説明

金属化ポリイミドフィルムおよびその製造方法

【課題】硫酸イオンなど絶縁性に大きな影響を及ぼす因子を含まない機器の小型化、軽量化、高密度配線化に対応し得る配線パターンが微細化したフレキシブルプリント配線板などに使用し得る金属化ポリイミドフィルムを提供する。
【解決手段】厚さ1〜10μmのポリイミドフィルムの少なくとも片面に、乾式製膜方法によって形成された厚さ0.5〜5μmの金属層が形成された金属化ポリイミドフィルムであって、300℃で10分間熱風処理した後のカール度が10%以下であることを特徴とする金属化ポリイミドフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なフレキシブルプリント配線板(FPC)および、TAB、COF、COG、フィルムを利用した多層基板のビルドアップ層用材料、インターポーザーなどに使用される薄くて熱による反り(カールともいう)の少ない金属化ポリイミドフィルムに関し、更に詳しくは、画像表示装置などの電子機器の小型化、軽量化、高密度配線化に対応し配線パターンが微細化したフレキシブルプリント配線板および、TAB、COF、COG、フィルムを利用した多層基板のビルドアップ層用材料、インターポーザーなどを作製し得る薄くて熱による反りの少ない新規な金属化ポリイミドフィルムとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの電子機器の技術進歩に伴って、FPC、TAB,COF、COG、フィルムを利用した多層基板のビルドアップ層の需要が急激に伸びており、さらにこうした機器の小型化、軽量化、高密度配線化に対応してFPC等の薄膜化が進んでいる。そのため、FPC用の銅貼フィルム(FCL)の薄膜化も同時に進行しているが、特に、配線パターンを微細化するためには、銅層の厚さを薄くする必要がある。
従来のFPCとして、例えば、ポリイミドフィルム層、接着剤層、銅層の3層から構成されている3層FPCがあり、かかる3層FPCはポリイミドフィルムと銅箔とを接着剤を介して接着させて3層構造のフレキシブル銅張積層板(金属化ポリイミドフィルム)を作製し、該銅張積層板の銅層をエッチングして回路を形成することにより作製されている。かかる3層FPCには接着剤層が存在するため、薄層化には限界がある。また、接着剤層としてポリイミドフィルムよりも耐熱性、電気特性、機械強度に劣る接着剤が用いられるために、ポリイミドフィルムの特性が充分に活かされないという問題もある。
【0003】
3層FPCの上記欠点を補うFPCとして、接着剤層の存在しない2層FPC(例えば、ポリイミドフィルム層と銅層で構成)が注目され、その開発が行われている。かかる2層FPCは、接着剤層が存在しないためポリイミドフィルムの特性を充分に活かすことができるうえに、上記3層FPCよりも薄層化させることができ、FPCの耐熱性および屈曲性の向上を可能とした。この2層FPCは、まず、ポリイミドフィルム層と銅層の2層からなるフレキシブル銅張積層板を作製し、該銅張積層板の銅層をエッチングして回路を形成することにより作製することができる。なお、この2層フレキシブル銅張積層板は、銅箔の片面又は両面にポリイミドの前駆体であるポリアミド酸のワニスを塗布した後、熱処理を施してイミド化させるキャスト法や、銅箔と熱可塑性ポリイミド樹脂フィルムを熱プレスして熱融着により作成するラミネート法や、銅片を高真空中で加熱蒸発させてポリイミドフィルム表面に薄膜として凝着させる乾式製膜方法、又はメッキ液中での化学還元反応によりポリイミドフィルム表面に銅を析出させて銅層を形成する無電解メッキ法やメッキ法(湿式製膜方法)などにより作製することができる。
しかし、上記方法で2層からなる銅張積層板を作製するにあたって、材料(ポリイミドフィルム又は銅箔)のハンドリング性から次のような問題があり、従来、各材料の厚さを10μm以下とすることができなかった。キャスト法で2層フレキシブル銅張積層板を作製する場合は、銅箔の片面にポリアミド酸のワニスを塗布する必要上、銅箔のハンドリング性が維持されていなければならず、銅箔の厚さを10μm以下にできないという課題があった。一方、蒸着法などの乾式製膜方法又はメッキ法などの湿式製膜方法で2層フレキシブル銅張積層板を作製する場合は、ポリイミドフィルム表面に蒸着又はメッキが施されるため、ポリイミドフィルムのハンドリング性が維持されていなければならない。そのため、ポリイミドフィルムの厚さを薄くできないという問題があった。
ポリイミドフィルム層および銅層の厚さが、いずれも10μm以下の2層FPCを作製することが困難であり、FPCの更なる薄層化は困難な課題であった。
これらの課題解決のために、2層FPCの更なる薄層化を実現し、屈曲性および耐熱性に優れたFPCを作製し得るフレキシブル銅張積層板を提供することを目的として、初期引張弾性率が400Kg/mm2 以上のポリイミド重合体からなる厚さが10μm以下のポリイミドフィルムの片面又は両面に、厚さが10μm以下の銅層を直接形成する(特許文献1参照)が提案されているが、薄いポリイミドフィルムの機械的強度を規制してハンドリング性において課題を解決してはいるが、蒸着やスパッタリングなどの乾式製膜方法での直接銅層形成におけるポリイミドフィルムの耐熱挙動においての課題例えば現実的な蒸着速度では、フィルムの熱収縮や熱伸張による反りや皺といったフィルムの熱による変形、および、フィルムの変質、或いは破損が生じ、また、銅層との剥離などにおける課題が残るものである。また層間の密着力を高くし、耐熱性、耐薬品性、耐屈曲性および電気特性が優れ、高密度配線でも信頼性の高いフレキシブルプリント配線用基板を提供するために、プラスチックフィルムの片面又は両面に、クロム、クロム合金又はクロム系セラミックの蒸着層、および蒸着された粒子径が0.007〜0.850μmの範囲の集合体からなる、電子ビーム加熱蒸着銅層を順次積層して、フレキシブルプリント配線用基板(特許文献2参照)が提案されているが、耐熱性、耐薬品性、耐屈曲性および電気特性などで課題を解決してはいるが、前記と同じように蒸着やスパッタリング、特に電子ビーム加熱蒸着などの乾式製膜方法での直接銅層形成におけるポリイミドフィルムの耐熱挙動においての課題例えばフィルムの熱収縮や熱伸張による反りや皺といったフィルムの熱による変形、および、フィルムの変質、或いは破損や銅層との剥離などにおける課題が充分に解決されているとはいえないものである。
【0004】
【特許文献1】特開平08−156176号公報
【特許文献2】特開平05−259595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、上記問題を解決し、FPCの更なる薄層化を実現し、電子機器の小型化、軽量化、高密度配線化に対応し配線パターンが微細化した、屈曲性および耐熱性に優れたFPCおよび、TAB、COF、COG、フィルムを利用した多層基板のビルドアップ層用材料、インターポーザーなどを作製し得る、薄くて熱による反り(カールともいう)の少ない金属化ポリイミドフィルムを提供することを目的に鋭意研究を重ねた結果、乾式製膜方法での熱に充分に耐え得る特定物性のポリイミドフィルムは、配線の微細化に対応し、充分な耐熱性とハンドリング性とを有し、かつ硫酸イオンなどの絶縁性などに大きな影響を及ぼす因子を含むことがない、薄くて熱による反りの少ない金属化ポリイミドフィルムであることを見出し、本発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定のポリイミドフィルムが、乾式製膜方法における熱挙動において金属化フィルム作成に満足すべきポリイミドフィルムであり、このポリイミドフィルムの薄いフィルムを使用することで湿式製膜方法によって銅層を形成する際の硫酸イオンなどの絶縁性などに大きな影響を及ぼす因子を含むことのない乾式製膜方法での銅などの薄膜が直接形成でき、小型化、省電力化に寄与し得る金属化ポリイミドフィルムが作成し得、金属層との密着が充分でありかつ皺や剥離の極めて少ない極薄金属化ポリイミドフィルムと、それによって得られる導体パターンを十分な接着強度で保持し、冷却加熱による熱履歴にも耐え得る、信頼性の高い配線基板として満足できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、以下の構成からなる。
1.芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドから得られる厚さ1〜10μmのポリイミドフィルムの少なくとも片面に、乾式製膜方法によって形成された厚さ0.5〜5μmの金属層が形成された金属化ポリイミドフィルムであって、300℃で10分間熱風処理した後のカール度が10%以下であることを特徴とする金属化ポリイミドフィルム。
2.ポリイミドフィルムが、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類が、全ジアミンの10〜100mol%の範囲であるジアミン類とテトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドのフィルムである前記1の金属化ポリイミドフィルム。
3.金属層が銅を主成分とする層である前記1〜2いずれかの金属化ポリイミドフィルム。
4.金属層が、ポリイミドフィルム側から、1nm〜50nm厚さの下地金属層、厚さ0.5〜5μmの銅を主成分とする金属層の順で構成された金属層である前記1〜3いずれかの金属化ポリイミドフィルム。
5.芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドから得られる厚さ1〜10μm、300℃で10分間熱風処理した後のカール度が15%以下のポリイミドフィルムの少なくとも片面に、乾式製膜方法で厚さ0.5〜5μmの金属層を形成することを特徴とする前記1〜4の金属化ポリイミドフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドから得られる厚さ1〜10μmのポリイミドフィルムの少なくとも片面に、乾式製膜方法によって形成された厚さ0.5〜5μmの金属層が形成された金属化ポリイミドフィルムであって、300℃で10分間熱風処理した後のカール度が10%以下である金属化ポリイミドフィルムは、湿式メッキや無電界メッキにおける薬剤の残留による絶縁性不良や絶縁性の低下が発生せず、かつメッキに使用される薬剤の環境への悪影響がないものであり、機器の小型化、軽量化、高密度配線化に対応し得る配線パターンが微細化したフレキシブルプリント配線板および、TAB、COF、COG、フィルムを利用した多層基板のビルドアップ層用材料などを作製し得る新規な薄くて反りのない(カール度の低い)金属化ポリイミドフィルムとなり、工業的な意義は極めて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明における金属化ポリイミドフィルムにおけるポリイミドフィルムは、芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドフィルムであって、厚さ1μm〜10μmであれば、とくに限定されるものではないが、この本発明の金属化ポリイミドフィルムを製造するに際しては、300℃で10分間熱風処理した後のカール度が15%以下のポリイミドフィルムを使用することが好ましい。300℃で10分間熱風処理した後のカール度が15%以下のポリイミドフィルムを用いることで容易に本発明の金属化ポリイミドフィルムを製造することができる。
本発明における300℃で10分間熱風処理した後のカール度とは、所定の熱処理を行った後のポリイミドフィルムの面方向に対する厚さ方向への変形度合を意味し、具体的には、図1に示すように、50mm×50mmの試験片を、300℃で10分間熱風処理した後に、平面上に試験片を凹状となるように静置し、四隅の平面からの距離(h1、h2、h3、h4:単位mm)の平均値をカール量(mm)とし、試験片の各頂点から中心までの距離(35.36mm)に対するカール量の百分率(%)で表される値である。
試料片は、ポリイミドフィルム若しくは長尺フィルムの全長に対して5分の1の長さピッチで幅方向に2点(幅長の1/3と2/3の点)を試験片の中心点として計10点をサンプリングし、測定値は10点の平均値とする。
但し、10点のサンプリングをするに十分なフィルムがない場合は、可能な限り等間隔でサンプリングする。
具体的には、次式によって算出される。
カール量(mm)=(h1+h2+h3+h4)/4
カール度(%)=100×(カール量)/35.36
本発明におけるポリイミドフィルムの300℃で10分間熱風処理した後のカール度は、より好ましくは10%以下である。
さらに本発明の金属化ポリイミドフィルムに使用されるポリイミドフィルムとして好ましいのは、100℃から350℃における線膨張係数の平均値(CTE)が−5(ppm/℃)〜+25(ppm/℃)の範囲にあることに加えて、前記100℃から350℃における線膨張係数における微分線膨張係数(dCTE)が(−0.20)(ppm/℃2)以下の値を有さない(すなわち、各温度に対する各線膨張係数のプロットにおいて屈曲点を有しないこととその微分値が(−0.20)(ppm/℃2)以下の値を有さないものである)ポリイミドフィルムであり、単に100℃から350℃における線膨張係数の平均値(CTE)が−5(ppm/℃)〜+25(ppm/℃)の範囲にあることでは得られなかった金属薄膜積層における密着性が得られ、金属薄膜層の剥がれや皺の発生が極端に抑制し得るものとなる。
【0009】
屈曲点を有しないということは、100℃から350℃における線膨張係数の平均値を測定する際の各温度域とその線膨張係数値とのプロットの曲線において山部や谷部を構成するものが屈曲点であり、かかる屈曲点が線膨張係数の温度域に対するプロットにおいて存在しないことである。この屈曲点を有する場合は100℃から350℃における微分線膨張係数(dCTE)が通常0から僅かにプラス側に存在するすなわち漸増プロットを描くものではなく、100℃から350℃における微分線膨張係数(dCTE)が大きなマイナスの値を有するものとなる。
【0010】
本発明に使用するポリイミドフィルムは、芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドから得られるポリイミドフィルムである。
上述の「反応」は、特に限定はされないが、好ましくは溶媒中でジアミン類とテトラカルボン酸無水物類とを開環重付加反応に供してポリアミド酸溶液を得て、次いで、このポリアミド酸溶液からグリーンフィルムを成形した後に脱水縮合(イミド化)することによりなされる。
【0011】
本発明において、より好ましく使用されるポリイミドフィルムは、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類が、全ジアミンの10〜100mol%の範囲であるジアミン類とテトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドフィルムであり、例えばその製造方法としては、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類とテトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリアミド酸溶液(A)と、ベンゾオキサゾール構造を有さない芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリアミド酸溶液(B)とを、A:Bが10〜100:90〜0のmol比で、好ましくはA:Bが50〜100:50〜0のmol比で混合し、混合溶液を支持体上に塗布・流延し、乾燥して自己支持性フィルムのあるポリイミド前駆体フィルム(グリーンフィルムともいう)を得て、このグリーンフィルムを150℃〜500℃の範囲で熱処理して閉環イミド化してポリイミドフィルムとなす方法が挙げられ、この方法が好ましく採用される。
【0012】
本発明の好ましく使用するベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類としては、具体的には以下のものが挙げられる。
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

【0015】
【化3】

【0016】
【化4】

【0017】
【化5】

【0018】
【化6】

【0019】
【化7】

【0020】
【化8】

【0021】
【化9】

【0022】
【化10】

【0023】
【化11】

【0024】
【化12】

【0025】
【化13】

【0026】
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明は、前記ジアミンとは別に下記の芳香族ジアミンを使用してもよい。
そのようなジアミン類としては、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、
【0027】
3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
【0028】
1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
【0029】
1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ビフェニル、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、
【0030】
2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、
【0031】
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシル基、シアノ基、又はアルキル基又はアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基又はアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0032】
本発明で用いられるテトラカルボン酸類は好ましくは芳香族テトラカルボン酸無水物類である。芳香族テトラカルボン酸無水物類としては、具体的には、以下のものが挙げられる。中でも化4のピロメリット酸無水物が好ましく使用でき、このピロメリット酸無水物は全テトラカルボン酸のうち70モル%以上より好ましくは90モル%以上である。
【0033】
【化14】

【0034】
【化15】

【0035】
【化16】

【0036】
【化17】

【0037】
【化18】

【0038】
【化19】

【0039】
これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明においては、全テトラカルボン酸二無水物の30モル%未満であれば下記に例示される非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類を一種又は二種以上、併用しても構わない。そのようなテトラカルボン酸無水物としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、
【0040】
ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0041】
ジアミン類と、テトラカルボン酸無水物類とを重合してポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられる。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの質量が、通常5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%となるような量が挙げられる。
【0042】
ポリアミド酸を得るための重合反応(以下、単に「重合反応」ともいう)の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜70時間連続して撹拌および/又は混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割することや、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、例えば芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の質量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。
本発明におけるポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)は、特に限定するものではないが2.0〜6.0dl/g以上が好ましく、3.0dl/g以上がさらに好ましく、なおさらに4.0dl/g以上が好ましい。
【0043】
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸の有機溶媒溶液を製造するのに有効である。また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
重合反応により得られるポリアミド酸溶液から、ポリイミドフィルムを形成するためには、ポリアミド酸溶液を支持体上に塗布して乾燥するなどによりグリーンフィルムを得て、次いで、グリーンフィルムを熱処理に供することでイミド化反応させる方法が挙げられる。
【0044】
ポリアミド酸溶液を塗布する支持体は、ポリアミド酸溶液をフィルム状に成形するに足る程度の平滑性、剛性を有していればよく、表面が金属、プラスチック、ガラス、磁器などであるドラム又はベルト状回転体などが挙げられる。中でも、支持体の表面は好ましくは金属であり、より好ましくは錆びなくて耐腐食に優れるステンレスである。支持体の表面にはCr、Ni、Snなどの金属メッキを施してもよい。支持体表面は必要に応じて鏡面にすることや、あるいは梨地状に加工することができる。支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、スキージコーティング、リバースコーティング、ダイコーティング、アプリケータコーティング、ワイヤーバーコーティング等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
【0045】
グリーンフィルムを自己支持性が出る程度に乾燥する際に、乾燥後の全質量に対する残留溶媒量を制御することにより表裏面のイミド化率とその差が所定の範囲のグリーンフィルムを得ることができる。具体的には、乾燥後の全質量に対する残留溶媒量は、好ましくは25〜50質量%であり、より好ましくは35〜50質量%とするグリーンフィルムの製法である。当該残留溶媒量が25質量%より低い場合は、グリーンフィルム一方の側のイミド化率が相対的に高くなりすぎ、表裏面のイミド化率の差が小さいグリーンフィルムを得ることが困難になるばかりか、分子量低下により、グリーンフィルムが脆くなりやすい。また、50質量%を超える場合は、自己支持性が不十分となり、フィルムの搬送が困難になる場合が多い。
【0046】
乾燥後の全質量に対する残留溶媒量が所定の範囲であるグリーンフィルムを得るための乾燥条件としては、例えば、N−メチルピロリドンを溶媒として用いる場合は、乾燥温度は、好ましくは70〜130℃、より好ましくは75〜125℃であり、さらに好ましくは80〜120℃である。乾燥温度が130℃より高い場合は、分子量低下がおこり、グリーンフィルムが脆くなりやすい。また、グリーンフィルム製造時にイミド化が一部進行し、イミド化工程時に所望の物性が得られにくくなる。また70℃より低い場合は、乾燥時間が長くなり、分子量低下がおこりやすく、また乾燥不十分でハンドリング性が悪くなる傾向がある。また、乾燥時間としては乾燥温度にもよるが、好ましくは10〜90分間であり、より好ましくは15〜80分間である。乾燥時間が90分間より長い場合は、分子量低下がおこり、フィルムが脆くなりやすく、また10分間より短い場合は、乾燥不十分でハンドリング性が悪くなる傾向がある。また、乾燥効率の向上又は乾燥時気泡発生の抑制のために、70〜130℃の範囲で温度を段階的に昇温して、乾燥してもよい。
【0047】
このような条件を達成する乾燥装置も従来公知のものを適用でき、熱風、熱窒素、遠赤外線、高周波誘導加熱などを挙げることができる。
熱風乾燥を行う場合は、グリーンフィルムを自己支持性が出る程度に乾燥する際に、グリーンフィルム表裏面のイミド化率の範囲およびその差を所定範囲にするために、支持体の上面/下面の温度差を10℃以下、好ましくは5℃以下に制御するのが好ましく、上面/下面の熱風温度を個別にコントロールすることにより、当該温度差を制御すること必要である。
【0048】
グリーンフィルムのイミド化方法としては、従来公知のイミド化反応を適宜用いることが可能である。例えば、閉環触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、加熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)やポリアミド酸溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒および脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることができるが、ポリイミドフィルム表裏面の表面面配向度の差が小さいポリイミドフィルムを得るためには、熱閉環法が好ましい。
熱閉環法の加熱最高温度は、100〜500℃程度であるが、好ましくは200〜480℃である。加熱最高温度がこの範囲より低いと充分に閉環されづらくなり、またこの範囲より高いと劣化が進行し、フィルムが脆くなりやすくなる。より好ましい態様としては、150〜250℃で3〜20分間処理した後に350〜500℃で3〜20分間処理する2段階熱処理が挙げられる。
【0049】
化学閉環法では、ポリアミド酸溶液を支持体に塗布した後、イミド化反応を一部進行させて自己支持性を有するフィルムを形成した後に、加熱によってイミド化を完全に行わせることができる。この場合、イミド化反応を一部進行させる条件としては、好ましくは100〜200℃による3〜20分間の熱処理であり、イミド化反応を完全に行わせるための条件は、好ましくは200〜400℃による3〜20分間の熱処理である。
閉環触媒をポリアミド酸溶液に加えるタイミングは特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどといった脂肪族第3級アミンや、イソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどといった複素環式第3級アミンなどが挙げられ、中でも、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種のアミンが好ましい。ポリアミド酸1モルに対する閉環触媒の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.5〜8モルである。
【0050】
脱水剤をポリアミド酸溶液に加えるタイミングも特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などといった脂肪族カルボン酸無水物や、無水安息香酸などといった芳香族カルボン酸無水物などが挙げられ、中でも、無水酢酸、無水安息香酸あるいはそれらの混合物が好ましい。また、ポリアミド酸1モルに対する脱水剤の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.1〜4モルである。脱水剤を用いる場合には、アセチルアセトンなどといったゲル化遅延剤を併用してもよい。
【0051】
熱閉環反応であっても、化学閉環法であっても、支持体に形成されたポリイミドフィルムの前駆体(グリーンフィルム)を完全にイミド化する前に支持体から剥離してもよいし、イミド化後に剥離してもよい。
ポリイミドフィルムの厚さは特に限定されないが、後述するプリント配線基板用ベース基板に用いることを考慮すると、通常1〜10μm、好ましくは1〜8μmである。更に好ましくは1から6μmである。この厚さはポリアミド酸溶液を支持体に塗布する際の塗布量や、ポリアミド酸溶液の濃度によって容易に制御し得る。
熱閉環法とは、ポリアミド酸を加熱することでイミド化する方法である。ポリアミド酸溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒および脱水剤の作用によってイミド化反応を促進しても構わない。この方法では、ポリアミド酸溶液を支持体に塗布した後、イミド化反応を一部進行させて自己支持性を有するフィルムを形成した後に、加熱によってイミド化を完全に行わせることができる。
閉環触媒をポリアミド酸溶液に加えるタイミングは特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどといった脂肪族第3級アミンや、イソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどといった複素環式第3級アミンなどが挙げられ、中でも、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種のアミンが好ましい。ポリアミド酸1モルに対する閉環触媒の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.5〜8モルである。
【0052】
脱水剤をポリアミド酸溶液に加えるタイミングも特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などといった脂肪族カルボン酸無水物や、無水安息香酸などといった芳香族カルボン酸無水物などが挙げられ、中でも、無水酢酸、無水安息香酸あるいはそれらの混合物が好ましい。また、ポリアミド酸1モルに対する脱水剤の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.1〜4モルである。脱水剤を用いる場合には、アセチルアセトンなどといったゲル化遅延剤を併用してもよい。
支持体に形成されたポリイミドフィルムの前駆体(グリーンフィルム)を完全にイミド化する前に支持体から剥離してもよいし、イミド化後に剥離してもよい。
【0053】
本発明で使用するポリイミドフィルムには、滑剤をポリイミド中に添加含有せしめるなどしてフィルム表面に微細な凹凸を付与しフィルムの滑り性を改善することが好ましい。
滑剤としては、無機や有機の0.03μm〜3μm程度の平均粒子径を有する微粒子が使用でき、具体例として、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、ピロ燐酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、粘土鉱物などが挙げられる。更に好ましい平均粒子径としては0.03μm〜0.15μmである。
本発明で使用されるポリイミドフィルムは、通常は無延伸フィルムであるが、1軸又は2軸に延伸しても構わない。ここで、無延伸フィルムとは、テンター延伸、ロール延伸、インフレーション延伸などによってフィルムの面拡張方向に機械的な外力を意図的に加えずに得られるフィルムをいう。
【0054】
本発明の金属化ポリイミドフィルムにおいては、前記特定物性の耐熱性ポリイミドフィルムに、乾式製膜方法で銅などの金属層を形成することで得られるが、乾式製膜方法としては、薬剤液を使用しない乾式製膜方法であれば特に限定されず、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム加熱蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、溶射法などの方法が挙げられる。
【0055】
本発明においては、ポリイミドフィルムの表面に金属層を形成する前に表面処理を施してもよい、例えば表面処理を施したポリイミドフィルムの片面又は両面に金属層を積層する際、下地金属層を予め形成して主金属層を形成してもよく、これらの下地金属層として使用される金属としては、ポリイミドフィルムとの密着性を強固にするもの、拡散がないこと、耐薬品性や耐熱性が良いこと等の特性を有するものであれば限定されるものではないが、ニッケル、コバルト、V,Ti,Pd、TiN、Mo含有Cuが好適な例として挙げることができる。
前記した下地金属層は、例えば表面処理を施したプラスチックフィルムの片面又は両面に、ニッケル、コバルト、V,Ti,Pd、TiN、Mo含有Cuなどの非クロム系金属からなる群から選択した1種以上を、好適にはスパッタリング法、イオンプレーティング法で蒸着させて、下地金属層を形成する。この場合、加工の安定性、プロセスの簡素化、蒸着層の均一性を良好にし、カールの発生を少なくするスパッタリング法がより好適である。
下地金属層の膜厚は、1〜50nm(10〜500Å)の範囲が好ましく、2〜10nm(20〜100Å)の範囲がより好ましい。
【0056】
前記下地金属層上又は直接ポリイミドフィルム上に、銅などの主金属層を設けることができるが、この主金属層の金属としては、導電性の大きい金属であれば特に限定されず、金、銀、アルミニウム、銅、インジウム、錫などが挙げられるが、経済性、導電性などから銅又は銅を主成分とする銅合金が好ましく使用できる。
これらの主金属層の形成方法は、上記した乾式製膜方法であればよいが、好ましくは蒸着方法であり、この主金属層の膜厚(層厚)は、0.5μm〜5μmの範囲が好適で、0.7〜3μmの範囲がより好適である。更に望ましくは0.7μm〜1.5μmである。膜厚が0.5μm未満では、配線を形成した場合の各種の性能が低下し、5μmを越えるとコストが上昇しかつ軽少薄膜化の効果が少なくなるので、好ましくない。
本発明の金属化ポリイミドフィルムは、例えばFPC(フレキシブルプリント配線用基板)として極めて効果的に使用することができるが、本発明の金属化ポリイミドフィルムからのFPCは、軽少薄膜化に優れ、柔軟性に富んだフレキシブルプリント配線板とすることができ、より高精度な軽少短薄である配線回路を形成することができる。
【0057】
本発明における金属層形成時の温度は、特に限定されないが、100〜350℃とするのが好適である。
金属層形成時の真空度は、予め5×10-5Torr以下の高真空とし、さらに5×10-6Torr以下の高真空に保持した後に、ガス圧5×10-3Torr以下の高真空、好適には5×10-4Torr以下の高真空に保持しつつ、金属層を成膜する。例えば、スパッタリング時に使用するガス種はアルゴン、ネオン、クリプトン、ヘリウム等の稀ガスの他に窒素、水素、酸素も採用できるが、アルゴン、窒素が安価で好適である。
金属層の製膜時におけるフィルムの走行速度は、生産性やフィルムへの熱的なダメージを少なくする観点から、0.5〜20m/分の範囲が好適で、1.0〜10m/分の範囲がさらに好適である。速度が0.5m/分未満では生産性が低下し、またフィルムが蒸発時の輻射熱の影響を受けやすく、好ましくない。一方、20m/分を越えると形成される金属層が不均一となり好ましくない。
【0058】
本発明で使用する金属層の表面には、金属単体や金属酸化物などといった無機物の塗膜を形成してもよい。また金属層の表面を、カップリング剤(アミノシラン、エポキシシランなど)による処理、サンドプラスト処理、ホ−リング処理、コロナ処理、プラズマ処理、エッチング処理などに供してもよい。同様に、ポリイミドフィルムの表面をホ−ニング処理、コロナ処理、プラズマ処理、エッチング処理などに供してもよい。プラズマ処理においては、使用するガスとして、酸素、アルゴン、窒素、CF4、水素あるいはこれらの混合ガスが望ましい。さらに望ましくは、酸素ガス、窒素ガスである。また、処理時の圧力として、真空プラズマのほかに、大気圧でのプラズマを行ってもよい。
本発明の金属化ポリイミドフィルムは、厚さ1〜10μmのポリイミドフィルムの少なくとも片面に、乾式製膜方法によって形成された厚さ0.5〜5μmの金属層が形成された金属化ポリイミドフィルムであって、300℃で10分間熱風処理した後のカール度が10%以下である金属化ポリイミドフィルムである。
カール度の測定は、以下の実施例において説明する。本発明におけるカール度は300℃で10分間熱処理後の金属化ポリイミドフィルムのカール度であり、このカール度は10%以下であり、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下である。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。また実施例における各評価は前記した方法以外は下記する。
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により25℃で測定した。
(ポリアミド酸溶液の調製に使用した溶媒がN、N−ジメチルアセトアミドの場合はN、N−ジメチルアセトアミドを使用してポリマーを溶解し測定した。)
【0060】
2.ポリイミドフィルムの厚さ
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1254D)を用いて測定した。
【0061】
3.ポリイミドフィルムの引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度
測定対象のポリイミドフィルムを、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(島津製作所製、オートグラフ(商品名)、機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度を測定した。
【0062】
4.ポリイミドフィルムの線膨張係数と微分線膨張係数
(a)測定対象のポリイミドフィルムについて、下記条件にてMD方向およびTD方向の伸縮率を測定し、30℃〜40℃、40℃〜50℃、…と10℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を400℃まで行い、100℃から350℃までの全測定値の平均値をCTE(平均値)として算出した。MD方向、TD方向の意味は上記「3.」の測定と同様である。
(b)測定対象のポリイミドフィルムについて、下記条件にてMD方向およびTD方向の伸縮率を測定し、30℃〜40℃、40℃〜50℃、…と10℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を400℃まで行い、100℃から350℃までの全測定値を温度に対して微分演算処理をして100℃から350℃までの微分線膨張係数を算出した。
実施例、比較例における最小値はこの温度範囲でのMD方向およびTD方向における微分線膨張係数の最小値を示すものである。
装置名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 10mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0063】
5.300℃で10分間熱風処理した後のカール度
本発明において、金属化ポリイミドフィルムのカール度は、所定の金属層形成処理を行った後の50mm×50mmの試験片とした金属化ポリイミドフィルムの面方向に対する厚さ方向への変形度合を意味し、具体的には、300℃で10分間熱処理した金属化ポリイミドフィルムを、図2に示すように、50mm×50mmの試験片の中心を、垂直となるように支持し、四隅の平面からの距離の絶対値(h1、h2、h3、h4:単位mm)を求める。このとき、測定する角をフィルム中心より鉛直方向として、それぞれの角について測定した。h1、h2、h3、h4(単位mm)の平均値をカール量(mm)とし、試験片の各頂点から中心までの距離(35.36mm)に対するカール量の百分率(%)で表される値である。
試料片は、金属化ポリイミドフィルムの全長に対して5分の1の長さピッチで幅方向に2点(幅長の1/3と2/3の点)を試験片の中心点として計10点をサンプリングし、測定値は10点の平均値とする。
但し、10点のサンプリングをするに十分な金属化ポリイミドフィルムがない場合は、可能な限り等間隔でサンプリングする。
具体的には、次式によって算出される。
カール量(mm)=(h1+h2+h3+h4)/4
カール度(%)=100×(カール量)/35.36
ポリイミドフィルムのカール度は、300℃で10分間熱処理した後のフィルムの面方向に対する厚さ方向への変形度合を意味し、具体的には、図1に示すように50mm×50mmの試験片を、400℃で10分間熱風処理した後に、平面上に試験片を静置し、上記と同じ計算方法で四隅の平面からの距離(h1、h2、h3、h4:単位mm)の平均値をカール量(mm)とし、試験片の各頂点から中心までの距離(35.36mm)に対するカール量の百分率(%)で表される値である。
6.積層金属層の剥がれと皺
得られた金属層積層ポリイミドフィルムの少なくとも長さ0.3mを採取し、水平面に静置して、金属薄膜層の剥がれと皺とを目視観察し、ほとんど剥がれと皺が観察されないものを◎、剥がれと皺が僅かに観察できるものを△、剥がれと皺が多く観察できるものを×として判定した。
【0064】
〔参考例1〕
(ポリアミド酸の重合−1)
<ベンゾオキサゾール構造を有するジアミンからなるポリアミド酸の重合>
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール500質量部を仕込んだ。次いで、N、N−ジメチルアセトアミド8000質量部を加えて完全に溶解させた後,ピロメリット酸二無水物485質量部を加え,25℃の反応温度で48時間攪拌すると,淡黄色で粘調なポリアミド酸溶液(A)が得られた。得られた溶液のηsp/Cは4.0dl/gであった。
【0065】
〔参考例2〕
<ポリアミド酸の重合−2>
ピロメリット酸無水物545質量部、4,4’ジアミノジフェニルエーテル500質量部を8000質量部のN、N−ジメチルアセトアミドに溶解し、温度を20℃以下に保ちながら同様に反応させてポリアミド酸溶液(B−1)を得た。得られた溶液のηsp/Cは2.2でdl/gあった。
【0066】
〔参考例3〕
<ポリアミド酸の重合−3>
テトラカルボン酸二無水物として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物398質量部、パラフェニレンジアミン147質量部を4600質量部のN、N−ジメチルアセトアミドに溶解し、温度を20℃以下に保ちながら同様に反応させてポリアミド酸溶液(B−2)を得た。得られた溶液のηsp/Cは3.0dl/gであった。
【0067】
〔実施例1〜11、比較例1〜7〕
各参考例で得られたポリアミド酸溶液を表1、2に示す割合で混合し、この混合ポリアミド酸溶液をコンマコーターを用いて幅600mm、ステンレス製エンドレスベルトの片面に塗膜乾燥厚さが表1および2に示した厚さとなるようにコーティングして、110℃で60分間乾燥・剥離して各ポリイミド前駆体フィルムであるグリーンフィルムを得て、このグリーンフィルムを窒素置換された連続式の熱処理炉に通し、第1段、第2段の2段階の高温加熱を施して、イミド化反応を進行させた。
その後、5分間で室温にまで冷却することで、褐色を呈する各例のポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの測定結果を表1、2(微分線膨張係数の欄まで)に記載する。
【0068】
(スパッタ下地金属層膜の作製)
前記各例において得られたフィルムを巻き出し装置、巻き取り装置、プラズマ処理装置、2つのターゲットを備えたスパッタリング室のある、真空装置内にセットし、次いでフィルムを送りながら、フィルム表面のプラズマ処理を行った。プラズマ処理条件は酸素ガス中で、周波数13.56MHz、出力90W、ガス圧0.9Paの条件であり、処理時の温度は特にコントロールはしていない。プラズマ雰囲気での滞留時間約20秒であった。
次いで、プラズマ処理後のフィルムを、スパッタリングエリアで、出力800W、到達真空度2×10-4Paまで、真空引きをした後に、アルゴンガスを導入して、アルゴンガス圧0.5Paの条件、ニッケル−銅合金ターゲットを用い、アルゴン雰囲気下にてDCマグネトロンスパッタリング法により、ニッケル−銅合金被膜を形成した。次いで、銅ターゲットを用いてスパッタリングにより厚さ300nm銅薄膜を形成させ薄膜作製例1として得た。スパッタリング時のフィルムは、5℃に温度コントロールされたチルロールに接している。
【0069】
(電子ビーム蒸着金属薄膜の作製)
スパッタリング下地金属層膜を作製した各フィルムを、巻き出し装置、巻き取り装置、プラズマ処理装置、電子ビーム蒸着のある、真空装置内にセットした。まずフィルムを送りながらスパッタリング下地膜面をプラズマ処理した。プラズマ処理条件は酸素ガス中で、周波数13.56MHz、出力90W、ガス圧0.9Paの条件であり、処理時の温度は特にコントロールはしていない。プラズマ雰囲気での滞留時間約20秒であった。このときプラズマ処理によって、スパッタリング薄膜上の酸化層が除去される程度であって、スパッタリング下地金属層膜が大幅に除去されることはなかった。
次いで、プラズマ処理後のフィルムに、電子ビーム蒸着で銅層を堆積させた。到達真空度5×10-4Paまで、真空引きをした後に、電子ビーム蒸着を行った。
この装置の真空槽内において、巻き出しロールから巻き出された基材フィルムは、ガイドロールを経て、チルロールに供給される。その後、この基材フィルムは、ガイドロールを経て、巻き取りロールに巻き取られる。防着板には、孔が設けられている。「るつぼ」は、高周波電圧印加電極および防着板の孔部分をはさんで、チルロールと対向する場所に位置している。「るつぼ」に充填された蒸着源材料は、加熱され、蒸気となる。その蒸気は、孔を通り、チルロール表面の基材フィルムに蒸着され、所望の薄膜が形成される。
これらの各(ポリイミドフィルムの銅薄膜層積層体)金属化ポリイミドフィルムにおける銅薄膜層の剥がれと皺を評価した。その結果を表1、2、3および4に示す。
【0070】
(パターンの作製)
感光レジストを上記フレキシブル金属張積層体の銅箔表面に積層し、マスクフィルムにて露光焼付け、現像し、必要なパターンとして、図3に示すような「くし形パターン」を転写した。ここで、導体幅と導体間隔は、1μm/1μm、5μm/5μmの2種類として、パターンの重ねしろは15.75mmとした。パターン本数は片側20本、もう片側を21本とした。次いで、40℃の35%塩化第二銅液を用いて銅箔をエッチング除去し、回路形成に用いたレジストをアルカリにより除去して回路加工を行った。
パターンの良否は光学顕微鏡観察を行い、その後、HAST試験法に準じた試験を行った。印加電圧は0.5VDC、測定間隔1回・60分絶縁である。
これらの各ポリイミドフィルムの銅薄膜層積層体における銅薄膜層のパターンの良否とHAST試験を評価した。抵抗測定装置JIS C1303規定品、試験条件110℃、85%RH、400時間にて行った。その結果を表1、2、3および4に示す。
なお、厚さ5μm、3μmのフィルムについては、蒸着をする面と、反対の面に粘着剤の付いたPETフィルムを貼り付けて、スパッタリング、電子ビーム蒸着を行った。このようにすることで、ロール搬送時にフィルムが皺になること、搬送時にすべりが生じることを防いだ。
比較例3,4として、電子ビーム蒸着の膜厚の異なるものを作製した。比較例5,6,7として、スパッタリング下地膜作製後に電解めっきを行った。
めっきは硫酸銅めっきを行った。電解めっき液(硫酸銅80g/l、硫酸210g/l、HCl、光沢剤少量)に浸漬、アノードには含リン銅板を使い、めっき液をバブリングにより攪拌しながら、電流を1.5Adm2流して、銅層を作製した。結果を表4に示す。
【0071】
【表1】

引張破断強度〜線膨張係数(平均値)の欄において上段はMD方向、下段はTD方向での値を示す。
【0072】
【表2】

引張破断強度〜線膨張係数(平均値)の欄において上段はMD方向、下段はTD方向での値を示す。
【0073】
【表3】

【0074】
【表4】

【0075】
下地金属層として、ニッケル−銅ターゲットの代わりにTiNターゲットを用いた以外は薄膜作製例1と同様にして、薄膜作製例2を得た。
下地金属層として、ニッケル−銅ターゲットの代わりに銅(Cu)にモリブデン(Mo)を微量添加したターゲットを用いた以外は薄膜作製例1と同様にして、薄膜作製例3を得た。
下地金属層として、ニッケル−銅ターゲットの代わりにモネル合金ターゲットを用い用いた以外は薄膜作製例1と同様にして、薄膜作製例4を得た。
(このときのターゲット組成はNi:66.0、C:0.12、Mn:0.9、Fe:1.35、S:0.005、Si:0.15、Cu:31.5の各質量%であった。)
これら薄膜作製例2,3,4についても、上記実施例、比較例と同様に、フィルム組成、フィルム厚さ、電子ビーム蒸着銅の膜厚、パターンの導体幅/導体間隔を変えた実験を行ったが、前記実施例、比較例と同様の結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の、厚さ1μm〜10μmであるポリイミドフィルムの少なくとも片面に、乾式製膜方法によって形成された厚さ0.5μm〜5μmの金属層が形成されたカール度が10%以下の金属化ポリイミドフィルムは、硫酸イオンなどの絶縁性などに大きな影響を及ぼす因子を含むことがない、しかも平面的にフラットな金属化ポリイミドフィルムであり、機器の小型化、軽量化、高密度配線化に対応し得る配線パターンが微細化したフレキシブルプリント配線板、TAB、COF、COG、フィルムを利用した多層基板のビルドアップ層用材料など、に有効に使用することができ工業的な意義は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】金属化フィルムの300℃で10分間熱風処理した後カール度の測定方法を示す模式図。
【図2】ポリイミドフィルムの300℃で10分間熱風処理した後のカール度の測定方法を示した模式図。(a)は上面図であり、(b)は熱風処理前の(a)におけるa−aで示される断面図であり、(c)は熱風処理後の(a)におけるa−aで示される断面図である。
【図3】くし型パターンの例を示す図
【符号の説明】
【0078】
1、2、3、4 金属化フィルム面の四隅の角を示す。
5 ポリイミドフィルムの試験片
6 アルミナ・セラミック板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドから得られる厚さ1〜10μmのポリイミドフィルムの少なくとも片面に、乾式製膜方法によって形成された厚さ0.5〜5μmの金属層が形成された金属化ポリイミドフィルムであって、300℃で10分間熱風処理した後のカール度が10%以下であることを特徴とする金属化ポリイミドフィルム。
【請求項2】
ポリイミドフィルムが、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類が、全ジアミンの10〜100mol%の範囲であるジアミン類とテトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドのフィルムである請求項1記載の金属化ポリイミドフィルム。
【請求項3】
金属層が銅を主成分とする層である請求項1〜2いずれかに記載の金属化ポリイミドフィルム。
【請求項4】
金属層が、ポリイミドフィルム側から、1nm〜50nm厚さの下地金属層、厚さ0.5〜5μmの銅を主成分とする金属層の順で構成された金属層である請求項1〜3いずれかに記載の金属化ポリイミドフィルム。
【請求項5】
芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドから得られる厚さ1〜10μm、300℃で10分間熱風処理した後のカール度15%以下のポリイミドフィルムの少なくとも片面に、乾式製膜方法で厚さ0.5〜5μmの金属層を形成することを特徴とする請求項1〜4記載の金属化ポリイミドフィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−237543(P2007−237543A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62590(P2006−62590)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】