ましい。
【0095】
少なくとも理論的に90°以上旋回可能であることは、蓋が、所定の接触圧力で、ガス誘導管の連結パイプに対して加圧されることが可能であるという利点を提供する。これは、特に、管側及び/または蓋側に設けられた密閉体との組み合わせにおいて、ガス誘導管を気密シールさせるように作用する。従来技術において蓋として使用されている閉鎖弁では、一方のガス誘導管と他方のレトルトの内部空間とをこのように気密に分離させることは不可能である。これは、製作公差のために、損耗が生じかつ/または熱膨張率が異なるために、一方のガス誘導管の内側と他方の閉鎖弁との間に常に環状の隙間が残るからである。
【0096】
蓋の一構成によれば、ピボットアームが、コントロールシリンダにヒンジ接続されていることが提供される。このコントロールシリンダによって、ピボットアームが支持アームに対して旋回することが可能である。コントロールシリンダは、空気圧式に動作することが好ましい。しかし、油圧式または機械式に動作するコントロールシリンダまたは作動装置といった、他の構成も可能である。
【0097】
このように構成することによって、有利には、蓋装置自体を、追加装備の範囲において、設置または取り付けることが可能になる。調整弁は、中間部品として、ガス誘導管のフランジ継手の間に容易に設置される。
【0098】
本発明によれば、ハウジングは取付開口部を有している。この取付開口部によって、後に、蓋の調節機構、すなわち特にピボットアーム、蓋自体、及び場合によってはコントロールシリンダへのアクセスが可能になる。取り外し、修理、または他の後処理が、容易に可能になる。
【0099】
ここで、取付開口部は、対応して構成された弁によって気密シール可能であることが好ましい。
【0100】
レトルト炉において、底部の構成を二重壁にすることと、蓋の動きを変えることを組み合わせて適用することが、最適である。なぜなら、これによって、本発明の課題である、この種のレトルト炉において、被熱処理加工品を均一かつ集中的に冷却し、冷却ガスを良好に循環させ、冷却体積流量を妨げる不必要な抵抗を回避するということが、最大限に実現されるからである。
【0101】
従って、レトルトの底部の本発明に係る構成と、レトルト炉のレトルトに連結された、冷却ガス用のガス誘導管を機能信頼性を有して閉じるための調整弁とが、全体として、装入物の急冷を実現する流体技術的に有利な状態を作り出す。
【0102】
実施形態の組合せ
【0103】
変形形態I、IIまたはIIIの各々は、既にかなり詳細に説明されている。
【0104】
以下の特徴を併せ持つレトルト炉の構成は、最大の可能かつ有益な効果を有する新たなレトルト炉のための条件を創出する。
【0105】
変形形態I
装入物及び収容台の重量がレトルトに加わらず、収容台を、炉ハウジングに対して支持するための支持手段に連結させ、この手段を、レトルトの壁の貫通ブッシュ内及び取り囲んでいる炉ハウジング内に気密に導く。
【0106】
変形形態II
a)加熱装置は、複数の加熱素子を備え、該複数の加熱素子は、炉ハウジングに設けられた閉鎖可能な第1の開口部を用いて、少なくとも個々に交換可能であるように、第1の容積空間内に配置されており、
b)第1の容積空間内の空気を循環させるための第2の循環装置が、炉ハウジングによって収容されていると共に、第2の循環装置が、閉鎖可能な第2の開口部を用いて、ユニットとして交換可能であるように設けられており、
c)加熱素子及び循環装置は、レトルトに均一な熱伝達を導く構成をなして、第1の容積空間内に収容されている。
【0107】
変形形態III
底部が、該底部との間に中間空間を形成するようにして第2の底部を備えており、中間空間が、第1の容積空間及び第2の容積空間によって、互いから気密に分離された2つの環状空間に分割されており、第1の容積空間が第1の管に連結されており、第2の容積空間(III.17)が第1の管(III.11)に連結されており、これによって、流体力学的に有利な冷却体積流量を用いて冷却ガスの循環を加速することができ、その結果、装入物(III.7)の冷却を加速することができるか、または
第1及び第2の調整弁がそれぞれ、受容空間を含むハウジングを形成し、該ハウジング内へ、蓋が、該蓋が開位置にあるときに各管の流れ断面が完全に開放されるようにして、移動可能であり、流体力学的に有利な流れのための受容空間が提供され、ガス体積流量を各管内において流体力学的に有利に誘導することができるか、または
第1の特徴群では、底部は、該底部との間に中間空間を形成するようにして第2の底部を備えており、中間空間は、第1の容積空間及び第2の容積空間によって、互いから気密に分離された2つの環状空間に分割されており、第1の容積空間は第2の管に連結されており、第2の容積空間は第1の管に連結されており、
第2の特徴群では、第1及び第2の調整弁がそれぞれ、受容空間を含むハウジングを形成し、該ハウジング内へ、蓋が、該蓋が開位置にあるときに各管の流れ断面が完全に開放されるようにして、移動可能であり、
両特徴群を組み合わせると、第1の容積空間及び第2の容積空間が、蓋が開位置にあるときに各管の流れ断面を完全に開放するという蓋の機能と流体技術的に相互作用し、冷却ガスを流体力学的に有利に循環させ、その結果、装入物を急冷できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明に係る水平に配置されたレトルト炉を示す縦断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1及び図2から抜粋した細部を示す図である。
【図4】本発明に係るレトルト炉を示す縦断面図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】本発明に係るレトルト炉の断面図である。
【図7】図6を拡大した図であり、この図では、本発明に従って、底部9が第2の底部9.1によって二重壁に構成されている。
【図8】1つの部材としての本発明に係る調整弁を示す縦断面図である。
【図9】図1をa)に、図5をb)に、図7をc)に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0109】
本発明について、以下の例において、本発明の実施形態を参照して、より詳細に説明する。
【0110】
変形形態I
【0111】
図1及び図2によれば、図示されていない金属加工品を熱処理するためのレトルト炉I.1は、水平に配置された金属の筒状レトルトI.3と、レトルトI.3を取り囲む炉ハウジングI.2とを備えている。レトルトI.3は、保護ガス及び反応ガスを収容する、気密シール可能な、装入物などの加工品を熱処理するための処理室すなわち装入室I.10と、装入物を設置するための、装入物受台としての収容台I.8とを備えている。
【0112】
炉ハウジングI.2には、ここには図示されていない加熱素子が、収容されている。この加熱素子は、保護ガス雰囲気において装入物などの加工品を熱処理するための処理室すなわち装入室I.10を備えるレトルトI.3を加熱する。さらに、レトルト炉I.1には、符号が付されていない換気装置ユニットと、レトルトI.3内の、符号が付されていない、保護ガス雰囲気を誘導するための拡散装置とが割当てられている。
【0113】
レトルトI.3は、(ここでも符号が付されていないが、)一端において閉じられており、他端において、蓋によって気密シール可能な装入物用の装入口を備えている。
【0114】
符号が付されていない、完全性を示すためだけの部材の構成は、本発明に係る機能にとって重要ではない。
【0115】
ここで、冒頭部分に記載した従来技術に対して、本発明は、以下の新規の構成原理を有する、収容台I.8に関する以下の特徴の組み合わせによって、強調される。
a)装入物及び収容台I.8の重量がレトルトI.3に加わらず、
b)このため、収容台I.8は、炉ハウジングI.2に対して支持するための支持手段I.5に連結されており、
c)手段I.5は、炉ハウジングI.2の壁I.2.1の貫通ブッシュI.6内及びレトルトI.3の壁I.3.1の貫通ブッシュI.6内に気密に挿通されている。
【0116】
この変更された原理は、
−レトルトの壁厚を低減し、これによってレトルトの質量を減少させ、
−加工品装入物の熱処理効率、及び、レトルトの積載能力を向上させる
という条件を実現する。
【0117】
図1及び図2からは、装入物及び収容台I.8の重量をレトルトI.3に加えないようにするために、収容台I.8は、吊り下げによって、炉ハウジングI.2に対して支持するための支持手段I.5に連結されており、支持手段I.5は、横方向部材I.9を介して炉ハウジングI.2に対して支持され、収容台I.8を支持し、かつ継手I.4を介して炉ハウジングI.2上の横方向部材I.9に対して支持されていることが明らかである。
【0118】
さらに、図1及び図2には、貫通ブッシュI.6が、壁I.2.1,I.3.1内に嵌め込まれたパイプI.6.1を備えていることが示されている。パイプI.6.1は、補償を行う気密式の補償器7を備えている。図3によれば、パイプI.6.1は、冷却部I.7.2によって包囲されている。
【0119】
パイプI.6.1は、補償器I.7及び断熱材I.7.3、並びに図示されていない密封材によって、横方向部材I.9に連結され、気密式のユニットを形成している。補償器I.7は、レトルトI.3が熱によって膨張した際にパイプI.6.1に生じる運動を補償することを可能にする。例えば水で充填された冷却部I.7.2と、断熱材I.7.3とは、補償器I.7の許容できない加熱を防止する。
【0120】
本発明の課題を解決することは、ここで、レトルトI.3の機能を、装入室I.10を気密シールすることに低減し、迅速な雰囲気の変換を実現可能にし、保護ガス雰囲気の不純物を回避すること共に熱処理プロセスへの有害な作用を回避することによって、より完全になる。
【0121】
本発明に従って実現されたレトルトI.3の壁I.3.1の減少は、急速な熱伝導を生じさせ、これによって、熱処理の効率を向上させる。
【0122】
さらに、壁厚が減少すれば、レトルトの重量も減少する。これによって、炉を熱処理温度まで加熱する際のエネルギーが節減される。
【0123】
全体として、本発明に係る構成原理によって、5t未満の重量の装入物を所定の方法で熱処理することができることが示された。
【0124】
本発明の特に有効な構成上の形態の詳細は、図3に示されている。ここで、炉ハウジングI.2の外部(ここでは上部)の、壁I.2.1,I.3.1に嵌め込まれた各パイプI.6.1は、取り外し可能なフランジ継手I.6.1.3によって、それぞれ、下部I.6.1.1と上部I.6.1.2とに分離されている。下部I.6.1.1は、壁I.2.1,I.3.1のうちの少なくとも1つに嵌め込まれており、上部I.6.1.2は、横方向部材I.9に嵌め込まれている。ここで、上部I.6.1.2には、補償器I.7の機能を引き受けた折り畳み式ベローズスリーブI.7.1が装備されている。下部I.6.1.1は、冷却部I.7.2によって包囲されている。
【0125】
補償器I.7を備える少なくとも1つのパイプI.6.1を形成するアセンブリは、例えば、損耗部品/予備部品として、交換可能に配置されている。このアセンブリについては、特に図3を参照されたい。
【0126】
本発明の課題を解決することは、レトルトI.3を、分解することなく、支持手段によって、炉ハウジングI.2から取り出し可能であることによって、さらに有効に支援される。
【0127】
このため、炉ハウジングI.2の壁I.2.1は、図示されていない、(貫通ブッシュI.6の或る領域を取り囲む)取り外し可能に設けられた部分を有している。この部分は、ここでは、冒頭部分に記載した条件に応じた構成上の種々の可能性のため、個別に説明することはしない。しかし、図2では、この、維持が容易な、取り出し可能性は、炉ハウジングI.2が構成的に分割可能であることによって、示唆されている。
【0128】
全体として、本実施形態は、装入物及び収容台I.8の重量をレトルトI.3に加えないようにするために、収容台I.8が、吊り下げによって、炉ハウジングI.2に対して支持するための支持手段I.5に連結されていることを示している。支持手段I.5は、収容台I.8を支持し、かつ継手I.4を介して炉ハウジングI.2上の横方向部材I.9に対して支持される。
【0129】
本発明は、この種の構成的配置だけに限定されるものではない。従って、装入物及び収容台I.8の重量をレトルトI.3に加えないようにするために、収容台I.8は、例えば立てられた状態で、炉ハウジングI.2に対して支持するための支持手段I.5に連結され得る。この場合、支持手段I.5は、横方向部材I.9を介して炉ハウジングI.2に対して下方に支持される。
【0130】
本発明の原理の範囲では、
a)装入物及び収容台I.8の重量がレトルトI.3に加わらないこと、
b)このため、収容台I.8は、炉ハウジングI.2に対して支持するための支持手段I.5に連結されていること、及び
c)手段I.5は、炉ハウジングI.2の壁I.2.1の貫通ブッシュI.6内及びレトルトI.3の壁I.3.1の貫通ブッシュI.6内に気密に挿通されていることが、さらなる構成上の実施を可能にする。
【0131】
変形形態II
【0132】
図4には、本発明に係るレトルト炉II.1が概略的に縦断面図に示されている。レトルト炉II.1は、図示される実施形態では、水平に位置付けられたレトルトII.3を備えており、すなわち、水平レトルト炉II.1である。
【0133】
レトルト炉II.1は、炉ハウジングII.2を備え、炉ハウジングII.2には、少なくとも個々に交換可能な加熱素子(II.6)のための閉鎖可能な第1の開口部(II.2.1)が設けられている。炉ハウジングII.2は、第1の容積空間4を包囲している。第1の容積空間4の内部には、数ある中でも特に、レトルトII.3及び加熱装置II.5が配置されている。従って、炉ハウジングII.2は、レトルトII.3及び加熱装置II.5を収容している。レトルト炉II.1は、さらに、レトルトII.3の内部に、第1の循環装置II.18.1を備えている。
【0134】
特に、図5の概略的な図から分かるように、炉ハウジングII.2は、断熱材II.15が内側に設けられた外壁II.16を有している。
【0135】
レトルトII.3は、円筒形状の中空体として構成されている。この中空体は、一端において、底部II.9によって気密シールされている。図4を平面的に参照すると、レトルトII.3は、底部II.9に対向して、装入口II.10を備えている。装入口II.10は、蓋II.10.1によって気密シール可能である。装入口II.10を介して、レトルトII.3によって包囲された第2の容積空間II.17に到達可能である。第2の容積空間II.17は、レトルト炉II.1の本来の作業室、すなわち処理室を示すものである。装入口II.10を介して、被熱処理加工品(例えばまとめて装入物II.14と示される)が、レトルトII.3内に供給される。レトルトII.3からの取り出しも、同じく装入口II.10を介して行われる。
【0136】
炉ハウジングII.2によって収容された加熱装置II.5は、炉ハウジングII.2によって包囲された第1の容積空間II.4を加熱するように機能する。第1の容積空間II.4は、一般に、炉室と呼ばれる。この炉室を加熱することにより、レトルトII.3が、熱伝達によって加熱され、これによって、レトルトII.3の内部に配置された装入物II.14が加熱される。
【0137】
加熱装置II.5は、上述の多数の加熱素子II.6を備えている。各加熱素子II.6は、図5によれば、棒状に構成されている。ここで、加熱素子II.6は、図4及び図5から分かるように、その長手方向が縦方向II.8に方向付けられている。レトルトII.3は、図4から分かるように、その長手方向が縦方向II.7に方向付けられている。
【0138】
さらに図4から分かるように、加熱素子II.6は、その長手方向が、レトルトII.3の長手方向に直交するように整合されている。これに関しても、図5から明確に認識可能である。
【0139】
図5を平面的に参照すると、各加熱素子II.6は、上部区域II.12及び下部区域II.13を有している。これらの両区域は、中間領域II.11を介して互いに連結されている。この中間領域II.11は、好ましくは、加熱されないように構成されており、そのため、この領域にあるレトルトII.3の過熱が防止される。
【0140】
図4と図5とを共に参照すると明らかなように、本発明に係るレトルト炉1は、全部で6つの加熱素子を備えている。ここで、レトルトの各側面には、それぞれ3つの加熱素子が設けられており、これらは、レトルトの長手方向II.7において、均一に分布されている。
【0141】
本発明に係るレトルト炉II.1は、本発明によれば、レトルトII.3の外部に、第2の循環装置II.18.2を備えている。第2の循環装置II.18.2は、例えば送風機または類似の形状をした循環ユニットII.19と、通気手段II.20とを有している。ここで、循環ユニットII.19によって、第1の容積空間II.4に存在するガス雰囲気が循環される。通気手段II.20は、第2の循環装置II.18.2による、レトルトII.3の長手方向に対して横方向に方向付けられた流れを、例えば図5に記載された矢印II.22が示すような流れにする機能を有している。横に方向付ける循環の結果として、循環ユニットII.19によって循環された炉雰囲気は、加熱素子II.6の長手方向に、加熱素子II.6を通り過ぎて流れる。結果的に、図5を平面的に参照した場合の、レトルトII.3の回りを周回する流れが生じる。
【0142】
第2の循環装置II.18.2は、炉ハウジングII.2の第2の開口部II.23内に嵌め込まれている。この開口部II.23を熱的に密閉するために、第2の循環装置II.18.2は、断熱材II.15と同一の材料から構成されたストッパ21を備えている。この構成によって、第2の循環装置II.18.2全体は、モジュール式かつ小型のアセンブリとして構成され、炉ハウジングII.2の第2の開口部II.23内に嵌め込むことによって、取り付け可能または取り外し可能である。
【0143】
加熱素子II.6及び第2の循環装置II.18.2は共に、個々にも組合せにおいても、従来技術のものと比べてずっと均一な加熱、ひいてはレトルトII.3の、最終的には熱処理のためにレトルトII.3内に配置された装入物II.14の、より良好な加熱を提供する。これは、一方ではレトルトII.3の耐用年数の延びに影響し、他方では装入物II.14の熱処理に関して改善された処理結果に影響する。
【0144】
変形形態III
【0145】
図6及び図7には、本発明に係るレトルト炉III.1が、概略的な縦断面図に示されている。図示される実施形態では、レトルト炉III.1には、水平に配置されたレトルトIII.3が設けられている。すなわち、レトルト炉III.1は水平レトルト炉III.1である。
【0146】
レトルト炉III.1は、炉ハウジングIII.2を有している。炉ハウジングIII.2は、第1の容積空間III.4を包囲しており、第1の容積空間III.4の内部には、数ある中でも特に、レトルトIII.3及び加熱装置III.5が配置されている。従って、炉ハウジングIII.2は、レトルトIII.3及び加熱装置III.5を収容している。
【0147】
レトルトIII.3は、円筒形状の中空体として構成されている。この中空体は、一端において、底部III.9によって気密シールされている。レトルトIII.3は、底部III.9に対向して、装入口III.10を備えている。装入口III.10は、蓋III.10.1によって気密シール可能である。装入口III.10を介して、レトルトIII.3によって包囲された第2の容積空間III.6に到達可能である。第2の容積空間III.6は、レトルト炉III.1の本来の作業室、すなわち処理室を示すものである。装入口III.10を介して、被熱処理加工品(例えば集合的に装入物III.7と示される)が、レトルトIII.3内に供給される。レトルトIII.3からの取り出しも、同じく装入口III.10から行われる。
【0148】
炉ハウジングIII.2に収容された加熱装置III.5は、炉ハウジングIII.2によって包囲された第1の容積空間III.4を加熱するように機能する。第1の容積空間III.4は、一般に、炉室と呼ばれる。この炉室を加熱した結果、熱伝達によって、レトルトIII.3が加熱され、これによって、レトルトIII.3の内部に配置された装入物III.7の加熱が導かれる。
【0149】
レトルトIII.3によって包囲された第2の容積空間III.6において、ガス雰囲気下の熱処理が行われる。ガス雰囲気を良好に循環させ、第2の容積空間III.6の内部の温度の均一化を実現するために、装入物III.7を通るガス流が、循環装置III.8及び通気手段III.15によって生成される。通気手段III.15は、円筒形状に構成されている。このため、レトルトIII.3の内壁と通気手段III.15との間に、環状空間III.6.1が形成される。ガスは、この環状空間III.6.1を通って、前方に、蓋III.10.1の側方に、矢印の方向に流れ、その後、別の矢印によって示されるように、装入物III.7を通って、後方に、循環装置III.8まで流れる。
【0150】
熱処理に必要なガスは、例えば、底部III.9と流体連通されたパイプ(図示せず)を通って、レトルトIII.3内に流入させることが可能である。
【0151】
熱処理を行った後には、装入物III.7の冷却が行われる。本発明によれば、冷却の効率は、根本的に新規の特徴によって、さらに完全なものになる。
【0152】
次に、ガスは、レトルトIII.3から、底部III.9に連結された、吸引パイプとして構成された第1の管III.11を通って、外部の冷却ガス送風機III.13による冷却器III.12を介して、吸引され、注入パイプとして構成された第2の管III.14を通って、再びレトルトIII.3内に導かれて戻ってくる。底部III.9と循環装置III.8との間には、本発明に係る第2の底部III.9.1が設けられている。第2の底部III.9.1の直径は、レトルトIII.3の内径よりも大きさが小さい。これらの底部III.9とIII.9.1との間には、容積空間が構成される。この容積空間は、環状のリングIII.18によって、内側の容積空間III.17と外側の容積空間III.16とに分割されている。内側の容積空間III.17は、吸引パイプIII.19によって、装入物III.7が設置されている第2の容積空間III.6と、吸引パイプを形成する第1の管III.11とと流体連通されている。外側の容積空間III.16は、環状空間III.6.1と、注入パイプを形成する第2の管III.14とと流体連通されている。このようにして、高温ガスは、処理室III.6から吸引され、冷却ガスは、環状空間III.6.1内に吹き込まれる。熱処理中に、これらの管11及び14は、第1の調整弁III.20及び第2の調整弁III.21内の蓋III.25(図8)によって閉じられる。
【0153】
図8には、調整弁III.20,III.21がより詳細に示されている。調整弁III.20,III.21は、フランジ継手III.23,III.24によって、管III.11,III.14内に作りこまれている。本発明によれば、調整弁III.20,III.21は、蓋III.25を備えている。蓋III.25は、管III.11,III.14内の流入口III.26を完全に気密シールする。蓋III.25は、回転軸III.32の回りを旋回可能であるように支持アームIII.27上に取り付けられている。蓋III.25は、ピボットアームIII.22と、ピボットアームIII.22のスロットIII.31に係合する連結素子III.30とをによって、コントロールシリンダなどの駆動装置III.28のピストン棒III.29に固定されている。ピストン棒III.29の往復運動によって、蓋III.25は開閉する。蓋III.25は、開放状態において、旋回して、受容空間III.33内に入り込む。このため、開放状態では、流入口III.26の全流れ断面は、開放される。支持アームIII.27と、コントロールシリンダなどの駆動装置III.28とが、弁III.35に連結されている。弁III.35は、完全に取り外しが可能であり、取付開口部III.34を介して、本構成に自由にアクセス可能である。
【0154】
本実施形態は、一方の、本発明の第1の態様と、他方の、本発明の第2の態様とを有する新規の構成を包含する。本明細書では、これらの態様は、組み合わされた状態で、本発明の第3の態様として示される。
【0155】
変形形態の組合せ
【0156】
変形形態I、II及びIIIは、図1〜図8、独立請求項1、13及び20、並びに対応する従属項に従って、これらの特徴を組み合わせた請求項36、37または38レトルト炉I.1、II.1及びIII.1において適用可能である。それゆえ、これらのレトルト炉I.1、II.1及びIII.1は、得られる有益な効果をそれぞれ選択することで、個々のレトルト炉を全体として熱処理効率が増加する機能的な新規のレトルト炉に結合することができ、レトルト炉I.1、II.1、III.1が新たに設けられる。
【0157】
例えば、図9に、複合レトルト炉I.1、II.1及びIII.1の基本モデルとしての概略図を示す。
【0158】
図9a)によれば、これには新たな構造原理が含まれている。図9a)のレトルト炉では、装入物及び収容台I.8の重量がレトルトI.3に加わらず、収容台I.8が、炉ハウジングI.2に対して支持するための支持手段I.5に連結されており、手段I.5は、炉ハウジングI.2の壁I.2.1の貫通ブッシュI.6内及びレトルトI.3の壁I.3.1の貫通ブッシュI.6内に気密に挿通されている。図9a)は、変形形態Iと類似の実施形態であり得る。
【0159】
図9b)には、電気加熱装置II.5が複数の加熱素子II.6を備え、複数の加熱素子II.6は、炉ハウジングII.2に設けられた閉鎖可能な第1の開口部II.2.1を用いて、少なくとも個々に交換可能であるように、第1の容積空間II.4内に配置されているレトルト炉が示されている。第1の容積空間II.4内の空気を循環させるための第2の循環装置II.18.2が、炉ハウジングII.2によって収容されると共に、第2の循環装置II.18.2が、閉鎖可能な第2の開口部II.23を用いて、ユニットとして交換可能であるように設けられている。加熱素子II.6及び第2の循環装置II.18.2は、レトルトII.3に均一な熱伝達を導く構成をなして、第1の容積空間II.4内に収容されている。変形形態IIに従うその他の形態も可能である。
【0160】
図9c)には、底部III.9が、該底部III.9との間に中間空間を形成するようにして第2の底部III.9.1を備えており、中間空間は、第1の容積空間III.16及び第2の容積空間III.17によって、互いから気密に分離された2つの環状空間に分割されているレトルト炉が示されている。第1の容積空間III.16は第1の管III.14に連結されており、第2の容積空間III.17は第1の管III.11に連結されており、それによって第1の調整弁III.20及び第2の調整弁III.21が提供されている。この基本構成は、変形形態IIIに、より実行可能であるように詳述されている。
【0161】
産業上の利用可能性
【0162】
本発明またはその変形形態によって各々製造されるレトルト炉I.1、II.1及びIII.1は、製造業者の利益に加えて、金属加工品の産業的熱処理の領域においてオペレータによるレトルト炉の実際的な価値の増加及び使用可能性の増加を得ることができる。個々の実現された変形形態でさも、所期の熱処理効率の増加が達成されることになる。本発明は、関連産業でのレトルト炉のより効率的な稼働を可能にする。
【符号の説明】
【0163】
I.1 レトルト炉
I.2 炉ハウジング
I.2.1 炉ハウジングの壁
I.3 金属製筒状レトルト
I.3.1 レトルトの壁
I.4 継手
I.5 支持手段
I.6 貫通ブッシュ
I.6.1 パイプ
I.6.1.1 第1の部分すなわち下部
I.6.1.2 第2の部分すなわち上部
I.6.1.3 フランジ継手
I.7 補償器
I.7.1 折り畳み式ベローズスリーブ
I.7.2 冷却部
I.7.3 断熱材
I.8 収容台
I.9 横方向部材
I.10 処理室すなわち装入室
II.1 レトルト炉
II.2 炉ハウジング
II.2.1 第1の開口部
II.3 レトルト
II.4 第1の容積空間
II.5 加熱装置
II.6 加熱素子
II.7 縦方向
II.8 縦方向
II.9 底部
II.10 装入口
II.10.1 蓋
II.11 中間領域
II.12 上部領域
II.13 下部領域
II.14 装入物
II.15 断熱材
II.16 壁
II.17 第2の容積空間
II.18.1 第1の循環装置
II.18.2 第2の循環装置
II.19 循環ユニット
II.20 通気手段
II.21 ストッパ
II.22 矢印
II.23 第2の開口部
II.24 部材
III.1 レトルト炉
III.2 炉ハウジング
III.3 レトルト
III.4 第1の容積空間
III.5 加熱装置
III.6 処理室
III.6.1 環状空間
III.7 装入物
III.8 循環装置
III.9 底部(ガスの下流端部)
III.9.1 第2の底部
III.10 装入口
III.10.1 蓋
III.11 第1の管
III.12 冷却器
III.13 冷却ガス送風機
III.14 第2の管
III.15 通気手段
III.16 外側の容積空間
III.17 内側の容積空間
III.18 リング
III.19 吸引パイプ
III.20 第1の調整弁
III.21 第2の調整弁
III.22 ピボットアーム
III.23 第1のフランジ継手
III.24 第2のフランジ継手
III.25 蓋
III.26 流入口
III.27 支持アーム
III.28 駆動装置/コントロールシリンダ
III.29 ピストン棒
III.30 連結素子
III.31 スロット
III.32 回転軸
III.33 受容空間
III.34 取付開口部
III.35 弁
III.36 ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属加工品の熱処理のための電気加熱レトルト炉(II.1)であって、断熱された炉ハウジング(II.2)を備え、該炉ハウジング(II.2)が、第1の容積空間(II.4)を取り囲み、レトルト(II.3)のための加熱装置(II.5)と、前記レトルトの内部にある第1の循環装置(II.18.1)とを備え、それによって、前記第1の容積空間(II.4)に取り囲まれている前記レトルト(II.3)が、装入物受台の上に存在する加工品を熱処理するための処理室すなわち装入室として、保護ガス及び反応ガスを受容し、加工品の装入物(II.14)を装入するためのドアによって気密シール可能であるような第2の容積空間(II.17)を取り囲んでいる該レトルト炉(III.1)において、
a)前記加熱装置(II.5)が、複数の加熱素子(II.6)を備え、該複数の加熱素子(II.6)が、前記炉ハウジング(II.2)に設けられた閉鎖可能な第1の開口部(II.2.1)を用いて、少なくとも個々に交換可能であるように、前記第1の容積空間(II.4)内に配置されており、
b)前記第1の容積空間(II.4)内の空気を循環させるための第2の循環装置(II.18.2)が、前記炉ハウジング(II.2)によって収容されると共に、前記第2の循環装置(II.18.2)が、閉鎖可能な第2の開口部(II.23)を用いて、ユニットとして交換可能であるように設けられており、
c)前記加熱素子(II.6)及び前記第2の循環装置(II.18.2)が、前記レトルト(II.3)に均一な熱伝達を導く構成をなして、前記第1の容積空間(II.4)内に収容されていることを特徴とするレトルト炉(II.1)。
【請求項2】
前記加熱素子(II.6)が、前記レトルト(II.3)の長手方向に直交するように整合されていることを特徴とする請求項1に記載のレトルト炉。
【請求項3】
前記加熱素子(II.6)の長手方向長さが、前記レトルト(II.3)の直径よりも大きいことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載のレトルト炉。
【請求項4】
前記加熱素子(II.6)が、該加熱素子(II.6)の長手方向に関して、加熱されない例えば中間領域(II.11)を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のレトルト炉。
【請求項5】
前記レトルト(II.3)の長手方向の側面1つにつき少なくとも2つの前記加熱素子(II.6)が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のレトルト炉。
【請求項6】
前記第2の循環装置(II.18.2)が、循環ユニット(II.19)及び通気手段(II.20)を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のレトルト炉。
【請求項7】
前記通気手段(II.20)が、前記第1の容積空間(II.4)内の空気を、前記レトルト(II.3)の長手方向に対して横方向に循環させるように構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のレトルト炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−47445(P2012−47445A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232493(P2011−232493)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【分割の表示】特願2011−519035(P2011−519035)の分割
【原出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(310010243)Ipsen株式会社 (9)
【Fターム(参考)】