説明

金属含有錯体及びそれを用いた被着法

【課題】半導体製造におけるALDチタン酸ストロンチウム(STO)もしくはチタン酸バリウムストロンチウム(BST)膜製造に有用な前駆体を提供する。
【解決手段】β−ジケトネート及びN−メチルピロリドンの両方を含む新規なSr及びBa錯体。例えば、Ba2(hfac)4(NMP)5やSr2(tmhd)4(NMP)4などが挙げられる。これらの錯体は揮発性であり、ALDチタン酸ストロンチウム(STO)もしくはチタン酸バリウムストロンチウム(BST)膜のための可能な前駆体として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
半導体製造産業は、集積回路に種々の電子素子を構築するために、チタン酸バリウムストロンチウム膜(BST)の被着に関心を示してきた。この産業は、標準の被着条件下で安定であり、液体であり、容易に分解して、高純度のBST膜を残し、かつ気相中のバリウム、ストロンチウム及びチタンの前駆体の残留物を除去する、典型的には、金属が配位子前駆体から被着されてその結果本質的に被着した金属及び揮発物を生じ、気相脱離基が、前駆体の形態の金属を結合する配位子を構成する、又は被着されたBST膜を汚染せず、典型的には揮発性の気体状の基として去る良好な脱離基である特性をなおも示す配位子の分解成分を構成する被着条件が提供されるまで、可逆的に金属を結合する配位子の形態での、バリウム、ストロンチウム及びチタンの前駆体を捜し求めてきた。
【0002】
当分野の典型的な技術として、以下のものが挙げられる。
【0003】
Auld, J.; Jones, A. C.; Leese, A. B.; Cockayne, B.; Wright, P. J.; 0’Brien, P.; Motevalli, M., “Vapor−phase transport of barium b−diketonates in the deposition of oxides and the isolation and structural characterization of a novel hexameric cluster of 2,2,6,6−tetramethylheptane−3,5−dionato−barium(II)”, Journal of Materials Chemistry, 3, (12), 1203−8, (1993).
【0004】
Baum, T. H., “AIkane and polyamine solvent compositions for liquid delivery chemical vapor deposition”, 99−454954 6344079, 19991203., (2002).
【0005】
Baum, T. H.; Paw, W., “Group IIA β−diketonate tetrahydrofuran−adduct complexes as source reagents for chemical vapor deposition”, 99−321637 6218518, 19990528., (2001).
【0006】
Bedoya, C.; Condorelli, G. G.; Motta, A.; Mauro, A. D.; Anastasi, G.; Fragala, I. L.; Lisoni, J. G.; Wouters, D., “MOCVD of Sr−Containing Oxides: Transport Properties and Deposition Mechanisms of the Sr(tmhd)2・pmdeta Precursor”, Chemical Vapor Deposition, 11, 269−275, (2005).
【0007】
Brooks, J.; Davies, H. O.; Leedham, T. J.; Jones, A. C.; Steiner, A., “The crystal structure of unadducted strontium bis−tetramethylheptanedionate: The standard precursor for the MOCVD of strontium−containing oxides”, Chemical Vapor Deposition, 6, (2), 66+, (2000).
【0008】
Cheol Seong, H.; Jaehoo, P.; Doo Sup, H.; Cha Young, Y., Compositional Variation of Metallorganic Chemically Vapor Deposited SrTiO3 Thin Films along the Capacitor Hole Having a Diameter of 0.15 mu m. In ECS: (2001); Vol. 148, pp G636−G639.
【0009】
Drake, S. R.; Miller, S. A. S.; Willams, D. J., “Monomeric Group IIA metal β−diketonates stabilized by multidentate glymes”, Inorganic Chemistry, 32, (15), 3227−35, (1993).
【0010】
Drozdov, A. A.; Trojanov, S. I., “New oligomeric structures of barium dipivaloylmethanate, Ba4(tmhd)8, and its pivalate derivative Ba5(tmhd)9(piv)”, Polyhedron 11, 2877−2882 (1992).
【0011】
Gardiner, R. A.; Gordon, D. C.; Stauf, G. T.; Vaartstra, B. A., “Mononuclear Barium Diketonate Poryamine Adducts − Synthesis, Structures, and Use in MOCVD of Barium−Titanate”, Chemistry of Materials, 6, (11), 1967−1970, (1994).
【0012】
Ghandari, G.; Glassman, T. E.; Studebaker, D. B.; Stauf, G.; Baum, T. H., “Comparison of (L)M(tmhd)2(M=Mg, Ca, Sr, Ba; L=tetraglyme, pmdeta) precursors for high K dielectric MOCVD”, Materials Research Society Symposium Proceedings, 446, (Amorphous and Crystalline Insulating Thin Films−−1996), 327−332, (1997).
【0013】
Glassman, T. E.; Bhandari, G.; Baum, T. H., “Evidence for cooperative oxidation of MOCVD precursors used in BaxSr1-xTiO3 film growth”, Materials Research Society Symposium Proceedings, 446, (Amorphous and Crystalline Insulating Thin Films−−1 996), 321−326, (1997).
【0014】
Hintermaier, F. S.; Baum, T. H., “Alkane and polyamine solvent compositions for liquid delivery chemical vapor deposition”, 98−185374 6214105, 19981103., (2001).
【0015】
Hubertpfalzgraf, L. G.; Labrize, F., “Barium Beta−Diketonate Derivatives with Aminoalcohols − Synthesis, Molecular−Structure and Thermal−Behavior of Ba5(μ4−OH)(μ3,η2−OCH(Me)CH2NMe24(μ,η2−tmhd)4(η2−tmhd) and of [Ba(μ,η2:η2−tmhd)(η2−tmhd)(η2−OHCH(Me)CH2NMe2)]2”, Polyhedron, 13, (14), 2163−2172, (1994).
【0016】
Hwang, C. S.; No, S. Y.; Park,J.; Kim, H. J.; Cho, H. J.; Han,Y. K.; Oh, K. Y., “Cation Composition Control of MOCVD (Ba,Sr)TiO3 Thin Films along the Capacitor Hole”, Journal of The Electrochemical Society, 149, (10), G585−G592, (2002).
【0017】
Kwon, O. S.; Kim, S. K.; Cho, M.; Hwang, C. S.; Jeong, J., “Chemically Conformal ALD of SrTiO3 Thin Films Using Conventional Metallorganic Precursors”, Journal of The Electrochemical Society, 152, (4), C229−C236, (2005).
【0018】
Kwon, O. S.; Lee, S. W.; Han, J. H.; Hwang, C. S., “Atomic Layer Deposition and Electrical Properties of SrTiO3 Thin Films Grown Using Sr(C111922, Ti(Oi−C374, and H2O”, J. Electrochem. Soc., 154, G127−G133, (2007).
【0019】
Min, Y.−S.; Cho, Y. J.; Kim, D.; Lee, J.−H.; Kim, B. M.; Lim, S. K.; Lee, I. M.; Lee, W. I., “Liquid source−MOCVD of BaxSr1-xTiO3 (BST) thin films with a N−alkoxy−b−ketoiminato titanium complex”, Chemical Vapor Deposition, 7, (4), 146−149, (2001).
【0020】
Ohkawa, A.; Tsutsumi, Y., “Deposition of thin films in fabrication of semiconductor devices by MOCVD process”, 98−263702 2000100802, 19980917., (2000).
【0021】
Paw, W.; Baum, T. H., “Preparation of Group IIA metal b−diketonate Lewis base MOCVD source reagents, and method of forming Group IIA metal−containing films utilizing same”, 6338873, Jul 6, 2000, (2002).
【0022】
Roeder, J. F.; Stauf, G. T., “Liquid delivery MOCVD process for deposition of high frequency dielectric materials”, 99−US29566 2000037712, 19991213., (2000).
【0023】
Rossetto, G.; Polo, A.; Benetollo, F.; Porchia, M.; Zanella, P., “Studies on Molecular Barium Precursors for Mocvd − Synthesis and Characterization of Barium 2,2,6,6−Tetramethyl−3,5−Heptanedionate − X−Ray Crystal−Structure of [Ba(tmhd)2.Et2O]2”, Polyhedron, 11, (8), 979−985, (1992).
【0024】
Stauf, G. T.; Reoder, J. F.; Baum, T. H., “Liquid delivery MOCVD process for deposition of high frequency dielectric materials”, 98−216673 6277436, 19981218., (2001).
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、次のA、B、及びCからなる群より選ばれる構造により表される金属含有錯体を対象とするものである。
【0026】
【化1】

【0027】
(この式中のMは、Mg、Ca、Sr及びBaから選択され、R1及びR3は独立して、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキル、アルコキシアルキル及びフルオロアルキル、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、R2は、水素、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキル、フルオロアルキル及びアルコキシ、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、L1は、有機アミド類RCONR’R”(この式中のR及びR’は1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキルであり、それらは連結して、環状基(CH2q(ここでのqは4〜6である)を形成することができ、そしてR”は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル及び4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択される)からなる群より選択され、L2は、H2O及びROH(この式中のRは1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキルであり、それらは連結して、環状基(CH2q(ここでのqは4〜6である)を形成することができる)からなる群より選択され、nは1と4の間から選択される数であり、mは0から4の間の数から選択され、pは1、2から選択される)
【0028】
【化2】

【0029】
(この式中のMは、Mg、Ca、Sr及びBaから選択され、R1及びR4は、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキル、アルコキシアルキル及びフルオロアルキル、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、R2及びR3は、水素、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキル、アルコキシアルキル、フルオロアルキル及びアルコキシ、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、Lは、有機アミド類RCONR’R”(この式中のR及びR’は独立して、1〜10個の炭素原子を有するアルキルであり、それらは連結して、環状基(CH2q(ここでのqは4〜6である)を形成することができ、そしてR”は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル及び4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択される)からなる群より選択され、nは0と4の間から選択される数であり、mは1から4の間の数から選択され、pは1、2から選択され、μ−Lは、p=2のとき、Lが2個の金属Mに、μLの酸素原子を介して結合されることを示す)
【0030】
【化3】

【0031】
(この式中のMは、Mg、Ca、Sr及びBaから選択され、R1及びR3は独立して、1〜10個の炭素原子の線状もしくは分岐したアルキル、アルコキシアルキル及びフルオロアルキル、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、R2は、水素、1〜10個の炭素原子の線状もしくは分岐したアルキル、フルオロアルキル及びアルコキシ、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、Lは、有機アミド類RCONR’R”(この式中のR及びR’は独立して、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキルであり、それらは連結して、環状基(CH2q(ここでのqは4〜6である)を形成することができ、そしてR”は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル及び4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択される)の群より選択され、nは0と4の間から選択される数であり、mは1から4の間の数から選択され、pは1、2から選択され、μ−Lは、p=2のとき、Lが2個の金属Mに、μLの酸素原子を介して結合されることを示す)
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
β−ジケトネート及びN−メチルピロリドンの両方を含む新規なSr及びBa錯体が合成され、特性決定された。熱重量分析(TGA)実験で、これらの錯体が揮発性であること、及びそれらが、半導体の製造においてチタン酸ストロンチウム(STO)又はチタン酸バリウムストロンチウム(BST)膜の化学蒸着(CVD)、サイクリック化学蒸着(CCVD)、又は原子層堆積(ALD)のための可能な前駆体として使用できることが示される。STO及びBST膜の被着においては、チタン源は、チタンアルコキシド又はβ−ジケトネートによって例示されるチタン含有前駆体、例えばTi(OPri4、Ti(tmhd)2(OPri2(ここでPri=イソプロピル、tmhd=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、Ti(mpd)(tmhd)2(ここでmpd=2−メチル−2,4−ペンタンジオキシ)、Ti(4−(2−メチルエトキシ)イミノ−2−ペンタノエート)2など、及び類似のチタン配位子及び誘導体から選択される。
【0033】
これらの第2族金属錯体は、半導体用途のために第2族金属含有膜を被着することができる前駆体である。この金属錯体は、以下の(i)、(ii)及び(iii)を包含する。
【0034】
(i)[M(R1C(O)CR2C(O)R32(L1n(L2mpの式を有する、付加物として有機アミドを有する第2族β−ジケトネート(この式中のR1及びR3は独立して、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキル、アルコキシアルキル及びフルオロアルキル、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、R2は、水素、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキル、フルオロアルキル及びアルコキシ、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、L1は、有機アミド類RCONR’R”(この式のR及びR’は1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキルであり、それらは連結して、環状基(CH2q(ここでのqは4〜6である)を形成することができる、そしてR”は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル及び4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択される)からなる群より選択され、L2は、H2O及びROH(この式のRは1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキルであり、それらは連結して、環状基(CH2q(この式のqは4〜6である)を形成することができる)からなる群より選択され、nは1と4の間から選択される数であり、mは0から4の間の数から選択され、pは1、2から選択される)。
【0035】
(ii)[M(R1C(O)CR2C(NR3)R42(μ−L)nmpの式を有する、付加物として有機アミドを有する第2族β−ケトイミネート(この式中のR1及びR4は独立して、1〜10個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシアルキル及びフルオロアルキル、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、R2及びR3は独立して、水素、1〜10個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシアルキル、フルオロアルキル及びアルコキシ、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、Lは、式RCONR’R”(この式のR及びR’は独立して、1〜10個の炭素原子を有するアルキルであり、それらは連結して、環状基(CH2q(この式のqは4〜6、好ましくは5である)を形成することができ、R”は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル及び4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択される)の有機アミド類の群より選択され、nは1と10の間から選択される数、好ましくは3、4であり、mは0から4の間の数から選択され、pは1、2から選択され、μ−Lは、p=2のとき、Lが2個の金属Mに、μLの酸素原子を介して結合されることを示す)。
【0036】
(iii)[M(R1NC(R2)NR32(μ−L)nmpの式を有する、付加物として有機アミドを有する第2族アミジネート(この式中のR1及びR3は独立して、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキル、アルコキシアルキル及びフルオロアルキル、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、R2は、水素、1〜10個の炭素原子の線状もしくは分岐したアルキル、フルオロアルキル及びアルコキシ、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、2個の金属原子間を橋架けしているか又は1個の金属原子に配位しているLは、有機アミド類RCONR’R”(この式のR及びR’は独立して、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキルであり、それらは連結して、環状基(CH2q(ここでのqは4〜6である)を形成することができ、そしてR”は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル及び4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択される)からなる群より選択され、nは0と4間から選択される数であり、mは1から4の間の数から選択され、pは1、2から選択され、μ−Lは、p=2のとき、Lが2個の金属Mに、μLの酸素原子を介して結合されることを示す)。
【0037】
本発明は、基材、例えばシリコン、金属窒化物、金属酸化物及び他の金属層などの上に、被着法、例えば化学蒸着(CVD)、プラズマ化学蒸着(PECVD)、低圧化学蒸着(LPCVD)、プラズマ原子層堆積(PEALD)及び原子層堆積(ALD)、によってコンフォーマル金属含有膜を製造するのに有用な、β−ケトネートもしくはβ−ケトイミネートもしくはアミジネートと有機アミドの両方を有する第2族金属含有錯体と、その溶液に関する。そのようなコンフォーマル金属含有膜は、コンピュータチップ、光学機器、磁気情報記憶装置から、支持材料上にコーティングされた金属触媒までの範囲にわたる用途を有する。従来の多座β−ケトイミネート前駆体と対照的に、上記の多座β−ケトイミネート配位子は、少なくとも1個のアミノ有機イミノ官能性を組み込んでおり、これは供与配位子として文献で報告されているアルコキシ基と対照的である。
【0038】
金属前駆体における1つのタイプの構造は、次の式を有する下記の構造A(ここでの金属Mは第2族金属である)で説明される。
【0039】
【化4】

【0040】
(この式中のMは、Mg、Ca、Sr及びBaから選択され、R1及びR3は独立して、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキル、アルコキシアルキル及びフルオロアルキル、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、R2は、水素、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキル、フルオロアルキル及びアルコキシ、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、L1は、有機アミド類RCONR’R”(この式中のR及びR’は1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキルであり、それらは連結して、環状基(CH2q(ここでのqは4〜6である)を形成することができ、そしてR”は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル及び4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択される)からなる群より選択され、L2は、有機アミド類RCONR’R”(この式中のR及びR’は独立して、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキルであり、それらは連結して、環状基(CH2q(ここでのqは4〜6である)を形成することができる)と、中立の酸素からなる群より選択され、nは1と4の間から選択される数であり、mは0から4の間の数から選択され、pは1、2から選択される)
【0041】
金属前駆体における別のタイプの構造は、次の式を有する下記の構造B(ここでの金属Mは第2族金属である)で説明される。
【0042】
【化5】

【0043】
(この式中のMは、Mg、Ca、Sr及びBaから選択され、R1及びR4は、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキル、アルコキシアルキル及びフルオロアルキル、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、R2及びR3は、水素、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキル、アルコキシアルキル、フルオロアルキル及びアルコキシ、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、Lは、有機アミド類RCONR’R”(この式中のR及びR’は独立して、1〜10個の炭素原子を有するアルキルであり、それらは連結して、環状基(CH2q(ここでのqは4〜6である)を形成することができ、そしてR”は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル及び4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択される)からなる群より選択され、nは0と4の間から選択される数であり、mは1から4の間の数から選択され、pは1、2から選択され、μ−Lは、p=2のとき、Lが2個の金属Mに、μLの酸素原子を介して結合されることを示す)
【0044】
金属前駆体における第三のタイプの構造は、次の式を有する下記の構造C(ここでの金属Mは第2族金属である)で説明される。
【0045】
【化6】

【0046】
(この式中のMは、Mg、Ca、Sr及びBaから選択され、R1及びR3は独立して、1〜10個の炭素原子の線状もしくは分岐したアルキル、アルコキシアルキル及びフルオロアルキル、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、R2は、水素、1〜10個の炭素原子の線状もしくは分岐したアルキル、フルオロアルキル及びアルコキシ、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、Lは、有機アミド類RCONR’R”(この式中のR及びR’は独立して、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキルであり、それらは連結して、環状基(CH2q(ここでのqは4〜6である)を形成することができ、そしてR”は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル及び4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択される)の群より選択され、nは0と4の間から選択される数であり、mは1から4の間の数から選択され、pは1、2から選択され、μ−Lは、p=2のとき、Lが2個の金属Mに、μLの酸素原子を介して結合されることを示す)
【0047】
β−ケトネートもしくはβ−ケトイミネート配位子及び有機アミドの両方を有するこれらの金属含有錯体は、500℃未満の温度で、化学蒸着(CVD)又は原子層堆積(ALD)法のいずれかによって、薄い金属もしくは金属酸化物膜を作るための可能性ある前駆体として使用することができる。CVD法は、還元剤又は酸化剤を用いて又は用いずに行うことができ、それに対してALD法は通常、別の反応物、例えば還元剤又は酸化剤などの使用を必要とする。
【0048】
多成分金属酸化物、例えばSTOやBSTなどのために、β−ケトネートもしくはβ−ケトイミネートもしくはアミジネート配位子と有機アミドとを有するこれらの金属含有錯体は、ストロンチウム又はバリウム源として、よく知られたバブリング又は蒸気吸引技術によって気相でCVD又はALD反応器へ送給することができる。チタン源は、チタンアルコキシドもしくはβ−ジケトネート、例えばTi(OPri4、Ti(tmhd)2(OPri2(ここで、Pri=イソプロピル、tmhd=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、Ti(mpd)(tmhd)2(ここで、mpd=2−メチル−2,4−ペンタンジオキシ)、Ti(4−(2−メチルエトキシ)イミノ−2−ペンタノエート)2など、及び類似のチタン配位子及び誘導体から選択される。チタン、ストロンチウムならびにバリウム錯体を適当な溶媒もしくは溶媒混合物に溶解して、使用される溶媒もしくは混合溶媒に応じて0.001〜2Mのモル濃度を有する溶液を調製することによって、直接液体送給法を使用することもできる。被着法のための酸化剤としては、酸素、水、過酸化水素、酸素プラズマ、一酸化二窒素及びオゾンが挙げられる。好ましい実施態様においては、多成分金属酸化物膜は、200〜500℃、好ましくは250〜350℃の温度範囲で成長させられ、それによって、アモルファスのSTOもしくはBST膜が得られる。得られた膜をアモルファスから結晶形へと変えるために、熱アニーリングが必要とされる。このアニーリングは、酸化条件下でより高い500〜1200℃の温度で、DRAM用途における高k誘電体のためには、好ましくは500〜700℃の範囲の温度で、行うことができる。白金(Pt)、RuO2、SrRuO3、シリカ、窒化ケイ素及びシリコンを包含する相性のよい基材上に被着させたSTOもしくはBST膜の厚みは、1〜500nm、好ましくは2〜10nmの範囲にある。処理室の圧力は、好ましくは約0.1〜100Torr、より好ましくは約0.1〜5Torrであることができる。
【0049】
被着プロセスにおいて使用するために前駆体を可溶化するのに使用される溶媒は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル、エステル、亜硝酸エステル、及びアルコールを含めて、任意の相溶性溶媒又はそれらの混合物を含むことができる。溶液の溶媒成分は好ましくは、1〜20個のエトキシ−(C24O)−繰り返し単位を有するグリム溶媒、C2〜C12アルカノール、C1〜C6アルキル部分を含むジアルキルエーテル、C4〜C8環状エーテル、C12〜C60クラウンO4〜O20エーテル(ここでCはエーテル化合物中の炭素原子の数であり、Oはエーテル化合物中の酸素原子の数である)からなる群より選択される有機エーテル、C6〜C12脂肪族炭化水素、C6〜C18芳香族炭化水素、有機エステル、有機アミン、ポリアミン及び有機アミド、からなる群より選択される溶媒を含む。
【0050】
利点をもたらす別の部類の溶媒は、式RCONR’R”(この式中のR及びR’は独立して、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキルであり、それらは連結して、環状基(CH2q(この式のqは4〜6、好ましくは5である)を形成することができ、R”は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル及び4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択される)の有機アミド類である。N−メチルピロリジノン(NMP)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N−ジエチルアセトアミド(DEAC)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、及びN−シクロヘキシル2−ピロリジノンが例である。
【0051】
以下の例は、β−ジケトンもしくはβ−ケトイミネート配位子を有する金属含有錯体の製造と、金属含有膜の被着処理においてそれらを前駆体として使用することについて説明する。
【実施例】
【0052】
〔例1〕Ba2(hfac)4(NMP)5の合成
【0053】
0.52g(3.80ミリモル)のBaH2を、15mLのトルエンとともにフラスコに入れた。このフラスコに、2.15g(21.70ミリモル)のNMPを添加した後、1.57g(7.60ミリモル)の1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオン(hfac)を添加した。5〜10分後に泡立ちがやむまで、反応混合物を室温で撹拌した。減圧下で揮発物を除去し、白色固体の形成を認めた。蒸発を終えたら、液体を残し、これをヘキサン中に加え、−40℃の冷凍庫で再結晶させた。再結晶した固体からヘキサンをデカンテーションし、固体をトルエン中に加え、冷凍庫で再び再結晶させた。結晶からトルエンをデカンテーションした。結晶は、結晶構造分析により二量体Ba2(hfac)4(NMP)5と同定された。
【0054】
〔例2〕Sr2(tmhd)4(NMP)4の合成
【0055】
0.50g(5.58ミリモル)のSrH2を、5gのNMPとともに100mLのシュレンクフラスコに入れた。このフラスコに、5gのNMP中の2.06g(11.16ミリモル)の2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン(tmhd)を添加し、泡立ちが生じた。室温で1晩撹拌しておいた。反応混合物を65〜70℃で真空移送に供し、2.86gの重量の灰色固体が残った。−40℃の冷凍庫中でヘキサン対ヘプタン1:1の溶液中で再結晶させて、透明な針状結晶が得られ、これは結晶構造分析により二量体Sr2(tmhd)4(NMP)4と同定された。
【0056】
〔例3〕Sr2(tmhd)4(DEAC)3の合成
【0057】
0.50g(5.58ミリモル)のSrH2のヘキサン懸濁液に、室温でヘキサン中に2.10g(11.16ミリモル)の2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン(tmhd)及び2.60g(22.32ミリモル)のN,N−ジエチルアセトアミド(DEAC)を添加した。泡立ちと発熱が生じ、懸濁液は約10分後に溶液になった。この反応混合物を16時間撹拌し、ヘキサンを除去して油を生じさせ、これを真空移送にかけて80℃にて300mTorr下で数時間加熱した。2.38gの透明な残留スラリー(収率68%)を集め、−40℃にてペンタン中で再結晶させ、透明な結晶を生じさせた。この結晶は、結晶構造分析によりSr2(tmhd)4(DEAC)3と同定された。
【0058】
〔例4〕Ba2(tmhd)4(NMP)4(H2O)2の合成
【0059】
0.50g(3.59ミリモル)のBaH2を、15mLのヘキサンとともに100mLのシュレンクフラスコに入れた。このフラスコに、5mLのヘキサン中1.32g(7.18ミリモル)のtmhd及び1.42g(14.35ミリモル)のNMPの溶液を添加し、泡立ちがみられた。約6時間後、減圧下でヘキサンを蒸発させて、2.32gの重量の灰色固体を残した。オクタン中で再結晶させて、透明な六方晶系のような結晶を得てこれを結晶構造分析に送って、計画した二量体であると確認された。粗製物を除いたものに基づき90%の収率が得られた。
【0060】
〔例5〕2,2−ジメチル−5−(イソプロピルアミノ)−3−ヘキサノンの合成
【0061】
30.00gの硫酸ナトリウムを入れた50mLのトルエン中の15.00g(105.49ミリモル)の2,2−ジメチル−3,5−ヘキサンジオンの溶液に、12.47g(210.97ミリモル)のイソプロピルアミンを添加した。この混合物を4日間還流した。トルエンを除去すると、黄色の油が得られ、これを80℃にて125mTorr下で真空移送に供した。収率84%で、16.5gの透明な油が得られた。1H NMR(500MHz,C66): δ=11.50(s,1H)、5.16(s,1H)、3.11(m,1H)、1.49(s,3H)、1.31(s,9H)、0.79(d,6H)。
【0062】
〔例6〕2,2−ジメチル−5−(sec−ブチルアミノ)−3−ヘキサノンの合成
【0063】
10.00gの硫酸ナトリウムを入れた20mLのトルエン中の5.00g(35.16ミリモル)の2,2−ジメチル−3,5−ヘキサンジオンの溶液に、5.14g(70.32ミリモル)のsec−ブチルアミンを添加した。この混合物を3日間還流した。作業終了後、4.90gの淡黄色の油が得られた。分離した後の収率は71%であった。1H NMR(500MHz,C66): δ=11.52(s,1H)、5.18(s,1H)、2.95(m,1H)、1.51(s,3H)、1.31(s,9H)、1.14(s,2H)、0.80(d,3H)、0.67(t,3H)。
【0064】
〔例7〕ビス(2,2−ジメチル−5−(イソプロピルアミノ)−3−ヘキサノナト)バリウムNMP付加物の合成
【0065】
ヘキサン中1g(1.66ミリモル)のBa(N(SiMe322(THF)2の懸濁液に、室温でヘキサン中0.61g(3.32ミリモル)の2,2−ジメチル−5−(イソプロピルアミノ)−3−ヘキサノン及び0.66g(6.64ミリモル)のNMPを添加した。この反応混合物は約30分後に溶液になった。16時間撹拌後、減圧下でヘキサンを蒸発させて、0.95gの白色固体を得た。この白色固体をヘキサン中で加熱し、ろ過し、−40℃で再結晶させて、濁った白色結晶を得た。1H NMR(500MHz,C66): δ=5.06(s,1H)、3.75(m,1H)、2.42(s,3H)、2.40(t,2H)、1.98(t,2H)、1.83(s,3H)、1.44(s,9H)、1.34(d,6H)、1.17(m,2H)。
【0066】
〔例8〕ビス(2,2−ジメチル−5−(sec−ブチルアミノ)−3−ヘキサノナト)ストロンチウムNMP付加物の合成
【0067】
ヘキサン中1g(1.81ミリモル)のSr(N(SiMe322(THF)2の溶液に、室温でヘキサン中0.66g(3.62ミリモル)の2,2−ジメチル−5−(sec−ブチルアミノ)−3−ヘキサノン及び0.72g(7.24ミリモル)のNMPを添加した。16時間撹拌後、減圧下でヘキサンを蒸発させた。ヘキサン中−20℃で再結晶させて、不透明な白色固体を得た。1H NMR(500MHz,C66): δ=5.06(s,1H)、3.75(m,1H)、2.46(s,3H)、2.42(t,2H)、2.07(t,2H)、1.90(s,3H)、1.47(s,9H)、1.47(d,6H)、1.21(m,2H)。
【0068】
〔例9〕ビス(2,2−ジメチル−5−(sec−ブチルアミノ)−3−ヘキサノナト)ストロンチウムDEAC付加物の合成
【0069】
室温の10mLのヘキサン中1g(1.81ミリモル)のSr(N(SiMe322(THF)2の溶液に、10mLのヘキサン中0.71g(3.62ミリモル)の2,2−ジメチル−5−(sec−ブチルアミノ)−3−ヘキサノン及び0.83g(7.24ミリモル)のDEACを添加した。反応を16時間撹拌した。ヘキサンを蒸発させると、湿った灰色がかった固体が得られた。1H NMR(500MHz,C66): δ=5.05(s,1H)、3.59(m,1H)、3.17(q,2H)、2.51(q,2H)、1.96(s,3H)、1.79(s,3H)、1.55(s,9H)、1.44(m,2H)、1.44(d,3H)、1.03(t,3H)、0.96(t,3H)、0.56(t,3H)。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】Sr2(tmhd)4(NMP)4の結晶構造を表す図である。
【図2】Sr2(tmhd)4(DEAC)3の結晶構造を表す図である。
【図3】Sr2(tmhd)4(NMP)(破線)及びSr2(tmhd)4(DEAC)3(実線)のTGAであり、共に揮発性錯体であることを示すものである。
【図4】[Ba(tmhd)2(NMP)2・H2O]2の結晶構造を表す図である。
【図5】[Ba(tmhd)2(NMP)2・H2O]2のTGAであり、それが揮発性であることを示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のA、B、及びCからなる群より選ばれる構造により表される金属含有錯体。
【化1】

(この式中のMは、Mg、Ca、Sr及びBaから選択され、R1及びR3は独立して、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキル、アルコキシアルキル及びフルオロアルキル、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、R2は、水素、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキル、フルオロアルキル及びアルコキシ、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、L1は、有機アミド類RCONR’R”(この式中のR及びR’は1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキルであり、それらは連結して、環状基(CH2q(ここでのqは4〜6である)を形成することができ、そしてR”は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル及び4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択される)からなる群より選択され、L2は、有機アミド類RCONR’R”(この式中のR及びR’は独立して、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキルであり、それらは連結して、環状基(CH2q(ここでのqは4〜6である)を形成することができる)からなる群より選択され、nは1と4の間から選択される数であり、mは0から4の間の数から選択され、pは1、2から選択される)
【化2】

(この式中のMは、Mg、Ca、Sr及びBaから選択され、R1及びR4は、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキル、アルコキシアルキル及びフルオロアルキル、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、R2及びR3は、水素、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキル、アルコキシアルキル、フルオロアルキル及びアルコキシ、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、Lは、有機アミド類RCONR’R”(この式中のR及びR’は独立して、1〜10個の炭素原子を有するアルキルであり、それらは連結して、環状基(CH2q(ここでのqは4〜6である)を形成することができ、そしてR”は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル及び4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択される)の群より選択され、nは0と4の間から選択される数であり、mは1から4の間の数から選択され、pは1、2から選択され、μ−Lは、p=2のとき、Lが2個の金属Mに、μLの酸素原子を介して結合されることを示す)
【化3】

(この式中のMは、Mg、Ca、Sr及びBaから選択され、R1及びR3は独立して、1〜10個の炭素原子の線状もしくは分岐したアルキル、アルコキシアルキル及びフルオロアルキル、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、R2は、水素、1〜10個の炭素原子の線状もしくは分岐したアルキル、フルオロアルキル及びアルコキシ、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、Lは、有機アミド類RCONR’R”(この式中のR及びR’は独立して、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキルであり、それらは連結して、環状基(CH2q(ここでのqは4〜6である)を形成することができ、そしてR”は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル及び4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択される)の群より選択され、nは0と4の間から選択される数であり、mは1から4の間の数から選択され、pは1、2から選択され、μ−Lは、p=2のとき、Lが2個の金属Mに、μLの酸素原子を介して結合されることを示す)
【請求項2】
Mがカルシウム、ストロンチウム、バリウム及びそれらの混合物からなる群より選択される構造Aの請求項1記載の金属含有錯体。
【請求項3】
1及びL2が、N−メチルピロリジノン(NMP)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N−ジエチルアセトアミド(DEAC)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−シクロヘキシル2−ピロリジノン、H2O及びROHからなる群より選択される請求項2記載の金属含有錯体。
【請求項4】
1及びR3が、t−ブチル及びt−ペンチルからなる群より選択され、R2が、水素、メチル及びエチルからなる群より選択され、かつR4が、イソプロピル、t−ブチル、sec−ブチル、t−ペンチル及びそれらの混合物からなる群より選択される請求項2記載の金属含有錯体。
【請求項5】
Mがストロンチウムであり、R1及びR3がそれぞれt−ブチルであり、R2が水素であり、L1及びL2がそれぞれN−メチルピロリドンであり、n=1.5であり、m=0.5であり、かつp=2である請求項2記載の金属含有錯体。
【請求項6】
Mがストロンチウムであり、R1及びR3がそれぞれt−ブチルであり、R2が水素であり、L1がN,N−ジエチルアセトアミド(DEAC)であり、n=1.5であり、m=0であり、かつp=2である請求項2記載の金属含有錯体。
【請求項7】
Mがバリウムであり、R1及びR3がそれぞれCF3であり、R2が水素であり、L1及びL2がそれぞれN−メチルピロリドンであり、n=1.5であり、m=2であり、かつp=2である請求項2記載の金属含有錯体。
【請求項8】
Mがバリウムであり、R1及びR3がそれぞれt−ブチルであり、R2が水素であり、L1がN N−メチルピロリドンであり、n=2であり、L2=H2Oであり、m=1であり、かつp=2である請求項2記載の金属含有錯体。
【請求項9】
Mがカルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群より選択される構造Bの請求項1記載の金属含有錯体。
【請求項10】
Lが、N−メチルピロリジノン(NMP)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N−ジエチルアセトアミド(DEAC)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、及びN−シクロヘキシル2−ピロリジノンからなる群より選択される請求項9記載の金属含有錯体。
【請求項11】
1及びR3が独立して、t−ブチル及びt−ペンチルからなる群より選択され、R2が、水素、メチル及びエチルからなる群より選択され、かつR4が、イソプロピル、t−ブチル、sec−ブチル、t−ペンチル及びそれらの混合物からなる群より選択される請求項9記載の金属含有錯体。
【請求項12】
1〜20個のエトキシ−(C24O)−繰り返し単位を有するグリム溶媒、C2〜C12アルカノール、有機エーテル、C6〜C12脂肪族炭化水素、C6〜C18芳香族炭化水素、有機エステル、有機アミン、ならびにポリアミン及び有機アミドからなる群より選択される溶媒中に溶解された請求項1記載の金属含有錯体。
【請求項13】
溶媒が、C1〜C6アルキル部分を含むジアルキルエーテル、C4〜C8環状エーテル、C12〜C60クラウンO4〜O20エーテル(ここでのCはクラウンエーテル化合物中の炭素原子の数であり、Oはクラウンエーテル中の酸素原子の数である)からなる群より選択される有機エーテルである請求項12記載の金属含有錯体。
【請求項14】
溶媒が、N−メチルピロリジノン(NMP)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N−ジエチルアセトアミド(DEAC)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)及びN−シクロヘキシル2−ピロリジノンからなる群より選択される有機アミドである請求項12記載の金属含有錯体。
【請求項15】
Mがカルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群より選択される構造Cの請求項1記載の金属含有錯体。
【請求項16】
1及びR3が独立して、t−ブチル及びt−ペンチルからなる群より選択され、R2が、水素、メチル及びエチルからなる群より選択され、かつR4が、イソプロピル、t−ブチル、sec−ブチル、t−ペンチル及びそれらの混合物からなる群より選択される請求項15記載の金属含有錯体。
【請求項17】
Ba2(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオン)4(N−メチルピロリジノン)5、Sr2(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン)4(N−メチルピロリジノン)4、Sr2(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン)4(N,N−ジエチルアセトアミド)3、Ba2(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン)4(N−メチルピロリジノン)4・(H2O)2、ビス(2,2−ジメチル−5−(イソプロピルアミノ)−3−ヘキサノナト)バリウム(N−メチルピロリジノン)、ビス(2,2−ジメチル−5−(sec−ブチルアミノ)−3−ヘキサノナト)ストロンチウム(N−メチルピロリジノン)、ビス(2,2−ジメチル−5−(sec−ブチルアミノ)−3−ヘキサノナト)ストロンチウム(N,N−ジエチルアセトアミド)からなる群より選択される金属含有錯体。
【請求項18】
少なくとも2種の金属含有錯体及び酸素含有剤を被着室に導入し、そして多成分金属酸化物膜を基材上に被着させる、コンフォーマル多成分金属酸化物薄膜を基材上に形成するための被着方法であって、下記のA、B、及びCから選択される、異なる金属を有する少なくとも2種の金属含有錯体を使用することを含む被着方法。
【化4】

(この式中のMは、Mg、Ca、Sr及びBaから選択され、R1及びR3は独立して、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキル、アルコキシアルキル及びフルオロアルキル、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、R2は、水素、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキル、フルオロアルキル及びアルコキシ、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、L1は、有機アミド類RCONR’R”(この式中のR及びR’は1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキルであり、それらは連結して、環状基(CH2q(ここでのqは4〜6である)を形成することができ、そしてR”は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル及び4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択される)からなる群より選択され、L2は、有機アミド類RCONR’R”(この式中のR及びR’は独立して、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキルであり、それらは連結して、環状基(CH2q(ここでのqは4〜6である)を形成することができる)からなる群より選択され、nは1と4の間から選択される数であり、mは0から4の間の数から選択され、pは1、2から選択される)
【化5】

(この式中のMは、Mg、Ca、Sr及びBaから選択され、R1及びR4は、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキル、アルコキシアルキル及びフルオロアルキル、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、R2及びR3は、水素、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキル、アルコキシアルキル、フルオロアルキル及びアルコキシ、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、Lは、有機アミド類RCONR’R”(この式中のR及びR’は独立して、1〜10個の炭素原子を有するアルキルであり、それらは連結して、環状基(CH2q(ここでのqは4〜6である)を形成することができ、そしてR”は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル及び4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択される)の群より選択され、nは0と4の間から選択される数であり、mは1から4の間の数から選択され、pは1、2から選択され、μ−Lは、p=2のとき、Lが2個の金属Mに、μLの酸素原子を介して結合されることを示す)
【化6】

(この式中のMは、Mg、Ca、Sr及びBaから選択され、R1及びR3は独立して、1〜10個の炭素原子の線状もしくは分岐したアルキル、アルコキシアルキル及びフルオロアルキル、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、R2は、水素、1〜10個の炭素原子の線状もしくは分岐したアルキル、フルオロアルキル及びアルコキシ、4〜12個の炭素原子を有する脂環式基及びアリールからなる群より選択され、Lは、有機アミド類RCONR’R”(この式中のR及びR’は独立して、1〜10個の炭素原子を有する線状もしくは分岐したアルキルであり、それらは連結して、環状基(CH2q(ここでのqは4〜6である)を形成することができ、そしてR”は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル及び4〜8個の炭素原子を有するシクロアルキルから選択される)の群より選択され、nは0と4の間から選択される数であり、mは1から4の間の数から選択され、pは1、2から選択され、μ−Lは、p=2のとき、Lが2個の金属Mに、μLの酸素原子を介して結合されることを示す)
【請求項19】
当該被着方法が、化学蒸着、サイクリック化学蒸着及び原子層堆積からなる群より選択される請求項18記載の方法。
【請求項20】
酸素含有剤が、N2O、O2、H22、H2O、オゾン、O2プラズマ、有機ペルオキシド、及びそれらの混合物からなる群より選択される請求項18記載の方法。
【請求項21】
第1の金属含有錯体がSr2(tmhd)4(NMP)4及びSr2(tmhd)4(DEAC)3からなる群より選択され、第2の金属含有錯体がBa2(tmhd)4(NMP)4(H2O)2及びBa2(hfac)4(NMP)5からなる群より選択される請求項18記載の方法。
【請求項22】
第3の金属含有錯体が、チタン含有アルコキシド及びβ−ケトネートならびにそれらの混合物からなる群より選択される請求項21記載の方法。
【請求項23】
第3の金属含有錯体が、Ti(OPri4、Ti(tmhd)2(OPri2(ここでPri=イソプロピル、tmhd=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、Ti(mpd)(tmhd)2(ここでmpd=2−メチル−2,4−ペンタンジオキシ)、Ti(4−(2−メチルエトキシ)イミノ−2−ペンタノエート)2及びそれらの混合物からなる群より選択される請求項22記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−7333(P2009−7333A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−127849(P2008−127849)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】