説明

金属用研磨液及び被研磨膜の研磨方法

【課題】(a)固体粒子に由来する研磨傷の発生、(b)ディッシング、エロージョン等の平坦性悪化の発生、(c)研磨後の基板表面に残留する研磨粒子を除去するための洗浄工程の複雑性、(d)固体砥粒そのものの原価や廃液処理に起因するコストアップ等の問題を解決し、かつ高いCu研磨速度でCMP可能な金属用研磨液及びこれを用いた被研磨膜の研磨方法を提供する。
【解決手段】金属の酸化剤、酸化金属溶解剤、金属防食剤及び重量平均分子量が8000以上のアニオン性官能基を有する水溶性ポリマを含有し、pHが1以上3以下である金属用研磨液並びに研磨定盤の研磨布上に前記の金属用研磨液を供給しながら、被研磨金属膜を有する基板を研磨布に押圧した状態で研磨定盤と基板を相対的に動かして研磨する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属用研磨液及び被研磨膜の研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路(以下、LSIと記す。)の高集積化、高性能化に伴って新たな微細加工技術が開発されている。化学機械研磨(以下、CMPと記す。)法もその一つであり、LSI製造工程、特に多層配線形成工程における層間絶縁膜の平坦化、金属プラグ形成、埋め込み配線形成等において頻繁に利用される技術であり、例えば、米国特許第4,944,836号明細書に開示されている。
【0003】
また、最近はLSIを高性能化するために、配線材料として銅合金の利用が試みられている。しかし、銅合金は従来のアルミニウム合金配線の形成で頻繁に用いられたドライエッチング法による微細加工が困難である。そこで、例えば、あらかじめ溝を形成してある絶縁膜上に銅合金薄膜を堆積して埋め込み、溝部以外の銅合金薄膜をCMPにより除去して埋め込み配線を形成する、いわゆるダマシン法が主に採用されおり、例えば、特開平2−278822号公報に開示されている。
【0004】
金属のCMPの一般的な方法は、円形の研磨定盤(プラテン)上に研磨パッドを貼り付け、研磨パッド表面を金属用研磨液で浸し、基板の金属膜を形成した面を押し付けて、その裏面から所定の圧力(以下、研磨圧力と記す。)を加えた状態で研磨定盤を回し、研磨液と金属膜の凸部との機械的摩擦によって凸部の金属膜を除去するものである。
【0005】
CMPに用いられる金属用研磨液は、一般には酸化剤及び研磨粒子からなっており、必要に応じてさらに酸化金属溶解剤、金属防食剤等が添加される。まず酸化によって金属膜表面を酸化し、その酸化層を研磨粒子によって削り取るのが基本的なメカニズムと考えられている。凹部の金属表面の酸化層は研磨パッドにあまり触れず、研磨粒子による削り取りの効果が及ばないので、CMPの進行とともに凸部の金属層が除去されて基板表面は平坦化される(例えば、ジャーナル・オブ・エレクトロケミカルソサエティ誌,第138 巻11号(1991年発行),3460〜3464頁参照)。
【0006】
しかしながら、従来の研磨粒子を含む金属用研磨液を用いてCMPによる埋め込み配線形成を行う場合には、(a)固体粒子に由来する研磨傷の発生、(b)埋め込まれた金属配線の表面中央部分が等方的に研磨されて皿のように窪む現象(以下、ディッシングと記す。)、配線金属と共に層間絶縁膜が研磨されて窪む現象(以下、エロージョンと記す。)、等の平坦性悪化の発生、(c)研磨後の基板表面に残留する研磨粒子を除去するための洗浄工程の複雑性、(d)固体砥粒そのものの原価や廃液処理に起因するコストアップ、等の問題が生じる。
【0007】
平坦性悪化の解決としてディッシング、エロージョン、研磨傷の発生を抑制し、信頼性の高いLSI配線を形成するために、グリシン等のアミノ酢酸又はアミド硫酸からなる酸化金属溶解剤、BTA(ベンゾトリアゾール)等の保護膜形成剤を含有する金属用研磨液を用いる方法などが提唱されている(例えば、特開平8−83780号公報参照)。しかし、BTAなどの保護膜形成効果により平坦性悪化を解決する方法は、ディッシング及びエロージョンの発生を抑制できるが、研磨速度が顕著に低下し好ましくない場合がある。
【0008】
一方、CMP処理により基板に付着した研磨粒子の除去は、ポリビニールアルコール製ブラシや超音波による物理的な洗浄で主に行われている。しかしながら、基板に付着する研磨粒子が微細化するにつれ、研磨粒子に対して物理力を有効に作用させることが困難になってきている。
【0009】
これに対して金属膜、特に銅もしくは銅を主体とした金属の研磨液として、実質的に研磨粒子を含まない研磨液が、例えば、特許第3371775号明細書に開示されている。それによれば、被研磨金属膜を酸化するための酸化性物質と、前記酸化性物質で酸化された酸化物を水溶性化する有機酸と、水と、必要であれば防食性物質(保護膜形成剤)を含む研磨液を用いて、金属表面に機械的な摩擦をかけることにより埋め込み金属配線を形成することができる。例えば、過酸化水素とクエン酸とベンゾトリアゾールを含む実質的に研磨粒子を含まない研磨液で銅配線を形成する方法が一例として記載されており、前述の(a)〜(d)の問題は解決されている。しかし、この方法では通常の研磨条件における研磨速度が80〜150nm/分で、300g/cm以上の高い研磨荷重をかけても研磨速度が飽和して200nm/分を超えないという問題があり、この問題に対して、酸化性物質、リン酸、有機酸、保護膜形成剤及び水を含み実質的に研磨粒子を含まない金属研磨液を用いて、金属表面に機械的な摩擦をかけることにより埋め込み金属配線を形成する方法が提案されている(特開2002−50595号公報参照)。この方法では前述の(a)〜(d)の問題を解決し、かつ研磨速度の高速化(700nm/分以上)を実現でき、ディッシングやエロージョンが約50nm以下となる形状に加工できると記載がある。実質的に研磨砥粒を含まない金属用研磨液の為、エロージョンの発生量はごく僅かであった。
【0010】
一方で、配線幅や配線密度に関する記載はなく、我々の実験によればこの研磨液で研磨したSEMATECH854パターンマスクウエハのCu配線幅/配線スペース=100μm/100μm部におけるCu配線部のディッシングは100nm以上であり、テクノロジーノード130nm以降(hp130)のレベルの埋め込みCu配線を形成する為の金属用研磨液としては用いることができないものであった。ここで、テクノロジーノードとは半導体の技術世代を示し、DRAMのワード線・ビット線の最小配線ピッチの半分(ハーフピッチ)で表現される(例えば、米国SEMATECH(Semiconductor Manufacturing Technology Institute)から発表されている、ITRS(International Technology Roadmap for Semiconductors)の2003年度版参照)。
【0011】
上述のように、研磨砥粒をまったく含まない、もしくは極微量の研磨砥粒を添加した金属用研磨液によって研磨傷、エロージョン、研磨後の研磨砥粒除去の必要性、固体砥粒そのものの原価や廃液処理に起因するコストアップなどの問題、またスループット向上を目的とした研磨速度の問題は解決されるが、配線の信頼性や性能に大きく寄与するディッシングの低減が困難であった。主に幅広配線部におけるディッシングが大きく、テクノロジーノード130nm以降のレベルの埋め込みCu配線を形成する為の金属用研磨液としては用いることができない問題があった。
【0012】
本発明は、(a)固体粒子に由来する研磨傷の発生、(b)ディッシング、エロージョン等の平坦性悪化の発生、(c)研磨後の基板表面に残留する研磨粒子を除去するための洗浄工程の複雑性、(d)固体砥粒そのものの原価や廃液処理に起因するコストアップ等の問題を解決し、かつ高いCu研磨速度でCMP可能な金属用研磨液、すなわちテクノロジーノード130nm以降のレベルの埋め込みCu配線を形成可能とする金属用研磨液及びこれを用いた被研磨膜の研磨方法を提供するものである。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、(1)金属の酸化剤、酸化金属溶解剤、金属防食剤及び重量平均分子量が8,000以上のアニオン性官能基を有する水溶性ポリマを含有し、pHが1以上3以下であることを特徴とする金属用研磨液に関する。
【0014】
また、本発明は、(2)前記金属の酸化剤が、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、次亜塩素酸及びオゾン水から選ばれる1種類以上の酸化剤であることを特徴とする前記(1)記載の金属用研磨液に関する。
【0015】
また、本発明は、(3)前記酸化金属溶解剤が、25℃における第一段の酸解離定数が3.7未満である無機酸、有機酸、もしくはその塩から選ばれる1種類以上の酸化金属溶解剤であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の金属用研磨液に関する。
【0016】
また、本発明は、(4)前記酸化金属溶解剤が、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸、グルタミン酸、グリコン酸、シュウ酸、酒石酸、ピコリン酸、ニコチン酸、マンデル酸、酢酸、硫酸、硝酸、燐酸、塩酸、ギ酸、乳酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、アミノ酢酸、アミド硫酸及びその塩から選ばれる1種類以上の酸化金属溶解剤であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の金属用研磨液に関する。
【0017】
また、本発明は、(5)前記金属防食剤が、含窒素環状化合物及びイオン性界面活性剤から選ばれる1種類以上の金属防食剤であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の金属用研磨液に関する。
【0018】
また、本発明は、(6)前記アニオン性官能基を有する水溶性ポリマが、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、またはその塩の少なくとも1種類のアンオン性官能基を有する水溶性ポリマであることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の金属用研磨液に関する。
【0019】
また、本発明は、(7)金属用研磨液重量に対して、1重量%未満の研磨粒子を添加してなる前記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の金属用研磨液に関する。
【0020】
また、本発明は、(8)前記研磨粒子が、シリカ、アルミナ、セリア、チタニア、ジルコニア、ゲルマニアから選ばれる1種類以上の研磨粒子であることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の金属用研磨液に関する。
【0021】
また、本発明は、(9)金属用研磨液の研磨対象である被研磨金属が、銅、銅合金及び銅化合物から選ばれる少なくとも1種類以上の金属であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の金属用研磨液関する。
【0022】
また、本発明は、(10)研磨定盤の研磨布上に前記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の金属用研磨液を供給しながら、被研磨膜を有する基板を研磨布に押圧した状態で研磨定盤と基板を相対的に動かして研磨することを特徴とする被研磨膜の研磨方法にする。
【0023】
本発明の金属用研磨液及び被研磨膜の研磨方法によれば、上記(a)〜(d)の問題を解決することができ、かつ高い研磨速度で低いディッシング、すなわちテクノロジーノード130nm以降に必要とされるレベルの埋め込みCu配線を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、アニオン性官能基を有する水溶性ポリマがポリカルボン酸で、酸化金属溶解剤が硫酸である水溶液のpHとポリマ径の関係及び金属の酸化剤が過酸化水素、酸化金属溶解剤が硫酸、金属防食剤がベンゾトリアゾール、アニオン性官能基を有する水溶性ポリマがポリカルボン酸である金属用研磨液のpHとディッシングの関係でプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の金属用研磨液について詳細に説明する。
【0026】
従来、実質的に研磨砥粒を含まない金属用研磨液は、研磨速度を減少させない為に金属防食剤の添加量を最低限に抑制することが求められていた。しかしながら、金属防食剤の添加量を減らすと研磨布との接触面のみならず、凹部においても等方的なエッチングが進みディッシングの発生を十分に抑制できなかった。これに対し、種々の金属用研磨液が検討され、エッチングの抑制と研磨速度の向上を達成しているが、テクノロジーノード130nm以降に必要とされるレベルのディッシング量の埋め込みCu配線の形成は困難であった。
【0027】
これに対して本発明者らは、十分に低いpHの領域において、金属防食剤と重量平均分子量が8,000以上のアニオン性官能基を有する水溶性ポリマを併用することによって、CMPに適用できる十分に高い研磨速度の達成と、テクノロジーノード130nm以降に必要とされるレベルのディッシング量の埋め込みCu配線の形成が可能であることを見出した。
【0028】
本発明の金属用研磨液は、金属の酸化剤、酸化金属溶解剤、金属防食剤及び重量平均分子量が8,000以上のアニオン性官能基を有する水溶性ポリマを含有し、pHが1以上3以下であることを特徴とする。
【0029】
本発明の金属用研磨液のpHは1以上3以下であり、好ましくは1.5以上2.8以下、さらに好ましくは1.8以上2.5以下である。pHが3を超えるとディッシングが増加し、また、pHが1未満では配線金属の腐食やエッチングに起因すると思われるディッシングが増加してしまう。pHは、例えば、金属用研磨液に添加する酸化金属溶解剤の量で調整することができる。また、アンモニア、水酸化カリウム等の塩基を酸化金属溶解剤と併用することにより調整することも可能である。
【0030】
本発明におけるpHは、pHメータ(例えば、横河電機株式会社製、Model pH81)で測定することができる。測定方法は、標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液pH:4.21(25℃)、中性りん酸塩pH緩衝液pH6.86(25℃)を用いて2点構成した後、電極を研磨液に入れて、2分以上経過して安定した後の値を研磨液のpHとした。
【0031】
本発明における金属の酸化剤としては、過酸化水素(H)、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、過硫酸アンモニウム、次亜塩素酸、オゾン水等が挙げられ、これらの中でも過酸化水素が好ましい。これら酸化剤は1種類単独で、もしくは2種類以上を組み合わせて使用することができる。基板が集積回路用素子を含むシリコン基板である場合、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物などによる汚染は望ましくないので、不揮発成分を含まない酸化剤が望ましく、なかでも安定性の面から過酸化水素が好ましい。
【0032】
本発明における酸化剤の配合量は適宜選択されるが、研磨液全重量に対して、3〜20重量%であることが好ましく、5〜15重量%であることがより好ましい。酸化剤の配合量が3重量%未満である場合は、十分な研磨速度が得られない傾向にあり、20重量%を超える場合にも同様にも十分な研磨速度が得られない傾向にある。
【0033】
本発明における酸化金属溶解剤は、25℃における第一段の酸解離指数(pK1)が好ましくは3.7未満、さらに好ましくは2.0〜3.7である無機酸または有機酸、もしくはその塩から選ばれる1種類以上の水溶性の酸化金属溶解剤である。かかる酸化金属溶解剤は、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸、グルタミン酸、グリコン酸、シュウ酸、酒石酸、ピコリン酸、ニコチン酸、マンデル酸、酢酸、硫酸、硝酸、燐酸、塩酸、ギ酸、乳酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、アミノ酢酸、アミド硫酸、もしくはそのアンモニウム塩やカリウム塩などが挙げられる。これらの酸化金属溶解剤は保護幕形成剤とのバランスが得やすい点で好ましい。これらのなかでも、実用的なCMP速度を維持しつつ、エッチング速度を効果的に抑制できるという点で、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、リン酸、硫酸が好ましく、リンゴ酸、リン酸、硫酸がより好ましい。これら酸化金属溶解剤は1種類単独で、もしくは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
本発明において、高い研磨速度と低いディッシングを達成する為には水溶性ポリマのアニオン性官能基の解離を抑制する必要がある。アニオン性官能基の解離を抑制するには第一段の酸解離指数が低い酸を添加するのが効果的であり、具体的には第一段の酸解離指数が3.7未満である水溶性の酸化金属溶解剤が水溶性ポリマのアニオン性官能基の解離の抑制に有用であることが分かった。なお、本発明における酸解離指数は、酸解離定数の逆数の対数値で、例えば「化学便覧基礎編」改定4版(平成5年9月30日発行)、丸善株式会社、II−317〜321頁に詳細な記載がある。
【0035】
本発明における酸化金属溶解剤の配合量は適宜選択されるが、研磨液全重量に対して、0.05〜3.0重量%であることが好ましく、0.1〜1.0重量%であることがより好ましい。酸化金属溶解剤の配合量が0.05重量%未満である場合は、十分な研磨速度が得られない傾向にあり、3.0重量%を超える場合は、実用的な平坦性が得られない傾向にある。
【0036】
本発明における金属防食剤は、金属膜表面の酸化層上に保護膜を形成し、酸化層の研磨液中への溶解を防止するものと考えられ、例えば、アンモニア;ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、プロピレンジアミン等のアルキルアミンや、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、キトサン等のアミン;ジチゾン、クプロイン(2,2’−ビキノリン)、ネオクプロイン(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)、バソクプロイン(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)、キュペラゾン(ビスシクロヘキサノンオキサリルヒドラゾン)等のイミン;ベンズイミダゾール−2−チオ−ル、トリアジンジチオール、トリアジントリチオール、2−[2−(ベンゾチアゾリル)]チオプロピオン酸、2−[2−(ベンゾチアゾリル)]チオブチル酸、2−メルカプトベンゾチアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−ジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾール、2,3−ジカルボキシプロピルベンゾトリアゾール、4−ヒドロキシベンゾトリアゾール、4−カルボキシル−1H−ベンゾトリアゾール、4−カルボキシル−1H−ベンゾトリアゾールメチルエステル、4−カルボキシル−1H−ベンゾトリアゾールブチルエステル、4−カルボキシル−1H−ベンゾトリアゾールオクチルエステル、5−ヘキシルベンゾトリアゾール、N−(1,2,3−ベンゾトリアゾリル−1−メチル)−N−(1,2,4−トリアゾリル−1−メチル)−2−エチルヘキシルアミン、トリルトリアゾール、ナフトトリアゾール、ビス[(1−ベンゾトリアゾリル)メチル]ホスホン酸等のアゾール;ノニルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン;並びにグルコース、セルロース、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシル硫酸及びその塩等が挙げられる。これらの中でも含窒素環状化合物、イオン性界面活性剤がエッチング速度の抑制と高い研磨速度の両立に好適であり、含窒素環状化合物がより好適である。イオン性界面活性剤としては、イオン性基がスルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基のいずれか一つもしくは複数からなり、疎水性基が炭素数6以上からなるイオン性界面活性剤が好ましい。これら金属防食剤は1種類単独で、もしくは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
本発明における金属防食剤の配合量は適宜選択されるが、研磨液全重量に対して、0.05〜3.0重量%であることが好ましく、0.1〜1.0重量%であることがより好ましい。金属防食剤の配合量が0.05重量%未満である場合は、十分な防食効果が得られずエッチングが増加し平坦性が悪化する傾向にあり、3.0重量%を超える場合は、実用的な研磨速度が得られない傾向にある。
本発明におけるアニオン性官能基を有する水溶性ポリマの重量平均分子量は8,000以上であり、好ましくは8,000以上200,000以下であり、より好ましくは20,000以上100,000以下であり、特に好ましくは40,000以上80,000以下である。重量平均分子量が8,000未満の場合は、研磨速度が低下し、かつ、ディッシングが増加してしまう。また、重量平均分子量の上限については特に制限はないが、例えば、200,000を超えると、研磨速度の大幅な低下は認められないが、研磨ウエハ面内の研磨速度分布のばらつきが大きくなり、ディッシングが増加する傾向がある。
【0038】
本発明におけるアニオン性官能基を有する水溶性ポリマの重量平均分子量の測定は、ゲル浸透クロマトグラフ法で行った。測定条件等は以下に示すとおりである。
【0039】
ポンプ:株式会社日立製作所製 L−6000型
検出器:株式会社日立製作所製 L−3300型 R1検出器
カラム:株式会社日立製作所製 Gelpack GL−W500
カラムサイズ:10.7mm(φ)×300mm
溶離液:100mMリン酸緩衝液(pH=6.8)/アセトニトリル=90/10(Vol%)
液送圧力:17kgf/cm
溶離液流量:1.0ml/min
測定サンプル量:50μl
検量線:PEG/PEO
アニオン性官能基を有する水溶性ポリマは、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、またはその塩の少なくとも1種を有する水溶性ポリマである。かかるアニオン性官能基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基が好ましく、スルホン酸基、カルボン酸基がより好ましい。また、塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ハロゲン化物、アンモニウム塩などが例示されるが、研磨液を適用する基板が半導体集積回路用シリコン基板などの場合は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物等による汚染は望ましくないためアンモニウム塩が望ましい。水溶性ポリマはかかるアニオン性官能基を少なくとも一種類有しており、2種類以上含有していてもよい。また、アニオン性官能基が異なる水溶性ポリマを2種類以上使用することができる。
【0040】
かかるアニオン性基を有する水溶性ポリマとして、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ポリリンゴ酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリクロトン酸、ポリイタコン酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリン酸、ポリメタリン酸、またはそのアンモニウム塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を挙げることができる。これらのなかでも、ポリカルボン酸が賞用される。なお、ここでポリカルボン酸とは、官能基としてカルボキシル基を有する水溶性ポリマのことである。
【0041】
これらアニオン性官能基を有する水溶性ポリマは、従来法に基づいて製造することができる。
【0042】
本発明では、アニオン性官能基を有する水溶性ポリマを添加することにより、高い研磨速度と良好なディッシングを得ることができる。かかる水溶性ポリマの配合量は適宜選択されるが、研磨液全重量に対して、0.05〜2.0重量%であることが好ましく、0.1〜0.8重量%であることがより好ましい。アニオン性官能基を有する水溶性ポリマの配合量が0.05重量%未満である場合は、実用的な研磨速度が得られない傾向にある。
図1にpHとアニオン性官能基を有する水溶性ポリマの粒径及びディッシングの関係を示す。アニオン性官能基を有する水溶性ポリマの粒径は、アニオン性官能基を有する水溶性ポリマを酸化金属溶解剤の添加量でpH調整したものを測定した。
【0043】
アニオン性官能基を有する水溶性ポリマは、ポリカルボン酸であり、酸化金属溶解剤は硫酸を用いた。
【0044】
ディッシングは、金属の酸化剤、酸化金属溶解剤、金属防食剤及びアニオン性官能基を有する水溶性ポリマからなり、そのpHは酸化金属溶解剤の添加量で調整した。
【0045】
金属の酸化剤は、過酸化水素、酸化金属溶解剤は、硫酸、金属防食剤はベンゾトリアゾール、アニオン性官能基を有する水溶性ポリマはポリカルボン酸である。なお、ここでアニオン性官能基を有する水溶性ポリマの粒径とは、レーザ回折式粒度分布計にて得られた値であり、水溶液中でのポリマ鎖の広がりを示す指針として捉えている。また示した粒径はメジアン径である。pHが低くなる程、ポリマ径が小さくなることが分かる。これはpHが低くなるとアニオン性官能基の解離が抑制されてアニオン性官能基間の静電反発が低下してポリマ鎖が収縮した為と考えている。また、pHが低くなるに従ってディッシングが抑制されていることが分かる。
【0046】
被研磨金属上に形成される保護膜は、金属研磨液中の金属防食剤やポリマの吸着層又は金属防食剤やポリマと被研磨金属もしくはそのイオンが配位結合、イオン結合、共有結合等によって結合した反応物の層と考えられる。
【0047】
金属防食剤は、緻密且つ強固な保護膜を形成する為にディッシング抑止には非常に効果的であるが、添加量の増加によって研磨速度を低下させる。一方、水溶性ポリマを添加した金属用研磨液では、研磨速度の低下を回避できるが、ディッシングの増加抑制効果が低減する。これは、金属用研磨液中で水溶性のポリマ鎖が伸びた状態で存在し、このポリマ鎖によって形成された保護膜は粗雑な保護膜となり、これがディッシングの増加抑制効果を低下させていると考えられる。
【0048】
本発明の金属用研磨液は、低pH領域を用いることでポリマ鎖が収縮した水溶性ポリマ、すなわち緻密な水溶性ポリマが被研磨金属上を効率的に被覆することによって緻密な保護膜を形成しディッシングの増加を抑止すると考えている。一般的にポリマの分子量が大きいものは研磨速度は速くなるが、被研磨面の平坦性が得られ難くなり、逆にポリマの分子量が小さいものは被研磨面の平坦性は得られるが研磨速度が遅くなる傾向にある。本発明では重量平均分子量8000以上の水溶性ポリマを用いて特定のpH領域に設定することにより、水溶性ポリマのポリマ鎖が収縮しポリマ粒径が小さくなってきると考えられ、その結果、高研磨速度と被研磨面の平坦性を達成できる。加えて金属防食剤のような強固な保護膜ではなく、緻密ではあるが軟質な保護膜を形成することで高い研磨速度を得ていると考えている。一般的に金属防食剤と水溶性ポリマを併用することで、金属防食剤単独使用に比べて軟質な保護膜が形成され研磨速度は向上するが、被研磨面の平坦性が得られない。本発明では金属防食剤と重量平均分子量8000以上の水溶性ポリマを用いて特定のpH領域に設定することにより、高研磨速度と被研磨面の平坦性を達成できる。
【0049】
(水溶性ポリマ粒径測定方法)
本発明で用いられる酸化金属溶解剤でpHを調整した水溶液中の水溶性ポリマの粒径(実施例ではメジアン径と記す。)を、レーザ回折式粒度分布計で測定した。
【0050】
測定装置:MALVERN社製 ZETASIZER3000HS
測定条件:温度 25℃
分散媒の屈折率 1.33
分散媒の粘度 0.89cP
本発明では、金属用研磨液に研磨粒子を添加してもよく、研磨粒子を添加することによって研磨速度をさらに向上させることができる。但し、研磨粒子を添加することによりディッシングが増加する可能性がある為、研磨粒子の添加量は本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で適宜選択される。研磨粒子の添加量は、研磨液重量に対して、1重量%未満が好ましく、0.001〜1重量%がより好ましく、0.03〜1重量%が特に好ましい。研磨粒子の添加量が1重量%を超えるとディッシングが悪化する傾向にある。研磨粒子の添加量の下限は特に制限されないが、例えば、0.001重量%未満では研磨速度の向上に寄与せず添加する効果が望めない傾向にある。
【0051】
研磨粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、セリア、ジルコニア、もゲルマニア等の無機物砥粒、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリ塩化ビニル等の有機砥粒等が挙げられ、これらのなかでもシリカ、アルミナ、セリアが好ましく、コロイダルシリカ及び/又はコロイダルシリカ類がより好ましい。さらに前記研磨粒子に微量金属種の添加や、表面修飾を施し、電位を調整したものを使用することもできる。その手法に特に制限はない。ここで、コロイダルシリカ類とはコロイダルシリカを基として、ゾル・ゲル反応時において金属種を微量添加したもの、表面シラノール基へ化学修飾などを施したもの等を指し、その手法に特に制限はない。これら研磨粒子は1種類単独で、もしくは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
研磨粒子の一次粒子径は、被研磨金属の種類や研磨粒子の種類等により適宜調整されるが、好ましくは200nm以下、より好ましくは5〜200nm、特に好ましくは5〜150nm、極めて好ましくは5〜100nmである。一次粒子径が200nmを超えると、研磨面の平坦性が悪化する傾向にある。また5nm未満の一次粒子径を選択する場合は、CMP速度が低くなる可能性があるので注意が必要である。
【0053】
また、研磨粒子が会合している場合、二次粒子径は、好ましくは200nm以下、より好ましくは10〜200nm、特に好ましくは10〜150nm、極めて好ましくは10〜100nmである。二次粒子径が200nmを超えると、研磨面の平坦性が悪化する傾向にある。また10nm未満の二次粒子径を選択する場合は、研磨粒子によるメカニカルな反応層除去能力が不十分となりCMP速度が低くなる可能性があるので注意が必要である。
【0054】
本発明における研磨粒子の一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(例えば、株式会社日立製作所製のS4700)を用いて測定することができる。また、二次粒子径は、光回折散乱式粒度分布計(例えば、COULTER Electronics社製のCOULTER N4SD)を用いて測定することができる。
【0055】
本発明の金属用研磨液は、上述した成分の他に、染料、顔料等の着色剤や、pH調整剤、水以外の溶媒などの、一般に研磨液に添加される添加剤を、研磨液の作用効果を損なわない範囲で添加しても良い。
【0056】
本発明の被研磨膜の研磨方法は、研磨定盤の研磨布上に上記本発明の金属用研磨液を供給しながら、被研磨金属膜を有する基板を研磨布に押圧した状態で研磨定盤と基板を相対的に動かして被研磨金属膜を研磨することを特徴とする。
【0057】
研磨対象である被研磨金属膜は単層でも積層でも構わない。金属膜としては、銅、アルミニウム、タングステン、タンタル、チタンなどの金属、それらの金属の合金、それら金属または金属合金の酸化物や窒化物などの化合物のいずれか1種類以上が例示される。これらのなかでも、銅、銅合金、銅化合物が好ましく。金属膜はスパッタ法やメッキ法などの公知の方法により成膜される。基板としては、半導体装置製造に係る基板、例えば回路素子と配線パターンが形成された段階の半導体基板、回路素子が形成された段階の半導体基板等の半導体基板上に、絶縁層が形成された基板などが挙げられる。
【0058】
本発明の研磨方法において使用できる研磨装置としては、例えば、被研磨金属膜を有する基板を保持するホルダーと研磨布(パッド)を貼り可能で、回転数が変更可能なモータなどを取り付けてある研磨定盤とを有する一般的な研磨装置が使用できる。例えば、アプライドマテリアルズ社製MIRRAが使用できる。
【0059】
研磨定盤上の研磨布としては、特に制限はなく、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂等が使用できる。研磨条件は、特に制限はないが、基板が飛び出さないように定盤の回転速度を200rpm以下の低回転にすることが好ましい。
【0060】
被研磨金属膜を有する基板の研磨布への研磨圧力は5〜100kPaであることが好ましく、研磨速度の被研磨金属膜面内の均一性及びパターンの平坦性の見地から10〜50kPaであることが好ましい。
【0061】
基板の被研磨金属膜を研磨布に押圧した状態で研磨布と被研磨金属膜とを相対的に動かすには、具体的には基板と研磨定盤との少なくとも一方を動かせば良い。研磨定盤を回転させる他に、ホルダーを回転や揺動させて研磨しても良い。また、研磨定盤を遊星回転させる研磨方法、ベルト状の研磨布を長尺方向の一方向に直線状に動かす研磨方法等が挙げられる。なお、ホルダーは固定、回転、揺動のいずれの状態でも良い。これらの研磨方法は、研磨布と被研磨金属膜とを相対的に動かすのであれば、被研磨面や研磨装置により適宜選択できる。
【0062】
研磨している間、研磨布には金属用研磨液をポンプなどで連続的に供給することが好ましい。この供給量に制限はないが、研磨布の表面が常に研磨液で覆われていることが好ましい。具体的には、研磨布面積1cm当たり、0.3〜0.9ミリリットル供給されることが好ましい。
【0063】
研磨終了後の半導体基板は、流水中で良く洗浄後、スピンドライヤなどを用いて半導体基板上に付着した水滴を払い落としてから乾燥させることが好ましい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明を説明する。本発明はこれらの実施例により制限するものではない。
【0065】
(金属用研磨液の作製)
実施例1〜6及び比較例1〜2
研磨液重量に対して、過酸化水素水(試薬特級、30%水溶液)30重量%、表1に示す酸化金属溶解剤、ベンゾトリアゾール0.4重量%、表1に示すアニオン性官能基を有する水溶性ポリマ0.4重量%、計100重量%になるように残部に純水を配合して、実施例1〜6の研磨液(A)〜(F)及び比較例1〜2の研磨液(I)〜(J)を作製した。なお、研磨液のpHは、酸化金属溶解剤の添加量で表1に示す値になるように調整した。
【0066】
実施例7〜8及び比較例3
研磨液重量に対して、過酸化水素水(試薬特級、30%水溶液)30重量%、表1に示す酸化金属溶解剤、ベンゾトリアゾール0.4重量%、表1に示すアニオン性官能基を有する水溶性ポリマ0.4重量%、メジアン径が60nmのコロイダルシリカ砥粒0.05重量%、計100重量%になるように残部に、純水を配合して実施例7〜8の研磨液(G)〜(H)及び比較例3の研磨液(K)を作製した。なお、研磨液のpHは、酸化金属溶解剤の添加量で表1に示す値になるように調整した。
【0067】
比較例4
研磨液重量に対して、過酸化水素水(試薬特級、30%水溶液)30重量%、表1に示す酸化金属溶解剤、ベンゾトリアゾール0.4重量%、計100重量%になるように残部に純水を配合して、比較例4の研磨液(L)を作製した。なお、研磨液のpHは、酸化金属溶解剤の添加量で表1に示す値になるように調整した。
【0068】
比較例5
研磨液重量に対して、過酸化水素水(試薬特級、30%水溶液)30重量%、表1に示す酸化金属溶解剤、ベンゾトリアゾール0.4重量%、表1に示す水溶性ポリマ(カチオン性ポリマであるポリリジン)0.4重量%、計100重量%になるように残部に純水を配合して、比較例5の研磨液(M)を作製した。なお、研磨液のpHは、酸化金属溶解剤の添加量で表1に示す値になるように調整した。
【0069】
比較例6
研磨液重量に対して、過酸化水素水(試薬特級、30%水溶液)30重量%、表1に示す酸化金属溶解剤、ベンゾトリアゾール0.4重量%、表1に示す水溶性ポリマ0.4重量%、計100重量%になるように残部に純水を配合して、比較例6の研磨液(N)を作製した。なお、研磨液のpHは、酸化金属溶解剤の添加量で表1に示す値になるように調整した。
【0070】
(銅配線が形成された被研磨用基板)
パターン無しシリコン基板:シリコン基板表面に、二酸化ケイ素絶縁膜層を作製し、スパッタ法により15nmのTaN膜と10nmのTa膜と100nmの銅膜を形成した後、電解メッキ法により1.3μmの銅を堆積した被研磨用基板を用いた。
【0071】
パターン付きシリコン基板:シリコン基板表面に、二酸化ケイ素絶縁膜層を成膜し、SEMATECH854マスクパターンで二酸化ケイ素絶縁膜層に配線溝を形成した後、スパッタ法により15nmのTaN膜と10nmのTa膜と100nmの銅膜を形成し、電解メッキ法により1.1μmの銅を堆積した被研磨用基板を用いた。なお、配線溝の深さは500nmである。
【0072】
(CMP研磨条件)
研磨装置:アプライドマテリアルズ社製MIRRA
研磨圧力:13.8kPa
研磨液供給量:200ml/分
(CMP後洗浄)
CMP処理後は、ポリビニルアルコール製ブラシ、超音波水による洗浄を行った後、スピンドライヤにて乾燥を行った。
【0073】
(研磨品評価項目)
銅研磨速度:上記で作製した各研磨液(A)〜(N)を研磨布上に供給しながら上記パターン無しシリコン基板を上記研磨条件により60秒間研磨した。研磨前後での銅膜厚差を電気抵抗値から換算して求めた。結果を表1に示す。
【0074】
ディッシング量:上記で作製した各研磨液(A)〜(N)を研磨布上に供給しながら上記パターン付きシリコン基板を上記研磨条件により研磨した。なお、研磨はウエハ上から余剰の銅が完全に除去されてからオーバー研磨(追加研磨)として30秒行った。接触式段差計(Veeco製DECKTAK V200−Si)を用いて、絶縁膜部に対する配線金属部の膜減り量を求めた。結果を表1に示す。
【0075】
なお、CMP処理後の基板の目視、光学顕微鏡観察及び電子顕微鏡観察により研磨傷発生の有無を確認した。その結果、すべての実施例及び比較例において顕著な研磨傷の発生は認められなかった。
【表1】

【0076】
表1に示すように、pHが3.5である比較例1の研磨液(I)は、pHが2.2である実施例1の研磨液(A)またはpHが2.7である実施例2の研磨液(B)と比べてディッシング量が大きいことが分かる。また、pHが3.5である比較例2の研磨液(J)は、pHが2.2である実施例3の研磨液(C)またはpHが2.7である実施例2の研磨液(D)と比べてディッシング量が大きいことが分かる。また、水溶性ポリマの重量平均分子量が7000と小さい比較例3の研磨液(K)は、水溶性ポリマの重量平均分子量が大きい実施例7の研磨液(G)または実施例(8)の研磨液(H)と比べて研磨速度が低くディッシング量も大きいことが分かる。また、pHが2.2で水溶性ポリマを用いない比較例4の研磨液(L)は研磨速度が遅くディッシング量も大きいことが分かる。また、カチオン性ポリマを用いた比較例5の研磨液(M)は研磨速度が遅くディッシング量も大きいことが分かる。また、水溶性ポリマの重量平均分子量が7000と小さい比較例6の研磨液(N)は研磨速度が遅くディッシング量も大きいことが分かる。
これに対し、実施例1〜8の研磨液(A)〜(H)は研磨速度が高く、ディッシング量が小さいことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の酸化剤、酸化金属溶解剤、金属防食剤及び重量平均分子量が8,000以上のアニオン性官能基を有する水溶性ポリマを含有し、pHが1以上3以下であることを特徴とする金属用研磨液。
【請求項2】
前記金属の酸化剤が、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、次亜塩素酸及びオゾン水から選ばれる1種類以上の酸化剤であることを特徴とする請求項1記載の金属用研磨液。
【請求項3】
前記酸化金属溶解剤が、25℃における第一段の酸解離指数が3.7未満である無機酸または有機酸、もしくはその塩から選ばれる1種類以上の酸化金属溶解剤であることを特徴とする請求項1又は2記載の金属用研磨液。
【請求項4】
前記酸化金属溶解剤が、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸、グルタミン酸、シュウ酸、酒石酸、硫酸、硝酸、燐酸、塩酸、ギ酸、乳酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、アミノ酢酸、アミド硫酸及びその塩から選ばれる1種類以上の酸化金属溶解剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属用研磨液。
【請求項5】
前記金属防食剤が、含窒素環状化合物及びイオン性界面活性剤から選ばれる1種類以上の金属防食剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属用研磨液。
【請求項6】
前記アニオン性官能基を有する水溶性ポリマが、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、またはその塩の少なくとも1種類のアニオン性官能基を有する水溶性ポリマであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の金属用研磨液。
【請求項7】
金属用研磨液重量に対して、1重量%未満の研磨粒子を添加してなる請求項1〜6のいずれか一項に記載の金属用研磨液。
【請求項8】
前記研磨粒子が、シリカ、アルミナ、セリア、チタニア、ジルコニア、ゲルマニアから選ばれる1種類以上の研磨粒子であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の金属用研磨液。
【請求項9】
金属用研磨液の研磨対象である被研磨金属が、銅、銅合金及び銅化合物から選ばれる1種類以上の金属であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の金属用研磨液。
【請求項10】
研磨定盤の研磨布上に請求項1〜9のいずれか一項に記載の金属用研磨液を供給しながら、被研磨金属膜を有する基板を研磨布に押圧した状態で研磨定盤と基板を相対的に動かして被研磨金属膜を研磨することを特徴とする被研磨膜の研磨方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−119697(P2012−119697A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−289753(P2011−289753)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【分割の表示】特願2007−552965(P2007−552965)の分割
【原出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】