金属粉末で作製された粗化表面を有する移植物
圧縮金属粉末を含む未焼結体を処理するための方法であって、該未焼結体から該金属粉末の一部分を転置するのに有効な時間及び有効な条件下で、該未焼結体に粒子材料で衝撃を与える工程を含む、方法が提供される。本方法は、「粗化」表面を有する未焼結体を調製するために使用され得、未焼結体は、取り付けられたその場で、骨に対する低移動を示す、整形外科用移植物を作製するために使用することができ、移植の際のより高い安定性に対応して、該移植物の生物学的固定に必要とされる時間を低減する。また、金属マトリックスを含む移植物、及び本発明に従って「表面が粗化された」未焼結体から調製された移植物を外科的に取り付ける工程を含む方法も提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、全開示の全体が本明細書に組み込まれる、2008年5月22日に出願された米国仮特許第61/055,304号の優先権を主張する、2009年5月21日に出願された米国第12/470,397号の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、整形外科用移植物、及び整形外科用移植物を作製するために使用される材料、並びにそのような移植物及び材料を生産し、使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
「スペースホルダー」方法は、金属発泡体構造を作製するための周知のプロセスであり、金属粉末と組み合わせられてから、熱溶解又は液体溶解を含む様々な方法によってその組み合わせから除去され、金属粉末から形成される多孔質マトリックスを残留させる、溶解可能な、ないしは別の方法で除去可能な、空間保持材料(space-holdingmaterials)を採用する。次に、多孔質マトリックス材料を焼結して、マトリックス構造を更に強化する。スペースホルダー概念に関する多数の変形が当該技術分野において既知である。例えば、米国特許第3,852,045号、同第6,849,230号、米国特許公開第2005/0249625号、同第2006/0002810号を参照されたい。
【0004】
表面粗さは、骨へのセメントレス固定用の整形外科用移植物の重要な属性である。高い表面粗さは、骨に対する高摩擦及び初期移植における一般的な安定性に対応し得、これらの両方は、骨を介した長期にわたる安定性及び組織の内部成長につながる。生物学的固定を向上し、組織の内部成長を最大限にすると言われる移植物コーティングを含む、移植物表面と関連して使用するための幾つかの多孔質コーティング製品が開発されてきた。骨組織の内部成長によって、移植物を骨にしっかりと固定するために、相互接続した孔の網状組織を提供する一方で、移植物と骨との間の相対運動の低減をもたらすように骨と接触する、粗い、高摩擦表面を付与するために、そのようなコーティングが移植物の面に適用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本発明は、未焼結体から金属粉末の一部分を転置するのに有効な条件下で、未焼結体に粒子材料で衝撃を与える工程を含む、圧縮金属粉末を含む未焼結体を処理するための方法を提供する。
【0006】
また、金属マトリックスを備える移植物であって、金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、約0.7以上の、ポリマー骨類似体との静止摩擦係数を有する、移植物も提供される。また、金属マトリックスを備える移植物であって、金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、少なくとも約20のPa値に対応する粗さ、少なくとも約60のPp値に対応する粗さ、少なくとも約140のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約30のPq値に対応する粗さを有する、移植物も開示される。
【0007】
また、本方法は、開示される処理技術に従って作製された移植物を外科的に取り付ける工程も含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一態様に従う方法を図示する、概略フローチャート。
【図2A】部分が発明方法に従って処理された、未焼結体の外側面輪郭を示す。
【図2B】部分が発明方法に従って処理された、未焼結体の外側面輪郭を示す。
【図3】様々な材料のポリマー骨類似体に対する静止摩擦係数の測定値を提供する。
【図4】CP−Ti金属マトリックス試料の表面粗さを、金属マトリックス試料が調製された未焼結体試料が粒子材料で衝撃を与えられた(粒子材料を「吹き付けられた」)圧力(psi)と比較するグラフであって、表面粗さが、Paパラメーターを用いて表される、グラフを描写する。
【図5】CP−Ti金属マトリックス試料の表面粗さを、金属マトリックス試料が調製された未焼結体試料が粒子材料で衝撃を与えられた(粒子材料を「吹き付けられた」)圧力(psi)と比較するグラフであって、表面粗さが、Ppパラメーターを用いて表される、グラフを描写する。
【図6】CP−Ti金属マトリックス試料の表面粗さを、金属マトリックス試料が調製された未焼結体試料が粒子材料で衝撃を与えられた(粒子材料を「吹き付けられた」)圧力(psi)と比較するグラフであって、表面粗さが、Ptパラメーターを用いて表される、グラフを描写する。
【図7】CP−Ti金属マトリックス試料の表面粗さを、金属マトリックス試料が調製された未焼結体試料が粒子材料で衝撃を与えられた(粒子材料を「吹き付けられた」)圧力(psi)と比較するグラフであって、表面粗さが、Pqパラメーターを用いて表される、グラフを描写する。
【図8】Ti−6Al−4V金属マトリックス試料の表面粗さを、金属マトリックス試料が調製された未焼結体試料が粒子材料で衝撃を与えられた(粒子材料を「吹き付けられた」)圧力(psi)と比較するグラフであって、表面粗さが、Paパラメーターを用いて表される、グラフを描写する。
【図9】Ti−6Al−4V金属マトリックス試料の表面粗さを、金属マトリックス試料が調製された未焼結体試料が粒子材料で衝撃を与えられた(粒子材料を「吹き付けられた」)圧力(psi)と比較するグラフであって、表面粗さが、Ppパラメーターを用いて表される、グラフを描写する。
【図10】Ti−6Al−4V金属マトリックス試料の表面粗さを、金属マトリックス試料が調製された未焼結体試料が粒子材料で衝撃を与えられた(粒子材料を「吹き付けられた」)圧力(psi)と比較するグラフであって、表面粗さが、Ptパラメーターを用いて表される、グラフを描写する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、本開示の一部を形成する、添付図面及び実施例に関連して解釈される以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解することができる。本発明は、本明細書に記載する及び/又は示す特定の製品、方法、条件、又はパラメーターに限定されるものではなく、本明細書で使用される専門用語は実施例を用いて具体的な実施形態を記載する目的のためだけのものであり、請求した発明を制限することを意図するものではないことが理解されるべきである。
【0010】
本開示では、単数形「a」、「an」、及び「the」は、特に明示しない限り、複数の参照及び少なくともその特定の値を含む特定の数値の参照を含む。したがって、例えば、「材料(a material)」に対する参照は、1種又はそれ以上のこのような材料及び当業者に既知であるその等価物等に対する参照である。値が先行詞「約」を用いることにより近似値として表現されるとき、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されよう。本明細書で使用される場合、「約X」(Xは、数値である)は、包括的に、列挙される値の±10%を指す。例えば、「約8」という語句は、包括的に、7.2〜8.8の値を指し、別の例としては、「約8%」という語句は、包括的に、7.2%〜8.8%の値を指す。存在する場合、全ての範囲は包括的かつ組み合わせ可能である。
【0011】
本明細書に引用又は記載する各特許、特許出願及び刊行物の開示は、その全文を参照することにより本明細書に組み込む。
【0012】
多孔質コーティング製品は、骨組織の内部成長によって、移植物を骨にしっかりと固定するために、相互接続した孔の網状組織を提供する一方で、そのような移植物と骨との間の摩擦を増加させるために、成形移植物の外側表面の1つ以上に適用されてもよい。粗化表面コーティングは、ピークを呈し、移植物面上に存在する場合、接触圧力の増加、従って移植物面と、隣接する骨の表面との間の、刻装及び磨耗性接触をもたらすと考えられる。移植物の表面でのそのような現象は、移植におけるより高い安定性に対応し、移植物の生物学的固定を達成する可能性を高め得る、移植物と骨との間の相対運動への抵抗を増加させる。
【0013】
本発明は、金属マトリックスを備える整形外科用移植物の表面上への多孔質コーティング製品の使用の随伴方法又は代替を示す。未焼結体の表面トポグラフィー、即ち、金属粉末を含む、圧縮されているが未焼結の質量を含む物品は、未焼結体の表面から圧縮金属粉末の部分を転置することによって改変され得ることが現在発見されている。得られるトポグラフィーは、少なくとも一部において、移植物のコーティングされた表面と酷似する、くぼみ又は谷部分及びピークによって特性化され、そのような未焼結体から形成される移植物が、隣接する骨表面との増加した摩擦を呈するようにする。そのような増加した摩擦の付随効果は、前述を考慮すれば明らかであり、移植物の安定性と、骨及び組織との成功した一体化を通じて生物学的固定の高い可能性と、を含む。しかしながら、コーティングされた移植物とは異なり、得られる移植物のトポグラフィーは、移植物自体の固有特性であり、移植物材料以外の物質の使用から生じるものではない。したがって、ここに開示される手法は、少なくとも、表面コーティングを別個に入手する必要がないため、整形外科用移植物を調製する費用の削減につながる可能性を有する。
【0014】
本発明によると、圧縮金属粉末を含む未焼結体を処理するための方法が提供され、そのような方法は、未焼結体から金属粉末の一部分を転置するのに有効な時間及び有効な条件下で、未焼結体に粒子材料で衝撃を与える工程を含む。また、圧縮金属粉末を含む未焼結体であって、未焼結体から金属粉末の一部分を転置するのに有効な時間及び有効な条件下で、粒子材料で衝撃を与えられた、未焼結体も提供される。本方法は、未焼結体から金属粉末の一部分の転置に続いて、未焼結体を焼結する工程を更に含んでもよい。そのような焼結に続いて、任意に、機械加工又は他の処理工程が行われてもよい、焼結された未焼結体は、患者の体内に取り付けられ得る整形外科用移植物として機能することができる。したがって、本方法は、本発明に従って処理され、焼結された、未焼結体から作製された移植物を患者に外科的に取り付ける工程を更に含んでもよい。
【0015】
粒子材料で衝撃を与えられる未焼結体は、従来の技術を使用して調製されてもよい。未焼結体の調製は、少なくとも1つの金属粉末を抽出可能材料と混合し、それによって、金属粉末及び抽出可能材料がそれぞれの位置をとる粉末混合物を形成する工程と、粉末混合物を成形物に成形する工程と、未焼結体を形成するために、成形物を圧縮する工程とを含んでもよい。
【0016】
金属粉末は、任意の生体適合性金属を含んでもよく、その非制限的な例としては、チタニウム、チタニウム合金、コバルト−クロム合金、モリブデン、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、ステンレス鋼、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。抽出可能材料は、液体、有機溶媒、又は両方に可溶性の材料であってもよく、塩、糖、固体炭化水素、尿素誘導体、ポリマー、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。好適な例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、スクロース、ソルビン酸カリウム、カルバミド、ビウレット、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、ナフタレン、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。あるいは、抽出可能材料は、加熱及び/又は圧力条件下で除去されてもよく、例えば、抽出可能材料は、加熱の結果として、揮発、融解、ないしは別の方法で消散してもよい。そのような抽出可能材料の例としては、重炭酸アンモニウム、尿素、ビウレット、メラミン、炭酸アンモニウム、ナフタレン、重炭酸ナトリウム、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0017】
金属粉末を抽出可能材料と混合する好適な技術は、当業者により容易に理解されるであろう。例えば、米国特許第3,852,045号、同第6,849,230号、米国特許公開第2005/0249625号、同第2006/0002810号を参照されたい。理想的には、混合により、粉末混合物の主要な部分を含む粒子間に、粉末混合物の少量成分を含む実質的に均一な粒子分散物が生じる。金属粉末は、粉末混合物の約18〜約67重量パーセントを構成してもよく、粉末混合物の残部は、抽出可能材料を含む。本方法の後の段階で抽出可能材料が未焼結体から除去されると、得られる未焼結体の多孔率は、約50%〜約90%、好ましくは約60%〜約85%であり得る。抽出可能材料の除去は、以下により完全に記載される。
【0018】
少なくとも1つの金属粉末の抽出可能材料との混合に続き、粉末混合物は、成形物に成形されてもよい。成形プロセスは、鋳型を粉末混合物で充填する工程を含むことができ、鋳型は、所望の最終移植物製品の少なくとも概略の三次元パラメーターを有し、機械加工等の続く処理工程を可能にする。他の実施形態では、ネットのような成形部品、又は鋳造形態が所望の最終焼結部品と類似する部品を生産するように鋳型を設計する必要はなく、鋳型は、バー、ロッド、プレート、又はブロック等の一般的な形状を生産してもよく、これは、焼結誘発収縮の後、焼結部分の任意の機械加工を用いて、最終製品の所望の形状に非常に近い部品を生産するために、続いて未焼結状態で機械加工されてもよい。そのような目的のための鋳型及び鋳型アセンブリは、当業者に周知であり、例えば球形、回転楕円体、卵形、半球形、直平行六面体、円筒形、円錐曲線回転体(toriod)、円錘形、凹状半球形(即ち、カップ形)、不規則、又は任意の他の所望の三次元形態を有する本体を調製することができる。いったん、前述に従って粉末混合物から形成されると、得られる成形物は、未焼結体を形成するために、圧縮されてもよい。成形物は、鋳型アセンブリ内に収容されている間に、圧縮される。圧縮は、一軸、多軸、又は等方圧であってもよい。好ましい実施形態では、成形物を未焼結体に圧縮するために、冷間等方圧プレスが使用される。圧縮手順に続き、得られる未焼結体は、鋳型から取り外され、処理されてもよい。処理は、未焼結体の形状を機械加工する、又は別様に精密化することを含んでもよい。
【0019】
圧縮の後に機械加工が実施されるかされないかに関わらず、次いで、未焼結体は、抽出可能材料が可溶性である溶媒に暴露されてもよい。上述されるように、抽出可能材料は、水性溶媒、有機溶媒、又は両方に可溶性であってもよい。溶媒への未焼結体の暴露は、例えば、抽出可能材料の少なくとも一部を除去するのに十分な時間、溶媒を備える浴中に未焼結体を浸漬させることによって、未焼結体を溶媒中に浸漬させる工程を含んでもよい。抽出可能材料の識別に関連して選択される溶媒の種類、溶媒の温度、及び溶媒への暴露時間等の様々な要因によって、未焼結体からの抽出可能材料の除去は、部分的な除去から完全な除去に及ぶことができる。抽出可能材料が可溶性である溶媒への未焼結体の暴露は、好ましくは、少なくとも未焼結体の表面から、未焼結体の任意の所与の表面から少なくとも約1mm、少なくとも約3mm、少なくとも約5mm、少なくとも約7mm、又は少なくとも約10mmの深さの抽出可能材料を除去する。
【0020】
別の実施形態では、抽出可能材料は、水性溶媒又は有機溶媒に不溶性であり、加熱条件下で除去可能である。そのような状況では、圧縮を介した未焼結体の形成の後(圧縮に続いて機械加工が実施されるかされないかに関わらず)、未焼結体は、抽出可能材料の少なくとも一部を蒸発させるが、依然として金属粉末を未焼結体内における金属粉末の位置に実質的に維持するのに有効な時間及び有効な条件下で、加熱されてもよい。抽出可能材料の識別、加熱環境の温度、及び加熱時間等の様々な要因によって、未焼結体からの抽出可能材料の除去は、部分的な除去から完全な除去に及ぶことができ、未焼結体の加熱は、好ましくは、少なくとも未焼結体の表面から、未焼結体の全深さの少なくとも約5%下方までの抽出可能材料を除去する。好ましくは、抽出可能材料の熱的除去は、未焼結体材料が有機スペースホルダーからのC、N、又はHによって汚染されるのを回避するために、焼結温度より大幅に低い温度で実施される。例えば、抽出可能材料の熱的除去は、重炭酸アンモニウム等の幾つかの抽出可能材料の分解をもたらすのに十分である、約100℃未満で実施されてもよい。
【0021】
本発明による未焼結体は、未焼結体から金属粉末の一部分を転置するのに有効な時間及び有効な条件下で、粒子材料で衝撃を与えられてもよい。未焼結体から金属粉末の一部分を転置することによって、未焼結体の表面形状が変化する。変化した表面形状は、「粗さ」として表現されてもよく、一般に、少なくとも一部において、規則的な、若しくは不規則なくぼみ(又は谷部分)及びピークによって特性化される。本発明によると、粗さは、粒子材料が未焼結体に衝撃を与える力、粒子材料の特性(材料の種類、及び粒径、並びに形状を含む)と、粒子材料の源及び未焼結体の間の距離と、粒子材料が噴出される開口部の形状(衝撃を与える工程が、開口部から粒子材料を噴出することによって実施される際)と、未焼結体の表面領域の多孔率(未焼結体の製造中の金属粉末対抽出可能材料の比率に由来する)、並びに未焼結体を形成するために金属粉末及びスペースホルダー粒子混合物が圧縮される圧力を含む、未焼結体自体の特性と、を含む数多くの要因によって変化させることができる。
【0022】
未焼結体に衝撃を与えるために使用される粒子材料は、水性溶媒、有機溶媒、又は両方に可溶性であってもよい。粒子材料は、塩、糖、固体炭化水素、尿素誘導体、ポリマー、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。好適な例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、スクロース、ソルビン酸カリウム、カルバミド、ビウレット、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、ナフタレン、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。更に、又はあるいは、粒子材料は、加熱及び/又は圧力条件下で除去可能であってもよく、例えば、粒子材料は、加熱の結果として、揮発、融解、ないしは別の方法で消散してもよい。そのような粒子材料の例としては、重炭酸アンモニウム、尿素、ビウレット、メラミン、炭酸アンモニウム、ナフタレン、重炭酸ナトリウム、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。粒子材料の熱的除去は、任意の焼結する工程から独立した加熱サイクルとして、又は直前に先行し、焼結温度まで「上昇する」、連続炉サイクルの一部として実施されてもよい。好ましくは、粒子材料の熱的除去は、未焼結体材料が有機スペースホルダーからのC、N、又はHによって汚染されるのを回避するために、焼結温度より大幅に低い温度で実施される。例えば、粒子材料の熱的除去は、重炭酸アンモニウム等の幾つかの粒子材料の分解をもたらすのに十分である、約100℃未満で実施されてもよい。
【0023】
粒子材料は、不規則若しくは様々な形状であり、粒径の混ざった粒子を含んでもよく、又は、粒径、形状、若しくは両方が実質的に均一の粒子を含んでもよい。例えば、粒子材料の粒子は、実質的に球形、楕円形であってもよく、又は結晶性であり、任意の数の異なる結晶形態を有してもよい。一実施形態では、粒子材料は、約150μm〜約1250μmの平均直径(例えば、任意の所与の粒子の主要寸法に沿って)を有する粒子を含む。
【0024】
粒子材料が未焼結体に衝突する力は、未焼結体から金属粉末の転置に影響を及ぼすことができる。粒子材料が未焼結体に衝突する「力」は、圧力を用いて、例えば、1平方インチ当たりのポンド力の単位で表されてもよい。本発明によると、粒子材料は、約20.7kPa(約3psi)〜約206.8kPa(約30psi)、例えば、約34.5kPa(約5psi)、約48.3kPa(約7psi)、約68.9kPa(約10psi)、約103.4kPa(約15psi)、約137.9kPa(約20psi)、約172.4kPa(約25psi)、約186.2kPa(約27psi)、又は約206.8kPa(約30psi)の圧力で、未焼結体に衝撃を与える。未焼結体が粒子材料で衝撃を与えられる力/圧力量は、衝撃を与えるプロセス中に変化してもよく、例えば、未焼結体が衝撃を与えられる力/圧力は、衝撃を与えるプロセスにわたって増加してもよく、減少してもよく、又は減少と増加が交互になってもよい。
【0025】
更に、衝撃を与える工程が実施される時間量は、未焼結体から金属粉末の転置に影響を及ぼすことができる。特定の実施形態では、約2秒間〜約2分間以下、好ましくは約2秒間〜約30秒間以下、衝撃を与える工程が実施される。衝撃を与える時間は、部品寸法に依存してもよく、粒子材料の「ストリーム」は、特定の小さな部品の対向表面全体に及ぶのに十分に幅が広くてもよく、一方、部品がより大きな表面積を特徴とする場合、より長い時間が必要とされ得る。未焼結体に粒子材料で衝撃を与える工程は、単一の事象として、即ち、単一の連続する期間にわたって行われてもよく、又は、例えば、衝撃を与える一事象に、衝撃が起こらない期間が続き、衝撃を与える第2の事象が続き、任意に、このサイクルが1回以上繰り返される、幾つかの事象として、起こってもよい。衝撃を与えるそれぞれの事象は、任意に、約1秒間〜約2分間以下、好ましくは約1秒間〜約30秒間以下実施される。
【0026】
未焼結体に粒子材料で衝撃を与える工程は、粒子材料の源に接続される開口部等の好適な構造から粒子材料を噴出することによって達成されてもよい。粒子材料は、衝撃を与えるプロセス中、未焼結体から約5.1cm(2インチ)〜約76.2cm(30インチ)に配置される開口部から噴出されてもよい。開口部及び未焼結体は、互いに対して静止していてもよい、即ち、それらの間の距離が衝撃を与える工程の間に変化しないように固定されてもよい。あるいは、衝撃を与えるプロセスは、未焼結体と開口部との間の距離が、衝撃を与えるプロセスの間に増加する、減少する、又は増加及び減少となるように、実施されてもよい。
【0027】
未焼結体は、衝撃を与えるプロセス中、静止していてもよく、又は未焼結体の複数の表面が粒子材料で衝撃を与えられるようにするために、例えば、回転される、横方向に移される、ないしは別の方法で空間的に並進されてもよい。粒子材料の源の未焼結体に対する配向を変化させることによって、同一の結果が達成され得る。一実施例では、未焼結体は、所与の速度で回転されてもよく、又は未焼結体が回転される速度は、衝撃を与えるプロセスのコースにわたって変化してもよい。未焼結体は、衝撃を与える工程中、約5rpm〜約100rpm、好ましくは約10rpm〜約60rpmの様々な速度で回転されてもよい。他の実施形態では、粒子材料の源は、静止した未焼結体に対して、例えば、約0.25cm/秒(約0.1インチ/秒)、約0.51cm/秒(約0.2インチ/秒)、約0.64cm/秒(約0.25インチ/秒)、約1.27cm/秒(約0.5インチ/秒)、約2.5cm/秒(約1.0インチ/秒)、約3.8cm/秒(約1.5インチ/秒)、約5.1cm/秒(約2.0インチ/秒)、約6.4cm/秒(約2.5インチ/秒)、約7.6cm/秒(約3.0インチ/秒)、約8.9cm/秒(約3.5インチ/秒)、約10.2cm/秒(約4.0インチ/秒)、又はそれより早い速度で移動されてもよい。
【0028】
衝撃を与えるプロセス中、粒子材料は、未焼結体の表面に留まる傾向がある。未焼結体が、「スペースホルダー」方法、即ち、金属粉末及び抽出可能材料の混合物を圧縮する方法を使用して調製されており、続いて任意に処理され(機械加工等)、抽出可能材料の少なくとも一部分が除去される(溶媒を用いた処理、又は加熱を用いた処理のいずれかによって)際、また、一部の抽出可能材料が未焼結体内に残存し得る可能性もある。したがって、本方法は、衝撃を与えるプロセスに続き、粒子材料が可溶性である、抽出可能材料が可溶性である、又は粒子材料と抽出可能材料が可溶性である溶媒に、未焼結体を暴露する工程を更に含んでもよい。例えば、粒子材料が液体に可溶性である場合、未焼結体は、衝撃を与えるプロセスに続き、液体を備える浴中に浸漬されてもよい。未焼結体の液体への暴露は、衝撃を与えるプロセスから粒子材料の全て、又は実質的に全てを除去し、また、任意の残りの抽出可能材料の全て、又は実質的に全てを除去する働きもし得る。あるいは、粒子材料が液体又は有機液体に可溶性ではないが、代わりに熱によって除去可能である場合、未焼結体に埋め込まれた任意の粒子材料は、加熱を介して除去することができる。そのような加熱は、移植物を調製するために、未焼結体に対して従来的に実施される焼結プロセスに準じて、「上昇」期間中に達成されてもよい。
【0029】
衝撃を与えるプロセス、及び必要に応じて、未焼結体からの粒子材料及び/又は抽出可能材料の除去に続き、本方法は、未焼結体を焼結する工程を更に含んでもよい。焼結する工程は、典型的に、真空炉内で実施され、当業者は、金属粉末を含む未焼結体を焼結するのに適切な条件を容易に理解するであろう。焼結体の形状特性を精密化するために、焼結する工程に、機械加工を含む追加の処理工程が続いてもよい。
【0030】
本発明による例示的な製造プロセスを、図1に図示する。上述されるように、プロセスは、少なくとも1つの金属粉末を抽出可能材料と混合し、粉末混合物を成形物に成形し、未焼結体を形成するために成形物を圧縮し、任意に成形物を処理する(例えば、機械加工によって)工程で開始し、移植物を形成するために、未焼結体を処理し、抽出可能材料を除去し(抽出可能材料が可溶性である溶媒に未焼結体を暴露すること等によって)、未焼結体に粒子材料で衝撃を与え、任意に未焼結体から粒子材料を除去し(例えば、粒子材料が可溶性である溶媒に未焼結体を暴露することによって)、未焼結体を焼結し、所望により、最終処理をする(例えば、機械加工によって)工程が続いてもよい。前述を考慮し、製造業者及び/又は所望の製品の必要性に従って、様々な図示される処理工程を修正若しくは変更する、又は場合によっては完全に省略することができることが明らかとなるであろう。図1に図示される概略図は、一実施形態を描写することが意図されるが、それは本発明による、可能な処理経路に過ぎない。
【0031】
本方法は、上述の衝撃を与える工程及び焼結する工程に従って作製された移植物を外科的に取り付ける工程を更に含んでもよい。列挙される衝撃を与える工程及び焼結する工程に従って作製された移植物は、上述されるように、外科的移植における安定性を確保するのに特によく適しており、生物学的固定、及び内部成長を介したその場での骨及び組織との一体化に好ましいという特性を有する。
【0032】
本発明によると、また、金属マトリックスを備える移植物も提供される。本移植物の1つ以上の表面は、従来の移植物の表面に関して存在するものとは区別できる、特定の特性(例えば、静止摩擦係数、表面形状の様々な態様)を有してもよい。一実施形態では、金属マトリックスの少なくとも1つの表面は、約0.7以上の、約320.4g/L(約20lb/ft3)の密度を有するポリウレタン発泡体を備えるポリマー骨類似体との静止摩擦係数を有する。多孔質コーティング製品と共に表面上にコーティングされた金属マトリックスを備える移植物は、約0.7以上のポリマー骨類似体との静止摩擦係数を生じ得るが、静止摩擦係数は、金属マトリックス自体の表面ではなく、コーティングに起因する。更に、従来の多孔質コーティングされた製品の粗さは、通常、コーティングを形成するために使用された金属粉末、ワイヤ、又は繊維の形状、及び部品の、表面上でのそれらの配置に由来し、これは、どのようにコーティングが基材上に成膜されたかに大いに依存する。本発明の他の実施形態では、金属マトリックスの少なくとも1つの表面は、約0.7〜約1.5の、ポリマー骨類似体との静止摩擦係数を有する。したがって、本移植物は、1つ以上の表面が多孔質コーティング製品でコーティングされた移植物とは異なり、金属マトリックスの1つ以上の表面で、高静止摩擦係数を提供する。ポリウレタンを備えるポリマー骨類似体は、発明移植物に対する基準点を提供する。本移植物の特性が、異なる摩擦基材への言及によって説明することができる限り、本発明の範囲は、約320.4g/L(約20lb/ft3)の密度を有するポリウレタン発泡体を備えるポリマー骨類似体への言及によってのみ説明することができる移植物に限定されると、解釈されるべきではない。列挙される骨類似体の一例は、320.4g/L(20lb/ft3)の密度を有する、「剛性の独立気泡ポリウレタン発泡体」であると言われる、General Plastics Manufacturing Co.(Tacoma,WA)からのカタログ番号FR−4520である。
【0033】
また、少なくとも一部分が、金属マトリックスを備え、少なくとも第2の部分が、固体基材であってもよい基材材料を含む、移植物又は他の製造品も開示される。例えば、移植物又は製造品は、固体基材の少なくとも一部分上に、約0.5mm〜約50mmの厚さを有する、金属マトリックス材料の層又はコーティングを含んでもよい。そのような実施形態では、金属マトリックスの1つ以上の表面は、従来の移植物の表面に関して存在するものとは区別できる、特定の特性(例えば、静止摩擦係数、表面形状/粗さの様々な態様)を有してもよい。本開示を通じて、「金属マトリックスを備える移植物」は、固体基材の少なくとも一部分上に、金属マトリックス材料のコーティングを備える移植物又は製造品を指し得る。
【0034】
本移植物の金属マトリックス及びコーティングは、チタニウム、チタニウム合金、コバルト−クロム合金、モリブデン、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、ステンレス鋼、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0035】
また、金属マトリックスを備える移植物であって、金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、少なくとも約20のPa値に対応する粗さ、少なくとも約60のPp値に対応する粗さ、少なくとも約140のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約30のPq値に対応する粗さを有する、移植物も提供される。Paパラメーターは、サンプリング長さ内の平均線からのフィルタ処理されていない生プロファイル逸脱の算術平均値を表し、Ppは、サンプリング長さ内の平均線からのフィルタ処理されていない生粗さプロファイルの最大ピーク偏差であり、Ptは、評価長さ内のフィルタ処理されていない生プロファイルのピークから谷部分の最大高さであり、Pqは、全ての2乗した「z」値の平均の平方根であり、1つのサンプリング長さにわたって定義される。これらのパラメーターは、ISO 4287(1997)に準じる。他の実施形態では、開示される移植物は、金属マトリックスを備え、金属マトリックスの少なくとも1つの表面は、少なくとも約50のPa値に対応する粗さ、少なくとも約90のPp値に対応する粗さ、少なくとも約200のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約60のPq値に対応する粗さを有する。本移植物の更に他の実施形態では、金属マトリックスの少なくとも1つの表面は、少なくとも約70のPa値に対応する粗さ、少なくとも約120のPp値に対応する粗さ、少なくとも約300のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約70のPq値に対応する粗さを有する。
【0036】
また、金属マトリックスを備える移植物を外科的に取り付ける工程を含む方法であって、金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、約0.7以上の、約320.4g/L(約20lb/ft3)の密度を有するポリウレタン発泡体を備えるポリマー骨類似体との静止摩擦係数を有する、方法も提供される。別の態様では、金属マトリックスを備える移植物を外科的に取り付ける工程を含む方法であって、金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、約0.7〜約1.5の、ポリマー骨類似体との静止摩擦係数を有する、方法が提供される。他の実施形態では、金属マトリックスを備える移植物を外科的に取り付ける工程を含む方法であって、金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、少なくとも約20のPa値に対応する粗さ、少なくとも約60のPp値に対応する粗さ、少なくとも約140のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約30のPq値に対応する粗さを有する、方法が提供される。金属マトリックスを備える移植物は、少なくとも約50のPa値に対応する粗さ、少なくとも約90のPp値に対応する粗さ、少なくとも約200のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約60のPq値に対応する粗さを有する、少なくとも1つの表面を有してもよい。更に他の実施形態では、本方法に従って外科的に取り付けられる金属マトリックスの少なくとも1つの表面は、少なくとも約70のPa値に対応する粗さ、少なくとも約120のPp値に対応する粗さ、少なくとも約300のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約70のPq値に対応する粗さを有する。本方法に準じて外科的に取り付けられる移植物の金属マトリックスは、チタニウム、チタニウム合金、コバルト−クロム合金、モリブデン、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、ステンレス鋼、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【実施例】
【0037】
実施例1−粒子材料で衝撃を与えられた未焼結体のトポグラフィー
図2A及び図2Bは、未焼結体から金属粉末の一部分を転置するのに有効な時間及び有効な条件下で、特定の部分が粒子材料で衝撃を与えられた、未焼結体の表面を通る断面の側面図をそれぞれ描写する。比較のために、それぞれの未焼結体の端部付近の部分(大括弧で印が付けられた)は、本発明に従って処理されなかった、即ち、粒子材料で衝撃を与えられなかった。未処理部分の表面特性は、未焼結体の粒子材料で衝撃を与えられた部分とは容易に区別できる。それぞれの画像で、白色材料は、金属マトリックスであり、黒色は、孔又は空所を表す。図2A中の未焼結体は、商業上純(Commercially Pure:「CP」)Tiの圧縮金属粉末を含み、未焼結体から約15.2cm(約6インチ)に置かれた開口部から、103.4kPa(15psi)の圧力で噴出された、塩化ナトリウムを含む粒子材料で、2秒間衝撃を与えられた。図2B中の未焼結体は、CP Tiの圧縮金属粉末を含み、未焼結体から約30.5cm(約12インチ)に置かれた開口部から、172.4kPa(25psi)の力で噴出された、塩化ナトリウムを含む粒子材料で、2秒間衝撃を与えられた。図2B中の未焼結体が粒子材料で衝撃を与えられた条件は、未焼結体の表面から金属粉末のより有意な転置をもたらし、それによって、より大きく、かつより深いくぼみ、ひいてはより高いピークを生じた。
【0038】
実施例2−衝撃を与えるプロセスのパラメーターの変化
以下の表1は、衝撃を与えるプロセスのパラメーターを変化させた、3つの例示的な実施形態を描写する。
【表1】
【0039】
表1に記載されるそれぞれの条件下で衝撃を与えるプロセスが実施された未焼結体のそれぞれに関して、好ましい結果が得られ、未焼結体のそれぞれは、未処理の未焼結体と比較して、粗化表面を特長とした。
【0040】
実施例3−静止摩擦係数の測定
3つの異なる材料のそれぞれ(図3に示される、材料A〜Cのそれぞれ)と、骨類似体、具体的には、320.4g/L(20lb/ft3)の密度を有する、「剛性の独立気泡ポリウレタン発泡体」であると言われる、General Plastics Manufacturing Co.(Tacoma,WA)からのカタログ番号FR−4520との間の静止摩擦係数が測定された。第1の材料(A)は、従来の「スペースホルダー」技術に従って調製された、多孔率が約75体積%の、焼結CP Ti発泡体構造であった。この試料の試験された表面は、試料が未焼結状態である間に、平らに機械加工された。第2の材料(B)は、多孔率が約75体積%の、焼結CP Ti発泡体構造であった。また、この試料の試験された表面も、試料が未焼結状態である間に、平らに機械加工されたが、また、表面は、次いで、表1に記載される条件に従って、NaClで衝撃を与えられ、したがって、第2の材料の試験表面は、本発明の実施形態に従って調製された。第3の材料(C)は、POROCOAT(登録商標)ビーズ状多孔質コーティング(Depuy Orthopaedics,Inc.,Warsaw,IN)、Ti−6Al−4V基材上の球形の非合金チタニウムビーズの焼結コーティングからな構成された。
【0041】
図3に示されるように、材料Bは、材料Cと同程度であり、かつ従来の「スペースホルダー」手法に従って調製された金属マトリックスである材料Aに関して測定された静止摩擦係数より大幅に高い、骨類似体との静止摩擦係数を有した。
【0042】
実施例4−例示的な実施形態を伴う、静止摩擦係数の追加測定値
CP Ti若しくはTi−6Al−4Vから、456.0又は684.0kPa(30又は45ksi)の冷間等方圧圧縮下で、及びそうでなければ従来の「スペースホルダー」技術に従って調製され、焼結後に約73%又は約75%の多孔率を有する、1.91cm×1.91cm(0.75インチ×0.75インチ)の正方形金属マトリックス試料の静止摩擦係数が測定された。試料は、少なくとも95重量%が250μmより小さいNaCl粒子(Morton’s Popcorn Salt(登録商標))によって衝撃を与えられた、又は粒子材料で衝撃を与えられることなく、未焼結状態で機械加工された。衝撃を与えられた試料では、塩化ナトリウムを含む粒子材料が、34.5(5psi)、68.9(10psi)、103.4(15、psi)、137.9(20psi)、又は172.4(25psi)の力で、未焼結体から約10.2〜20.3cm(約4〜8インチ)に置かれた開口部から噴出され、それぞれの試料に対して、約2.5cm/秒(約1インチ/秒)で移動する吹き付け装置を用いて、2回の「吹き付け」ストリームが実施された。
【0043】
摩擦試験は、「平面上スレッド(sled on a plane)」方法を使用して実施された。「スレッド」は、1.91cm×1.91cm(0.75インチ×0.75インチ)の正方形金属マトリックス試料からなり、一方、それぞれの「平面」は、Last−A−Foam(登録商標)6720(General Plastics Manufacturing Company,Tacoma,WA)、320.4g/L(20lb/ft3)の密度を有する、剛性の独立気泡ポリウレタン発泡体のフライス加工試料であった。それぞれのスレッドは、10lb単繊維糸で250Nのロードセルに接続され、10mm/分で、2.0cm(0.8インチ)引っ張られた。スレッドの上に配置された錘は、30Nの垂直力を生じた。最初の0.5Nの力の低下の前に記録された最大の力から静止摩擦係数が計算された。それぞれの試料に、3つの別個の試験が実施され、アセトン中、試験間で、超音波洗浄された。結果を以下の表2及び表3に示す。
【表2】
【表3】
【0044】
静止摩擦係数は、約0.7〜約1.5に及び、とりわけ、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、及び約1.5の値を含んだ。
【0045】
実施例5−衝撃を与える(「吹き付け」)プロセス中に使用された圧力と表面粗さとの間の相関関係
図4〜図10は、金属マトリックス試料から得られた平均表面粗さ値を、金属マトリックス試料が調製された、対応する未焼結体試料が粒子材料で衝撃を与えられた(粒子材料を「吹き付けられた」)圧力(psi)と比較するグラフを描写する。グラフは、金属マトリックスが調製された材料(CP Ti又はTi−6Al−4V)及び試料の多孔率(73%又は75%)を示すようにラベル表示される。表面粗さは、針として半径が500μmのルビー玉が取り付けられた、Zeiss Surfcomm 5000(Carl Zeiss Inc.,Germany)接触型表面形状測定装置を使用して評価された。0.3mm/秒の測定速度及び「最小2乗直線」傾動補正aで、フィルタ処理されていないPプロファイルの測定値を得るために、約1.5mm離間した、10本の平行な14mm長のトレースがそれぞれの試料から得られた。Pa(図4及び図8)は、サンプリング長さ内の平均線からのフィルタ処理されていない生プロファイル逸脱の算術平均値を表し、Pp(図5及び図9)は、サンプリング長さ内の平均線からのフィルタ処理されていない生粗さプロファイルの最大ピーク偏差であり、Pt(図6及び図10)は、評価長さ内のフィルタ処理されていない生プロファイルのピークから谷部分の最大高さであり、Pq(図7)は、全ての2乗した「z」値の平均の平方根であり、1つのサンプリング長さにわたって定義される。これらのパラメーターは、ISO 4287(1997)に準じる。図4〜図10では、ダイヤモンド(◆)は、本開示技術に従って未焼結状態である間に粒子材料で衝撃を与えられた表面を有する試料を表し、一方、四角形(■)は、未焼結状態で機械加工され、衝撃を与える手順が実施されていない試料を表す。
【0046】
以下の表3は、本開示技術に従って粒子材料で衝撃を与えられた未焼結体から調製された、約73%の多孔率を有するCP−Ti金属マトリックスの、まとめられた平均表面粗さ測定値を提供する。表面粗さは、それぞれ、上記に定義される通りである、Paパラメーター、Ppパラメーター、Ptパラメーター、及びPqパラメーターを用いて表される。
【表4】
【0047】
以下の表4は、本開示技術に従って粒子材料で衝撃を与えられた、又は機械加工されたままの状態で焼結された(即ち、未焼結状態である間に粒子材料で衝撃を与えられていない)未焼結体から調製された、約75%の多孔率を有するTi−64金属マトリックスのまとめられた平均表面粗さ測定値を提供する。表面粗さは、それぞれ、上記に定義される通りである、Pa、Pp、Pt、及びPqパラメーターを用いて表される。
【表5】
【0048】
以下の表5は、本開示技術に従って粒子材料で衝撃を与えられた、又は機械加工されたままの状態で焼結された(即ち、未焼結状態である間に粒子材料で衝撃を与えられていない)未焼結体から調製された、約73%又は約75%のいずれかの多孔率を有する(ラベル表示されるように)CP−Ti金属マトリックスの平均表面粗さ測定値を提供する。表面粗さは、それぞれ、上記に定義される通りである、Paパラメーター、Ppパラメーター、Ptパラメーター、及びPqパラメーターを用いて表される。
【表6】
【0049】
以下の表6は、本開示技術に従って粒子材料で衝撃を与えられた、又は機械加工されたままの状態で焼結された(即ち、未焼結状態である間に、粒子材料で衝撃を与えられていない)未焼結体から調製された、約73%又は約75%のいずれかの多孔率を有する(ラベル表示されるように)Ti−6Al−4V金属マトリックスの平均表面粗さ測定値を提供する。表面粗さは、それぞれ、上記に定義される通りである、Paパラメーター、Ppパラメーター、Ptパラメーター、及びPqパラメーターを用いて表される。
【表7】
【0050】
本発明は、具体的な実施形態を参照して記載され、図示されてきたが、当業者は、本明細書に記載され、以下の特許請求の範囲に説明される本発明の原理から逸脱することなく、修正及び変形が行われてもよいことを理解するであろう。
【0051】
〔実施の態様〕
(1) 圧縮金属粉末を含む未焼結体を処理するための方法であって、前記未焼結体から前記金属粉末の一部分を転置するのに有効な時間及び有効な条件下で、前記未焼結体に粒子材料で衝撃を与えることを含む、方法。
(2) 前記未焼結体を焼結することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 実施態様2の方法に従って作製された移植物を、患者に外科的に取り付けることを含む、方法。
(4) 少なくとも1つの金属粉末を抽出可能材料と混合し、それによって、前記金属粉末及び抽出可能材料がそれぞれの位置を担う粉末混合物を形成することと、
前記粉末混合物を成形物に成形することと、
前記未焼結体を形成するために、前記成形物を圧縮することと、
を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記未焼結体を処理することを更に含む、実施態様4に記載の方法。
(6) 前記粉末混合物が、約18重量%〜約67重量%の金属粉末を含み、前記粉末混合物の残部が前記抽出可能材料を含む、実施態様4に記載の方法。
(7) 前記抽出可能材料が可溶性である溶媒に前記未焼結体を暴露することを更に含む、実施態様4に記載の方法。
(8) 前記抽出可能材料が、水性溶媒、有機溶媒、又は両方に可溶性である、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記未焼結体が、前記溶媒中に浸漬される、実施態様7に記載の方法。
(10) 前記抽出可能材料の少なくとも一部を蒸発させるが、依然として前記金属粉末を前記未焼結体内における前記金属粉末の位置に実質的に維持するのに有効な時間及び有効な条件下で、前記未焼結体を加熱することを更に含む、実施態様4に記載の方法。
【0052】
(11) 前記未焼結体が、抽出可能材料を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(12) 前記金属粉末が、チタニウム、チタニウム合金、コバルト−クロム合金、モリブデン、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、ステンレス鋼、又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施態様1に記載の方法。
(13) 前記粒子材料が、加熱することによって除去可能である、実施態様1に記載の方法。
(14) 前記粒子材料が、重炭酸アンモニウム、尿素、ビウレット、メラミン、炭酸アンモニウム、ナフタレン、重炭酸ナトリウム、又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記粒子材料が、液体に可溶性であり、前記方法が、前記未焼結体を焼結する前に、液体を備える浴中に前記未焼結体を浸漬させることを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(16) 前記粒子材料が、塩を含む、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記未焼結体が、約50%〜約90%の多孔率を有する、実施態様1に記載の方法。
(18) 前記粒子材料が、約150μm〜約1250μmの平均直径を有する粒子を含む、実施態様1に記載の方法。
(19) 前記粒子材料が、約20.7kPa(約3psi)〜約172.4kPa(約25psi)の圧力で前記未焼結体に衝撃を与える、実施態様1に記載の方法。
(20) 衝撃を与えることが、約2秒間〜約30秒間以下実施される、実施態様1に記載の方法。
【0053】
(21) 前記粒子材料が、前記未焼結体から約5.1cm(約2インチ)〜約76.2cm(約30インチ)に配置される開口部から噴出される、実施態様1に記載の方法。
(22) 実施態様1の方法に従って調製された未焼結体。
(23) 金属マトリックスを備える移植物であって、前記金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、少なくとも約0.7の、約320.4g/L(約20lb/ft3)の密度を有するポリウレタン発泡体を備えるポリマー骨類似体との静止摩擦係数を有する、移植物。
(24) 前記金属マトリックスが、チタニウム、チタニウム合金、コバルト−クロム合金、モリブデン、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、ステンレス鋼、又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施態様23に記載の移植物。
(25) 前記金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、約0.7〜約1.5の、前記ポリマー骨類似体との静止摩擦係数を有する、実施態様23に記載の移植物。
(26) 実施態様23に記載の移植物を、患者に外科的に取り付けることを含む、方法。
(27) 金属マトリックスを備える移植物であって、前記金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、少なくとも約20のPa値に対応する粗さ、少なくとも約60のPp値に対応する粗さ、少なくとも約140のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約30のPq値に対応する粗さを有する、移植物。
(28) 前記金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、少なくとも約50のPa値に対応する粗さ、少なくとも約90のPp値に対応する粗さ、少なくとも約200のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約60のPq値に対応する粗さを有する、実施態様27に記載の移植物。
(29) 前記金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、少なくとも約70のPa値に対応する粗さ、少なくとも約120のPp値に対応する粗さ、少なくとも約300のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約70のPq値に対応する粗さを有する、実施態様27に記載の移植物。
(30) 実施態様27に記載の移植物を、患者に外科的に取り付けることを含む、方法。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、全開示の全体が本明細書に組み込まれる、2008年5月22日に出願された米国仮特許第61/055,304号の優先権を主張する、2009年5月21日に出願された米国第12/470,397号の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、整形外科用移植物、及び整形外科用移植物を作製するために使用される材料、並びにそのような移植物及び材料を生産し、使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
「スペースホルダー」方法は、金属発泡体構造を作製するための周知のプロセスであり、金属粉末と組み合わせられてから、熱溶解又は液体溶解を含む様々な方法によってその組み合わせから除去され、金属粉末から形成される多孔質マトリックスを残留させる、溶解可能な、ないしは別の方法で除去可能な、空間保持材料(space-holdingmaterials)を採用する。次に、多孔質マトリックス材料を焼結して、マトリックス構造を更に強化する。スペースホルダー概念に関する多数の変形が当該技術分野において既知である。例えば、米国特許第3,852,045号、同第6,849,230号、米国特許公開第2005/0249625号、同第2006/0002810号を参照されたい。
【0004】
表面粗さは、骨へのセメントレス固定用の整形外科用移植物の重要な属性である。高い表面粗さは、骨に対する高摩擦及び初期移植における一般的な安定性に対応し得、これらの両方は、骨を介した長期にわたる安定性及び組織の内部成長につながる。生物学的固定を向上し、組織の内部成長を最大限にすると言われる移植物コーティングを含む、移植物表面と関連して使用するための幾つかの多孔質コーティング製品が開発されてきた。骨組織の内部成長によって、移植物を骨にしっかりと固定するために、相互接続した孔の網状組織を提供する一方で、移植物と骨との間の相対運動の低減をもたらすように骨と接触する、粗い、高摩擦表面を付与するために、そのようなコーティングが移植物の面に適用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本発明は、未焼結体から金属粉末の一部分を転置するのに有効な条件下で、未焼結体に粒子材料で衝撃を与える工程を含む、圧縮金属粉末を含む未焼結体を処理するための方法を提供する。
【0006】
また、金属マトリックスを備える移植物であって、金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、約0.7以上の、ポリマー骨類似体との静止摩擦係数を有する、移植物も提供される。また、金属マトリックスを備える移植物であって、金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、少なくとも約20のPa値に対応する粗さ、少なくとも約60のPp値に対応する粗さ、少なくとも約140のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約30のPq値に対応する粗さを有する、移植物も開示される。
【0007】
また、本方法は、開示される処理技術に従って作製された移植物を外科的に取り付ける工程も含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一態様に従う方法を図示する、概略フローチャート。
【図2A】部分が発明方法に従って処理された、未焼結体の外側面輪郭を示す。
【図2B】部分が発明方法に従って処理された、未焼結体の外側面輪郭を示す。
【図3】様々な材料のポリマー骨類似体に対する静止摩擦係数の測定値を提供する。
【図4】CP−Ti金属マトリックス試料の表面粗さを、金属マトリックス試料が調製された未焼結体試料が粒子材料で衝撃を与えられた(粒子材料を「吹き付けられた」)圧力(psi)と比較するグラフであって、表面粗さが、Paパラメーターを用いて表される、グラフを描写する。
【図5】CP−Ti金属マトリックス試料の表面粗さを、金属マトリックス試料が調製された未焼結体試料が粒子材料で衝撃を与えられた(粒子材料を「吹き付けられた」)圧力(psi)と比較するグラフであって、表面粗さが、Ppパラメーターを用いて表される、グラフを描写する。
【図6】CP−Ti金属マトリックス試料の表面粗さを、金属マトリックス試料が調製された未焼結体試料が粒子材料で衝撃を与えられた(粒子材料を「吹き付けられた」)圧力(psi)と比較するグラフであって、表面粗さが、Ptパラメーターを用いて表される、グラフを描写する。
【図7】CP−Ti金属マトリックス試料の表面粗さを、金属マトリックス試料が調製された未焼結体試料が粒子材料で衝撃を与えられた(粒子材料を「吹き付けられた」)圧力(psi)と比較するグラフであって、表面粗さが、Pqパラメーターを用いて表される、グラフを描写する。
【図8】Ti−6Al−4V金属マトリックス試料の表面粗さを、金属マトリックス試料が調製された未焼結体試料が粒子材料で衝撃を与えられた(粒子材料を「吹き付けられた」)圧力(psi)と比較するグラフであって、表面粗さが、Paパラメーターを用いて表される、グラフを描写する。
【図9】Ti−6Al−4V金属マトリックス試料の表面粗さを、金属マトリックス試料が調製された未焼結体試料が粒子材料で衝撃を与えられた(粒子材料を「吹き付けられた」)圧力(psi)と比較するグラフであって、表面粗さが、Ppパラメーターを用いて表される、グラフを描写する。
【図10】Ti−6Al−4V金属マトリックス試料の表面粗さを、金属マトリックス試料が調製された未焼結体試料が粒子材料で衝撃を与えられた(粒子材料を「吹き付けられた」)圧力(psi)と比較するグラフであって、表面粗さが、Ptパラメーターを用いて表される、グラフを描写する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、本開示の一部を形成する、添付図面及び実施例に関連して解釈される以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解することができる。本発明は、本明細書に記載する及び/又は示す特定の製品、方法、条件、又はパラメーターに限定されるものではなく、本明細書で使用される専門用語は実施例を用いて具体的な実施形態を記載する目的のためだけのものであり、請求した発明を制限することを意図するものではないことが理解されるべきである。
【0010】
本開示では、単数形「a」、「an」、及び「the」は、特に明示しない限り、複数の参照及び少なくともその特定の値を含む特定の数値の参照を含む。したがって、例えば、「材料(a material)」に対する参照は、1種又はそれ以上のこのような材料及び当業者に既知であるその等価物等に対する参照である。値が先行詞「約」を用いることにより近似値として表現されるとき、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されよう。本明細書で使用される場合、「約X」(Xは、数値である)は、包括的に、列挙される値の±10%を指す。例えば、「約8」という語句は、包括的に、7.2〜8.8の値を指し、別の例としては、「約8%」という語句は、包括的に、7.2%〜8.8%の値を指す。存在する場合、全ての範囲は包括的かつ組み合わせ可能である。
【0011】
本明細書に引用又は記載する各特許、特許出願及び刊行物の開示は、その全文を参照することにより本明細書に組み込む。
【0012】
多孔質コーティング製品は、骨組織の内部成長によって、移植物を骨にしっかりと固定するために、相互接続した孔の網状組織を提供する一方で、そのような移植物と骨との間の摩擦を増加させるために、成形移植物の外側表面の1つ以上に適用されてもよい。粗化表面コーティングは、ピークを呈し、移植物面上に存在する場合、接触圧力の増加、従って移植物面と、隣接する骨の表面との間の、刻装及び磨耗性接触をもたらすと考えられる。移植物の表面でのそのような現象は、移植におけるより高い安定性に対応し、移植物の生物学的固定を達成する可能性を高め得る、移植物と骨との間の相対運動への抵抗を増加させる。
【0013】
本発明は、金属マトリックスを備える整形外科用移植物の表面上への多孔質コーティング製品の使用の随伴方法又は代替を示す。未焼結体の表面トポグラフィー、即ち、金属粉末を含む、圧縮されているが未焼結の質量を含む物品は、未焼結体の表面から圧縮金属粉末の部分を転置することによって改変され得ることが現在発見されている。得られるトポグラフィーは、少なくとも一部において、移植物のコーティングされた表面と酷似する、くぼみ又は谷部分及びピークによって特性化され、そのような未焼結体から形成される移植物が、隣接する骨表面との増加した摩擦を呈するようにする。そのような増加した摩擦の付随効果は、前述を考慮すれば明らかであり、移植物の安定性と、骨及び組織との成功した一体化を通じて生物学的固定の高い可能性と、を含む。しかしながら、コーティングされた移植物とは異なり、得られる移植物のトポグラフィーは、移植物自体の固有特性であり、移植物材料以外の物質の使用から生じるものではない。したがって、ここに開示される手法は、少なくとも、表面コーティングを別個に入手する必要がないため、整形外科用移植物を調製する費用の削減につながる可能性を有する。
【0014】
本発明によると、圧縮金属粉末を含む未焼結体を処理するための方法が提供され、そのような方法は、未焼結体から金属粉末の一部分を転置するのに有効な時間及び有効な条件下で、未焼結体に粒子材料で衝撃を与える工程を含む。また、圧縮金属粉末を含む未焼結体であって、未焼結体から金属粉末の一部分を転置するのに有効な時間及び有効な条件下で、粒子材料で衝撃を与えられた、未焼結体も提供される。本方法は、未焼結体から金属粉末の一部分の転置に続いて、未焼結体を焼結する工程を更に含んでもよい。そのような焼結に続いて、任意に、機械加工又は他の処理工程が行われてもよい、焼結された未焼結体は、患者の体内に取り付けられ得る整形外科用移植物として機能することができる。したがって、本方法は、本発明に従って処理され、焼結された、未焼結体から作製された移植物を患者に外科的に取り付ける工程を更に含んでもよい。
【0015】
粒子材料で衝撃を与えられる未焼結体は、従来の技術を使用して調製されてもよい。未焼結体の調製は、少なくとも1つの金属粉末を抽出可能材料と混合し、それによって、金属粉末及び抽出可能材料がそれぞれの位置をとる粉末混合物を形成する工程と、粉末混合物を成形物に成形する工程と、未焼結体を形成するために、成形物を圧縮する工程とを含んでもよい。
【0016】
金属粉末は、任意の生体適合性金属を含んでもよく、その非制限的な例としては、チタニウム、チタニウム合金、コバルト−クロム合金、モリブデン、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、ステンレス鋼、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。抽出可能材料は、液体、有機溶媒、又は両方に可溶性の材料であってもよく、塩、糖、固体炭化水素、尿素誘導体、ポリマー、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。好適な例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、スクロース、ソルビン酸カリウム、カルバミド、ビウレット、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、ナフタレン、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。あるいは、抽出可能材料は、加熱及び/又は圧力条件下で除去されてもよく、例えば、抽出可能材料は、加熱の結果として、揮発、融解、ないしは別の方法で消散してもよい。そのような抽出可能材料の例としては、重炭酸アンモニウム、尿素、ビウレット、メラミン、炭酸アンモニウム、ナフタレン、重炭酸ナトリウム、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0017】
金属粉末を抽出可能材料と混合する好適な技術は、当業者により容易に理解されるであろう。例えば、米国特許第3,852,045号、同第6,849,230号、米国特許公開第2005/0249625号、同第2006/0002810号を参照されたい。理想的には、混合により、粉末混合物の主要な部分を含む粒子間に、粉末混合物の少量成分を含む実質的に均一な粒子分散物が生じる。金属粉末は、粉末混合物の約18〜約67重量パーセントを構成してもよく、粉末混合物の残部は、抽出可能材料を含む。本方法の後の段階で抽出可能材料が未焼結体から除去されると、得られる未焼結体の多孔率は、約50%〜約90%、好ましくは約60%〜約85%であり得る。抽出可能材料の除去は、以下により完全に記載される。
【0018】
少なくとも1つの金属粉末の抽出可能材料との混合に続き、粉末混合物は、成形物に成形されてもよい。成形プロセスは、鋳型を粉末混合物で充填する工程を含むことができ、鋳型は、所望の最終移植物製品の少なくとも概略の三次元パラメーターを有し、機械加工等の続く処理工程を可能にする。他の実施形態では、ネットのような成形部品、又は鋳造形態が所望の最終焼結部品と類似する部品を生産するように鋳型を設計する必要はなく、鋳型は、バー、ロッド、プレート、又はブロック等の一般的な形状を生産してもよく、これは、焼結誘発収縮の後、焼結部分の任意の機械加工を用いて、最終製品の所望の形状に非常に近い部品を生産するために、続いて未焼結状態で機械加工されてもよい。そのような目的のための鋳型及び鋳型アセンブリは、当業者に周知であり、例えば球形、回転楕円体、卵形、半球形、直平行六面体、円筒形、円錐曲線回転体(toriod)、円錘形、凹状半球形(即ち、カップ形)、不規則、又は任意の他の所望の三次元形態を有する本体を調製することができる。いったん、前述に従って粉末混合物から形成されると、得られる成形物は、未焼結体を形成するために、圧縮されてもよい。成形物は、鋳型アセンブリ内に収容されている間に、圧縮される。圧縮は、一軸、多軸、又は等方圧であってもよい。好ましい実施形態では、成形物を未焼結体に圧縮するために、冷間等方圧プレスが使用される。圧縮手順に続き、得られる未焼結体は、鋳型から取り外され、処理されてもよい。処理は、未焼結体の形状を機械加工する、又は別様に精密化することを含んでもよい。
【0019】
圧縮の後に機械加工が実施されるかされないかに関わらず、次いで、未焼結体は、抽出可能材料が可溶性である溶媒に暴露されてもよい。上述されるように、抽出可能材料は、水性溶媒、有機溶媒、又は両方に可溶性であってもよい。溶媒への未焼結体の暴露は、例えば、抽出可能材料の少なくとも一部を除去するのに十分な時間、溶媒を備える浴中に未焼結体を浸漬させることによって、未焼結体を溶媒中に浸漬させる工程を含んでもよい。抽出可能材料の識別に関連して選択される溶媒の種類、溶媒の温度、及び溶媒への暴露時間等の様々な要因によって、未焼結体からの抽出可能材料の除去は、部分的な除去から完全な除去に及ぶことができる。抽出可能材料が可溶性である溶媒への未焼結体の暴露は、好ましくは、少なくとも未焼結体の表面から、未焼結体の任意の所与の表面から少なくとも約1mm、少なくとも約3mm、少なくとも約5mm、少なくとも約7mm、又は少なくとも約10mmの深さの抽出可能材料を除去する。
【0020】
別の実施形態では、抽出可能材料は、水性溶媒又は有機溶媒に不溶性であり、加熱条件下で除去可能である。そのような状況では、圧縮を介した未焼結体の形成の後(圧縮に続いて機械加工が実施されるかされないかに関わらず)、未焼結体は、抽出可能材料の少なくとも一部を蒸発させるが、依然として金属粉末を未焼結体内における金属粉末の位置に実質的に維持するのに有効な時間及び有効な条件下で、加熱されてもよい。抽出可能材料の識別、加熱環境の温度、及び加熱時間等の様々な要因によって、未焼結体からの抽出可能材料の除去は、部分的な除去から完全な除去に及ぶことができ、未焼結体の加熱は、好ましくは、少なくとも未焼結体の表面から、未焼結体の全深さの少なくとも約5%下方までの抽出可能材料を除去する。好ましくは、抽出可能材料の熱的除去は、未焼結体材料が有機スペースホルダーからのC、N、又はHによって汚染されるのを回避するために、焼結温度より大幅に低い温度で実施される。例えば、抽出可能材料の熱的除去は、重炭酸アンモニウム等の幾つかの抽出可能材料の分解をもたらすのに十分である、約100℃未満で実施されてもよい。
【0021】
本発明による未焼結体は、未焼結体から金属粉末の一部分を転置するのに有効な時間及び有効な条件下で、粒子材料で衝撃を与えられてもよい。未焼結体から金属粉末の一部分を転置することによって、未焼結体の表面形状が変化する。変化した表面形状は、「粗さ」として表現されてもよく、一般に、少なくとも一部において、規則的な、若しくは不規則なくぼみ(又は谷部分)及びピークによって特性化される。本発明によると、粗さは、粒子材料が未焼結体に衝撃を与える力、粒子材料の特性(材料の種類、及び粒径、並びに形状を含む)と、粒子材料の源及び未焼結体の間の距離と、粒子材料が噴出される開口部の形状(衝撃を与える工程が、開口部から粒子材料を噴出することによって実施される際)と、未焼結体の表面領域の多孔率(未焼結体の製造中の金属粉末対抽出可能材料の比率に由来する)、並びに未焼結体を形成するために金属粉末及びスペースホルダー粒子混合物が圧縮される圧力を含む、未焼結体自体の特性と、を含む数多くの要因によって変化させることができる。
【0022】
未焼結体に衝撃を与えるために使用される粒子材料は、水性溶媒、有機溶媒、又は両方に可溶性であってもよい。粒子材料は、塩、糖、固体炭化水素、尿素誘導体、ポリマー、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。好適な例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、スクロース、ソルビン酸カリウム、カルバミド、ビウレット、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、ナフタレン、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。更に、又はあるいは、粒子材料は、加熱及び/又は圧力条件下で除去可能であってもよく、例えば、粒子材料は、加熱の結果として、揮発、融解、ないしは別の方法で消散してもよい。そのような粒子材料の例としては、重炭酸アンモニウム、尿素、ビウレット、メラミン、炭酸アンモニウム、ナフタレン、重炭酸ナトリウム、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。粒子材料の熱的除去は、任意の焼結する工程から独立した加熱サイクルとして、又は直前に先行し、焼結温度まで「上昇する」、連続炉サイクルの一部として実施されてもよい。好ましくは、粒子材料の熱的除去は、未焼結体材料が有機スペースホルダーからのC、N、又はHによって汚染されるのを回避するために、焼結温度より大幅に低い温度で実施される。例えば、粒子材料の熱的除去は、重炭酸アンモニウム等の幾つかの粒子材料の分解をもたらすのに十分である、約100℃未満で実施されてもよい。
【0023】
粒子材料は、不規則若しくは様々な形状であり、粒径の混ざった粒子を含んでもよく、又は、粒径、形状、若しくは両方が実質的に均一の粒子を含んでもよい。例えば、粒子材料の粒子は、実質的に球形、楕円形であってもよく、又は結晶性であり、任意の数の異なる結晶形態を有してもよい。一実施形態では、粒子材料は、約150μm〜約1250μmの平均直径(例えば、任意の所与の粒子の主要寸法に沿って)を有する粒子を含む。
【0024】
粒子材料が未焼結体に衝突する力は、未焼結体から金属粉末の転置に影響を及ぼすことができる。粒子材料が未焼結体に衝突する「力」は、圧力を用いて、例えば、1平方インチ当たりのポンド力の単位で表されてもよい。本発明によると、粒子材料は、約20.7kPa(約3psi)〜約206.8kPa(約30psi)、例えば、約34.5kPa(約5psi)、約48.3kPa(約7psi)、約68.9kPa(約10psi)、約103.4kPa(約15psi)、約137.9kPa(約20psi)、約172.4kPa(約25psi)、約186.2kPa(約27psi)、又は約206.8kPa(約30psi)の圧力で、未焼結体に衝撃を与える。未焼結体が粒子材料で衝撃を与えられる力/圧力量は、衝撃を与えるプロセス中に変化してもよく、例えば、未焼結体が衝撃を与えられる力/圧力は、衝撃を与えるプロセスにわたって増加してもよく、減少してもよく、又は減少と増加が交互になってもよい。
【0025】
更に、衝撃を与える工程が実施される時間量は、未焼結体から金属粉末の転置に影響を及ぼすことができる。特定の実施形態では、約2秒間〜約2分間以下、好ましくは約2秒間〜約30秒間以下、衝撃を与える工程が実施される。衝撃を与える時間は、部品寸法に依存してもよく、粒子材料の「ストリーム」は、特定の小さな部品の対向表面全体に及ぶのに十分に幅が広くてもよく、一方、部品がより大きな表面積を特徴とする場合、より長い時間が必要とされ得る。未焼結体に粒子材料で衝撃を与える工程は、単一の事象として、即ち、単一の連続する期間にわたって行われてもよく、又は、例えば、衝撃を与える一事象に、衝撃が起こらない期間が続き、衝撃を与える第2の事象が続き、任意に、このサイクルが1回以上繰り返される、幾つかの事象として、起こってもよい。衝撃を与えるそれぞれの事象は、任意に、約1秒間〜約2分間以下、好ましくは約1秒間〜約30秒間以下実施される。
【0026】
未焼結体に粒子材料で衝撃を与える工程は、粒子材料の源に接続される開口部等の好適な構造から粒子材料を噴出することによって達成されてもよい。粒子材料は、衝撃を与えるプロセス中、未焼結体から約5.1cm(2インチ)〜約76.2cm(30インチ)に配置される開口部から噴出されてもよい。開口部及び未焼結体は、互いに対して静止していてもよい、即ち、それらの間の距離が衝撃を与える工程の間に変化しないように固定されてもよい。あるいは、衝撃を与えるプロセスは、未焼結体と開口部との間の距離が、衝撃を与えるプロセスの間に増加する、減少する、又は増加及び減少となるように、実施されてもよい。
【0027】
未焼結体は、衝撃を与えるプロセス中、静止していてもよく、又は未焼結体の複数の表面が粒子材料で衝撃を与えられるようにするために、例えば、回転される、横方向に移される、ないしは別の方法で空間的に並進されてもよい。粒子材料の源の未焼結体に対する配向を変化させることによって、同一の結果が達成され得る。一実施例では、未焼結体は、所与の速度で回転されてもよく、又は未焼結体が回転される速度は、衝撃を与えるプロセスのコースにわたって変化してもよい。未焼結体は、衝撃を与える工程中、約5rpm〜約100rpm、好ましくは約10rpm〜約60rpmの様々な速度で回転されてもよい。他の実施形態では、粒子材料の源は、静止した未焼結体に対して、例えば、約0.25cm/秒(約0.1インチ/秒)、約0.51cm/秒(約0.2インチ/秒)、約0.64cm/秒(約0.25インチ/秒)、約1.27cm/秒(約0.5インチ/秒)、約2.5cm/秒(約1.0インチ/秒)、約3.8cm/秒(約1.5インチ/秒)、約5.1cm/秒(約2.0インチ/秒)、約6.4cm/秒(約2.5インチ/秒)、約7.6cm/秒(約3.0インチ/秒)、約8.9cm/秒(約3.5インチ/秒)、約10.2cm/秒(約4.0インチ/秒)、又はそれより早い速度で移動されてもよい。
【0028】
衝撃を与えるプロセス中、粒子材料は、未焼結体の表面に留まる傾向がある。未焼結体が、「スペースホルダー」方法、即ち、金属粉末及び抽出可能材料の混合物を圧縮する方法を使用して調製されており、続いて任意に処理され(機械加工等)、抽出可能材料の少なくとも一部分が除去される(溶媒を用いた処理、又は加熱を用いた処理のいずれかによって)際、また、一部の抽出可能材料が未焼結体内に残存し得る可能性もある。したがって、本方法は、衝撃を与えるプロセスに続き、粒子材料が可溶性である、抽出可能材料が可溶性である、又は粒子材料と抽出可能材料が可溶性である溶媒に、未焼結体を暴露する工程を更に含んでもよい。例えば、粒子材料が液体に可溶性である場合、未焼結体は、衝撃を与えるプロセスに続き、液体を備える浴中に浸漬されてもよい。未焼結体の液体への暴露は、衝撃を与えるプロセスから粒子材料の全て、又は実質的に全てを除去し、また、任意の残りの抽出可能材料の全て、又は実質的に全てを除去する働きもし得る。あるいは、粒子材料が液体又は有機液体に可溶性ではないが、代わりに熱によって除去可能である場合、未焼結体に埋め込まれた任意の粒子材料は、加熱を介して除去することができる。そのような加熱は、移植物を調製するために、未焼結体に対して従来的に実施される焼結プロセスに準じて、「上昇」期間中に達成されてもよい。
【0029】
衝撃を与えるプロセス、及び必要に応じて、未焼結体からの粒子材料及び/又は抽出可能材料の除去に続き、本方法は、未焼結体を焼結する工程を更に含んでもよい。焼結する工程は、典型的に、真空炉内で実施され、当業者は、金属粉末を含む未焼結体を焼結するのに適切な条件を容易に理解するであろう。焼結体の形状特性を精密化するために、焼結する工程に、機械加工を含む追加の処理工程が続いてもよい。
【0030】
本発明による例示的な製造プロセスを、図1に図示する。上述されるように、プロセスは、少なくとも1つの金属粉末を抽出可能材料と混合し、粉末混合物を成形物に成形し、未焼結体を形成するために成形物を圧縮し、任意に成形物を処理する(例えば、機械加工によって)工程で開始し、移植物を形成するために、未焼結体を処理し、抽出可能材料を除去し(抽出可能材料が可溶性である溶媒に未焼結体を暴露すること等によって)、未焼結体に粒子材料で衝撃を与え、任意に未焼結体から粒子材料を除去し(例えば、粒子材料が可溶性である溶媒に未焼結体を暴露することによって)、未焼結体を焼結し、所望により、最終処理をする(例えば、機械加工によって)工程が続いてもよい。前述を考慮し、製造業者及び/又は所望の製品の必要性に従って、様々な図示される処理工程を修正若しくは変更する、又は場合によっては完全に省略することができることが明らかとなるであろう。図1に図示される概略図は、一実施形態を描写することが意図されるが、それは本発明による、可能な処理経路に過ぎない。
【0031】
本方法は、上述の衝撃を与える工程及び焼結する工程に従って作製された移植物を外科的に取り付ける工程を更に含んでもよい。列挙される衝撃を与える工程及び焼結する工程に従って作製された移植物は、上述されるように、外科的移植における安定性を確保するのに特によく適しており、生物学的固定、及び内部成長を介したその場での骨及び組織との一体化に好ましいという特性を有する。
【0032】
本発明によると、また、金属マトリックスを備える移植物も提供される。本移植物の1つ以上の表面は、従来の移植物の表面に関して存在するものとは区別できる、特定の特性(例えば、静止摩擦係数、表面形状の様々な態様)を有してもよい。一実施形態では、金属マトリックスの少なくとも1つの表面は、約0.7以上の、約320.4g/L(約20lb/ft3)の密度を有するポリウレタン発泡体を備えるポリマー骨類似体との静止摩擦係数を有する。多孔質コーティング製品と共に表面上にコーティングされた金属マトリックスを備える移植物は、約0.7以上のポリマー骨類似体との静止摩擦係数を生じ得るが、静止摩擦係数は、金属マトリックス自体の表面ではなく、コーティングに起因する。更に、従来の多孔質コーティングされた製品の粗さは、通常、コーティングを形成するために使用された金属粉末、ワイヤ、又は繊維の形状、及び部品の、表面上でのそれらの配置に由来し、これは、どのようにコーティングが基材上に成膜されたかに大いに依存する。本発明の他の実施形態では、金属マトリックスの少なくとも1つの表面は、約0.7〜約1.5の、ポリマー骨類似体との静止摩擦係数を有する。したがって、本移植物は、1つ以上の表面が多孔質コーティング製品でコーティングされた移植物とは異なり、金属マトリックスの1つ以上の表面で、高静止摩擦係数を提供する。ポリウレタンを備えるポリマー骨類似体は、発明移植物に対する基準点を提供する。本移植物の特性が、異なる摩擦基材への言及によって説明することができる限り、本発明の範囲は、約320.4g/L(約20lb/ft3)の密度を有するポリウレタン発泡体を備えるポリマー骨類似体への言及によってのみ説明することができる移植物に限定されると、解釈されるべきではない。列挙される骨類似体の一例は、320.4g/L(20lb/ft3)の密度を有する、「剛性の独立気泡ポリウレタン発泡体」であると言われる、General Plastics Manufacturing Co.(Tacoma,WA)からのカタログ番号FR−4520である。
【0033】
また、少なくとも一部分が、金属マトリックスを備え、少なくとも第2の部分が、固体基材であってもよい基材材料を含む、移植物又は他の製造品も開示される。例えば、移植物又は製造品は、固体基材の少なくとも一部分上に、約0.5mm〜約50mmの厚さを有する、金属マトリックス材料の層又はコーティングを含んでもよい。そのような実施形態では、金属マトリックスの1つ以上の表面は、従来の移植物の表面に関して存在するものとは区別できる、特定の特性(例えば、静止摩擦係数、表面形状/粗さの様々な態様)を有してもよい。本開示を通じて、「金属マトリックスを備える移植物」は、固体基材の少なくとも一部分上に、金属マトリックス材料のコーティングを備える移植物又は製造品を指し得る。
【0034】
本移植物の金属マトリックス及びコーティングは、チタニウム、チタニウム合金、コバルト−クロム合金、モリブデン、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、ステンレス鋼、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0035】
また、金属マトリックスを備える移植物であって、金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、少なくとも約20のPa値に対応する粗さ、少なくとも約60のPp値に対応する粗さ、少なくとも約140のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約30のPq値に対応する粗さを有する、移植物も提供される。Paパラメーターは、サンプリング長さ内の平均線からのフィルタ処理されていない生プロファイル逸脱の算術平均値を表し、Ppは、サンプリング長さ内の平均線からのフィルタ処理されていない生粗さプロファイルの最大ピーク偏差であり、Ptは、評価長さ内のフィルタ処理されていない生プロファイルのピークから谷部分の最大高さであり、Pqは、全ての2乗した「z」値の平均の平方根であり、1つのサンプリング長さにわたって定義される。これらのパラメーターは、ISO 4287(1997)に準じる。他の実施形態では、開示される移植物は、金属マトリックスを備え、金属マトリックスの少なくとも1つの表面は、少なくとも約50のPa値に対応する粗さ、少なくとも約90のPp値に対応する粗さ、少なくとも約200のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約60のPq値に対応する粗さを有する。本移植物の更に他の実施形態では、金属マトリックスの少なくとも1つの表面は、少なくとも約70のPa値に対応する粗さ、少なくとも約120のPp値に対応する粗さ、少なくとも約300のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約70のPq値に対応する粗さを有する。
【0036】
また、金属マトリックスを備える移植物を外科的に取り付ける工程を含む方法であって、金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、約0.7以上の、約320.4g/L(約20lb/ft3)の密度を有するポリウレタン発泡体を備えるポリマー骨類似体との静止摩擦係数を有する、方法も提供される。別の態様では、金属マトリックスを備える移植物を外科的に取り付ける工程を含む方法であって、金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、約0.7〜約1.5の、ポリマー骨類似体との静止摩擦係数を有する、方法が提供される。他の実施形態では、金属マトリックスを備える移植物を外科的に取り付ける工程を含む方法であって、金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、少なくとも約20のPa値に対応する粗さ、少なくとも約60のPp値に対応する粗さ、少なくとも約140のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約30のPq値に対応する粗さを有する、方法が提供される。金属マトリックスを備える移植物は、少なくとも約50のPa値に対応する粗さ、少なくとも約90のPp値に対応する粗さ、少なくとも約200のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約60のPq値に対応する粗さを有する、少なくとも1つの表面を有してもよい。更に他の実施形態では、本方法に従って外科的に取り付けられる金属マトリックスの少なくとも1つの表面は、少なくとも約70のPa値に対応する粗さ、少なくとも約120のPp値に対応する粗さ、少なくとも約300のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約70のPq値に対応する粗さを有する。本方法に準じて外科的に取り付けられる移植物の金属マトリックスは、チタニウム、チタニウム合金、コバルト−クロム合金、モリブデン、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、ステンレス鋼、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【実施例】
【0037】
実施例1−粒子材料で衝撃を与えられた未焼結体のトポグラフィー
図2A及び図2Bは、未焼結体から金属粉末の一部分を転置するのに有効な時間及び有効な条件下で、特定の部分が粒子材料で衝撃を与えられた、未焼結体の表面を通る断面の側面図をそれぞれ描写する。比較のために、それぞれの未焼結体の端部付近の部分(大括弧で印が付けられた)は、本発明に従って処理されなかった、即ち、粒子材料で衝撃を与えられなかった。未処理部分の表面特性は、未焼結体の粒子材料で衝撃を与えられた部分とは容易に区別できる。それぞれの画像で、白色材料は、金属マトリックスであり、黒色は、孔又は空所を表す。図2A中の未焼結体は、商業上純(Commercially Pure:「CP」)Tiの圧縮金属粉末を含み、未焼結体から約15.2cm(約6インチ)に置かれた開口部から、103.4kPa(15psi)の圧力で噴出された、塩化ナトリウムを含む粒子材料で、2秒間衝撃を与えられた。図2B中の未焼結体は、CP Tiの圧縮金属粉末を含み、未焼結体から約30.5cm(約12インチ)に置かれた開口部から、172.4kPa(25psi)の力で噴出された、塩化ナトリウムを含む粒子材料で、2秒間衝撃を与えられた。図2B中の未焼結体が粒子材料で衝撃を与えられた条件は、未焼結体の表面から金属粉末のより有意な転置をもたらし、それによって、より大きく、かつより深いくぼみ、ひいてはより高いピークを生じた。
【0038】
実施例2−衝撃を与えるプロセスのパラメーターの変化
以下の表1は、衝撃を与えるプロセスのパラメーターを変化させた、3つの例示的な実施形態を描写する。
【表1】
【0039】
表1に記載されるそれぞれの条件下で衝撃を与えるプロセスが実施された未焼結体のそれぞれに関して、好ましい結果が得られ、未焼結体のそれぞれは、未処理の未焼結体と比較して、粗化表面を特長とした。
【0040】
実施例3−静止摩擦係数の測定
3つの異なる材料のそれぞれ(図3に示される、材料A〜Cのそれぞれ)と、骨類似体、具体的には、320.4g/L(20lb/ft3)の密度を有する、「剛性の独立気泡ポリウレタン発泡体」であると言われる、General Plastics Manufacturing Co.(Tacoma,WA)からのカタログ番号FR−4520との間の静止摩擦係数が測定された。第1の材料(A)は、従来の「スペースホルダー」技術に従って調製された、多孔率が約75体積%の、焼結CP Ti発泡体構造であった。この試料の試験された表面は、試料が未焼結状態である間に、平らに機械加工された。第2の材料(B)は、多孔率が約75体積%の、焼結CP Ti発泡体構造であった。また、この試料の試験された表面も、試料が未焼結状態である間に、平らに機械加工されたが、また、表面は、次いで、表1に記載される条件に従って、NaClで衝撃を与えられ、したがって、第2の材料の試験表面は、本発明の実施形態に従って調製された。第3の材料(C)は、POROCOAT(登録商標)ビーズ状多孔質コーティング(Depuy Orthopaedics,Inc.,Warsaw,IN)、Ti−6Al−4V基材上の球形の非合金チタニウムビーズの焼結コーティングからな構成された。
【0041】
図3に示されるように、材料Bは、材料Cと同程度であり、かつ従来の「スペースホルダー」手法に従って調製された金属マトリックスである材料Aに関して測定された静止摩擦係数より大幅に高い、骨類似体との静止摩擦係数を有した。
【0042】
実施例4−例示的な実施形態を伴う、静止摩擦係数の追加測定値
CP Ti若しくはTi−6Al−4Vから、456.0又は684.0kPa(30又は45ksi)の冷間等方圧圧縮下で、及びそうでなければ従来の「スペースホルダー」技術に従って調製され、焼結後に約73%又は約75%の多孔率を有する、1.91cm×1.91cm(0.75インチ×0.75インチ)の正方形金属マトリックス試料の静止摩擦係数が測定された。試料は、少なくとも95重量%が250μmより小さいNaCl粒子(Morton’s Popcorn Salt(登録商標))によって衝撃を与えられた、又は粒子材料で衝撃を与えられることなく、未焼結状態で機械加工された。衝撃を与えられた試料では、塩化ナトリウムを含む粒子材料が、34.5(5psi)、68.9(10psi)、103.4(15、psi)、137.9(20psi)、又は172.4(25psi)の力で、未焼結体から約10.2〜20.3cm(約4〜8インチ)に置かれた開口部から噴出され、それぞれの試料に対して、約2.5cm/秒(約1インチ/秒)で移動する吹き付け装置を用いて、2回の「吹き付け」ストリームが実施された。
【0043】
摩擦試験は、「平面上スレッド(sled on a plane)」方法を使用して実施された。「スレッド」は、1.91cm×1.91cm(0.75インチ×0.75インチ)の正方形金属マトリックス試料からなり、一方、それぞれの「平面」は、Last−A−Foam(登録商標)6720(General Plastics Manufacturing Company,Tacoma,WA)、320.4g/L(20lb/ft3)の密度を有する、剛性の独立気泡ポリウレタン発泡体のフライス加工試料であった。それぞれのスレッドは、10lb単繊維糸で250Nのロードセルに接続され、10mm/分で、2.0cm(0.8インチ)引っ張られた。スレッドの上に配置された錘は、30Nの垂直力を生じた。最初の0.5Nの力の低下の前に記録された最大の力から静止摩擦係数が計算された。それぞれの試料に、3つの別個の試験が実施され、アセトン中、試験間で、超音波洗浄された。結果を以下の表2及び表3に示す。
【表2】
【表3】
【0044】
静止摩擦係数は、約0.7〜約1.5に及び、とりわけ、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、及び約1.5の値を含んだ。
【0045】
実施例5−衝撃を与える(「吹き付け」)プロセス中に使用された圧力と表面粗さとの間の相関関係
図4〜図10は、金属マトリックス試料から得られた平均表面粗さ値を、金属マトリックス試料が調製された、対応する未焼結体試料が粒子材料で衝撃を与えられた(粒子材料を「吹き付けられた」)圧力(psi)と比較するグラフを描写する。グラフは、金属マトリックスが調製された材料(CP Ti又はTi−6Al−4V)及び試料の多孔率(73%又は75%)を示すようにラベル表示される。表面粗さは、針として半径が500μmのルビー玉が取り付けられた、Zeiss Surfcomm 5000(Carl Zeiss Inc.,Germany)接触型表面形状測定装置を使用して評価された。0.3mm/秒の測定速度及び「最小2乗直線」傾動補正aで、フィルタ処理されていないPプロファイルの測定値を得るために、約1.5mm離間した、10本の平行な14mm長のトレースがそれぞれの試料から得られた。Pa(図4及び図8)は、サンプリング長さ内の平均線からのフィルタ処理されていない生プロファイル逸脱の算術平均値を表し、Pp(図5及び図9)は、サンプリング長さ内の平均線からのフィルタ処理されていない生粗さプロファイルの最大ピーク偏差であり、Pt(図6及び図10)は、評価長さ内のフィルタ処理されていない生プロファイルのピークから谷部分の最大高さであり、Pq(図7)は、全ての2乗した「z」値の平均の平方根であり、1つのサンプリング長さにわたって定義される。これらのパラメーターは、ISO 4287(1997)に準じる。図4〜図10では、ダイヤモンド(◆)は、本開示技術に従って未焼結状態である間に粒子材料で衝撃を与えられた表面を有する試料を表し、一方、四角形(■)は、未焼結状態で機械加工され、衝撃を与える手順が実施されていない試料を表す。
【0046】
以下の表3は、本開示技術に従って粒子材料で衝撃を与えられた未焼結体から調製された、約73%の多孔率を有するCP−Ti金属マトリックスの、まとめられた平均表面粗さ測定値を提供する。表面粗さは、それぞれ、上記に定義される通りである、Paパラメーター、Ppパラメーター、Ptパラメーター、及びPqパラメーターを用いて表される。
【表4】
【0047】
以下の表4は、本開示技術に従って粒子材料で衝撃を与えられた、又は機械加工されたままの状態で焼結された(即ち、未焼結状態である間に粒子材料で衝撃を与えられていない)未焼結体から調製された、約75%の多孔率を有するTi−64金属マトリックスのまとめられた平均表面粗さ測定値を提供する。表面粗さは、それぞれ、上記に定義される通りである、Pa、Pp、Pt、及びPqパラメーターを用いて表される。
【表5】
【0048】
以下の表5は、本開示技術に従って粒子材料で衝撃を与えられた、又は機械加工されたままの状態で焼結された(即ち、未焼結状態である間に粒子材料で衝撃を与えられていない)未焼結体から調製された、約73%又は約75%のいずれかの多孔率を有する(ラベル表示されるように)CP−Ti金属マトリックスの平均表面粗さ測定値を提供する。表面粗さは、それぞれ、上記に定義される通りである、Paパラメーター、Ppパラメーター、Ptパラメーター、及びPqパラメーターを用いて表される。
【表6】
【0049】
以下の表6は、本開示技術に従って粒子材料で衝撃を与えられた、又は機械加工されたままの状態で焼結された(即ち、未焼結状態である間に、粒子材料で衝撃を与えられていない)未焼結体から調製された、約73%又は約75%のいずれかの多孔率を有する(ラベル表示されるように)Ti−6Al−4V金属マトリックスの平均表面粗さ測定値を提供する。表面粗さは、それぞれ、上記に定義される通りである、Paパラメーター、Ppパラメーター、Ptパラメーター、及びPqパラメーターを用いて表される。
【表7】
【0050】
本発明は、具体的な実施形態を参照して記載され、図示されてきたが、当業者は、本明細書に記載され、以下の特許請求の範囲に説明される本発明の原理から逸脱することなく、修正及び変形が行われてもよいことを理解するであろう。
【0051】
〔実施の態様〕
(1) 圧縮金属粉末を含む未焼結体を処理するための方法であって、前記未焼結体から前記金属粉末の一部分を転置するのに有効な時間及び有効な条件下で、前記未焼結体に粒子材料で衝撃を与えることを含む、方法。
(2) 前記未焼結体を焼結することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 実施態様2の方法に従って作製された移植物を、患者に外科的に取り付けることを含む、方法。
(4) 少なくとも1つの金属粉末を抽出可能材料と混合し、それによって、前記金属粉末及び抽出可能材料がそれぞれの位置を担う粉末混合物を形成することと、
前記粉末混合物を成形物に成形することと、
前記未焼結体を形成するために、前記成形物を圧縮することと、
を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記未焼結体を処理することを更に含む、実施態様4に記載の方法。
(6) 前記粉末混合物が、約18重量%〜約67重量%の金属粉末を含み、前記粉末混合物の残部が前記抽出可能材料を含む、実施態様4に記載の方法。
(7) 前記抽出可能材料が可溶性である溶媒に前記未焼結体を暴露することを更に含む、実施態様4に記載の方法。
(8) 前記抽出可能材料が、水性溶媒、有機溶媒、又は両方に可溶性である、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記未焼結体が、前記溶媒中に浸漬される、実施態様7に記載の方法。
(10) 前記抽出可能材料の少なくとも一部を蒸発させるが、依然として前記金属粉末を前記未焼結体内における前記金属粉末の位置に実質的に維持するのに有効な時間及び有効な条件下で、前記未焼結体を加熱することを更に含む、実施態様4に記載の方法。
【0052】
(11) 前記未焼結体が、抽出可能材料を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(12) 前記金属粉末が、チタニウム、チタニウム合金、コバルト−クロム合金、モリブデン、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、ステンレス鋼、又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施態様1に記載の方法。
(13) 前記粒子材料が、加熱することによって除去可能である、実施態様1に記載の方法。
(14) 前記粒子材料が、重炭酸アンモニウム、尿素、ビウレット、メラミン、炭酸アンモニウム、ナフタレン、重炭酸ナトリウム、又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記粒子材料が、液体に可溶性であり、前記方法が、前記未焼結体を焼結する前に、液体を備える浴中に前記未焼結体を浸漬させることを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(16) 前記粒子材料が、塩を含む、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記未焼結体が、約50%〜約90%の多孔率を有する、実施態様1に記載の方法。
(18) 前記粒子材料が、約150μm〜約1250μmの平均直径を有する粒子を含む、実施態様1に記載の方法。
(19) 前記粒子材料が、約20.7kPa(約3psi)〜約172.4kPa(約25psi)の圧力で前記未焼結体に衝撃を与える、実施態様1に記載の方法。
(20) 衝撃を与えることが、約2秒間〜約30秒間以下実施される、実施態様1に記載の方法。
【0053】
(21) 前記粒子材料が、前記未焼結体から約5.1cm(約2インチ)〜約76.2cm(約30インチ)に配置される開口部から噴出される、実施態様1に記載の方法。
(22) 実施態様1の方法に従って調製された未焼結体。
(23) 金属マトリックスを備える移植物であって、前記金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、少なくとも約0.7の、約320.4g/L(約20lb/ft3)の密度を有するポリウレタン発泡体を備えるポリマー骨類似体との静止摩擦係数を有する、移植物。
(24) 前記金属マトリックスが、チタニウム、チタニウム合金、コバルト−クロム合金、モリブデン、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、ステンレス鋼、又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施態様23に記載の移植物。
(25) 前記金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、約0.7〜約1.5の、前記ポリマー骨類似体との静止摩擦係数を有する、実施態様23に記載の移植物。
(26) 実施態様23に記載の移植物を、患者に外科的に取り付けることを含む、方法。
(27) 金属マトリックスを備える移植物であって、前記金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、少なくとも約20のPa値に対応する粗さ、少なくとも約60のPp値に対応する粗さ、少なくとも約140のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約30のPq値に対応する粗さを有する、移植物。
(28) 前記金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、少なくとも約50のPa値に対応する粗さ、少なくとも約90のPp値に対応する粗さ、少なくとも約200のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約60のPq値に対応する粗さを有する、実施態様27に記載の移植物。
(29) 前記金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、少なくとも約70のPa値に対応する粗さ、少なくとも約120のPp値に対応する粗さ、少なくとも約300のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約70のPq値に対応する粗さを有する、実施態様27に記載の移植物。
(30) 実施態様27に記載の移植物を、患者に外科的に取り付けることを含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮金属粉末を含む未焼結体を処理するための方法であって、前記未焼結体から前記金属粉末の一部分を転置するのに有効な時間及び有効な条件下で、前記未焼結体に粒子材料で衝撃を与えることを含む、方法。
【請求項2】
前記未焼結体を焼結することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項2の方法に従って作製された移植物を、患者に外科的に取り付けることを含む、方法。
【請求項4】
少なくとも1つの金属粉末を抽出可能材料と混合し、それによって、前記金属粉末及び抽出可能材料がそれぞれの位置を担う粉末混合物を形成することと、
前記粉末混合物を成形物に成形することと、
前記未焼結体を形成するために、前記成形物を圧縮することと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記未焼結体を処理することを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記粉末混合物が、約18重量%〜約67重量%の金属粉末を含み、前記粉末混合物の残部が前記抽出可能材料を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記抽出可能材料が可溶性である溶媒に前記未焼結体を暴露することを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記抽出可能材料が、水性溶媒、有機溶媒、又は両方に可溶性である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記未焼結体が、前記溶媒中に浸漬される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記抽出可能材料の少なくとも一部を蒸発させるが、依然として前記金属粉末を前記未焼結体内における前記金属粉末の位置に実質的に維持するのに有効な時間及び有効な条件下で、前記未焼結体を加熱することを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記未焼結体が、抽出可能材料を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記金属粉末が、チタニウム、チタニウム合金、コバルト−クロム合金、モリブデン、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、ステンレス鋼、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記粒子材料が、加熱することによって除去可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記粒子材料が、重炭酸アンモニウム、尿素、ビウレット、メラミン、炭酸アンモニウム、ナフタレン、重炭酸ナトリウム、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記粒子材料が、液体に可溶性であり、前記方法が、前記未焼結体を焼結する前に、液体を備える浴中に前記未焼結体を浸漬させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記粒子材料が、塩を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記未焼結体が、約50%〜約90%の多孔率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記粒子材料が、約150μm〜約1250μmの平均直径を有する粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記粒子材料が、約20.7kPa(約3psi)〜約172.4kPa(約25psi)の圧力で前記未焼結体に衝撃を与える、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
衝撃を与えることが、約2秒間〜約30秒間以下実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記粒子材料が、前記未焼結体から約5.1cm(約2インチ)〜約76.2cm(約30インチ)に配置される開口部から噴出される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
請求項1の方法に従って調製された未焼結体。
【請求項23】
金属マトリックスを備える移植物であって、前記金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、少なくとも約0.7の、約320.4g/L(約20lb/ft3)の密度を有するポリウレタン発泡体を備えるポリマー骨類似体との静止摩擦係数を有する、移植物。
【請求項24】
前記金属マトリックスが、チタニウム、チタニウム合金、コバルト−クロム合金、モリブデン、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、ステンレス鋼、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項23に記載の移植物。
【請求項25】
前記金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、約0.7〜約1.5の、前記ポリマー骨類似体との静止摩擦係数を有する、請求項23に記載の移植物。
【請求項26】
金属マトリックスを備える移植物であって、前記金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、少なくとも約20のPa値に対応する粗さ、少なくとも約60のPp値に対応する粗さ、少なくとも約140のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約30のPq値に対応する粗さを有する、移植物。
【請求項27】
前記金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、少なくとも約50のPa値に対応する粗さ、少なくとも約90のPp値に対応する粗さ、少なくとも約200のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約60のPq値に対応する粗さを有する、請求項26に記載の移植物。
【請求項28】
前記金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、少なくとも約70のPa値に対応する粗さ、少なくとも約120のPp値に対応する粗さ、少なくとも約300のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約70のPq値に対応する粗さを有する、請求項26に記載の移植物。
【請求項1】
圧縮金属粉末を含む未焼結体を処理するための方法であって、前記未焼結体から前記金属粉末の一部分を転置するのに有効な時間及び有効な条件下で、前記未焼結体に粒子材料で衝撃を与えることを含む、方法。
【請求項2】
前記未焼結体を焼結することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項2の方法に従って作製された移植物を、患者に外科的に取り付けることを含む、方法。
【請求項4】
少なくとも1つの金属粉末を抽出可能材料と混合し、それによって、前記金属粉末及び抽出可能材料がそれぞれの位置を担う粉末混合物を形成することと、
前記粉末混合物を成形物に成形することと、
前記未焼結体を形成するために、前記成形物を圧縮することと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記未焼結体を処理することを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記粉末混合物が、約18重量%〜約67重量%の金属粉末を含み、前記粉末混合物の残部が前記抽出可能材料を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記抽出可能材料が可溶性である溶媒に前記未焼結体を暴露することを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記抽出可能材料が、水性溶媒、有機溶媒、又は両方に可溶性である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記未焼結体が、前記溶媒中に浸漬される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記抽出可能材料の少なくとも一部を蒸発させるが、依然として前記金属粉末を前記未焼結体内における前記金属粉末の位置に実質的に維持するのに有効な時間及び有効な条件下で、前記未焼結体を加熱することを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記未焼結体が、抽出可能材料を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記金属粉末が、チタニウム、チタニウム合金、コバルト−クロム合金、モリブデン、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、ステンレス鋼、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記粒子材料が、加熱することによって除去可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記粒子材料が、重炭酸アンモニウム、尿素、ビウレット、メラミン、炭酸アンモニウム、ナフタレン、重炭酸ナトリウム、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記粒子材料が、液体に可溶性であり、前記方法が、前記未焼結体を焼結する前に、液体を備える浴中に前記未焼結体を浸漬させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記粒子材料が、塩を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記未焼結体が、約50%〜約90%の多孔率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記粒子材料が、約150μm〜約1250μmの平均直径を有する粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記粒子材料が、約20.7kPa(約3psi)〜約172.4kPa(約25psi)の圧力で前記未焼結体に衝撃を与える、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
衝撃を与えることが、約2秒間〜約30秒間以下実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記粒子材料が、前記未焼結体から約5.1cm(約2インチ)〜約76.2cm(約30インチ)に配置される開口部から噴出される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
請求項1の方法に従って調製された未焼結体。
【請求項23】
金属マトリックスを備える移植物であって、前記金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、少なくとも約0.7の、約320.4g/L(約20lb/ft3)の密度を有するポリウレタン発泡体を備えるポリマー骨類似体との静止摩擦係数を有する、移植物。
【請求項24】
前記金属マトリックスが、チタニウム、チタニウム合金、コバルト−クロム合金、モリブデン、タンタル、ニオビウム、ジルコニウム、ステンレス鋼、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項23に記載の移植物。
【請求項25】
前記金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、約0.7〜約1.5の、前記ポリマー骨類似体との静止摩擦係数を有する、請求項23に記載の移植物。
【請求項26】
金属マトリックスを備える移植物であって、前記金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、少なくとも約20のPa値に対応する粗さ、少なくとも約60のPp値に対応する粗さ、少なくとも約140のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約30のPq値に対応する粗さを有する、移植物。
【請求項27】
前記金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、少なくとも約50のPa値に対応する粗さ、少なくとも約90のPp値に対応する粗さ、少なくとも約200のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約60のPq値に対応する粗さを有する、請求項26に記載の移植物。
【請求項28】
前記金属マトリックスの少なくとも1つの表面が、少なくとも約70のPa値に対応する粗さ、少なくとも約120のPp値に対応する粗さ、少なくとも約300のPt値に対応する粗さ、又は少なくとも約70のPq値に対応する粗さを有する、請求項26に記載の移植物。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2011−522578(P2011−522578A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510721(P2011−510721)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/044970
【国際公開番号】WO2009/143420
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(501384115)デピュイ・プロダクツ・インコーポレイテッド (216)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/044970
【国際公開番号】WO2009/143420
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(501384115)デピュイ・プロダクツ・インコーポレイテッド (216)
【Fターム(参考)】
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