説明

金属板材の圧延装置および圧延方法

【課題】本発明は:作業ロールチョックの軽微な改造のみで配備可能であり、プロジェクトブロックを含むハウジングの大規模な改造が不要であり;圧延する板材の板厚が変化しても、作業ロールチョックに作用する弾性歪を正確に常に測定することが可能であり;そして、その正確に測定された弾性歪に基づいて、高精度の蛇行・キャンバー制御、反り制御、および零点調整が実現できる、圧延装置および圧延方法を提供する。
【解決手段】少なくとも上下一対の作業ロールと補強ロールとを有する圧延装置において、前記作業ロールの作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックの入側および出側に発生する圧延方向の弾性歪を測定する歪測定手段を備えていることを特徴とする圧延装置、および該装置を用いて実施できる圧延方法。特に、前記歪測定手段は測定信号を無線で伝送してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板材の圧延において、ロールチョックに生じている圧延方向の弾性歪を測定する歪測定手段を備えた圧延装置、およびこの圧延方向の弾性歪を測定する圧延方法に関する。特に、キャンバーおよび反りのない、あるいは極めてキャンバーおよび反りの軽微な金属板材を安定して製造することのできる、金属板材の圧延装置および圧延方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属板材の圧延工程において、圧延板材をキャンバーすなわち左右曲がりのない状態で圧延することは、圧延材の平面形状不良や寸法精度不良を回避するだけでなく、蛇行や尻絞りといった通板トラブルを回避するためにも重要である。また、板材の圧延時に発生する反りも、圧延能率の低下、精整工程の増加など、製品の生産性に多大な影響を及ぼす。例えば、精整工程に関しては、レベラー、プレス等によるキャンバーや反りの矯正が必要となり、極端な場合、不良部を切断しなければならないこともある。また、さらに大きなキャンバーや反りが発生した場合、板の衝突によって、圧延設備が破損することもある。この場合、板自体が製品価値を失うばかりでなく、生産停止、圧延設備の修理など多大の損害をもたらす。
なお、本発明では、表記を簡単にするために、圧延方向を正面とした場合の左右である圧延装置の作業側および駆動側のことを左右と称することもある。
【0003】
キャンバーの問題に対して、特許文献1では、作業ロールの作業側と駆動側のロールチョックの圧延方向入側と出側の双方に、該作業ロールチョックに作用する圧延方向の力を測定するための荷重検出装置を備え、作業ロールの作業側と駆動側のロールチョックに作用する圧延方向の力を測定して、作業側の圧延方向力と駆動側の圧延方向力との差異すなわち圧延方向力左右差を演算し、この圧延方向力左右差を小さくする方向に、当該圧延装置のロール開度の左右非対称成分すなわち圧下レベリングを操作することで、キャンバーの発生を未然に防止することを提案する。
【0004】
反りの問題に対して、特許文献2では、上下両方の作業ロールのロールチョックの圧延方向入側と出側の双方に、上下両方の作業ロールチョックに作用する圧延方向の力を測定するための荷重検出装置を備え、上下両方の作業ロールのロールチョックに作用する圧延方向の力を測定して、上側の圧延方向力と下側の圧延方向力との差異すなわち圧延方向力の上下差を演算し、上記圧延方向力の上下差を小さくする方向に、当該圧延装置上下非対称成分を操作することによって、反りのない、あるいは極めて反りの軽微な金属板材を安定して製造することを提案する。
【0005】
荷重検出装置による圧延方向力の測定は、概略以下のように行われる。図1を参照して、具体的に説明する。図1は、圧延装置を示す図である。
図1の圧延装置は、上作業ロールチョック5に支持された上作業ロール1と、上作業ロール1を補強する上補強ロールチョック7に支持された上補強ロール3と、下作業ロールチョック6に支持された下作業ロール2と、下作業ロール2を補強する下補強ロールチョック8に支持された下補強ロール4を備え、圧下装置13を備えている。なお、金属板材21は、圧延方向22に圧延される。
なお、図1には、基本的に作業側の装置構成のみを図示しているが、駆動側にも同様の装置が存在する。
【0006】
圧延装置の上作業ロール1に作用する圧延方向力は基本的には上作業ロールチョック5によって支持されるが、上作業ロールチョック5には上作業ロールチョック出側荷重検出装置109と上作業ロール入側荷重検出装置110が配備されており、これらの荷重検出装置109,110により、上作業ロールチョック5を圧延方向に固定しているプロジェクトブロック(図示せず)等の部材と上作業ロールチョック5の間に作用する力を測定することができる。これらの荷重検出装置109,110は、通常は圧縮力を測定する構造とするのが装置構成を簡単にするため好ましい。上作業ロール圧延方向力演算装置14では、上作業ロール荷出側荷重検出装置109と上作業ロール入側荷重検出装置110による測定結果の差異を演算し、上作業ロールチョック5に作用する圧延方向力を演算する。さらに、下作業ロール2に作用する圧延方向力についても、下作業ロールチョック6の出側および入側に配備された下作業ロール出側荷重検出装置111および下作業ロール入側荷重検出装置112の測定値に基づき下作業ロール圧延方向力演算装置15によって、下作業ロールチョック6に作用する圧延方向力を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4214150号公報
【特許文献2】特開2007−260775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
荷重検出装置とは、上記の先行技術文献において特に明文化されていないが、図面上の表記や圧延分野での技術常識を参酌すれば、ロードセルである。圧延方向力を測定するロードセルは、ロールチョックと、ロールチョックを圧延方向で支持するプロジェクトブロック等の部材との間に設置される。ロードセルはサイズの制約があり、ロールチョックに取り付けることは難しく、通常はプロジェクトブロックにしか取り付けられない。そして、プロジェクトブロックにロードセルを設置するためには、ロードセル本体のみならず、プロジェクトブロックを含むハウジングの大規模な改造が必要となり、投資規模が大きい。
【0009】
また、作業ロールチョックにかかる圧延方向力は、作業ロールチョックとロードセルとを接触させて測定されるが、作業ロールチョックは圧延する板材の板厚に応じて上下に移動する。この作業ロールチョックの上下移動に伴い、圧延方向力の作用点も上下移動する。圧延方向力を正確に測定するためには、ロードセルならびにこれと接するプロジェクトブロック等との位置関係を厳格に管理する必要がある。逆にいえば、その管理範囲に収まるように板材の板厚を管理する必要がある。さらにいえば、板材の板厚がその管理範囲を超える場合、圧延方向力の測定精度に影響を与え、ひいてはキャンバーや反りの制御精度に影響を与えることになる。
【0010】
このような状況に鑑みて、本発明は、(1)作業ロールチョックの軽微な改造のみで配備可能であり、プロジェクトブロックを含むハウジングの大規模な改造が不要であり;(2)圧延する板材の板厚が変化しても、常に作業ロールチョックに作用する圧延方向力によって生じる弾性歪を正確に測定することが可能であり;また、その簡便且つ正確に測定された弾性歪に基づいて、従来と同様に、(3)圧下レベリングを操作することで、キャンバーの発生を未然に防止することが可能であり;(4)圧延装置の上下非対称成分制御量を制御することで、反りのない、あるいは極めて反りの軽微な金属板材の圧延を実施することが可能であり;(5)さらに、板厚が零、すなわちキスロール状態であっても、作業ロールチョックに作用する圧延方向力によって生じる弾性歪を正確に測定することが可能であり、この正確に測定された弾性歪に基づいて、極めて高精度な圧下レベリングの零点設定が実現できる、圧延装置および圧延方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記したような従来技術の問題点を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
【0012】
(1)少なくとも上下一対の作業ロールと補強ロールとを有する圧延装置において、前記作業ロールの作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックの入側および出側に発生する圧延方向の弾性歪を測定する歪測定手段を備えていることを特徴とする圧延装置。
【0013】
(2)前記歪測定手段がピエゾ素子または歪ゲージであることを特徴とする(1)に記載の圧延装置。
【0014】
(3)前記歪測定手段は測定信号を無線で伝送することを特徴とする(1)または(2)に記載の圧延装置。
【0015】
(4)前記歪測定手段により測定した入側および出側の弾性歪から、圧延方向力による前記作業ロールチョックの弾性歪を演算する作業ロールチョック弾性歪演算装置と、前記作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックに作用する弾性歪の差分を演算する左右弾性歪差分演算装置と、前記左右弾性歪差分演算装置の演算値に基づいて前記圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置制御量を演算する圧下レベリング制御量演算装置と、当該圧下レベリング制御量演算装置の演算値に基づいて前記圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置を制御する圧下レベリング制御装置と、を備えていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の圧延装置。
【0016】
(5)前記歪測定手段により測定した入側および出側の弾性歪から、圧延方向力による前記作業ロールチョックの弾性歪を演算する作業ロールチョック弾性歪演算装置と、前記上側作業ロールチョックおよび下側作業ロールチョックに作用する弾性歪の差分を演算する上下弾性歪差分演算装置と、前記上下弾性歪差分演算装置の演算値に基づいて、前記圧延装置の上下非対称成分制御量を演算する上下非対称成分制御量演算装置と、当該上下非対称成分制御量演算装置の演算値に基づいて前記圧延装置の上下非対称成分制御量を制御する上下非対称成分制御装置と、を備えていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の圧延装置。
【0017】
(6)前記歪測定手段が、キスロール状態における圧延方向の弾性歪を測定する歪測定手段である圧延装置であって、
前記歪測定手段により測定した入側および出側の弾性歪から、圧延方向力による前記作業ロールチョックの弾性歪を演算する作業ロールチョック弾性歪演算装置と、前記作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックに作用する弾性歪の差分を演算する左右弾性歪差分演算装置と、前記左右弾性歪差分演算装置の演算値に基づいて前記圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置制御量を演算する圧下レベリング制御量演算装置と、当該圧下レベリング制御量演算装置の演算値に基づいて前記圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置を制御する圧下レベリング制御装置と、を備え、
前記圧下レベリング制御装置において、キスロール状態における作業側と駆動側の補強ロール反力の和をあらかじめ定められた値を中心にその±2%の範囲内の値とし、前記作業ロールの作業側のロールチョックおよび駆動側ロールチョックに作用する左右弾性歪差分が作業側および駆動側の弾性歪の平均の±5%の範囲内になるように前記圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置制御量を演算することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1つに記載の圧延装置。
【0018】
(7)前記作業ロールチョック弾性歪演算装置のかわりに、入出側の歪差を演算する回路を備え、該歪差を圧延方向力による前記作業ロールチョックの弾性歪として伝送することを特徴とする、(4)〜(6)のいずれか1つに記載の圧延装置。
【0019】
(8)前記作業ロールチョックの圧延方向入側、出側のいずれか一方に、該作業ロールチョックを圧延方向に押しつけるための押し付け装置を有することを特徴とする、(1)〜(7)のいずれか1つに記載の圧延装置。
【0020】
(9)前記作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックの圧延方向入側と出側のうち、補強ロールを基準として前記作業ロールをオフセットしている側とは反対側に、前記作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックを圧延方向に押し付けるための押し付け装置を備えていることを特徴とする、(1)〜(7)のいずれか1つに記載の圧延装置。
【0021】
(10)前記押し付け装置が圧延方向力を検出し、該圧延方向力に基づき作業ロールチョックの弾性歪を検出する機能を有することを特徴とする、(8)または(9)に記載の圧延装置。
【0022】
(11)少なくとも上下一対の作業ロールと補強ロールとを有する圧延装置を用いて行う金属板材の圧延方法において、前記作業ロールの作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックの入側および出側に発生する圧延方向の弾性歪を測定する、圧延方法。
【0023】
(12)前記歪測定手段がピエゾ素子または歪ゲージであることを特徴とする(11)に記載の圧延方法。
【0024】
(13)前記歪測定手段は測定信号を無線で伝送することを特徴とする(11)または(12)に記載の圧延方法。
【0025】
(14)前記作業ロールの作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックの入側および出側に発生する圧延方向の弾性歪の測定値に基づいて、圧延方向力による前記作業ロールの作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックの弾性歪を演算し、さらに左右弾性歪の差分を演算し、
前記左右弾性歪差分の演算値に基づいて圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置制御量を演算し、
当該圧下装置制御量の演算値に基づいて前記圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置を制御することを特徴とする(11)〜(13)のいずれか1つに記載の圧延方法。
【0026】
(15)前記作業ロールの上側作業ロールチョックおよび下側作業ロールチョックの入側および出側に発生する圧延方向の弾性歪の測定値に基づいて、圧延方向力による前記作業ロールの上側ロールチョックおよび下側ロールチョックの弾性歪を演算し、さらに上下弾性歪の差分を演算し、
前記上下弾性歪差分の演算値に基づいて、圧延装置の上下非対称成分制御量を演算し、
当該上下非対称成分制御量の演算値に基づいて、前記圧延装置の上下非対称成分制御量を制御することを特徴とする(11)〜(13)のいずれか1つに記載の圧延方法。
【0027】
(16)キスロール状態における作業側と駆動側の補強ロール反力の和をあらかじめ定められた値を中心にその±2%の範囲内の値とし、
キスロール状態における前記作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックの入側および出側に発生する圧延方向の弾性歪を測定し、
前記入側および出側弾性歪に基づいて、圧延方向力による前記作業ロールの作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックの弾性歪を演算し、
前記作業側および駆動側の弾性歪の演算値に基づいて、左右弾性歪の差分を演算し、
前記左右弾性歪の差分が、前記作業側および駆動側の弾性歪の平均の±5%の範囲内になるように、圧延装置の左右圧下位置を設定し、
前記設定した圧下位置を初期圧下位置とすることを特徴とする、(11)〜(13)のいずれか1つに記載の圧延方法。
【0028】
(17)前記作業ロールの入側および出側に発生する圧延方向の弾性歪を測定し、入出側の歪差を演算し、該歪差を圧延方向力による前記作業ロールチョックの弾性歪として伝送することを特徴とする、(14)〜(16)のいずれか1つに記載の圧延方法。
【0029】
(18)前記作業ロールチョックの圧延方向入側、出側のいずれか一方に、該作業ロールチョックを圧延方向に押しつけることを特徴とする、(11)〜(17)のいずれか1つに記載の圧延方法。
【0030】
(19)前記作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックの圧延方向入側と出側のうち、補強ロールを基準として前記作業ロールをオフセットしている側とは反対から、前記作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックを圧延方向に押し付けることを特徴とする、(11)〜(17)のいずれか1つに記載の圧延方法。
【0031】
(20)前記押し付ける手段が圧延方向力を検出し、該圧延方向力に基づき作業ロールチョックの弾性歪を検出する機能を有することを特徴とする、(18)または(19)に記載の圧延方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、(1)作業ロールチョックの軽微な改造のみで配備可能であり、プロジェクトブロックを含むハウジングの大規模な改造が不要であり、特に無線伝送によりリード線が不要となり、稼働する圧延装置に干渉しないようにリード線を複雑に取り回すこと(配線ルーティング)も不要となるので、機器配置に関する制約がさらに低減され;(2)圧延する板材の板厚が変化しても、常に作業ロールチョックに作用する圧延方向力によって生じる弾性歪を正確に測定することが可能であり;また、その簡便且つ正確に測定された弾性歪に基づいて、従来と同様に、(3)圧下レベリングを操作することで、キャンバーの発生を未然に防止することが可能であり;(4)圧延装置の上下非対称成分制御量を制御することで、反りのない、あるいは極めて反りの軽微な金属板材の圧延を実施することが可能であり;(5)さらに、板厚が零、すなわちキスロール状態であっても、作業ロールチョックに作用する圧延方向力によって生じる弾性歪を正確に測定することが可能であり、この正確に測定された弾性歪に基づいて、極めて高精度な圧下レベリングの零点設定が実現できる、圧延装置および圧延方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、従来の荷重検出装置による圧延方向力の測定を説明する図である。
【図2】図2は、本発明で用いる圧延装置の好ましい形態例を模式的に示す図である。
【図3】図3は、歪測定手段による弾性歪の測定を説明する図である。
【図4】図4は、(8)に記載の本発明の金属板材の圧延装置の好ましい実施の形態を模式的に示す図である。
【図5】図5は、(9)に記載の本発明の金属板材の圧延装置の好ましい実施の形態を模式的に示す図である。
【図6】図6は、圧延方向力の測定に基づいて、蛇行・キャンバー制御、反り制御および零点調整手段を説明する図である。
【図7】図7は、比較例および実施例の試験で用いた圧延装置を模式的に示す図である。
【図8】図8は、比較例のロードセルと実施例の歪測定手段の信号強度の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図2は、本発明で用いる圧延装置の好ましい形態例を模式的に示す図である。図2に示された本発明の圧延装置は、少なくとも上下一対の作業ロール1,2と補強ロール3,4とを有する圧延装置23であって、前記作業ロールのロールチョック5,6の作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックの入側および出側に発生する圧延方向の弾性歪を測定する歪測定手段9,10,11,12を備えていることを特徴とする。
圧延装置の作業ロール1、2に作用する圧延方向力は基本的には作業ロールチョック5、6によって支持される、そして、作業ロールチョック5、6はプロジェクトブロック24等の部材によって圧延方向に固定されている。したがって、作業ロールチョック5、6に作用する力は、作業ロールチョック5、6に圧延方向の弾性歪みを生じさせ、これは歪測定手段により測定することができる。すなわち、弾性歪の測定値に基づいて、作業ロールチョック5、6に作用する圧延方向力を求めることができる。
歪測定手段9,10,11,12は、作業ロールチョックの出側および入側のいずれにも配備する。圧延方向力による作業ロールチョックの弾性歪を測定するには、出側と入側の両方に歪測定手段を配備し、出側と入側の弾性歪の差を取ることにより、作業ロールチョックに圧延方向の何れの方向に力が作用しても、演算で求める弾性歪の精度を高めることができる。ただし、実施態様に応じて、上側または下側の出側または入側のいずれかまたはそれらの組み合わせを省略してもよい。例えば、後述するように、出側または入側のいずれか一方の歪測定手段を、荷重検出機能を有する油圧装置に置き換えてもよい。油圧装置の荷重検出機能により検出された圧延方向力に基づいて、ロールチョックに生じる弾性歪に換算することができ、これにより、置き換えられた歪測定手段の代用として、圧延方向力を求める演算に利用することができる。また、油圧装置でロールチョックを押し付けることにより、ロールチョックの圧延方向位置を安定させ、ロールチョックに作用する圧延方向力の測定の応答性および精度をさらに高めることが可能となる。
【0035】
図3は、歪測定手段による弾性歪の測定を説明する図である。図3を参照して説明すると、歪測定手段304は、上記の圧延時、作業ロールチョック301に、圧延方向に発生する歪を測定するために設けられる。
図3では、作業ロールチョック301に形成した穴の底部に歪測定手段304A,Bを挿入、配置させ、その後、ボルト305A,Bによって穴を塞ぎ、歪測定手段304A,Bを固定する構成となっている。歪測定手段304A,Bによるリード線306A,Bは、ボルト305A,B内を貫通させて、外部に引き出される。なお歪測定手段304A,Bは、垂直方向はロール軸中心高さ308を中心に、ロール軸上部からロール軸下部までのロール軸直径に収まる範囲309、軸方向は圧下支点位置310を中心に、ロール軸格納長さの範囲311に配置されることが好ましい。また歪測定手段304A,Bを取り付けるための穴深さについては、好ましくは圧延方向力作用位置307を基準に、深さ5mm程度から、圧延方向力作用位置307からロールチョック端面312までの長さの半分程度とすると良い。
【0036】
上記の歪測定手段は、作業ロールチョックの軽微な改造のみで配備可能であり、プロジェクトブロックを含むハウジングの大規模な改造が不要であり、投資規模を抑えることができる。
【0037】
また、上記の歪測定手段は、作業ロールチョックの穴に配備されており、作業ロールチョックとともに移動する。すなわち、圧延する板材の板厚が変化しても、板厚の変化に応じて歪測定手段も上下に移動する。したがって、常に作業ロールチョックに作用する圧延方向力によって生じる弾性歪を正確に測定することが可能である。従来の、作業ロールチョックとプロジェクトブロック等との間に挟みこんだロードセルは、各機器の位置関係を厳格に管理する必要があったが、本発明の歪測定手段ではそのような厳密な管理は必要ない。さらにいえば、板材の板厚の自由度が向上する。
【0038】
(2)に記載の本発明の圧延装置における歪測定手段は、ピエゾ素子または歪ゲージであってもよい。
ピエゾ素子は、圧電素子(あつでんそし)とも呼ばれ、圧電体に加えられた力を電圧に変換する、あるいは電圧を力に変換する、圧電効果を利用した受動素子である。
歪ゲージは、薄い絶縁体上にジグザグ形状にレイアウトされた金属の抵抗体(金属箔)が取り付けられた構造をしており、変形による電気抵抗の変化を測定することによりひずみ量に換算することができる。測定原理として、被測定物が変形すると、ひずみゲージも同率で変形すること、およびひずみゲージの細い金属抵抗体は、伸びにより断面積が減るとともに長さが長くなり、その結果抵抗値が増えることを利用して、歪みを測定する。
ピエゾ素子や歪ゲージは、従来の荷重検出器装置であるロードセルに比べて、非常に小さく、上述のとおりロールチョック内に配備することができ、大規模な改造が不要であり、また、機器配備に関する管理上の制約も少ない。
【0039】
(3)に記載の本発明の圧延装置における歪測定手段は、測定信号を無線で伝送することを特徴とする。
この態様について説明する。まず、作業ロールチョックに作用する力によって生じた弾性歪みが測定される。この測定信号は、適当な変調処理を施され、アンテナに入力される。当該アンテナからロールチョックの外部に無線電波として発信される。受信器に伝えられた信号は、後段での演算に利用され、制御に反映することができる。より具体的には、例えば、この信号、すなわち出側と入側の弾性歪の差を取ることにより、圧延方向力による作業ロールチョックに生じる弾性歪を演算し、この弾性歪に基づいて、キャンバー、反り、キスロール零調等の種々の制御をすることができる。なお、無線通信方式は特に制限されない。無線通信手段の一例としては、ブルートゥースなどの近距離無線通信規格でもよく、無線LANや赤外線通信などで通信を行うものでも良い。
この態様によれば、印加される圧延方向力によって生じるロールチョックの歪みの測定信号を、簡易且つ小型の構成で、容易に高速且つリアルタイムで獲得することが可能となる。加えて、この態様によれば、機器配置(ロールチョックやプロジェクトブロックなどの機器どうしの位置関係)に関する制約がさらに低減される、すなわち上述した歪測定手段304A、Bに繋げられるリード線304A、B(図3参照)が不要となり、稼働する圧延装置に干渉しないようにリード線を複雑に取り回すこと(配線ルーティング)も不要となる。これらは、作業環境の改善およびコストの低減に大いに役立つ。
【0040】
(4)に記載の本発明の圧延装置は、前記歪測定手段により測定した入側および出側の弾性歪から、圧延方向力による前記作業ロールチョックの弾性歪を演算する作業ロールチョック弾性歪演算装置と、前記作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックに作用する弾性歪の差分を演算する左右弾性歪差分演算装置と、前記左右弾性歪差分演算装置の演算値に基づいて前記圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置制御量を演算する圧下レベリング制御量演算装置と、当該圧下レベリング制御量演算装置の演算値に基づいて前記圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置を制御する圧下レベリング制御装置と、を備えていることを特徴とする。
【0041】
一般に、板材の圧延によってキャンバーを生ずる原因としては、ロールギャップ設定不良、被圧延材の入側板厚左右差あるいは変形抵抗左右差等があげられるが、何れの原因の場合でも、最終的には、圧延によって生じる圧延方向の伸び歪に左右差を生じることで先進率および後進率が板幅方向に変化し、圧延材の出側速度および入側速度に左右差を生じキャンバーを生じることになる。このとき、例えばキャンバーを生じやすい圧延材先端部圧延時は、既に圧延が終了した出側の圧延材長さは短いので比較的自由な状態で出側速度に左右差を生じるが、入側速度に左右差を生じるためには、入側に存在する圧延材全体が水平面内で剛体回転する必要がある。しかし、先端部圧延時は、一般に入側に長い未圧延材が残っているので、圧延材自身の重量とテーブルローラーとの摩擦によって、上記剛体回転に抗するモーメントが発生する。このモーメントは、圧延装置の作業ロールに反力として伝わることになるので、作業ロールチョック部に作用する圧延方向力に左右差を生じることで、最終的には支持されることになる。この原理は、圧延材先端部圧延時の次にキャンバーが発生しやすい圧延材尾端部圧延時も同様であり、尾端部圧延時は、既に圧延が終了した出側の圧延材長さが長いので、伸び歪そして先進率の左右差を生じようとしたときに主として出側圧延材からこれに抗するモーメントが発生し、これが作業ロールに反力として伝達され、やはり、作業ロールチョック部に作用する圧延方向力に左右差を生じることで、最終的には支持されることになる。
【0042】
この作業ロールチョック部に作用する圧延方向力は、作業ロールチョックに圧延方向の弾性歪みを生じ、これは歪測定手段により測定することができる。すなわち、弾性歪の測定値に基づいて、作業ロールに作用する圧延方向力を求めることができる。
【0043】
(4)に記載の本発明の圧延装置によると、作業ロールの作業側と駆動側のロールチョックに作用する入側および出側の弾性歪を測定して、この入側および出側の弾性歪から圧延方向力による前記作業ロールチョックの弾性歪を演算して、作業側の弾性歪と駆動側の弾性歪との差異すなわち左右弾性歪差を演算することができ、上記した圧延時の圧延材から作用するモーメントを検知できる。このモーメントは、上記したようにキャンバー発生の原因となる(圧延材の)伸び歪の左右差が生じたときにのみ発生し、しかも伸び歪差の発生とほぼ同時に該モーメントも発生するので、上記(ロールチョックの)左右弾性歪差、ひいては圧延方向力左右差を小さくする方向に、当該圧延装置のロール開度の左右非対称成分すなわち圧下レベリングを操作することで、キャンバーの発生を未然に防止することが可能となる。
【0044】
(5)に記載の圧延装置は、前記歪測定手段により測定した入側および出側の弾性歪から、圧延方向力による前記作業ロールチョックの弾性歪を演算する作業ロールチョック弾性歪演算装置と、前記上側作業ロールチョックおよび下側作業ロールチョックに作用する弾性歪の差分を演算する上下弾性歪差分演算装置と、前記上下弾性歪差分演算装置の演算値に基づいて、前記圧延装置の上下非対称成分制御量を演算する上下非対称成分制御量演算装置と、当該上下非対称成分制御量演算装置の演算値に基づいて前記圧延装置の上下非対称成分制御量を制御する上下非対称成分制御装置と、を備えていることを特徴とする。
【0045】
一般に、圧延によって反りが生ずる原因としては、1)作業ロールと圧延材との摩擦係数の上下差Δμ、2)圧延材の上下温度差(変形抵抗の上下差)Δt、3)上下作業ロール周速度の差ΔV、4)幾何学条件などがあげられるが、何れの原因の場合でも、最終的には、圧延によって生じる圧延方向の伸び歪に上下差を生じさせることで先進率および後進率が板厚方向に変化し、圧延材の出側速度および入側速度に上下差を生じ、反りが発生することになる。このとき、例えば、反りを生じさせやすい圧延材先端部圧延時は、既に圧延が終了した出側の圧延材長さは短いので出側速度に上下差を生じさせることは比較的自由であるが、入側速度に上下差を生じさせるためには入側に存在する圧延材全体を上下方向に剛体回転させる必要がある。しかしながら先端部圧延時は一般に入側に長い未圧延材が残っているので、圧延材自身の重量とテーブルローラーとの拘束によって、上記剛体回転に抗するモーメントが発生する。このモーメントは、圧延装置の作業ロールチョックに圧延方向の反力として伝わることになるので、作業ロールチョック部に作用する圧延方向力に上下差を生じることで最終的には支持されることになる。
【0046】
この作業ロールチョック部に作用する圧延方向力は、作業ロールチョックに圧延方向の弾性歪みを生じ、これは歪測定手段により測定することができる。すなわち、弾性歪の測定値に基づいて、作業ロールに作用する圧延方向力を求めることができる。
【0047】
(5)に記載の圧延装置は、上下両方の作業ロールのロールチョック5,6に歪測定手段9,10,11,12が備えられているので、上側および下側の入側および出側でロールチョック5,6に作用する弾性歪を測定することができる。この弾性歪の測定値に基づいて、上下両方の作業ロール1,2に作用する弾性歪を求めることができる。また、作業ロールチョック5,6に作用する弾性歪の上側と下側の差異を演算する演算装置が備えられているので、上下弾性歪差分を演算することができる。この上下弾性歪差分から先端部圧延時の主として入側圧延材から作用するモーメントを検知できる。このモーメントは、反り発生の原因となる伸び歪の上下差が生じたときに発生し、しかも伸び歪差の発生とほぼ同時に該モーメントも発生する。したがって上記弾性歪、ひいては圧延方向力の上下差を小さくする方向に、当該圧延装置の上下非対称成分を例えばロール周速またはトルクで操作することにより、反りの発生を未然に防止することが可能となる。(5)に記載の圧延装置は、この圧延方向力の上下差を、作業ロールチョックに作用する上下弾性歪差分として検知し、その上下弾性歪差分に基づいて、伸び歪を上下で均等化するための圧延装置の上下非対称成分制御量を演算する演算装置と、当該上下非対称成分制御量の演算値に基づいて、該圧延装置の当該上下非対称成分制御量を制御する制御装置が配備されている。これにより、金属板材の圧延において、伸び歪の上下差の発生を未然に防ぎ、反りのない、あるいは極めて反りの軽微な金属板材の圧延を実施することが可能である。
【0048】
なお、前記上下非対称成分制御量としては、圧延装置のロール速度、圧延ロールと被圧延材との摩擦係数、被圧延材の上下面温度差、被圧延材の入射角、及び、上下作業ロールチョックの水平方向位置のいずれか一つでもよく、またはそれらの組み合わせでもよい。前記上下非対称成分制御装置としては、前記上下非対称成分制御量に対応して、ロール速度制御装置、潤滑剤の供給量制御装置、温度制御装置、ローラーテーブル高さ制御装置、ロールチョック水平方向位置制御装置のいずれか一つでもよく、またはそれらの組み合わせでもよい。いずれの場合であっても上下ロールの圧延トルクを測定せずに、反りのない、あるいは極めて反りの軽微な金属板材を安定して製造することができる。
【0049】
(6)に記載の圧延装置は、前記歪測定手段が、キスロール状態における圧延方向の弾性歪を測定する歪測定手段である圧延装置であって、
さらに、前記歪測定手段により測定した入側および出側の弾性歪から、圧延方向力による前記作業ロールチョックの弾性歪を演算する作業ロールチョック弾性歪演算装置と、前記作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックに作用する弾性歪の差分を演算する左右弾性歪差分演算装置と、前記左右弾性歪差分演算装置の演算値に基づいて前記圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置制御量を演算する圧下レベリング制御量演算装置と、当該圧下レベリング制御量演算装置の演算値に基づいて前記圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置を制御する圧下レベリング制御装置と、を備え、
前記圧下レベリング制御装置において、キスロール状態における作業側と駆動側の補強ロール反力の和をあらかじめ定められた値を中心にその±2%の範囲内の値とし、前記作業ロールの作業側のロールチョックおよび駆動側ロールチョックに作用する左右弾性歪差分が作業側および駆動側の弾性歪の平均の±5%の範囲内になるように前記圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置制御量を演算することを特徴とする。
【0050】
上述の(4)の圧延装置では、圧延中の制御量を演算し、キャンバーの発生を抑えることができる。すなわち、圧延開始後、制御を開始してからその抑制効果を発揮するが、制御を開始する前に圧延される最先端部のキャンバー抑制には寄与しない。また、圧延材が圧延装置を抜ける前、つまり圧延終了直前には、制御の安定性の観点から前記制御を終了させる必要があることと、かつ圧下位置を制御終了後に初期圧下位置へと復帰させるため、初期圧下位置(零点位置)を誤ると圧延材の尾端部についてもキャンバーを発生させる原因となり得る。
【0051】
従来から、初期圧下位置(零点位置)を調整するために、キスロールによる調整が行われている。キスロール締め込みとは、圧延材の存在しない状態で、上下作業ロールを互いに接触させて、ロール間に負荷を与えることを意味する。このキスロール締め込み時に、圧延荷重、すなわち圧下方向に作用する補強ロールからの反力、の測定値が、作業側および駆動側のそれぞれで、あらかじめ定められた零点調整荷重に一致するよう調整されている。しかし、このキスロールによる零点位置調整では適正な零点位置調整をもたらさないことがある。
【0052】
一般に、キスロールによる零点位置調整が適正でない原因としては、作業ロールと補強ロールとの間、あるいはキスロール状態(キスロール締め込みをしている状態)であれば上下作業ロール間において、ロール同士がクロスしている場合、そのロール間にはスラスト力(ロール軸方向に作用する力)が発生する。このスラスト力は、ロールに余分なモーメントを与え、このモーメントに釣り合うようにロール間の接触荷重のロール軸方向分布が変化する。これが最終的に、圧延荷重測定用ロードセルの作業側と駆動側の差に対する外乱として現れ、適正な零点位置調整をもたらさないことになる。このロール同士のクロス角は、ペアクロス圧延装置のように意識的に設定しなくても、ハウジングとロールチョックとの間に存在するわずかな間隙によっても生じるため、ロールスラスト力を零に制御することは困難である。
【0053】
しかしながら、本発明者は、従来のキスロールによる零点位置調整においても、圧延方向力が発生し、その圧延方向力はロールスラスト力に影響を受けないことに着目し、圧延方向力をも加味した圧下零点調整を行うことにより精度の高い零点調整が可能であることを見出した。より詳しくは、以下のとおりである。
(A)圧下方向に作用する補強ロール反力は、ロール間スラスト力の影響を受け、その作業側と駆動側の差が顕著に変化する。しかし、作業ロールの作業側および駆動側のロールチョックに作用する圧延方向力(およびこれに伴うロールチョックの圧延方向の弾性歪み)の作業側と駆動側の差は、ロール間スラスト力の影響を受けずほぼ変化しない。
(B)具体的には、ロール間にクロス角が生じている場合、圧下方向に作用する補強ロール反力の作業側と駆動側の差はクロス角の方向、大きさによって変動する。しかし、作業ロールの圧延方向力(弾性歪み)の作業側と駆動側の差は、クロス角の方向、大きさが変化してもその影響を受けず、ほぼ一定である。
(C)つまり、作業ロールの圧延方向力(弾性歪み)の作業側と駆動側の差が概ね零、実際は作業側と駆動側の圧延方向力(弾性歪み)の平均値の±5%以内(もしくは、作業側と駆動側の圧延方向力(弾性歪み)の和の±2.5%以内)になるように作業側と駆動側の差圧下レベリングの零点調整を行えば、ロール間にスラスト力が作用していてもその影響を受けず、高精度な圧下零調が可能である。
【0054】
(6)の圧延装置は、上下作業ロール1、2のロールチョック5,6の作業側および駆動側の入側および出側に歪測定手段9,10,11,12をそなえている。圧延前の圧下零調のためにキスロール状態とすると、駆動トルクやオフセットによって、圧下方向力だけでなく、圧延方向力も発生する。前記歪測定手段9,10,11,12は、キスロール状態における作業ロール1、2のロールチョック5、6の圧延方向の入側および出側での弾性歪を測定することができる。この測定された入側および出側の弾性歪の差をとって、圧延方向力による前記作業ロールチョックの弾性歪とし、この作業側と駆動側に作用する前記弾性歪を演算して、作業側の弾性歪と駆動側の弾性歪の差異すなわち左右弾性歪差分を演算することができる。
【0055】
零点調整のためには、作業側および駆動側の圧下装置13を同時に操作して、補強ロール反力の左右の和があらかじめ定められた値(零調荷重)になるまで締め込んでいき、その状態で圧延方向力の作業側と駆動側の差を零にするためのレベリング操作を行う。そのため、前記の左右弾性歪差に基づいて、圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置13の制御量を演算し、当該制御量の演算値に基づいて圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置13を制御する。
【0056】
補強ロール反力の左右の和としてあらかじめ定められた値(零調荷重)とは、実圧延中に生じる荷重と同程度の荷重値として設定される。実際の圧延装置では、定格圧延荷重の50%程度が実圧延荷重となるように設定しているので、例えば定格圧延荷重の15%〜85%のうちの任意な値に設定するとよい。好ましくは、定格圧延荷重の30%〜70%のうちの任意な値に設定するとよい。
【0057】
設定誤差は、予め定められた値(零調荷重)を中心にその±2%の範囲内とするとよい。2%より大きいと圧下量の変動が大きすぎ、板厚や形状不良となり易い。実際の圧延において±2%の範囲内にすれば問題はない。もちろん、誤差は小さい方がよく、好ましくは±1%以下とすることが望ましい。圧延材や圧延条件により、予め設定されるものである。設定方法についての詳細はここでは省略するが、通常の圧延作業において設定される方法でかまわない。
【0058】
続いて、上述した左右弾性歪差分(作業側と駆動側の差)の演算結果に基づき、作業ロールチョック5、6に作用する弾性歪(ひいては圧延方向力)の作業側と駆動側との差分が零になり、且つ零調荷重を維持するように、圧下装置13の制御量を圧下レベリング制御量演算装置で演算する。このとき、弾性歪(圧延方向力)の作業側と駆動側との差分は概ね零になることが理想的である。実際は測定誤差や、設定精度を加味して作業側と駆動側の弾性歪(圧延方向力)の平均の±5%以下であれば問題はない。好ましくは±4%以下、さらに好ましくは±3%以下、さらには2%以下とするとよい。
【0059】
そして、この制御量演算結果に基づいて、圧下レベリング制御装置(図示せず)によって圧下装置13を操作し、圧延装置のロールの圧下位置を制御する。これにより、作業ロールチョック5,6に作用する圧延方向力によって生じる弾性歪の作業側と駆動側との差分が零になり、その時点での圧下位置を、作業側と駆動側個別に圧下位置の零点とする。前述したように、作業ロールチョック5、6に作用する圧延方向力の作業側と駆動側との差分はスラスト力の影響を受けないため、ロール間にスラスト力が生じていたとしても極めて高精度な圧下レベリングの零点設定が実現できることになる。
【0060】
(7)の圧延装置は、前記作業ロールチョック弾性歪演算装置のかわりに、入出側の歪差を演算する回路を備え、該歪差を圧延方向力による前記作業ロールチョックの弾性歪として伝送することを特徴とする。
(7)に記載の発明では、圧延方向力による作業ロールチョックの弾性歪を入出側の歪測定手段の検出値の差分を求めてから、伝送する。これにより、チョック内またはチョック近傍に演算回路が必要となるが、伝送手段の数を少なくすることができる。特に無線で伝送する場合には、その無線手段の数を減らすことができる。すなわち、歪測定手段からの検出値は、そのまま(演算しないまま)入出側2つの伝送手段で伝送してもよいが、あるいは本態様で示されるように、入出側の差異を取って、その差異を圧延方向力による作業ロールチョックの弾性歪として伝送してもよい。
【0061】
図4には、(8)に記載の本発明の金属板材の圧延装置の好ましい実施の形態を示す。図4の金属板材の圧延装置では、上作業ロールチョック5の入側に上作業ロール入側歪測定手段10に隣接して入側作業ロールチョック押し付け装置27を有しており、作業ロールチョック5を入側から出側に所定の押し付け力で押し付けている。このような構成とすることにより、上作業ロールチョック5の圧延方向位置を安定させるとともに、上作業ロールチョック5に作用する圧延方向力によって生じる弾性歪の測定の応答性および精度を高めることが可能となる。なお、図5の圧延装置では、入側作業ロールチョック押し付け装置27は油圧装置としており、このような構成とすることによって圧延材咬み込み時のように作業ロールチョックが圧延方向に瞬間的に振動するような場合においても、安定した押し付け力を作用させて作業ロールチョックの動きを安定させることができる。また、上作業ロール5についてのみ説明したが、下作業ロール6についても同様の構成とすることができる。
【0062】
図5には、(9)に記載の本発明の金属板材の圧延装置の好ましい実施の形態を示す。図5の金属板材の圧延装置では、上作業ロール5が出側方向にΔxだけオフセットしている。作業ロールオフセットによってオフセット分力が圧延荷重の水平方向分力として発生するので、該作業ロールチョックの圧延方向位置を安定させることができる。さらに、図5の金属板材の圧延装置では、上作業ロールチョック5の入側に入側作業ロールチョック押し付け装置27が配備されている。このような配置にすることによって、上補強ロール3から上作業ロール1に作用するオフセット力が上作業ロールチョック5をプロジェクトブロックに押し付け装置と同じ方向に作用するので、入側作業ロールチョック押し付け装置27の力を小さくすることができ、コンパクトかつ安価な設備とすることができる。また、同時に上作業ロールチョック5を挟み込む力を小さくすることができるので、他の制御の外乱因子を小さく抑えることもできる。さらに、押し付け装置による押し付け力とオフセット力とが同じ方向であるので、押し付け力とオフセット力が相殺し合うことがなく、常に同じ方向に押し付けることとなるので、圧延方向位置を安定させることができる。また、上作業ロール5についてのみ説明したが、下作業ロール6についても同様の構成とすることができる。
【0063】
なお、図5の金属板材の圧延装置では、入側作業ロールチョック押し付け装置27が油圧装置となっており、その油圧シリンダーに供給される作動油の圧力を測定するセンサー(図示せず)を配備することによって油圧装置そのものを荷重検出装置として代用している例である。これにより、押し付け装置が圧延方向力を検出する機能を有することができる。ロールチョックに作用する圧延方向力によって、ロールチョックの弾性歪が生じるため、弾性歪の測定値と圧延方向力の測定値とを照らし合わせて、弾性歪の測定値を精度向上させたり、測定異常がないか検出したりするのに役立てることができる。
【0064】
次に、本発明の圧延方法について説明する。
【0065】
(11)に記載の圧延方法は、少なくとも上下一対の作業ロールと補強ロールとを有する圧延装置を用いて行う金属板材の圧延方法であって、前記作業ロールの作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックの入側および出側に発生する圧延方向の弾性歪を測定することを特徴とする。
【0066】
圧延装置の作業ロールに作用する圧延方向力は基本的には作業ロールチョックによって支持される、そして、作業ロールチョックはプロジェクトブロック等の部材によって圧延方向に固定されている。したがって、作業ロールチョックに作用する力は、作業ロールチョックに圧延方向の弾性歪みを生じ、これを、歪測定手段により測定することができる。すなわち、弾性歪の測定値に基づいて、作業ロールチョックに作用する圧延方向力を求めることができる。圧延方向力による作業ロールチョックの弾性歪を測定するには、出側と入側の両方に発生する弾性歪を測定し、出側と入側の弾性歪の差を取ることにより、作業ロールチョックに圧延方向の何れの方向に力が作用しても、演算で求める弾性歪の精度を高めることができる。ただし、実施態様に応じて、上側または下側の出側または入側での測定のいずれかまたはそれらの組み合わせを省略してもよい。例えば、後述するように、出側または入側のいずれか一方の歪測定を、押し付け手段の有する荷重検出機能で行ってもよい。押し付け手段の荷重検出機能により検出された圧延方向力に基づいて、ロールチョックに生じる弾性歪に換算することができ、これにより、省略した歪測定の代用として、圧延方向力を求める演算に利用することができる。また、押し付け手段でロールチョックを押し付けることにより、ロールチョックの圧延方向位置を安定させ、ロールチョックに作用する圧延方向力の測定の応答性および精度をさらに高めることが可能となる。
【0067】
上記の歪測定手段は、作業ロールチョックの軽微な改造のみで配備可能であり、プロジェクトブロックを含むハウジングの大規模な改造が不要であり、投資規模を抑えることができる。
【0068】
また、上記の歪測定手段は、作業ロールチョックの穴に配備することができ、作業ロールチョックとともに移動することができる。すなわち、圧延する板材の板厚が変化しても、板厚の変化に応じて歪測定手段も上下に移動できる。したがって、常に作業ロールチョックに作用する圧延方向力によって生じる弾性歪を正確に測定することが可能である。従来の、作業ロールチョックとプロジェクトブロック等との間に挟みこんだロードセルは、各機器の位置関係を厳格に管理する必要があったが、本発明の歪測定手段ではそのような厳密な管理は必要ない。さらにいえば、板材の板厚の自由度が向上する。
【0069】
(12)に記載の圧延方法における歪測定手段は、ピエゾ素子または歪ゲージであってもよい。ピエゾ素子や歪ゲージは、従来の荷重検出器装置であるロードセルに比べて、非常に小さく、上述のとおりロールチョック内に配備することができ、大規模な改造が不要であり、また、機器配置(ロールチョックやプロジェクトブロックなどの機器どうしの位置関係)に関する制約もない。
【0070】
(13)に記載の本発明の圧延方法における歪測定手段は、測定信号を無線で伝送することを特徴とする。
この態様について説明する。まず、作業ロールチョックに作用する力によって生じた弾性歪みが測定される。この測定信号は、適当な変調処理を施され、アンテナに入力される。当該アンテナからロールチョックの外部に無線電波として発信される。受信器に伝えられた信号は、後段での演算に利用され、制御に反映することができる。より具体的には、例えば、この信号、すなわち出側と入側の弾性歪の差を取ることにより、圧延方向力による作業ロールチョックに生じる弾性歪を演算し、この弾性歪に基づいて、キャンバー、反り、キスロール零調等の種々の制御をすることができる。なお、無線通信方式は特に制限されない。無線通信手段の一例としては、ブルートゥースなどの近距離無線通信規格でもよく、無線LANや赤外線通信などで通信を行うものでも良い。
この態様によれば、印加される圧延方向力によって生じるロールチョックの歪みの測定信号を、簡易且つ小型の構成で、容易に高速且つリアルタイムで獲得することが可能となる。加えて、この態様によれば、機器配置(ロールチョックやプロジェクトブロックなどの機器どうしの位置関係)に関する制約がさらに低減される、すなわち上述した歪測定手段304A、Bに繋げられるリード線304A、B(図3参照)が不要となり、稼働する圧延装置に干渉しないようにリード線を複雑に取り回すこと(配線ルーティング)も不要となる。これらは、作業環境の改善およびコストの低減に大いに役立つ。
【0071】
(14)に記載の圧延方法によれば、作業ロールチョックの作業側および駆動側の入側および出側に発生する弾性歪を測定して、この入側および出側の弾性歪の差を取ることにより圧延方向力による作業ロールの作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックの弾性歪を演算し、さらに作業側の弾性歪と駆動側の弾性歪との差異すなわち弾性歪左右差を演算するので、キャンバーの原因となる圧延方向の伸び歪の左右差に起因して圧延材より作業ロールに作用するモーメントを検出することができる。このモーメントは、キャンバー発生の原因となる伸び歪の左右差が生じたときにのみ発生し、しかも伸び歪差の発生とほぼ同時に該モーメントも発生する。したがって、前記左右弾性歪差分の演算値に基づいて、上記左右弾性歪差、ひいては圧延方向力左右差を小さくする方向に、圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置制御量を演算し、その演算値に基づいて圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置を制御する、つまり圧延装置のロール開度の左右非対称成分すなわち圧下レベリングを操作することで、キャンバーの発生を未然に防止することが可能となる。
【0072】
(15)に記載の圧延方法によれば、上下両方の作業ロールのロールチョックに作用する圧延方向力によって発生する、上下両方のロールチョックの入側および出側の弾性歪を測定して、この入側および出側の弾性歪の差を取ることにより圧延方向力による作業ロールの上側ロールチョックおよび下側ロールチョックの弾性歪を演算し、さらに上側の弾性歪と下側の弾性歪の差異、すなわち上下弾性歪の差分を演算する。この上下弾性歪差分から先端部圧延時の主として入側圧延材から作用するモーメントを検知できる。このモーメントは、反り発生の原因となる伸び歪の上下差が生じたときにのみ発生し、しかも伸び歪差の発生とほぼ同時に該モーメントも発生する。したがって、前記上下弾性歪差分の演算値に基づいて、上記上下弾性歪差、ひいては上記圧延方向力の上下差、を小さくする方向に、圧延装置の上下非対称成分制御量を演算し、その演算値に基づいて圧延装置の上下非対称成分制御量を制御する、つまり圧延装置の上下非対称成分、例えば、圧延装置のロール速度、圧延ロールと被圧延材との摩擦係数、被圧延材の上下面温度差、被圧延材の入射角、及び、上下作業ロールチョックの水平方向位置のいずれか一つまたはそれらの組み合わせを操作することで、反りの発生を未然に防止することが可能となる。
【0073】
(16)に記載の圧延方法は、圧延装置の零調方法に関し、特に圧延装置の左右非対称成分において高精度な零調を可能とする。この方法によれば、キスロール状態における作業側と駆動側の補強ロール反力の和をあらかじめ定められた値を中心にその±2%の範囲内の値とし、ここであらかじめ定められた値(零調荷重)とは、実圧延中に生じる荷重と同程度の荷重値として設定される。実際の圧延装置では、定格圧延荷重の50%程度が実圧延荷重となるように設定しているので、例えば定格圧延荷重の15%〜85%のうちの任意な値に設定するとよい。好ましくは、定格圧延荷重の30%〜70%のうちの任意な値に設定するとよい。その設定誤差は、予め定められた値(零調荷重)を中心にその±2%の範囲内とする。2%より大きいと圧下量の変動が大きすぎ、板厚や形状不良となり易い。実際の圧延において±2%の範囲内にすれば問題はない。もちろん、誤差は小さい方がよく、好ましくは±1%以下とすることが望ましい。
【0074】
キスロール状態とすると、圧下方向力だけでなく、圧延方向力も発生するので、作業ロールのロールチョックの作業側と駆動側に作用する入側および出側の弾性歪を測定して、この入側および出側の弾性歪の差を取ることにより圧延方向力による作業ロールの作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックの弾性歪を演算し、さらに作業側の弾性歪と駆動側の弾性歪の差異すなわち左右弾性歪差分を演算する。
【0075】
この左右弾性歪の差分が、作業側および駆動側の弾性歪の平均の±5%の範囲内になるように、圧延装置の左右圧下位置を設定する。これにより、作業ロールチョックに作用する圧延方向力によって生じる弾性歪の作業側と駆動側との差分が概ね零になり、その時点での圧下位置を、作業側と駆動側個別に圧下位置の零点とする。作業ロールチョックに作用する圧延方向力の作業側と駆動側との差分はスラスト力の影響を受けないため、ロール間にスラスト力が生じていたとしても極めて高精度な圧下レベリングの零点設定が実現できることになる。
【0076】
なお、弾性歪(圧延方向力)の作業側と駆動側との差分は概ね零になることが理想的であるが、実際は測定誤差や、設定精度を加味して作業側と駆動側の弾性歪(圧延方向力)の平均の±5%以下であれば問題はない。好ましくは±4%以下、さらに好ましくは±3%以下、さらには2%以下とするとよい。
【0077】
図6を参照して、本発明の蛇行・キャンバー制御(14)、反り制御(15)および零点調整手段(16)をさらに具体的に説明する。
圧延機は、上作業ロールチョック5に支持された上作業ロール1と、上作業ロール1を補強する上補強ロールチョック5に支持された上補強ロール3と、下作業ロールチョック6に支持された下作業ロール2と、下作業ロール2を補強する下補強ロールチョック7に支持された下補強ロール4を備え、圧下装置13を備えている。なお、金属板材21は、圧延方向22に圧延される。
なお、図6には、基本的に作業側の装置構成のみを図示しているが、駆動側にも同様の装置が存在する。
【0078】
圧延機の上作業ロール1に作用する圧延方向力は基本的には上作業ロールチョック5によって支持されるが、上作業ロールチョック5には上作業ロールチョック出側歪測定手段9と上作業ロール入側歪測定手段10が配備されており、これらの歪測定手段9,10で測定される入側および出側の弾性歪の差を取ることにより、上作業ロールチョック5を圧延方向に固定しているプロジェクトブロック(図示せず)等の部材と上作業ロールチョック5の間に作用する力による作業ロールチョックの弾性歪を測定することができる。上作業ロールチョック弾性歪演算装置14では、上作業ロール出側歪測定手段9と上作業ロール入側歪測定手段10による測定結果の差異を演算し、上作業ロールチョック5に作用する圧延方向力による弾性歪を演算する。さらに、下作業ロール2に作用する圧延方向力による下作業ロールチョック6の弾性歪についても、下作業ロールチョック6の出側および入側に配備された下作業ロール出側歪測定手段11および下作業ロール入側歪測定手段12の測定値に基づき下作業ロールチョック弾性歪演算装置15によって、下作業ロールチョック6に作用する弾性歪を演算する。
【0079】
(14)の蛇行・キャンバー制御の場合、作業ロールチョック弾性歪合算装置16において、上作業ロールチョック弾性歪演算装置14の演算結果と下作業ロールチョック弾性歪演算装置15の演算結果の和をとり、上下作業ロールに作用する弾性歪合算値(作業側)を演算する。上記のような手続きは、作業側のみならず駆動側も全く同じ装置構成で演算を実施し、その結果が駆動側の作業ロールチョック弾性歪合算値(駆動側)17として得られる。そして作業側−駆動側弾性歪合算演算装置18によって、作業側の演算結果と駆動側の演算結果との差異が計算され、これによって作業ロールチョックに作用する弾性歪の作業側と駆動側の差異が計算されることになる。
【0080】
次に、該弾性歪の作業側と駆動側の差異の演算結果に基づいて圧下レベリング制御量演算装置19において、作業ロールチョックに作用する弾性歪の作業側と駆動側との差異を適正な目標値にし、キャンバーを防止するための圧延機のロール開度の左右非対称成分制御量を演算する。ここでは、前記弾性歪の左右差に基づいて、例えば、比例(P)ゲイン、積分(I)ゲイン、微分(D)ゲインを考慮したPID演算によって制御量を演算する。そして、この制御量演算結果に基づいて、圧下レベリング制御装置20によって圧延機のロール開度の左右非対称成分を制御することで、キャンバー発生のない、あるいは極めてキャンバーの軽微な圧延が実現できる。
【0081】
ところで、上記した装置構成において、作業側−駆動側弾性歪合算演算装置18の演算結果を得るまでは、基本的には作業側と駆動側を合わせて合計8個の歪測定手段の出力の加減演算のみであるので、上記した装置構成そして演算の順番を任意に変更しても差し支えない。例えば、上下の出側歪測定手段の出力を先に加算し、次に入側の加算結果との差異を演算し、最後に作業側と駆動側の差異を演算してもよいし、最初にそれぞれの位置の歪測定手段の出力の作業側と駆動側の差異を演算してから、上下を合計し、最後に入側と出側の差異を演算してもよい。
【0082】
(15)の反り制御の場合、作業ロールチョック弾性歪合算装置(作業側)16において、上作業ロールチョック弾性歪演算装置14の演算結果と下作業ロールチョック弾性歪演算装置15の演算結果の差をとり、作業ロールチョックに作用する弾性歪の上側と下側の差を演算する。上記のような手続きは、作業側のみならず駆動側も全く同じ装置構成で演算を実施し、その結果が駆動側の作業ロールチョック弾性歪上下差17として得られる。そして上側−下側弾性歪合算演算装置18によって、作業側の演算結果と駆動側の演算結果(上下差)が集計され、これによって作業ロールチョックに作用する弾性歪の上側と下側の差が計算されることになる。
【0083】
次に、この弾性歪の上側と下側の差異の演算結果に基づいて上下ロール速度制御量演算装置19において、作業ロールチョックに作用する弾性歪の上側と下側との差を適正な目標値にし、反りを防止するための圧延機のロール速度の上下非対称成分制御量を演算する。ここでは、前記弾性歪の上下差に基づいて、例えば、比例(P)ゲイン、積分(I)ゲイン、微分(D)ゲインを考慮したPID演算によって制御量を演算する。
そしてこの制御量演算結果に基づいて、上下ロール速度制御装置20によって圧延機のロール速度の上下非対称成分を制御することで反り発生のない、あるいは極めて反りの軽微な圧延が実現できる。
なお、ここでは、上下非対称成分制御量として、前記圧延機のロール速度を用いたが、圧延ロールと被圧延材との摩擦係数、被圧延材の上下面温度差、被圧延材の入射角、及び、作業ロールチョックの水平方向位置等を用いてもよい。
【0084】
ところで、上記した装置構成において、上側−下側弾性歪合算演算装置18の演算結果を得るまでは、基本的には上側と下側を合わせて合計8個の歪測定手段の出力の加減演算のみであるので、上記した装置構成そして演算の順番を任意に変更しても差し支えない。例えば、作業側と駆動側の出側歪測定手段の出力を先に加算し、次に入側の加算結果との差異を演算し、最後に上側と下側の差異を演算してもよいし、最初にそれぞれの位置の歪測定手段の出力の上側と下側の差異を演算してから、作業側と駆動側を合計し、最後に入側と出側の差異を演算してもよい。
【0085】
(16)の零点調整の場合、(14)の蛇行・キャンバー制御と同様の演算工程を経て、作業側−駆動側弾性歪合算演算装置18によって、作業側の演算結果と駆動側の演算結果との差異が計算され、これによって作業ロールチョックに作用する弾性歪の作業側と駆動側の差異が計算されることになる。
【0086】
そして、油圧圧下装置13を作業側および駆動側を同時に操作して、補強ロール反力の左右の和があらかじめ定められた値(零調荷重)になるまで締め込んでおき、その状態で弾性歪の作業側と駆動側の差を零にするためにレベリング操作を行う。
【0087】
続いて、上述した弾性歪の作業側と駆動側の差分(作業側と駆動側の差)の演算結果18に基づき、圧下レベリング制御量演算装置19において、作業ロールチョック5,6に作用する弾性歪の作業側と駆動側との差分が零になり、且つ零調荷重を維持するように、油圧圧下装置13の制御量を演算する。そして、この制御量演算結果に基づいて、圧下レベリング制御装置20によって圧延機のロールの圧下位置を制御する。これにより、作業ロールチョックに作用する弾性歪の作業側と駆動側との差分を零とし、その時点での圧下位置を、作業側と駆動側個別に圧下位置の零点とする。前述したように、作業ロールチョック(上作業ロールチョック5、下作業ロールチョック6)に作用する圧延方向力の作業側と駆動側との差分はロールスラスト力の影響を受けないため、圧延方向力による作業ロールチョックの弾性歪も影響を受けず、ロール間にスラスト力が生じていたとしても極めて高精度な圧下レベリングの零点設定が実現できることになる。
【0088】
(16)の零点調整においても、上記した装置構成において、作業側−駆動側弾性歪合算演算装置18の演算結果を得るまでは、基本的には作業側と駆動側を合わせて合計8個の歪測定手段の出力の加減演算のみである。したがって、上記した装置構成そして演算の順番を任意に変更しても差し支えない。例えば、上下の出側歪測定手段の出力を先に加算し、次に入側の加算結果との差異を演算し、最後に作業側と駆動側の差異を演算してもよいし、最初にそれぞれの位置の歪測定手段の出力の作業側と駆動側の差異を演算してから、上下を合計し、最後に入側と出側の差異を演算してもよい。
【0089】
(17)に記載の方法によれば、前記作業ロールの入側および出側に発生する圧延方向の弾性歪を測定し、入出側の歪差を演算し、該歪差を圧延方向力による前記作業ロールチョックの弾性歪として伝送することを特徴とする。
(17)に記載の発明では、圧延方向力による作業ロールチョックの弾性歪を入出側の歪測定手段の検出値の差分を求めてから、伝送する。これにより、伝送する前に入出側の歪差を演算する工程が必要となるが、伝送の経路を少なくすることができる。特に無線で伝送する場合には、その無線経路の数を減らすことができる。すなわち、歪測定手段からの検出値は、そのまま(演算しないまま)入出側2つの伝送手段で伝送してもよいが、あるいは本態様で示されるように、入出側の差異を取って、その差異を圧延方向力による作業ロールチョックの弾性歪として伝送してもよい。
【0090】
(18)に記載の方法によれば、作業ロールチョックの圧延方向入側、出側のいずれか一方に、該作業ロールチョックを圧延方向に押しつける。作業ロールチョックを圧延方向に押し付けることにより、作業ロールチョックの圧延方向位置を安定させるとともに、作業ロールチョックに作用する圧延方向力によって生じる弾性歪の測定の応答性および精度を高めることが可能となる。
【0091】
(19)に記載の方法によれば、前記作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックの圧延方向入側と出側のうち、補強ロールを基準として前記作業ロールをオフセットしている側とは反対から、前記作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックを圧延方向に押し付ける。作業ロールオフセットによってオフセット分力が圧延荷重の水平方向分力として発生するので、該作業ロールチョックの圧延方向位置を安定させることができる。さらに、作業ロールをオフセットしている側とは反対から押し付けることによって、補強ロールから作業ロールに作用するオフセット力が作業ロールチョックを出側に押し付ける方向に作用するので、作業ロールチョックの押し付け力を小さくすることができ、コンパクトかつ安価な設備とすることができる。また、同時に作業ロールチョックを挟み込む力を小さくすることができるので、他の制御の外乱因子を小さく抑えることもできる。
【0092】
(20)に記載の方法によれば、前記押し付ける手段が圧延方向力を検出する機能を有する。ロールチョックに作用する圧延方向力によって、ロールチョックの弾性歪が生じるため、押し付ける手段が圧延方向力を検出する機能を有することにより、弾性歪の測定値と圧延方向力の測定値とを照らし合わせて、弾性歪の測定値を精度向上させたり、測定異常がないか検出したりするのに役立てることができる。
【実施例】
【0093】
本発明の効果を確認するため、図7に示した厚板圧延装置において、圧延試験を行った。作業ロール径は1200mm、補強ロール径は2400mmである。また、定格荷重は80000kNである。
【0094】
例1
試験方法としては、ロールチョックとハウジング間に圧延方向力較正用(または試験用または検証用)ロードセル(以下、圧延方向力較正用ロードセルと称する)が配置され、かつ本発明であるロールチョック内部に圧延方向力により生じる歪を測定する手段を備えた状態で、圧延後の板厚が5mm〜100mmとなる条件で圧延を実施し、両者の出力について調査した。本試験では、補強ロールに対し作業ロールを20mm圧延出側方向にオフセットさせ、オフセット分力として圧延方向力が生じやすい状態とした。
【0095】
その結果、ロールチョックとハウジング間に設置された圧延方向力較正用ロードセルは圧延後の板厚が20mm以上の条件では圧延荷重から計算したオフセット分力に対し測定値が小さい値を示し、また40mm以上の条件ではロードセル受圧位置とロールチョックが接触せず、圧延方向力が測定できなかったのに対し、本発明による、ロールチョック内部に配置した圧延方向力の歪測定手段では全ての板厚条件に対し、オフセット分力に対し等価となる弾性歪量を測定した。図8は、比較例のロードセルと実施例の歪測定手段について、板厚を変化させたときの信号強度を模式的に示した図である。板厚が厚くなり、ロールチョックがロードセルの最適適用範囲から逸脱するにつれて、信号強度は低下する。また、ロードセルの適用範囲を広く使うために板厚0の位置では僅かに信号強度が落ちることがある。これに対して、本発明の歪測定手段では、板厚の変動にかかわらず、信号強度は一定であった。このことから、本発明があらゆるロールギャップに対し、高精度な圧延方向力の測定が可能であることがわかった。
また、歪測定手段は、ロードセルに比べて、装置自体の価格が概して廉価である上に、容易に取り付けることができるので改造コストの面でも有利であった。
さらに、歪測定手段として、測定信号を有線で伝送するものと、無線で伝送できるものの両方を用いたが、いずれの場合も問題なく圧延装置を稼働することができた。さらに、無線を用いる場合、2通りの伝送、すなわち(i)歪測定信号をそのまま(演算しないまま)入出側のそれぞれの伝送手段で伝送すること、および、(ii)入出側の差異を取ってから、その差異を圧延方向力による作業ロールチョックの弾性歪として伝送すること、を試みたが、いずれの場合も問題なく圧延装置を稼働することができた。
【0096】
例2
さらに、図7に示した圧延装置を用いて、ロールチョックとハウジング間に圧延方向力較正用ロードセルが配置され、かつ本発明であるロールチョック内部に圧延方向力により生じる歪を測定する手段を備えた状態で、入側板厚20〜150mm、板幅3000mmの普通鋼板50枚について圧延装置出側板厚15〜100mmとする圧延を、特別な制御を行わない圧延方法と、本発明であるロールチョック内部に圧延方向力の歪測定手段の、出力の左右差が零になるようにレベリング制御を行う圧延方法について、それぞれ実施した。
【0097】
その結果、圧延材の蛇行、キャンバーに関しては、本発明方法による、ロールチョック内部に圧延方向力の歪測定手段の、出力の左右差が零になるようにレベリング制御を行う方法を用いた圧延では、圧延枚数50枚を行った中では顕著なものは発生しなかった。これに対し、本発明によるレベリング制御を行わない圧延では、圧延枚数50枚のうち50mm程度(20mあたり)のキャンバーが、特に板厚の厚い条件において、5枚発生した。
【0098】
この結果、本発明により、あらゆる板厚条件でも、高精度な圧下レベリング制御が可能となり、圧下レベリング設定不良による圧延材のキャンバーや板厚ウェッジといった平面形状および寸法精度不良、あるいは蛇行や絞りといった通板トラブルを、解消できることがわかった。
【0099】
例3
さらに、図7に示した圧延装置を用いて、ロールチョックとハウジング間に圧延方向力較正用ロードセルが配置され、かつ本発明であるロールチョック内部に圧延方向力により生じる歪を測定する手段を備えた状態で、入側板厚20〜150mm、板幅3000mmの普通鋼板50枚について圧延装置出側板厚15〜100mmとする圧延を、特別な制御を行わない圧延方法と、本発明であるロールチョック内部に圧延方向力の歪測定手段の、出力の上下差が零になるように異周速制御を行う圧延方法について、それぞれ実施した。
【0100】
その結果、圧延材の反りに関しては、本発明方法による、ロールチョック内部に圧延方向力の歪測定手段の、出力の上下差が零になるように異周速制御を行う方法を用いた圧延では、圧延枚数50枚を行った中では顕著なものは発生しなかった。これに対し、本発明によるロール異周速制御を行わない圧延では、圧延枚数50枚のうち80mm程度の反りが、特に板厚の厚い条件において、7枚発生した。
この結果、本発明により、あらゆる板厚条件でも、高精度な反り制御が可能となり、通板トラブルを解消できることがわかった。
【0101】
例4
さらに、図7に示した厚板圧延装置において、キスロール締め込み試験を行った。作業ロール径は1200mm、補強ロール径は2400mmである。また、定格荷重は80000kNである。
【0102】
試験方法としては、ロールチョックとハウジング間に圧延方向力較正用ロードセルが配置され、かつ本発明であるロールチョック内部に圧延方向力の歪測定手段を備えた状態で、上下作業ロール間に任意のクロス角を与え、作業側と駆動側の補強ロール反力の和があらかじめ定められた値になるようにキスロール締め込みを実施し、作業ロールの作業側のロールチョックおよび駆動側のロールチョックに作用する圧延方向力のロードセル出力の作業側と駆動側の差が定格荷重の1%以内である圧下位置を圧下零調位置とした場合と、本発明による、作業側と駆動側の補強ロール反力の和があらかじめ定められた値になるようにキスロール締め込みを実施し、作業ロールの作業側のロールチョックおよび駆動側のロールチョックに作用する圧延方向力の歪測定手段の作業側と駆動側の差が定格荷重の1%以内である圧下位置を圧下零調位置とした場合とを、クロス角の変化による変動量について比較した。
【0103】
クロス角を−0.1°から+0.1°まで変化させた場合、作業ロールの作業側および駆動側のロールチョックに作用する圧延方向力のロードセル出力の作業側と駆動側の差に基づく圧下零調方法におけるレベリング零点の変化量は比較的小さい0.03mmであったのに対し、本発明による、作業ロールの作業側および駆動側のロールチョックに作用する圧延方向力の歪測定手段出力の作業側と駆動側の差に基づく圧下零調方法におけるレベリング零点の変化量は非常に小さい0.015mm以下であった。このことから、本発明により、高精度な圧下零調が可能であることがわかった。
キスロール位置ではロードセルの場合適用範囲の端になるので、適用範囲の中心に比べて、僅かながら誤差が大きくなることがある。一方、本発明では、ロール位置によって検出精度が変わることがなく、誤差は変化しない。
【0104】
ところで、本発明ではレベリング制御、上下非対称制御、零点調整において、圧延方向力ではなく弾性歪を用いている。本発明を説明する上で、圧延方向力を用いた箇所があるが、測定される弾性歪を用いれば、必ずしも圧延方向力に換算しなくても、本発明は実施することが出来る。
【符号の説明】
【0105】
1 上作業ロール
2 下作業ロール
3 上補強ロール
4 下補強ロール
5 上作業ロールチョック(作業側)
6 下作業ロールチョック(作業側)
7 上補強ロールチョック(作業側)
8 下補強ロールチョック(作業側)
9 上作業ロール出側歪測定手段(作業側)
10 上作業ロール入側歪測定手段(作業側)
11 下作業ロール出側歪測定手段(作業側)
12 下作業ロール入側歪測定手段(作業側)
13 圧下装置
14 上作業ロールチョック弾性歪演算装置(作業側)
14’ 上作業ロールチョック弾性歪演算装置(駆動側)
15 下作業ロールチョック弾性歪演算装置(作業側)
15’ 下作業ロールチョック弾性歪演算装置(駆動側)
16 作業ロールチョック弾性歪合算装置[加減算器](作業側)
17 作業ロールチョック弾性歪合算装置[加減算器](駆動側)
18 弾性歪合算演算装置(作業側−駆動側/上側−下側)
19 制御量演算装置(圧下レベリング制御量/上下非対称成分制御量)
20 制御装置(圧下レベリング/上下非対称成分)
21 金属板材
22 圧延方向
23 ミルハウジング
24 出側プロジェクトブロック
25 入側プロジェクトブロック
26 圧延荷重検出装置
27 押し付け装置
109 上作業ロール出側ロードセル(作業側)
110 上作業ロール入側ロードセル(作業側)
111 下作業ロール出側ロードセル(作業側)
112 下作業ロール入側ロードセル(作業側)
301 ロールチョック
302 ベアリング
303 ロール軸格納部
304 歪測定手段
305 ボルト
306 リード線
307 圧延方向力作用位置
308 ロール軸中心高さ
309 ロール軸直径
310 圧下支点位置
311 ロール軸格納長さ
312 ロールチョック端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも上下一対の作業ロールと補強ロールとを有する圧延装置において、前記作業ロールの作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックの入側および出側に発生する圧延方向の弾性歪を測定する歪測定手段を備えていることを特徴とする圧延装置。
【請求項2】
前記歪測定手段がピエゾ素子または歪ゲージであることを特徴とする請求項1に記載の圧延装置。
【請求項3】
前記歪測定手段は測定信号を無線で伝送することを特徴とする請求項1または2に記載の圧延装置。
【請求項4】
前記歪測定手段により測定した入側および出側の弾性歪から、圧延方向力による前記作業ロールチョックの弾性歪を演算する作業ロールチョック弾性歪演算装置と、前記作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックに作用する弾性歪の差分を演算する左右弾性歪差分演算装置と、前記左右弾性歪差分演算装置の演算値に基づいて前記圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置制御量を演算する圧下レベリング制御量演算装置と、当該圧下レベリング制御量演算装置の演算値に基づいて前記圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置を制御する圧下レベリング制御装置と、を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧延装置。
【請求項5】
前記歪測定手段により測定した入側および出側の弾性歪から、圧延方向力による前記作業ロールチョックの弾性歪を演算する作業ロールチョック弾性歪演算装置と、前記上側作業ロールチョックおよび下側作業ロールチョックに作用する弾性歪の差分を演算する上下弾性歪差分演算装置と、前記上下弾性歪差分演算装置の演算値に基づいて、前記圧延装置の上下非対称成分制御量を演算する上下非対称成分制御量演算装置と、当該上下非対称成分制御量演算装置の演算値に基づいて前記圧延装置の上下非対称成分制御量を制御する上下非対称成分制御装置と、を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧延装置。
【請求項6】
前記歪測定手段が、キスロール状態における圧延方向の弾性歪を測定する歪測定手段である圧延装置であって、
さらに、前記歪測定手段により測定した入側および出側の弾性歪から、圧延方向力による前記作業ロールチョックの弾性歪を演算する作業ロールチョック弾性歪演算装置と、前記作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックに作用する弾性歪の差分を演算する左右弾性歪差分演算装置と、前記左右弾性歪差分演算装置の演算値に基づいて前記圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置制御量を演算する圧下レベリング制御量演算装置と、当該圧下レベリング制御量演算装置の演算値に基づいて前記圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置を制御する圧下レベリング制御装置と、を備え、
前記圧下レベリング制御装置において、キスロール状態における作業側と駆動側の補強ロール反力の和をあらかじめ定められた値を中心にその±2%の範囲内の値とし、前記作業ロールの作業側のロールチョックおよび駆動側ロールチョックに作用する左右弾性歪差分が作業側および駆動側の弾性歪の平均の±5%の範囲内になるように前記圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置制御量を演算することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧延装置。
【請求項7】
前記作業ロールチョック弾性歪演算装置のかわりに、入出側の歪差を演算する回路を備え、該歪差を圧延方向力による前記作業ロールチョックの弾性歪として伝送することを特徴とする、請求項4〜6のいずれか1項に記載の圧延装置。
【請求項8】
前記作業ロールチョックの圧延方向入側、出側のいずれか一方に、該作業ロールチョックを圧延方向に押しつけるための押し付け装置を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の圧延装置。
【請求項9】
前記作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックの圧延方向入側と出側のうち、補強ロールを基準として前記作業ロールをオフセットしている側とは反対側に、前記作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックを圧延方向に押し付けるための押し付け装置を備えていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の圧延装置。
【請求項10】
前記押し付け装置が圧延方向力を検出し、該圧延方向力に基づき作業ロールチョックの弾性歪を検出する機能を有することを特徴とする、請求項8または9に記載の圧延装置。
【請求項11】
少なくとも上下一対の作業ロールと補強ロールとを有する圧延装置を用いて行う金属板材の圧延方法において、前記作業ロールの作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックの入側および出側に発生する圧延方向の弾性歪を測定する、圧延方法。
【請求項12】
前記歪測定手段がピエゾ素子または歪ゲージであることを特徴とする請求項11に記載の圧延方法。
【請求項13】
前記歪測定手段は測定信号を無線で伝送することを特徴とする請求項11または12に記載の圧延方法。
【請求項14】
前記作業ロールの作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックの入側および出側に発生する圧延方向の弾性歪の測定値に基づいて、圧延方向力による前記作業ロールの作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックの弾性歪を演算し、さらに左右弾性歪の差分を演算し、
前記左右弾性歪差分の演算値に基づいて圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置制御量を演算し、
当該圧下装置制御量の演算値に基づいて前記圧延装置の作業側および駆動側の圧下装置を制御することを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の圧延方法。
【請求項15】
前記作業ロールの上側作業ロールチョックおよび下側作業ロールチョックの入側および出側に発生する圧延方向の弾性歪の測定値に基づいて、圧延方向力による前記作業ロールの上側ロールチョックおよび下側ロールチョックの弾性歪を演算し、さらに上下弾性歪の差分を演算し、
前記上下弾性歪差分の演算値に基づいて、圧延装置の上下非対称成分制御量を演算し、
当該上下非対称成分制御量の演算値に基づいて、前記圧延装置の上下非対称成分制御量を制御することを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の圧延方法。
【請求項16】
キスロール状態における作業側と駆動側の補強ロール反力の和をあらかじめ定められた値を中心にその±2%の範囲内の値とし、
キスロール状態における前記作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックの入側および出側に発生する圧延方向の弾性歪を測定し、
前記入側および出側弾性歪に基づいて、圧延方向力による前記作業ロールの作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックの弾性歪を演算し、
前記作業側および駆動側の弾性歪の演算値に基づいて、左右弾性歪の差分を演算し、
前記左右弾性歪の差分が、前記作業側および駆動側の弾性歪の平均の±5%の範囲内になるように、圧延装置の左右圧下位置を設定し、
前記設定した圧下位置を初期圧下位置とすることを特徴とする、請求項11〜13のいずれか1項に記載の圧延方法。
【請求項17】
前記作業ロールの入側および出側に発生する圧延方向の弾性歪を測定し、入出側の歪差を演算し、該歪差を圧延方向力による前記作業ロールチョックの弾性歪として伝送することを特徴とする、請求項14〜16のいずれか1項に記載の圧延方法。
【請求項18】
前記作業ロールチョックの圧延方向入側、出側のいずれか一方に、該作業ロールチョックを圧延方向に押しつけることを特徴とする、請求項11〜17のいずれか1項に記載の圧延方法。
【請求項19】
前記作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックの圧延方向入側と出側のうち、補強ロールを基準として前記作業ロールをオフセットしている側とは反対から、前記作業側ロールチョックおよび駆動側ロールチョックを圧延方向に押し付けることを特徴とする、請求項11〜17のいずれか1項に記載の圧延方法。
【請求項20】
前記押し付ける手段が圧延方向力を検出し、該圧延方向力に基づき作業ロールチョックの弾性歪を検出する機能を有することを特徴とする、請求項18または19に記載の圧延方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−66933(P2013−66933A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−143433(P2012−143433)
【出願日】平成24年6月26日(2012.6.26)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】