金属回収装置及び金属回収方法
【課題】比較的弱い酸及びアルカリを用いて、酸化物半導体に含まれる金属を回収することが可能な技術を提供することを目的とする。
【解決手段】金属回収方法は、破砕ガラス7の配線金属を、第1電解液14aを用いて溶解する電解酸化を行う工程と、その後の破砕ガラス7のITOを、第2電解液14bを用いて還元してIn,Snを生成する電解還元を行う工程とを備える。そして、金属回収方法は、その後の破砕ガラス7を第3電解液14cに浸漬させて、In,Snを第3電解液14cに溶解した後、当該第3電解液14cからIn,Snを回収する工程を備える。
【解決手段】金属回収方法は、破砕ガラス7の配線金属を、第1電解液14aを用いて溶解する電解酸化を行う工程と、その後の破砕ガラス7のITOを、第2電解液14bを用いて還元してIn,Snを生成する電解還元を行う工程とを備える。そして、金属回収方法は、その後の破砕ガラス7を第3電解液14cに浸漬させて、In,Snを第3電解液14cに溶解した後、当該第3電解液14cからIn,Snを回収する工程を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電膜などの酸化物半導体に含まれる金属を回収する金属回収方法、及び、その装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示器等の製品の透明導電膜の材料として、例えば酸化インジウム(In2O3)と酸化スズ(SnO3)とからなるITO(Indium-Tin-Oxide)などの酸化物半導体がよく使用されている。この酸化物半導体に含まれる金属としては、インジウム(In)などの希少金属がよく使用されているため、当該金属を製品から回収・再資源化することが課題となっている。特に、Inを含むITOは、表示器のガラス基板に付着されていることが多いことから、ガラス基板からInを分離・回収する方法に関して多くの研究がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、塩化アルカリ金属を含む酸に、粉砕したガラス基板を浸漬させてIn含有物を浸出させた後、得られた浸出液をアルカリで中和して浸出物を析出し、当該析出物からInを回収することが記載されている。なお、特許文献1には、塩化アルカリ金属として塩化ナトリウムや塩化カリウム、酸として塩酸、中和に用いるアルカリとして水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを用いることも記載されている。
【0004】
特許文献2に記載の技術では、酸に、粉砕したガラス基板を浸漬させてITOを溶解させる。酸としては、蟻酸、リン酸、しゅう酸などの有機酸や、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸を用いる。In,Sn及び液晶を含有する液から液晶を分離した後、分離後のIn,Sn含有液を陰イオン交換樹脂と接触させることによってIn,Snを陰イオン交換樹脂に吸着させる。その後、In,Snを吸着させた陰イオン交換樹脂を純水に接触させてIn,Snを陰イオン交換樹脂から脱離させることにより、In,Snの濃縮液を作成する。次にIn,Sn濃縮液のpHを調整することによって、水酸化In及び水酸化Snを取得する。
【0005】
特許文献3に記載の技術では、酸に、粉砕したガラス基板を浸漬させてITOを溶解することによりIn化合物含有溶液を取得する。そして、In化合物含有溶液に、Inよりもイオン化傾向の大きい金属からなる金属粒子を添加することにより、金属粒子表面にInを析出させる。その後、超音波によって金属粒子を振動させたり、電磁石によって金属粒子を攪拌して相互に衝突させたりすることにより、金属粒子からInを剥離させる。
【0006】
特許文献4に記載の技術では、酸に、粉砕したガラス基板を浸漬させてITOを溶解させる。酸としては、しゅう酸、塩酸、硫酸、硝酸などを用いる。In,Sn及び液晶を含有する液から液晶を分離した後、分離後のIn,Sn含有液を電解(電気分解)することによって負極にIn,Snを析出させる。そして、負極に電解析出した当該In,Snを、超音波印加によって電極(負極)から剥離させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−155717号公報
【特許文献2】特開2008−73619号公報
【特許文献3】国際公開第07−015392号パンフレット
【特許文献4】特開2008−70534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さて、従来の上記金属回収方法では、酸化物半導体に含まれる金属をガラス基板表面から回収する際に、0.1Nの塩酸などの強酸が使用されている。その結果、回収したい金属のみならず、配線材料として使用されているアルミニウム,クロムなどの他の金属も溶解する。しかしながら、その後の工程において、酸化物半導体に含まれる金属と他の金属との分離が困難であるという問題があった。また、上記のような強酸を使用する必要があるだけでなく、強酸を中和するために、水酸化ナトリウムなどの強アルカリも使用する必要があるため、薬液の取扱いが煩雑であり、かつ、コストが高くなるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記のような問題点を鑑みてなされたものであり、比較的弱い酸及びアルカリを用いて、酸化物半導体に含まれる金属を回収することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る金属回収方法は、第1金属を含む酸化物半導体と、前記第1金属以外の金属である第2金属とが付着しているガラス部材から、前記第1金属を回収する金属回収方法であって、(a)前記ガラス部材を、第2電解液に浸漬されている第1及び第2電極の間に置いた状態で、当該ガラス部材の前記酸化物半導体を還元して当該酸化物半導体に含まれる前記第1金属を生成する電解還元を行う工程を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、酸化物半導体に含まれる第1金属の回収前に、ガラス部材から第2金属を除去する。したがって、酸化物半導体に含まれる第1金属を高純度に回収することができる。また、酸化物半導体に含まれる第1金属を溶解する前にそれを電解還元することから、第1金属の回収に使用する第3電解液に、比較的弱い酸/アルカリの電解液を用いることができる。したがって、薬液の取扱いの煩雑さを低減することができるとともに、薬液にかかるコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態1に係る金属回収方法の工程を示すフローチャートである。
【図2】実施の形態1に係る電解水槽の構成を示す正面図である。
【図3】電極板の構成例を示す平面図である。
【図4】電極板の構成例を示す平面図である。
【図5】電極板の構成例を示す平面図である。
【図6】非導電性板の構成例を示す平面図である。
【図7】実施の形態1に係る電解水槽の構成を示す正面図である。
【図8】実施の形態1に係る金属回収装置の構成を示す図である。
【図9】実施の形態1に係る金属回収装置の構成を示す図である。
【図10】電解析出装置の構成を示す概念図である。
【図11】実施の形態1に係る金属回収装置の構成を示す図である。
【図12】実施の形態1に係る金属回収装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係る金属回収方法の工程を示す図である。本実施の形態に係る金属回収方法は、第1金属を含む酸化物半導体と、第1金属以外の金属である第2金属とが付着しているガラス部材から、当該第1金属を分離して回収する方法である。
【0014】
以下の説明では、酸化物半導体は、液晶パネルなどの製品内の透明導電膜としてよく使用されるITOであるものとし、回収すべき第1金属は、ITOに含まれるインジウム(In)及びスズ(Sn)であるものとする。また、上記第2金属は、液晶パネルの配線によく使用されるアルミニウム(Al)、クロム(Cr)などの配線金属であるものとする。また、上記ガラス部材は、液晶パネルのガラス基板を破砕して得られる、ITOと配線金属とが付着している破砕ガラスであるものとする。ただし、本発明はこれに限ったものではなく、例えば、酸化物半導体が、アンチモン(Sb)を添加した酸化スズ(SnO2)、または、酸化亜鉛(ZnO)などの透明導電膜であっても適用可能である。
【0015】
次に、本実施の形態に係る金属回収方法について概要を説明する。図1に示されるように、この金属回収方法は、4つのステップから構成されている。
【0016】
まず、ステップ1にて、液晶パネルを破砕する。
【0017】
ステップS2にて、ステップS1での破砕により得られた破砕ガラスを、第1電解液に浸漬されている第1及び第2電極の間に置いた状態で、当該破砕ガラスに付着しているIn及びSn以外の配線金属を溶解する電解酸化を行う。なお、本実施の形態では、第1電解液は、導電率が1000μS/cm以上、pHが3以下の酸性水、または、導電率が1000μS/cm以上、pHが11以上であるアルカリ水であるものとする。
【0018】
次に、ステップS3にて、ステップS2で配線金属が除去された破砕ガラスを、第2電解液に浸漬されている第1及び第2電極の間に置いた状態で、当該破砕ガラスに付着しているITOを還元して、当該ITOに含まれるIn及びSnを生成する電解還元を行う。なお、本実施の形態では、第2電解液は、導電率が1000μS/cm以下の水溶液であるものとする。
【0019】
それから、ステップS3でIn,Snが還元された破砕ガラスを、ステップS4にて、第3電解液に浸漬してIn及びSnを溶解させてInイオン及びSnイオンを生成する。なお、本実施の形態では、第3電解液は、pHが3以下の酸性水、または、pHが11以上であるアルカリ水であるものとする。それから、Inイオン及びSnイオンが溶解されている第3電解液に対して、それらイオンに対する電解析出または中和沈殿などを行うことにより、In及びSnを回収する。
【0020】
以上のようなステップS1〜S4からなる本実施の形態に係る回収方法によれば、強酸及び強アルカリを用いずに、ITOに含まれるIn及びSnを高純度で回収することが可能となっている。次に、ステップS1〜S4のそれぞれについて、詳細に説明する。
【0021】
<ステップS1>
このステップS1では、破砕機などを用いて液晶パネルを破砕して、ITO及び配線金属が付着している破砕ガラスを取得する。後工程でのITOの電解処理などが効率的に実施できるように、破砕ガラスの平面視でのサイズは100mm以下、好ましくは50mm以下がよい。
【0022】
<ステップS2>
このステップS2では、破砕ガラスに付着されている配線金属(金属膜)を、破砕ガラスから除去する電解酸化を行う。図2は、ステップS2〜S4にてそれぞれ用いられる第1電解液、第2電解液及び第3電解液を貯留可能な電解水槽81の正面図である。この電解水槽81は、本実施の形態に係る金属回収方法を実施する金属回収装置を構成している。図2では、電解水槽81の一例として、横方向(水平方向)に延在する上側電極板1及び下側電極板2(以下、「電極板1,2」と呼ぶこともある)を備える横型の電解水槽81aが示されている。
【0023】
図2に示すように、この電解水槽81aは、水槽本体3と、上側電極板1に接合部4aを介して通電するための電極棒5と、下側電極板2に接合部4bを介して通電するための電極棒6と、上側電極板1及び下側電極板2の間において破砕ガラス7が載置される非導電性板8とを備えている。
【0024】
また、電解水槽81aは、電極板1,2及び非導電性板8を貫通し、それらの横方向の移動を規制する非導電性の支持棒9と、水槽本体3の内壁に固定され、支持棒9を保持する支持台10と、電極板1,2、非導電性板8及び支持台10の間に設けられ、縦方向(鉛直方向)におけるそれらの間隔を一定に保つスペーサ11とを備えている。なお、非導電性板8を設置せずに、下側電極板2の表面に破砕ガラス7を置いてもよい。
【0025】
そして、上側電極板1と下側電極板2との間に電圧を印加する電源12が、導線13を介して電極棒5,6と接続されており、第1〜第3電解液14a〜14cのいずれか(以下「電解液14」と呼ぶこともある)が水槽本体3内に貯留される。
【0026】
次に、電解水槽81aの構成要素について詳細に説明する。
【0027】
電極板1,2及び電極棒5,6の材料としては、例えば金属またはカーボンを用いる。その材料に金属を用いる場合にはPtなどの耐食性金属を使用するか、または電極板1,2及び電極棒5,6を構成する金属にTiNなどの導電性を有する薄膜をコーティングする。上側電極板1と電極棒5とを接合する接合部4a、及び、下側電極板2と電極棒6とを接合する接合部4bには、例えば溶接やネジ止めが用いられる。
【0028】
なお、上側電極板1及び下側電極板2の間に電圧を印加した際に、電極棒5と下側電極板2との間、または、電極棒6と上側電極板1との間に、電解液14を介して電流が流れないようにし、かつ上側電極板1と下側電極板2との間に電流が流れるようにするために、各電極棒5,6の表面に非導電性の材料、例えばエポキシなどの樹脂をコーティングするのが好ましい。
【0029】
図3〜図5は、電極板1,2の構成例を示す平面図である。図3に示される電極板1,2には、その四隅部分のそれぞれにおいて支持棒9を通す孔15が設けられている。図4に示される電極板1,2には、上記孔15だけでなく、電解時に水の電気分解によって発生する酸素ガス及び水素ガスが電極板1,2表面に滞留してしまうのを抑制するガス抜き孔16が設けられている。図5に示される電極板1,2は、平面を形成するように網目状に編まれた金属線17から構成されており、かつ、それには上記孔15が設けられている。
【0030】
図2に戻って、水槽本体3の材料には、非導電性を有する材料、例えば塩化ビニルなどの樹脂を使用する。
【0031】
破砕ガラス7は、ステップS1での破砕によって得られた、ITOと配線金属とが付着しているガラス部材である。
【0032】
図6は、非導電性板8の構成例を示す平面図である。図6に示される非導電性板8は、平面を形成するように網目状に編まれた、塩化ビニルやテフロン(登録商標)などの樹脂コーティングが表面に施された金属網18から構成されており、かつ、それには上記孔15が設けられている。なお、ここで説明した非導電性板8の代わりに、図2を規定する断面と垂直方向に延設され、破砕ガラス7を当該垂直方向に搬送可能なベルトコンベアが設けられてもよい。このように構成した場合には、ベルトコンベアにより搬送されている破砕ガラス7が上側電極板1と下側電極板2との間に到達したときに、当該搬送を停止するとともに、破砕ガラス7に対して上述した電解酸化を行うようにする。
【0033】
支持棒9の材料には、非導電性を有する材料、例えば塩化ビニルなどの樹脂を使用する。支持棒9の先端にはネジが設けられており、支持台10に羅着されている。
【0034】
支持台10は、支持棒9を保持する台であり、その材料には、非導電性を有する材料、例えば、塩化ビニルなどの樹脂を使用する。
【0035】
スペーサ11の材料には、非導電性を有する材料、例えば塩化ビニルなどの樹脂を使用する。スペーサ11は、例えば円筒形に形成されており、その孔に支持棒9が挿通されている。このスペーサ11の高さが、上側電極板1と非導電性板8との間の距離、非導電性板8と下側電極板2との間の距離、及び、下側電極板2と支持台10との間の距離を規定している。なお、スペーサ11の高さは、特に規定されないが、非導電性板8に載置される破砕ガラス7の厚みを考慮して、2mm以上であることが好ましい。なお、非導電性板8を用いずに下側電極板2の表面に破砕ガラス7を置いてもよい。
【0036】
また、スペーサ11の高さに対応する電極板1,2間の距離は、電極板1,2間に電圧を印加した際にそれらの間に流れる電流の大きさを決める要因の1つとなっている。ここで、当該電流の一部は、本ステップS2では配線金属の溶解に用いられ、後述するステップS3ではITOの還元に用いられる。したがって、スペーサ11が高すぎると、電極板1,2間の距離が長くなりすぎて電極板1,2間に流れる電流が小さくなる結果、配線金属の溶解、及び、ITOの還元の速度が遅くなる。したがって、スペーサ11の高さは100mm以下が好ましい。
【0037】
電源12としては、直流電源が用いられる。電源12の+極及び−極は導線13に接続されるが、上側電極板1及び下側電極板2のいずれが正極になっても構わない。なお、ITOの還元を効率よく実施するために、上側電極板1及び下側電極板2の極性を適度に反転させてもよい。
【0038】
以上のような電解水槽81a内において、破砕ガラス7を、第1電解液14aに浸漬されている上側電極板1及び下側電極板2(第1及び第2電極)の間の非導電性板8に載置した状態で、上記配線金属を溶解する電解酸化を行う。
【0039】
上述したように、第1電解液14aには、導電率が1000μS/cm以上であり、かつ、pHが3以下または11以上の水溶液を使用する。例えば、配線金属がAlである場合には、第1電解液14aとして、導電率が1000μS/cm以上であり、かつ、pHが3以下である電解液を使用する。この場合に、電源12を用いて上側電極板1及び下側電極板2の間に電圧を印加すると、非導電性板8上に載置されている破砕ガラス7表面の配線金属であるAlが溶解し(2Al+6H+→2Al3++3H2)、破砕ガラス7からAlが除去される。
【0040】
なお、配線金属の除去の際に、破砕ガラス7に付着しているITOが還元されないように、電源12の印加電圧は調整されているものとする。また、電源12の印加電圧は、上側電極板1及び下側電極板2の間の距離に依存するが、配線金属を適切に除去するため2V以上であることが好ましい。一方、電源12の印加電圧がある程度高くなると、第1電解液14aの電気分解が激しく生じるだけで、配線金属の除去効率は向上しないので、当該印加電圧は100V以下が好ましい。
【0041】
さて、以上においては、図2に示した横型の電解水槽81aを用いる例について説明した。しかし、これに限ったものではなく、例えば電解水槽81aの代わりに、図7に示される、縦方向(鉛直方向)に延在する左側電極板19及び右側電極板20を備える縦型の電解水槽81bを用いてもよい。次に、図7に示す縦型の電解水槽81bの構成要素について詳細に説明する。なお、縦型の電解水槽81bについての説明において、上記横型の電解水槽81aで説明した構成要素と類似するものについては同じ符号を付して説明を省略する。
【0042】
図7に示す電解水槽81bは、左側電極板19及び右側電極板20の間において破砕ガラス7が載置される非導電性板21と、非導電性板21を貫通し、その横方向の移動を規制する非導電性の支持棒22と、非導電性板21及び支持台10の間に設けられ、縦方向(鉛直方向)のそれらの間隔を一定に保つスペーサ23と、電極板19,20の横方向(水平方向)のそれらの間隔を一定に保つとともにそれらを支持するスペーサ24とを備えている。
【0043】
左側電極板19及び右側電極板20としては、図3〜図5に示した電極板1,2と同様のものを用い、非導電性板21としては、図6に示した非導電性板8と同様のものを用いる。なお、ここで説明した非導電性板21の代わりに、図7を規定する断面と垂直方向に延設され、破砕ガラス7を当該垂直方向に搬送可能なベルトコンベアが設けられてもよい。このように構成した場合には、ベルトコンベアにより搬送されている破砕ガラス7が左側電極板19と右側電極板20との間に到達したときに、当該搬送を停止するとともに、破砕ガラス7に対して上述した電解酸化を行うようにする。
【0044】
図8は、本ステップS2を行う本実施の形態に係る金属回収装置の構成を示す図である。本実施の形態に係る金属回収装置は、金属除去用電解装置の機能を有しており、図8に示されるように、上記電解水槽81(図8では横型の電解水槽81a)と、電解水槽81に貯留されるべき第1電解液14a及び第3電解液14cを生成可能な電解水製造装置82とを備えている。
【0045】
電解水製造装置82には、水25と、化学分野で規定される塩26とが流入される。水25は、電解水を作成するための原水であり、例えば純水や水道水、工業用水の淡水が用いられる。塩26は、水25に添加されて塩溶液を作成するために使用され、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの中性塩が用いられる。
【0046】
この電解水製造装置82は、水25及び塩26を混合して得られる塩溶液から第1電解液14a及び第3電解液14cを生成可能となっている。次に、電解水製造装置82の構成について説明する。電解水製造装置82は、水25に塩26を添加して塩溶液を生成する容器27と、仕切り部材28と、正極板(電極板)29と、負極板(電極板)30と、配管31a,31bと、ポンプ32a,32bとを備えている。なお、仕切り部材28、正極板29及び負極板30は容器27内に設けられており、仕切り部材28は、正極板29及び負極板30の間に配置されている。また、配管31a,31bは、容器27の流出口に接続されており、配管31a,31bにはポンプ32a,32bがそれぞれ設けられている。
【0047】
以上のように構成されている電解水製造装置82では、正極板29及び負極板30が、容器27内の塩溶液を電解することによって、酸性水33及びアルカリ水34を生成する。そして、生成された酸性水33及びアルカリ水34が、混合しないように仕切り部材28によって仕切られた状態で、容器27から異なる配管31a,31bにそれぞれ流出される。
【0048】
容器27から配管31aに流出された酸性水33は、ポンプ32aを介して電解水槽81に導入され、電解水槽81に貯留される。そして、電解水槽81に貯留された酸性水33が、電解水槽81において破砕ガラス7の配線金属に電解酸化を行うための第1電解液14aとして用いられる。一方、容器27から配管31bに流出されたアルカリ水34は、ポンプ32bを介して水槽35aに導入され、水槽35aに貯留される。
【0049】
電解水槽81にて上述した電解酸化が行われた後、電解水槽81内の酸性水33は、配管31c及びポンプ32cを介して水槽35bに導入され、電解水槽81から除去される。その一方で、水槽35a内のアルカリ水34は、配管31d及びポンプ32dを介して水槽35bに導入される。これにより、電解水槽81からの電解酸化後の酸性水33と、水槽35aからのアルカリ水34とが、水槽35b内にて混合して中和し、中性塩溶液36と、金属の水酸化物37とが生成される。
【0050】
なお、以上においては、電解水槽81に導入する第1電解液14aとして、酸性水33を適用した例について説明したが、これに限ったものではなく、上述の酸性水33とアルカリ水34とを入れ替えて、除去すべき配線金属に応じてアルカリ水34を適用してもよい。この場合には、アルカリ水34を用いた電解酸化が電解水槽81において行われることによって、破砕ガラス7に付着している配線金属が除去される。そして、この電解酸化後に、電解水槽81内のアルカリ水34は、配管31c及びポンプ32cを介して水槽35bに導入され、電解水槽81から除去される。その一方で、水槽35a内の酸性水33は、配管31d及びポンプ32dを介して水槽35bに導入される。これにより、電解水槽81からの電解酸化後のアルカリ水34と、水槽35aからの酸性水33とが、水槽35b内にて混合して中和し、中性塩溶液36と、金属の水酸化物37とが生成される。
【0051】
<ステップS3>
本のステップS3では、ステップS2によって配線金属が除去された破砕ガラス7(以下、「除去後ガラス38」と呼ぶこともある)に付着されているITOを還元して、当該ITOに含まれるIn,Snを生成する電解還元を行う。
【0052】
本ステップS3が先のステップS2と異なる点は、本ステップS3では、上記第1電解液14aではなく、導電率が1000μS/cm以下の第2電解液14bを用いる点である。つまり、本ステップS3では、除去後ガラス38を、当該第2電解液14bに浸漬されている上側電極板1及び下側電極板2(第1及び第2電極)の間に置いた状態で、上側電極板1及び下側電極板2の間に直流電圧を印加する。なお、導電率が1000μS/cm以下の第2電解液14bとしては、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムなどの中性塩を溶解させた水溶液を用いる。または、第2電解液14bとして、水道水、工業用水などの淡水などを用いてもよい。
【0053】
以上のような第2電解液14bを用いて電圧印加を行うと、ITOが還元され、ITOに含まれるIn,Snが生成される(In2O3+6H++6e→2In+3H2O,SnO2+4H++4e→Sn+2H2O)。
【0054】
図9は、本ステップS3を行う本実施の形態に係る金属回収装置の構成を示す図である。本実施の形態に係る金属回収装置は、ITO還元用電解装置の機能を有しており、図9に示されるように、配管31eと、弁39と、イオン交換樹脂40とを備えている。
【0055】
弁39を介して水25の一部がイオン交換樹脂40に通水されることにより、水の導電率が変更される。そして、導電率が変更された水と、導電率が変更されていない水25の残余部とが混合される。当該混合によって得られた水は、配管31eを介して電解水槽81に導入され、電解水槽81に貯留される。
【0056】
このような金属回収装置によれば、弁39の操作によって、電解水槽81に貯留される水の導電率を調整することが可能となっている。本実施の形態では、導電率が1000μS/cm以下に調整された水が、電解水槽81においてITOに電解還元を行うための第2電解液14bとして用いられる。このように、本実施の形態では、ステップS2で用いた電解水槽81(ここでは図2に示した横型の電解水槽81a)にて、本ステップS3を行うことができるので、除去後ガラス38を別の水槽に移動させずに、ステップS2の後に本ステップS3を続けて行うことが可能となっている。
【0057】
なお、例えば、弁39を通す水25として水道水を用いる場合には、電源12による印加電圧との兼ね合いにより、水25をイオン交換樹脂40に全く通水せずに第2電解液14bとしてそのまま使用してもよい。
【0058】
また、第2電解液14bの導電率が小さすぎると、上側電極板1及び下側電極板2の間の印加電圧を大きくする必要があるため、第2電解液14bの導電率は10μS/cm以上であることが好ましい。また、第2電解液14bとして、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムなどの中性塩を添加したエチレンカーボネートやプロピレンカーボネートなどの非水溶媒を用いてもよい。第2電解液14bとして非水溶媒を用いる場合には、電気分解による酸素ガス、水素ガスの発生は伴わないため、ITOの還元を効率的に行うことができる。
【0059】
また、電解還元における単位電極間距離当りの印加電圧、すなわち電界強度は、ITOを適切に還元するため2V/cm以上であることが好ましい。一方、電源12の印加電圧がある程度高くなると、第2電解液14bの電気分解が激しく生じるだけで、ITOの還元効率は向上しないので、当該電界強度は1000V/cm以下が好ましい。
【0060】
電解水槽81にて上述した電解還元が行われた後、電解水槽81内の水(第2電解液14b)が除去される。
【0061】
<ステップS4>
このステップS4では、ステップS3によって還元されたIn,Snが付着している除去後ガラス38(以下、「還元後ガラス41」と呼ぶこともある)を第3電解液14cに浸漬させる。これにより、InをInイオンとして第3電解液14cに溶解させる(In→In3++3e)とともに、SnをSnイオンとして第3電解液14cに溶解させる(Sn→Sn4++4e)。
【0062】
第3電解液14cとしては、上述したように、pHが3以下の酸性水、または、pHが11以上であるアルカリ水を用いる。なお、本ステップS4において、このような比較的弱い酸性水及びアルカリ水に第1金属(Sn,In)を溶解させることが可能となっているのは、ステップS3にて、酸化物半導体(ITO)に含まれる第1金属(Sn,In)を電解還元したためである。
【0063】
In,Snを第3電解液14cに溶解させた後、当該第3電解液14cからIn,Snを回収する。このIn,Snの回収方法には電解析出や中和沈殿などを用いる。次に、電解析出及び中和沈殿について詳細に説明する。
【0064】
図10は、電解析出を行う電解析出装置の構成を示す概念図である。この電解析出装置は、水槽42と、電源43と、正極板44と、負極板45とを備えている。このような電解析出装置において、正極板44及び負極板45を、In,Snが溶解された第3電解液14cに浸漬させた状態で、正極板44及び負極板45の間に電源43を用いて直流電圧を印加すると、負極板45にIn,Sn46が析出する(In3++3e→In,Sn4++4e→Sn)。
【0065】
図11は、本ステップS4の電解析出を行う本実施の形態に係る金属回収装置の構成を示す図である。図11に示される本実施の形態に係る金属回収装置は、図10に示した電解析出装置の機能を有している。つまり、水槽本体3、電源12、上側電極板1及び下側電極板2が、それぞれ水槽42、電源43、正極板44及び負極板45として用いられる。なお、上側電極板1及び下側電極板2のどちらか一方が正極板44であればよく、他方が負極板45であればよい。ここでは、上側電極板1が負極板45であり、下側電極板2が正極板44であるものとして説明する。
【0066】
次に、図11に示す本実施の形態に係る金属回収装置が、還元後ガラス41のIn,Snを第3電解液14cに溶解して、当該第3電解液14cからIn,Snを電解析出により回収する動作について説明する。
【0067】
まず、ステップS2と同様にして、酸性水33が、ポンプ32aを介して電解水槽81に導入され、電解水槽81に貯留される。そして、電解水槽81に貯留された酸性水33が、電解水槽81において還元後のIn,Snが溶解される第3電解液14cとして用いられる。このように、本実施の形態では、ステップS3で用いた電解水槽81(ここでは図2に示した横型の電解水槽81a)にて、本ステップS4の電解析出を行うことができるので、還元後ガラス41を別の水槽に移動させずに、ステップS3の後に本ステップS4を続けて行うことができる。
【0068】
In,Snが第3電解液14cに溶解すると、第3電解液14cにInイオン及びSnイオンが生成される。それから、当該第3電解液14cに浸漬されている上側電極板1及び下側電極板2の間に電源12を用いて直流電圧を印加すると、負極板である上側電極板1にIn,Sn46が回収可能に析出する。
【0069】
なお、正極板44及び負極板45間の単位電極距離当りの印加電圧、すなわち電界強度は、正極板44及び負極板45の間の距離に依存するが、In,Sn46の析出を適切に行うため1V/cm以上であることが好ましい。一方、電源12の印加電圧がある程度高くなると、第3電解液14cの電気分解が激しく生じるだけで、In,Sn46の析出効率は向上しないので、当該電界強度は1000V/cm以下が好ましい。
【0070】
以上のような電解析出(電解還元)によって上側電極板1にIn,Sn46を析出させた後、ステップS2と同様にして、電解水槽81からの第3電解液14c(酸性水33)と、水槽35aからのアルカリ水34とを、水槽35b内において混合させて中和する。なお、ここでは、電解水槽81に導入する第3電解液14cとして、酸性水33を適用した例について説明したが、これに限ったものではなく、本ステップS4で回収したい金属に応じてアルカリ水34を適用してもよい。
【0071】
次に、中和沈殿によるIn,Snの回収方法について説明する。中和沈殿においては、In,Snが溶解された第3電解液14cが酸性水である場合にはアルカリ水を添加して中和し、当該第3電解液14cがアルカリ水である場合には酸性水を添加して中和することによってIn,Snを沈殿させる(In3++3OH-→In(OH)3,Sn4++4OH-→Sn(OH)4)。
【0072】
図12は、本実施の形態に係る金属回収装置の構成を示す図である。図12に示される本実施の形態に係る金属回収装置は、中和沈殿装置の機能を有している。
【0073】
次に、本実施の形態に係る金属回収装置が、還元後ガラス41のIn,Snを第3電解液14cに溶解して、当該第3電解液14cからIn,Snを中和沈殿により回収する動作について説明する。
【0074】
まず、上述した電解析出と同様にして、酸性水33が、ポンプ32aを介して電解水槽81に導入され、電解水槽81に貯留される。そして、電解水槽81に貯留された酸性水33が、電解水槽81において還元後のIn,Snが溶解される第3電解液14cとして用いられる。このように、本実施の形態では、ステップS3で用いた電解水槽81(ここでは図2に示した横型の電解水槽81a)にて本ステップS4の中和沈殿を実施するための溶解を行うことができるので、還元後ガラス41を別の水槽に移動させずに、ステップS3の後に本ステップS4を続けて行うことができる。
【0075】
In,Snが第3電解液14cに溶解すると、第3電解液14cにInイオン及びSnイオンが生成される。それから、ステップS2と同様にして、電解水槽81からの第3電解液14c(酸性水33)と、水槽35aからのアルカリ水34とを、水槽35b内において混合させて中和する。この中和によって、中性塩溶液36と、In,Snが回収可能なIn,Snの沈殿物47が水槽35b内に生成される。なお、ここでは、電解水槽81に導入する第3電解液14cとして、酸性水33を適用した例について説明したが、これに限ったものではなく、本ステップS4で回収したい金属に応じてアルカリ水34を適用してもよい。
【0076】
<実施例1>
破砕機を用いて液晶パネルを平面視でのサイズが100mm角程度以下となるように破砕した後、エタノール洗浄によって液晶を除去する。
【0077】
破砕した液晶パネルから破砕ガラス7を300g採取し、図8に示した電解水槽81の塩化ビニル樹脂性の非導電性板8に載置した。電解水槽81のスペーサ11の高さは5mmとして、上側電極板1と塩化ビニル樹脂製の非導電性板8との間の距離、及び、非導電性板8と下側電極板2との間の距離を調整した。上側電極板1及び下側電極板2には、窒化チタン(TiN)をコーティングした「SUS304」からなる板を用いた。
【0078】
そして、破砕ガラス7に対して、図8を用いて説明したステップS2(金属溶解処理)を行った。具体的には、図8に示す水25及び塩26として水道水及び食塩(NaCl)を用い、食塩が適量添加された水道水を容器27内に通水することによってpH=2.5の酸性水33を生成させた。そして、当該酸性水33を電解水槽81に導入した後、上側電極板1及び下側電極板2の間に電界強度10V/cmの直流電圧を5分間印加し、破砕ガラス7に付着している配線金属を除去した。それから電解水槽81から酸性水33を除去した。
【0079】
次に、当該配線金属を除去することによって得られた除去後ガラス38に対して、図9を用いて説明したステップS3(電解還元処理)を行った。具体的には、図9に示す水25として水道水を用い、弁39の操作により導電率が40μS/cmに調整された水(電解水)を電解水槽81に貯留した。それから、金属溶解処理で用いたスペーサ11、上側電極板1、下側電極板2及び非導電性板8をここでも用いて、上側電極板1及び下側電極板2の間に電界強度40V/cmの直流電圧を30分間印加し、除去後ガラス38に付着しているITOを還元した。それから電解水槽81から水(電解水)を除去した。
【0080】
次に、当該還元によって得られた還元後ガラス41に対して、図11を用いて説明したステップS4(溶解・回収処理)を行った。具体的には、図11に示す水25及び塩26として水道水及び食塩(NaCl)を用い、食塩が適量添加された水道水を容器27内に通水することによってpH=2.5の酸性水33を生成させた。そして、当該酸性水33を電解水槽81に導入し、還元後ガラス41を酸性水33に10時間浸漬させて、還元後ガラス41に付着しているIn,Snを酸性水33に溶解させた。それから、当該酸性水33に浸漬している上側電極板1及び下側電極板2の間に電界強度10V/cmの直流電圧を印加し、上側電極板1にIn,Snを析出させた。析出したIn,Snを定量分析した結果、回収量は単位ガラス面積当たりInが25.12μg/cm2、Snが2.73μg/cm2であった。なお、その回収時に副次的に得られたIn,Sn以外の金属は0.05μg/cm2以下であり、純度の高いIn,Snを回収することができた。
【0081】
<実施例2>
破砕機を用いて液晶パネルを平面視でのサイズが100mm角程度以下となるように破砕した後、エタノール洗浄によって液晶を除去する。
【0082】
破砕した液晶パネルから破砕ガラス7を300g採取し、図8に示した電解水槽81の塩化ビニル樹脂性の非導電性板8に載置した。電解水槽81のスペーサ11の高さは5mmとして、上側電極板1と塩化ビニル樹脂製の非導電性板8との間の距離、及び、非導電性板8と下側電極板2との間の距離を調整した。上側電極板1及び下側電極板2には、窒化チタン(TiN)をコーティングした「SUS304」からなる板を用いた。
【0083】
そして、破砕ガラス7に対して、図8を用いて説明したステップS2(金属溶解処理)を行った。具体的には、図8に示す水25及び塩26として水道水及び食塩(NaCl)を用い、食塩が適量添加された水道水を容器27内に通水することによってpH=2.5の酸性水33を生成させた。そして、当該酸性水33を電解水槽81に導入した後、上側電極板1及び下側電極板2の間に電界強度10V/cmの直流電圧を5分間印加し、破砕ガラス7に付着している配線金属を除去した。それから電解水槽81から酸性水33を除去した。
【0084】
次に、当該配線金属を除去することによって得られた除去後ガラス38に対して、図9を用いて説明したステップS3(電解還元処理)を行った。具体的には、図9に示す水25として水道水を用い、弁39の操作により導電率が40μS/cmに調整された水(電解水)を電解水槽81に貯留した。それから、金属溶解処理で用いたスペーサ11、上側電極板1、下側電極板2及び非導電性板8をここでも用いて、上側電極板1及び下側電極板2の間に電界強度40V/cmの直流電圧を30分間印加し、除去後ガラス38に付着しているITOを還元した。それから電解水槽81から水(電解水)を除去した。
【0085】
次に、当該還元によって得られた還元後ガラス41に対して、図12を用いて説明したステップS4(溶解・回収処理)を行った。具体的には、図12に示す水25及び塩26として水道水及び食塩(NaCl)を用い、食塩が適量添加された水道水を容器27内に通水することによってpH=2.5の酸性水33を生成させた。そして、当該酸性水33を電解水槽81に導入し、還元後ガラス41を酸性水33に10時間浸漬させて、還元後ガラス41に付着しているIn,Snを酸性水33に溶解させた。それから、当該酸性水33と、アルカリ水34とを混合させてIn,Snを沈殿させた。沈殿させたIn,Snを定量分析した結果、回収量は単位ガラス面積当たりInが24.85μg/cm2、Snが2.81μg/cm2であった。なお、その回収時に副次的に得られたIn,Sn以外の金属は0.05μg/cm2以下であり、純度の高いIn,Snを回収することができた。
【0086】
<まとめ>
以上のような本実施の形態に係る金属回収方法によれば、ITO(酸化物半導体)に含まれるIn,Sn(第1金属)の回収前に、破砕ガラス7(ガラス部材)から配線金属(第2金属)を除去する。したがって、ITOに含まれるIn,Snを高純度に回収することができる。また、ITOに含まれるIn,Snを溶解する前に電解還元することから、In,Snの回収に使用する第3電解液14cに、比較的弱い酸/アルカリの電解液を用いることができる。したがって、薬液の取扱いの煩雑さを低減することができるとともに、薬液にかかるコストを低減することができる。
【0087】
以上のような本実施の形態に係る金属回収方法は、特に、Inなどの希少金属の回収に有効である。
【0088】
また、本実施の形態に係る金属回収装置によれば、例えば、工程が変わるごとに破砕ガラス7等を別の水槽に移動させる手間を省くことができるとともに、上記金属回収方法を実施する装置を比較的少ない構成要素で実現することができる。
【0089】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 上側電極板、2 下側電極板、7 破砕ガラス、14a〜14c 第1〜第3電解液、81,81a,81b 電解水槽、82 電解水製造装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電膜などの酸化物半導体に含まれる金属を回収する金属回収方法、及び、その装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示器等の製品の透明導電膜の材料として、例えば酸化インジウム(In2O3)と酸化スズ(SnO3)とからなるITO(Indium-Tin-Oxide)などの酸化物半導体がよく使用されている。この酸化物半導体に含まれる金属としては、インジウム(In)などの希少金属がよく使用されているため、当該金属を製品から回収・再資源化することが課題となっている。特に、Inを含むITOは、表示器のガラス基板に付着されていることが多いことから、ガラス基板からInを分離・回収する方法に関して多くの研究がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、塩化アルカリ金属を含む酸に、粉砕したガラス基板を浸漬させてIn含有物を浸出させた後、得られた浸出液をアルカリで中和して浸出物を析出し、当該析出物からInを回収することが記載されている。なお、特許文献1には、塩化アルカリ金属として塩化ナトリウムや塩化カリウム、酸として塩酸、中和に用いるアルカリとして水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを用いることも記載されている。
【0004】
特許文献2に記載の技術では、酸に、粉砕したガラス基板を浸漬させてITOを溶解させる。酸としては、蟻酸、リン酸、しゅう酸などの有機酸や、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸を用いる。In,Sn及び液晶を含有する液から液晶を分離した後、分離後のIn,Sn含有液を陰イオン交換樹脂と接触させることによってIn,Snを陰イオン交換樹脂に吸着させる。その後、In,Snを吸着させた陰イオン交換樹脂を純水に接触させてIn,Snを陰イオン交換樹脂から脱離させることにより、In,Snの濃縮液を作成する。次にIn,Sn濃縮液のpHを調整することによって、水酸化In及び水酸化Snを取得する。
【0005】
特許文献3に記載の技術では、酸に、粉砕したガラス基板を浸漬させてITOを溶解することによりIn化合物含有溶液を取得する。そして、In化合物含有溶液に、Inよりもイオン化傾向の大きい金属からなる金属粒子を添加することにより、金属粒子表面にInを析出させる。その後、超音波によって金属粒子を振動させたり、電磁石によって金属粒子を攪拌して相互に衝突させたりすることにより、金属粒子からInを剥離させる。
【0006】
特許文献4に記載の技術では、酸に、粉砕したガラス基板を浸漬させてITOを溶解させる。酸としては、しゅう酸、塩酸、硫酸、硝酸などを用いる。In,Sn及び液晶を含有する液から液晶を分離した後、分離後のIn,Sn含有液を電解(電気分解)することによって負極にIn,Snを析出させる。そして、負極に電解析出した当該In,Snを、超音波印加によって電極(負極)から剥離させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−155717号公報
【特許文献2】特開2008−73619号公報
【特許文献3】国際公開第07−015392号パンフレット
【特許文献4】特開2008−70534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さて、従来の上記金属回収方法では、酸化物半導体に含まれる金属をガラス基板表面から回収する際に、0.1Nの塩酸などの強酸が使用されている。その結果、回収したい金属のみならず、配線材料として使用されているアルミニウム,クロムなどの他の金属も溶解する。しかしながら、その後の工程において、酸化物半導体に含まれる金属と他の金属との分離が困難であるという問題があった。また、上記のような強酸を使用する必要があるだけでなく、強酸を中和するために、水酸化ナトリウムなどの強アルカリも使用する必要があるため、薬液の取扱いが煩雑であり、かつ、コストが高くなるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記のような問題点を鑑みてなされたものであり、比較的弱い酸及びアルカリを用いて、酸化物半導体に含まれる金属を回収することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る金属回収方法は、第1金属を含む酸化物半導体と、前記第1金属以外の金属である第2金属とが付着しているガラス部材から、前記第1金属を回収する金属回収方法であって、(a)前記ガラス部材を、第2電解液に浸漬されている第1及び第2電極の間に置いた状態で、当該ガラス部材の前記酸化物半導体を還元して当該酸化物半導体に含まれる前記第1金属を生成する電解還元を行う工程を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、酸化物半導体に含まれる第1金属の回収前に、ガラス部材から第2金属を除去する。したがって、酸化物半導体に含まれる第1金属を高純度に回収することができる。また、酸化物半導体に含まれる第1金属を溶解する前にそれを電解還元することから、第1金属の回収に使用する第3電解液に、比較的弱い酸/アルカリの電解液を用いることができる。したがって、薬液の取扱いの煩雑さを低減することができるとともに、薬液にかかるコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態1に係る金属回収方法の工程を示すフローチャートである。
【図2】実施の形態1に係る電解水槽の構成を示す正面図である。
【図3】電極板の構成例を示す平面図である。
【図4】電極板の構成例を示す平面図である。
【図5】電極板の構成例を示す平面図である。
【図6】非導電性板の構成例を示す平面図である。
【図7】実施の形態1に係る電解水槽の構成を示す正面図である。
【図8】実施の形態1に係る金属回収装置の構成を示す図である。
【図9】実施の形態1に係る金属回収装置の構成を示す図である。
【図10】電解析出装置の構成を示す概念図である。
【図11】実施の形態1に係る金属回収装置の構成を示す図である。
【図12】実施の形態1に係る金属回収装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係る金属回収方法の工程を示す図である。本実施の形態に係る金属回収方法は、第1金属を含む酸化物半導体と、第1金属以外の金属である第2金属とが付着しているガラス部材から、当該第1金属を分離して回収する方法である。
【0014】
以下の説明では、酸化物半導体は、液晶パネルなどの製品内の透明導電膜としてよく使用されるITOであるものとし、回収すべき第1金属は、ITOに含まれるインジウム(In)及びスズ(Sn)であるものとする。また、上記第2金属は、液晶パネルの配線によく使用されるアルミニウム(Al)、クロム(Cr)などの配線金属であるものとする。また、上記ガラス部材は、液晶パネルのガラス基板を破砕して得られる、ITOと配線金属とが付着している破砕ガラスであるものとする。ただし、本発明はこれに限ったものではなく、例えば、酸化物半導体が、アンチモン(Sb)を添加した酸化スズ(SnO2)、または、酸化亜鉛(ZnO)などの透明導電膜であっても適用可能である。
【0015】
次に、本実施の形態に係る金属回収方法について概要を説明する。図1に示されるように、この金属回収方法は、4つのステップから構成されている。
【0016】
まず、ステップ1にて、液晶パネルを破砕する。
【0017】
ステップS2にて、ステップS1での破砕により得られた破砕ガラスを、第1電解液に浸漬されている第1及び第2電極の間に置いた状態で、当該破砕ガラスに付着しているIn及びSn以外の配線金属を溶解する電解酸化を行う。なお、本実施の形態では、第1電解液は、導電率が1000μS/cm以上、pHが3以下の酸性水、または、導電率が1000μS/cm以上、pHが11以上であるアルカリ水であるものとする。
【0018】
次に、ステップS3にて、ステップS2で配線金属が除去された破砕ガラスを、第2電解液に浸漬されている第1及び第2電極の間に置いた状態で、当該破砕ガラスに付着しているITOを還元して、当該ITOに含まれるIn及びSnを生成する電解還元を行う。なお、本実施の形態では、第2電解液は、導電率が1000μS/cm以下の水溶液であるものとする。
【0019】
それから、ステップS3でIn,Snが還元された破砕ガラスを、ステップS4にて、第3電解液に浸漬してIn及びSnを溶解させてInイオン及びSnイオンを生成する。なお、本実施の形態では、第3電解液は、pHが3以下の酸性水、または、pHが11以上であるアルカリ水であるものとする。それから、Inイオン及びSnイオンが溶解されている第3電解液に対して、それらイオンに対する電解析出または中和沈殿などを行うことにより、In及びSnを回収する。
【0020】
以上のようなステップS1〜S4からなる本実施の形態に係る回収方法によれば、強酸及び強アルカリを用いずに、ITOに含まれるIn及びSnを高純度で回収することが可能となっている。次に、ステップS1〜S4のそれぞれについて、詳細に説明する。
【0021】
<ステップS1>
このステップS1では、破砕機などを用いて液晶パネルを破砕して、ITO及び配線金属が付着している破砕ガラスを取得する。後工程でのITOの電解処理などが効率的に実施できるように、破砕ガラスの平面視でのサイズは100mm以下、好ましくは50mm以下がよい。
【0022】
<ステップS2>
このステップS2では、破砕ガラスに付着されている配線金属(金属膜)を、破砕ガラスから除去する電解酸化を行う。図2は、ステップS2〜S4にてそれぞれ用いられる第1電解液、第2電解液及び第3電解液を貯留可能な電解水槽81の正面図である。この電解水槽81は、本実施の形態に係る金属回収方法を実施する金属回収装置を構成している。図2では、電解水槽81の一例として、横方向(水平方向)に延在する上側電極板1及び下側電極板2(以下、「電極板1,2」と呼ぶこともある)を備える横型の電解水槽81aが示されている。
【0023】
図2に示すように、この電解水槽81aは、水槽本体3と、上側電極板1に接合部4aを介して通電するための電極棒5と、下側電極板2に接合部4bを介して通電するための電極棒6と、上側電極板1及び下側電極板2の間において破砕ガラス7が載置される非導電性板8とを備えている。
【0024】
また、電解水槽81aは、電極板1,2及び非導電性板8を貫通し、それらの横方向の移動を規制する非導電性の支持棒9と、水槽本体3の内壁に固定され、支持棒9を保持する支持台10と、電極板1,2、非導電性板8及び支持台10の間に設けられ、縦方向(鉛直方向)におけるそれらの間隔を一定に保つスペーサ11とを備えている。なお、非導電性板8を設置せずに、下側電極板2の表面に破砕ガラス7を置いてもよい。
【0025】
そして、上側電極板1と下側電極板2との間に電圧を印加する電源12が、導線13を介して電極棒5,6と接続されており、第1〜第3電解液14a〜14cのいずれか(以下「電解液14」と呼ぶこともある)が水槽本体3内に貯留される。
【0026】
次に、電解水槽81aの構成要素について詳細に説明する。
【0027】
電極板1,2及び電極棒5,6の材料としては、例えば金属またはカーボンを用いる。その材料に金属を用いる場合にはPtなどの耐食性金属を使用するか、または電極板1,2及び電極棒5,6を構成する金属にTiNなどの導電性を有する薄膜をコーティングする。上側電極板1と電極棒5とを接合する接合部4a、及び、下側電極板2と電極棒6とを接合する接合部4bには、例えば溶接やネジ止めが用いられる。
【0028】
なお、上側電極板1及び下側電極板2の間に電圧を印加した際に、電極棒5と下側電極板2との間、または、電極棒6と上側電極板1との間に、電解液14を介して電流が流れないようにし、かつ上側電極板1と下側電極板2との間に電流が流れるようにするために、各電極棒5,6の表面に非導電性の材料、例えばエポキシなどの樹脂をコーティングするのが好ましい。
【0029】
図3〜図5は、電極板1,2の構成例を示す平面図である。図3に示される電極板1,2には、その四隅部分のそれぞれにおいて支持棒9を通す孔15が設けられている。図4に示される電極板1,2には、上記孔15だけでなく、電解時に水の電気分解によって発生する酸素ガス及び水素ガスが電極板1,2表面に滞留してしまうのを抑制するガス抜き孔16が設けられている。図5に示される電極板1,2は、平面を形成するように網目状に編まれた金属線17から構成されており、かつ、それには上記孔15が設けられている。
【0030】
図2に戻って、水槽本体3の材料には、非導電性を有する材料、例えば塩化ビニルなどの樹脂を使用する。
【0031】
破砕ガラス7は、ステップS1での破砕によって得られた、ITOと配線金属とが付着しているガラス部材である。
【0032】
図6は、非導電性板8の構成例を示す平面図である。図6に示される非導電性板8は、平面を形成するように網目状に編まれた、塩化ビニルやテフロン(登録商標)などの樹脂コーティングが表面に施された金属網18から構成されており、かつ、それには上記孔15が設けられている。なお、ここで説明した非導電性板8の代わりに、図2を規定する断面と垂直方向に延設され、破砕ガラス7を当該垂直方向に搬送可能なベルトコンベアが設けられてもよい。このように構成した場合には、ベルトコンベアにより搬送されている破砕ガラス7が上側電極板1と下側電極板2との間に到達したときに、当該搬送を停止するとともに、破砕ガラス7に対して上述した電解酸化を行うようにする。
【0033】
支持棒9の材料には、非導電性を有する材料、例えば塩化ビニルなどの樹脂を使用する。支持棒9の先端にはネジが設けられており、支持台10に羅着されている。
【0034】
支持台10は、支持棒9を保持する台であり、その材料には、非導電性を有する材料、例えば、塩化ビニルなどの樹脂を使用する。
【0035】
スペーサ11の材料には、非導電性を有する材料、例えば塩化ビニルなどの樹脂を使用する。スペーサ11は、例えば円筒形に形成されており、その孔に支持棒9が挿通されている。このスペーサ11の高さが、上側電極板1と非導電性板8との間の距離、非導電性板8と下側電極板2との間の距離、及び、下側電極板2と支持台10との間の距離を規定している。なお、スペーサ11の高さは、特に規定されないが、非導電性板8に載置される破砕ガラス7の厚みを考慮して、2mm以上であることが好ましい。なお、非導電性板8を用いずに下側電極板2の表面に破砕ガラス7を置いてもよい。
【0036】
また、スペーサ11の高さに対応する電極板1,2間の距離は、電極板1,2間に電圧を印加した際にそれらの間に流れる電流の大きさを決める要因の1つとなっている。ここで、当該電流の一部は、本ステップS2では配線金属の溶解に用いられ、後述するステップS3ではITOの還元に用いられる。したがって、スペーサ11が高すぎると、電極板1,2間の距離が長くなりすぎて電極板1,2間に流れる電流が小さくなる結果、配線金属の溶解、及び、ITOの還元の速度が遅くなる。したがって、スペーサ11の高さは100mm以下が好ましい。
【0037】
電源12としては、直流電源が用いられる。電源12の+極及び−極は導線13に接続されるが、上側電極板1及び下側電極板2のいずれが正極になっても構わない。なお、ITOの還元を効率よく実施するために、上側電極板1及び下側電極板2の極性を適度に反転させてもよい。
【0038】
以上のような電解水槽81a内において、破砕ガラス7を、第1電解液14aに浸漬されている上側電極板1及び下側電極板2(第1及び第2電極)の間の非導電性板8に載置した状態で、上記配線金属を溶解する電解酸化を行う。
【0039】
上述したように、第1電解液14aには、導電率が1000μS/cm以上であり、かつ、pHが3以下または11以上の水溶液を使用する。例えば、配線金属がAlである場合には、第1電解液14aとして、導電率が1000μS/cm以上であり、かつ、pHが3以下である電解液を使用する。この場合に、電源12を用いて上側電極板1及び下側電極板2の間に電圧を印加すると、非導電性板8上に載置されている破砕ガラス7表面の配線金属であるAlが溶解し(2Al+6H+→2Al3++3H2)、破砕ガラス7からAlが除去される。
【0040】
なお、配線金属の除去の際に、破砕ガラス7に付着しているITOが還元されないように、電源12の印加電圧は調整されているものとする。また、電源12の印加電圧は、上側電極板1及び下側電極板2の間の距離に依存するが、配線金属を適切に除去するため2V以上であることが好ましい。一方、電源12の印加電圧がある程度高くなると、第1電解液14aの電気分解が激しく生じるだけで、配線金属の除去効率は向上しないので、当該印加電圧は100V以下が好ましい。
【0041】
さて、以上においては、図2に示した横型の電解水槽81aを用いる例について説明した。しかし、これに限ったものではなく、例えば電解水槽81aの代わりに、図7に示される、縦方向(鉛直方向)に延在する左側電極板19及び右側電極板20を備える縦型の電解水槽81bを用いてもよい。次に、図7に示す縦型の電解水槽81bの構成要素について詳細に説明する。なお、縦型の電解水槽81bについての説明において、上記横型の電解水槽81aで説明した構成要素と類似するものについては同じ符号を付して説明を省略する。
【0042】
図7に示す電解水槽81bは、左側電極板19及び右側電極板20の間において破砕ガラス7が載置される非導電性板21と、非導電性板21を貫通し、その横方向の移動を規制する非導電性の支持棒22と、非導電性板21及び支持台10の間に設けられ、縦方向(鉛直方向)のそれらの間隔を一定に保つスペーサ23と、電極板19,20の横方向(水平方向)のそれらの間隔を一定に保つとともにそれらを支持するスペーサ24とを備えている。
【0043】
左側電極板19及び右側電極板20としては、図3〜図5に示した電極板1,2と同様のものを用い、非導電性板21としては、図6に示した非導電性板8と同様のものを用いる。なお、ここで説明した非導電性板21の代わりに、図7を規定する断面と垂直方向に延設され、破砕ガラス7を当該垂直方向に搬送可能なベルトコンベアが設けられてもよい。このように構成した場合には、ベルトコンベアにより搬送されている破砕ガラス7が左側電極板19と右側電極板20との間に到達したときに、当該搬送を停止するとともに、破砕ガラス7に対して上述した電解酸化を行うようにする。
【0044】
図8は、本ステップS2を行う本実施の形態に係る金属回収装置の構成を示す図である。本実施の形態に係る金属回収装置は、金属除去用電解装置の機能を有しており、図8に示されるように、上記電解水槽81(図8では横型の電解水槽81a)と、電解水槽81に貯留されるべき第1電解液14a及び第3電解液14cを生成可能な電解水製造装置82とを備えている。
【0045】
電解水製造装置82には、水25と、化学分野で規定される塩26とが流入される。水25は、電解水を作成するための原水であり、例えば純水や水道水、工業用水の淡水が用いられる。塩26は、水25に添加されて塩溶液を作成するために使用され、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの中性塩が用いられる。
【0046】
この電解水製造装置82は、水25及び塩26を混合して得られる塩溶液から第1電解液14a及び第3電解液14cを生成可能となっている。次に、電解水製造装置82の構成について説明する。電解水製造装置82は、水25に塩26を添加して塩溶液を生成する容器27と、仕切り部材28と、正極板(電極板)29と、負極板(電極板)30と、配管31a,31bと、ポンプ32a,32bとを備えている。なお、仕切り部材28、正極板29及び負極板30は容器27内に設けられており、仕切り部材28は、正極板29及び負極板30の間に配置されている。また、配管31a,31bは、容器27の流出口に接続されており、配管31a,31bにはポンプ32a,32bがそれぞれ設けられている。
【0047】
以上のように構成されている電解水製造装置82では、正極板29及び負極板30が、容器27内の塩溶液を電解することによって、酸性水33及びアルカリ水34を生成する。そして、生成された酸性水33及びアルカリ水34が、混合しないように仕切り部材28によって仕切られた状態で、容器27から異なる配管31a,31bにそれぞれ流出される。
【0048】
容器27から配管31aに流出された酸性水33は、ポンプ32aを介して電解水槽81に導入され、電解水槽81に貯留される。そして、電解水槽81に貯留された酸性水33が、電解水槽81において破砕ガラス7の配線金属に電解酸化を行うための第1電解液14aとして用いられる。一方、容器27から配管31bに流出されたアルカリ水34は、ポンプ32bを介して水槽35aに導入され、水槽35aに貯留される。
【0049】
電解水槽81にて上述した電解酸化が行われた後、電解水槽81内の酸性水33は、配管31c及びポンプ32cを介して水槽35bに導入され、電解水槽81から除去される。その一方で、水槽35a内のアルカリ水34は、配管31d及びポンプ32dを介して水槽35bに導入される。これにより、電解水槽81からの電解酸化後の酸性水33と、水槽35aからのアルカリ水34とが、水槽35b内にて混合して中和し、中性塩溶液36と、金属の水酸化物37とが生成される。
【0050】
なお、以上においては、電解水槽81に導入する第1電解液14aとして、酸性水33を適用した例について説明したが、これに限ったものではなく、上述の酸性水33とアルカリ水34とを入れ替えて、除去すべき配線金属に応じてアルカリ水34を適用してもよい。この場合には、アルカリ水34を用いた電解酸化が電解水槽81において行われることによって、破砕ガラス7に付着している配線金属が除去される。そして、この電解酸化後に、電解水槽81内のアルカリ水34は、配管31c及びポンプ32cを介して水槽35bに導入され、電解水槽81から除去される。その一方で、水槽35a内の酸性水33は、配管31d及びポンプ32dを介して水槽35bに導入される。これにより、電解水槽81からの電解酸化後のアルカリ水34と、水槽35aからの酸性水33とが、水槽35b内にて混合して中和し、中性塩溶液36と、金属の水酸化物37とが生成される。
【0051】
<ステップS3>
本のステップS3では、ステップS2によって配線金属が除去された破砕ガラス7(以下、「除去後ガラス38」と呼ぶこともある)に付着されているITOを還元して、当該ITOに含まれるIn,Snを生成する電解還元を行う。
【0052】
本ステップS3が先のステップS2と異なる点は、本ステップS3では、上記第1電解液14aではなく、導電率が1000μS/cm以下の第2電解液14bを用いる点である。つまり、本ステップS3では、除去後ガラス38を、当該第2電解液14bに浸漬されている上側電極板1及び下側電極板2(第1及び第2電極)の間に置いた状態で、上側電極板1及び下側電極板2の間に直流電圧を印加する。なお、導電率が1000μS/cm以下の第2電解液14bとしては、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムなどの中性塩を溶解させた水溶液を用いる。または、第2電解液14bとして、水道水、工業用水などの淡水などを用いてもよい。
【0053】
以上のような第2電解液14bを用いて電圧印加を行うと、ITOが還元され、ITOに含まれるIn,Snが生成される(In2O3+6H++6e→2In+3H2O,SnO2+4H++4e→Sn+2H2O)。
【0054】
図9は、本ステップS3を行う本実施の形態に係る金属回収装置の構成を示す図である。本実施の形態に係る金属回収装置は、ITO還元用電解装置の機能を有しており、図9に示されるように、配管31eと、弁39と、イオン交換樹脂40とを備えている。
【0055】
弁39を介して水25の一部がイオン交換樹脂40に通水されることにより、水の導電率が変更される。そして、導電率が変更された水と、導電率が変更されていない水25の残余部とが混合される。当該混合によって得られた水は、配管31eを介して電解水槽81に導入され、電解水槽81に貯留される。
【0056】
このような金属回収装置によれば、弁39の操作によって、電解水槽81に貯留される水の導電率を調整することが可能となっている。本実施の形態では、導電率が1000μS/cm以下に調整された水が、電解水槽81においてITOに電解還元を行うための第2電解液14bとして用いられる。このように、本実施の形態では、ステップS2で用いた電解水槽81(ここでは図2に示した横型の電解水槽81a)にて、本ステップS3を行うことができるので、除去後ガラス38を別の水槽に移動させずに、ステップS2の後に本ステップS3を続けて行うことが可能となっている。
【0057】
なお、例えば、弁39を通す水25として水道水を用いる場合には、電源12による印加電圧との兼ね合いにより、水25をイオン交換樹脂40に全く通水せずに第2電解液14bとしてそのまま使用してもよい。
【0058】
また、第2電解液14bの導電率が小さすぎると、上側電極板1及び下側電極板2の間の印加電圧を大きくする必要があるため、第2電解液14bの導電率は10μS/cm以上であることが好ましい。また、第2電解液14bとして、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムなどの中性塩を添加したエチレンカーボネートやプロピレンカーボネートなどの非水溶媒を用いてもよい。第2電解液14bとして非水溶媒を用いる場合には、電気分解による酸素ガス、水素ガスの発生は伴わないため、ITOの還元を効率的に行うことができる。
【0059】
また、電解還元における単位電極間距離当りの印加電圧、すなわち電界強度は、ITOを適切に還元するため2V/cm以上であることが好ましい。一方、電源12の印加電圧がある程度高くなると、第2電解液14bの電気分解が激しく生じるだけで、ITOの還元効率は向上しないので、当該電界強度は1000V/cm以下が好ましい。
【0060】
電解水槽81にて上述した電解還元が行われた後、電解水槽81内の水(第2電解液14b)が除去される。
【0061】
<ステップS4>
このステップS4では、ステップS3によって還元されたIn,Snが付着している除去後ガラス38(以下、「還元後ガラス41」と呼ぶこともある)を第3電解液14cに浸漬させる。これにより、InをInイオンとして第3電解液14cに溶解させる(In→In3++3e)とともに、SnをSnイオンとして第3電解液14cに溶解させる(Sn→Sn4++4e)。
【0062】
第3電解液14cとしては、上述したように、pHが3以下の酸性水、または、pHが11以上であるアルカリ水を用いる。なお、本ステップS4において、このような比較的弱い酸性水及びアルカリ水に第1金属(Sn,In)を溶解させることが可能となっているのは、ステップS3にて、酸化物半導体(ITO)に含まれる第1金属(Sn,In)を電解還元したためである。
【0063】
In,Snを第3電解液14cに溶解させた後、当該第3電解液14cからIn,Snを回収する。このIn,Snの回収方法には電解析出や中和沈殿などを用いる。次に、電解析出及び中和沈殿について詳細に説明する。
【0064】
図10は、電解析出を行う電解析出装置の構成を示す概念図である。この電解析出装置は、水槽42と、電源43と、正極板44と、負極板45とを備えている。このような電解析出装置において、正極板44及び負極板45を、In,Snが溶解された第3電解液14cに浸漬させた状態で、正極板44及び負極板45の間に電源43を用いて直流電圧を印加すると、負極板45にIn,Sn46が析出する(In3++3e→In,Sn4++4e→Sn)。
【0065】
図11は、本ステップS4の電解析出を行う本実施の形態に係る金属回収装置の構成を示す図である。図11に示される本実施の形態に係る金属回収装置は、図10に示した電解析出装置の機能を有している。つまり、水槽本体3、電源12、上側電極板1及び下側電極板2が、それぞれ水槽42、電源43、正極板44及び負極板45として用いられる。なお、上側電極板1及び下側電極板2のどちらか一方が正極板44であればよく、他方が負極板45であればよい。ここでは、上側電極板1が負極板45であり、下側電極板2が正極板44であるものとして説明する。
【0066】
次に、図11に示す本実施の形態に係る金属回収装置が、還元後ガラス41のIn,Snを第3電解液14cに溶解して、当該第3電解液14cからIn,Snを電解析出により回収する動作について説明する。
【0067】
まず、ステップS2と同様にして、酸性水33が、ポンプ32aを介して電解水槽81に導入され、電解水槽81に貯留される。そして、電解水槽81に貯留された酸性水33が、電解水槽81において還元後のIn,Snが溶解される第3電解液14cとして用いられる。このように、本実施の形態では、ステップS3で用いた電解水槽81(ここでは図2に示した横型の電解水槽81a)にて、本ステップS4の電解析出を行うことができるので、還元後ガラス41を別の水槽に移動させずに、ステップS3の後に本ステップS4を続けて行うことができる。
【0068】
In,Snが第3電解液14cに溶解すると、第3電解液14cにInイオン及びSnイオンが生成される。それから、当該第3電解液14cに浸漬されている上側電極板1及び下側電極板2の間に電源12を用いて直流電圧を印加すると、負極板である上側電極板1にIn,Sn46が回収可能に析出する。
【0069】
なお、正極板44及び負極板45間の単位電極距離当りの印加電圧、すなわち電界強度は、正極板44及び負極板45の間の距離に依存するが、In,Sn46の析出を適切に行うため1V/cm以上であることが好ましい。一方、電源12の印加電圧がある程度高くなると、第3電解液14cの電気分解が激しく生じるだけで、In,Sn46の析出効率は向上しないので、当該電界強度は1000V/cm以下が好ましい。
【0070】
以上のような電解析出(電解還元)によって上側電極板1にIn,Sn46を析出させた後、ステップS2と同様にして、電解水槽81からの第3電解液14c(酸性水33)と、水槽35aからのアルカリ水34とを、水槽35b内において混合させて中和する。なお、ここでは、電解水槽81に導入する第3電解液14cとして、酸性水33を適用した例について説明したが、これに限ったものではなく、本ステップS4で回収したい金属に応じてアルカリ水34を適用してもよい。
【0071】
次に、中和沈殿によるIn,Snの回収方法について説明する。中和沈殿においては、In,Snが溶解された第3電解液14cが酸性水である場合にはアルカリ水を添加して中和し、当該第3電解液14cがアルカリ水である場合には酸性水を添加して中和することによってIn,Snを沈殿させる(In3++3OH-→In(OH)3,Sn4++4OH-→Sn(OH)4)。
【0072】
図12は、本実施の形態に係る金属回収装置の構成を示す図である。図12に示される本実施の形態に係る金属回収装置は、中和沈殿装置の機能を有している。
【0073】
次に、本実施の形態に係る金属回収装置が、還元後ガラス41のIn,Snを第3電解液14cに溶解して、当該第3電解液14cからIn,Snを中和沈殿により回収する動作について説明する。
【0074】
まず、上述した電解析出と同様にして、酸性水33が、ポンプ32aを介して電解水槽81に導入され、電解水槽81に貯留される。そして、電解水槽81に貯留された酸性水33が、電解水槽81において還元後のIn,Snが溶解される第3電解液14cとして用いられる。このように、本実施の形態では、ステップS3で用いた電解水槽81(ここでは図2に示した横型の電解水槽81a)にて本ステップS4の中和沈殿を実施するための溶解を行うことができるので、還元後ガラス41を別の水槽に移動させずに、ステップS3の後に本ステップS4を続けて行うことができる。
【0075】
In,Snが第3電解液14cに溶解すると、第3電解液14cにInイオン及びSnイオンが生成される。それから、ステップS2と同様にして、電解水槽81からの第3電解液14c(酸性水33)と、水槽35aからのアルカリ水34とを、水槽35b内において混合させて中和する。この中和によって、中性塩溶液36と、In,Snが回収可能なIn,Snの沈殿物47が水槽35b内に生成される。なお、ここでは、電解水槽81に導入する第3電解液14cとして、酸性水33を適用した例について説明したが、これに限ったものではなく、本ステップS4で回収したい金属に応じてアルカリ水34を適用してもよい。
【0076】
<実施例1>
破砕機を用いて液晶パネルを平面視でのサイズが100mm角程度以下となるように破砕した後、エタノール洗浄によって液晶を除去する。
【0077】
破砕した液晶パネルから破砕ガラス7を300g採取し、図8に示した電解水槽81の塩化ビニル樹脂性の非導電性板8に載置した。電解水槽81のスペーサ11の高さは5mmとして、上側電極板1と塩化ビニル樹脂製の非導電性板8との間の距離、及び、非導電性板8と下側電極板2との間の距離を調整した。上側電極板1及び下側電極板2には、窒化チタン(TiN)をコーティングした「SUS304」からなる板を用いた。
【0078】
そして、破砕ガラス7に対して、図8を用いて説明したステップS2(金属溶解処理)を行った。具体的には、図8に示す水25及び塩26として水道水及び食塩(NaCl)を用い、食塩が適量添加された水道水を容器27内に通水することによってpH=2.5の酸性水33を生成させた。そして、当該酸性水33を電解水槽81に導入した後、上側電極板1及び下側電極板2の間に電界強度10V/cmの直流電圧を5分間印加し、破砕ガラス7に付着している配線金属を除去した。それから電解水槽81から酸性水33を除去した。
【0079】
次に、当該配線金属を除去することによって得られた除去後ガラス38に対して、図9を用いて説明したステップS3(電解還元処理)を行った。具体的には、図9に示す水25として水道水を用い、弁39の操作により導電率が40μS/cmに調整された水(電解水)を電解水槽81に貯留した。それから、金属溶解処理で用いたスペーサ11、上側電極板1、下側電極板2及び非導電性板8をここでも用いて、上側電極板1及び下側電極板2の間に電界強度40V/cmの直流電圧を30分間印加し、除去後ガラス38に付着しているITOを還元した。それから電解水槽81から水(電解水)を除去した。
【0080】
次に、当該還元によって得られた還元後ガラス41に対して、図11を用いて説明したステップS4(溶解・回収処理)を行った。具体的には、図11に示す水25及び塩26として水道水及び食塩(NaCl)を用い、食塩が適量添加された水道水を容器27内に通水することによってpH=2.5の酸性水33を生成させた。そして、当該酸性水33を電解水槽81に導入し、還元後ガラス41を酸性水33に10時間浸漬させて、還元後ガラス41に付着しているIn,Snを酸性水33に溶解させた。それから、当該酸性水33に浸漬している上側電極板1及び下側電極板2の間に電界強度10V/cmの直流電圧を印加し、上側電極板1にIn,Snを析出させた。析出したIn,Snを定量分析した結果、回収量は単位ガラス面積当たりInが25.12μg/cm2、Snが2.73μg/cm2であった。なお、その回収時に副次的に得られたIn,Sn以外の金属は0.05μg/cm2以下であり、純度の高いIn,Snを回収することができた。
【0081】
<実施例2>
破砕機を用いて液晶パネルを平面視でのサイズが100mm角程度以下となるように破砕した後、エタノール洗浄によって液晶を除去する。
【0082】
破砕した液晶パネルから破砕ガラス7を300g採取し、図8に示した電解水槽81の塩化ビニル樹脂性の非導電性板8に載置した。電解水槽81のスペーサ11の高さは5mmとして、上側電極板1と塩化ビニル樹脂製の非導電性板8との間の距離、及び、非導電性板8と下側電極板2との間の距離を調整した。上側電極板1及び下側電極板2には、窒化チタン(TiN)をコーティングした「SUS304」からなる板を用いた。
【0083】
そして、破砕ガラス7に対して、図8を用いて説明したステップS2(金属溶解処理)を行った。具体的には、図8に示す水25及び塩26として水道水及び食塩(NaCl)を用い、食塩が適量添加された水道水を容器27内に通水することによってpH=2.5の酸性水33を生成させた。そして、当該酸性水33を電解水槽81に導入した後、上側電極板1及び下側電極板2の間に電界強度10V/cmの直流電圧を5分間印加し、破砕ガラス7に付着している配線金属を除去した。それから電解水槽81から酸性水33を除去した。
【0084】
次に、当該配線金属を除去することによって得られた除去後ガラス38に対して、図9を用いて説明したステップS3(電解還元処理)を行った。具体的には、図9に示す水25として水道水を用い、弁39の操作により導電率が40μS/cmに調整された水(電解水)を電解水槽81に貯留した。それから、金属溶解処理で用いたスペーサ11、上側電極板1、下側電極板2及び非導電性板8をここでも用いて、上側電極板1及び下側電極板2の間に電界強度40V/cmの直流電圧を30分間印加し、除去後ガラス38に付着しているITOを還元した。それから電解水槽81から水(電解水)を除去した。
【0085】
次に、当該還元によって得られた還元後ガラス41に対して、図12を用いて説明したステップS4(溶解・回収処理)を行った。具体的には、図12に示す水25及び塩26として水道水及び食塩(NaCl)を用い、食塩が適量添加された水道水を容器27内に通水することによってpH=2.5の酸性水33を生成させた。そして、当該酸性水33を電解水槽81に導入し、還元後ガラス41を酸性水33に10時間浸漬させて、還元後ガラス41に付着しているIn,Snを酸性水33に溶解させた。それから、当該酸性水33と、アルカリ水34とを混合させてIn,Snを沈殿させた。沈殿させたIn,Snを定量分析した結果、回収量は単位ガラス面積当たりInが24.85μg/cm2、Snが2.81μg/cm2であった。なお、その回収時に副次的に得られたIn,Sn以外の金属は0.05μg/cm2以下であり、純度の高いIn,Snを回収することができた。
【0086】
<まとめ>
以上のような本実施の形態に係る金属回収方法によれば、ITO(酸化物半導体)に含まれるIn,Sn(第1金属)の回収前に、破砕ガラス7(ガラス部材)から配線金属(第2金属)を除去する。したがって、ITOに含まれるIn,Snを高純度に回収することができる。また、ITOに含まれるIn,Snを溶解する前に電解還元することから、In,Snの回収に使用する第3電解液14cに、比較的弱い酸/アルカリの電解液を用いることができる。したがって、薬液の取扱いの煩雑さを低減することができるとともに、薬液にかかるコストを低減することができる。
【0087】
以上のような本実施の形態に係る金属回収方法は、特に、Inなどの希少金属の回収に有効である。
【0088】
また、本実施の形態に係る金属回収装置によれば、例えば、工程が変わるごとに破砕ガラス7等を別の水槽に移動させる手間を省くことができるとともに、上記金属回収方法を実施する装置を比較的少ない構成要素で実現することができる。
【0089】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 上側電極板、2 下側電極板、7 破砕ガラス、14a〜14c 第1〜第3電解液、81,81a,81b 電解水槽、82 電解水製造装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属を含む酸化物半導体と、前記第1金属以外の金属である第2金属とが付着しているガラス部材から、前記第1金属を回収する金属回収方法であって、
(a)前記ガラス部材を、第2電解液に浸漬されている第1及び第2電極の間に置いた状態で、当該ガラス部材の前記酸化物半導体を還元して当該酸化物半導体に含まれる前記第1金属を生成する電解還元を行う工程を備える、金属回収方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属回収方法であって、
(b)前記工程(a)の前に、前記ガラス部材を、第1電解液に浸漬されている第1及び第2電極の間に置いた状態で、当該ガラス部材の前記第2金属を溶解する電解酸化を行う工程をさらに備える、金属回収方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の金属回収方法であって、
(c)前記工程(a)の後に、前記ガラス部材を第3電解液に浸漬させて、前記電解還元により還元された前記第1金属を前記第3電解液に溶解した後、当該第3電解液から前記第1金属を回収する工程をさらに備える、金属回収方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の金属回収方法であって、
前記第1金属は希少金属を含む、金属回収方法。
【請求項5】
請求項4に記載の金属回収方法であって、
前記希少金属は、インジウム(In)である、金属回収方法。
【請求項6】
請求項2に記載の金属回収方法であって、
前記第1電解液の導電率が1000μS/cm以上であり、かつ、前記第1電解液のpHが3以下またはpHが11以上である、金属回収方法。
【請求項7】
請求項1に記載の金属回収方法であって、
前記第2電解液の導電率が1000μS/cm以下である、金属回収方法。
【請求項8】
請求項3に記載の金属回収方法であって、
前記第3電解液は、
pH3以下の酸性水またはpH11以上のアルカリ水である、金属回収方法。
【請求項9】
請求項3に記載の金属回収方法を実施する金属回収装置であって、
前記工程(b)、前記工程(a)及び前記工程(c)にてそれぞれ用いられる前記第1電解液、前記第2電解液及び前記第3電解液を貯留可能な電解水槽と、
前記電解水槽に貯留されるべき前記第1電解液及び前記第3電解液を生成可能な電解水製造装置と
を備える、金属回収装置。
【請求項1】
第1金属を含む酸化物半導体と、前記第1金属以外の金属である第2金属とが付着しているガラス部材から、前記第1金属を回収する金属回収方法であって、
(a)前記ガラス部材を、第2電解液に浸漬されている第1及び第2電極の間に置いた状態で、当該ガラス部材の前記酸化物半導体を還元して当該酸化物半導体に含まれる前記第1金属を生成する電解還元を行う工程を備える、金属回収方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属回収方法であって、
(b)前記工程(a)の前に、前記ガラス部材を、第1電解液に浸漬されている第1及び第2電極の間に置いた状態で、当該ガラス部材の前記第2金属を溶解する電解酸化を行う工程をさらに備える、金属回収方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の金属回収方法であって、
(c)前記工程(a)の後に、前記ガラス部材を第3電解液に浸漬させて、前記電解還元により還元された前記第1金属を前記第3電解液に溶解した後、当該第3電解液から前記第1金属を回収する工程をさらに備える、金属回収方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の金属回収方法であって、
前記第1金属は希少金属を含む、金属回収方法。
【請求項5】
請求項4に記載の金属回収方法であって、
前記希少金属は、インジウム(In)である、金属回収方法。
【請求項6】
請求項2に記載の金属回収方法であって、
前記第1電解液の導電率が1000μS/cm以上であり、かつ、前記第1電解液のpHが3以下またはpHが11以上である、金属回収方法。
【請求項7】
請求項1に記載の金属回収方法であって、
前記第2電解液の導電率が1000μS/cm以下である、金属回収方法。
【請求項8】
請求項3に記載の金属回収方法であって、
前記第3電解液は、
pH3以下の酸性水またはpH11以上のアルカリ水である、金属回収方法。
【請求項9】
請求項3に記載の金属回収方法を実施する金属回収装置であって、
前記工程(b)、前記工程(a)及び前記工程(c)にてそれぞれ用いられる前記第1電解液、前記第2電解液及び前記第3電解液を貯留可能な電解水槽と、
前記電解水槽に貯留されるべき前記第1電解液及び前記第3電解液を生成可能な電解水製造装置と
を備える、金属回収装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−108132(P2013−108132A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253522(P2011−253522)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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