説明

金属窒化物の選択的なウェットエッチング

【課題】本発明は、過酸化水素と、水酸化有機オニウムと、酸とを含むウェットエッチング組成物に関する。
【解決手段】本発明は、シリコン、酸化シリコン、ガラス、PSG、BPSG、BSG、酸窒化シリコン、窒化シリコン及び酸炭化シリコンの1つ又は複数、それらの組み合わせ及び混合物、並びに/又はフォトレジスト材料を含む周囲構造に対して選択的に金属窒化物をウェットエッチングする方法であって、過酸化水素と、水酸化有機オニウムと、有機酸とを含むウェットエッチング組成物を準備する工程と、周囲構造に対して選択的に金属窒化物をエッチングするのに効果的な時間及び温度で、ウェットエッチング組成物にエッチングされる金属窒化物を曝露させる工程とを含む、金属窒化物をウェットエッチングする方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガラス、BPSG、BSG、二酸化シリコン、窒化シリコン及びフォトレジストから成る周囲構造に対して選択的な、窒化チタン、窒化タングステン、窒化タンタル、窒化ハフニウム及び窒化ジルコニウム、並びにそれらの混合物等の金属窒化物のウェットエッチングに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、リソグラフィプロセスは以下の工程から構成される。第一に、フォトレジスト(PR)材料は、スピンコーティング等の好適なプロセスによってウエハ表面上に塗布される。次に、PR層は選択的に、紫外光、電子又はX線等の放射線に露光され、露光領域は、露光用具、マスク又はコンピュータデータによって決定される。露光後、PR層は、PR層の不要な領域を消去する現像にさらされ、下層の対応領域を露出させる。レジストのタイプに応じて、現像段階は、露光領域又は非露光領域を消去し得る。レジスト材料を含まない領域は最上部に残り、その後、アディティブ法又はサブトラクティブ法を行い、基板上への材料の選択的な堆積又は除去が可能になる。例えば、金属窒化物等の材料を除去することができる。
【0003】
エッチングは、現像後にPRによって保護されていない下層材料の領域を除去するプロセスである。エッチングプロセスが行われる速度は、エッチング速度として知られている。エッチングプロセスが同一速度で全方向に進行する場合、エッチングプロセスは等方性であると言える。また、エッチングプロセスが一方向にしか進行しない場合は、異方性である。ウェットエッチングプロセスは一般に、等方性である。
【0004】
あらゆるエッチングプロセスにおける重視すべき事柄は、エッチング剤の「選択性」である。エッチング剤は、除去される材料を侵食するだけに留まらない場合があり、マスク若しくはPR及び/又は基板(エッチングされる材料下の面)も同様に侵食してしまうおそれがある。エッチング剤の「選択性」は、マスク及び基板材料を無傷の状態に維持しながら、エッチングするよう意図される材料のみを除去するエッチング剤の性能を表わす。
【0005】
選択性、Sは、異なる材料に対するエッチング剤の異なるエッチング速度の間の比率として測定される。したがって、良好なエッチング剤は、マスク(Sfm)及び基板(Sfs)の両方に対して高選択性の値を有する必要がある。すなわち、エッチングされる膜に対するエッチング速度が、マスク及び基板の両方に対するエッチング速度よりも著しく速くなければならない。
【0006】
金属窒化物、例えば窒化チタン(TiN)のエッチングは従来、APM又はSC−1として知られている水酸化アンモニウムと過酸化水素との水系混合物、又は他の材料に対する様々なエッチング選択性を有するSPMとして知られている硫酸と過酸化水素との混合物を用いて行われている。一般的なAPM溶液は、例えば、NHOH:H:HO=1:1:5の比を含む。一般的なSPM溶液は、例えば、HSO:H=1:5の比を含む。このような配合物は、TiN及び他の金属窒化物をエッチングするが、PRも膨潤及び/又はエッチングし、またウエハ表面へのPRの付着を低下させ、他の周囲構造もエッチングしてしまうきらいがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの標準的な従来のウェットエッチング剤を用いることによる長年にわたる問題は、選択性がないことである。これらのウェットエッチング剤は周囲構造を侵食することが多く、エッチング、又は特に或る種のフォトレジストの場合には、膨潤、及び/又はフォトレジストが塗布される基板への付着の低下が起こる。このような選択性の欠如は、クリティカルディメンションが減少し続けるため次第に許容できない状態になる。
【0008】
選択的なウェットエッチング溶液は、最先端の半導体技術のための素子設計及び製造にとって重要なものである。このようなプロセス薬品が、新たな素子の構築及びクリティカルディメンションの減少の両方に関して必要とされている。したがって、フォトレジスト、シリコン、ガラス、酸化シリコン、窒化シリコン及び他の材料等の周囲構造に対して選択的な金属窒化物の除去のための、より選択性の大きいウェットエッチング剤及びそれらの使用方法の需要が特に半導体産業に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[概要]
本発明の一実施の形態によれば、過酸化水素と、水酸化有機オニウムと、酸とを含むウェットエッチング組成物が提供される。
【0010】
本発明の別の実施の形態によれば、酸化シリコン、ガラス、PSG、BPSG、BSG、酸窒化シリコン、窒化シリコン及び酸炭化シリコンの1つ又は複数、並びにそれらの組み合わせ混合物を含む周囲構造に対して選択的に金属窒化物をウェットエッチングする方法であって、
過酸化水素と、水酸化有機オニウムと、酸とを含むウェットエッチング組成物を準備する工程と、
周囲構造に対して選択的に金属窒化物をエッチングするのに効果的な時間及び温度で、ウェットエッチング組成物にエッチングされる金属窒化物を曝露させる工程と
を含む、ウェットエッチングする方法が提供される。
【0011】
したがって、本発明は、フォトレジスト、ガラス、多結晶性シリコン及び単結晶性シリコンの両方、酸化シリコン、窒化シリコン、並びに他の材料等の周囲構造に対して選択的な金属窒素物の選択的な除去のための、選択的なウェットエッチング剤及びそれらの使用方法を提供するという課題に取り組む。
【0012】
当然のことながら、本明細書中に記載のプロセス工程及び構造は、半導体素子又は他の素子を製造する際に用いられるようなエッチングプロセスを実施するための完全なシステム又はプロセスフローを形成するものではない。本発明は、当該技術分野で現在用いられているファブリケーション技法及び装置と併せて実施することができ、通常活用される材料、装置及びプロセス工程の限られたものが、本発明の理解に必要であるとして含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[詳細な説明]
本明細書中で使用される場合、「組成物」は、組成物を含む材料の混合物、並びに組成物を含む材料同士の反応又はそれらの分解によって生成される生成物を含む。
【0014】
当該技術分野において既知であるように、直接的な関係はないが、一般的にウェットエッチングでは、エッチング速度が増大するにつれてエッチング選択性が低下する。生産効率を維持するために高エッチング速度を得ることは重要であるが、高選択性を得ることはそれと同等かそれ以上に重要である。したがって、これらの2つの所望特性の均衡をとる必要がある。したがって、本発明は、フォトレジスト、ガラス、多結晶性シリコン及び単結晶性シリコンの両方、酸化シリコン、窒化シリコン、並びに他の材料等の周囲構造に対して選択的な金属窒化物のエッチング速度とエッチング選択性との良好な均衡を有するウェットエッチング組成物を提供する。
【0015】
ウェットエッチング組成物
本発明の一実施形態によれば、過酸化水素と、水酸化有機オニウムと、酸とを含むウェットエッチング組成物が提供される。
【0016】
過酸化水素
過酸化水素は、3体積%〜98体積%の範囲の濃度で、ほとんどの場合30体積%〜50体積%の濃度で従来から市販されている。本発明の組成物中の過酸化水素の濃度は、ウェットエッチング組成物の0.1体積%〜約20体積%の範囲をとり得る。適切な希釈剤は、提供される濃度及びウェットエッチング組成物中に使用されるのに望ましい濃度に基づいて当業者によって決定され得る。一実施形態において、過酸化水素の濃度は約3体積%〜約15体積%の範囲であり、別の実施形態では、過酸化水素の濃度は約5体積%〜約12体積%の範囲であり、別の実施形態では、過酸化水素の濃度は約7体積%〜約10体積%であり、一実施形態では、過酸化水素の濃度は約8体積%であり、濃度は全てウェットエッチング溶液の全体積に基づく。
【0017】
有機オニウム化合物
本発明の有用な有機オニウム化合物としては、水酸化第四級アンモニウム、水酸化第四級ホスホニウム、水酸化第三級スルホニウム、水酸化第三級スルホキソニウム及び水酸化イミダゾリウム等の、有機オニウム塩及び水酸化有機オニウムが挙げられる。本明細書中で使用される場合、任意の水酸化オニウムの開示または言及は、ハロゲン化物、炭酸塩、フマル酸塩及び硫酸塩等の対応する塩を含むことを理解されたい。理解されるように、このような塩は、pHに応じて水酸化物の代わりに使用することができる。
【0018】
一実施形態において、水酸化オニウムは一般的に、式I:
A(OH) (I)
(式中、Aはオニウム基であり、xはAの価数に等しい整数である)で特徴付けられ得る。オニウム基の例としては、アンモニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基、スルホキソニウム基、及びイミダゾリウム基が挙げられる。一実施形態において、水酸化オニウムは、水、アルコール若しくは他の有機液体、又はそれらの混合物等の溶液に十分に可溶性であり、有用なウェットエッチング速度を可能にするものとする。
【0019】
一実施形態において、水酸化第四級アンモニウム及び水酸化第四級ホスホニウムは、式II:
【0020】
【化1】

【0021】
(式中、Aは窒素原子又はリン原子であり、R、R、R及びRはそれぞれぞれ独立して、1〜約20個若しくは1〜約10個の炭素原子を含有するアルキル基、2〜約20個若しくは2〜約10個の炭素原子を含有する、ヒドロキシアルキル基又はアルコキシアルキル基、アリール基又はヒドロキシアリール基であるか、又はAと共にR及びRは、複素環基を形成してもよいが、但し、複素環基がC=A基を含有する場合、Rは2次結合である)で特徴付けられ得る。
【0022】
アルキル基R〜Rは直鎖又は分岐鎖であってもよく、1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、ヘキサデシル基及びオクタデシル基が挙げられる。R、R、R及びRはまた、ヒドロキシエチル及びヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシフェニル等の種々の異性体等の2〜5個の炭素原子を含有するヒドロキシアルキル基であってもよい。一実施形態において、R、R、R及びRは独立して、1〜約4個又は5個の炭素原子を含有するアルキル基及び/又はヒドロキシアルキル基である。アルコキシアルキル基の具体例としては、エトキシエチル、ブトキシメチル、ブトキシブチル等が挙げられる。種々のアリール基及びヒドロキシアリール基の例としては、フェニル、ベンジル、及びベンゼン環が1つ又は複数のヒドロキシ基で置換された同等の基が挙げられる。
【0023】
一実施形態において、本発明によって使用され得る第四級オニウム塩は、式III:
【0024】
【化2】

【0025】
(式中、A、R、R、R及びRは式IIで定義した通りであり、Xは酸のアニオンであり、yはXの価数に等しい数である)で特徴付けられ得る。酸のアニオンの例としては、重炭酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩等が挙げられる。
【0026】
一実施形態において、本発明のプロセスによって使用され得る第四級アンモニウム化合物(水酸化物及び塩)は、式IV:
【0027】
【化3】

【0028】
(式中、R、R、R、R及びyは式IIで定義した通りであり、Xは水酸化物アニオン又は酸のアニオンである)で表わされ得る。一実施形態において、R〜Rは、1〜約4個又は5個の炭素原子を含有するアルキル基及び/又はヒドロキシアルキル基である。水酸化アンモニウムの具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−オクチルアンモニウム、水酸化メチルトリエチルアンモニウム、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム、水酸化メチルトリプロピルアンモニウム、水酸化メチルトリブチルアンモニウム、水酸化セチルトリメチルアンモニウム、水酸化トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、水酸化トリメチルメトキシエチルアンモニウム、水酸化ジメチルジヒドロキシエチルアンモニウム、水酸化メチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、水酸化フェニルトリメチルアンモニウム、水酸化フェニルトリエチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリエチルアンモニウム、水酸化ジメチルピロリジニウム、水酸化ジメチルピペリジニウム、水酸化ジイソプロピルイミダゾリニウム、水酸化N−アルキルピリジニウム等が挙げられる。一実施形態において、本発明によって使用される水酸化第四級アンモニウムは、TMAH及びTEAHである。式IVで表される第四級アンモニウム塩は、水酸化物アニオンが、例えば硫酸アニオン、塩素アニオン、炭酸アニオン、フマル酸アニオン、リン酸アニオン等で置き換えられる以外、上記の水酸化第四級アンモニウムと類似のものであり得る。例えば、塩は、塩化テトラメチルアンモニウム、硫酸テトラメチルアンモニウム(y=2)、臭化テトラメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸1−メチル−2−ブチルイミダゾリウム、ヘキサフルオロリン酸n−ブチルピリジニウム等であってもよい。
【0029】
本発明によって使用され得る式III(式中、A=P)の代表的な第四級ホスホニウム塩の例としては、水酸化テトラメチルホスホニウム、水酸化テトラエチルホスホニウム、水酸化テトラプロピルホスホニウム、水酸化テトラブチルホスホニウム、水酸化トリメチルヒドロキシエチルホスホニウム、水酸化ジメチルジヒドロキシエチルホスホニウム、水酸化テトラデシルトリブチルホスホニウム、水酸化メチルトリヒドロキシエチルホスホニウム、水酸化フェニルトリメチルホスホニウム、水酸化フェニルトリエチルホスホニウム、及び水酸化ベンジルトリメチルホスホニウム等、並びに、ハロゲン化物、硫酸塩、炭酸塩及びリン酸塩を含む対応するアニオン(上記のようなハロリン酸塩、及び本明細書中に開示されている他のアニオンを含む)が挙げられる。
【0030】
一実施形態では、より大きい有機基を含むより大きいオニウムカチオンが、フォトレジスト材料とのより高い親和性(compatibility)を提供する。一実施形態では、より小さいオニウムカチオンが、より速い金属窒化物エッチング速度を提供する。一実施形態では、ベンジルトリメチルアンモニウム等の非対称なオニウムカチオンが、フォトレジスト親和性と許容可能な金属窒化物エッチング速度との良好な均衡を提供する。したがって、一実施形態において、水酸化有機オニウムは、有機基の1つ又は複数が平均して少なくとも約4個の炭素原子、一実施形態では少なくとも約6個の炭素原子、別の実施形態では少なくとも約8個の炭素原子を含有する非対称なオニウムカチオンを含む。
【0031】
別の実施形態において、本発明によって使用され得る水酸化第三級スルホニウム及び第三級スルホニウム塩は、式V
【0032】
【化4】

【0033】
(式中、R、R及びR、X、並びにyは式IIIに定義される通りである)で表わされ得る。
【0034】
式Vで表される第三級スルホニウム化合物の例としては、水酸化トリメチルスルホニウム、水酸化トリエチルスルホニウム、水酸化トリプロピルスルホニウム等、及びハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩等の対応する塩が挙げられる。
【0035】
別の実施形態において、本発明によって使用され得る水酸化第三級スルホキソニウム及び第三級スルホキソニウム塩は、式VI:
【0036】
【化5】

【0037】
(式中、R、R及びR、X、並びにyは式IIIに定義される通りである)で表わされ得る。
【0038】
式Vで表される第三級スルホキソニウム化合物の例としては、水酸化トリメチルスルホキソニウム、水酸化トリエチルスルホキソニウム、水酸化トリプロピルスルホキソニウム等、及びハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩等の対応する塩が挙げられる。
【0039】
別の実施形態において、本発明によって使用され得る水酸化イミダゾリウム及びイミダゾリウム塩は、式VII:
【0040】
【化6】

【0041】
(式中、R及びRは式IIで定義される通りであり、Xは酸のアニオンである)で表わされ得る。理解されるように、式(VII)において、また上記の式(I)〜式(VI)において、XがSO−2等の二塩基酸のアニオンである場合、化学量論比は、例えば、2Xの代わりに二塩基酸アニオンに応じて調節され、ここでは1つのXしか存在しないであろう。また、XがPO−3等の三塩基酸のアニオンの場合、対応する化学量論比の調節が行われる。
【0042】
水酸化オニウムは市販されている。さらに、水酸化オニウムは、対応するハロゲン化オニウム、炭酸オニウム、フマル酸オニウム及び硫酸オニウム等の対応するオニウム塩から調製することができる。種々の調製方法は、米国特許第4,917,781号(Sharifian他)及び同第5,286,354号(Bard他)(これらは参照により本明細書に援用される)に記載されている。水酸化オニウムを得る又は調製する方法についての特別な限定はない。
【0043】
一実施形態において、水酸化有機オニウムは、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化メチルトリフェニルアンモニウム、水酸化フェニルトリメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、水酸化メチルトリエタノールアンモニウム、水酸化テトラブチルホスホニウム、水酸化メチルトリフェニルホスホニウム、水酸化トリヘキシルテトラデシルホスホニウム、水酸化トリブチルテトラデシルホスホニウム、[(CHNCHCH(OH)CHN(CH2+[OH、水酸化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、水酸化トリメチルスルホニウム、水酸化トリメチルスルホキソニウム、水酸化トリメチル(2,3−ジヒドロキシプロピル)アンモニウム、[(C)CHN(CHCHCH(OH)CHN(CHCHCH(OH)CHN(CHCH−CH(OH)CHN(CHCH(C)]4+[OH、及び[(CHNCHCH(OH)CHOH][OH]、並びに二水酸化ヘキサメトニウムの1つ又は複数を含む。一実施形態において、水酸化オニウムは水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムである。
【0044】
本発明の組成物中の水酸化オニウムの濃度は、ウェットエッチング組成物の0.1重量%〜約20重量%の範囲をとり得る。適切な希釈剤は、提供される濃度及びウェットエッチング組成物中に使用されるのに望ましい濃度に基づいて当業者によって決定され得る。一実施形態において、水酸化オニウムの濃度は約0.5重量%〜約15重量%の範囲であり、別の実施形態では、水酸化オニウムの濃度は約2重量%〜約10重量%の範囲であり、別の実施形態では、水酸化オニウムの濃度は約3重量%〜約8重量%であり、一実施形態では、水酸化オニウムの濃度は約4重量%であり、濃度は全てウェットエッチング溶液の総重量に基づく。
【0045】

任意の好適な酸を使用することができる。一実施形態において、酸は有機酸である。別の実施形態において、酸は無機酸である。酸は、これらの酸の2つ以上から成る混合物又は組み合わせを含み得る。
【0046】
一実施形態において、酸は二座配位以上のキレート化剤以外のものである。一実施形態において、酸は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、又はエチレンジアミン、ジエチレントリアミン及び高級多アミン多酢酸化合物に基づく類似のキレート化剤以外のものである。
【0047】
有機酸の典型例としては、フマル酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、エチルメチル酢酸、トリメチル酢酸、グリコール酸、ブタンテトラカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、没食子酸、ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、サリチル酸、安息香酸及び3,5−ジヒドロキシ安息香酸等が挙げられ得る。これらの酸の2つ以上から成る混合物を使用してもよい。
【0048】
一実施形態において、有機酸はクエン酸を含む。一実施形態において、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸はアルカリ性過酸化物組成物を安定化して、それにより浴寿命を延ばすと考えられる。
【0049】
無機酸としては、ホスホン酸、ホスフィン酸、リン酸又は亜リン酸が挙げられ得る。
【0050】
酸としては、例えば、ニトリロトリメチレンホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、フェニルホスホン酸、メチルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、及びホスホン酸、リン酸又は亜リン酸に基づく類似の酸が挙げられ得る。
【0051】
アルキル置換基がC〜約C20の範囲であってもよく、アリール置換基(置換前)がフェニル若しくはナフチル又は炭素数がより大きくてもよい、アルキル、アリール、アラルキル及びアルカリールスルホン酸を含む有機スルホン酸、又はこれらの2つ以上から成る混合物が、酸成分として好適に用いられ得る。アルキルスルホン酸としては、例えばメタンスルホン酸が挙げられる。アリールスルホン酸としては、例えばベンゼンスルホン酸が挙げられる。アラルキルスルホン酸としては、例えばベンジルスルホン酸が挙げられる。アルカリールスルホン酸としては、例えばトルエンスルホン酸が挙げられる。
【0052】
組成物中に含まれ得る例示的な無機酸及び有機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、臭化水素酸、過塩素酸、フルオロホウ酸、フィチン酸、亜リン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリメチレンホスホン酸、メチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、N−(2−ヒドロキシエチル)−N’−(2−エタンスルホン酸)(HEPES)、3−(N−モルフォリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、トルエンスルホン酸、ニトリロ三酢酸、マレイン酸、フタル酸、乳酸、アスコルビン酸、没食子酸、スルホ酢酸、2−スルホ安息香酸、スルファニル酸、フェニル酢酸、ベタイン、クロトン酸、レブリン酸、ピルビン酸、トリフルオロ酢酸、グリシン、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、アジピン酸、及びそれらの2つ以上から成る混合物若しくは組み合わせが挙げられる。
【0053】
本発明の組成物中の酸の濃度は、ウェットエッチング組成物の0.1重量%〜約10重量%の範囲をとり得る。適切な希釈剤は、提供される濃度及びウェットエッチング組成物中に使用されるのに望ましい濃度に基づいて当業者によって決定され得る。一実施形態において、酸の濃度は約0.2重量%〜約5重量%の範囲であり、別の実施形態では、酸の濃度は約0.5重量%〜約4重量%の範囲であり、別の実施形態では、酸の濃度は約1重量%〜約3重量%であり、一実施形態では、酸の濃度は約2重量%であり、濃度は全てウェットエッチング溶液の総重量に基づく。酸の濃度は、酸の強度(すなわちpK)、溶解性及び錯化力等のファクターに基づいて調節してもよい。
【0054】
ウェットエッチング組成物のpH
本発明によるウェットエッチング組成物のpHは、約5〜約10の範囲のpH、一実施形態では、約6〜約9.5の範囲のpH、別の実施形態では、約7〜約9の範囲のpHであってもよく、一実施形態において、pHは約9である。pHは必要な場合には、酸の選択、酸の濃度、水酸化オニウムの濃度を操作することによって、また、必要であれば当業者に理解されるような好適なバッファを添加することによって調節することができる。
【0055】
フォトレジスト
本発明は、多種多様なフォトレジスト材料、例えば、限定するものではないが、ノボラック、メタクリレート、アクリレート、スチレン、スルホン及びイソプレンと共に用いることができる。例示的なフォトレジスト材料としては、ノボラック樹脂とジアゾナフタキノンと溶媒(例えば、n−ブチルアルコール又はキシレン)とを含むもの等のポジ型フォトレジスト、及び環化合成ゴム樹脂とビスアリールアジドと芳香族溶媒とを含むもの等のネガ型フォトレジスト材料が挙げられる。一実施形態において、好適なフォトレジストとしては、ネガ型フォトレジスト、例えば、MacDermid Aquamer CFI若しくはMI、du Pont Riston 9000若しくはdu Pont Riston 4700、又はShipley UV5及びTOK DP019が挙げられる。ポジ型フォトレジストとしては、AZ3312、AZ3330、Shipley 1.2L及びShipley 1.8Mが挙げられる。ネガ型フォトレジストとしては、nLOF 2020及びSU8が挙げられる。さらなる好適なレジストの例としては、Hoechst CelaneseからのAZ 5218、AZ 1370、AZ 1375又はAZ P4400;及びOCGからのCAMP 6;Hoechst CelaneseからのDX 46;ShipleyからのXP 8843;及びJSR(Japan)からのJSR/NFR−016−D2が挙げられる。好適なフォトレジストは、米国特許第4,692,398号、同第4,835,086号、同第4,863,827号及び同第4,892,801号に記載されている。好適なフォトレジストは、AZ−4620として、Clariant Corporation(Somerville,
N. J.)から購入することができる。他の好適なフォトレジストとしてはポリメチルメタクリレート(PMMA)の溶液、例えば、クロロベンゼン(9重量%)に溶解する496,000の分子量を有するポリメチルメタクリレートから成る、OLIN HUNT/OCG(West
Paterson, N. J. 07424)からの496k PMMAとして入手可能な液体フォトレジスト;P(MMA−MAA)(ポリメチルメタクリレート−メタクリル酸)等の(メタ)アクリル系コポリマー;PMMA/P(MMA−MAA)ポリメチルメタクリレート/(ポリメチルメタクリレート−メタクリル酸)が挙げられる。フォトレジストがポジ型フォトレジストから成るか又はネガ型フォトレジストから成るかにかかわらず、存在しているか又はまだ現像されていないいずれかの任意の好適なフォトレジストが考えられる。
【0056】
金属窒化物をウェットエッチングする方法
本発明の別の実施形態によれば、酸化シリコン、ガラス、リン酸シリケートガラス(PSG)、ホウリン酸シリケートガラス(BPSG)、ホウケイ酸シリケートガラス(BSG)、酸窒化シリコン、窒化シリコン及び酸炭化シリコンの1つ又は複数、又はそれらの組み合わせ若しくは混合物を含む周囲構造に対して選択的に金属窒化物をウェットエッチングする方法であって、
ウェットエッチング組成物を準備する工程であって、当該ウェットエッチング組成物が、過酸化水素と、水酸化有機オニウムと、有機酸とを含む、ウェットエッチング組成物を準備する工程と、
周囲構造に対して選択的に金属窒化物をエッチングするのに効果的な時間及び温度で、ウェットエッチング組成物にエッチングされる金属窒化物を曝露させる工程と
を含む、金属窒化物をウェットエッチングする方法が提供される。以下に、当該方法の実施形態を実施するための例示的な条件を記載する。さらなる詳細及び変更形態は、当業者によって判断することができる。
【0057】
処理時間
本発明の実施形態による金属窒化物をウェットエッチングする方法を実施するのに必要とされる時間は、エッチングされる金属窒化物の性質(identity)、エッチングされる金属窒化物の厚み、金属窒化物を堆積させる方法(これは、金属窒化物の硬度、多孔性、及びテクスチャー等の特性に影響を与える可能性がある)、過酸化物、水酸化オニウム及び有機酸の濃度、ウェットエッチング組成物の攪拌又は混合の温度及び速度、処理されるウエハ又は部材の量及び/又はサイズに対するウェットエッチング組成物の体積を含む、当業者に既知のファクター、並びに金属窒化物をエッチングする従来方法においてエッチング速度に影響を与えることが知られている類似のファクターに基づき好適に選択され得る。一実施形態において、金属窒化物に対するウェットエッチング組成物の曝露時間は、約1分〜約60分の範囲であり、別の実施形態では、時間は約2分〜約40分の範囲であり、別の実施形態では、約5分〜約20分の範囲であり、さらに別の実施形態では約7〜約15分の範囲である。一実施形態において、時間は約30秒〜約4分の範囲である。
【0058】
処理温度
本発明の実施形態による金属窒化物をウェットエッチングする方法を実施するための浴温又は溶液温度は、エッチングされる金属窒化物の性質、エッチングされる金属窒化物の厚み、金属窒化物を堆積させる方法(これは、金属窒化物の硬度、多孔性、及びテクスチャー等の特性に影響を与える可能性がある)、過酸化物、水酸化オニウム及び有機酸の濃度、ウェットエッチング組成物の攪拌又は混合の速度、処理されるウエハ又は部材の量及び/又はサイズに対するウェットエッチング組成物の体積、エッチングのための割当時間を含む当業者に既知のファクター、並びに金属窒化物をエッチングする従来方法においてエッチング速度に影響を与えることが知られている類似のファクターに基づき好適に選択され得る。一実施形態において、金属窒化物をウェットエッチングするためのウェットエッチング組成物の浴温又は溶液温度は約20℃〜約60℃の範囲であり、別の実施形態では、浴温又は溶液温度は約30℃〜約60℃の範囲であり、別の実施形態では、浴温又は溶液温度は約35℃〜約50℃の範囲であり、さらに別の実施形態では、浴温又は溶液温度は約40℃〜約45℃の範囲である。
【0059】
エッチング速度
エッチング速度は、当業者によって、時間、温度、有機酸の性質、水酸化有機オニウムの性質及びエッチングされる金属窒化物の性質等の既知のファクター、及びエッチングされる金属窒化物の周囲の特定材料について達成される選択性、並びに当業者が知っているか、又は当業者により容易に確定される他のファクターに基づき好適に選択し得る。
【0060】
一実施形態において、金属窒化物に対するエッチング速度は、1分当たり約5〜約200オングストローム(Å)(Å/分)の範囲であり、別の実施形態では、金属窒化物に対するエッチング速度は約10〜約100Å/分の範囲であり、別の実施形態では、金属窒化物に対するエッチング速度は約20〜約70Å/分の範囲であり、別の実施形態では、金属窒化物に対するエッチング速度は約30〜約50Å/分の範囲である。
【0061】
一実施形態において、窒化チタン(TiN)に対するエッチング速度は約20〜約70Å/分の範囲であり、別の実施形態では、TiNに対するエッチング速度は約30〜約50Å/分の範囲である。
【0062】
一実施形態において、窒化タングステンに対するエッチング速度は、約5〜約50Å/分、一実施形態では約10〜約40Å/分の範囲である。
【0063】
一実施形態において、窒化タンタルに対するエッチング速度は、約2〜約30Å/分、一実施形態では約5〜約25Å/分の範囲である。
【0064】
一実施形態において、窒化ハフニウムに対するエッチング速度は、約2〜約30Å/分、一実施形態では約5〜約25Å/分の範囲である。
【0065】
一実施形態において、窒化ジルコニウムに対するエッチング速度は、約2〜約30Å/分、一実施形態では約5〜約25Å/分の範囲である。
【0066】
選択性
一実施形態において、本明細書中のプロセスに記載の本発明によるウェットエッチング組成物を用いることによって得られる選択性は、約2:1〜約200:1の範囲である。当該技術分野において既知であるように、選択性が高いほど、より良好である。一実施形態において、選択性は、約10:1〜約180:1、別の実施形態では約20:1〜約65:1の範囲である。既知であるように、選択性は材料によって様々な値をとるため、選択性は、比較される2つ以上の材料に対して示されることが多い。すなわち、フォトレジスト又は他の材料(例えば酸化シリコン)等の周囲材料に対する金属窒化物、例えばTiNに関するエッチング剤の選択性は、重要な選択性測定値である。したがって、上記の選択性のそれぞれは、ガラス、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン又は他の周囲材料の1つ又は複数に対する金属窒化物に関するものであり得る。選択性は、各材料の相対エッチング速度を比較することによって、又は目的の材料のエッチング速度をフォトレジストの膨潤等の別の測定値と比較することによって測定され得る。
【0067】
一実施形態において、本発明は、エッチング速度及び膨潤速度の両方が、1分当たりの厚み(オングストローム(Å))変化(Å/分)として測定される、フォトレジストの膨潤に対する窒化チタンの除去に関する選択性を提供し、これは、2:1〜約200:1の範囲をとり得る。一実施形態において、フォトレジストの膨潤に対する窒化チタンの除去に関する選択性は、約10:1〜約180:1の範囲であり、別の実施形態では、フォトレジストの膨潤に対する窒化チタンの除去に関する選択性は、約20:1〜約65:1の範囲である。
【0068】
一実施形態において、約30〜50Å/分のエッチング速度で、約200〜300Åの範囲の厚みを有する金属窒化物をエッチングした後で、フォトレジストの膨潤は最初の厚みの約5%未満であり、別の実施形態では、これらの条件下で、フォトレジストの膨潤は最初の厚みの約4%未満であり、別の実施形態では、これらの条件下で、フォトレジストの膨潤は最初の厚みの約3%未満であり、別の実施形態では、これらの条件下で、フォトレジストの膨潤は最初の厚みの約2%未満であり、別の実施形態では、これらの条件下で、フォトレジストの膨潤は最初の厚みの約1%未満である。
【0069】
例示的な実験手順
以下は、本発明の実施形態を実施するための例示的なプロセスであり、例示的且つ非限定的な目的のために提供される。
膜のタイプ
シリコン上の10000〜15000ÅのBPSG
1000ÅのSiO上の200〜300ÅのTiN
シリコン上の10000〜15000Åのソフトベークしたノボラックフォトレジスト
【0070】
TiN、BPSG及びフォトレジストウエハを、1インチ×1インチの正方形切片に切断する。この切片をプラスチックビーカー内の25〜50℃のエッチング剤溶液中に浸漬する。ウエハ切片を1〜4分間処理した後、それらを脱イオン(DI)水で洗浄し、窒素を吹き付けて乾燥させる。処理の前後の膜厚を、NANOSPEC 210を用いるフォトレジスト及びBPSGウエハ切片に関する反射光測定によって、またTencor RS35cを用いるTiNに関する耐性によって求める。また、膜を光学顕微鏡によって検査して、TiNに関してエッチングの均質性及びレジストウエハ切片に関して接着性を評価する。浴寿命試験に関する条件は、45℃の浴温、408gのサンプル、緩速攪拌及び通気を伴う開放式カップ(約9:7アスペクト比の容器)である。浴寿命サンプルのTiNローディング(TiN loading)は、既知の表面積を有するウエハ切片を408gのエッチング剤中で処理して、2時間毎に合計8時間、80ÅのTiNを除去する(約3〜4分のプロセス)ことによって行うことができる。TiN、BPSG及びレジスト上のエッチング試験は、実験中に定期的に行ってもよい。図1中のTiN−ローディング係数(ppm)は、TiN膜密度を5.2g/cmとして、1つの配合物、例えばSFE−1022にローディング(溶解)されるTiNの量を示す。200mmウエハ表面の25%を被覆している80ÅのTiNが除去されると想定すると、(除去されるTiN(ppm)の)浴ローディング試験における各ローディングサイクルは、8ガロンの浸漬槽中で処理される25個の(200mm)ウエハに相当する。
【0071】
結果:
様々な配合物について、TiN、BPSG及びフォトレジストに関するエッチング速度及び選択性の結果を表1a及び表1bに示す。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
考察
以上の実施例から示されるように、配合物は、TiNエッチング剤についての所望の性能基準、すなわち、30〜50Å/分のTiNエッチング速度及びTiN:レジストの高い選択性(レジストの厚み変化に対するTiNエッチングとして測定される)を示す。BPSG酸化物に対する高い選択性も望ましい。SFE−1022は、一実施形態において40〜50℃で化学処理される水系過酸化物である。
【0076】
図1は、TiN、BPSG及びフォトレジストを含む、サンプルの一例であるSFE−1022のウェットエッチング組成物におけるエッチングに関するグラフであり、45℃におけるレジストの厚み変化対時間(分)を示す(負の符号はエッチングを示し、正の符号は膨潤を示す)。SFE−1022について図1に示されるように、TiNの厚み変化は、浸漬時間と共に増大する。TiNの目的の除去量が80Åである場合、SFE−1022を用いた浸漬時間は、45℃で約3〜4分であろう。図1に示されるように、フォトレジストは、SFE−1022に対する曝露の最初の3分のうちに初期(starting)厚みの約1%未満分だけ膨潤する。比較のために、脱イオン水に浸漬されたときのレジストは、SFE−1022浸漬試験について観察されるものと類似の膨潤挙動を示す。いずれの場合にも、SFE−1022溶液に対する曝露後のレジストの離層又は外観変化(光学顕微鏡によって見られる)は起こらない。理論により縛られるものではないが、1〜10分の短時間にわたるSFE−1022及び水中の浸漬について観察されるわずかな膨潤は、レジストにおける主要な化学変化ではなく、液体と接触することによる小さい相互作用又は界面溶媒和作用を示すとおそらく考えられる。SFE−1022は、従来の水酸化/過酸化水素アンモニウム(例えば、APM又はSC−1)とは異なり、レジスト上でより広範な化学侵食を示すTiNエッチング剤である。
【0077】
組成物温度、例えばSFE−1022の温度の関数としてのレジスト及びTiNの厚み変化は、図2に示されている。図2に示されるように、温度が増大するにつれてTiNの除去される量は増大し、レジストの膨潤はわずかに増大する。レジストの膨潤は依然として、40〜50℃の操作温度においてレジストの厚みの1%未満である。
【0078】
図3は、例えばSFE−1022に関するTiNローディング試験を示し、厚み変化対時間(分)及びTiNローディング(ppm)を示す。図3は、SFE−1022に関する浴寿命試験に基づき、浴安定性を評価する。この条件は、45℃の浴温、408gのサンプル、緩速攪拌及び通気を伴う開放式カップ(約9:7アスペクト比の容器)である。浴寿命サンプルのTiNローディングは、9.5e16Åの表面積を有するウエハ切片を408gのエッチング剤中で処理して、220ÅのTiN厚みを除去する(1サイクル当たりの0.27ppmTiNローディングにより、TiN密度が5.22g/cmであると想定される)ことによって達成され得る。TiN、BPSG及びレジスト上のエッチング試験は、45℃、3分間の条件で実験中に定期的に行われる。ローディング試験により、80ÅのTiNが200mmのウエハの表面の25%にわたって除去されると想定される。その結果、(除去されるTiN(ppm)の)浴ローディング試験における各ローディングサイクルは、8ガロンの浸漬槽中で処理される25個の(200mm)ウエハにおよそ相当する。図3のデータは、TiN、BPSG及びレジストの経時的な厚み変化におけるSFE−1022の性能が実質的に、TiNローディング又は浴寿命に影響を受けないことを示す。
【0079】
本明細書中に記載の任意の数値は、任意の小さい値と任意の大きい値との間で少なくとも2つのユニットに分離される場合、1つのユニットの増分における小さい値から大きい値までの全ての値を含む。例として、成分量又はプロセス変数の値、例えば、温度、圧力及び時間等が、例えば、1〜90、一実施形態では20〜80、別の実施形態では30〜70であると述べられる場合、15〜85、22〜68、43〜51、及び30〜32等が本明細書中に明確に挙げられるように意図されている。1未満の値について、1つのユニットは、適切な場合、0.0001、0.001、0.01又は0.1であるとみなされる。これらは、特に意図されるものの例に過ぎず、挙げられる最小値と最大値との間の数値の全ての可能な組み合わせが、同様に本願に明確に述べられると考えられるものとする。
【0080】
本発明は、或る特定の例示的な実施形態に関して説明したが、本明細書を読む上で多様な変更形態が当業者にとって明らかであることが理解されるであろう。したがって、本明細書中に開示されている本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるこのような変更形態を網羅すると意図されることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施形態によるウェットエッチング組成物の選択性を示すグラフである。
【図2】本発明の実施形態によるウェットエッチング組成物の厚み変化をウェットエッチング組成物温度の関数として示すグラフである。
【図3】本発明の実施形態によるウェットエッチング組成物の寿命/ローディングを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェットエッチング組成物であって、
過酸化水素と、
水酸化有機オニウム又は有機オニウム塩であって、
(a)有機基の1つ又は複数が平均して少なくとも約6個の炭素原子を含有する非対称なオニウムカチオンを含むか、
(b)ホスホニウムカチオン、スルホキソニウムカチオン又はイミダゾリウムカチオンを含むか、又は
(c)[(CHNCHCH(OH)CHN(CH2+[OH、二水酸化ヘキサメトニウム又は[(C)CHN(CHCHCH(OH)CHN(CHCH−CH(OH)CHN(CHCHCH(OH)CHN(CHCH(C)]4+[OHを含む、水酸化有機オニウム又は有機オニウム塩と、
酸であって、
フマル酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、エチルメチル酢酸、トリメチル酢酸、クエン酸、グリコール酸、ブタンテトラカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、又はそれらの2つ以上から成る混合物、
ホスホン酸、ホスフィン酸、リン酸、亜リン酸、又はそれらの2つ以上から成る混合物、
ニトリロトリメチレンホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、フェニルホスホン酸、メチルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、又はそれらの2つ以上から成る混合物、又は
塩酸、硝酸、亜硫酸、臭化水素酸、過塩素酸、フルオロホウ酸、フィチン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリメチレンホスホン酸、メチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、N−(2−ヒドロキシエチル)−N’−(2−エタンスルホン酸)(HEPES)、3−(N−モルフォリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、トルエンスルホン酸、ニトリロ三酢酸、マレイン酸、乳酸、アスコルビン酸、スルホ酢酸、2−スルホ安息香酸、スルファニル酸、フェニル酢酸、ベタイン、クロトン酸、レブリン酸、ピルビン酸、グリシン、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、アジピン酸、及びそれらの2つ以上から成る混合物若しくは組み合わせ
を含む、酸と
を含む、ウェットエッチング組成物。
【請求項2】
シリコン、酸化シリコン、ガラス、PSG、BPSG、BSG、酸窒化シリコン、窒化シリコン及び酸炭化シリコンの1つ又は複数に対して金属窒化物をエッチングするような選択性を有する、請求項1に記載のウェットエッチング組成物。
【請求項3】
フォトレジスト材料の膨潤に対して金属窒化物をエッチングする選択性を有する、請求項1又は2に記載のウェットエッチング組成物。
【請求項4】
前記水酸化有機オニウム又は有機オニウム塩が、水酸化メチルトリフェニルアンモニウム、水酸化フェニルトリメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルホスホニウム、水酸化メチルトリフェニルホスホニウム、水酸化トリヘキシルテトラデシルホスホニウム、水酸化トリブチルテトラデシルホスホニウム、水酸化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、水酸化トリメチルスルホキソニウムの1つ又は複数を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のウェットエッチング組成物。
【請求項5】
前記金属窒化物が、チタン、タングステン、タンタル、ハフニウム、ジルコニウムの窒化物、又は、それらの混合物若しくはそれらの合金の窒化物を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のウェットエッチング組成物。
【請求項6】
ウェットエッチング組成物であって、
過酸化水素と、
水酸化有機オニウム又は有機オニウム塩であって、
(b)ホスホニウムカチオン、スルホキソニウムカチオン又はイミダゾリウムカチオンを含むか、又は
(c)[(CHNCHCH(OH)CHN(CH2+[OH、二水酸化ヘキサメトニウム又は[(C)CHN(CHCHCH(OH)CHN(CHCH−CH(OH)CHN(CHCHCH(OH)CHN(CHCH(C)]4+[OHを含む、水酸化有機オニウム又は有機オニウム塩と、
酸と
を含む、ウェットエッチング組成物。
【請求項7】
シリコン、酸化シリコン、ガラス、PSG、BPSG、BSG、酸窒化シリコン、窒化シリコン及び酸炭化シリコンの1つ又は複数、又はそれらの組み合わせ若しくは混合物、並びに/又はフォトレジスト材料を含む周囲構造(surrounding structures)に対して選択的に金属窒化物をウェットエッチングする方法であって、
ウェットエッチング組成物を準備することであって、該ウェットエッチング組成物が、
過酸化水素と、
TMAH以外の水酸化有機オニウム又は有機オニウム塩と、
酸と
を含む、ウェットエッチング組成物を準備すること、及び
前記周囲構造に対して選択的に前記金属窒化物をエッチングするのに効果的な時間及び温度で、前記ウェットエッチング組成物にエッチングされる金属窒化物を曝露させること
を含み、前記酸が、
フマル酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、エチルメチル酢酸、トリメチル酢酸、クエン酸、グリコール酸、ブタンテトラカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、没食子酸、ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、サリチル酸、安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、
ホスホン酸、ホスフィン酸、リン酸若しくは亜リン酸、又はそれらの2つ以上から成る混合物、
ニトリロトリメチレンホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、フェニルホスホン酸、メチルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、又はそれらの2つ以上から成る混合物、
有機スルホン酸、又は
塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、臭化水素酸、過塩素酸、フルオロホウ酸、フィチン酸、亜リン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリメチレンホスホン酸、メチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、N−(2−ヒドロキシエチル)−N’−(2−エタンスルホン酸)(HEPES)、3−(N−モルフォリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、トルエンスルホン酸、ニトリロ三酢酸、マレイン酸、フタル酸、乳酸、アスコルビン酸、没食子酸、スルホ酢酸、2−スルホ安息香酸、スルファニル酸、フェニル酢酸、ベタイン、クロトン酸、レブリン酸、ピルビン酸、トリフルオロ酢酸、グリシン、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、アジピン酸、及びそれらの2つ以上から成る混合物若しくは組み合わせ
の1つ又は複数を含む、金属窒化物をウェットエッチングする方法。
【請求項8】
前記水酸化有機オニウム又は有機オニウム塩が、水酸化アンモニウム、水酸化ホスホニウム、水酸化スルホニウム、水酸化スルホキソニウム又は水酸化イミダゾリウムの1つ又は複数を含む、請求項7に記載の金属窒化物をウェットエッチングする方法。
【請求項9】
前記組成物が、フォトレジスト材料の膨潤に対して金属窒化物をエッチングする選択性を有する、請求項7又は8に記載の金属窒化物をウェットエッチングする方法。
【請求項10】
シリコン、酸化シリコン、ガラス、PSG、BPSG、BSG、酸窒化シリコン、窒化シリコン及び酸炭化シリコンの1つ又は複数、又はそれらの組み合わせ若しくは混合物、及び/又はフォトレジスト材料を含む周囲構造に対して選択的に金属窒化物をウェットエッチングする方法であって、
ウェットエッチング組成物を準備することであって、該ウェットエッチング組成物が、
過酸化水素と、
TMAH以外の水酸化有機オニウム又は有機オニウム塩と、
酸と
を含む、ウェットエッチング組成物を準備すること、及び
前記周囲構造に対して選択的に前記金属窒化物をエッチングするのに効果的な時間及び温度で、前記ウェットエッチング組成物にエッチングされる金属窒化物を曝露させること
を含み、前記水酸化有機オニウム又は有機オニウム塩が、
水酸化メチルトリフェニルアンモニウム、水酸化フェニルトリメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、水酸化メチルトリエタノールアンモニウム、水酸化テトラブチルホスホニウム、水酸化メチルトリフェニルホスホニウム、水酸化トリヘキシルテトラデシルホスホニウム、水酸化トリブチルテトラデシルホスホニウム、[(CHNCHCH(OH)CHN(CH2+[OH、水酸化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、水酸化トリメチルスルホニウム、水酸化トリメチルスルホキソニウム、水酸化トリメチル(2,3−ジヒドロキシプロピル)アンモニウム、[(C)CHN(CHCHCH(OH)CHN(CHCHCH(OH)CHN(CHCHCH(OH)CH−N(CHCH(C)]4+[OH、及び[(CHNCHCH(OH)CHOH][OH]、二水酸化ヘキサメトニウムの1つ又は複数を含む、金属窒化物をウェットエッチングする方法。
【請求項11】
前記金属窒化物が、チタン、タングステン、タンタル、ハフニウム、ジルコニウムの窒化物、又は、それらの混合物若しくはそれらの合金の窒化物を含む、請求項7〜10のいずれか1項に記載の金属窒化物をウェットエッチングする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−536312(P2008−536312A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505349(P2008−505349)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/010478
【国際公開番号】WO2006/110279
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(593059980)サッチェム, インコーポレイテッド (5)
【出願人】(507334749)
【Fターム(参考)】