説明

金属製容器蓋シェル内に密封用ライナーを成形する方法

【課題】加熱することによって硬化されると共に発泡されるライナー素材(16)を加熱して、周方向に充分に均一な厚さを有し、所望の密封性能を達成することができ、そしてまたライナー素材の供給量を必要最小限にして製造コストの増大を回避することができるライナー成形方法を提供する。
【解決手段】所要温度に加熱された型押部材(22)を所要圧力でライナー素材(16)に作用させ、ライナー素材(16)を所要形状に型押成形しながら加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製容器蓋シェルの天面壁の内面に、加熱することによって硬化され且つ発泡されるライナー素材を供給し、次いでライナー素材を加熱して密封用ライナーを成形するライナー成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、天面壁とこの天面壁の周縁から垂下する筒状スカート壁とを有する金属製容器蓋シェルの、天面壁の内面に、加熱することによって硬化され且つ発泡されるライナー素材を供給し、次いでライナー素材を加熱して密封ライナーを成形することが開示されている。シェルの天面壁の内面へのライナーの供給は、周知のスピンライニング法によって好都合に遂行され、天面壁の内面周縁部にリング状にライナー素材が供給される。密封ライナーの加熱は、ライナー素材が供給されたシェルをオーブン内に収容することによって遂行される。
【特許文献1】特開2003−205963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
而して、上述した従来技術には、(1)周方向に充分に均一な厚さを有するライナーを形成することができず、厚さに0.1mm程度の変動が生成され、これに起因して必ずしも充分な密封性能が得られない、(2)厚さの変動を考慮すると、ライナー素材の供給量を比較的多くすることが必要であり、製造コストが増大する、という解決すべき問題が存在する。
【0004】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、加熱することによって硬化されると共に発泡されるライナー素材を加熱して、周方向に充分に均一な厚さを有し、所望の密封性能を達成することができ、そしてまたライナー素材の供給量を必要最小限にして製造コストの増大を回避することができる、新規且つ改良されたライナー成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、鋭意検討の結果、所要温度に加熱された型押部材を所要圧力でライナー素材に作用させ、ライナー素材を所要形状に型押成形しながら加熱することによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0006】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成するライナー成形方法として、天面壁と該天面壁の周縁から垂下する筒状スカート壁とを有する金属製容器蓋シェルの、該天面壁の内面に、加熱することによって硬化され且つ発泡されるライナー素材を供給し、次いで該ライナー素材を加熱して密封用ライナーを成形するライナー成形方法において、
所要温度に加熱された型押部材を所要圧力で該ライナー素材に作用させることによって該ライナー素材を所要形状に型押成形しながら加熱する、ことを特徴とするライナー成形方法が提供される。
【0007】
該ライナー素材は液状ポリオール、液状ポリイソシアネート及び熱膨張性中空粒子を含むのが好都合である。好ましくは、該型押部材は該熱膨張性中空粒子の発泡開始温度以上で且つ該熱膨張性中空粒子の発泡ピーク温度以下に加熱され、0.5乃至10kg/cmの圧力で該ライナー素材に作用させられる。該シェルの内面にはポリエステル系被覆が施されており、該型押部材を該ライナー素材に作用させる際には、該シェルは該ポリエステル系被覆のガラス転移温度以上で且つ該ポリエステル系被覆の黄変温度以下に加熱されたアンビル上に載置されるのが好適である。該ライナー素材はスピンライニング法によって該シェルの該天面壁の内面周縁部にリング状に供給されるのが好都合である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のライナー成形方法によれば、型押部材を所要圧力でライナー素材に作用させることによってライナーの表面を所要形状に規制し、かくして周方向に充分に均一な厚さを有するライナーを形成することができる。また、型押部材を所要温度に加熱し所要圧力でライナー素材に作用させることによって、ライナー素材を所要とおりに硬化させ所要とおりに発泡させることができる。型押部材の作用圧力が過大になると、ライナー素材の発泡が不充分になり、型押部材の作用圧力が過小になると、ライナーの表面形状に乱れが生成される傾向がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のライナー成形方法の好適実施形態について、添付図面を参照して更に詳述する。
【0010】
本発明のライナー成形方法の好適実施形態は、図1に簡略に示しているスピンライニング工程を含んでいる。このスピンライニング工程においては、金属製容器蓋シェル2の所要部位にライナー素材が供給される。詳述すると、アルミニウム基合金、クロムサン処理鋼板或いはブリキの如き適宜の金属薄板から形成することができるシェル2は円形天面壁4とこの天面壁4の周縁から垂下する円筒形スカート壁6を有する。シェル2の内面にはポリエステル系被覆が施されているのが好都合である。ポリエステル系被覆の詳細については上記特許文献1を参照されたい。シェル2の外面には適宜の被覆と共に所要印刷を施すことができる。かようなシェル2は倒立状態、即ち天面壁4の内面を上方に向けた状態、で回転テーブル10上に載置される。実質上水平に延在する上面を有する回転テーブル10には、上面から下方に延びる吸引路12が形成されており、かかる吸引路12を通して大気を吸引することによって回転テーブル10上にシェル2が真空吸着される。流動性を有するライナー素材を流出するノズル14が、その下端に形成されている流出口を回転テーブル10の上面に載置されたシェル2の天面壁4の内面周縁部に対向させて位置付けられる。そして、回転テーブル10を所要速度で回転、従って回転テーブル10の上面に吸着されているシェル2を所要速度で回転させながら、ノズル14からライナー素材16を流出させ、かくしてシェル2の天面壁4の内面周縁部に合成樹脂素材を円環状に供給する。
【0011】
本発明のライナー成形方法におけるライナー素材の供給様式は、上述したとおりのスピンライニング法に限定されるものではなく、所望ならば他の適宜の様式によってシェル2の天面壁4の内面の適宜の部位、例えば中央部、に適宜の形状でライナー素材を供給することもできる。
【0012】
シェル2に供給されるライナー素材は加熱されることによって硬化されると共に発泡されるものであり、液状ポリオール、液状ポリイソシアネート及び熱膨張性中空粒子を含むものであるのが好都合である。かようなライナー素材の詳細については上記特許文献1を参照されたい。
【0013】
本発明のライナー成形方法の好適実施形態においては、上記スピンライニング工程の後に図2及び図3に示す加熱・型押工程が遂行される。この加熱・型押工程においては、図2に示す如く、ライナー素材16が供給されたシェル2が倒立状態でアンビル18上に載置される。後述するとおりにしてライナー素材16を加熱・型押成形することによって形成されるライナーをポリエステル系被覆を介してシェル2に所要とおりに固着するために、シェル2が載置されるアンビル18を、ポリエステル系被覆のガラス転移温度以上で且つ黄変温度以下、例えばポリエステル系被覆がポリエステル・ブロックイソシアネート被覆である場合には40乃至230℃、に加熱し、これによってシェル2を加熱するのが好適である。
【0014】
加熱・型押工程においては、全体を番号20で示す型押工具がシェル2内に挿入される。図示の実施形態において使用されている型押工具20は、円筒形状の型押部材22と共に、型押部材22の内側及び外側に夫々に配置されたセンターパンチ24及び外側スリーブ26を含んでいる。型押部材22と共にセンターパンチ24及び外側スリーブ26は、ライナー素材16を加熱するために、熱膨張性中空粒子の発泡開始温度以上で且つ該熱膨張性製中空粒子の発泡ピーク温度以下に、例えば熱膨張性中空粒子としてエクスパンセル社から商品名「エクスパンセル091DU」として使用されているものを使用する場合には80乃至200℃に加熱されているのが好適である。かかる加熱は、例えば型押部材22並びにセンターパンチ24及び外側スリーブ26に形成されている熱媒体循環路(図示していない)に加熱された熱媒体を流動することによって好都合に遂行することができる。図2と共に図3を参照して説明を続けると、ライナー素材16を加熱・型押する際には、型押部材22の下降に先立って外側スリーブ26及びセンターパンチ24が図3に示す位置まで下降されて、外側スリーブ26の下端及びセンターパンチ24の下端がシェル2の天面壁4の内面に所要圧力で当接され、かくしてライナー素材16が外側スリーブ26とセンターパンチ24との間に拘束され、ライナー素材16が半径方向外側及び内側に流動することが阻止される。次いで、型押部材22が下降されて0.5乃至10kg/cmの圧力でライナー素材16に押し付けられる。これによって、ライナー素材16が図3に示すとおりの形状に型押成形され、そしてまた加熱されることによって硬化され発泡され、かくして所要形状のライナーが形成される。ライナー素材16に対する型押部材22の押付圧力が過大になるとライナー素材16の発泡が不充分になってしまう傾向がある。他方、ライナー素材16に対する型押部材22の押付圧力が過小になると、形成されるライナーの表面形状に乱れが発生する傾向がある。ライナー素材16に対する型押部材22の押付圧力は、例えば所要弾性偏倚力を有する圧縮ばね(図示していない)を介して型押部材22をライナー素材16に作用させることによって、所要値に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のライナー成形方法の好適実施形態におけるスピンライニング工程を示す簡略断面図。
【図2】本発明のライナー成形方法の好適実施形態における加熱・型押工程の初期段階を示す簡略断面図。
【図3】本発明のライナー成形方法の好適実施形態における加熱・型押工程の終期段階を示す簡略断面図。
【符号の説明】
【0016】
2:シェル
4:シェルの天面壁
6:シェルのスカート壁
14:ライナー素材
18:アンビル
22:型押部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面壁と該天面壁の周縁から垂下する筒状スカート壁とを有する金属製容器蓋シェルの、該天面壁の内面に、加熱することによって硬化され且つ発泡されるライナー素材を供給し、次いで該ライナー素材を加熱して密封用ライナーを成形するライナー成形方法において、
所要温度に加熱された型押部材を所要圧力で該ライナー素材に作用させることによって該ライナー素材を所要形状に型押成形しながら加熱する、ことを特徴とするライナー成形方法。
【請求項2】
該ライナー素材は液状ポリオール、液状ポリイソシアネート及び熱膨張性中空粒子を含む、請求項1記載のライナー成形方法。
【請求項3】
該型押部材は該熱膨張性中空粒子の発泡開始温度以上で且つ該熱膨張性中空粒子の発泡ピーク温度以下に加熱されている、請求項2記載のライナー成形方法。
【請求項4】
該型押部材を0.5乃至10kg/cmの圧力で該ライナー素材に作用させる、請求項1から3までのいずれかに記載のライナー成形方法。
【請求項5】
該シェルの内面にはポリエステル系被覆が施されており、該型押部材を該ライナー素材に作用させる際には、該シェルは該ポリエステル系被覆のガラス転移温度以上で且つ該ポリエステル系被覆の黄変温度以下に加熱されたアンビル上に載置される、請求項1から4までのいずれかに記載のライナー成形方法。
【請求項6】
該ライナー素材はスピンライニング法によって該シェルの該天面壁の内面周縁部にリング状に供給される、請求項1から5までのいずれかに記載のライナー成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−261626(P2007−261626A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88463(P2006−88463)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】