説明

金属研磨液のろ過脱水方法及びその装置

【課題】シリコンウェハーなどの微粒子固形分を含む金属研磨原液のろ過を、凝集剤などの薬品を一切使用することなく効率的にろ過脱水処理して、脱水ケーキからシリコンとしての再使用を可能とした金属研磨液のろ過脱水方法とその装置を提供すること。
【解決手段】微粒子固形分を含む金属研磨原液を凍結機(4)により凍結し、それを融解機(8)により融解してから、この原液を固液分離機(14)に供給して脱水ケーキとろ過液に分離し、脱水ケーキを系外に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子固形分を含むシリコンウェハーなどの金属研磨原液を脱水ケーキとろ過液に分離する金属研磨液のろ過脱水方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程で発生する、例えばシリコンウェハーなどの微粒子固形分を含む金属研磨原液を脱水ケーキとろ過液に分離処理には、凝集剤などの薬品を添加して沈降、ろ過、脱水して処理を行っていた。
【0003】
ところで、このように原液に薬品を添加して脱水分離処理を行った場合には、薬品が添加されているため、脱水ケーキからシリコンとしての再使用は不可能である。
【0004】
そこで、本発明者等は、凝集剤などの薬品を添加することなく、脱水ケーキとろ過液に脱水ろ過分離して、例えば、シリコンとしての再使用を可能とするにはどうしたらよいか、鋭意研究した結果、金属研磨原液を一旦凍結し、それを融解してからろ過脱水処理を行えば、凝集剤などの不純物が混在しないために、シリコンとして再使用が可能となることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0005】
本発明者等は、シリコンウェハーの研磨原液を一旦凍結し、それを融解してからろ過すると、原液をそのままろ過した場合と比べて、ろ過性がどのように変化するか実験した。
【0006】
先ず、シリコンウェハーの研磨原液を500〔ml〕の樹脂サンプル容器に500〔ml〕と250〔ml〕1本ずつ採取して、これを冷蔵庫において凍結する。
【0007】
次いで、2〔l〕のステンレスビーカーに水を1.2〔l〕入れ、IH調理器で80℃まで加温して温水とし、その中に凍結してあった樹脂サンプル容器を入れて融解する。
【0008】
この融解した液250〔ml〕の内230〔ml〕を採取し、これをサンプル1とした。
【0009】
シリコンウェハーの研磨液を500〔ml〕の樹脂サンプル容器に500〔ml〕と250〔ml〕1本ずつ採取して、これを冷蔵庫において凍結する。
【0010】
次いで、2〔l〕のステンレスビーカーに水を1.2〔l〕入れ、IH調理器で80℃まで加温して温水とし、その中に凍結してあった樹脂サンプル容器をいれて融解する。
【0011】
融解した液250〔ml〕を500〔ml〕のステンレスビーカーに移し、分析用マグスターラーの上に乗せ、フッ化樹脂攪拌棒で20分間(20rpm)攪拌し、攪拌完了後、220〔ml〕を採取し、これをサンプル2とした。
【0012】
シリコンウェハーの研磨原液を500〔ml〕の樹脂サンプル容器に500〔ml〕と250〔ml〕1本ずつ採取して、これを冷蔵庫において凍結する。
【0013】
凍結された250〔ml〕が入っている樹脂サンプル容器を自然融解し、溶けた液230〔ml〕を採取して、これをサンプル3とした。
【0014】
シリコンウェハーの研磨液を原液のまま220〔ml〕採取し、これをサンプル4とした。
【0015】
サンプル1〜4を、図2に示す公知の固液分離機14である加圧脱水ろ過機によって加圧脱水ろ過処理を行い、その特性をテストした。
【0016】
テストの方法として、先ず、ろ過室筒15の上下部を取り外して、フィルターペーパー16をろ過板17の上面に乗せ、フランジ18、19を合わせ、蝶ネジ20により締め付け固定する。
【0017】
次いで、サンプル液をろ過室筒15の中に入れ、上部のクランプ(図示しない。)を取り付けナットにて締め付け固定する。
【0018】
次いで、スイッチを入れて、コンプレッサー21内の圧力が0.3MPa以上になったらエアー入口弁22を開き、ろ過室筒15内の圧力が0.195MPaになるようにレギュレーターを調整する。
【0019】
エアー入口弁22を開にした時点でろ過の開始となり、ろ過液はろ過出口23より外部に排出される。
【0020】
ろ過室筒15内の液が完全に抜けると、エアーがろ過液出口23より出てきてろ過室筒15内の圧力が下がる。この時点でろ過・脱水は完了とし、ろ過開始からここまでの時間を計測する。
【0021】
次いで、エアー入口弁22を閉じてから、エアー抜き弁24を開けてろ過室筒15内の圧力が0MPaになったことを確認してからフランジ18、19を分解した後、フィルターペーパー16上に捕捉された脱水ケーキ25の厚みと重量を測定する。
【0022】
また、固形分の沈澱テストとして、メスシリンダーに原液を100〔ml〕採取し、1時間静置後、2時間静置後の沈澱量を測定した。
【0023】
以上の方法により測定した特性の結果を表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
表1の結果から、原液を凍結・融解した液(サンプル1〜3)は、固形分が5〜8〔ml〕沈澱し、微粒子のみが浮遊している状態であり、原液のままの液(サンプル4)では、0.5〔ml〕が沈殿していたが、大半は沈殿していない状態であった。
【0026】
また、サンプル1〜3は、ろ過・脱水時間〔min〕が短く、脱水ケーキの厚み〔mm〕も厚く、かつ重量〔g〕も重いものであった。
【0027】
以上の結果を総合すると、液中の固形分がろ過困難な微粒子の場合でも、凝集剤などの薬品を使用することなしに、原液を凍結・融解処理することで粒子同士を結合させて大きな粒子を形成させ、またこれによってろ過効率を大きく向上させることができることが立証された。
【0028】
このように凍結・融解処理方法は、脱水性、ろ過性などに優れ、ろ布への付着が少なくて目詰まりが少なく、ろ布からの剥離性がよくて扱い易いものである。
【0029】
そこで、本発明者等は前記のような実験に基づき、冷凍・融解処理の優れた特徴を採用し、本発明を完成させたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明が解決しようとする問題点は、例えばシリコンウェハーなどの微粒子固形分を含む金属研磨原液を脱水ケーキとろ過液に分離処理には、凝集剤などの薬品を添加しなければならず、この薬品を添加した場合には、不純物が混在することとなって、脱水ケーキからシリコンとしての再使用は不可能であるという点である。
【0031】
したがって、本発明の目的は、例えばシリコンウェハーなどの微粒子固形分を含む金属研磨原液を脱水ケーキとろ過液に分離処理する場合に、凝集剤などの薬品を一切使用せずして効率的に処理ができ、その上、脱水ケーキからシリコンとしての再使用が可能である金属研磨液のろ過脱水方法及びその装置を提供することにある。
【0032】
この目的のため、本発明の請求項1に記載の金属研磨液のろ過脱水方法は、微粒子固形分を含む金属研磨原液を凍結し、それを融解してから、この原液を固液分離機に供給して脱水ケーキとろ過液に分離し、脱水ケーキを系外に排出することを特徴とするものである。
【0033】
本発明の請求項2に記載の金属研磨液のろ過脱水方法は、微粒子固形分を含む金属研磨原液を濃縮処理した後、この濃縮原液を凍結し、それを融解してから、この原液を固液分離機に供給して脱水ケーキとろ過液に分離し、脱水ケーキを系外に排出することを特徴とするものである。
【0034】
本発明の請求項3に記載の金属研磨液のろ過脱水装置は、微粒子固形分を含む金属研磨原液を凍結する凍結機と、この凍結された原液を融解する融解機と、この融解された原液を脱水ケーキとろ過液に分離する固液分離機を備えた構成を特徴とするものである。
【0035】
本発明の請求項4に記載の金属研磨液のろ過脱水装置は、微粒子固形分を含む金属研磨原液を濃縮する濃縮機と、この濃縮機により濃縮された原液を凍結する凍結機と、この凍結された原液を融解する融解機と、この融解された原液を脱水ケーキとろ過液に分離する固液分離機を備えた構成を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0036】
請求項1から4に記載の発明によれば、例えば、シリコンウェハーなどの微粒子固形分を含む金属研磨原液の固形分がろ過困難な場合でも、凝集剤などの薬品を一切使用することなしに、原液を凍結・融解処理することで粒子同士を結合させて大きな粒子を形成させ、またこれによってろ過効率を大きく向上させることができ、その上、脱水ケーキからシリコンとしての再使用が可能となる。
【0037】
また、本発明によれば、脱水性、ろ過性などに優れ、ろ布への付着が少なくて目詰まりが少なく、ろ布からの剥離性がよくて扱い易いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下に図面を参照して、本願に係る発明を実施するための最良の形態についてその作用と共に説明する。
【0039】
先ず、例えば、シリコンウェハーなどの微粒子固形分を含む金属研磨原液において、その固形分濃度が高い場合には、図1の概略フローシートに示すように、原液1(配管)は原液槽2に導入され、原液槽2からの原液3(配管)は凍結機4に導入されて凍結処理される。
【0040】
凍結機4は、タンク5と、このタンク5の中において回転する超低温の金属製蒸発ドラム6などを備えた公知のドラム式フレークアイス製氷機であって、原液の入ったタンク5の中で金属製蒸発ドラム6が1回転するたびに、ドラム6の表面で原液が凍結されて、この凍結された原液7が剥がれ落ち、次の融解機8に導入される。
【0041】
融解機8は、公知の一般的なものであって加熱槽9、攪拌手段10などを備え、最初は加熱水を入れた状態の加熱槽9内において攪拌手段10により攪拌されながら融解され、融解した原液11(配管)は融解液受槽12の中に導入される。
【0042】
融解液受槽12からの原液13(配管)は、固液分離機14に導入され、ろ過脱水処理がなされて、ろ過液と脱水ケーキに分離処理される。
【0043】
固液分離機14は、前記の特性テストに用いた加圧脱水ろ過機であって、融解液受槽12からの原液13(配管)はろ過室筒15内に導入され、所定の加圧下においてろ過脱水処理がなされ、脱水ケーキ25は反転ローラー、スクレパーにより剥離されて脱水ケーキ受箱26に排出される。
【0044】
なお、原液1(配管)から脱水ケーキ25の排出までの全工程は自動的に行われ、処理される。
【0045】
図3の概略フローシートは、例えば、シリコンウェハーなどの微粒子固形分を含む金属研磨原液において、その固形分濃度が低い場合に、濃縮機27により濃縮の前処理を施した後、この濃縮原液を凍結機4により凍結し、それを融解機8により融解してから、この原液を固液分離機14に供給して脱水ケーキとろ過液に分離し、脱水ケーキを系外に排出する金属研磨原液のろ過脱水方法とそれの装置である。
【0046】
濃縮機27は、公知の膜ろ過機であって、図4に概略的に示されているように、限外ろ過膜28が内装されたろ過膜モジュール29、循環ポンプ30、逆洗タンク31、逆洗ポンプ32などを含み、原液槽2からの原液3(配管)はろ過膜モジュール29に導入されて、限外ろ過膜28の外側から内側に沿ってろ過され、ろ過水は逆洗タンク31に導入され、逆洗ポンプ32の駆動により再びろ過膜モジュール29に導入されて、限外ろ過膜28の内側から外側に沿ってろ過濃縮され、濃縮液3a(配管)は濃縮槽33に導入される。
【0047】
濃縮槽33からの濃縮された原液3a(配管)は、凍結機4に導入されて凍結され、図1に示されたと同じ工程を経てろ過脱水処理される。
【0048】
よって、図1との対応部分に同一の符号を附すに止め、その説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施例を示す概略フローシーである。
【図2】固液分離機を説明する一部断面の概略説明図である。
【図3】本発明の他例を示す概略フローシーである。
【図4】濃縮機の概略説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 原液
4 凍結機
8 融解機
14 固液分離機
27 濃縮機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子固形分を含む金属研磨原液を凍結し、それを融解してから、この原液を固液分離機に供給して脱水ケーキとろ過液に分離し、脱水ケーキを系外に排出することを特徴とする金属研磨液のろ過脱水方法。
【請求項2】
微粒子固形分を含む金属研磨原液を濃縮処理した後、この濃縮原液を凍結し、それを融解してから、この原液を固液分離機に供給して脱水ケーキとろ過液に分離し、脱水ケーキを系外に排出することを特徴とする金属研磨液のろ過脱水方法。
【請求項3】
微粒子固形分を含む金属研磨原液を凍結する凍結機と、
この凍結された原液を融解する融解機と、
この融解された原液を脱水ケーキとろ過液に分離する固液分離機
を備えた構成を特徴とする金属研磨液のろ過脱水装置。
【請求項4】
微粒子固形分を含む金属研磨原液を濃縮する濃縮機と、
この濃縮機により濃縮された原液を凍結する凍結機と、
この凍結された原液を融解する融解機と、
この融解された原液を脱水ケーキとろ過液に分離する固液分離機
を備えた構成を特徴とする金属研磨液のろ過脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−297667(P2009−297667A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156162(P2008−156162)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(500374397)三協技研工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】