説明

金属化された基体を調製するためのプロセス、その基体、およびその使用

本発明は、金属化された基体を調製するためのプロセスであって:この基体上に、少なくとも1つの金属イオンをキレート化し得る基を必要に応じて保有するポリマー型の化合物をグラフト化する工程と;少なくとも1つの金属イオンをキレート化し得るこのポリマー型の化合物を少なくとも1つの金属イオンと接触して配置する工程と、ポリマー型のこの化合物を、このキレート化された金属イオン(単数または複数)を還元するための条件に供する工程と、金属化された基体が得られるまでこのキレート化/還元工程を繰り返す工程とからなる工程を包含するプロセスに関する。本発明はまた、このプロセスにより得られる基体、およびその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面コーティングの技術分野に関する。
【0002】
さらに具体的には、本発明は、金属イオンとのキレート化または錯体形成型の相互作用を発達し得る有機フィルムでコーティングされた基体を用いる金属化プロセスに関する。本発明はまた、この金属化プロセスにより得られる中間生成物または最終生成物に、そしてまた種々の分野の適用におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
金属の薄層で構成要素の表面をコーティングする工程によってなる金属化は、航空産業および自動車産業(特定の付属物がクロムでコーティングされている)、エレクトロニクス産業、タップウェア(tapware)、装飾、特に銀メッキのテーブルウェア、化粧品産業、すずメッキの食品容器などのような多くの分野で用いられる。従って、金属化プロセスの開発には非常に関心がもたれている。
【0004】
先行技術では既に、このような金属化を得るための種々の技術が開示されている。例えば、電着される金属塩を含む溶液であって、導電性である、金属化される物体が配置されている溶液を用いる電着が、一般に用いられる技術である。良好な粒子品質を有し、かつ金属化される物体に対して強固にかつ緊密に接着された均一な金属コーティングを得るためには、電着には、用いられる電流密度および温度などの厳密に制御された条件、ならびにまたこの物体の表面の注意深く洗浄することが求められる。
【0005】
粒子またはナノ粒子などの小さい物体の表面の金属化は医学分野では、治療上および診断上、両方に有用である。特に、研究中の生物学的現象の極めて特異的かつ局在的な画像を得るためには、少なくとも2種類の画像化を関連付けることが必要である。現在、磁気共鳴画像化(MRI)および蛍光を組み合わせる特定の画像化プラットフォームは、小動物における腫瘍増殖の研究に有効性を示している。しかし、組織による蛍光の減衰のせいで、この種のシステムは、ヒトの深部腫瘍の可視化は不可能であり、従って2つの画像を重ね合わせることができない。
【0006】
磁性(ナノ)粒子、すなわち、磁性金属を含むかまたはこのような金属でコーティングされた粒子は、種々の生物医学の適用において、特にMRI造影剤としてや、さらには、有効成分を誘導する(vectorizing)ため、貧血を処置するため、または癌を診断するため等の広範に用いられる。これらの粒子のうちでも、超常磁性酸化鉄がMRI造影剤として、ならびにその高い有効性(緩和能)および固有の生体再吸収性に起因して温熱療法によって癌を処置するために用いられる。
【0007】
極めて高い磁場でのNMRによって19Fを検出するための方法の開発は、新しい展望をもたらすと考えられる。特に、フッ素は、ヒトの身体(骨および歯)において微量で存在する微量元素と考えられる。従って、ペルフルオロ分子の検出によって、極めて大きいシグナル/ノイズ比を得ることが可能になる(非特許文献1〜4)。
【0008】
現在のところ、造影剤/ペルフルオロ分子を含む2〜3の例がある。特にインテグリンを画像化するために用いられるリポソームだけは、フッ素およびガドリニウムを用いる(非特許文献5〜9)。しかし、これらのシステムは、サイズが大きいことになり(>150nm)、そのせいで特定の適用に用いられる可能性は低くなる。
【0009】
酸化鉄およびペルフルオロ分子などの金属、金属酸化物または金属イオンを組み込んでいるナノ粒子を設計することによって、二方性の造影剤(高コントラストHおよび19FのMRI)を得ることが可能になり、2つのシグナルの相関によって、さらに正確な画像を得ることが可能になる。
【0010】
従って、金属、または金属酸化物およびペルフルオロ分子を組み込んでいる(ナノ)粒子を得るための金属化プロセスが、さらに一般的には実施が容易であって、かつ上述の分野において遭遇される全ての表面に対して適合可能である金属化プロセスが現実に必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】シュリニバス(Srinivas)ら、マグネチック・リソーナンス・イン・メディスン(Magnetic Resonance in Medicine),2007年,58,p725−734
【非特許文献2】ノイバウアー(Neubauer)ら、ジャーナル・オブ・カルディオバスキュラー・マグネチック・リソーナンス(Journal of Cardiovascular Magnetic Resonance),2007年,9,p565〜573
【非特許文献3】ブリックス(Brix)ら、マグネチック・リソーナンス・イメージング(Magnetic Resonance Imaging),2005年,23,p967〜976
【非特許文献4】ノイバウアー(Neubauer)ら、サーキュレーション(Circulation),2006年,114,251〜251
【非特許文献5】Winter(ウインター)ら、ジャーナル・オブ・マグネティズム・アンド・マグネチック・マテリアルズ(Journal of Magnetism and Magnetic Materials),2005年,293,p540〜545
【非特許文献6】モラウスキ(Morawski)ら、マグネチック・リソーナンス・イン・メディスン(Magnetic Resonance in Medicine),2004年,52,p1255〜1262
【非特許文献7】モラウスキ(Morawski)ら、カレント・オピニオン・イン・バイオテクノロジー(Current Opinion in Biotechnology),2005年,16,p89−92
【非特許文献8】Anderson(アンダーソン)ら、マグネチック・リソーナンス・イン・メディスン(Magnetic Resonance in Medicine),2000年,44,p433〜439
【非特許文献9】Caruthers(カルターズ)ら、インベスティゲーティブ・ラジオロジー(Investigative Radiology),2006年,41,p305〜312
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、この期待を満たし、かつ先行技術の欠点を満足する。具体的には、本発明は、治療および診断の画像化において有用な(ナノ)粒子に、ただしまた任意の種類の表面にも用いられ得るプロセスであって、これによって、良好な粒子の質を有し、かつ物体に強固に接着された均一な金属コーティングを有している、表面でおよび/またはその厚みで金属化された物体を得ることが可能になるプロセスを提案する。本発明はまた、白金粒子のような金属化触媒を適用することも可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明は、金属化された基体を調製するためのプロセスであって:
a)この基体上に、少なくとも1つの金属イオンをキレート化し得る基(または構造)を必要に応じて保有するポリマー型の化合物をグラフト化する工程と;
b)このポリマー型の化合物を、少なくとも1つの金属イオンをキレート化し得る基(または構造)でこれを官能化するための条件に必要に応じて供する工程と;
c)工程(a)または(b)の後に得られた少なくとも1つの金属イオンをキレート化し得るこのポリマー型化合物を少なくとも1つの金属イオンと接触させる工程と;
d)工程(c)において得られたポリマー型の化合物を、前記キレート化された金属イオンを還元するための状態に供する工程と;
e)金属化された基体が得られるまで工程(c)および(d)を必要に応じて繰り返す工程と、によってなる工程を包含するプロセスを提案する。
【0014】
本発明の状況では、「金属化された基体」とは、
−金属および/もしくは金属酸化物の薄層、典型的には2〜3ナノメートルから数マイクロメートルの薄層で表面コーティングされるか、ならびに/または
−そのバルク中に、そこに分散および/もしくは分配された金属および/もしくは金属酸化物を含んでいる、基体を意味する。
【0015】
金属化された基体のなかで、金属のみで、または金属酸化物のみで金属化された基体および2種類の金属種で金属化された基体は特に際立っている。
【0016】
本発明によるプロセスの工程(a)の間、例えば、基体に存在する原子とポリマー型の化合物に存在する原子との間で少なくとも1つの共有結合を形成するなどの、基体上にポリマー型の化合物をグラフト化するための任意の技術が用いられてもよい。このグラフト化技術は:
−基体上にグラフトし、特にラジカル重合によって、引き続くポリマー型化合物の形成を開始する、接着プライマー由来の種などの第1の反応性種を、この基体の近くに生成する工程、
および/または
−引き続くポリマー型化合物の形成を開始する、ラジカル種などの反応性種を基体の表面に生成する工程、
によってなり得る。
【0017】
結果として、本発明によるプロセスは、CH、カルボニル(ケトン、エステル、酸、アルデヒド)、−OH、−SH、リン酸塩、エーテル、アミン、または、F、ClもしくはBrなどのハロゲン、などの、ラジカル置換または追加反応に関与し得る1つ以上の原子または原子の基、保有する、無機または有機の、いずれの種類の基体で行われ得る。
【0018】
無機質の基体は特に、金属、貴金属、金属酸化物、遷移金属または金属合金、例えば、Ni、Zn、Au、Pt、Tiまたは鋼などの導電性の材料から選択される材料から作製されてもよい。
【0019】
この基体はまた、半導体材料、例えば、Si、SiC、AsGaまたはGaから選択される材料から選択されてもよい。「半導性」という用語は、金属と絶縁体の中間の電気伝導性を有する有機または無機の材料を指す。半導体の導電性の特性は主に半導体に存在する電荷担体(電子または正孔)によって影響される。これらの特性は、価電子帯(共有結合に関与する電子に相当する)及び伝導帯(半導体中で移動し得る励起状態の電子に相当する)として公知の2つの特定のエネルギー帯によって決定される。その「差」は、価電子帯と伝導帯との間のエネルギーの相違を示す。また半導体は、絶縁体または金属とは異なり、電気伝導性が制御され得る材料であり、その電気伝導性は、半導体に挿入される外来の元素に相当するドーパントを添加することによって大きく拡げられる。
【0020】
この基体はまた、感光性半導体材料、すなわち、その導電性が磁場、温度または照明の変化によって変調されてもよく、電子−正孔対および電荷担体の密度に影響を有する、半導体材料から選択される材料から選択されてもよい。これらの特性は、前に規定されたとおり差(ギャップ)の存在に起因する。このギャップは一般には、絶縁体と考えられる材料での5eVとは対照的に、半導体については3.5eVを超えない。従って、特に照明によって、ギャップをまたいで担体を励起することによって、伝導帯を付与することが可能である。周期表の第IV族の元素、例えば、炭素(ダイヤモンド型で)、ケイ素およびゲルマニウムは、このような特性を有する。半導体材料は、例えばSiGeもしくはSiCの第IV族、または、例えばGaAs、InPもしくはGaNの第III族およびV族、あるいは、例えばCdTeもしくはZnSeの第II族およびVI族、の複数種の元素から形成されてもよい。
【0021】
本発明の状況では、感光性半導体基体は無機質の基体であることが有利である。従って、本発明の状況で用いられる感光性半導体基体は、第IV族の元素(さらに具体的にはケイ素およびゲルマニウム);第IV族元素の合金(さらに具体的には、SiGeおよびSiCの合金);第III族およびV族元素の合金(AsGa、InP、GaNのように「III−V」化合物として公知)ならびに第II族およびVI族元素の合金(CdSe、CdTe、CuS、ZnSまたはZnSeのように「II−VI」化合物として公知)からなる群より選択される。好ましい感光性半導体は、ケイ素である。
【0022】
変化型として、感光性半導体を1つ(またはそれ以上)のドーパントでドープすることが可能である。ドーパントは、半導体の機能として選択され、かつドーパントはp型またはn型である。ドーパントの選択およびドープする技術は当業者には慣用的な技術である。さらに具体的には、ドーパントは、ホウ素、窒素、リン、ニッケル、イオウ、アンチモンおよびヒ素、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される。例えば、ケイ素基体に関しては、最も一般的に用いられるp型のドーパントのうちで、特にホウ素を挙げることができ、そしてn型のドーパントに関しては、ヒ素、リンおよびアンチモンを挙げることができる。
【0023】
非導電性の材料、例えば、SiO、AlおよびMgOなどの非導電性酸化物から作製される基体に対してこのプロセスを適用することも可能である。
【0024】
さらに一般的には、無機基体は、例えば、アモルファス材料、例えば、一般にはケイ酸塩もしくはセラミックを含むガラスから、または結晶性材料、例えば、さらに組織化されていてもよいし、いなくてもよい、ダイヤモンド、グラファイト、例えば、グラフェンもしくは高配向性グラファイト(HOPG)、またはカーボンナノチューブから形成されてもよい。
【0025】
有機質の他の基体としては、特に天然のポリマー、例えば、ラテックスもしくはゴム、または人工的なポリマー、例えば、ポリアミドおよびポリアミド誘導体、ポリエチレン誘導体および特にn型の結合を含むポリマー、例えば、エチレン結合またはカルボニルもしくはイミン基を保有するポリマーを挙げることができる。このようなポリマーの特定の例としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン/ポリカーボネート(ABS/PC)を挙げることができる。このプロセスをさらに複雑な有機基体、例えば、皮革、多糖類を含む基体、例えば、木材または紙セルロース、人工または天然の繊維、例えば、綿またはフェルトに適用することも、そしてまた、ポリマーマトリクスまたは2ポリマー保有塩基基、例えば、三級もしくは二級のアミン、例えば、ポリ−4およびポリ−2−ビニルピリジン(P4VPおよびP2VP)などのピリジン、またはさらに一般的には芳香族基およびニトロ芳香族基を保有するポリマーに適用することも可能である。本発明の状況では、「ポリマーマトリクス」という用語は、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリカーボネートおよびポリエチレンテレフタレート、フッ化されるかまたはペルフルオロ化されることさえ有利であるこれらのポリマーから作製されるマトリクスを意味する。好都合なことには、このポリマーマトリクスは、フルオロポリマー、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとテトラフルオロプロピレンのコポリマー(FEP)、エチレンとテトラフルオロエチレンのコポリマー(ETFE)、ヘキサフルオロプロペンとフッ化ビニリデンのコポリマー(HFP−コ−VDF)、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンのコポリマー(VDF−co−TrFE)、ならびにフッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよびモノクロロトリフルオロエチレンのコポリマー(VDF−コ−TrFE−コ−クロロ−TrFE)から作製されるマトリクスから選択されてもよい。
【0026】
本発明の状況で用いられる基体の大きさは、ナノメートルであっても、マイクロメートルであっても、ミリメートルであっても、またはメートルであってもよい。具体的には、本発明は、ナノ粒子、マイクロ粒子、電子部品、鏡、装飾品、光学データ記憶ディスク(コンパクトディスク)、車体部品などに応用される。
【0027】
好都合なことには、本発明によるプロセスのグラフト化工程(a)は、化学的グラフト化工程、電気的グラフト化工程および放射化学的グラフト化工程からなる群より選択されるグラフト化工程である。
【0028】
本発明の状況では、「化学的グラフト化工程」という用語は、目的の表面と共有結合型の結合を形成し得る極めて反応性の分子種(典型的にはラジカル種)であって、それらをグラフト化することを意図している表面とは独立して生成される分子種を用いるグラフト化工程を意味する。従って、「ラジカルグラフト化工程」とは、このような「化学的グラフト化工程」である。
【0029】
さらに具体的には、化学的グラフト化工程を包含する上記のグラフト化工程(a)は:
)金属化されるべき上記基体を、少なくとも1つの接着プライマー、および必要に応じて、この接着プライマーとは異なる少なくとも1つのモノマーを含んでおり、かつラジカル重合を受け得る溶液Sと接触して配置する工程と;
)この溶液Sをこの接着プライマーからラジカル種の形成を可能にする非電気化学的条件に供する工程と;
によってなる工程を包含する。
【0030】
本発明の状況では、「接着プライマー」という用語は、特定の非電気化学的または電気化学的条件のもとで、ラジカルまたはイオンのいずれか、さらに具体的には陽イオンを形成し得、従って、化学的反応において沈殿し得る任意の有機分子を意味する。このような化学反応は特に、化学吸着、および具体的には化学グラフトまたは電気的グラフトであってもよい。従って、このような接着プライマーは、非電気化学的条件または電気化学的条件下で、基体の表面上に、特にラジカル反応によって化学吸着され得、この化学吸着後に別のラジカルに向かって反応性である別の機能を保有し得る。従って、このラジカル反応は、この表面とグラフト化接着プライマー誘導体との間の、次いでこのグラフト化誘導体とその環境に存在する分子、例えば、ラジカル重合化モノマーまたは他の接着プライマーとの間の共有結合の形成をもたらす。
【0031】
この接着プライマーは、アリールジアゾニウム塩、アリールアンモニウム塩、アリールホスホニウム塩、アリールヨードニウム塩およびアリールスルホニウム塩からなる群より選択される切断可能なアリール塩であることが有利である。これらの塩では、このアリール基は、下に規定されるようなRによって提示され得るアリール基である。
【0032】
切断可能なアリール塩のうちでも、下の式(I)の化合物を特に挙げることができる:
R−N,A (I)
ここで:
−Aは、一価の陰イオンであり、かつ
−Rは、アリール基である。
【0033】
切断可能なアリール塩の、特に上記の式(I)の化合物のアリール基としては、好都合なことには、各々が3〜8個の原子を含み、ヘテロ原子(単数または複数)が必要に応じてN、O、PまたはSである、1つ以上の芳香族またはヘテロ芳香族環から形成される、必要に応じて一置換されるかまたは多置換された芳香族またはヘテロ芳香族の炭素ベースの構造のアリール基が、挙げられ得る。置換基(単数または複数)は、1つ以上のヘテロ原子、例えば、N、O、F、Cl、P、Si、BrまたはSを含んでもよく、またC1〜C6アルキル基またはチオアルキル基、特にC4〜C12の基を含んでもよい。
【0034】
切断可能なアリール塩および特に上記の式(I)の化合物のうちでも、Rは好ましくは、電子求引性の基、例えば、−NO、ケトン、−CN、−COHおよびエステル、ならびにその塩で置換されたアリール基から選択される。
【0035】
上記の式(I)の化合物のうちで、Aは特に、無機の陰イオン、例えば、ハライド類、例えば、I、BrおよびCl、ハロホウ酸塩類、例えば、テトラフルオロホウ酸塩、過塩素酸塩およびスルホン酸塩、ならびに有機アニオン類、例えば、アルコキシド類およびカルボキシレート類から選択され得る。
【0036】
式(I)の化合物として、4−ニトロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩、トリデシルフルオロオクチルスルファミルベンゼンジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩、フェニルジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩、4−ニトロフェニルジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩、4−ブロモフェニルジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩、4−アミノフェニルジアゾニウムクロライド、2−メチル−4−クロロフェニルジアゾニウムクロライド、4−ベンゾイルベンゼンジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩、4−シアノフェニルジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩、4−カルボキシフェニルジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩、4−アセトアミドフェニルジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩、4−フェニル酢酸ジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩、2−メチル−4−[(2−メチルフェニル)ジアゼニル]ベンゼンジアゾニウムサルフェート、9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロ−1−アントラセンジアゾニウムクロライド、4−ニトロナフタレンジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩およびナフタレンジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩からなる群より選択される化合物を用いることが特に有利である。
【0037】
本発明の状況では、「接着プライマー誘導体」という用語は、接着プライマーから生じる化学的単位であって、それが表面と、化学的グラフト化によって、および必要に応じて環境中に存在する別の分子、例えば、接着プライマーまたはラジカル重合可能なモノマーとラジカル反応によって反応した後に、接着プライマーから生じる化学的単位を意味し、この他の分子は、有機フィルムの第二の単位を生じる。従って、この有機フィルムの第一の単位とは、表面とおよびその環境に存在する別の分子と反応した接着プライマー誘導体である。
【0038】
本発明のプロセスの状況で用いられるラジカル重合可能なモノマーとは、ラジカル化学種での開始後にラジカル重合を受けることができるモノマーに相当する。典型的には、それらは、エチレン型の少なくとも1つの結合を含む分子である。具体的には、重合可能なポリマーは、下記式(II)のモノマーから選択される。
【0039】
【化1】

【0040】
(式中、R〜R基は、同一であっても又は異なってもよく、ハロゲン原子若しくは水素原子のような非金属一価原子、アルキル基若しくはアリール基のような飽和若しくは不飽和の化学基、−COOR基若しくは−OC(O)R基(Rは、水素原子、若しくは、C−C12、好ましくはC−Cのアルキル基である)、ニトリル基、カルボニル基、アミン基又はアミド基を表す。)
【0041】
上記のラジカル重合可能なモノマーは、ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートおよびグリシジルメタクリレート、およびそれらの誘導体;アクリルアミドおよび特にアミノエチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルメタクリルアミド、シアノアクリレート、ジアクリレートおよびジメタクリレート、トリアクリレートおよびトリメタメタクリレート、テトラアクリレートおよびテトラメタクリレート(例えば、ペンタエリスリチルテトラメタクリレート)、スチレンおよびそれらの誘導体、パラ−クロロスチレン、ペンタフルオロスチレン、N−ビニルピロリドン、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ビニル、アクリロイルまたはメタクリロイルハライド、ジビニルベンゼン(DVB)およびさらに一般的にはビニルまたはアクリレート−またはメタクリレート−ベースの架橋剤、およびそれらの誘導体からなる群より選択されることが有利である。
【0042】
溶液Sはまた、溶媒を含んでもよい。この溶媒は、プロトン性溶媒または非プロトン性溶媒であってもよく。溶液Sの溶媒中に溶解されるように用いられる接着プライマーが好ましい。
【0043】
本発明の状況では、「プロトン性溶媒」という用語は、プロトン型で遊離され得る少なくとも1つの水素を含む溶媒を意味する。
【0044】
プロトン性溶媒は、水、脱イオン水および蒸留水(酸性であっても酸性でなくてもよい)、酢酸、水酸化溶媒、例えば、メタノールおよびエタノール、低分子量液体グリコール、例えば、エチレングリコール、ならびにそれらの混合物からなる群において選択されることが有利である。第一の変化型では、本発明の状況で用いられるプロトン性溶媒は、プロトン性溶媒によってのみ、または異なるプロトン性溶媒の混合物によって形成される。別の変化型では、プロトン性溶媒またはプロトン性溶媒の混合物は、少なくとも1つの非プロトン性溶媒との混合物として用いられてもよく、得られた混合物は、プロトン性溶媒の特徴を有することが理解される。
【0045】
本発明の状況では、「非プロトン性溶媒」という用語は、プロトン性とみなされない溶媒を意味する。このような溶媒は、プロトンの放出が不能であるか、または極端でない条件下ではプロトンを受容不能である。
【0046】
非プロトン性溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン、アセトニトリルジメチルスルホキシド(DMSO)および酢酸エチル、ならびにそれらの混合物から選択されることが有利である。
【0047】
接着プライマーは、溶液Sの溶媒に可溶性であることが好ましい。本発明の目的のためには、接着プライマーは、それが最大0.5Mの濃度まで可溶性のままである場合、すなわち、その溶解度が0.5Mに少なくとも等しく、かつ標準的な温度および圧力の条件(STP)の下である場合、所定の溶媒中で可溶性であると考えられる。溶解度は、所定の溶媒中の所定の溶質の割合の関数として飽和溶液の分析的組成として規定される;これは、特にモル濃度と表現され得る。化合物の所定の濃度を含む溶媒は、その濃度がその溶媒中でのその化合物の溶解度に等しい場合、飽和とみなされる。溶解度は、有限であっても無現であってもよい。後者の場合、化合物は、考慮される溶媒中で全ての割合で溶解性である。
【0048】
本発明によるプロセスに従って用いられる溶液Sに存在する接着プライマーの量は、実験者の希望の関数として変化し得る。この量は、特に有機フィルムの所望の厚みに、そしてまたフィルムに組み込むことが可能でありかつ想定可能である接着プライマーの量に関連する。従って、この溶液と接触する全体的な表面にまたがってグラフト化されたフィルムを得るためには、分子バルク計算によって推定することが可能な最小量の接着プライマーを用いることが必要である。本発明の1つの特に有利な実施形態によれば、液体溶液中の接着プライマーの濃度は、ほぼ10−6〜5M、好ましくは10−3〜10−1Mである。
【0049】
溶媒がプロトン溶媒である場合、そして有利には接着プライマーがアリールジアゾニウム塩である場合、溶液のpHは典型的には7未満である。接着プライマーの調製が、グラフト化工程と同じ媒体中で行われる場合、0〜3のpHで作業することが推奨される。必要に応じて、溶液のpHを、当業者に周知である1つ以上の酸性化剤を用いて、例えば、鉱酸または有機酸、例えば塩酸、硫酸などを用いて、所望の値に調整してもよい。
【0050】
接着プライマーは、前に規定されるように溶液Sに導入されてもよいし、またはその中でインサイチュで調製されてもよい。従って、1つの特定の実施形態では、本発明によるプロセスは、接着プライマーが特にアリールジアゾニウム塩である場合、接着プライマーを調製する工程を包含する。このような化合物は一般には、酸性媒体中でのNaNOとの反応によって、または有機媒体中でのNOBFとの反応によって、いくつかのアミン置換基を含み得る、アリールアミンから調製される。このようなインサイチュの調製のために用いられ得る実験的方法の詳細な説明については、当業者は、Belangerらによる記事、2006(Chem.Mater.,第18巻,4755〜4763頁)を挙げることができる。好ましくは、グラフト化工程は次にアリールジアゾニウム塩を調製するための溶液中で直接行われ得る。
【0051】
ラジカル重合可能なモノマーは、溶液Sの溶媒中で特定の割合まで可溶性であり得、すなわち、この溶媒中のその溶解度の値は有限であり、特に0.1M未満であり、かつ具体的には5×10−2〜10−6Mである。本発明はまた、前に記載される要素から選択される2、3、4またはそれ以上の要素の混合物に適用される。溶液S中のそれらのモノマーの量は、実験者の希望の関数として変化し得る。この量は、用いられる溶液Sの溶媒を考慮してその要素の溶解度よりも大きくてもよく、そして例えば、所定の温度、一般には室温または反応温度で溶液中でその要素の溶解度の18〜40倍に相当し得る。これらの条件下で、サーファクタントまたは超音波などの、溶液中のモノマー分子を分散するための手段を用いることが有利である。
【0052】
接着プライマーおよび必要に応じて少なくとも1つのラジカル重合可能なモノマーを含む溶液Sはまた、特にこのモノマー(単数または複数)の溶解度を改善するために、少なくとも1つのサーファクタントを含んでもよい。本発明の状況で用いられ得るサーファクタントの正確な説明は、当業者が挙げられる特許出願FR2897876に示される。単一のサーファクタントまたはいくつかのサーファクタントの混合物が用いられ得る。
【0053】
本発明の状況では、本発明によるプロセスの工程(b)で用いられる「非電気化学的条件」という用語は、電圧が存在しないことを意味する。従って、本発明によるプロセスの工程(b)で用いられる非電気化学的条件とは、有機フィルムがグラフト化される表面でいかなる電圧の印加も存在せずに、接着プライマーからのラジカル種の形成を可能にする条件である。これらの条件は、例えば、温度、溶媒の性質、特定の添加物の存在、攪拌および圧力などのようなパラメーターを包含するが、この電流は、ラジカル種の形成に関与しない。ラジカル種の形成を可能にする非電気化学的条件は、多数であり、この種類の反応は、公知であって、先行技術において詳細に研究されている(Rempp&Merrill,Polymer Synthesis,1991,65〜86,Huthig&Wepf)。
【0054】
従って、例えば、接着プライマーの熱的、動的、化学的、光化学的または放射化学的な環境を改変して、これを不安定化して、ラジカル種を形成することが可能である。言うまでもなく、これらのパラメーターのいくつかを同時に改善することが可能である。
【0055】
本発明の状況では、ラジカル種の形成を可能にする非電気化学的条件は、典型的には、熱的、動的、化学的、光化学的および放射化学的な条件、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される。非電気化学的条件は、熱的、化学的、光化学的および放射化学的な条件、ならびにそれらの組み合わせおよび/または動的条件との組み合わせからなる群より選択されることが有利である。本発明の状況で用いられる非電気化学的条件は、さらに具体的には化学的条件である。
【0056】
熱環境は、温度に依存する。これは、当業者にもよって通常用いられる加熱手段で制御することが容易である。熱安定的に制御される環境を用いることは、反応条件の正確な制御を可能にするので、特に有利である。
【0057】
この動的環境は本質的に、システムの攪拌に、および摩擦力に相当する。これは、この場合には、分子自体の動揺ではなく(結合の伸展など)、分子の全体的な動きである。特に圧力を加えることによって、システムにエネルギーを供給して接着プライマーを不安定化すること、および反応性種、特にラジカル種を形成できることが可能になる。
【0058】
最終的には、種々のタイプの放射線作用、例えば、電磁放射線、γ線照射、紫外線または電子ビームもしくはイオンビームによってもまた、接着プライマーを十分に不安定化して、ラジカルおよび/またはオンを形成することが可能になる。用いられる波長は、用いられるプライマーの関数として選択される。例えば、4−ヘキシルベンゼンジアゾニウムには、約306nmの波長が用いられる。
【0059】
化学的条件の状況では、1つ以上の化学的開始剤(単数または複数)を反応媒体中に用いる。化学的開始剤の存在は、上記で概説したとおり、非化学的条件と組み合される場合が多い。典型的には、化学的開始剤は、接着プライマーに対して作用して、それからラジカル種の形成を生じる。その作用が環境条件に本質的に関連せず、広範な熱的または動的条件にまたがって作用し得る、化学的開始剤を用いることも可能である。この開始剤は好ましくは、反応環境に、例えば溶媒に適している。
【0060】
多くの化学的開始剤が存在する。一般には、用いられる環境条件の関数として、3つの種類が区別される:
−熱的開始剤、最も一般的であって、過酸化物またはアゾ化合物である。熱の作用下で、これらの化合物は、フリーラジカルに解離される。この場合、この反応は、開始剤からのラジカルの形成に必要な温度に対応する最小温度で行われる。この種の化学的開始剤は一般には、その分解動態の関数として、特に特定の温度範囲内で用いられる;
−照射によって(通常UVによって、ただしまたγ線によって、または電子ビームによっても)誘発される放射線によって励起される光化学的または放射化学的開始剤であって、多かれ少なかれ複雑な機構を介してラジカルの産生を可能にする開始剤。なかでもBuSnHおよびIが、光化学的開始剤または放射化学的開始剤である。
−本質的に化学的開始剤であって、この種の開始剤は、急速にかつ標準的な温度および圧力条件下で接着プライマーに作用して、これがラジカルおよび/またはイオンを形成することを可能にする。このような開始剤は一般には、反応条件下で用いられる接着プライマーの還元電位よりも低い酸化還元電位を有する。プライマーの性質次第で、従って、これは還元性の金属、例えば、鉄、亜鉛またはニッケル;メタロセン、例えば、フェロセン;有機的還元剤、例えば、次亜リン酸(HPO)またはアスコルビン酸;有機塩基もしくは無機塩基(接着プライマーを不安定化するのに十分な割合)であってもよい。好都合なことには、化学的開始剤として用いられる還元的金属は、微細に分割された形態、例えば、金属のウール(より一般的には「スチールウール」としても公知)または金属のやすりかけ粉(filing)である。一般には、有機または無機の塩基が化学的開始剤として用いられる場合、4以上の大きさのpHが一般的には十分である。ラジカルリザーバー型の構造、例えば、電子ビームでもしくは重イオンのビームで、および/または前に言及した全ての照射手段で事前に照射されたポリマーマトリクスがまた、接着プライマーを安定化するために、および特にそれからラジカル種の形成をもたらすために化学的開始剤として用いられ得る。
【0061】
活性種の形成については、Mevellecらによる文献、2007(Chem. Mater.,vol.19,第6323〜6330頁)が適宜参照され得る。
【0062】
本発明によるプロセスの工程(a)の第二の変化型では、用いられるグラフト化工程は電気的グラフト化工程である。
【0063】
本発明の状況では、「電気的グラフト化工程」という用語は、導電性および/または半導体部分を含む、導電性もしくは半導体表面または複合表面上に、この表面と接触してこの接着プライマーを配置することによる、接着プライマー(電気的に活性化され得る)が電気開始され、かつ局在化されるというグラフト化工程のプロセスを指す。このプロセスでは、グラフト化工程は、導電性もしくは半導性表面に対して、またはこの導電性および/または半導性部分の選り抜きの既定の領域に対して、単一工程で電気化学的に行われる。この表面(またはこの領域)は、参照電極に対して決定された閾値電解強度以上の電位にされ、この閾値電極は、この接着プライマーのグラフト化工程が生じる電位を超える。一旦、この接着プライマーがグラフト化されれば、それらは、別のラジカルに対して反応性であり、かつ任意の電位とは独立してラジカル重合を誘発し得る別の機能を保有する。
【0064】
好都合なことには、この第二の変化型は:
)導電性または半導体の基体を、少なくとも1つの接着プライマー、および必要に応じて、この接着プライマー以外の少なくとも1つの重合可能なモノマーを含んでおり、かつ特に以前に規定したとおりラジカル重合を受け得る溶液Sと接触して配置する工程と;
)工程(a)において用いられるこの接着プライマーの還元電位よりもカソードの電位でこの基体を分極する工程と;
によってなる工程を包含し、
工程(a)および(b)は任意の順序で行われる。
【0065】
この変化型は、以前に規定されたとおりの導電性または半導体基体にあてはまる。
【0066】
従って、本発明の状況で用いられる基体が、前に規定されたとおりの感光性 半導体材料である場合、このプロセスはまた、そのエネルギーがこの半導体のギャップのものと少なくとも等しい光放射に対してこの基体を曝す工程によってなる工程(c)を包含する。この特定の実施形態に関するさらなる詳細については、仏国特許第2921516号として公開された特許出願を参照すべきである。
【0067】
化学的グラフト化工程の状況で、接着プライマーについて、ラジカル重合可能なモノマー(単数または複数)について、溶液S、すなわち、溶媒について、接着プライマーおよび重合可能なモノマーの量、接着プライマーのインサイチュでの調製、およびサーファクタントの潜在的な存在について記載されている全てがまた、電気的グラフト化工程にあてはまる。しかし、溶液Sの溶媒は前に規定されるようなプロトン性溶媒であることが有利であるという点を指摘しなければならない。
【0068】
本発明によれば、本発明によるプロセスの工程(b)において用いられる電位について、用いられ、かつ表面で反応する接着プライマーの還元電位に近いことが好ましい。従って、適用される電位の値は、接着プライマーの還元電位よりも最大50%まで高くてもよく;さらに典型的には、30%より大きくはない。
【0069】
本発明のこの変化型は、以下の異なる電極を備える電解セル中で用いられ得る:フィルムを受容するように意図された表面を構成する第一の作用電極、対電極および必要に応じて参照電極。
【0070】
この表面の分極は、当業者に公知の任意の技術によって、かつ特に線形もしくは環状のボルタメトリー条件下、定電位的、動電位的、インテンシオスタティックな(intensiostatic)、定電流的または動電流的な条件、あるいは簡易またはパルスのクロノアンペロメトリーによって行われ得る。本発明によるプロセスはスタティックまたはパルスのクロノアンペロメトリー条件下で行われることが有利である。スタティックモードでは、この電極は、一般に2時間未満の期間、典型的には1時間未満、例えば20分未満分極される。パルスモードでは、パルスの数は、優先的に1〜1000、さらに優先的には1〜100であり、それらの期間は一般には100ms〜5秒、典型的には1秒である。
【0071】
本発明の状況では、「放射化学グラフト化工程」という用語は、反応、特にラジカル反応(事前に照射されているポリマーマトリクスなどの基体を含む)によるグラフト化工程を意味する。従って、この変化型は主に、有機基体に、そして具体的には、前に規定されたようなポリマーマトリクスの基体に適用される。
【0072】
さらに具体的には、放射グラフト化工程を包含する上記グラフト化工程は:
)特に前に規定されたようにポリマーマトリクス型の基体を照射する工程と;
)工程(a)において得られる照射された基体を、少なくとも1つの接着プライマーおよび/または少なくとも1つのラジカル重合可能なモノマーと接触して配置する工程と;
によってなる工程を包含する。
【0073】
上記照射工程(a)は、上記マトリクスの構成材料中にフリーラジカルを創出する機能を有し、このフリーラジカルの創出は、この材料の照射の間のエネルギー伝達の結果である。
【0074】
工程(a)の第一の変化型では、この工程は、前記ポリマーマトリクスを電子ビーム(「電子照射」として公知の変化型)に供する工程にあり得る。さらに具体的には、この工程は、特に電子加速器(例えば、2.5MeVのVan der Graaf加速器)から放出される、加速された電子のビームでポリマーマトリクスをスキャンする工程によってなり得る。電子ビームでの照射の場合、エネルギー付与は均一であって、このことは、この照射によって創出されるフリーラジカルがマトリクスの容積に均一に分布されることを意味する。この照射は一般には10〜500kGy、特に50〜150kGyにわたる。
【0075】
工程(a)の第二の変化型では、この工程は、前記ポリマーマトリクスを重イオンでの、特に重イオンのビームでのボンバードメントに対して供する工程によってなり得る。「重イオン」という用語は、質量が炭素よりも大きいイオンを意味する。一般には、それらは、クリプトン、鉛およびキセノンから選択されるイオンである。
【0076】
機構的な観点から、エネルギーベクターの重イオンがマトリクスを横切る場合、その速度は低下する。イオンがそのエネルギーを生み出し、損傷された領域を創出し、その形状はほぼ円柱状である。これらの領域は「レイタントトレース(latent traces)」としても公知であり、以下の2つの領域:このトレースのコアおよびハロを含む。このトレースのコアは完全に分解された領域、すなわち、フリーラジカルを生成する材料の構成的結合の破壊がある領域である。このコアはまた、重イオンが材料の電子に対してかなりの量のエネルギーを移行する領域である。次に、このコアから、第二の電子の放出があり、これがコアからかなり離れた欠陥を生じ、これによってハロが生成される。
【0077】
重イオンでの照射の場合、エネルギー付与は、照射角度の関数として分布され、かつ不均一である。所定のパターンで配置されたトレースを創出し、これによって結果として、上述のトレースにおいてのみ、接着プライマー由来および/またはラジカル重合可能モノマー由来の単位のグラフト化を誘導することが可能で、これによって「グラフト化ドメイン(grafting domains)」を形成する。従って、マトリクスの正常な表面に対して特に照射角度を変えることによって、異なるグラフト化パターンを誘導することが可能である。この照射は一般には1〜1000kGyにおよぶ。
【0078】
工程(a)の第三の変化型では、この工程は、上記ポリマーマトリクスを(i)重イオンでの照射、(ii)続いて、この重イオンの通過(その後に開口チャネルが得られる)によって創出されたレイタントトレースの一般には加水分解による化学的曝露に供する工程、次いで(iii)この開口チャネル(これから放射グラフト化工程が進行し得る)の以前に規定されたような電子照射に供する工程によってなり得る。この化学的曝露は、照射(i)の間の材料への重イオンの通過の間に既存の鎖の分割(切断)によって形成された短いポリマー鎖を保有するレイタントトレースを加水分解し得る試薬と接触してこのマトリクスを配置し、それによってその位置で中空チャネルを形成する工程にあり、この曝露の間の加水分解の速度は、照射されてない部分の速度よりも大きい。レイタントトレースの曝露を確立できる試薬(選択性であってもよい)は、このマトリクスの構成材料に依存する。前に記載されるようなフルオロポリマーに関しては、強力に塩基性でかつ酸性の溶液、例えば、65℃の温度で0.25重量%のKMnOの存在下の10NのKOH溶液が用いられてもよく、かつポリエチレンテレフタレートまたはポリカーボネートなどのポリマーに関しては、塩基性溶液が、必要に応じてトレースのUV感作と組み合わせて用いられてもよい。この処理は、中空円柱状細孔の形成をもたらし、その細孔の直径は、塩基性酸化的溶液での攻撃の時間の関数として改変され得る。一般には重イオンでの照射は、膜が1cmあたり10〜1011、特に5×10〜5×1010、より特異的には約1010というトレース数を含むように行われる。上記マトリクスの構成材料の関数として化学的曝露に用いられ得る試薬および操作条件に関する他の情報は、Rev.Mod.Phys.,1983,55,p−925に見出され得る。
【0079】
この曝露工程の後、電子照射(iii)を行って、チャネルの壁に対してフリーラジカルの形成を誘導し、この場合の実行は、電子照射一般に概説されたものと同様であり、かつ細孔を満たすためのポリマーコーティングの形成を可能にする。一般には、ビームを膜の表面に対して通常の方向に配置し、その表面を均一にスキャンする。照射用量は一般には、その後の放射グラフト化工程については10〜200kGyにおよび、かつ典型的にはPVDFに関しては100kGyに近い。この用量は一般には、ゲル用量よりも高いような用量であり、これの用量はその用量以上であって、ラジカルの間の組み合わせが促進される用量に相当し、三次元の網目状構造(または架橋)の形成、すなわちゲルの形成をもたらす鎖間結合の創出を生じ、そのため同時に架橋が誘導され、これによって最終ポリマーの機械的特性を改善することができるようになる。従って、PVDFに関しては、その用量は、少なくとも30kGyに等しくなければならないことが推奨される。
【0080】
工程(a)の第四の変化型では、この工程は、上記ポリマーマトリクスをUV照射に対して供する工程によってなる。この変化型では、UV照射は、その強度およびその期間の関数であって、マトリクスのバルク中にまたは表面でのみ均一に分配されたフリーラジカルの形成を生じ得る。さらに、実験の節のパラグラフI.1.gに提示されるとおり、UV照射は、フリーラジカルの創出の前にポリマーマトリクスの欠陥および不純物の活性化を生じ得る。好都合なことには、UV照射は、任意のUV照射ランプ、例えば、特に172nmで(ポリマーマトリクスの表面およびバルク改変)、V−UV範囲でインコヒーレント放射を放射するエキシマーランプ、または320〜500nmで放射するUVランプ(ポリマーマトリクスの表面改変)によって行われ得る。照射は、連続的であってもまたは逐次的であってもよい。連続照射の期間は一般には、5分〜1時間に、特に15分〜45分におよぶ。逐次的照射の場合には、ポリマーマトリクスは、同一または異なる期間および強度の3つ以上の照射に供され得る。これらの照射の期間は一般には、5〜30分、特に10〜20分におよぶ。
【0081】
前に言及したとおり、ポリマーマトリクスの照射の工程(a)によって、そのマトリクスの材料中の欠陥および不純物の活性化に由来する非ラジカル反応性種の前の創出を一般に介して、フリーラジカルを創出することができるようになる。
【0082】
このような照射されたマトリクスに存在し、かつ工程(a)の任意の変化型の後に得られたラジカルおよび反応性種は、ポリマー材料中の結晶性ドメインに相当し、かつ一般には微結晶として公知のポリマーの結晶にトラップされ得、それによってこのマトリクスの寿命は照射型では延長する。従って、微結晶を、好ましくは30%〜50%、一般には40%含むマトリクスを用いることが推奨される。従って、このような照射されたマトリクスは、直ちに用いられてもよいし、または不活性な雰囲気、例えば、窒素下で、かつ一般には冷却して(−18℃)使用前に、特に工程(b)を行う前に、数カ月間にわたって貯蔵されてもよい。
【0083】
工程(b)の間、接着プライマーおよびラジカル重合可能なモノマーは、前に規定のとおりであり、かつ特に、前に規定のような式(I)または(II)の化合物の形態である。このプライマーまたはモノマーは、一方ではフリーラジカルと反応して、マトリクスと共有結合を形成し得、かつ他方では、他のプライマーおよび/または他のラジカル重合可能なモノマーを含むラジカル重合反応を開始し得る。工程(b)の間に用いられるプライマー(単数または複数)(の混合物)および/またはモノマー(単数または複数)(の混合物)は、前に規定のとおりプロトン性溶媒または非プロトン性溶媒の存在下で溶液S中であることが好都合である。工程(b)の間に用いられ得るプロトン性溶媒および非プロトン性溶媒としては、それぞれ水および酢酸エチルの溶媒を挙げることができる。
【0084】
溶液S中に存在する接着プライマー(単数または複数)および/またはモノマー(単数または複数)の量は、前に規定のように溶液SおよびS中のこれらの成分の量と同一である。前に規定されるようなサーファクタントの存在も可能である。例として、溶液Sがモノマー(単数または複数)(またはその混合物)を一つだけ含む場合、その量は、溶液Sの中で10重量%〜90重量%である。溶液Sはまた、モール塩のような用いられるモノマーのホモ重合を制限する化合物を、0.01重量%〜1重量%、特に0.05重量%〜0.5重量%の量で含んでもよい。
【0085】
工程(b)、(b)および(b)の後、従って本発明による工程(a)の後、上記基体は、その表面上におよび/またはそのバルク内にグラフトされた少なくとも1つのポリマー型の化合物を保有する。
【0086】
本発明の状況で用いられるポリマー型の化合物は、以下から調製され得る:
(i’)前に規定されるような接着プライマー(単数または複数)の1つ(またはその混合物)(化学的グラフト化工程、電気的グラフト化工程または放射グラフト化工程);
(ii’)前に規定されるようなラジカル重合可能モノマー(単数または複数)の1つ(またはその混合物)と混合された、前に規定されるような接着プライマー(単数または複数)の1つ(またはその混合物)(化学的グラフト化工程、電気的グラフト化工程または放射グラフト化工程);
(iii’)前に規定されるようなラジカル重合可能モノマー(単数または複数)の1つ(またはその混合物)(放射グラフト化工程);
【0087】
従って、グラフト化工程の後に得られた化合物は、このグラフト化工程が放射グラフト化型の工程である場合、およびこの化合物がこのグラフト化工程の間に用いられるラジカル重合可能なモノマー(単数または複数)である同一または異なる化学種のいくつかのモノマー単位由来である場合、ポリマーまたはコポリマーである。
【0088】
得られた化合物はまた、いくつかの同一もしくは異なるラジカル重合可能なモノマー単位由来、および/または接着プライマー分子(上記の(ii’)の場合)由来の「本質的に」ポリマーであってもまたはコポリマーであってもよい。得られた化合物は、フィルムが、存在するモノマー由来のものだけでなく、接着プライマー由来の種も組み込む場合、「本質的に」ポリマー型の化合物である。グラフト化工程後に得られた化合物は、モノマー単位(または部分)の配列を有し、ここでは最初の部分(または第一の単位)は接着プライマー誘導体から形成されるか、または接着プライマー由来であり、他の部分(または単位)は、優先ではないが、接着プライマーから、および/または重合可能なモノマーから誘導されるかまたは得られる。
【0089】
さらに、上記の例(i’)の場合、接着プライマー分子は、ラジカル反応を介して、それらが、比較的高分子量の分子(その構造は、接着プライマー分子から実際にまたは概念的に由来する多重反復単位から本質的に形成される)の形成をもたらし得る限り、重合可能と呼ばれ得る。化学的グラフト化工程、電気的グラフト化工程,電気的グラフト化工程または放射グラフト化工程が、同一または異なる接着プライマー分子の存在下でのみ行われる場合、この工程後に得られた化合物は、同一または異なる接着プライマーに由来するかまたはそれから得られる単位からのみ形成され得る。
【0090】
これらの理由によって、工程(a)の任意の変化型の後に得られた化合物は、ポリマー型の化合物である。
【0091】
ポリマー型の化合物(単数または複数)の平均長は、本発明のグラフト形成プロセスに用いられる変化型にかかわらず容易に制御可能である。工程(b)、(b)または(b)の期間などの各々のパラメーターに関して、および使用する試薬の関数として、当業者は、所定の長さの化合物を得るための最適条件を反復することによって決定し得る。ポリマー型のいくつかの化合物が基体上にグラフト化され得る(可能性としては、基体上に創出された各々のフリーラジカル上にグラフト化される(放射グラフト化工程または電気的グラフト化工程)または基体上にグラフト化される(化学的グラフト化工程))ので、工程(a)の後に得られたポリマー型の化合物は、有機フィルムの形態であってもよい。
【0092】
好都合なことには、本発明によるプロセスは、グラフト化工程(化学的、電気的または放射のグラフト化工程)の前に、有機フィルムをグラフト化するための所望される表面を、特に、バフ研磨(buffing)、研磨(polishing)、酸化処理および/または摩耗(abrasive)処理によって浄化するという追加の工程を包含する。エタノール、アセトンまたはジメチルホルムアミド(DMF)などの有機溶媒での超音波処理に加えた処理さえも推奨される。基体を損なわないように溶媒を選択することが好ましい。
【0093】
従って、1つの特定の実施形態によれば、基体は、工程(a)の前に酸化的前処理を受ける。この方式は特に、有機質の基体に、さらに具体的にはポリマーにあてはまる。このような処理は特に、Garbassi,F.Morra,M.Occhiello,E.Polymer Surfaces From Physics to Technology.1995.John Wiley & Sons Ltd,Englandに記載されている。
【0094】
前処理の適用によって、表面の酸化および/または摩耗(abrasion)が可能になる。
【0095】
物理的酸化処理は、化学的酸化処理とは区別され得る。物理的処理のうち、特に以下を挙げることができる:
−「火炎処理」または「火炎殺菌」:火炎に対する曝露、
−コロナ効果による処理:電気アークの形成を生じない特定の電位に提供される導電体を囲むイオン化媒体に対する曝露、
−プラズマ処理:プラズマ、一般にはコールドプラズマ(このプラズマに含まれる反応性種のイオン化の程度は10−4未満である(全体としては5000K未満))に対する曝露、
−UV処理:酸素またはオゾンの存在下でのUV照射に対する曝露、
−x線またはγ線処理:酸素の存在下における高エネルギー粒子に対する曝露、
−電子でまたは重イオンでの照射による処理:酸素の存在下における電子または重イオンのビームに対する曝露(Zenkiewicz,M.ら、Applied Surface Science.2007.253,8992〜8999)。
【0096】
化学処理のうち、特に以下を挙げることができる:
−フェントン型の化学反応:金属イオンおよび過酸化水素の存在下における酸化に対応、
−アルコール性水酸化カリウムでの酸化、
−化学的酸化剤での、例えば、非限定的には、KMnO/HSO、KCr/HSO、KClO/HSO、CrO/HSOなどでの処理、
−オゾンでの処理:オゾン流に対する曝露、
−電気化学的処理:電圧の存在下での電解槽に対する曝露(Brewis,D.M.;Dahm,R.H.International Journal of Adhesion & Adhesives.2001.21,397〜409)。
【0097】
酸化的処理によって、特にグラフト化工程の質を改善することおよびこの工程の間の反応時間の減少が可能になる。
【0098】
本発明によるプロセスの工程(a)の後にグラフト化されるポリマー型の化合物は、もともと、少なくとも1つの金属イオンをキレート化(錯化)し得ることが有利である。特に、それが得られる、ラジカル重合可能なモノマー(単数または複数)および/または接着プライマー(単数または複数)のおかげで、有機フィルムは、少なくとも1つの金属イオンをキレート化(錯化)し得る少なくとも1つの構造を保有する。この変異型では、このプロセスの工程(b)は任意である。
【0099】
少なくとも1つの金属イオンをキレート化(錯化)し得る基(または構造)は分子構造であって、これは好都合には、陽イオンを錯化するために、中性でありすなわち、孤立電子対を保有する構造であり、従って、非四級化窒素原子、イオウ原子または酸素原子を含む。好都合なことには、少なくとも1つの金属イオンをキレート化(錯化)し得る基(または構造)は、アミン、アミド、エーテル、カルボニル、カルボキシル、カルボキシレート、ホスフィン、ホスフィンオキシド、チオエーテル、ジスルフィド、尿素、クラウンエーテル、アザクラウン、チオクラウン、クリプタンド、セパルクランド(セパルクレート)、ポダンド、ポルフィリン、例えば、テトラキス(安息香酸)−4,4’,4’’,4’’’−(ポルフィリン−5,10,15,20−テトライル)、カリックスアレーン、例えば、カリックス[4]アレーン、ピリジン、ビピリジン、ターピリジン、キノリン、オルト−フェナントロリン化合物、ナフトール、イソナフトール、チオ尿素、シデロホア、抗生物質、エチレングリコール、シクロデキストリン(CD)、例えば、天然のシクロデキストリンおよびパラヒドロシクロデキストリン誘導体、ならびにまたこれらの官能基で置換されるかおよび/または官能化された分子構造、および/または種々のレドックス型の1つ以上の錯化空洞(単数または複数)からなる群より選択される。このような基(または構造)に関するさらなる詳細に関しては、当業者は、特許出願である、仏国特許2813208号および同第2851181号を参考にし得る。
【0100】
従って、この変化型で用いられ得る接着プライマーおよびラジカル重合可能なモノマーは、上記で列挙される少なくとも1つの金属イオンでキレート化(錯化)し得る基(または構造)であるか、またはこのような基で置換される、前に規定されるような、R、R、R、RおよびRのうちから少なくとも1つの基を保有する。挙げることができる例としては、アクリル酸;4−カルボキシフェニルジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩;メチルメタクリレート(エステルのメチル基はクラウンエーテルで置き換えられている);4−ビニルピリジンおよびアミノエチル、プロピル、ブチル、ペンチル、およびヘキシルメタクリルアミドが挙げられる。
【0101】
変化型としては、本発明によるプロセスの工程(a)の後にグラフト化されるポリマー型の化合物は、少なくとも1つの金属イオンをキレート化(錯化)できない。従って、ポリマー型のこの化合物は、少なくとも1つの金属イオンをキレート化し得る基または構造で官能化することを可能にする条件に供されなければならず、そして本発明によるプロセスの工程(b)は絶対的なものである。
【0102】
従って、接着プライマー(単数または複数)および/またはラジカル重合可能なモノマー(単数または複数)が、金属イオンをキレート化し得る1つ以上の前駆体(単数または複数)または構造の基を保有する場合、工程(b)は、1つ以上の単純な化学反応を用いてポリマー型の化合物によって保有される前駆体(単数または複数)の修飾を行う工程によってなる。例として、少なくとも1つの単位が4−ニトロフェニルジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩由来であるポリマー型の化合物について、ニトロ官能基は、鉄で還元されて、金属イオンをキレート化し得る基としてアミンを有するポリマー型の化合物が生じる。同様にニトリル基を含むポリアクリロニトリルポリマーは、LiAlHでの処理後に、金属イオンをキレート化し得る基としてアミンを含む化合物に接近する。実用目的では、当業者は、国際特許出願WO 2004/005 410を挙げることができる。
【0103】
同様に、この官能化は、求核性の添加および置換、求電子性の添加および置換、付加環化、再構成、転位およびメタセシス、かつまたさらに一般的には、クリック化学反応などの他の化学反応を包含し得る(Sharplesら、Angew.Chem.Int.Ed.,2001,40,2004〜2021)。このような反応は、シクロデキストリン、カリックスアレーンまたはポルフィリンを含む構造(この構造はまた、ポリマー型の化合物の基と反応し得る別の基も含む)で工程(a)で得られたポリマー型の化合物を官能化するために行われ得る。
【0104】
ポリマー型の化合物の官能化は、この化合物の表面に基を含み得るがまた、特にこの化合物が重イオンで照射されたポリマーマトリクス上に放射グラフト化され従ってレイタントトレースを保有する場合、接近性が少ない基も含み得る。工程(b)は、膨潤性の溶媒および溶液を用いてもよい。膨潤溶媒とは、ポリマー型の化合物に浸透し得る溶媒に相当する。このような溶媒は、ポリマー型の化合物と接触して配置された場合、一般には、光学的方法によって、裸眼で、または簡易な光学顕微鏡によって知覚できるほどのこの化合物の膨潤をもたらす。溶媒がポリマー型の化合物に特に適しているか否かを決定するための標準的試験は、この化合物の表面に対して溶媒を滴下する工程、およびこの液滴がこの化合物に吸収されるか否かを観察する工程によってなる。試験される溶媒のセットのうちでも、吸収が最速であるものを用いることが望ましい。このような溶媒の使用によって、ポリマー型の化合物においてより深い深度の官能化がもたらされる。言うまでもないが、反応を行うために用いる試薬は、このような溶媒中に可溶性であることも好ましい。
【0105】
本発明によるプロセスの工程(c)は、金属イオンをキレート化(または錯化)し得るポリマー型の化合物を、このような金属イオンと接触して配置する工程によってなる。従ってこの工程(c)はキレート化(または錯体形成)工程である。
【0106】
本発明の状況では、「金属イオン」という用語は、Mn+型のイオンを意味し、ここでMは金属であって、かつnは1〜7の整数、一般には1〜4の整数である。典型的には、これは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、卑金属(特にAl、Ga、In、Sn、Pb、TlまたはBi)または遷移金属のイオンである。本発明は、さらに具体的には、遷移金属のイオンに関する。本発明による金属イオンは、Ag、Ag2+、Ag3+、Au、Au3+、Cd2+、Co2+、Cr2+、Cu、Cu2+、Fe2+、Hg2+、Mn2+、Ni2+、Pd、Pt、Ti4+およびZn2+からなる群において選択されることが有利である。
【0107】
本発明によるプロセスの工程(c)の間、金属イオンは、生理食塩水溶液S中に、好都合には、水性の生理食塩水溶液中に、アニオン性対イオンの存在下にある。用いられ得るアニオン性対イオンとしては、塩素イオン(Cl)、臭素イオン(Br)、フッ素イオン(F)、ヨウ素イオン(I)、硫酸塩イオン(SO2−)、硝酸塩イオン(NO)またはリン酸塩イオン(PO3−)を挙げることができる。
【0108】
工程(c)の間に用いられる生理食塩水溶液のpHは、特にポリマー型の化合物によって保持される金属イオンをキレート化し得る基(または構造)が、このキレート化に適切である形態、例えばイオン化型であるためには、制御する必要があり得る。当業者は、ポリマー型の化合物または溶液Sの化合物によって保持されるキレート化基の関数として、この溶液のpHを変更する必要があるか否かを承知している。もし改変が必要であれば、当業者は、CHCOOH/NHまたはCHCOOH/NaOHのようなpHを改変し得る種々の酸/塩基の対を公知である。
【0109】
最終的に、キレート化工程(c)は、特に、スターラー、磁性バー、超音波処理槽またはホモジナイザーを用いる攪拌で、60℃未満の温度で、特に5〜50℃、具体的には10〜40℃で行われ得る。本発明による工程(c)は、1つ以上の特定の実施形態で、室温で行われる。「室温」という用語は、20℃±5℃を意味する。
【0110】
1つの特定の方式によれば、工程(a)、(b)および(c)は、同時に行われる。これらの条件下では、用いられ得る溶液は、考慮中の工程を行うのに必要な種を含む同じ反応性溶液Sに相当する。
【0111】
本発明によるプロセスの工程(d)は、ポリマー型の化合物によってキレート化された(または錯化された)金属イオンを還元する工程によってなる。当業者に公知の任意の還元技術は、この工程の間に用いられ得る。好都合なことには、この還元工程は、化学的還元、光化学的還元または電気化学的還元(特に基体が導電性である場合)である。
【0112】
本発明による工程(d)が化学的還元工程である場合、この工程は、還元溶液Sを用いる。この還元溶液Sは塩基性であることが有利である。この還元溶液Sは、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、ジメチルアミノボラン(DMAB)−H(CHNBHおよびヒドラジン(N)からなる群より特に選択される還元剤を含む。還元剤がNaBHである場合、還元溶液SのpHは、中性または塩基性であるが、DMABについては、溶液SのpHは塩基性である。還元剤は、還元溶液S中に、10−4〜5Mの濃度、特に0.01〜1Mおよび詳細には約0.1M(すなわち、0.1M±0.01M)の濃度で存在する。化学的還元工程は、30〜90℃の温度、特に40〜80℃、具体的には、50〜80℃の温度で行われてもよい。さらに、化学的還元工程(d)は、30秒〜1時間、特に1〜30分、そして具体的には2〜20分存続し得る。
【0113】
本発明による工程(d)が電機化学的還元工程である場合、この工程は、電気化学セル(電池)を用いてもよく、ここで工程(c)後に得られた基体(すなわち、上に金属イオンをキレート化するポリマー型の化合物がグラフト化される基体)は、KCl飽和カロメル電極などの参照電極、およびグラファイト対電極などの対電極の存在下で、測定電極として機能する。
【0114】
この電気化学セル(電池)では、電極は、前に規定のとおり、極性溶媒、少なくとも1つの金属イオンおよび少なくとも1つの対イオンを含む溶液S中に配置される。この量(イオン+対イオン)は、溶液Sの0.1〜100g/L、特に0.5〜50g/L、具体的には1〜20g/Lにおよび得る。溶液Sに存在するイオンおよび対イオンから、その初期電位を、当業者は、このサイクルの間の期間およびサイクリック・ボルタンメトリープロフィールおよび課された電圧などの還元工程(c)の最適条件を繰り返すことによって決定し得る。
【0115】
本発明による工程(d)は、光化学的還元工程であり得る。典型的には、Ag、Pt、Pd、およびAuイオンは、UV照射によって還元され得る(Redjala Tら、New Journal Of Chemistry,Vol.32,Issue 8,2008.;Eda Ozkaraoglu,Ilknur Tunc and Sefik Suzer,Polymer,Vol.50,Issue 2,2009)。一般には、この還元は、典型的には、UV照射に供された場合、金属イオンの還元に必要な電極を提供する対イオンまたは有機分子であり得る中間体に関与する。さらに、この種のプロセスは、線形の光学現象および非線形の光学現象(典型的には多光子プロセス)を包含し得る。レーザーの使用によって、金属の析出のナノ構造化またはマイクロ構造化を得ることが可能になり得る(Tanaka T.,Ishikawa A.,Kawata S.,Applied Physics Letters,第88巻,第8号,2006;Kaneko K.,Sun H.B.,Duan X.M.,Kawata S.,Applied Physics Letters,第83巻、第7号,2003)。この光化学的還元は、溶液S中で行われることが有利である。前に規定されるような溶液Sの種々の特徴および特性もまた、溶液Sにあてはまる。
【0116】
基体上にグラフト化されたポリマー型の化合物上にもしくは中にキレート化された金属イオンの化学的還元、または測定電極上への金属の電気化学的析出(すなわち、基体上にグラフト化されたポリマー型の化合物の化合物上にまたは中へ)は、容易に、典型的には、視覚的におよび特に裸眼で証明可能である。
【0117】
単一工程(c)の使用および単一工程(d)の使用は、所望の金属化を達成するのには十分でなくてもよいことが指摘されるべきである。この場合、新工程(c)および新工程(d)での少なくとも1回の新サイクルが行われなければならない。最初のキレート化/還元サイクル後に、1〜20回の追加サイクル、特に1〜15回の追加のサイクル、具体的には1〜10回の追加のサイクルを行うことが予測され得る。「追加サイクル」という用語は、工程(c)続いて工程(d)を意味する。1サイクルから別のサイクルへ、この条件は以下であり得る:
−同じ条件(キレート化工程の間の同じ条件、ならびに特に同じキレート化溶液Sまたは同じ組成物のキレート化溶液S;同じ種類の還元および還元条件;同じ還元溶液Sまたは同じ組成物の還元溶液S);
−わずかに異なる条件(キレート化工程の間の同様の条件、および特に同様の組成のキレート化溶液S、および/または同様の条件の同じ種類の還元、および特に同様の組成の還元溶液S);
−異なる、特に還元の種類が変化している条件。予測され得る例としては、化学的還元による第一サイクル、その次の、前に規定されたような電気化学的還元による第二サイクルが挙げられる。
【0118】
数回のキレート化/還元サイクルにかかわらず、金属のなんらの形成もできないが、金属イオンのものよりも還元型の形成だけ、すなわち金属酸化物があり得るということも指摘されるべきである。この変化型は、考慮している金属、還元工程の間の条件、および環境、特に酸素の存在に依存する。条件の適切な選択(例えば、化学的還元の状況における還元剤の酸化還元電位)によって、所望の種類の金属種を得ることが可能になる。実験条件を改変することによって、種々の金属種(金属または金属酸化物およびまた金属イオン)を含む金属化基体を得ることが可能になる。
【0119】
本発明の一実施形態によれば、上記プロセスは、基体の一部にのみ適用され、従って、選択的に金属化された基体を調製することが可能である。このために、この基体の唯一(または複数)の所定の表面(単数または複数)を選択的にこのプロセスの特定の工程に曝すか、あるいはこのプロセスによって処理されてはならない1つ(または複数)の表面(単数または複数)をマスクすることが可能である。
【0120】
マスク、またはパッドとは典型的には、処理されるべきでない表面に対してグラフト化されることもなく、そこに共有結合されることもない物理的実体に相当する。これは、特に、その表面上に沈着された、バルク材または薄層の材料で、典型的には2〜3オングストロームから2〜3ミクロンの、一般的には有機質の材料であり得る。
【0121】
マスクによって、基体の化学的反応性を局所的に「マスク」することが可能になり、このマスクを装着されている基体の表面ゾーンは、反応環境(例えば、化学的環境または放射化学的環境)から保護される。マスクを取り除いた後、保護された表面は、マスクを装着されなかった表面とは異なり、反応しない。
【0122】
マスクは例えば、穏やかな条件下で容易に除去され得る粘着力の少ない層として機能する無機または有機材料の薄層から形成され得る。材料の層は、除去するために金属化基体に対して有害な過度の条件の使用を必要としない限りそのようなものとして考えられる。典型的には、穏やかな条件とは、通常はマスクが溶解性である溶媒を用いて行われる単純な化学的洗浄、マスクが溶解性である溶媒中での超音波処理、または温度の上昇に相当する。言うまでもないが、考慮している工程で用いられる溶媒においてマスクは溶解されないことが望ましい。従って、反応溶媒についてよりも表面について高い親和性を有するマスクを用いることが推奨される。
【0123】
従って、マスクを構成する材料は広範な範囲内で選択され得る。これは一般には基体の性質の関数として選択される。
【0124】
マスクは、プロセスの間に生成される種と反応し得る。いずれにしても、これを取り除いて基体の表面の保護された領域を露出することが可能である(これは、リソグラフィーにおける「リフトオフ(lift−off)」法に関連し得る)。
【0125】
マスク蒸着(deposition)技術は、当業者に周知である。一例としては、特に、コーティング、蒸発(気化)または浸漬であり得る。従って、マスクは材料の薄層の形態で例えば、選択材料で含浸されたフェルト(ペンシル型)を用いる直接描画によって蒸着されてもよい。ガラス上では、例えば、文房具屋で販売されているマーカー、あるいは脂肪性物質などのマーカーをマスクとして用いることが可能である。「詰め物(padding)」技術を用いることも可能である。この技術は、特に、金表面などの、イオウ原子を錯化するための表面を有する基体の場合に適用可能である;この場合、マスクは一般に、アルキルチオール、具体的にはC15−C20である場合が多い長鎖アルキルチオールおよび典型的にはC18から構成される(ミクロ接触プリンティングとして公知の技術)。さらに一般的には、標準的なリソグラフィー技術(スピンコーティング、続いて物理的なマスクを通じた、または光のもしくは粒子のガイド可能なビームを介した露出(exposure)、続いて曝露(revelation))を用いて、マスクを形成してもよい。
【0126】
本発明はまた、前に規定された本発明のプロセスの工程(a)または工程(b)の後に得られ得る基体に関しており、この基体は、少なくとも1つの金属イオンをキレート化し得るポリマー型の少なくとも1つの化合物によってグラフト化され、本明細書において以前では「基体A」と呼ばれている。基体、ポリマー型の化合物およびグラフト化工程の種類に関する全ての変化型が、本発明による基体Aにあてはまる。
【0127】
基体Aは少なくとも1つの金属イオンを錯化するため、特に少なくとも1つの金属イオンを含みやすい溶液を精製するために用いられ得ることが有利である。従って、本発明は少なくとも1つの金属イオンを含みやすい溶液を精製するためのプロセスであって、この基体Aをこの溶液と接触して配置する工程と、次いでこの基体を前に規定の少なくとも1つの還元工程に供する工程(前に規定の工程(d))とからなるプロセスに関する。この精製プロセスに用いられ得る溶液は、1つ(または複数)の金属イオンを含みやすい任意の溶液であり得る。この溶液は、廃水、水道水、河川水、海水、湖水および地下水の任意のサンプルからなる群から選択されることが有利である。この用途に特に適切な基体は、特に電子ビームで照射された、前に規定のポリマーマトリクスから作製された、特に1cm〜10mの表面積を有する基体であって、従って、そのバルク全体にわたってグラフト化されたポリマー型の化合物を保有する基体である。さらに、精製プロセスは、金属または金属酸化物を回収するという追加の工程を還元の後に包含してもよい。
【0128】
本発明はまた、前に規定されるような本発明のプロセスの工程(c)の後に得られ得る基体に関し、この基体は少なくとも1つの金属イオンをキレート化する少なくとも1つのポリマー型の化合物でグラフト化されており、本明細書において以前では「基体B」と呼ばれている。基体、ポリマー型の化合物ならびにグラフト化工程の種類および金属イオンの種類に関する全ての変化型が、本発明による基体Bにあてはまる。
【0129】
基体Bは、その特定の特性、例えば、その抗真菌特性または抗細菌特性について用いられ得ることが有利である。具体的には、基体Bは、その上にまたは中にキレート化されているCu2+またはFe2+イオンがあり、例えば、抗真菌剤として用いられてもよく、そして基体Bはその上にまたは中にキレート化されているイオン、特に国際特許出願WO 2001/05233に特定されたイオン、具体的には銀イオン、例えばAg、Ag2+またはAg3+があり、抗菌剤および/または抗真菌剤として用いられ得る。これらの適用に用いられ得る基体Bの例としては、いくつかのポリマー型の化合物によって形成される有機フィルムでコーティングされた基体から作製されるものを挙げることができ、これは特に、医学的分野で、例えば、素材、インプラント、外科的デバイス、または食料品もしくは医薬品のための容器などにおいて有用である。
【0130】
最終的に、本発明は、本明細書において以前では「基体C」と呼ばれる、前に規定されたような、本発明のプロセスを介して得られ得る基体に関する。
【0131】
基体Cは、金属のまたは金属酸化物の有機フィルムでコーティングされた(すなわち、グラフト化された)、前に規定のような基体の形態であり得る(すなわち、無機または有機、導電性、半導性または絶縁性)。言及され得るこのような基体Cの例としては、タップウェア部品、動力車の付属品、台所用品、食料品の容器、化粧品、または治療用品、化粧品で用いられる(マイクロ)粒子が挙げられる。
【0132】
変化型として、基体Cは、その表面上におよび/またはそのバルク内に、ナノドメインに分散されるかまたは分類された、いくつかの金属または金属酸化物のグラフトポリマー型の化合物を有し得る。この変化型は、最も具体的には、前に規定されたようなポリマーマトリクスおよび放射グラフト化工程を用いる、本発明によるプロセスを用いることによって得られる基体にあてはまる。
【0133】
具体的に言えば、図1は、本発明のプロセスとポリマーマトリクスおよび放射グラフト化工程とを組み合わせることによって得られ得る、マイクロ粒子またはナノ粒子などの種々の粒子を示している。
【0134】
図1Aは、マトリクスの改変をもたらし、従って表面でのPAAのみのグラフト化工程をもたらしたUV照射に供された、PVDF型のポリマーマトリクスの形態の粒子の場合に対応し、従って金属および金属酸化物が、この粒子の表面で見出される。図1Aの粒子は、有機コア(1)金属シェル(2)粒子の例である。
【0135】
図1Bおよび図1Cは、マトリクスの改変をもたらす、従って表面でおよび粒子のバルク全体にわたってPAAのグラフト化工程をもたした、前に規定されたように、電子での照射にまたは必要に応じてUV照射に供された、PVDF型のポリマーマトリクスの形態の粒子の場合に対応し、金属および金属酸化物が、この粒子の表面およびバルク全体にわたって見出される。図1Cおよび図1Dは、この金属および金属酸化物がポリマーマトリクスに分散されているという事実によってお互いに異なり(図1B)、一方で図1Cの粒子は、完全に金属化されている。図1Bの粒子は、2つの金属種(コア中の金属酸化物(3)および表面上の金属(4))で金属化されており、プロセスの工程c)、d)およびe)の反応条件を改変することによって得られ得る。
【0136】
図1Bおよび1Cの場合には、金属化膜の厚みにおける伝導率の改変が存在する。
【0137】
本発明によるプロセスで用いられる金属イオンの種類の関数として、得られる基体Cは、磁性であってもよく、かつこの特性のために用いられてもよい。挙げることができる例は、開/閉クラッパーシステム(opening/closing clapper system)で電磁石とともに用いられる磁性金属化クラッパー膜の形態の基体Cである。
【0138】
同様に、本発明による基体Bまたは基体Cは、本発明による磁性マイクロ粒子またはナノ粒子の形態で、画像化に、特に常磁性共鳴(EPR)によるイオン検出のために有用であり得る。さらに、これらの粒子のポリマーマトリクスを構成するPVDFは、フルオロポリマーであるという、従って大きいフッ素数を有するという利点を有する。19Fシグナルは、目的の分子中に存在するフッ素の量に比例するので、19F画像化のための選択の候補であると考えられる。さらに、その構造およびその重合化法という理由で、PVDFの19Fシグナルは、比較的微細な強度のシグナルを有する。金属または金属酸化物または金属イオンによる水の緩和で誘導される効果を組み合わせること、あるいは前に記載された存在する種々の要素の種々の組み合わせ(システムの表面でまたはそれ全体にわたって)、およびベースのポリマーのフッ素シグナルによって、MRI画像化のための可能性のあるH/Fバイモーダルシステムが得られる。
【0139】
本発明による基体Cはまた、燃料電池(すなわちPEMFC:プロトン交換膜燃料電池(Proton Exchange Membrane Fuel Cells))の三重点を作製するために用いられ得る。この三重点または三重点の領域は、電子伝導、イオン伝導および触媒反応を同時に可能にする、アルカリ燃料電池中の領域である。この適用では、基体Cは、例えば、白金で金属化された可塑性膜の形態であることが有利である。
【0140】
最終的に、本発明によるプロセスを介して得られ得る基体Cは、その表面上に固定された生物学的なまたは生物学的に活性な分子を有し得る。本発明の状況では、「生物学的なまたは生物学的に活性な分子」という用語は、アミノ酸;ペプチド;タンパク質、例えば、ゼラチン、プロテインA、プロテインG、ストレプトアビジン、ビオチン、グルコースオキシダーゼのような酵素;抗体および抗体フラグメント;細胞または膜受容体;多糖類、例えば、グリコサミノグリカンおよび特にヘパリン;脂質;細胞または細胞の一部、例えば、オルガネラもしくは細胞膜、ならびにDNAおよびRNAのような核酸からなる群より選択される分子を意味する。従って、本発明は、その上に前に規定したような少なくとも1つの生物学的なまたは生物学的に活性な分子が固定されている、本発明による基体Cを含むバイオチップに関する。
【0141】
当業者は、カップリング剤を用いるかまたは用いずに、基体を官能化することによって少なくとも1つの生物学的なまたは生物学的に活性な分子を、本発明による基体Cの上に固定するための種々の技術を公知である。変化型として、基体Cは、官能化なしにその表面上に固定された少なくとも1つの生物学的なまたは生物学的に活性な分子を保有し得る。従って、基体Cは、磁性アドレッシングを有するバイオチップまたはマグネットチップ(magnetochip)として用いられ得る。
【0142】
官能化の有無によって、基体Cがその上に固定されている変化型にかかわらず、前に規定されるとおり、かつ好ましくは、所定のマッピングによって金属化された、生物学的なまたは生物学的に活性な分子は、バイオチップとして、またはレドックス型の生物学的現象もしくは電子伝達に関与する現象をモニタリングするために用いられ得る。
【0143】
特定の適用の例として、本発明による基体Cは、水素を分離するための生物学的または非生物学的触媒を固定し得、この基体Cの金属層によって、電子が回収されることが可能になる。
【0144】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、非限定的な例示として示される下の実施例を読み取ることによって当業者にさらに明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明によるプロセスを介して得られ得る種々の金属化基体を模式的に示す。
【図2】第1のキレート化浴後、第2のキレート化浴後、および第2の還元後の各ニッケル金属化膜のIRスペクトルを示しており、未処理の膜はコントロールとして用いられる。
【図3】ニッケル金属化膜のNi2p殻のスペクトルを示す。
【図4】第3の還元後の銅金属化膜のIRスペクトルを示しており、未処理の膜をがコントロールとして供している。
【図5】銅金属化膜のCu2p殻のスペクトルを示す。
【図6】未処理の膜をコントロールとして供して、第3の還元後のコバルト金属化膜のIRスペクトルを示す。
【図7】PAAで放射グラフト化された未処理のPVDF膜をコントロールとして供して、PAAで放射グラフト化され、かつニッケルで金属化されたPVDF膜と、第1のキレート化浴後のものと、第2の還元後のものとのIRスペクトルを示す。
【図8】PAAで放射グラフト化された未処理のPVDF膜をコントロールとして供して、PAAで放射グラフト化され、かつニッケルで金属化されたPVDF膜と、第1のキレート化浴後のものと、第2の還元後のものとのIRスペクトルを示す。
【図9】実施例Vの電気化学的還元の間に行われるサイクリック・ボルタンメトリーに相当する。
【発明を実施するための形態】
【0146】
以下の実施例では、種々の基体を、本発明によって処理して、特定の生成物およびデバイスを得て、その特性および適用を概説している。提示した実施例を、下の表1にまとめる。
【0147】
【表1】

【0148】
正確な測定を行うために、基体を注意深く浄化した;結果は、厳密でない条件下で首尾よく再現できた。
【0149】
別段特定しない限り、用いられる基体は、同じ種類ものである場合、同じ特徴を有しており、かつ同じ供給業者から入手した。
【0150】
提示されたプロトコールでは、アクリル酸(AA)のホモ重合に限定するためにモール塩を用いた。
【0151】
実施例を示すPVDF粒子は、米国特許第7 012 122号に対応する欧州特許第1454927号に概説されるプロセスによって調製され得る。
【0152】
種々の基体上の有機フィルムのグラフト化の程度は、処理後に見出される量でゲインを測定することによって決定した。
【0153】
I−基体の調製
I−1 放射グラフト化工程の使用
I−1−a 不均一な膜
第一段階では、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)マトリクス(6×30cm、9μmの厚み)に、Xe重イオン照射を行った。フラックスは、1cmあたり5×10〜5×1010におよんだ。これは、1Gy〜1000kGyにおよぶ線量に相当する。照射角度は、90°に設定した。この工程によって、ラジカル種を含むレイタントトレースの創出が可能になった。
【0154】
この方式によって調製したマトリクスは、直ちに用いられてもよいし、または窒素のような不活性雰囲気下で、かつ一般的には低温で(−18℃)、使用前に数ヶ月間保管されてもよい。
【0155】
第二段階では、照射されたマトリクスは、15分間窒素の散布を受けた20〜80重量%の酸および0.1重量%のモール塩を含む水溶液中で、60℃で1時間撹拌されながら、AAと接触するよう置かれた。同じプロトコールを溶媒として酢酸エチルを用いて行った。
【0156】
次いで、得られた膜を溶液から抽出し、水で浄化して、Sohxlet装置を用いて沸騰水で24時間抽出した。次いで、高真空下で12時間乾燥した。
【0157】
このプロトコールを経て得られたグラフト化の程度は、概して10重量%〜300重量%である。
【0158】
I−1.b 電子照射による均質の膜
第一段階では、PVDFマトリクス(6×30cm、9μmの厚み)を、電子照射に供した。線量は、50〜150kGyに及んだ。照射角度は、90°に設定した。この工程によって、PVDF微結晶内でトラップされるラジカルの創出が可能になった。
【0159】
第二段階では、照射されたマトリクスを、AAと接触させた。このために、このマトリクスを、事前に脱気した溶液に浸漬し、これは、水(または酢酸エチル)中に20重量%〜80重量%の酸、および0.1重量%のモール塩を含み、60℃で1時間撹拌された。次に、得られた膜を抽出し、前のとおり処理した。
【0160】
このプロトコールによって得られたグラフト化の程度は10重量%〜120重量%である。
【0161】
I−1.c 片側でグラフト化された膜
電子照射は、前のとおり行った。
【0162】
第二段階では、照射されたマトリクスを、2つの区画(一方は、事前に脱気され次いで攪拌しながら60℃に配置され、水(または酢酸エチル)中に20重量%〜80重量%のAAおよび0.1重量%のモール塩を含んでいる溶液を含む)の間に、10分から1時間の間配置した。次いで、得られた膜を抽出して、前のとおり処理した。
【0163】
このプロトコールを介して得たグラフト化の程度は、1重量%〜30重量%である。フーリエ変換赤外分光光度法(FTIR)によって片面のみの改変を確認した。
【0164】
I−1.d マイクロ粒子
第一段階では、1〜8μmにおよぶ平均直径を有するPVDFマイクロ粒子を、線量が50〜150kGyにおよぶ電子照射に供した。
【0165】
第二段階では、マイクロ粒子を、前に用いたとおり20重量%〜80重量%のAAを含む、事前に脱気した溶液中に浸漬した。
【0166】
次いで、得られたマイクロ粒子を、適切な大きさのシンターでの濾過によって単離し、次いで水で浄化した。次に、沸騰している0.1Nの水酸化ナトリウム溶液を添加した。次いでこのマイクロ粒子を沸騰水で2回浄化して、1NのHClで処理し、その後に濾過によって単離した。
【0167】
高真空下で12時間乾燥した後、10重量%〜20重量%のグラフト化の程度が見出された。
【0168】
I−1.e ナノ粒子
20〜200nmにおよぶ平均直径を有するPVDFナノ粒子を、超音波処理によってグラフト化工程を行ったこと以外は、マイクロ粒子についてのプロトコールと同一のプロトコールに従って処理した。
【0169】
見出されたグラフト化の程度は、10重量%〜120重量%である。
【0170】
I−1.f 均質膜−UV照射
PVDF膜(2.15cm×3.8cm、13.68mg)を、ガラスプレートに結合して、アセンブリを窒素下で20分間脱気した。次いで、アセンブリを、7cm離れておいたエキシマーランプを用いて30分間照射して、172nmでV−UV範囲でインコヒーレント放射を放射した。EPR分析によって、PVDF中のラジカルの存在を確認した。次いで膜を、水に80重量%のアクリル酸を含有する溶液に浸漬した。窒素下で15分間散布した後、そのアセンブリを60℃で1時間加熱した。得られた重合化収率は、Sohxlet装置を用いた抽出の18時間およびバキュームオーブンでの乾燥の2時間後に260%であった。
【0171】
改変した膜をFT IRによって、ATRモードで分析し、アクリル酸のカルボニルバンドの存在を1703cm−1で検出した。
【0172】
この膜をまた、飽和硫酸銅溶液に浸漬して、アクリル酸のプロトンを変化して、EDXによって、Cu2+の存在が膜の厚みの中で観察されるか否かをチェックする。分析後、ポリアクリル酸が、マトリクスの厚み全体にわたって存在するか否かを見出した。
【0173】
膜の厚みを改変した。
【0174】
I−1.g 膜表面の改変−UV照射
PVDF膜(1cm×4cm×9μm)を、ヒート−ショックプルーフ(heat−shockproof)チューブ(Pyrex(登録商標))に入れ、次に30分間脱気して、窒素雰囲気下に置いた。この期間後、そのチューブをUVランプ(320〜500nm)の光ファイバーから4cmに置いて、各15分の4回の照射を連続して行った。照射後、膜を周囲の環境に10分間おき、次に、事前に脱気した純粋なAA溶液に浸漬し、照射全体にわたって窒素での散布に供した。次いで、そのアセンブリを10分間脱気し、次いで60℃で6時間、熱安定的に維持して浸漬した。
【0175】
反応媒体から抽出された改変された膜を、超音波の存在下で15分間水で浄化するか、またはSohxlet装置を用いて沸騰水で18時間抽出し、次いで高真空下で乾燥した。
【0176】
この膜のFTIR(ATR)スペクトルによって、ポリ(アクリル酸)のC=Oバンドに特徴的な1703cm−1での吸光度ピークが示される。接触角度測定もまた行って、グラフト化工程の前後に見出された接触角度の間の相違を確認し、この膜は、処理後にはさらに親水性になっていた。
【0177】
照射時間の関数としてEPRで観察されたシグナルによって、その機構は、ラジカルの作製に対応するのではなく、照射の前には検出可能であるとは考えられなかった膜中の既存の欠陥または不純物の「活性化」に対応することを示すことが可能になった。
【0178】
この場合、膜は、表面でのみ改変された。
【0179】
I−2 化学的グラフト化工程の使用
I−2.a 金コーティングガラスプレート
ジアゾニウム塩の溶液を最初に、HCl(0.5M)中に含有される1,4−フェニルジアミンの0.1M溶液の10mlから調製し、ここに水に含有されるNaNOの0.1M溶液を10ml添加した。このジアゾニウム塩の溶液に、200mgの鉄やすりかけ粉(filing)を添加し、次いで5分後に、10mLのAAを添加した。
【0180】
オゾン下で10分間事前に浄化された、約9nmの厚みのクロムの層、続いて約60nmの厚みの金の層でカバーされたガラススライド(3.8×0.7×0.1cm)を次に、2時間反応培地に導入し、その後水でリンスして、超音波処理の存在下でpH9.5で水酸化ナトリウム溶液に導入して、非グラフト化ポリアクリル酸(PAA)を溶解した。水でリンスした後、そのスライドを乾燥した、形成された層の厚みは2〜3ナノメートルである。
【0181】
I−2.b アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリアミドおよびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン/ポリカーボネートのプレート
【0182】
金コーティングガラススライドに用いるプロトコールは、石鹸水溶液中および0.5M塩酸溶液中での超音波処理によって事前に浄化した、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン/ポリカーボネート(ABS/PC)およびポリアミドのプレート4×1×0.25cm)に首尾よく適用された。
【0183】
I−2.c マイクロ粒子
ジアゾニウム塩を、前に示したとおりフェニルジアミンから調製した。
【0184】
第一のプロトコールによって、5分後、2gのPVDFマイクロ粒子(平均直径は1〜8μm)を次に、反応媒体に導入して窒素下でかつ室温で2時間攪拌した。このようにして得たマイクロ粒子を次に、濾過によって単離して、水でリンスし、続いて水酸化ナトリウム溶液(0.1N)を用いて超音波の存在下で洗浄し、2回、水で、HCl溶液(0.1N)で、次いで水でリンスし、最終的に高真空下で12時間乾燥した。
【0185】
第二のプロトコールによって、5分後、2mLのAAを添加し、次いで、10分後、2gのPVDFマイクロ粒子を反応媒体に導入して、これを窒素雰囲気下かつ室温で2時間攪拌した。このようにして得たマイクロ粒子を、濾過によって単離し、次いで水でリンスし、水酸化ナトリウム溶液(0.1N)を用いて超音波の存在下で5分間洗浄し、次いで濾過によって再度単離し、2回、水で、HCl溶液(0.1N)で、次いで水でリンスし、最終的に高真空下で12時間乾燥した。
【0186】
I−2.d ナノ粒子
ナノ粒子(1g)を、マイクロ粒子について概説される方法に従って処理した。
【0187】
このプロトコールはまた、活性化ナノ粒子で行った。この活性化は、室温で10分間、最初にアルコールの水酸化カリウム溶液(3gの水酸化カリウムが15mLの無水エタノール中に含有される)にナノ粒子を添加することによって行った。次に、ナノ粒子を濾過によって抽出し、次いで、濾液の中性のpHが得られるまで、2回、エタノールで、次いで水で、リンスした。この工程によって、ナノ粒子の表面で−CH=CF−型の不飽和結合の創出が可能になり、これによって、化学的プロセスを介した層のグラフト化工程のための表面の「活性化」が可能になった。
【0188】
I−3 基体の酸化的前処理
酸化的前処理を、種々の材料でおこなって、その後にそれらを調製した。種々のプロトコールをABSおよびABS/PCプレートの基体に用いた。
【0189】
I−3.a 硫酸鉄(II)を用いるフェントン反応
サンプルを硫酸鉄(3.47g、5×10−2mol)のおよび硫酸(10−3M)の25mlの水溶液に浸漬した。5mL(6.2×10−2mol)の35%過酸化水素溶液を次に添加して、pHを3に維持した。25分後、サンプルをMilliQ水でリンスして、水中で10分間超音波に曝し、続いて乾燥した。
【0190】
I−3.b KMnOによる処理
このサンプルを、硫酸(3.3M)に含まれる0.75gの過マンガン酸カリウム(5×10−3mol)の25mLの溶液に浸漬した。15分後、そのサンプルをMilliQ水でリンスして、水中で10分間超音波に曝し、続いて乾燥した。
【0191】
II−金属イオンのキレート化
キレート化有機フィルムでコーティングされた材料を、種々の時間金属塩の溶液に導入し、曝露の前後の赤外線(IR)分光学測定によって、錯体形成を確認することを可能にした。下の表2は、種々の金属イオンについて、cm−1で表した、赤外線域である。
【0192】
【表2】

【0193】
用いられるパラメーターを下の表3に概説する。
【0194】
【表3】

【0195】
この実験は、以下の塩の水溶液(0.1M)で行った:FeSO・7HO,CuSO・5HO、NiSO・7HO、CoSO・7HO、Mn(NO・4HO、NiSO・7HO、AgSO
【0196】
溶液のpHを、基体上に存在するカルボカルボン酸官能基がイオン化型であるように、CHCOOH(0.1M)/NH(0.6M)またはCHCOOH(0.1M)/NaOH(0.1M)の混合物で緩衝化した。AgSO溶液は緩衝化されなかった。
【0197】
曝露の間、生理食塩水溶液を攪拌し、そしてそれらのうちいくつかについては、超音波(US)に曝した。曝露後、その材料を、必要に応じて超音波の存在下で、脱イオン水(18MΩ、MilliQ)でリンスした。マイクロ粒子およびナノ粒子の場合、それらは濾過によって生理食塩水溶液から抽出し、その後に水溶液中でリンスして、それから抽出した。
【0198】
荷電した材料、すなわち、金属イオンを錯体型で含む材料を、EPR測定を容易にするためのリンス後に、高真空下で乾燥した。
【0199】
生理食塩水溶液の処理後、電子常磁性共鳴スペクトルを、乾燥後にマイクロ粒子およびナノ粒子上で獲得した(低温でスペクトルの獲得のためのヘリウムおよび窒素クリオスタットを装備したBrueker ER−200D Band X分光光度計)。測定は、20ケルビンおよび293ケルビンで行い、かつこれによって、これらのシステムの応答が温度の関数として変化すること、およびそれらはキュリーの法則に従うこと(超常磁性効果および/または常磁性効果)を観察することができるようになった。
【0200】
キレート化について得られた結果は、酸化的処理を受けたサンプルと同様である。
【0201】
Iで提示される基体上にキレート化有機フィルムを調製する工程はまた、IIで示されるキレート化と同時に首尾よく行われた。
【0202】
III−第一還元サイクル
前に調製された、荷電した材料を、次に、水性還元溶液で、または光化学によって処理してフィルム内で金属塩を還元した。条件を下の表4に示す。
【0203】
【表4】

【0204】
III−1 化学的還元
用いられる還元溶液は、中性または塩基性のpHのNaBH水溶液(0.1M)に相当した。この場合、溶液のpHは、NaOH溶液(0.01M)を用いて変更した。
【0205】
この還元は、50〜80℃の温度で2〜20分間行った。
【0206】
反応後、処理したサンプルを、必要に応じて超音波の存在下で、エタノールで、および脱イオン水(18MΩ、MilliQ)でリンスした。マイクロ粒子およびナノ粒子の場合、それらは濾過によって溶液から抽出し、その後に水溶液中でリンスして、それから抽出した。次いで、各々の材料を、高真空下で乾燥した。
【0207】
金属イオンの還元は、材料のIRスペクトルの変化をモニタリングすることによって観察された。
【0208】
この最初の還元工程後、新しい電子常磁性共鳴スペクトルを、マイクロ粒子およびナノ粒子上で獲得した(図1)。測定は、20ケルビンでおよび293ケルビンで行い、かつこれによって、これらのシステムの応答が温度の関数として変化すること、およびそれらはキュリーの法則に従うこと(超常磁性効果および/または常磁性効果)を観察することができるようになった。
【0209】
キレート化されたイオンの関数として、材料は裸眼で明らかに視認できる磁性特性を有する。具体的には、磁石の近接によって、それらは、溶液としておよび乾燥型の両方で、移動することが可能になる。
【0210】
III−1 光化学的還元
Ag塩の場合、還元は、光化学によって行い、かつ光化学的還元である。
【0211】
種々の膜を、環境雰囲気下で、またはNaCl水溶液(9g/L)中で、ランプから約3cmで、1〜15分間、UV照射(320〜500nm)に供した。
【0212】
この処理によって、膜の褐変がもたらされ、これは、分析によれば、金属化に相当する。Ag3d5/2バンドのXPS分析によって、金属型のAgにおけるAgの膜中および膜上における存在に対応する368eVのエネルギーが示される。
【0213】
IV−キレート化/化学還元サイクル
均一な金属層を得るために、前に記載のプロトコール(キレート化および還元)を再度行い、ここではやはり第一の錯体形成段階、続いて還元段階が交互であった。錯体形成/還元段階の回数は、2〜10回変化する。1つのサイクルから、金属化は、材料で観察される変化によって裸眼で検出可能である。
【0214】
実験プロトコールを以下の表にまとめる。
【0215】
析出した層の導電性の性質をチェックするため、抵抗を、長さおよび幅で、PVDF膜に基づいて基体について標準のオーム計を用いて測定した(結果は下のIV.1〜IV.5)。種々の長さを考慮した(0.2〜0.8および2cm)。
【0216】
以下の層の機械的強度をチェックするために、接着テープでの試験を行った。これは、この層に対する接着テープの小片を結合する工程、次いで、これをこの層から取り除く工程によってなる。この析出された層が、接着性となる場合、機械的強度は劣るとみなされる。この層が、接着性に対して非感受性のままである場合、この機械的強度は良好であるとみなされる。用いられる接着性テープは、Progressブランドの高性能インビジブル接着テープ(invisible adhesive tape)である。
【0217】
IV−1 PAA放射グラフト化PVDF膜上のNiの均一金属層の作製
本実施例は、種々の還元剤で行った。この条件を、表5および6にまとめる。
【0218】
【表5】

【0219】
【表6】

【0220】
ATR−FTIR減衰全反射偏光分光法によって、ポリアクリル酸のCOOH/COO基上のプロトンの存在を決定することができるようになった(図2)。具体的には、約1703cm−1でポリアクリル酸のカルボン酸COOHの特徴的なバンドは、未処理の膜に関して可視である。一旦、Ni2+イオンでキレート化されれば(第一キレート化浴、そして第二キレート化浴)、約1542cm−1でポリアクリル酸のCOOバンドが観察される。さらに、吸光度ベースラインの逸脱は、金属の、この場合ニッケルの吸光度の特徴であると考えられる。
【0221】
XPSスペクトルでは、853eVに等しい結合エネルギーピークは、ニッケルの2p3/2シェルの電子のニッケルの還元型Niに相当する。856eVのピークによって、酸化ニッケルの存在が明らかになる(図3)。
【0222】
PAA放射グラフト化PVDF膜上の均一Cu金属層の作製
種々の還元剤をこの実施例で用いた。その条件を下の表7〜9にまとめる。
【0223】
【表7】

【0224】
【表8】

【0225】
【表9】

【0226】
図4では、約1705cm−1でポリアクリル酸のカルボン酸COOHの特徴的なバンドが、未処理の膜について可視である。Cu2+イオンのキレート化後(第三の還元後)、約1556cm−1でポリアクリル酸のCOOバンドが観察される。さらに、吸収ベースラインの偏向は、金属の、この場合には銅の吸収の特徴であると考えられる。
【0227】
XPSスペクトルでは、933および953eVの実線および破線のピークによって、この金属の文献データに従い銅Cuの存在が確認される(図5)。それらは、それぞれ、E2p3/2およびE2p1/2に対応する。
【0228】
IV−3 PAA放射グラフト化PVDF膜上の均一なFe金属層の創出
本実施例の実験条件は、下の表10にまとめる。
【0229】
【表10】

【0230】
IV−4 PAA放射グラフト化PVDF膜上の均一なCo金属層の創出
この実施例の実験条件を下の表11にまとめる。
【0231】
【表11】

【0232】
図6では、約1705cm−1でポリアクリル酸のカルボン酸COOHの特徴的なバンドが、未処理の膜について可視である。Co2+イオンのキレート化後(第三の還元後)、約1545cm−1でポリアクリル酸のCOOバンドが観察される。さらに、吸収ベースラインの偏向は、金属の、この場合にはコバルトの吸収の特徴であると考えられる。
【0233】
IV−5 PAA放射グラフト化PVDF膜の片側のみの上の均一なNi金属層の創出
本実施例の実験条件は下の表12にまとめる。
【0234】
【表12】

【0235】
図7では、PAAを有する表面上では、約1707cm−1でポリアクリル酸のカルボン酸COOHの特徴的なバンドが、未処理の膜について可視である。Ni2+のキレート化後(第一浴および第二の還元)、約1540〜1542cm−1でポリアクリル酸のCOOバンドが観察される。
【0236】
さらに、吸収ベースラインの偏向は、金属の、この場合にはニッケルの吸収の特徴であると考えられる。
【0237】
予想どおり、PAAのCOOH/COO基の特徴的なバンドの存在は、視覚的には観察されない(図8)。PAAなしの側では、2〜3のトレースが残り、これらは前に記載される波数である。金属化に関しては、全く観察されない。
【0238】
本実施例は、PAAの重要性を示している。PAAのキレート化なしで、金属化はない。
【0239】
IV−6 PAA化学的グラフト化ABSプレート上の均一なNi金属層の創出
本実施例の実験条件は、下の表13にまとめている;用いられる浴液(処理液)は工業基準に基づいて開発された。
【0240】
【表13】

【0241】
IV−7 PAA化学的グラフト化ABSプレート上の均一なNi金属層の創出
本実施例の実験条件は、下の表14にまとめる。
【0242】
【表14】

【0243】
IV−8 PAA化学的グラフト化ポリアミドプレート上の均一なNi金属層の創出
本実施例の実験条件は、下の表15にまとめる。
【0244】
【表15】

【0245】
IV−5 酸化処理を受けた、PAA化学的グラフト化ABS/PCおよびPCプレート上の均一なCu金属層の創出
この実験条件は、表16〜18にまとめる。
【0246】
フェントンまたはKMnO前処理によって、グラフト化工程は、従って、処理表面の特性は改善される。
【0247】
【表16】

【0248】
【表17】

【0249】
【表18】

【0250】
V−キレート化/電気化学的還元サイクル
ニッケル塩でキレート化/化学的還元の最初の工程を受けているPAAで放射グラフト化されたPVDF膜を、測定電極として用いた。採用された電気化学的システムは、KCl飽和カロメル参照電極およびグラファイト対電極によって形成された。
【0251】
この電極を10g/LのCuSO溶液に浸漬したところ、最初の電位は約0.1Vであった。
【0252】
このシステムに課した、ボルタメントリーサイクルは、60秒にわたって−0.6Vまで低下した。電圧が上昇する間、実験は、約−0.35Vで停止した(図9)。
【0253】
このサイクルによって、測定電極上の銅の析出が示された。具体的には、電圧が低下し、銅が測定電極として機能する膜上に析出されるとき、電流が増大した。銅の還元は、測定電極で生じた。
【0254】
確認は、視覚的に行うことができた。具体的には、電極−還元の後、膜は、銅味を帯びた(coppery)色になった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属化された基体を調製するためのプロセスであって:
a)該基体上に、少なくとも1つの金属イオンをキレート化し得る基(または構造)を必要に応じて保有するポリマー型の化合物をグラフト化する工程と;
b)該ポリマー型の化合物を、少なくとも1つの金属イオンをキレート化し得る基(または構造)でこれを官能化するための条件に必要に応じて供する工程と;
c)工程(a)または(b)の後に得られた少なくとも1つの金属イオンをキレート化し得る該ポリマー型化合物を少なくとも1つの金属イオンと接触させる工程と;
d)工程(c)において得られたポリマー型の化合物を該キレート化された金属イオン(単数または複数)を還元するための条件に供する工程と;
e)金属化された基体が得られるまで工程(c)および(d)を必要に応じて繰り返す工程と、
によってなる工程を包含する、プロセス。
【請求項2】
前記工程(a)のグラフト化が、化学的グラフト、電気的グラフトおよび放射化学的グラフトからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記グラフト化工程(a)が:
)金属化されるべき前記基体を、少なくとも1つの接着プライマー、および、必要に応じて、該接着プライマーとは異なりかつラジカル重合を受け得る少なくとも1つのモノマーを含む溶液Sと接触させる工程と;
)該溶液Sを該接着プライマーからラジカル種の形成を可能にする非電気化学的条件に供する工程と;
によってなる工程を包含する化学的グラフト化を包含することを特徴とする、請求項1および2のいずれかに記載のプロセス。
【請求項4】
前記グラフト化工程(a)が:
)導電性または半導体の基体を、少なくとも1つの接着プライマー、および必要に応じて、該接着プライマー以外の特に前記に規定のラジカル重合を受け得る少なくとも1つの重合可能なモノマーを含む溶液Sと接触させる工程と;
)工程(a)において用いられる該接着プライマーの還元電位よりもカソードの電位で該基体を分極する工程と;
によってなる工程を包含する電気的グラフト化を包含し、
工程(a)および(b)が任意の順序で行われることを特徴とする、請求項1および2のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
前記グラフト化工程(a)が:
)ポリマーマトリクス型の基体を照射する工程と;
)工程(a)において得られる該照射された基体を、少なくとも1つの接着プライマーおよび/または少なくとも1つのラジカル重合可能なモノマーと接触して配置する工程と;
によってなる工程を包含する放射グラフト化を包含することを特徴とする、請求項1および2のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
前記工程(a)が、前記ポリマーマトリクスに電子ビームを照射することからなることを特徴とする、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記工程(a)が、前記ポリマーマトリクスを重イオンでの、特に重イオンのビームでのボンバードメントに供することからなることを特徴とする、請求項5に記載のプロセス。
【請求項8】
前記工程(a)が、前記ポリマーマトリクスをUV照射にて供することからなることを特徴とする、請求項5に記載のプロセス。
【請求項9】
前記接着プライマーが、アリールジアゾニウム塩、アリールアンモニウム塩、アリールホスホニウム塩、アリールヨードニウム塩およびアリールスルホニウム塩からなる群より選択される切断性アリール塩であることを特徴とする、請求項3〜8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記接着プライマーが、4−ニトロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩、トリデシルフルオロオクチルスルファミルベンゼンジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩、フェニルジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩、4−ニトロフェニルジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩、4−ブロモフェニルジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩、4−アミノフェニルジアゾニウムクロライド、2−メチル−4−クロロフェニルジアゾニウムクロライド、4−ベンゾイルベンゼンジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩、4−シアノフェニルジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩、4−カルボキシフェニルジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩、4−アセトアミドフェニルジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩、4−フェニル酢酸ジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩、2−メチル−4−[(2−メチルフェニル)ジアゼニル]ベンゼンジアゾニウム硫酸塩、9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロ−1−アントラセンジアゾニウムクロライド、4−ニトロナフタレンジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩およびナフタレンジアゾニウムテトラフルオロホウ酸塩からなる群より選択される化合物であることを特徴とする、請求項3〜9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記ラジカル重合可能なモノマーが下記式(II)で示されるモノマーから選択されることを特徴とする請求項3〜11のいずれか1項に記載のプロセス。
【化1】

(ここでR〜R基は、同一であっても又は異なってもよく、ハロゲン原子若しくは水素原子のような非金属一価原子、アルキル基若しくはアリール基のような飽和若しくは不飽和の化学基、−COOR基若しくは−OC(O)R基(Rは、水素原子、若しくは、C−C12、好ましくはC−Cのアルキル基である)、ニトリル基、カルボニル基、アミン基又はアミド基を表す。)
【請求項12】
前記ラジカル重合可能なモノマーが、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートおよびグリシジルメタクリレート、およびそれらの誘導体などのビニルエステル;アクリルアミドおよび特にアミノエチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルメタクリルアミド;シアノアクリレート、ジアクリレートおよびジメタクリレート、トリアクリレートおよびトリメタメタクリレート、テトラアクリレートおよびテトラメタクリレート(例えば、ペンタエリスリチルテトラメタクリレート);スチレンおよびそれらの誘導体;パラ−クロロスチレン、ペンタフルオロスチレン、N−ビニルピロリドン、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ビニル、アクリロイルまたはメタクリロイルハライド、ジビニルベンゼン(DVB)およびさらに一般的にはビニルまたはアクリレート−またはメタクリレート−ベースの架橋剤、およびそれらの誘導体からなる群より選択されることを特徴とする、請求項3〜11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
少なくとも1つの金属イオンをキレート化(錯化)し得る前記基(または前記構造)が、アミン、アミド、エーテル、カルボニル、カルボキシル、カルボキシレート、ホスフィン、ホスフィンオキシド、チオエーテル、ジスルフィド、尿素、クラウンエーテル、アザクラウン、チオクラウン、クリプタンド、セパルクランド(セパルクレート)、ポダンド、ポルフィリン、カリックスアレーン、ピリジン、ビピリジン、ターピリジン、キノリン、オルト−フェナントロリン化合物、ナフトール、イソナフトール、チオ尿素、シデロホア、抗生物質、エチレングリコール、シクロデキストリン、ならびにまたこれらの官能基で置換および/または官能化された分子構造、および/または種々の酸化還元型の1つ以上の錯化空洞からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
工程(c)にて用いる前記金属イオンが、Ag、Ag2+、Ag3+、Au、Au3+、Cd2+、Co2+、Cr2+、Cu、Cu2+、Fe2+、Hg2+、Mn2+、Ni2+、Pd、Pt、Ti4+およびZn2+からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記還元工程(d)が、化学的還元、光化学的還元、または電気化学的還元であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記工程(d)が、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、ジメチルアミノボラン(DMAB)およびヒドラジン(N)からなる群より選択される還元剤を含む還元溶液S5を用いる化学的還元の工程であることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記工程(d)が、電気化学セルを用いる電気化学的還元の工程であり、ここで工程(c)の後に得られた前記基体が参照電極および対電極の存在下で、測定電極として機能することを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に規定されるプロセスの工程(a)または工程(b)の後に得られ得る基体。
【請求項19】
少なくとも1つの金属イオンを錯化するため、特に少なくとも1つの金属イオンを含むと思われる溶液を精製するための、請求項18に記載の基体の使用。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれか1項に規定されるプロセスの工程(c)の後に得られ得る基体。
【請求項21】
抗真菌剤として、または抗菌剤としての請求項20に記載の基体の使用。
【請求項22】
請求項1〜17のいずれか1項に規定されるプロセスを介して得られ得る基体。
【請求項23】
タップウェア成分、動力車の付属品、台所用品、食料品の容器、化粧品もしくは治療用品または化粧品で用いられる(マイクロ)粒子の形態であることを特徴とする、請求項22に記載の基体。
【請求項24】
磁性を有することを特徴とする、請求項22および23のいずれかに記載の基体。
【請求項25】
表面上に固定された生物学的なまたは生物学的に活性な分子を保有することを特徴とする、請求項22〜24のいずれか1項に記載の基体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−525496(P2012−525496A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507781(P2012−507781)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055920
【国際公開番号】WO2010/125189
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【Fターム(参考)】