説明

金属薄膜用樹脂組成物、これを含有する下塗りコーティング剤

【課題】 付着性、耐熱性、耐水性に優れ、且つ金属薄膜の下塗りとして塗装した際に、金属薄膜の白化等を起こさない塗膜を与え、かつ長期の保存安定性にも優れた金属薄膜用樹脂組成物、およびこれを含有する下塗りコーティング剤を提供すること。
【解決手段】 基材表面に設けられた不連続構造の金属薄膜の下塗りとして使用する金属薄膜用樹脂組成物であって、
1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性モノマーを含む単量体化合物を4〜50重量%、(メタ)アクリル変性ポリオレフィン樹脂を5〜30重量%、ロジン変性樹脂3〜30重量%、光重合開始剤を0.5〜15重量%含有することを特徴とする金属薄膜用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属薄膜用樹脂組成物、および金属薄膜用樹脂組成物を用いた光輝性樹脂製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車が周囲の対象物に接近したことを運転者に警告するミリ波レーダ装置が、自動車の各部、例えばラジエータグリル、サイドモール、バックパネル等の背後に設けられている。
しかし、これら自動車の各部の基材には、意匠性や高級感などを付与させるために金属薄膜が形成される場合が多く、ミリ波レーダ装置から出射されるミリ波が金属薄膜によって遮断されたり減衰されたりするといった問題があった。
【0003】
この問題を解決し、かつ高級感などを維持するために、自動車の各部の一部、具体的にはミリ波の経路部分を光輝性およびミリ波透過性のレーダ装置カバーで覆う方法が提案されている。レーダ装置カバーは、通常、ポリカーボネート等からなる樹脂製の基材と、該基材上に形成された金属薄膜と、該金属薄膜上に形成された被覆膜と、該被覆膜上に射出成形された樹脂背後材とを含む。なお、基材の下面がカバー表面であり、樹脂背後材の背後にミリ波レーダ装置が配置される。
【0004】
レーダ装置カバーがミリ波透過性を有するには、金属薄膜が不連続構造、すなわち金属薄膜が連続せずに多数の微細な金属粒子が島状に離間した状態、または金属粒子の一部が接触した状態で敷き詰められた構造(海島構造)となっていればよい。このような不連続構造の金属薄膜は、蒸着法やスパッタリング法などの公知の方法で形成される。
一方、金属薄膜を被覆する被覆膜には、金属薄膜の耐食性や基材に対する密着性を向上させたり、樹脂背後材の形成時に発生する応力等から金属薄膜を保護したりすることが求められる。
【0005】
しかし、不連続構造の金属薄膜は基材や被覆膜との付着性に乏しく、また、レーダ装置カバーは長期に渡って寒暖差の激しい環境下や雨水などに晒されるため、金属薄膜や被覆膜が剥離しやすかった。特に、被覆膜が紫外線硬化型塗料から形成される場合、架橋密度が高いので硬化する際に被覆膜が収縮しやすく、金属薄膜から被覆膜が剥離しやすかった。
また、不連続構造の金属薄膜上に形成された被覆膜は、連続構造の金属薄膜上に形成された場合に比べて樹脂背後材の形成時の応力に影響を受けやすく、剥離したり白濁したりすることがあった。
そのため、不連続構造の金属薄膜は、自動車部品、特に外装部品の用途には必ずしも適するものではなかった。
【0006】
そこで、付着性、耐熱性、耐水性に優れた被覆膜を形成する塗料として、主剤および硬化剤を含む二液型のアクリルウレタン樹脂を希釈剤で希釈した塗料が提案されている(例えば特許文献1参照。)。このような二液型の塗料は金属薄膜上に塗布された後、塗膜中の希釈剤が蒸発し、樹脂の反応成分が架橋硬化するまで熱乾燥されて被覆膜を形成する。
しかしながら、特許文献1に記載のような二液型の塗料の場合、塗膜中の樹脂の反応成分を架橋硬化させるためには、例えば100℃以上の高温で長時間熱乾燥する必要があり、生産性が低下し、その結果、製造コストが上昇しやすかった。
【0007】
さらに、該金属薄膜用塗料組成物として、付着性、耐熱性、耐水性に優れた被覆膜を生産性よく形成する目的で、1分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性モノマーまたはオリゴマーを含む単量体化合物を4〜50重量%、塩素含有率が50重量%以下の塩素化ポリオレフィン樹脂または(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂を5〜30重量%、光重合開始剤を0.5〜15重量%含有する組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
しかし、前記の技術は、金属薄膜層上に生産性よく被覆膜を形成できるものの、金属薄膜層の下塗りとして塗装する場合は金属薄膜が白化する等の光沢が低下する現象を生じる難点があった。
【0009】
また、該金属薄膜用被覆組成物として、付着性、耐熱性、表面平滑性に優れた蒸着用アンダーコート層を形成する目的で、塩素含有量が50%以下の塩素化ポリオレフィン0.1〜50重量部、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性単量体20〜100重量%と、1分子中に1〜2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する1〜2官能性単量体80〜0重量%とからなる単量体混合物10〜80重量部、アクリル系共重合体1〜80重量部および、光重合開始剤0.1〜15重量部含有する組成物が提案されている(たとえば、特許文献3参照)
しかし、特許文献3の技術は、本来相溶性が良好でない塩素化ポリオレフィンとアクリル系重合体を変性せずにブレンドすることから、被覆組成物として長期の貯蔵安定性に難点があり、上記塩素化ポリオレフィン部とアクリル系重合体が分離する傾向にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−93241号公報
【特許文献2】特開2009−191097号公報
【特許文献3】特開平6−279706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の課題は、付着性、耐熱性、耐水性に優れ、且つ金属薄膜の下塗りとして塗装した際に、金属薄膜の白化等を起こさない塗膜を与え、かつ長期の保存安定性にも優れた金属薄膜用樹脂組成物、およびこれを含有する下塗りコーティング剤。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討の結果、(メタ)アクリル変性ポリオレフィン樹脂と多官能のアクリロイル基を必須成分とする紫外線硬化型樹脂組成物に更にロジン変性樹脂を加えることにより、前記の課題解決方法を見出し、発明を完成させた。
【0013】
すなわち本発明は、基材表面に設けられた金属薄膜の下塗りとして使用する金属薄膜用樹脂組成物であって、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性モノマーを含む単量体化合物を4〜50重量%、変性ポリオレフィン樹脂を5〜30重量%、ロジン変性樹脂3〜30重量%、光重合開始剤を0.5〜15重量%、含有することを特徴とする金属薄膜用樹脂組成物、およびこれを含有する下塗りコーティング剤。
【発明の効果】
【0014】
また、本発明の金属薄膜用樹脂組成物は、下塗りコーティング剤として基材との付着性および不連続構造の金属薄膜との付着性が良好で、耐熱性、耐水性に優れた金属薄膜を生産性よく製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
[金属薄膜用樹脂組成物]
本発明の金属薄膜用樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」という場合がある。)は、基材表面に設けられた不連続構造の金属薄膜を被覆する被覆膜を形成する。本発明の樹脂組成物は、以下に示す成分を含有する。
【0016】
<単量体化合物>
単量体化合物は、1分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性モノマーまたはオリゴマーを含む。このような多官能性モノマーまたはオリゴマーを含有することによって、耐熱性や耐水性に優れる被覆膜を形成できる。また、多官能性モノマーまたはオリゴマーは、後述の光重合開始剤から発生したラジカルによって重合し、硬化するので、熱乾燥に比べて短時間で被覆膜を形成できる。特に、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性モノマーまたはオリゴマーを使用すれば架橋密度が高くなる傾向にあるので、より耐熱性や耐水性に優れた被覆膜を形成できる。
【0017】
分子内に2個の(メタ)アクリロイル基を有する2官能性モノマーまたはオリゴマーとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、1,4ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、1,3ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性モノマーまたはオリゴマーとしては、例えばトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
また、1分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性モノマーまたはオリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリイソシアネート化合物と、ポリオールと、水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応物である。
ポリイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。さらに、前記ポリイソシアネート化合物を用いて得られるイソシアヌレート型ポリイソシアネート、アダクト型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート等もポリイソシアネート化合物として用いられる。
ポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等の多価アルコール、多価アルコールとアジピン酸等の多塩基酸との反応によって得られるポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
単量体化合物は、上述した多官能性モノマーまたはオリゴマー以外の他の化合物を含有してもよい。他の化合物としては、例えばベンジル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能モノマーなどが挙げられる。
【0021】
単量体化合物の含有量は、金属薄膜用樹脂組成物100重量%中、4〜50重量%であり、10〜35重量%が好ましい。含有量が10重量%以上であれば、十分な架橋密度が得られ、良好な耐熱性や耐水性を維持できる。一方、含有量が35重量%以下であれば、樹脂組成物より形成される被覆膜が基材から剥離しにくくなると共に、耐水性が良好になる。
なお、架橋密度が高くなると、耐熱性や耐水性がより良好になる傾向にあるが、架橋密度が必要以上に高くなると、樹脂組成物が硬化する際に被覆膜が収縮してクラック等が発生し、基材および金属薄膜に対する被覆膜の付着性が低下する場合がある。しかし、単量体化合物の含有量が上記範囲内であれば、架橋密度が必要以上に高くなるのを抑制できるので、耐水性、耐熱性を低下させることなく、基材および金属薄膜に対する付着性が良好に維持できる。
【0022】
<(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂>
本発明に用いる(メタ)アクリル変性ポリオレフィン樹脂に用いるポリオレフィン樹脂は、塩素含有率が50重量%以下であり、好ましくは10〜45重量%である。塩素含有率が50重量%以下であれば、基材および金属薄膜に対する被覆膜の付着性が良好となる。このようなポリオレフィン樹脂としては、例えば塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン−エチレン共重合樹脂等が挙げられる。中でも塩素化ポリプロピレン樹脂が好ましい。
また、(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂は、例えば塩素化ポリエチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン−(メタ)アクリルエステル共重合樹脂等が挙げられる。その中で共重合に用いられる(メタ)アクリル酸アルキルエステルを例示することができ、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、これらのアクリルモノマーと共重合可能なモノマーを共重合させてもよい。共重合可能なモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フタル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、スチレン等が挙げられる。
【0023】
(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量は、樹脂組成物100重量%中、5〜30重量%であり、10〜25重量%が好ましい。含有量が10重量%以上であれば、樹脂組成物より形成される被覆膜の基材および金属薄膜に対する付着性が高まる。一方、含有量が25重量%以下であれば、他成分との相溶性が良好となるので、被覆膜が白化しにくくなり、金属蒸着層の外観を維持できる。
【0024】
<光重合開始剤>
光重合開始剤としては、紫外線等の活性エネルギー線の照射により前記単量体化合物の重合を開始できるものであれば、特に制限されない。例えば商品名として、イルガキュア184、イルガキュア149、イルガキュア651、イルガキュア907、イルガキュア754、イルガキュア819、イルガキュア500、イルガキュア1000、イルガキュア1800、イルガキュア754、ルシリンTPO(以上BASFジャパン社製)、カヤキュアDETX−S、カヤキュアEPA、カヤキュアDMBI(以上、日本化薬社製)、バイキュア55(アクゾノーベル社製)等が挙げられる。これら光重合開始剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、光重合開始剤と共に、光増感剤や光促進剤を使用してもよい。
【0025】
光重合開始剤の含有量は、金属薄膜用樹脂組成物100重量%中、0.5〜15重量%であり、1〜10重量%が好ましい。含有量が上記範囲内であれば、効率よく光重合して十分な架橋密度が得られ、良好な耐熱性を維持できる。なお、含有量が15重量%を越えると、分子鎖が短くなり被覆膜がもろくなる傾向にある。従って、光重合開始剤の含有量の上限は15重量%が好ましい。
光増感剤や光促進剤を併用する場合は、これらと光重合開始剤との合計の含有量が上記範囲内となるように調整するのが好ましい。
【0026】
本発明で用いるロジン変性樹脂は、金属薄膜用樹脂組成物100重量%中に3〜30重量%含有することが好ましく、例えば、ロジン変性ポリエステル樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、マレイン化ロジン樹脂等が挙げられる。
【0027】
また、本発明の樹脂組成物は、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有しても良い。これら樹脂の含有量は、金属薄膜用樹脂組成物100重量%中に5〜50重量部が好ましく、このような樹脂を含有することで、被塗膜の基材および金属薄膜に対する付着性がより向上する傾向にある。また、樹脂組成物に含まれる各成分の相溶性がより良好になったり、被塗膜の収縮が軽減されたりする傾向にもある。
ポリエステル樹脂としては、例えば飽和ポリエステル、不飽和ポリエステルなどが挙げられる。また、ポリエステル樹脂に(メタ)アクリル変性やエポキシ変性、ウレタン変性、無水マレイン酸変性、脂肪酸等の変性品も挙げられる。
【0028】
アルキド樹脂としては、長油アルキド、中油アルキド、単油アルキド、その他にシリコーン変性、アクリル変性、エポキシ変性、ウレタン変性、メラミン変性などの変性品などが挙げられる。
【0029】
(溶剤、添加剤)
本発明の金属薄膜用樹脂組成物は、必要に応じて各種溶剤を含んでいてもよい。溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤などが挙げられる。これら溶剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、樹脂組成物は、酸化防止剤、光安定化剤、ラジカル補足剤、表面調整剤、可塑剤等、通常の塗料に用いられる添加剤を適量含んでいてもよい。
【0030】
本発明の金属薄膜用樹脂組成物は、上述した単量体化合物と、(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂等の変性ポリオレフィン樹脂と、光重合開始剤の他、必要に応じて他の成分を混合することにより調製できる。
【0031】
本発明のコーティング剤をエアースプレー塗装法、刷毛塗り法、ローラ塗装法、カーテンコート法、フローコート法、浸漬塗り法等で塗布した後、例えば100〜3000mJ/cmの紫外線をフュージョンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等を用いて1〜10分間程度照射することにより下塗り塗膜は形成される。金属活性エネルギー線としては、紫外線の他、電子線、ガンマ線等も使用できる。その後に金属蒸着を行い、金属薄膜を形成する。金属蒸着は、蒸着、スパッタリングなどの方法を用いて行われるが、真空蒸着が生産性の点からより好ましい。蒸着される金属としては、Al、Zn、Cu、Ag、Sn、Niあるいはこれらの合金などである。
【0032】
基材の材質としては、熱可塑性樹脂が好ましく、具体的には、ポリカーボネート樹脂、アクリロ二トリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル・エチレン・スチレン共重合体(AES)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等が挙げられる。
【0033】
以上説明した本発明の樹脂組成物は、付着性、耐熱性、耐水性に優れた被覆膜を形成でき、下塗り塗膜として基材付着性および金属薄膜との付着性が良好である。また、本発明の金属薄膜用樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化性であるので、熱乾燥によって塗膜を形成する樹脂(熱硬化性の樹脂など)に比べて硬化に要する時間が短時間で済み、生産性も良好である。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
ここで、実施例および比較例で用いた各成分の内容を以下に示す。
(1)2官能アクリレートモノマー(TPGDA、トリプロピレングリコールジアクリレート)
(2)3官能アクリレートモノマー(EO-変性TMPTA、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート)
(3)(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂:塩素含有率20重量%の塩素化ポリプロピレン樹脂と、メタアクリル酸メチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシルとからなる共重合体。
(4)ロジン変性樹脂:DIC社製、「ベッカサイト1111」
(5)光重合開始剤:BASFジャパン社製、「イルガキュア184」。
(6)ポリエステル樹脂:下記合成例1に記載された方法で合成した樹脂を用いた。
【0035】
大豆油脂肪酸、グリセリン、安息香酸、無水マレイン酸、ペンタエリスリトールを縮合反応により合成したポリエステル樹脂。
【0036】
合成例1
清浄な4ツ口フラスコに大豆油脂肪酸40重量部、グリセリン10重量部、安息香酸10重量部、無水マレイン酸0.5重量部、ペンタエリスリトール14.5重量部、キシレン3重量部、トリフェニルホスファイト0.02重量部加え、220℃まで昇温し、酸価が6.0±0.5となる点でトルエンを用いて不揮発分60%となるように調整し、60℃以下まで冷却。冷却後、ジブチルスズジラウレートを0.002重量部、TDI−80(旭化成製)20重量部加え、80度まで昇温し、4時間その温度でホールドし、取り出した。)
【0037】
実施例1〜6、比較例1〜8
後述する表1、2に示す配合でポリプロピレン上に塗布し、紫外線照射装置を用いて800mJ/cm2 光照射、PP基材付着性については次いで付着性(JIS K 5600の碁盤目密着性)を評価、蒸着層付着性と蒸着層外観についてはポリプロピレン上に塗布し、紫外線照射装置を用いて800mJ/cm2 光照射後、金属蒸着膜を形成させ、付着性(JIS K 5600の碁盤目密着性)と蒸着層外観(白化性、目視評価)を評価した。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
※○は含有することを示す。
表1、2中の付着性、白化性は下記表4の基準で行なった。
【0042】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に設けられた不連続構造の金属薄膜の下塗りとして使用する金属薄膜用樹脂組成物であって、
1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性モノマーを含む単量体化合物を4〜50重量%、(メタ)アクリル変性ポリオレフィン樹脂を5〜30重量%、ロジン変性樹脂3〜30重量%、光重合開始剤を0.5〜15重量%含有することを特徴とする金属薄膜用樹脂組成物。
【請求項2】
前記単量体化合物、前記(メタ)アクリル変性ポリオレフィン樹脂及び前記ロジン変性樹脂および前記光重合開始剤からなる金属薄膜用樹脂組成物100重量%中、ポリエステル樹脂、及びアルキド樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂を5〜50重量%含有することを特徴とする請求項1に記載の金属薄膜用樹脂組成物。
【請求項3】
前記ロジン変性樹脂がマレイン化ロジン樹脂である請求項1,2記載の金属薄膜用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の金属薄膜用樹脂組成物を用いた下塗りコーティング剤。

【公開番号】特開2012−214685(P2012−214685A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−270077(P2011−270077)
【出願日】平成23年12月9日(2011.12.9)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】