説明

金属微粒子の分級処理方法

【課題】セラミック電子部品の高容量化等の要求に応える、微小で均一膜厚の導体膜の原料となる金属微粒子の分級処理方法を提供する。
【解決手段】金属微粒子からなる1次粒子が凝集して粗大化した2次粒子T1を1次粒子に解粒する解粒工程T2と、粒子を粒径に従って分級する分級工程T4を連続的又は同時的に実施して、微小で均一な粒径の金属1次粒子を生成する。前記金属1次粒子由来の導体膜により、セラミック電子部品の更なる薄層化・多層化・性能の安定化が図れ、これらを使用した携帯電話、ノートパソコン等モバイル機器をはじめとする電子機器の高性能化・小型化が期待できる微小で均一な粒径の金属微粒子を生成する分級処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品、電子材料等の電子機器、工業機械関係、冶金関係等に使用される金属微粒子をその粒径サイズに従って分級する方法に関し、更に詳細にはセラミック電子部品の電極や配線等の導体形成に使用される導体用ペーストの原料となる金属微粒子の分級処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やパソコン等の電子機器の普及、高性能化・小型化に伴い、電子機器に使用される電子部品も急速に小型化・高容量化が進んでいる。例えば積層セラミックコンデンサは、小型化・高容量化をするために、内部電極と誘電体層を可能な限り薄くする薄層化技術と、それらを可能な限り多く積層する多層化技術が研究されている。
【0003】
積層セラミックコンデンサは、一般に下記のような工程で製造される。セラミック粉末とバインダを主成分とするグリーンシートに、導体用ペーストを所定パターンに塗着して未焼成シートを形成する。この未焼成シートを所望数積層した後、加圧下で熱変形を防止しながら一体焼結させ多層体中間部品を形成する。この多層体中間部品の外側表面に外部電極を形成して積層セラミックコンデンサが製造される。
【0004】
このとき、導体用ペーストに含まれる金属微粒子の粒径を微小化できなければ、導体用ペースト膜を焼成して形成される導体膜の薄膜化も達成できない。グリーンシートを薄層化しても、その上に積層される導体膜が薄膜化できなければ、全体としての積層セラミックコンデンサの小型化・高容量化も到底望めない。積層セラミックコンデンサを小型化するためには、グリーシート厚を極小化すると同時に、導体膜の薄膜化を実現することが必要である。しかし、この導体膜は金属微粒子の焼結によって形成されるから、導体膜を薄膜化するためには金属微粒子の粒径の微小化が実現されなければならない。
【0005】
導体膜を薄膜化する対策として、特開2005−23417公報(特許文献1)では、ナノ金属微粒子の製法が提案されている。即ち、溶液中に水酸化銅を分散させた懸濁液に超音波を照射しながら還元剤を添加し、キャビテーション効果により1次粒子径が0.1μm以下の球状銅微粒子を製造する方法が提案されている。
【0006】
また、一般に1次粒子が微細化されるほど、1次粒子の集団が分子間力で凝集し粗大化する。そのため、1次粒子が単分散状態で存在することは、ほとんどない。そこで、微細な1次粒子が凝集して粗大化した2次粒子を解粒する方法も種々研究されてきた。本発明者等は、特開平11−140511(特許文献2)で、粗大化した2次粒子を含むスラリーを調製し、2以上の方向から交差するように前記スラリーを噴射して衝突させ、2次粒子を1次粒子にまで解粒する方法を開示している。
【0007】
更に、製造された粒子群から所望粒径の粒子を選択する分級法も種々研究されてきた。特開2005−342581公報(特許文献3)では、金属微粒子をスラリーにして、粗粒子と細粒子に分級する方法が提案されている。即ち、金属微粒子を水中に分散させた水スラリーを、そのpH及び/又は電解質の濃度を調整してから、ガラス又はセラミックスのチューブ内を通過させて、粒子とチューブ壁間の電気引力を利用して、粗粒子をチューブ壁に吸着させて除去する方法が提案されている。
【特許文献1】特開2005−23417公報
【特許文献2】特開平11−140511公報
【特許文献3】特開2005−342581公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、特開2005−23417公報(特許文献1)では、1次粒子径が0.1μm以下の球状銅微粒子を製造する方法が提案されている。しかし、微小粒径の金属1次粒子を製造しても、多くの場合、時間経過により金属1次粒子が凝集し粗大化して2次粒子に成長する。特に、金属ナノ粒子の場合、単分散技術が開発されない限り、これらが凝集し粗大化して2次粒子に成長する。凝集して粗大化した2次粒子が混在する粒子群を金属成分とする導体用ペーストでは、焼結すると導体膜に凹凸が発生する。このため、粗大化した2次粒子からは、均一な微小膜厚の導体膜を焼成できず、前記凹凸性により電極特性も悪化するという問題があった。
【0009】
また、本発明者等は、粗大化した2次粒子を解粒する方法として特開平11−140511(特許文献2)を開示した。しかし、衝突による解粒だけでは、2次粒子が完全には1次粒子にまで解粒されないことが分った。即ち、種々の粒径の中間粒子に不完全解粒され、全ての2次粒子が1次粒子にまで解粒されることは稀であることが分った。
【0010】
また、特開2005−342581公報(特許文献3)には、金属微粒子の分級法が開示されている。しかし、前述のように、ほとんどの場合、被分級物は、種々の粒径を有した金属粉体である。そのため、この分級法では、粒径の均一な2次粒子を生成することになる。2次粒子は一般に大径を有するから、粒径の粗大な2次粒子を原料粉体とする導体用ペーストでは、薄層化した導体膜を焼結できないという問題があった。前述したように、粒径の異なる粒子群を含有する原料を使用した導体用ペーストでは、焼結すると導体膜に凹凸が発生し、電極特性も悪化する。
【0011】
従来の技術では、解粒工程と分級工程が夫々単独で実施されていた。解粒工程だけを単独で実施すると、種々の粒径の粒子群が製造された。その結果、前述したように、粒径の異なる粒子群を含有する原料を使用した導体用ペーストでは、焼結すると導体膜に凹凸が発生し、電極特性も悪化するという問題があった。また、分級工程だけを単独で実施すると、均一な粒径の大きな2次粒子からなる粉体が生成されるだけであり、電極膜の薄層化にはつながらないという問題があった。
【0012】
従って、本発明の目的は、解粒工程と分級工程を、連続的又は同時的に実施して、微小で均一な粒径の金属微粒子を生成することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の第1の形態は、金属微粒子からなる1次粒子が凝集して粗大化した2次粒子を処理槽内に収容して1次粒子に解粒する解粒工程と、処理槽内又は別の分級槽内で、解粒工程により得られる1次粒子をその粒径に従って分級する分級工程とから構成される連続処理工程を少なくとも含む金属微粒子の分級処理方法である。
【0014】
本発明の第2の形態は、金属微粒子からなる1次粒子が凝集して粗大化した2次粒子を処理槽内に収容して1次粒子に解粒する解粒工程と、解粒工程と同時に処理槽内の粒子群をその粒径に従って分級する分級工程とから構成される同時処理工程を少なくとも含む金属微粒子の分級処理方法である。
【0015】
本発明の第3の形態は、前記第1又は第2の形態において、解粒工程は、金属微粒子を含む液体又気体の噴射流を、2以上の方向から噴出させ、噴射流を互いに衝突させることにより実施される金属微粒子の分級処理方法である。
【0016】
本発明の第4の形態は、前記第1〜第3形態のいずれかにおいて、解粒工程は、処理槽内に超音波振動を付与することによって実施される金属微粒子の分級処理方法である。
【0017】
本発明の第5の形態は、前記第1〜第4形態のいずれかにおいて、分級工程は、重力又は遠心力を利用した湿式分級法により実施される金属微粒子の分級処理方法である。
【0018】
本発明の第6の形態は、前記第5形態において、分級工程により排出した粒径の大きな金属微粒子を処理槽に帰還させて、解粒工程を実施する金属微粒子の分級処理方法である。
【0019】
本発明の第7の形態は、前記第1〜第6形態のいずれかの金属微粒子が、卑金属微粒子である金属微粒子の分級処理方法である。
【0020】
本発明の第8の形態は、前記第7形態の卑金属微粒子が、プラズマCVD法により得られたニッケル微粒子である金属微粒子の分級処理方法である。
【0021】
本発明の第9の形態は、前記第1〜第6形態のいずれかの金属微粒子が、貴金属微粒子である金属微粒子の分級処理方法である。
【0022】
本発明の第10の形態は、前記第1〜第9形態のいずれかにおいて、分級工程を完了した金属微粒子を、単分散状態で保持する金属微粒子の分級処理方法である。
【0023】
本発明の第11の形態は、第10形態の単分散状態での保持が、金属微粒子を有機溶剤中に浸漬させることによって実現される金属微粒子の分級処理方法である。
【0024】
本発明の第12の形態は、前記第1〜第11形態のいずれかの分級処理方法により生成される金属微粒子である。
【0025】
本発明の第13の形態は、前記第12形態により生成される金属微粒子を金属成分とする導体用ペーストである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の第1の形態によれば、解粒工程と分級工程とから構成される連続処理工程を少なくとも含む金属微粒子の分級処理方法が提供される。
【0027】
金属微粒子は、焼成後に電極や配線等の金属導体を提供する成分である。この金属微粒子としては、粒径がμmサイズの金属粒子からnmサイズの金属超微粒子まで広範囲に選択できる。この金属は、貴金属、卑金属でもよく、金属含有粒子でも良い。勿論、これらの2種以上の混合物であっても良い。
【0028】
これらの金属微粒子からなる1次粒子が凝集して粗大化した2次粒子を処理槽内に収容して1次粒子に解粒する解粒工程と、更に解粒工程の後に分級工程を配置することで、均一な粒径の金属微粒子を生成することができる。解粒工程で一部の2次粒子が1次粒子にまで解粒されずに、比較的大径の金属微粒子が残存しても、分級工程で所望の粒径の金属微粒子が収集される。勿論、解粒工程で全ての2次粒子が1次粒子まで解粒されても、種々の粒径の1次粒子が存在するが、このときも分級工程で所望の均一粒径の金属微粒子が収集される。
【0029】
そして、最終的に得られる金属微粒子は極めて微小で均一な粒径の1次粒子であるので、金属微粒子を金属成分とする導体用ペーストから焼成される導体膜が薄層化できる。そのため、積層セラミック電子部品も薄層化でき、その結果、多層化でき、セラミック電子部品の更なる小型化・高容量化が図れ、電子機器の発展に貢献する。
【0030】
本形態で得られた金属微粒子は、冶金に使用すると極めて緻密な製品が得られる等、電子部品、電子材料等の電子機器、工業機械関係、冶金関係等導体用ペースト以外にも使用できることは云うまでもない。
【0031】
本形態では、解粒工程と分級工程は連続して実施するから、解粒工程を終了した粒子を移動せずに同一処理槽内で分級工程を実施しても良いし、解粒工程を終了した粒子を別の分級槽内に移送して分級工程を実施しても良い。
【0032】
場所等が限定されないため、連続処理工程では解粒工程と分級工程に公知の全ての方法が適用でき、既存装置の利用もできる。
【0033】
解粒工程と分級工程とからなる連続処理工程に、必要なら他の工程を付加しても良い。連続処理工程は1回実施すれば微小で粒径が均一な金属微粒子が得られるが、金属微粒子の種類や所望の粒径等の条件によっては、更に必要回、連続処理工程を繰返しても良い。勿論、解粒工程だけを必要回繰返して、その後分級工程を実施しても良い。
【0034】
本発明の第2の形態によれば、解粒工程と分級工程とから構成される同時処理工程を少なくとも含む金属微粒子の分級処理方法が提供される。
【0035】
金属微粒子の種類、粒径、解粒及び分級処理の効果等は前述した通りである。
【0036】
本形態では、金属微粒子は解粒工程と分級工程により同一処理槽内で同時処理される。解粒工程と分級工程を同時に同一処理槽内で実施することで、粒子を移送する必要がないので、時間的にも場所的にも効率よく処理でき、同時処理時のコストダウンが図れる。また解粒後の微粒子が再凝集することなく、微小で粒径が均一な金属微粒子を得ることができる。
【0037】
解粒工程と分級工程とからなる同時処理工程に、必要なら他の工程を付加しても良い。同時処理工程は1回実施すれば微小で粒径が均一な金属微粒子が得られるが、金属微粒子の種類や所望の粒径等の条件によっては、更に必要回、同時処理工程を繰返しても良い。
【0038】
導体用ペーストに利用した場合、微小で均一な粒径の金属微粒子が得られるので、金属微粒子を金属成分とする導体用ペースト由来の導体膜が薄層化でき、積層セラミック電子部品も薄層化・多層化できる。このため、セラミック電子部品の更なる小型化・高容量化が図れ、電子機器の発展に貢献する。
【0039】
本形態により得られる金属微粒子は、電子部品、電子材料等の電子機器、工業機械関係、冶金関係等導体用ペースト以外にも使用できることは云うまでもない。
【0040】
本発明の第3の形態によれば、解粒工程は、金属微粒子を含む噴射流を、2以上の方向から噴出させ衝突させることにより実施される金属微粒子の分級処理方法が提供される。
【0041】
解粒工程は粗大化した2次粒子をスラリー化して衝突させる形態だけではなく、2次粒子を含む溶液等の液体又は気体を衝突させて実施することも可能である。液体では、水だけではなく、各種の有機溶剤も使用できる。微小になるほど金属微粒子は活性化するので、気体では窒素等の不活性ガスを使用することが望ましい。
【0042】
衝突時の運動エネルギーは速度の2乗に比例するため、不完全解粒粒子をなくすためには、ある大きさ以上の速度が好適である。このような噴射速度、2次粒子の濃度及び衝突時の交差角等の解粒条件は、金属2次粒子の種類や所望する粒径により、適宜選択できる。
【0043】
本発明の第4の形態によれば、解粒工程は、処理槽内に超音波振動を付与することによって実施される金属微粒子の分級処理方法が提供される。
【0044】
超音波振動を付与するとき、超音波振動が伝播する状態なら、2次粒子は液体中に浮遊していても良いし、気体中に堆積していても良い。
【0045】
また、解粒工程は処理槽内に超音波振動を単独に付与して実施しても良いし、他の解粒工程と同時に超音波振動を付与して実施しても良い。例えば、液体中の場合では、処理槽内で2次粒子を含有するジェット流同士を衝突させ、同時にジェット流に超音波振動を付与すれば、第3形態の解粒工程と同時に処理槽内に超音波振動を付与することができる。気体中の場合では、特にジェット流衝突部に上方から超音波を付与すれば、第3形態の解粒工程と同時に処理槽内に超音波振動を付与することができる。同時に行うときは、極めて効率的に解粒工程が行われる。
【0046】
本発明の第5の形態によれば、分級工程は、重力又は遠心力を利用した湿式分級法により実施される金属微粒子の分級処理方法が提供される。
【0047】
同じ原理の分級法を比較すると、空気等の気体を使用する乾式分級法に比べて、水等の液体中では微粒子が凝集しないため、液体を使用する湿式分級法が分級精度は良い。
【0048】
重力を利用した湿式分級装置の代表的なものとして、ハイドロセパレータ、スパイラル分級機、レーキ分級機、ボール分級機、ドラム分級機、ジェットサイザ及びクラシファイングサイザがある。遠心力を利用した湿式分級装置の代表的なものとして、液体サイクロン、分離板型遠心分離機及び円筒型遠心分離機がある。金属微粒子の種類及び所望の粒径により、前記分級装置あるいは重力又は遠心力を利用した他の湿式分級装置から、適宜分級工程で使用する処理装置が選択できる。
【0049】
本発明の第6の形態によれば、分級工程により排出した粒径の大きな金属微粒子を処理槽に帰還させて、解粒工程を実施する金属微粒子の分級処理方法が提供される。
【0050】
解粒工程で処理された金属微粒子に不完全解粒粒子が残存しても、粒径の大きな金属微粒子は分級工程で収集されるため、前記金属微粒子を処理槽に帰還させることにより、解粒工程から改めて実施することができる。即ち、金属微粒子の処理槽への帰還を繰返すことによって、解粒工程を多数回実施することになり、2次粒子を1次粒子にまで完全に解粒することが可能になる。そのため、不完全解粒粒子が無くなるので、不完全解粒粒子を廃棄するなどの不経済性が無くなる。不完全解粒粒子を解粒工程の処理槽内で再処理すればよいので、この不完全解粒粒子の分級工程から解粒工程への帰還は、解粒工程と分級工程を連続的に実施しても、同時的に実施しても可能である。
【0051】
本発明の第7の形態によれば、金属微粒子が、卑金属微粒子である金属微粒子の分級処理方法が提供される。
【0052】
近年、価格の変動が小さく安価な卑金属が、導体用ペーストの原料として使用されることが多くなった。この場合、本発明によって微小で均一な粒径の金属微粒子、例えば銅粒子やニッケル粒子が生成される。このため、微小で均一膜厚の導体膜が焼成でき、積層セラミック電子部品も薄層化・多層化できる。この結果、セラミック電子部品の更なる小型化・高容量化が進み、電子機器の発展に貢献する。
【0053】
本発明の第8の形態によれば、卑金属微粒子が、プラズマCVD法により得られたニッケル微粒子である金属微粒子の分級処理方法が提供される。
【0054】
通常のCVD法では、金属塩化物を出発原料として使用するため、塩素が残留し、製造した金属に付着した塩素を水で洗浄する必要がある。しかし、プラズマCVD法で、ニッケルの単体金属を出発原料とするから、塩素等の不要分が存在せず、洗浄等水分を必要とする工程がない。そのため、プラズマCVDでは、乾式分級法を採用できる。しかし、前述のように、乾式分級法は湿式分級法に比べ分級精度が劣るため、湿式分級法を採用しても良い。
【0055】
また、貴金属と比較して、本形態では卑金属のニッケルを使用するから、経済的な導体用ペースト、延いては経済的な積層セラミックスが製造できる。
【0056】
本発明の第9の形態によれば、金属微粒子が、貴金属微粒子である金属微粒子の分級処理方法が提供される。
【0057】
導体用ペーストの原料に銀等の貴金属を使用した場合、貴金属は酸化することがないので、極めて安定した導体膜を焼成することができる。更に、本形態により、効率的に微小で粒径が均一な金属微粒子が生成されるため、経済的な導体用ペースト、延いては経済的な積層セラミックスが製造できる。
【0058】
本発明の第10の形態によれば、分級工程を完了した金属微粒子を、単分散状態で保持する金属微粒子の分級処理方法が提供される。
【0059】
解粒工程及び分級工程により、微小で均一な粒径の金属微粒子が得られるが、この金属微粒子は単純に放置しておくと、再び凝集し粗大化して2次粒子に復帰することが起こりやすい。そこで、本形態では、得られた微細で均一な1次粒子が相互に凝集しない状態、即ち単分散状態で保持して、後の金属微粒子の使用に備える。単分散状態での保持のため、公知の薬剤や方法等が使用できる。
【0060】
本発明の第11の形態によれば、単分散状態での保持が、金属微粒子を有機溶剤中に浸漬させることによって実現される金属微粒子の分級処理方法が提供される。
【0061】
単分散状態での保持が有機溶剤中で浸漬、分散して実施されるため、金属微粒子と外界との接触が遮断され、乾燥状態で金属微粒子からなる1次粒子が凝集・粗大化して2次粒子に成長することがない。即ち、金属原子からの電子の出入が絶縁性の有機溶剤により遮断され、金属微粒子が電気的に中性に保持され、金属微粒子同士が電気的に結合することがない。また、分子間力による金属微粒子同士の結合も、有機溶剤により遮断される。金属微粒子が有機溶媒中で浮遊状態にあると、有機溶剤により金属微粒子同士の接触が完全に遮断される。沈殿状態にあると、金属微粒子の表面に有機溶剤膜が形成されるため、金属微粒子同士の直接接触が回避される。そのため、金属微粒子が単分散状態で保持される。
【0062】
特に、解粒工程及び分級工程を始めとする全工程を、アセトンのような粘性の低い低沸点有機溶剤中で実施し、その後低沸点有機溶剤をターピネオールのようなやや粘性のある高沸点有機溶剤中に入れ加熱することで低沸点溶剤が蒸発する。この結果、効率的に凝集を遮断して単分散状態を保持できる。ターピネオールのような導体用ペーストに使用される有機溶剤は、通常高沸点有機溶剤であるから、高沸点有機溶剤中に金属微粒子を保存しながら樹脂を添加すれば、導体用ペーストの製造が簡略化できる。
【0063】
本発明の第12の形態によれば、前記第1〜第11形態のいずれかの分級処理方法により生成される金属微粒子が提供される。
【0064】
第1〜第11形態で説明した分級処理方法で得られる金属微粒子であるから、微小で均一な粒径の1次粒子金属粉体が提供できる。
【0065】
本発明の第13の形態によれば、前記第12形態により生成される金属微粒子を金属成分とする導体用ペーストが提供される。
【0066】
導体用ペースト中の金属微粒子は、分級処理後の微小で均一な粒径の微粒子から構成されるので、前記導体用ペーストを焼成すると、微小で均一膜厚の導体膜が得られる。
【0067】
電子機器の高性能化・小型化に伴う、セラミック電子部品の小型化・高密度化・大容量化の要求に対して、微小化し粒径が均一な金属微粒子を含有する導体用ペースト由来の導体膜を薄層化し多数枚積層することで対応できる。そのため、電子機器の大量生産が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
以下に、本発明に係る金属微粒子の分級処理方法の実施例を、図面に従って詳細に説明する。
【0069】
図1は、解粒工程と分級工程とから構成される連続処理工程からなる金属微粒子の分級処理方法の回数制御工程図である。金属微粒子からなる1次粒子が凝集して粗大化した2次粒子を処理槽内に収容して(S1)、1次粒子に解粒する(S2)。この解粒工程を所望回繰返す(S3)。解粒工程1回の運転時間が決まっている場合は、解粒工程を多段に繰返して実施しても、解粒工程の運転時間を長く実施しても同じ効果が得られる。
【0070】
その後、処理槽内又は別の分級槽内で、解粒工程により得られる1次粒子をその粒径に従って分級する(S4)。分級工程により排出された大粒径の金属微粒子は、解粒工程に帰還される(S5)。微小で均一粒径の金属微粒子は、分級工程により収集され(S6)、単分散状態で保持される(S7)。
【0071】
図2は、解粒工程と分級工程とから構成される連続処理工程からなる金属微粒子の分級処理方法の粒径制御工程図である。図1では解粒工程の終了を所望回数(所望時間)で判断しているが、図2では解粒工程の終了を金属微粒子の解粒状態で判断している。このとき、金属微粒子の解粒状態は、金属粒径の大きさ等により、レーザ光回折法のような公知の技術から選択した方法で判定される。
【0072】
金属微粒子からなる1次粒子が凝集して粗大化した2次粒子を処理槽内に収容して(T1)、1次粒子に解粒する(T2)。この解粒工程を金属微粒子が微小粒径に解粒されるまで繰返す(T3)。その後、処理槽内又は別の分級槽内で、解粒工程により得られる1次粒子をその粒径に従って分級する(T4)。分級工程により排出された大粒径の金属微粒子は、解粒工程に帰還する(T5)。微小で均一粒径の金属微粒子は、分級工程により収集され(T6)、単分散状態で保持される(T7)。
【0073】
図3は、解粒・分級工程から構成される同時処理工程からなる金属微粒子の分級処理方法の回数制御工程図である。2次粒子を処理槽内に収容して(U1)、同一処理槽内で1次粒子に解粒しながらその粒径に従って分級する(U2)。この同時処理工程を所望回繰返す(U3)。同時処理工程1回の運転時間が決まっている場合は、同時処理工程を多数回繰返して実施しても、同時処理工程の運転時間を長く実施しても同じ効果が得られる。
【0074】
同時処理工程により排出された大粒径の金属微粒子は、同時処理工程に帰還する(U4)。微小で均一粒径の金属微粒子は、収集され(U5)、単分散状態で保持される(U6)。
【0075】
図4は、解粒・分級工程から構成される同時処理工程からなる金属微粒子の分級処理方法の粒径制御工程図である。図3では同時処理工程の終了を所望回数(所望時間)で判断しているが、図4では同時処理工程の終了を金属微粒子の解粒状態で判断している。前述したように、金属微粒子の解粒状態には、金属粒径の大きさ等により、レーザ光回折法のような公知の技術から選択した方法が使用される。
【0076】
2次粒子を処理槽内に収容して(V1)、同一処理槽内で1次粒子に解粒しながらその粒径に従って分級する(V2)。解粒・分級同時処理工程により排出された大粒径の金属微粒子は、解粒・分級同時処理工程に帰還する(V3)。均一粒径の金属微粒子であっても、粒径測定で大粒径と判断されると解粒・分級同時処理工程に帰還する(V3)。微小で均一粒径の金属微粒子は収集され(V4)、単分散状態で保持される(V5)。
【0077】
図5は、解粒工程と分級工程とから構成される連続処理工程の1例を示す概略図である。この例では、解粒をジェット流による金属2次粒子の衝突及び超音波振動の付与、分級をサイクロン法によって実施している。
【0078】
解粒装置2の中で、金属2次粒子を含むジェット流10を互いに衝突させ、その衝突部に超音波振動発生器12より超音波振動を付与することにより、2次粒子を1次粒子に解粒する。
【0079】
解粒後の1次粒子を含む溶液30は、ポンプ34により分級装置4に圧入される。被分級液20は、溶液30の圧入により矢印22に従って旋回する。旋回により生じる遠心力のために、比較的粒径の大きな1次粒子は壁側に集められ、やがて重力により下部排出口26から排出される。排出された比較的大粒径金属粒子42は、帰還しジェット流10として更に解粒される。粒径の小さな金属微粒子は、遠心力が弱いので順次供給される溶液30により旋回しながら下降し分級装置4の下部近くまで達すると反転し渦巻状に上昇して、上部導出口24から導出され、収集され単分散状態で保持される(保持装置図示せず)。このとき、上部導出口24から導出された微小均一金属微粒子40の粒径を測定して(粒径測定装置図示せず)、所望の大きさに解粒されていなければ、帰還しジェット流10として更に解粒される。
【0080】
本例では、被分級液20を液体として説明したが、気体中で全工程を実施しても実施例の概要は同様である。
【0081】
図6は、解粒・分級工程から構成される同時処理工程の1例を示す概略図である。この例では、解粒をジェット流による金属2次粒子の衝突及び超音波振動の付与、分級をサイクロン法によって実施している。
【0082】
解粒・分級装置6の中に、金属2次粒子を含む被分級液20が収容されている。この溶液中で、金属2次粒子を含むジェット流10を互いに衝突させ、その衝突部に超音波振動発生器12より超音波振動を付与することにより、2次粒子を1次粒子に解粒する。
【0083】
被分級液20は、液32の圧入により矢印22に従って旋回する。ここで、液32は被分級液20の液体成分に2次粒子を付加したものである。旋回によって働く遠心力のために、比較的粒径の大きな1次粒子は壁側に集められ、やがて重力により下部排出口26から排出される。排出された比較的大粒径金属粒子42は、帰還し液32として解粒・分級装置6の中に圧入されジェット流10で更に解粒される。粒径の小さな金属微粒子は、遠心力が弱いので順次供給される液32により旋回しながら下降し解粒・分級装置6の下部近くまで達すると反転し渦巻状に上昇して、上部導出口24から導出され、収集され単分散状態で保持される(保持装置図示せず)。このとき、上部導出口24から導出された微小均一金属微粒子40の粒径を測定して(粒径測定装置図示せず)、所望の大きさに解粒されていなければ、帰還し液32として解粒・分級装置6の中に圧入されジェット流10で更に解粒される。
【0084】
本例では、被分級液20を液体として説明したが、気体中で全工程を実施しても実施例の概要は同様である。
【0085】
本発明は、上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明に係る金属微粒子の分級処理方法を使用することにより、微小で粒径が均一の金属微粒子が得られる。この金属微粒子を導体用ペーストに使用することで、導体用ペーストを焼成した導体膜の更なる薄層化が進む。電子機器の高性能化・小型化に伴う、セラミック電子部品の小型化・高密度化・大容量化の要求に対して、微小化し粒径が均一な金属微粒子を含有する導体用ペースト由来の導体膜を薄層化し多数枚積層することで対応できる。そのため、電子機器の大量生産が可能である。
【0087】
また、本発明に係る金属微粒子の分級処理方法により生成された金属微粒子は、電子部品、電子材料等の電子機器、工業機械関係、冶金関係等広範囲に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】解粒工程と分級工程とから構成される連続処理工程からなる金属微粒子の分級処理方法の回数制御工程図である。
【図2】解粒工程と分級工程とから構成される連続処理工程からなる金属微粒子の分級処理方法の粒径制御工程図である。
【図3】解粒・分級工程から構成される同時処理工程からなる金属微粒子の分級処理方法の回数制御工程図である。
【図4】解粒・分級工程から構成される同時処理工程からなる金属微粒子の分級処理方法の粒径制御工程図である。
【図5】解粒工程と分級工程とから構成される連続処理工程の1例を示す概略図である。
【図6】解粒・分級工程から構成される同時処理工程の1例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0089】
2 解粒装置
4 分級装置
6 解粒・分級装置
10 ジェット流
12 超音波振動発生器
20 被分級液
22 旋回方向を示す矢印
24 上部導出口
26 下部排出口
30 解粒後の1次粒子を含む溶液
32 液
34 ポンプ
40 微小均一金属微粒子
42 比較的大粒径金属粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属微粒子からなる1次粒子が凝集して粗大化した2次粒子を処理槽内に収容して1次粒子に解粒する解粒工程と、前記処理槽内又は別の分級槽内で、前記解粒工程により得られる前記1次粒子をその粒径に従って分級する分級工程とから構成される連続処理工程を少なくとも含むことを特徴とする金属微粒子の分級処理方法。
【請求項2】
金属微粒子からなる1次粒子が凝集して粗大化した2次粒子を処理槽内に収容して1次粒子に解粒する解粒工程と、前記解粒工程と同時に前記処理槽内の粒子群をその粒径に従って分級する分級工程とから構成される同時処理工程を少なくとも含むことを特徴とする金属微粒子の分級処理方法。
【請求項3】
前記解粒工程は、前記金属微粒子を含む液体又気体の噴射流を、2以上の方向から噴出させ、前記噴射流を互いに衝突させることにより実施される請求項1又は2に記載の金属微粒子の分級処理方法。
【請求項4】
前記解粒工程は、前記処理槽内に超音波振動を付与することによって実施される請求項1〜3のいずれかに記載の金属微粒子の分級処理方法。
【請求項5】
前記分級工程は、重力又は遠心力を利用した湿式分級法により実施される請求項1〜4のいずれかに記載の金属微粒子の分級処理方法。
【請求項6】
前記分級工程により排出した粒径の大きな金属微粒子を前記処理槽に帰還させて、前記解粒工程を実施する請求項5に記載の金属微粒子の分級処理方法。
【請求項7】
前記金属微粒子が、卑金属微粒子である請求項1〜6のいずれかに記載の金属微粒子の分級処理方法。
【請求項8】
前記卑金属微粒子が、プラズマCVD法により得られたニッケル微粒子である請求項7に記載の金属微粒子の分級処理方法。
【請求項9】
前記金属微粒子が、貴金属微粒子である請求項1〜6のいずれかに記載の金属微粒子の分級処理方法。
【請求項10】
前記分級工程を完了した金属微粒子を、単分散状態で保持する請求項1〜9のいずれかに記載の金属微粒子の分級処理方法。
【請求項11】
前記単分散状態での保持が、前記金属微粒子を有機溶剤中に浸漬させることによって実現される請求項10に記載の金属微粒子の分級処理方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の分級処理方法により生成されることを特徴とする金属微粒子。
【請求項13】
請求項12により生成される金属微粒子を金属成分とすることを特徴とする導体用ペースト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−84222(P2010−84222A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257662(P2008−257662)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(591040292)大研化学工業株式会社 (59)
【Fターム(参考)】