金属製造用溶解炉
【課題】溶製されたインゴットを速やかに冷却することにより製造効率を向上させることができる金属製造用溶解炉を提供する。
【解決手段】原料供給機と、原料を保持するハースと、原料を溶解する加熱源と、溶解された原料を流し込み冷却する鋳型とを備えた溶解部と、溶解部の下方に設けられ、鋳型内で形成されたインゴットの引き抜き治具を備えたインゴット引き抜き部と から構成された電子ビーム溶解炉であって、インゴット引き抜き部内に、インゴットの冷却部材を配設した金属製造用溶解炉。
【解決手段】原料供給機と、原料を保持するハースと、原料を溶解する加熱源と、溶解された原料を流し込み冷却する鋳型とを備えた溶解部と、溶解部の下方に設けられ、鋳型内で形成されたインゴットの引き抜き治具を備えたインゴット引き抜き部と から構成された電子ビーム溶解炉であって、インゴット引き抜き部内に、インゴットの冷却部材を配設した金属製造用溶解炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン等の金属製造用溶解炉に係り、特に、金属インゴットの製造効率を向上させることができる金属製造用溶解炉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
金属チタンは、航空機産業のみならず近年の世界的な需要の拡大に伴い生産量も大幅に伸びてきている。これに伴い、スポンジチタンのみならず、金属チタンインゴットの需要も大きく伸びている。
【0003】
金属チタンインゴットは、四塩化チタンを還元性金属で還元する所謂クロール法で製造されたスポンジチタンをブリケットに成形した後、前記ブリケットを組み合わせて溶解用の電極とし、前記電極を真空アーク溶解することで製造されている。
【0004】
また、金属チタンインゴットの他の製造方法としては、金属チタンスクラップをスポンジチタンに配合して溶解原料とし、これを電子ビーム溶解炉あるいはプラズマ溶解炉にて溶解し、鋳型内で冷却固化されたインゴットを鋳型から引き抜く方法も知られている。この電子ビーム溶解炉の一例を、図1〜3に示す(図2は、図1において方向Aから見た平面図であり、図3は、B−B線断面図である)。
【0005】
電子ビーム溶解炉では、真空アーク溶解炉とは異なり、溶解原料を必ずしも電極に成形する必要はなく、顆粒状あるいは塊状の原料12をそのままハース20に投入して溶解することができるという特徴を有している。
【0006】
また、電子ビーム溶解炉では、原料中の不純物を揮発させつつ、ハース20にて原料12を溶解して生成された溶湯20を鋳型16に供給することができるので、純度の高い金属チタンインゴットを溶製することができるという効果を奏するものである。
【0007】
このようにハース付きの電子ビーム溶解炉によれば、金属チタンのみならず、ジルコニウムやハフニウムあるいはタンタル等の高融点金属に不純物が含まれているような原料を溶解する場合においても、純度の高い金属インゴットを製造することができる。
【0008】
しかしながら、電子ビーム溶解炉では、前記したように鋳型16で冷却固化したインゴット22を引き抜き治具30によって引き抜いている。鋳型16より引き抜かれた直後のインゴット22は高温であり、また、引き抜き部50内は、減圧とされているので、鉄鋼の連続鋳造のように水スプレーでインゴットを冷却することは困難であり、現実には図1および3で波線の矢印で示すように、主に輻射のみによる放熱によってインゴット22は冷却されており、室温近傍まで冷却するには長時間を必要とされている。このように、引き抜き部50内でのインゴットの冷却には時間を要するため、鋳型16で生成されたインゴットの効率的な冷却構造が望まれている。
【0009】
インゴットの製造効率を向上させるため、図4〜7に示すような(図5は、図4において方向Aから見た平面図であり、図6は、図4において方向Cから見た側面図であり、図7は、B−B線断面図である)、鋳型16を複数配置し、樋17によって溶湯を振り分け、複数のインゴットを同時に製造することができる電子ビーム溶解炉が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
このような電子ビーム溶解炉においても、上述のとおり、複数のインゴット22は輻射によって放熱させるしかなくインゴットの冷却効率が悪い上に、さらに、図6、7に示すように、引き抜き部外筒51に対向するインゴット表面からは輻射熱が引き抜き部外筒51に良好に放熱されるものの、インゴット同士が対向している面(引き抜き部50内中央近傍)においては放熱が進行せず、結果としてインゴットの冷却速度が上がらないという課題がある。更には、一のインゴット内において、不均一な温度分布が生じ、インゴットの反り等の変形を伴う場合もあり改善が求められていた。
【0011】
前記した課題は、プラズマアーク溶解炉についても共通するものであり、前記した課題を解決しうる金属溶製用の溶解炉が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公平3−75616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、溶製されたインゴットを速やかに冷却することにより製造効率を向上させることができる金属溶製用溶解炉を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる実情に鑑みて鋭意検討を重ねてきたところ、インゴット引き抜き部に、特定の態様の冷却部材を配設することにより、インゴットの冷却を促進することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明に係る金属溶製用溶解炉は、原料供給機、原料を溶解する加熱源、前記原料を溶解して生成された溶湯を保持するハース、および前記溶湯を装入する鋳型を備えた溶解部、ならびに前記溶解部の下方に設けられ、前記鋳型内で溶湯を冷却固化したインゴットの引き抜き治具を備えたインゴット引き抜き部およびその外側に装置された外筒から構成された金属溶製用溶解炉であって、前記外筒とインゴットとの間に冷却部材を配設したことを特徴とするものである。
【0016】
本発明においては、冷却部材が、引き抜かれる生成インゴットの表面に沿って所定の距離を保って延在するように配設されていることを好ましい態様としている。
【0017】
本発明においては、冷却部材は、インゴットの引き抜き方向に垂直な断面において、インゴット全周または周の一部を囲むものであることを好ましい態様としている。
【0018】
本発明においては、インゴットの断面が矩形、円形、楕円形、樽型、多角形、または不定形であることを好ましい態様としている。
【0019】
本発明においては、冷却部材が、水冷銅ジャケットまたは水冷銅コイルで構成されていることを好ましい態様としている。
【0020】
本発明においては、鋳型は、複数のインゴットを同時に溶製することができるように複数の鋳型が溶解部内に配設され、引き抜き部内においては、前記複数のインゴット間に冷却部材を配設したことを好ましい態様としている。
【0021】
本発明においては、前記インゴットの長手方向の表面が相互に同じ距離を保って抜き出せるように複数の鋳型が引抜部内に配設されていることを好ましい態様としている。
【0022】
本発明においては、前記インゴットの長手方向の表面が放射状を保って抜き出せるように複数の鋳型が前記引抜部内に配設されていることを好ましい態様としている。
【0023】
本発明においては、前記加熱源が、電子ビームまたはプラズマアークであることを好ましい態様とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る金属溶製用溶解炉を用いることにより、抜き出されたインゴットの冷却を速やかに行うことができ、これによりインゴットの製造効率を向上させることができるという効果を奏する。
【0025】
また、複数のインゴットを同時に抜き出す場合においては、対向するインゴット間の放熱を促進することによって生成インゴットの冷却速度を高めることができるのみならず、一のインゴット内に不均一な温度分布の形成が抑制されこれに伴うインゴットの熱変形も回避することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、従来および本発明に係る、単数のインゴットを製造する電子ビーム溶解炉における共通の構成要素を示す模式断面図である。
【図2】図2は、図1において方向Aから見た平面図である。
【図3】図3は、図1におけるB−B線断面図である。
【図4】図4は、従来および本発明に係る、複数のインゴットを製造する電子ビーム溶解炉における共通の構成要素を示す模式断面図である。
【図5】図5は、図4において方向Aから見た平面図である。
【図6】図6は、図4において方向Cから見た側面図である。
【図7】図7は、図4におけるB−B線断面図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態を示す模式図であり、(a)はインゴット引き抜き部の側断面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態を示す模式図であり、(a)はインゴット引き抜き部の側断面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【図10】図10は、本発明の一実施形態を示す模式図であり、(a)はインゴット引き抜き部の側断面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【図11】図11は、本発明の一実施形態を示す模式図であり、(a)はインゴット引き抜き部の側断面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【図12】図12は、本発明の一実施形態を示す模式図であり、(a)はインゴット引き抜き部の側断面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【図13】図13は、本発明の一実施形態を示す模式図であり、(a)はインゴット引き抜き部の側断面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【図14】図14は、本発明の一実施形態を示す模式図であり、(a)はインゴット引き抜き部の側断面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【図15】図15は、本発明の一実施形態を示す模式図であり、(a)はインゴット引き抜き部の側断面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【図16】図16は、本発明の一実施形態における溶解部を示す部分平面図である。
【図17】図17は、図16の実施形態のインゴット引き抜き部を示す断面図である。
【図18】図18は、本発明の一実施形態における溶解部を示す部分平面図である。
【図19】図19は、図18の実施形態のインゴット引き抜き部を示す断面図である。
【図20】図20(a)〜(c)は、本発明のその他の変更例の一例におけるインゴット引き抜き部を示す断面図である。
【図21】図21は、本発明のその他の変更例の一例におけるインゴット引き抜き部を示す断面図である。
【図22】図22は、本発明の一実施形態を示す模式図であり、(a)はインゴット引き抜き部の側断面図、(b)および(c)は(a)における平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の最良の実施形態について、金属溶製用溶解炉が電子ビーム溶解炉である場合を例にとり、図面を用いて以下に詳細に説明する。以下の説明においては、原料がスポンジチタン、製造するインゴットが金属チタンであり、製造するインゴットの断面が矩形である場合を例に説明するが、本発明の電子ビーム溶解炉は、チタンインゴットの製造に限定されず、ジルコニウムやハフニウム、タングステンあるいはタンタル等の高融点金属、その他電子ビーム溶解炉によってインゴットを製造することができる金属やこれらの合金であれば同様に適用することができ、また、断面に関しても、矩形に限定されず、円形、楕円形、樽型、多角形、その他不定形など、あらゆる断面形状を含む。
【0028】
第1実施形態(単数インゴット+平板状冷却部材)
図1〜3は、単数のインゴットを製造するための、従来の電子ビーム溶解炉および本発明に係る電子ビーム溶解炉に共通する構成要素を表している。図2は、図1において方向Aから見た平面図であり、図3は、図1におけるB−B線断面図である。図1に示す電子ビーム溶解炉は、原料を溶解する溶解部40と、その下方で製造されたインゴットを引き抜く引き抜き部50とから構成されている。
【0029】
溶解部壁41で画成された溶解部40内には、スポンジチタンあるいはチタンスクラップで構成されたチタン原料12を供給するためのアルキメデス缶等の原料供給機10と、原料12を移送する振動フィーダ等の原料移送機11と、供給された原料を溶解するハース13と、ハース13に供給された原料12を溶解して溶湯20とする電子ビーム照射機14と、溶湯20を冷却固化してインゴットを形成させる水冷銅等で構成された鋳型16と、鋳型16内に電子ビームを照射して溶解し溶融プール21を形成させる電子ビーム照射機15とが設けられている。
【0030】
溶解部40の鋳型16の下方には、引き抜き部外筒51で画成された引き抜き部50が設置されており、引き抜き部50内には、鋳型16で形成されたインゴット22を下方に引き抜く引き抜き治具30が設けられている。
なお、溶解部40および引き抜き部50内は、減圧雰囲気が保持されるように構成されている。
【0031】
まず原料供給機10から供給された原料12は、ハース13内で電子ビーム照射機14によって溶解されて溶湯20を形成する。溶湯20は、ハース13の下流から鋳型16内に供給される。鋳型内16には、原料12の溶解に先立って図示しないスタブが配置されており、このスタブが鋳型16の底部を構成している。前記スタブは原料12と同じ金属で構成されており、鋳型16内に供給された溶湯20と一体化してインゴット22を形成する。
【0032】
鋳型16内のスタブ上に連続的に供給された溶湯20の表面は、電子ビーム照射機15によって加熱されて溶融プール21を形成すると共に、溶湯20の底部は、鋳型16によって冷却されて固化して前記スタブと一体化してインゴット22を形成する。
【0033】
鋳型16内で生成したインゴット22は、溶融プール21のレベルが一定になるようにスタブに係合された引き抜き治具30の引抜速度を調節しつつ引き抜き部50内に抜き出される。
【0034】
以上が単数インゴット製造用の従来の電子ビーム溶解炉および本発明に係る電子ビーム溶解炉に共通する構成および動作であるが、本発明の第1実施形態においては、図8に示すように、引き抜き部50内に、平板状の冷却部材60が配設されていることを特徴としている。
【0035】
図8において、(a)は引き抜き部50の側断面図であり、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。図8に示すように、引き抜かれたインゴット22および引き抜き治具30の一方の側面には、平板状の冷却部材60が、インゴット22の表面に沿って所定の距離を保って延在するよう配設されている。前記冷却部材60は、外部から冷媒の流通等により冷却可能であれば特に限定されず、例えば水冷銅ジャケットで構成することができる。
【0036】
図3に示すように、従来の電子ビーム溶解炉においては、引き抜き部50が減圧に保たれているため、主に輻射によって電子ビーム溶解炉の引き抜き部外筒51に対して放熱されていたが、本発明の第1実施形態によれば、引き抜き部50内に平板状の冷却部材60がインゴットと電子ビーム溶解炉の本体との間に配設されているので、放熱距離が短縮されて輻射による放熱量が増加してインゴット22の冷却が促進される。その結果、生成インゴットの引抜速度を高めることができるという効果を奏するものである。インゴットの冷却速度の改善は、溶解速度を高めることができることを意味し、結果的にインゴットの生産速度を高めることができるという効果を奏するものである。
【0037】
第2実施形態(単数インゴット+コの字状冷却部材)
本発明の第2実施形態においては、図9に示すように、引き抜き部50内に、コ字状の冷却部材が配設されていることを特徴としている。図9において、(a)は引き抜き部50の側断面図であり、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【0038】
図9に示すように、引き抜かれたインゴット22および引き抜き治具30のうち三方の側面には、引き抜き方向の断面がコ字状の冷却部材61が、インゴット22の三方の表面に沿って所定の距離を保って延在するように配設されている。
【0039】
本発明の第2実施形態によれば、引き抜き部50内にコ字状の冷却部材61が配設されているので、第1実施形態と比較してインゴット22の放熱をより促進させ、冷却を速やかに行うことができるという効果を奏するものである。
【0040】
第3実施形態(単数インゴット+ロ字状冷却部材)
本発明の第3実施形態においては、図10に示すように、引き抜き部50内に、ロ字状の冷却部材が配設されていることを特徴としている。図10において、(a)は引き抜き部50の側断面図であり、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【0041】
図10に示すように、引き抜かれたインゴット22および引き抜き治具30の四方を取り囲むように、引き抜き方向の断面がロ字状の冷却部材62が、インゴット22の四方の表面に沿って所定の距離を保って延在するように配設されている。
【0042】
本発明の第3実施形態によれば、引き抜き部50内にロ字状の冷却部材62が配設されているので、インゴットを全方向から冷却することができ、第1および第2実施形態と比較してインゴット22の放熱をより促進させ、冷却を速やかに行うことができるという効果を奏するものである。
【0043】
第4実施形態(単数インゴット+コイル状冷却部材)
本発明の第4実施形態においては、図11に示すように、引き抜き部50内に、螺旋状のコイルからなる冷却部材が配設されていることを特徴としている。図11において、(a)は引き抜き部50の側断面図であり、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【0044】
図11に示すように、コイル状の冷却部材63が、引き抜かれたインゴット22および引き抜き治具30の四方を螺旋状に取り囲み、かつインゴット22の四方の表面に沿って所定の距離を保って延在するように配設されている。この冷却部材63としては、外部から冷媒を流通させられる管状の部材であれば特に限定されず、例えば水冷銅コイルで構成することができる。
【0045】
本発明の第4実施形態によれば、引き抜き部50内にコイル状の冷却部材63が配設されているので、インゴットを全方向から冷却することができ、第3実施形態同様に、インゴット22の放熱をより促進させ、冷却を速やかに行うことができるという効果を奏するものである。
【0046】
第5実施形態(複数インゴット+平板状冷却部材)
図4〜7は、複数のインゴットを製造するための、従来の電子ビーム溶解炉および本発明に係る電子ビーム溶解炉に共通する構成要素を表している。なお、図5は、図4において方向Aから見た平面図であり、図6は、図4において方向Cから見た側面図であり、図7は、図4におけるB−B線断面図である。図4に示す電子ビーム溶解炉の構成要素のうち、原料供給機10と、原料移送機11と、ハース13と、電子ビーム照射機14および15は、図1に示す電子ビーム溶解炉と共通であるので、説明を省略する。
【0047】
図4〜7に示す電子ビーム溶解炉においては、2基の鋳型16が、長手方向の辺が平行になるように並列に設けられており、さらに、ハース13と鋳型16との間に、溶湯20を一旦受けて複数の鋳型16のそれぞれに分配するための樋17が設けられている。溶解部40の下方に設置された引き抜き部50では、複数の鋳型16に対応して複数の引き抜き冶具30が設けられており、複数の鋳型16で形成されたインゴット22を引き抜けるように構成されている。
【0048】
以上が2基のインゴット製造用の従来の電子ビーム溶解炉および本発明に係る電子ビーム溶解炉に共通する構成および動作であるが、本発明の第5実施形態においては、図12に示すように、引き抜き部50内に、平板状の冷却部材60が配設されていることを特徴としている。
【0049】
図12において、(a)は引き抜き部50の側断面図であり、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。図12に示すように、引き抜かれた2列のインゴット22および引き抜き治具30に挟まれた空間には、平板状の冷却部材60が、それぞれのインゴット22の表面に沿って所定の距離を保って延在するように配設されている。
【0050】
図7に示すように、従来の電子ビーム溶解炉においては、引き抜き部50が減圧に保たれているため、冷媒を直接供給してインゴット22を冷却することができず、波線の矢印で示すように、前記インゴット22は主に輻射によって冷却されていた。2列のインゴット22の表面のうち、引き抜き部外筒51に対向している面からは輻射により放熱が行われて冷却が進行するが、2列のインゴットが互いに対向する中央近傍では、互いに輻射熱を受けるため、インゴット22の冷却速度が低下し、これはインゴットの生産速度の低下を招く。また、2列のインゴットが互いに対向するインゴット22の周縁部と比較して冷却が相対的に進行しないため、同じインゴット内で、面によって不均一な温度分布が生じ、インゴットに反り等の変形が生じる原因となっていた。
【0051】
しかしながら、本発明の第5実施形態によれば、2列のインゴット22間に平板状の冷却部材60が配設されているので、インゴット同士が対向する面においても放熱が促進され、冷却を速やかに行うことができる。結果として、インゴットの全表面から均一に冷却を行うことが可能になるという効果を奏するものである。
【0052】
なお、第5実施形態においては、インゴットを2列に製造する例を説明したが、本実施形態は2列のインゴットに限定されず、インゴットが3列以上の複数列とすることも可能であり、その場合は、インゴット22と冷却部材60を交互に配置すればよい。
【0053】
第6実施形態(複数インゴット+コ字状冷却部材)
本発明の第6実施形態においては、図13に示すように、引き抜き部50内に、コ字状の冷却部材が配設されていることを特徴としている。図13において、(a)は引き抜き部50の側断面図であり、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【0054】
図13に示すように、2列の引き抜かれたインゴット22および引き抜き治具30はそれぞれ、三方の側面に、引き抜き方向の断面がコ字状の冷却部材61が、インゴット22の三方の表面に沿って所定の距離を保って延在するように配設されている。
【0055】
本発明の第6実施形態によれば、引き抜き部50内にコ字状の冷却部材61が配設されているので、第5実施形態と比較してインゴット22の放熱をより促進させ、冷却を速やかに行うことができる。
【0056】
なお、第6実施形態においては、インゴットを2列製造する例を説明したが、本実施形態は2列のインゴットに限定されず、インゴットおよび冷却部材の組み合わせが3列以上の配置された複数列とすることも可能である。
また、図13に示した2組のコ字の冷却部材を相互に反転する形で配設することも可能である。
【0057】
第7実施形態(複数インゴット+ロ字状冷却部材)
本発明の第7実施形態においては、図14に示すように、引き抜き部50内に、ロ字状の冷却部材が配設されていることを特徴としている。図14において、(a)は引き抜き部50の側断面図であり、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【0058】
図14に示すように、2列の引き抜かれたインゴット22および引き抜き治具30はそれぞれ、四方を取り囲むように、引き抜き方向の断面がロ字状の冷却部材62が、インゴット22の四方の表面に沿って所定の距離を保って延在するように配設されている。
【0059】
本発明の第7実施形態によれば、引き抜き部50内にロ字状の冷却部材62が配設されているので、インゴットを全方向から冷却することができ、第5および第6実施形態と比較してインゴット22の放熱をより促進させ、冷却を速やかに行うことができる。
【0060】
なお、第7実施形態においては、2列のインゴットを製造する例を説明したが、本実施形態は2列のインゴットに限定されず、インゴットおよび冷却部材の組み合わせが3列以上の配置された複数列とすることも可能である。
【0061】
第8実施形態(複数インゴット+コイル状冷却部材)
本発明の第8実施形態においては、図15に示すように、引き抜き部50内に、螺旋状のコイルからなる冷却部材が配設されていることを特徴としている。図15において、(a)は引き抜き部50の側断面図であり、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【0062】
図15に示すように、コイル状の冷却部材63が、2列の引き抜かれたインゴット22および引き抜き治具30の四方を螺旋状に取り囲み、かつインゴット22の四方の表面に沿って所定の距離を保って延在するよう配設されている。
【0063】
本発明の第8実施形態によれば、引き抜き部50内にコイル状の冷却部材63が配設されているので、インゴットを全方向から冷却することができ、第7実施形態同様に、インゴット22の放熱をより促進させ、冷却を速やかに行うことができる。
【0064】
なお、第8実施形態においては、2列のインゴットを製造する例を説明したが、本実施形態は2列のインゴットに限定されず、インゴットおよび冷却部材の組み合わせが3列以上の配置された複数列とすることも可能である。
【0065】
第9実施形態(複数インゴット+三角柱状冷却部材)
続いて、本発明の他の実施形態を説明する。図16は、本発明の電子ビーム溶解炉における溶解部40内において、複数の鋳型16の配置を変更した例である。図16に示すように、2基の鋳型16は、長手方向の面が非平行の状態となるように配置され、ハース13と鋳型16との間には、溶湯20をそれぞれの鋳型16に分配する樋18が設けられている。
【0066】
図17は、図16に示す溶解部40で製造されるインゴットを引き抜き部50に引き抜いた際の断面図を示す。図17に示すように、引き抜かれた2列のインゴット22は、ハ字状に配置されており、2列のインゴットに挟まれた空間には、三角柱状の冷却部材64が、三角柱の2面がそれぞれのインゴット22の表面と一定の間隔で沿って平行に延在するよう配設されている。
【0067】
本発明の第9実施形態によれば、2列のインゴットの面が互いに平行でなくても、インゴット間に配設される冷却部材が三角柱であって、かつ、その2面がそれぞれのインゴットの面に平行になるように設けられているので、インゴット間においても放熱を促進させ、冷却を速やかに行うことができる。結果として、インゴットの全表面から均一に冷却を行うことが可能になる。
【0068】
第10実施形態(複数インゴット+三角柱状冷却部材)
図18は、本発明の電子ビーム溶解炉における溶解部40内において、鋳型16の配置を変更した例である。図18に示すように、複数の鋳型16は、長手方向の面が放射状になるように配置され、ハース13と鋳型16との間には、溶湯20をそれぞれの鋳型16に対して放射状に分配する樋19が設けられている。
【0069】
図19は、図17に示す溶解部40で製造されるインゴットを引き抜き部50に引き抜いた際の断面図を示す。図19に示すように、引き抜かれた複数のインゴット22は、放射状に配置されており、隣接する2列のインゴットに挟まれた空間には、それぞれ三角柱状の冷却部材65が、三角柱の2面がそれぞれのインゴット22の表面と一定の間隔で沿って平行に延在するよう配設されている。
【0070】
本発明の第10実施形態によれば、複数のインゴットが放射状に配置されその面が互いに平行でなくても、インゴット間に配設される冷却部材が三角柱であって、かつ、その2面がそれぞれのインゴットの面に平行になるように設けられているので、インゴット間においても放熱を促進させ、冷却を速やかに行うことができる。結果として、インゴットの全表面から均一に冷却を行うことが可能になる。
また、本実施態様では、限られた空間の中で、複数のインゴットを効率よく製造することができるという効果を奏するものである。
【0071】
その他の変形例(非矩形インゴット+冷却部材)
図20は、本発明の他の変更例における引き抜かれたインゴットの断面図を示す。図20(a)に示すように、本発明は、断面が円形のインゴット23にも適用することができ、この場合の冷却部材66は、矩形インゴットの場合と同様、インゴット23の表面と所定の間隔をおいてインゴットの全周を取り囲む円形の断面を有しており、インゴット引き抜き方向に延在する。
【0072】
さらに、図20(b)に示すように、コイル状冷却部材67によって円形インゴット全周を取り囲む形状とすることもできる。
【0073】
また、図21の平面図に示すように、溶解部40において鋳型16が複数並列に設けられ、その下方の引き抜き部50においては、引き抜き部50を構成する外筒として、インゴットの一部を囲み一部が開放されたC字状の断面形状であるものを組み合わせた引き抜き部外筒51とすることもできる。なお、図21は、引き抜き部外筒51の変形例を例示したものであり、図中に冷却部材の図示は省略されているが、本願明細書において説明した各種の冷却部材を、図21に示す態様において適宜配設することができる。
【0074】
さらに、図22に示すように、本発明においては、これまで説明してきたように冷却部材をインゴット下方から設置するのではなく、例えば銅板等からなる板状部材を鋳型16の下端に固定具72を介して取り付け、鋳型16を上方から下方に延長させたような態様とすることもできる。インゴット断面が矩形の場合は図22(b)に示すように、インゴット断面が円形の場合は図22(c)に示すように、板状部材70あるいは71は、インゴットを取り囲むように設置することができる。いずれの場合も、板状部材70および71の周囲には、コイル状冷却部材63および67が配設され、冷却部材の抜熱によって板状部材を介してインゴットの冷却を行うことができる。
【0075】
また、図示は省略するが、矩形インゴットの項目で説明した態様と同様、図20(a)および(b)に示す単数のインゴット23と冷却部材を複数列並列に配置することもでき、また、図20(c)に示すように、複数の円形インゴット23の間に、円形インゴットの一部の周を囲む冷却部材68を配設することもできる。
【0076】
さらに、図示は省略するが、本発明は、断面が矩形や円形のインゴットに限定されず、断面が楕円形や、樽型や、多角形やその他曲線から構成される不定形といった、製造可能な形状であればあらゆる断面形状のインゴットに適用することができ、いずれの場合もインゴット列を単数や複数に設定することができ、それらインゴットの表面に対し、本発明の冷却部材は、その全周あるいは周の一部を取り囲む形状を有し、かつ冷却部材は、インゴットの表面に対して所定の距離を保って沿うように延在することを特徴とする。
【0077】
金属インゴットを冷却する冷却部材は熱伝導の良好な金属で構成され、前記部材自身に冷媒を使用することが望ましい。その冷却方法は部材をジャケット構造とすることにより銅部材の全面を冷却する方法や、冷却部材中にあらかじめ冷媒の流路を設け、前記流路に冷媒を通して部材を冷却する方法や、あるいは金属製のパイプをコイル状にして冷却部材の表面に付設して、冷却部材を冷却する方法があり、これらの方法を用いることでインゴットからの放熱を効率的に抜き取ることができる。
【0078】
前記冷却部材の材質は、伝熱の効果を発現するものであれば任意に選択でき、金属、セラミクス、あるいは耐熱性エンジニアリングプラスチック等を用いることができるが、本願においては、前記材料の中でも、銅、アルミニウム、鉄等の熱伝導が優れているものを好適に用いることができる。
【0079】
また、冷媒は水、有機溶媒、オイルあるいは気体を使用することもできる。
【0080】
冷却部材の他の冷却方法としては、冷却部材として二種類以上の異なる金属を張り合わせた材料を使用し、部材に直流電流を流すことで発現する所謂ペルチェ効果を利用して、インゴット側に面した部材表面を冷却する一方、部材の反対側に放熱させる方式を単独あるいは前記の冷媒による冷却方法と組合せて用いることも可能である。この際、部材としては、銅とコンスタンタン(銅・ニッケル合金)のクラッド材や銅とニッケル・クロム合金のクラッド材等が好適な材料として使用することができる。
【0081】
以上述べたような本発明に従って金属インゴットを製造することにより、速やかに冷却を行うことができ、インゴットの空気酸化による劣化を抑制するとともにインゴットの製造効率が向上する。また、インゴットの放熱を、全方向に関して均一に行うことができるので、インゴットの不均一な温度分布による変形を防止することができる。
【実施例】
【0082】
[実施例1]
図10に示すように、鋳型16内に、1000℃に保持されたインゴット(φ100)の周囲を取り囲むように冷却部材を配置した場合のインゴットの冷却時間と、同冷却部材を用いない場合のインゴットが300℃まで冷却されるに必要な冷却時間を測定した。
ここでは、冷却部材として水冷銅を用いた。
【0083】
【表1】
【0084】
[実施例2]
実施例1において、図10に替えて図11の冷却部材を用いた以外は同じ条件下でインゴットの冷却時間を測定した。
【0085】
【表2】
【0086】
[実施例3]
実施例1において、図10に替えて図12の冷却部材を用いた以外は同じ条件下でインゴットの冷却時間を測定した。
【0087】
【表3】
【0088】
[実施例4]
実施例1において、図10に替えて図14の冷却部材を用いた以外は同じ条件下でインゴットの冷却時間を測定した。
【0089】
【表4】
【0090】
[実施例5]
実施例1において、図10に替えて図15の冷却部材を用いた以外は同じ条件下でインゴットの冷却時間を測定した。
【0091】
【表5】
【0092】
以上の実施例により、いずれの場合にも冷却部材を使用することにより、鋳型で生成されるインゴットを効果的に冷却できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0093】
高融点金属インゴットの製造における製造効率の向上に寄与するとともに、製造されるインゴットの空気酸化による劣化や変形をも抑制することができる。
【符号の説明】
【0094】
10…原料供給機、
11…原料移送機、
12…原料、
13…ハース、
14、15…電子ビーム照射機、
16…鋳型、
17〜19…樋、
20…溶湯、
21…溶融プール、
22…インゴット(断面矩形)、
23…インゴット(断面円形)、
30…インゴット引き抜き治具、
40…溶解部、
41…溶解部外筒、
50…引き抜き部、
51…引き抜き部外筒、
60…冷却部材(平板状ジャケット)、
61…冷却部材(コ字状ジャケット)、
62…冷却部材(ロ字状ジャケット)、
63、67…冷却部材(コイル)
64、65…冷却部材(三角柱状ジャケット)、
66…冷却部材(円形)、
68…冷却部材、
70…板状部材、
71…板状部材、(円形)、
72…固定具。
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン等の金属製造用溶解炉に係り、特に、金属インゴットの製造効率を向上させることができる金属製造用溶解炉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
金属チタンは、航空機産業のみならず近年の世界的な需要の拡大に伴い生産量も大幅に伸びてきている。これに伴い、スポンジチタンのみならず、金属チタンインゴットの需要も大きく伸びている。
【0003】
金属チタンインゴットは、四塩化チタンを還元性金属で還元する所謂クロール法で製造されたスポンジチタンをブリケットに成形した後、前記ブリケットを組み合わせて溶解用の電極とし、前記電極を真空アーク溶解することで製造されている。
【0004】
また、金属チタンインゴットの他の製造方法としては、金属チタンスクラップをスポンジチタンに配合して溶解原料とし、これを電子ビーム溶解炉あるいはプラズマ溶解炉にて溶解し、鋳型内で冷却固化されたインゴットを鋳型から引き抜く方法も知られている。この電子ビーム溶解炉の一例を、図1〜3に示す(図2は、図1において方向Aから見た平面図であり、図3は、B−B線断面図である)。
【0005】
電子ビーム溶解炉では、真空アーク溶解炉とは異なり、溶解原料を必ずしも電極に成形する必要はなく、顆粒状あるいは塊状の原料12をそのままハース20に投入して溶解することができるという特徴を有している。
【0006】
また、電子ビーム溶解炉では、原料中の不純物を揮発させつつ、ハース20にて原料12を溶解して生成された溶湯20を鋳型16に供給することができるので、純度の高い金属チタンインゴットを溶製することができるという効果を奏するものである。
【0007】
このようにハース付きの電子ビーム溶解炉によれば、金属チタンのみならず、ジルコニウムやハフニウムあるいはタンタル等の高融点金属に不純物が含まれているような原料を溶解する場合においても、純度の高い金属インゴットを製造することができる。
【0008】
しかしながら、電子ビーム溶解炉では、前記したように鋳型16で冷却固化したインゴット22を引き抜き治具30によって引き抜いている。鋳型16より引き抜かれた直後のインゴット22は高温であり、また、引き抜き部50内は、減圧とされているので、鉄鋼の連続鋳造のように水スプレーでインゴットを冷却することは困難であり、現実には図1および3で波線の矢印で示すように、主に輻射のみによる放熱によってインゴット22は冷却されており、室温近傍まで冷却するには長時間を必要とされている。このように、引き抜き部50内でのインゴットの冷却には時間を要するため、鋳型16で生成されたインゴットの効率的な冷却構造が望まれている。
【0009】
インゴットの製造効率を向上させるため、図4〜7に示すような(図5は、図4において方向Aから見た平面図であり、図6は、図4において方向Cから見た側面図であり、図7は、B−B線断面図である)、鋳型16を複数配置し、樋17によって溶湯を振り分け、複数のインゴットを同時に製造することができる電子ビーム溶解炉が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
このような電子ビーム溶解炉においても、上述のとおり、複数のインゴット22は輻射によって放熱させるしかなくインゴットの冷却効率が悪い上に、さらに、図6、7に示すように、引き抜き部外筒51に対向するインゴット表面からは輻射熱が引き抜き部外筒51に良好に放熱されるものの、インゴット同士が対向している面(引き抜き部50内中央近傍)においては放熱が進行せず、結果としてインゴットの冷却速度が上がらないという課題がある。更には、一のインゴット内において、不均一な温度分布が生じ、インゴットの反り等の変形を伴う場合もあり改善が求められていた。
【0011】
前記した課題は、プラズマアーク溶解炉についても共通するものであり、前記した課題を解決しうる金属溶製用の溶解炉が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公平3−75616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、溶製されたインゴットを速やかに冷却することにより製造効率を向上させることができる金属溶製用溶解炉を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる実情に鑑みて鋭意検討を重ねてきたところ、インゴット引き抜き部に、特定の態様の冷却部材を配設することにより、インゴットの冷却を促進することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明に係る金属溶製用溶解炉は、原料供給機、原料を溶解する加熱源、前記原料を溶解して生成された溶湯を保持するハース、および前記溶湯を装入する鋳型を備えた溶解部、ならびに前記溶解部の下方に設けられ、前記鋳型内で溶湯を冷却固化したインゴットの引き抜き治具を備えたインゴット引き抜き部およびその外側に装置された外筒から構成された金属溶製用溶解炉であって、前記外筒とインゴットとの間に冷却部材を配設したことを特徴とするものである。
【0016】
本発明においては、冷却部材が、引き抜かれる生成インゴットの表面に沿って所定の距離を保って延在するように配設されていることを好ましい態様としている。
【0017】
本発明においては、冷却部材は、インゴットの引き抜き方向に垂直な断面において、インゴット全周または周の一部を囲むものであることを好ましい態様としている。
【0018】
本発明においては、インゴットの断面が矩形、円形、楕円形、樽型、多角形、または不定形であることを好ましい態様としている。
【0019】
本発明においては、冷却部材が、水冷銅ジャケットまたは水冷銅コイルで構成されていることを好ましい態様としている。
【0020】
本発明においては、鋳型は、複数のインゴットを同時に溶製することができるように複数の鋳型が溶解部内に配設され、引き抜き部内においては、前記複数のインゴット間に冷却部材を配設したことを好ましい態様としている。
【0021】
本発明においては、前記インゴットの長手方向の表面が相互に同じ距離を保って抜き出せるように複数の鋳型が引抜部内に配設されていることを好ましい態様としている。
【0022】
本発明においては、前記インゴットの長手方向の表面が放射状を保って抜き出せるように複数の鋳型が前記引抜部内に配設されていることを好ましい態様としている。
【0023】
本発明においては、前記加熱源が、電子ビームまたはプラズマアークであることを好ましい態様とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る金属溶製用溶解炉を用いることにより、抜き出されたインゴットの冷却を速やかに行うことができ、これによりインゴットの製造効率を向上させることができるという効果を奏する。
【0025】
また、複数のインゴットを同時に抜き出す場合においては、対向するインゴット間の放熱を促進することによって生成インゴットの冷却速度を高めることができるのみならず、一のインゴット内に不均一な温度分布の形成が抑制されこれに伴うインゴットの熱変形も回避することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、従来および本発明に係る、単数のインゴットを製造する電子ビーム溶解炉における共通の構成要素を示す模式断面図である。
【図2】図2は、図1において方向Aから見た平面図である。
【図3】図3は、図1におけるB−B線断面図である。
【図4】図4は、従来および本発明に係る、複数のインゴットを製造する電子ビーム溶解炉における共通の構成要素を示す模式断面図である。
【図5】図5は、図4において方向Aから見た平面図である。
【図6】図6は、図4において方向Cから見た側面図である。
【図7】図7は、図4におけるB−B線断面図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態を示す模式図であり、(a)はインゴット引き抜き部の側断面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態を示す模式図であり、(a)はインゴット引き抜き部の側断面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【図10】図10は、本発明の一実施形態を示す模式図であり、(a)はインゴット引き抜き部の側断面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【図11】図11は、本発明の一実施形態を示す模式図であり、(a)はインゴット引き抜き部の側断面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【図12】図12は、本発明の一実施形態を示す模式図であり、(a)はインゴット引き抜き部の側断面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【図13】図13は、本発明の一実施形態を示す模式図であり、(a)はインゴット引き抜き部の側断面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【図14】図14は、本発明の一実施形態を示す模式図であり、(a)はインゴット引き抜き部の側断面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【図15】図15は、本発明の一実施形態を示す模式図であり、(a)はインゴット引き抜き部の側断面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【図16】図16は、本発明の一実施形態における溶解部を示す部分平面図である。
【図17】図17は、図16の実施形態のインゴット引き抜き部を示す断面図である。
【図18】図18は、本発明の一実施形態における溶解部を示す部分平面図である。
【図19】図19は、図18の実施形態のインゴット引き抜き部を示す断面図である。
【図20】図20(a)〜(c)は、本発明のその他の変更例の一例におけるインゴット引き抜き部を示す断面図である。
【図21】図21は、本発明のその他の変更例の一例におけるインゴット引き抜き部を示す断面図である。
【図22】図22は、本発明の一実施形態を示す模式図であり、(a)はインゴット引き抜き部の側断面図、(b)および(c)は(a)における平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の最良の実施形態について、金属溶製用溶解炉が電子ビーム溶解炉である場合を例にとり、図面を用いて以下に詳細に説明する。以下の説明においては、原料がスポンジチタン、製造するインゴットが金属チタンであり、製造するインゴットの断面が矩形である場合を例に説明するが、本発明の電子ビーム溶解炉は、チタンインゴットの製造に限定されず、ジルコニウムやハフニウム、タングステンあるいはタンタル等の高融点金属、その他電子ビーム溶解炉によってインゴットを製造することができる金属やこれらの合金であれば同様に適用することができ、また、断面に関しても、矩形に限定されず、円形、楕円形、樽型、多角形、その他不定形など、あらゆる断面形状を含む。
【0028】
第1実施形態(単数インゴット+平板状冷却部材)
図1〜3は、単数のインゴットを製造するための、従来の電子ビーム溶解炉および本発明に係る電子ビーム溶解炉に共通する構成要素を表している。図2は、図1において方向Aから見た平面図であり、図3は、図1におけるB−B線断面図である。図1に示す電子ビーム溶解炉は、原料を溶解する溶解部40と、その下方で製造されたインゴットを引き抜く引き抜き部50とから構成されている。
【0029】
溶解部壁41で画成された溶解部40内には、スポンジチタンあるいはチタンスクラップで構成されたチタン原料12を供給するためのアルキメデス缶等の原料供給機10と、原料12を移送する振動フィーダ等の原料移送機11と、供給された原料を溶解するハース13と、ハース13に供給された原料12を溶解して溶湯20とする電子ビーム照射機14と、溶湯20を冷却固化してインゴットを形成させる水冷銅等で構成された鋳型16と、鋳型16内に電子ビームを照射して溶解し溶融プール21を形成させる電子ビーム照射機15とが設けられている。
【0030】
溶解部40の鋳型16の下方には、引き抜き部外筒51で画成された引き抜き部50が設置されており、引き抜き部50内には、鋳型16で形成されたインゴット22を下方に引き抜く引き抜き治具30が設けられている。
なお、溶解部40および引き抜き部50内は、減圧雰囲気が保持されるように構成されている。
【0031】
まず原料供給機10から供給された原料12は、ハース13内で電子ビーム照射機14によって溶解されて溶湯20を形成する。溶湯20は、ハース13の下流から鋳型16内に供給される。鋳型内16には、原料12の溶解に先立って図示しないスタブが配置されており、このスタブが鋳型16の底部を構成している。前記スタブは原料12と同じ金属で構成されており、鋳型16内に供給された溶湯20と一体化してインゴット22を形成する。
【0032】
鋳型16内のスタブ上に連続的に供給された溶湯20の表面は、電子ビーム照射機15によって加熱されて溶融プール21を形成すると共に、溶湯20の底部は、鋳型16によって冷却されて固化して前記スタブと一体化してインゴット22を形成する。
【0033】
鋳型16内で生成したインゴット22は、溶融プール21のレベルが一定になるようにスタブに係合された引き抜き治具30の引抜速度を調節しつつ引き抜き部50内に抜き出される。
【0034】
以上が単数インゴット製造用の従来の電子ビーム溶解炉および本発明に係る電子ビーム溶解炉に共通する構成および動作であるが、本発明の第1実施形態においては、図8に示すように、引き抜き部50内に、平板状の冷却部材60が配設されていることを特徴としている。
【0035】
図8において、(a)は引き抜き部50の側断面図であり、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。図8に示すように、引き抜かれたインゴット22および引き抜き治具30の一方の側面には、平板状の冷却部材60が、インゴット22の表面に沿って所定の距離を保って延在するよう配設されている。前記冷却部材60は、外部から冷媒の流通等により冷却可能であれば特に限定されず、例えば水冷銅ジャケットで構成することができる。
【0036】
図3に示すように、従来の電子ビーム溶解炉においては、引き抜き部50が減圧に保たれているため、主に輻射によって電子ビーム溶解炉の引き抜き部外筒51に対して放熱されていたが、本発明の第1実施形態によれば、引き抜き部50内に平板状の冷却部材60がインゴットと電子ビーム溶解炉の本体との間に配設されているので、放熱距離が短縮されて輻射による放熱量が増加してインゴット22の冷却が促進される。その結果、生成インゴットの引抜速度を高めることができるという効果を奏するものである。インゴットの冷却速度の改善は、溶解速度を高めることができることを意味し、結果的にインゴットの生産速度を高めることができるという効果を奏するものである。
【0037】
第2実施形態(単数インゴット+コの字状冷却部材)
本発明の第2実施形態においては、図9に示すように、引き抜き部50内に、コ字状の冷却部材が配設されていることを特徴としている。図9において、(a)は引き抜き部50の側断面図であり、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【0038】
図9に示すように、引き抜かれたインゴット22および引き抜き治具30のうち三方の側面には、引き抜き方向の断面がコ字状の冷却部材61が、インゴット22の三方の表面に沿って所定の距離を保って延在するように配設されている。
【0039】
本発明の第2実施形態によれば、引き抜き部50内にコ字状の冷却部材61が配設されているので、第1実施形態と比較してインゴット22の放熱をより促進させ、冷却を速やかに行うことができるという効果を奏するものである。
【0040】
第3実施形態(単数インゴット+ロ字状冷却部材)
本発明の第3実施形態においては、図10に示すように、引き抜き部50内に、ロ字状の冷却部材が配設されていることを特徴としている。図10において、(a)は引き抜き部50の側断面図であり、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【0041】
図10に示すように、引き抜かれたインゴット22および引き抜き治具30の四方を取り囲むように、引き抜き方向の断面がロ字状の冷却部材62が、インゴット22の四方の表面に沿って所定の距離を保って延在するように配設されている。
【0042】
本発明の第3実施形態によれば、引き抜き部50内にロ字状の冷却部材62が配設されているので、インゴットを全方向から冷却することができ、第1および第2実施形態と比較してインゴット22の放熱をより促進させ、冷却を速やかに行うことができるという効果を奏するものである。
【0043】
第4実施形態(単数インゴット+コイル状冷却部材)
本発明の第4実施形態においては、図11に示すように、引き抜き部50内に、螺旋状のコイルからなる冷却部材が配設されていることを特徴としている。図11において、(a)は引き抜き部50の側断面図であり、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【0044】
図11に示すように、コイル状の冷却部材63が、引き抜かれたインゴット22および引き抜き治具30の四方を螺旋状に取り囲み、かつインゴット22の四方の表面に沿って所定の距離を保って延在するように配設されている。この冷却部材63としては、外部から冷媒を流通させられる管状の部材であれば特に限定されず、例えば水冷銅コイルで構成することができる。
【0045】
本発明の第4実施形態によれば、引き抜き部50内にコイル状の冷却部材63が配設されているので、インゴットを全方向から冷却することができ、第3実施形態同様に、インゴット22の放熱をより促進させ、冷却を速やかに行うことができるという効果を奏するものである。
【0046】
第5実施形態(複数インゴット+平板状冷却部材)
図4〜7は、複数のインゴットを製造するための、従来の電子ビーム溶解炉および本発明に係る電子ビーム溶解炉に共通する構成要素を表している。なお、図5は、図4において方向Aから見た平面図であり、図6は、図4において方向Cから見た側面図であり、図7は、図4におけるB−B線断面図である。図4に示す電子ビーム溶解炉の構成要素のうち、原料供給機10と、原料移送機11と、ハース13と、電子ビーム照射機14および15は、図1に示す電子ビーム溶解炉と共通であるので、説明を省略する。
【0047】
図4〜7に示す電子ビーム溶解炉においては、2基の鋳型16が、長手方向の辺が平行になるように並列に設けられており、さらに、ハース13と鋳型16との間に、溶湯20を一旦受けて複数の鋳型16のそれぞれに分配するための樋17が設けられている。溶解部40の下方に設置された引き抜き部50では、複数の鋳型16に対応して複数の引き抜き冶具30が設けられており、複数の鋳型16で形成されたインゴット22を引き抜けるように構成されている。
【0048】
以上が2基のインゴット製造用の従来の電子ビーム溶解炉および本発明に係る電子ビーム溶解炉に共通する構成および動作であるが、本発明の第5実施形態においては、図12に示すように、引き抜き部50内に、平板状の冷却部材60が配設されていることを特徴としている。
【0049】
図12において、(a)は引き抜き部50の側断面図であり、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。図12に示すように、引き抜かれた2列のインゴット22および引き抜き治具30に挟まれた空間には、平板状の冷却部材60が、それぞれのインゴット22の表面に沿って所定の距離を保って延在するように配設されている。
【0050】
図7に示すように、従来の電子ビーム溶解炉においては、引き抜き部50が減圧に保たれているため、冷媒を直接供給してインゴット22を冷却することができず、波線の矢印で示すように、前記インゴット22は主に輻射によって冷却されていた。2列のインゴット22の表面のうち、引き抜き部外筒51に対向している面からは輻射により放熱が行われて冷却が進行するが、2列のインゴットが互いに対向する中央近傍では、互いに輻射熱を受けるため、インゴット22の冷却速度が低下し、これはインゴットの生産速度の低下を招く。また、2列のインゴットが互いに対向するインゴット22の周縁部と比較して冷却が相対的に進行しないため、同じインゴット内で、面によって不均一な温度分布が生じ、インゴットに反り等の変形が生じる原因となっていた。
【0051】
しかしながら、本発明の第5実施形態によれば、2列のインゴット22間に平板状の冷却部材60が配設されているので、インゴット同士が対向する面においても放熱が促進され、冷却を速やかに行うことができる。結果として、インゴットの全表面から均一に冷却を行うことが可能になるという効果を奏するものである。
【0052】
なお、第5実施形態においては、インゴットを2列に製造する例を説明したが、本実施形態は2列のインゴットに限定されず、インゴットが3列以上の複数列とすることも可能であり、その場合は、インゴット22と冷却部材60を交互に配置すればよい。
【0053】
第6実施形態(複数インゴット+コ字状冷却部材)
本発明の第6実施形態においては、図13に示すように、引き抜き部50内に、コ字状の冷却部材が配設されていることを特徴としている。図13において、(a)は引き抜き部50の側断面図であり、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【0054】
図13に示すように、2列の引き抜かれたインゴット22および引き抜き治具30はそれぞれ、三方の側面に、引き抜き方向の断面がコ字状の冷却部材61が、インゴット22の三方の表面に沿って所定の距離を保って延在するように配設されている。
【0055】
本発明の第6実施形態によれば、引き抜き部50内にコ字状の冷却部材61が配設されているので、第5実施形態と比較してインゴット22の放熱をより促進させ、冷却を速やかに行うことができる。
【0056】
なお、第6実施形態においては、インゴットを2列製造する例を説明したが、本実施形態は2列のインゴットに限定されず、インゴットおよび冷却部材の組み合わせが3列以上の配置された複数列とすることも可能である。
また、図13に示した2組のコ字の冷却部材を相互に反転する形で配設することも可能である。
【0057】
第7実施形態(複数インゴット+ロ字状冷却部材)
本発明の第7実施形態においては、図14に示すように、引き抜き部50内に、ロ字状の冷却部材が配設されていることを特徴としている。図14において、(a)は引き抜き部50の側断面図であり、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【0058】
図14に示すように、2列の引き抜かれたインゴット22および引き抜き治具30はそれぞれ、四方を取り囲むように、引き抜き方向の断面がロ字状の冷却部材62が、インゴット22の四方の表面に沿って所定の距離を保って延在するように配設されている。
【0059】
本発明の第7実施形態によれば、引き抜き部50内にロ字状の冷却部材62が配設されているので、インゴットを全方向から冷却することができ、第5および第6実施形態と比較してインゴット22の放熱をより促進させ、冷却を速やかに行うことができる。
【0060】
なお、第7実施形態においては、2列のインゴットを製造する例を説明したが、本実施形態は2列のインゴットに限定されず、インゴットおよび冷却部材の組み合わせが3列以上の配置された複数列とすることも可能である。
【0061】
第8実施形態(複数インゴット+コイル状冷却部材)
本発明の第8実施形態においては、図15に示すように、引き抜き部50内に、螺旋状のコイルからなる冷却部材が配設されていることを特徴としている。図15において、(a)は引き抜き部50の側断面図であり、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【0062】
図15に示すように、コイル状の冷却部材63が、2列の引き抜かれたインゴット22および引き抜き治具30の四方を螺旋状に取り囲み、かつインゴット22の四方の表面に沿って所定の距離を保って延在するよう配設されている。
【0063】
本発明の第8実施形態によれば、引き抜き部50内にコイル状の冷却部材63が配設されているので、インゴットを全方向から冷却することができ、第7実施形態同様に、インゴット22の放熱をより促進させ、冷却を速やかに行うことができる。
【0064】
なお、第8実施形態においては、2列のインゴットを製造する例を説明したが、本実施形態は2列のインゴットに限定されず、インゴットおよび冷却部材の組み合わせが3列以上の配置された複数列とすることも可能である。
【0065】
第9実施形態(複数インゴット+三角柱状冷却部材)
続いて、本発明の他の実施形態を説明する。図16は、本発明の電子ビーム溶解炉における溶解部40内において、複数の鋳型16の配置を変更した例である。図16に示すように、2基の鋳型16は、長手方向の面が非平行の状態となるように配置され、ハース13と鋳型16との間には、溶湯20をそれぞれの鋳型16に分配する樋18が設けられている。
【0066】
図17は、図16に示す溶解部40で製造されるインゴットを引き抜き部50に引き抜いた際の断面図を示す。図17に示すように、引き抜かれた2列のインゴット22は、ハ字状に配置されており、2列のインゴットに挟まれた空間には、三角柱状の冷却部材64が、三角柱の2面がそれぞれのインゴット22の表面と一定の間隔で沿って平行に延在するよう配設されている。
【0067】
本発明の第9実施形態によれば、2列のインゴットの面が互いに平行でなくても、インゴット間に配設される冷却部材が三角柱であって、かつ、その2面がそれぞれのインゴットの面に平行になるように設けられているので、インゴット間においても放熱を促進させ、冷却を速やかに行うことができる。結果として、インゴットの全表面から均一に冷却を行うことが可能になる。
【0068】
第10実施形態(複数インゴット+三角柱状冷却部材)
図18は、本発明の電子ビーム溶解炉における溶解部40内において、鋳型16の配置を変更した例である。図18に示すように、複数の鋳型16は、長手方向の面が放射状になるように配置され、ハース13と鋳型16との間には、溶湯20をそれぞれの鋳型16に対して放射状に分配する樋19が設けられている。
【0069】
図19は、図17に示す溶解部40で製造されるインゴットを引き抜き部50に引き抜いた際の断面図を示す。図19に示すように、引き抜かれた複数のインゴット22は、放射状に配置されており、隣接する2列のインゴットに挟まれた空間には、それぞれ三角柱状の冷却部材65が、三角柱の2面がそれぞれのインゴット22の表面と一定の間隔で沿って平行に延在するよう配設されている。
【0070】
本発明の第10実施形態によれば、複数のインゴットが放射状に配置されその面が互いに平行でなくても、インゴット間に配設される冷却部材が三角柱であって、かつ、その2面がそれぞれのインゴットの面に平行になるように設けられているので、インゴット間においても放熱を促進させ、冷却を速やかに行うことができる。結果として、インゴットの全表面から均一に冷却を行うことが可能になる。
また、本実施態様では、限られた空間の中で、複数のインゴットを効率よく製造することができるという効果を奏するものである。
【0071】
その他の変形例(非矩形インゴット+冷却部材)
図20は、本発明の他の変更例における引き抜かれたインゴットの断面図を示す。図20(a)に示すように、本発明は、断面が円形のインゴット23にも適用することができ、この場合の冷却部材66は、矩形インゴットの場合と同様、インゴット23の表面と所定の間隔をおいてインゴットの全周を取り囲む円形の断面を有しており、インゴット引き抜き方向に延在する。
【0072】
さらに、図20(b)に示すように、コイル状冷却部材67によって円形インゴット全周を取り囲む形状とすることもできる。
【0073】
また、図21の平面図に示すように、溶解部40において鋳型16が複数並列に設けられ、その下方の引き抜き部50においては、引き抜き部50を構成する外筒として、インゴットの一部を囲み一部が開放されたC字状の断面形状であるものを組み合わせた引き抜き部外筒51とすることもできる。なお、図21は、引き抜き部外筒51の変形例を例示したものであり、図中に冷却部材の図示は省略されているが、本願明細書において説明した各種の冷却部材を、図21に示す態様において適宜配設することができる。
【0074】
さらに、図22に示すように、本発明においては、これまで説明してきたように冷却部材をインゴット下方から設置するのではなく、例えば銅板等からなる板状部材を鋳型16の下端に固定具72を介して取り付け、鋳型16を上方から下方に延長させたような態様とすることもできる。インゴット断面が矩形の場合は図22(b)に示すように、インゴット断面が円形の場合は図22(c)に示すように、板状部材70あるいは71は、インゴットを取り囲むように設置することができる。いずれの場合も、板状部材70および71の周囲には、コイル状冷却部材63および67が配設され、冷却部材の抜熱によって板状部材を介してインゴットの冷却を行うことができる。
【0075】
また、図示は省略するが、矩形インゴットの項目で説明した態様と同様、図20(a)および(b)に示す単数のインゴット23と冷却部材を複数列並列に配置することもでき、また、図20(c)に示すように、複数の円形インゴット23の間に、円形インゴットの一部の周を囲む冷却部材68を配設することもできる。
【0076】
さらに、図示は省略するが、本発明は、断面が矩形や円形のインゴットに限定されず、断面が楕円形や、樽型や、多角形やその他曲線から構成される不定形といった、製造可能な形状であればあらゆる断面形状のインゴットに適用することができ、いずれの場合もインゴット列を単数や複数に設定することができ、それらインゴットの表面に対し、本発明の冷却部材は、その全周あるいは周の一部を取り囲む形状を有し、かつ冷却部材は、インゴットの表面に対して所定の距離を保って沿うように延在することを特徴とする。
【0077】
金属インゴットを冷却する冷却部材は熱伝導の良好な金属で構成され、前記部材自身に冷媒を使用することが望ましい。その冷却方法は部材をジャケット構造とすることにより銅部材の全面を冷却する方法や、冷却部材中にあらかじめ冷媒の流路を設け、前記流路に冷媒を通して部材を冷却する方法や、あるいは金属製のパイプをコイル状にして冷却部材の表面に付設して、冷却部材を冷却する方法があり、これらの方法を用いることでインゴットからの放熱を効率的に抜き取ることができる。
【0078】
前記冷却部材の材質は、伝熱の効果を発現するものであれば任意に選択でき、金属、セラミクス、あるいは耐熱性エンジニアリングプラスチック等を用いることができるが、本願においては、前記材料の中でも、銅、アルミニウム、鉄等の熱伝導が優れているものを好適に用いることができる。
【0079】
また、冷媒は水、有機溶媒、オイルあるいは気体を使用することもできる。
【0080】
冷却部材の他の冷却方法としては、冷却部材として二種類以上の異なる金属を張り合わせた材料を使用し、部材に直流電流を流すことで発現する所謂ペルチェ効果を利用して、インゴット側に面した部材表面を冷却する一方、部材の反対側に放熱させる方式を単独あるいは前記の冷媒による冷却方法と組合せて用いることも可能である。この際、部材としては、銅とコンスタンタン(銅・ニッケル合金)のクラッド材や銅とニッケル・クロム合金のクラッド材等が好適な材料として使用することができる。
【0081】
以上述べたような本発明に従って金属インゴットを製造することにより、速やかに冷却を行うことができ、インゴットの空気酸化による劣化を抑制するとともにインゴットの製造効率が向上する。また、インゴットの放熱を、全方向に関して均一に行うことができるので、インゴットの不均一な温度分布による変形を防止することができる。
【実施例】
【0082】
[実施例1]
図10に示すように、鋳型16内に、1000℃に保持されたインゴット(φ100)の周囲を取り囲むように冷却部材を配置した場合のインゴットの冷却時間と、同冷却部材を用いない場合のインゴットが300℃まで冷却されるに必要な冷却時間を測定した。
ここでは、冷却部材として水冷銅を用いた。
【0083】
【表1】
【0084】
[実施例2]
実施例1において、図10に替えて図11の冷却部材を用いた以外は同じ条件下でインゴットの冷却時間を測定した。
【0085】
【表2】
【0086】
[実施例3]
実施例1において、図10に替えて図12の冷却部材を用いた以外は同じ条件下でインゴットの冷却時間を測定した。
【0087】
【表3】
【0088】
[実施例4]
実施例1において、図10に替えて図14の冷却部材を用いた以外は同じ条件下でインゴットの冷却時間を測定した。
【0089】
【表4】
【0090】
[実施例5]
実施例1において、図10に替えて図15の冷却部材を用いた以外は同じ条件下でインゴットの冷却時間を測定した。
【0091】
【表5】
【0092】
以上の実施例により、いずれの場合にも冷却部材を使用することにより、鋳型で生成されるインゴットを効果的に冷却できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0093】
高融点金属インゴットの製造における製造効率の向上に寄与するとともに、製造されるインゴットの空気酸化による劣化や変形をも抑制することができる。
【符号の説明】
【0094】
10…原料供給機、
11…原料移送機、
12…原料、
13…ハース、
14、15…電子ビーム照射機、
16…鋳型、
17〜19…樋、
20…溶湯、
21…溶融プール、
22…インゴット(断面矩形)、
23…インゴット(断面円形)、
30…インゴット引き抜き治具、
40…溶解部、
41…溶解部外筒、
50…引き抜き部、
51…引き抜き部外筒、
60…冷却部材(平板状ジャケット)、
61…冷却部材(コ字状ジャケット)、
62…冷却部材(ロ字状ジャケット)、
63、67…冷却部材(コイル)
64、65…冷却部材(三角柱状ジャケット)、
66…冷却部材(円形)、
68…冷却部材、
70…板状部材、
71…板状部材、(円形)、
72…固定具。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料供給機、前記原料を溶解する加熱源、前記原料を溶解して生成された溶湯を保持するハースおよび前記溶湯を装入する鋳型を備えた溶解部、ならびに
前記溶解部の下方に設けられ、前記鋳型内で溶湯を冷却固化したインゴット引き抜き治具を備えたインゴット引き抜き部およびその外側に装置された引き抜き部外筒
から構成された金属製造用溶解炉であって、
前記引き抜き部外筒とインゴットとの間に冷却部材を配設したことを特徴とする金属製造用溶解炉。
【請求項2】
前記冷却部材が、生成インゴットの表面に沿って所定の距離を保って延在するように配設されていることを特徴とする請求項1に記載の金属製造用溶解炉。
【請求項3】
前記冷却部材は、生成インゴットの引き抜き方向に垂直な断面において、前記インゴットの全周または周の一部を囲むものであることを特徴とする請求項1または2に記載の金属製造用溶解炉。
【請求項4】
前記インゴットの断面が矩形、円形、楕円形、樽型、多角形、または不定形であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属製造用溶解炉。
【請求項5】
前記冷却部材が、水冷銅ジャケットまたは水冷銅コイルで構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属製造用溶解炉。
【請求項6】
前記鋳型は、複数のインゴットを同時に溶製することができるように複数の鋳型が溶解部内に配設され、引き抜き部内においては、前記複数のインゴット間に冷却部材を配設したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金属製造用溶解炉。
【請求項7】
前記インゴットの長手方向の表面が相互に同じ距離を保って抜き出せるように複数の鋳型が前記引抜部内に配設されていることを特徴とする請求項6に記載の金属製造用溶解炉。
【請求項8】
前記インゴットの長手方向の表面が放射状を保って抜き出せるように複数の鋳型が引抜部内に配設されていることを特徴とする請求項6に記載の金属製造用溶解炉。
【請求項9】
前記溶解炉が電子ビーム溶解炉またはプラズマアーク溶解炉であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の金属製造用溶解炉。
【請求項10】
前記加熱源が、電子ビームまたはプラズマアークであることを特徴とする請求項1に記載の金属製造用溶解炉。
【請求項1】
原料供給機、前記原料を溶解する加熱源、前記原料を溶解して生成された溶湯を保持するハースおよび前記溶湯を装入する鋳型を備えた溶解部、ならびに
前記溶解部の下方に設けられ、前記鋳型内で溶湯を冷却固化したインゴット引き抜き治具を備えたインゴット引き抜き部およびその外側に装置された引き抜き部外筒
から構成された金属製造用溶解炉であって、
前記引き抜き部外筒とインゴットとの間に冷却部材を配設したことを特徴とする金属製造用溶解炉。
【請求項2】
前記冷却部材が、生成インゴットの表面に沿って所定の距離を保って延在するように配設されていることを特徴とする請求項1に記載の金属製造用溶解炉。
【請求項3】
前記冷却部材は、生成インゴットの引き抜き方向に垂直な断面において、前記インゴットの全周または周の一部を囲むものであることを特徴とする請求項1または2に記載の金属製造用溶解炉。
【請求項4】
前記インゴットの断面が矩形、円形、楕円形、樽型、多角形、または不定形であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属製造用溶解炉。
【請求項5】
前記冷却部材が、水冷銅ジャケットまたは水冷銅コイルで構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属製造用溶解炉。
【請求項6】
前記鋳型は、複数のインゴットを同時に溶製することができるように複数の鋳型が溶解部内に配設され、引き抜き部内においては、前記複数のインゴット間に冷却部材を配設したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金属製造用溶解炉。
【請求項7】
前記インゴットの長手方向の表面が相互に同じ距離を保って抜き出せるように複数の鋳型が前記引抜部内に配設されていることを特徴とする請求項6に記載の金属製造用溶解炉。
【請求項8】
前記インゴットの長手方向の表面が放射状を保って抜き出せるように複数の鋳型が引抜部内に配設されていることを特徴とする請求項6に記載の金属製造用溶解炉。
【請求項9】
前記溶解炉が電子ビーム溶解炉またはプラズマアーク溶解炉であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の金属製造用溶解炉。
【請求項10】
前記加熱源が、電子ビームまたはプラズマアークであることを特徴とする請求項1に記載の金属製造用溶解炉。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−177522(P2012−177522A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40861(P2011−40861)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(390007227)東邦チタニウム株式会社 (191)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(390007227)東邦チタニウム株式会社 (191)
【Fターム(参考)】
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