説明

金属部材の接合方法およびその装置

【課題】多大な設備を要することなく、熱硬化性接着剤による接合工程において、効率良く接着剤を硬化ないしは半硬化させることができる金属部材の接合方法およびその装置を提供する。
【解決手段】複数の重ね合わせた金属部材100の間に熱硬化性接着剤を介在させて接合する方法または装置であって、金属部材100の接合部で磁石71a,71bによる磁場を発生させ、上記磁場を変化させることによって金属部材100に誘導電流を発生させ、上記誘導電流による金属部材100の発熱によって上記熱硬化性接着剤の加熱硬化を促進させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の重ね合わせた金属部材の間に熱硬化性接着剤を介在させて接合する方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のボディ等において、金属部材同士を接合する方法としてスポット溶接が一般的に行われている。しかし近年、衝突性能の向上要求が高まりつつあり、そのためスポット溶接では強度的に不充分となる場合があった。スポット溶接では接合点が不連続であるため応力集中が起こり易く、衝突時に比較的容易に剥がれてしまうからである。
【0003】
そこで近年、その問題を解決すべく接着剤による接合が多用されつつある。接着剤によれば、連続性のある接合点で接合することができるので、スポット溶接による接合と比較して衝突時に剥がれ難いという利点がある。使用される接着剤としては、エポキシ系接着剤に代表される熱硬化性の構造用接着剤が一般的である。
【0004】
接着剤による接合工程を含む一連の流れとして、例えば自動車のボディ製造工程に見られるように、接着剤による接合工程→電着塗装工程→塗装乾燥工程という順序がとられることが多い。この場合、接着剤の硬化は塗装乾燥工程での加熱を利用して行われる。つまり塗装の乾燥と接着剤の硬化とを同時に行うことにより生産性を高めているのである。
【0005】
なお、接着剤を用いた接合ではないが、重ね合わせた金属部材を接合する方法として、特許文献1に示すものが知られている。この方法は、円柱状の回転工具の先端を金属部材に押込み、その摩擦熱で金属部材を軟化させ塑性流動を起こさせて接合する摩擦点接合(特許文献1では摩擦攪拌溶接と呼ばれている)の一種である。特許文献1に示されるものは、回転工具の周囲に回転方向に異なる磁性が交互に並ぶように複数の磁石を取付けたものである。このようにすると接合部の近傍で磁石による磁場が生じるとともに、回転工具の回転によって磁場が変化する。そのため金属部材に誘導電流が発生し、発熱する。この発熱により金属部材の軟化を促進し、塑性流動を容易化することができる。
【特許文献1】特開2005−324246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように接着剤による接合工程とその接着剤を硬化させる工程(例えば塗装乾燥工程)との間に他の工程(例えば電着塗装工程)を行うと、種々の問題を生じる。
【0007】
まず第1に、接着剤が未硬化であるために搬送中に位置ずれを起こすという問題である。これに対し、スポット溶接等で仮止めすることで対処することはできるが、生産性の観点から新たな工程を追加することは好ましいことではない。
【0008】
第2に、塗布部からはみ出した接着剤が作業者を介して工程内の治具や他のワークに付着するという問題である。この場合、治具やワークに付着した接着剤の拭き取りに多大な費用と時間を要してしまう。
【0009】
第3に、電着塗装工程において、洗浄、化成処理、電着の各液槽において、接着剤が遊離するという問題である。遊離した接着剤は各液を汚損したり、再度ワーク(自動車のボディ外板など)に付着したりする。
【0010】
上記第1〜第3の問題を解決するには、接合工程ないしはその直後(電着塗装工程等に移行する前)に接着剤を硬化ないしは少なくとも上記各問題が発生しないレベルまで半硬化させれば良いと考えられる。しかし従来の方法、つまり塗装乾燥炉に類似の熱処理炉で加熱硬化させる方法では、ワーク全体を熱処理するため多大な設備投資や広大なスペースの確保が必要となる。また輻射熱を利用するため伝熱に時間を要し、接着剤を塗布した界面の温度が上がり難い。
【0011】
本発明は、上記のような事情に鑑み、多大な設備を要することなく、熱硬化性接着剤による接合工程において、効率良く接着剤を硬化ないしは半硬化させることができる金属部材の接合方法およびその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、複数の重ね合わせた金属部材の間に熱硬化性接着剤を介在させて接合する方法であって、上記金属部材の接合部で磁石による磁場を発生させ、上記磁場を変化させることによって上記金属部材に誘導電流を発生させ、上記誘導電流による上記金属部材の発熱によって上記熱硬化性接着剤の加熱硬化を促進させることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の金属部材の接合方法において、上記金属部材の重ね合わせ方向と交わる方向に、複数の上記磁石を異なる極性が交互に並ぶように配置した磁石ユニットを準備し、上記磁石ユニットを上記磁石の並び方向に移動させることにより上記磁場の変化を行わせることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の金属部材の接合方法において、一対の上記磁石ユニットを、上記接合部を挟んで対向配置し、少なくとも一方の上記磁石ユニットを移動させることにより上記磁場の変化を行わせることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項2または3記載の金属部材の接合方法において、上記金属部材の重ね合わせ方向と略平行な回転軸を有する回転工具に上記磁石ユニットを取付け、上記回転工具を上記金属部材の上記接合部の近傍に位置させて回転させることにより上記磁石ユニットを移動させることを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項4記載の金属部材の接合方法において、上記回転工具の、上記金属部材に対面する先端部に加工部を備え、上記回転工具を回転させながら上記加工部を上記金属部材に押込んで摩擦熱を発生させ、この摩擦熱と上記誘導電流による発熱とによって上記金属部材を軟化させ塑性流動を生じさせて接合するとともに、上記熱硬化性接着剤の加熱硬化を促進させることを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項4または5記載の金属部材の接合方法において、上記金属部材の接合部を上記回転工具の回転軌跡よりも広い範囲に設け、上記回転工具を上記接合部の広がる範囲内で移動させ、上記熱硬化性接着剤の加熱硬化の促進をその移動軌跡に沿って連続的または断続的に行わせることを特徴とする。
【0018】
請求項7に係る発明は、複数の重ね合わせた金属部材の間に熱硬化性接着剤を介在させて接合する装置であって、上記金属部材の接合部に磁場を発生させる磁石と、上記磁場を変化させることによって上記金属部材に誘導電流を発生させる磁場変化手段とを備え、上記誘導電流による上記金属部材の発熱によって上記熱硬化性接着剤の加熱硬化を促進させることを特徴とする。
【0019】
請求項8に係る発明は、請求項7記載の金属部材の接合装置において、上記金属部材の重ね合わせ方向と交わる方向に、異なる極性が交互に並ぶように複数の上記磁石が配置された磁石ユニットを備え、上記磁場変化手段は、上記磁石ユニットを上記磁石の並び方向に移動させるものであることを特徴とする。
【0020】
請求項9に係る発明は、請求項8記載の金属部材の接合装置において、一対の上記磁石ユニットが上記接合部を挟んで対向配置され、上記磁場変化手段は、少なくとも一方の上記磁石ユニットを移動させるものであることを特徴とする。
【0021】
請求項10に係る発明は、請求項8または9記載の金属部材の接合装置において、上記磁場変化手段は、上記金属部材の重ね合わせ方向と略平行な回転軸を有するとともに上記磁石ユニットが取付けられた回転工具であり、上記回転工具を上記金属部材の上記接合部の近傍に位置させて回転させることにより上記磁石ユニットを移動させることを特徴とする。
【0022】
請求項11に係る発明は、請求項10記載の金属部材の接合装置において、上記回転工具は、上記金属部材に対面する先端部に加工部を備え、上記回転工具を回転させながら上記加工部を上記金属部材に押込んで摩擦熱を発生させ、この摩擦熱と上記誘導電流による発熱とによって上記金属部材を軟化させ塑性流動を生じさせて接合するとともに、上記熱硬化性接着剤の加熱硬化を促進させることを特徴とする。
【0023】
請求項12に係る発明は、請求項10または11記載の金属部材の接合装置において、上記回転工具を少なくともその回転軸に交わる方向に移動させる移動制御手段を備え、上記移動制御手段は、上記回転工具を、上記接合部の広がる範囲に沿って移動させ、上記熱硬化性接着剤の加熱硬化の促進をその移動軌跡に沿って連続的または断続的に行わせることを特徴とする。
【0024】
請求項13に係る発明は、請求項12記載の金属部材の接合装置において、上記移動制御手段は、先端に上記回転工具が装着されるとともに、該回転工具を回転駆動する駆動手段を備えたロボットであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
請求項1の発明によると、以下説明するように、多大な設備を要することなく、熱硬化性接着剤による接合工程において、効率良く接着剤を硬化ないしは半硬化させることができる。
【0026】
本発明の構成によると、接合部周辺のみに磁石を配置するとともにその磁場を変化させるだけで接着剤を硬化させることができるので、ワーク全体を収容する大型の熱処理炉等を必要としない。すなわち多大な設備投資や広大なスペースの確保を回避することができる。
【0027】
また、誘導電流によって直接金属部材を加熱するので、輻射熱を用いる従来の方法に比べてエネルギーロスが少なく、短時間で硬化させることができる。
【0028】
さらに、磁石を用いるので金属部材間に引力が作用し、相互の隙間を小さくすることができるという効果も期待することができる。
【0029】
磁石として、永久磁石を用いても電磁石を用いても良い。永久磁石としてはネオジウム磁石、アルニコ磁石、サマリウムコバルト磁石などが好ましい。磁場を変化させる方法としては、磁石(電磁石を含む)を移動(回転を含む)させるほか、電磁石の場合には電流を変化させることにより磁場を変化させても良い。
【0030】
なお、本発明は硬化の程度を限定する趣旨ではない。本発明の方法により接着剤を完全に硬化させれば上記各問題が解決するのはもちろんであるが、必ずしも完全に硬化させる必要はない。例えば上記各問題が生じない程度にまで硬化させれば充分である。或いは上記問題の一部を解決し得る程度にまで硬化させ、残る問題は他の手段によって解決するようにしても良い。以下当明細書において、必要な程度にまで硬化させることを半硬化というものとする。
【0031】
後の工程に電着塗装工程等が控えている場合には、硬化の程度を半硬化に留めておくのが望ましい。塗装乾燥工程を利用して加熱硬化工程の後半を行うことができて効率的だからである。
【0032】
請求項2の発明によると、異なる極性が交互に並ぶように配置した磁石ユニットを移動(回転を含む)させるだけで容易に磁場を変化させることができる。
【0033】
請求項3の発明によると、一対の磁石ユニットによって磁束が金属部材を貫通する状態を維持しつつ、少なくとも一方の磁石ユニットを移動させることにより磁束密度を変化させて金属部材に誘導電流を発生させることができる。従ってより確実かつ効率的に接合部の温度を上昇させることができる。
【0034】
請求項4の発明によると、回転工具に磁石ユニットを取付け、その回転工具を回転させるだけで容易に上記磁石ユニットの移動を行わせることができる。また、回転工具と金属部材との距離や回転工具の回転数を制御することにより、容易に加熱温度を調節することができる。
【0035】
請求項5の発明によると、誘導電流による発熱に加え、加工部を押込むことによる摩擦熱をも利用することができるので、その相乗効果によってより効率的に接着剤を硬化させることができる。また金属部材の接合を、接着剤にのみ依るのではなく、塑性流動による接合にも依ることができる。従って例えば位置ずれ防止(仮止め)として求められる接合力に対する接着剤の接合力の分担を削減することができる。すなわち接着剤に求められる半硬化の程度を低減することが期待できる。
【0036】
請求項6の発明によると、接合範囲(接着剤の塗布範囲)が広範なものであっても、それ全体をカバーする回転工具を用いる必要がなく、設備をよりコンパクトにすることができる。
【0037】
請求項7〜12の発明によると、上記請求項1〜6の各項に準じる効果を奏する接合装置を容易に得ることができる。
【0038】
請求項13の発明によると、回転工具を少なくともその回転軸に交わる方向に移動させる移動制御手段として汎用性の高いロボットを用いることにより、回転工具を容易に自在に移動させることができ、接合装置としての適応柔軟性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0040】
図1は本発明の第1実施形態に係る金属部材の接合装置1(以下接合装置1と略称する)の概略構成図である。この接合装置1は、主たる構成要素として、接合ガンユニット10と、接合ガンユニット10を手首に備えるロボット40とからなる。
【0041】
接合ガンユニット10は、対向配置される一対の接合ガン10aからなる。各接合ガン10aの先端にはそれぞれ回転工具70が装着され、それらが対向配置されている。回転工具70には複数の磁石からなる磁石ユニット71が取付けられている。磁石ユニット71については後に詳述するが、磁石ユニット71が対向配置されることにより両者の間に磁場が発生し、磁石ユニット71(回転工具70)の少なくとも一方が回転することによってその磁場が変化するように構成されている。
【0042】
ロボット40は、当実施形態では汎用される6軸垂直多関節型ロボットが用いられる。ロボット40は、ハーネス51を介して制御盤50と接続されている。また各接合ガン10aは、ハーネス52,54,55及び中継器53を介して制御盤50と接続されている。制御盤50内には制御ユニット50aが内蔵されており、ロボット40を制御して、接合ガン10aが予め設定された所定の位置や傾きとなるように動作させる。また制御ユニット50aは、接合ガン10aに搭載された、後述する昇降用モータ14および回転用モータ15(図2参照)を制御して、各接合ガン10aの先端に対向配置された一対の回転工具70に、予め設定された所定の動作を行わせる。
【0043】
図2は接合ガン10aの正面図であり、図3は接合ガン10aの側面図である(それぞれ主に片側を図示する)。これらの図に示すように、接合ガン10aは、ロボット40の手首から2方向に分岐するアーム12と、このアーム12に取付けられた取付ボックス11と、取付ボックス11の側面に取り付けられた本体ケース13と、ハーネス54に接続された昇降用モータ14と、ハーネス55に接続された回転用モータ15とを有している。本体ケース13の下端部には回転工具70が装着されている。
【0044】
接合装置1による金属部材の接合は、接着剤が塗布されて重ね合わされた金属部材(ワーク100)を、両回転工具70の間に非接触で挟み、回転工具70を回転させることによって磁石ユニット71による磁場を変化させてワーク100に誘導電流を発生させ、それによる発熱で接着剤の硬化を促進させるものである。
【0045】
図4は、本体ケース13の内部構造を示す断面図であり、図5は、図4のV−V線断面図である。接合ガンユニット10における作動時の上下関係は自在に変化するが、説明の都合上、以下の記述において、本体ケース13側を上、回転工具70側を下とする。
【0046】
本体ケース13の内部には、互いに平行に上下方向に延びるネジ軸(昇降軸)24及びスプライン軸(回転軸)25がそれぞれの軸心回りに回転自在に設けられている。これら両軸24,25の上端部は、上蓋部材21を貫通して上部カバー22内に至り、ここで両軸24,25に従動プーリ26,27がそれぞれ組み付けられている。上蓋部材21及び上部カバー22は、図5に示すように、本体ケース13の上部から該本体ケース13の側方に張り出しており、上蓋部材21の該張出し部の下面に昇降用モータ14及び回転用モータ15が固定されている。これら両モータ14,15の出力軸14a,15aの先端部(上端部)は、上蓋部材21を貫通して上部カバー22内に至り、ここで両出力軸14a,15aに駆動プーリ14b,15bがそれぞれ組み付けられている。そして、上記各駆動プーリ14b,15bと従動プーリ26,27との間には、駆動伝達用のベルト28,29がそれぞれ巻き掛けられており、昇降用モータ14の回転により、ネジ軸24が図5のA方向(down方向)又はB方向(up方向)に回転駆動され、回転用モータ15の回転により、スプライン軸25が図5のC方向に回転駆動されるようになっている。
【0047】
図4に戻って説明を続ける。ネジ軸24のネジ部24aには、昇降ブロック31が螺合されておりスプライン軸25のスプライン部25aには、回転筒体35がスプライン結合されている。この回転筒体35は、昇降ブロック31に結合部材32を介して一体結合された昇降筒体33の内部に回転自在に設けられている。スプライン軸25、昇降筒体33及び回転筒体35は、互いに同心状に配置されている。なお、以下、昇降ブロック31、結合部材32及び昇降筒体33の一体物を昇降体30という。
【0048】
本体ケース13の下面には、円筒状の下方突出部13aが形成されており、この下方突出部13aの下端部には下部カバー23が設けられている。上記昇降筒体33及び回転筒体35の下端部は、この下部カバー23を貫通して下方に突出している。そして、内側にある回転筒体35の方が、外側にある昇降筒体33よりも長く下方に突出して、その回転筒体35の下端部に取付部材36が固着されている。この取付部材36に対し回転工具70の回転軸73が着脱自在(交換自在)に取り付けられている。この取り付けられた回転工具70の回転軸線は、上記スプライン軸25の軸心の延長線上にある。なお、下部カバー23と昇降筒体33の下端部との間には、昇降筒体33の外表面を本体ケース13の外部の汚染等から保護する伸縮自在の蛇腹部材34が配設されている。
【0049】
なお、スプライン軸25と上蓋部材21との間には軸受25bが、昇降筒体33と回転筒体35との間には軸受35aが、昇降筒体33と取付部材36との間には軸受33aが、それぞれ設けられている。
【0050】
また、昇降用モータ14としては、回転角の制御及び検知が容易なサーボモータが好ましく、回転用モータ15としては、同じく回転角の制御及び検知が容易なサーボモータ、又は回転速度の制御が容易なインダクションモー夕が好ましい。
【0051】
図6は回転工具70の構造説明図である。回転工具70は、取付部材36に取付けられる回転軸73と、その先端に設けられた平板状の円板部74とを有する。さらに円板部74の先端には磁石ユニット71が取付けられている。磁石ユニット71の主要部は、回転工具70の回転方向に異なる磁極が交互に並ぶように配置された6個の永久磁石からなる。詳しくは3個のN配置磁石71aと3個のS配置磁石71bとが交互に配置されている。N配置磁石71aは、先端側がN極、基端側(円板部74側)がS極となるように配置された磁石である。またS配置磁石71bはそれとは逆に、先端側がS極、基端側(円板部74側)がN極となるように配置された磁石である。N配置磁石71a、S配置磁石71bとしては磁力の強いネオジウム磁石、アルニコ磁石、サマリウムコバルト磁石などが好ましい。
【0052】
また、対向する磁石ユニット71同士では、異なる磁性が対向するように配置される。従って、磁束80はワーク100を貫通するように上下に略平行に発生する。当実施形態では、一対の回転工具70が、その関係を保ったまま、同方向に同回転数で回転する(矢印A1,A2で示す)。そのために必要に応じてエンコーダ等による位置確認がなされ、同期がとられる。
【0053】
次に、接合装置1を用いた金属部材の接合方法について説明する。図7は、接着剤を用いた金属部材の接合工程を示す模式図である。この工程で接合されるワーク100は、断面が逆ハット型の金属部材101と平板状の金属部材103である。金属部材101,103は、例えばアルミニウム合金板や鋼板等が好適である。
【0054】
図7上段には、金属部材101のフランジ部に接着剤102が塗布された状態を示す。接着剤102はエポキシ樹脂を主成分とする一液加熱硬化型接着剤(熱硬化性接着剤)である。硬化条件としては、140〜160℃×20分のものや、80℃×60分(低温硬化タイプ)などが好適である。
【0055】
図7中段には、続いて金属部材101に金属部材103を重ね合わせた状態を示す。
【0056】
図7下段には、続いて接着剤102を加熱硬化させる工程を示す。ここでは図を簡潔にするために、接合装置1のうち回転工具70のみを示す。この図に示すように、まずロボット40によって回転工具70が、直線状に延びる接着剤102の一端付近にセットされる。このとき、一対の回転工具70でワーク100を非接触状態で挟むように調整される。
【0057】
そのための回転工具70の昇降動作について説明する。昇降用モータ14の回転によりネジ軸24が図5のA方向に回転駆動されたときには、昇降体30がネジ部24aとの螺合によって下降し、昇降体30における昇降筒体33に内装された回転筒体35及び該回転筒体35の下端部に取付部材36を介して取り付けられた回転工具70が一緒に下降する。逆に、昇降用モータ14の回転によりネジ軸24が図5のB方向に回転駆動されたときには、昇降体30がネジ部24aとの螺合によって上昇し、回転筒体35及び回転工具70が一緒に上昇する。
【0058】
このような昇降動作を一対の回転工具70で行う(片側の回転工具70だけで行っても良い)ことにより、磁石ユニット71とワーク100との間に所定の隙間を設けつつ接合部を挟んで一対の磁石ユニット71を対向配置することができる。
【0059】
このとき、一対の磁石ユニット71の間に磁場が形成され、その磁場の中にワーク100が存在することとなる。そのときの磁束80は図6に示すようにワーク100を貫通するように、その板面に略垂直に並ぶ。またこのとき、ワーク100を挟む磁石ユニット71の磁力により金属部材101と接着剤102との間に引力が作用し、相互の隙間が小さくなる。従って、接着剤102の接着効果を促進することができる。
【0060】
次に回転工具70が回転駆動される。回転工具70を回転駆動するには、回転用モータ15を駆動し、スプライン軸25を図5のC方向に回転駆動する。こうすると昇降体30の動きとは独立して、回転筒体35がスプライン部25aとのスプライン結合によってスプライン軸25と同じC方向に回転し、回転筒体35に取り付けられた回転工具70も、回転軸73回りにスプライン軸25と同じC方向に回転する。また、回転用モータ15は、回転工具70の回転数(回転速度)を、回転用モータ15へ供給する電流により変更することができるようになっている。
【0061】
一対の回転工具70は同方向に同回転速度で回転するように制御ユニット50aにより制御されている(矢印A1,A2)。また逐次図外のエンコーダ等によって磁石ユニット71の位置確認が行われ、常に異なる磁性の磁石が対向するように同期がとられる。このようにすると磁束80が回転工具70の回転に追従して円弧の軌跡を描きつつ平行移動する。これによってワーク100の各点において磁束密度が変化する。すなわち磁場が変化する。この磁場の変化により、回転工具70で挟まれた領域付近のワーク100に誘導電流が発生し、その誘導電流によってワーク100が発熱する。その発熱によって接着剤102の硬化が促進される。
【0062】
ワーク100を、上記硬化条件に相当する温度と時間で加熱すれば接着剤102は完全硬化する。例えば後にワーク100を加熱する工程等が控えていない場合にはそのようにして加熱硬化工程を完了させれば良い。しかし後に塗装乾燥工程のようにワーク100を加熱する工程が控えている場合には、その工程までの間に必要な硬度にまで半硬化させ、仮止め程度に留めておくのが望ましい。その工程(塗装乾燥工程等)を利用して加熱硬化工程の後半を行うことができて効率的だからである。
【0063】
一対の回転工具70は、ロボット40によって接着剤102の延びる方向に逐次移動させられる(矢印A3)。その移動速度は遅いほど硬化促進効果を高めることができ、速いほど当該接合工程に要する時間(タクト)を短縮することができる。またその移動速度は一定であっても良く、緩急をつけても良い。一定の速度で移動させた場合には均等な硬化促進効果が得られ、緩急をつけて移動させた場合には、比較的短いタクトでありながら部分的に硬化促進度合の高い箇所を得ることができる。こうして全ての箇所の加熱硬化促進が完了すると当該接合工程の完了となる。
【0064】
ところで、当実施形態では図6に示すように一対の回転工具70を同期させつつ同方向に回転させたが、必ずしもそのようにする必要はない。例えば以下に示す変形例のようにしても良い。
【0065】
図8は回転工具70の回転動作についての変形例を示す説明図である。当変形例では一対の回転工具70を互いに逆方向に回転させている(矢印A1,A4)。従って、各N配置磁石71aやS配置磁石71bから見て、対向する磁石が異なる極性のものである場合(図8左側)と同じ極性のものである場合(図8右側)とが交互に繰り返されることとなる。対向する磁石が異なる極性の場合、図6の場合と同様に磁束80がワーク100の板面に対して略直角に交差している。一方、対向する磁石が同じ極性の場合、磁束80は対向する磁石に隣接する磁石(それが異なる極性の磁石となる)との間に形成される。つまり磁束80はワーク100の板面に対して斜めに交差する。このように磁束80がワーク100の板面に対して直角に交差する状態と斜めに交差する状態とに交互に変化するので、磁束密度が変化する。すなわち磁場が変化してワーク100に誘導電流が発生し、これが発熱する。
【0066】
この変形例によれば回転の同期をとる必要がないので、エンコーダ等を省略することができるという利点がある。
【0067】
図9は回転工具70の回転動作についての別の変形例を示す説明図である。当変形例では一対の回転工具70のうち一方(図では上側)のみを回転させている(矢印A1)。この場合にも上記変形例と同様に、各N配置磁石71aやS配置磁石71bから見て、対向する磁石が異なる極性のものである場合(図9左側)と同じ極性のものである場合(図9右側)とが交互に現出することとなる。
【0068】
この変形例も上記変形例と同様、回転の同期をとる必要がないので、エンコーダ等を省略することができるという利点がある。但し回転工具70同士の相対速度(磁束密度の変化速度)は回転数等の条件が同じであれば図8に示す変形例よりも遅くなるので、加熱能力は相対的に低下する。しかしその一方で、固定側の回転工具70に対する回転用モータ15をはじめとする駆動機構を省略できたり、固定側の磁石ユニット71をワーク100に充分接近(接触させても良い)させて対向する磁石ユニット71の間隔をより小さくすることができたりするという利点がある。
【0069】
以上当実施形態およびその変形例について説明したように、接合装置1によれば、ワーク100の接着剤102が塗布された接合部周辺のみに回転工具70を配置するとともにそれを回転させて磁石ユニット71による磁場を変化させるだけで接着剤102を硬化ないしは半硬化させることができる。従って、ワーク100全体を収容する大型の熱処理炉等を必要としない。また、誘導電流によって直接ワーク100を加熱するので、輻射熱を用いる従来の方法に比べてエネルギーロスが少なく、短時間で硬化ないしは半硬化させることができる。すなわち当実施形態によれば、多大な設備を要することなく、熱硬化性接着剤による接合工程において、効率良く接着剤を硬化ないしは半硬化させることができる。
【0070】
また接合装置1は、金属部材101と金属部材103の重ね合わせ方向と交わる方向に、異なる極性が交互に並ぶように複数の磁石(3個のN配置磁石71aと3個のS配置磁石71b)が配置された磁石ユニット71を備え、それが上記重ね合わせ方向と略平行な回転軸を有する回転工具70(磁場変化手段)に取り付けられ、その回転工具70をワーク100の接合部の近傍に位置させて回転させるように構成されているので、簡単な構造で容易に磁場の変化を起こさせることができる。また回転工具70とワーク100との距離や回転工具70の回転数を制御することにより、容易に加熱温度を調節することができる。
【0071】
しかも一対の回転工具70(磁石ユニット71)がワーク100を挟んで対向配置され、その少なくとも一方を回転させるように構成されているので、一対の磁石ユニット71によって磁束80がワーク100を貫通する状態を維持しつつその磁束密度を変化させてワーク100に誘導電流を発生させることができる。従ってより確実かつ効率的に接合部の温度を上昇させることができる。
【0072】
また、回転工具70を少なくともその回転軸73に交わる方向に移動させるロボット40(移動制御手段)を備え、接着剤102の加熱硬化の促進をその移動軌跡に沿って連続的または断続的に行わせるので、接合範囲(当実施形態では接着剤102の塗布長さや2条の接着剤102の間隔)が広範なものであっても、それ全体をカバーする回転工具を用いる必要がなく、設備をよりコンパクトにすることができる。
【0073】
そして回転工具70を移動させる移動制御手段として汎用性の高いロボット40を用いることにより、回転工具70を容易に自在に移動させることができ、接合装置1としての適応柔軟性が高められている。
【0074】
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。図10は本発明の第2実施形態に係る金属部材の接合装置1aの概略構成図である。なお図10以下の図において、第1実施形態と同一または同様の機能を有する部材について同一の符号を付し、その重複説明を省略する。
【0075】
接合装置1aは、主たる構成要素として、接合ガン10aと、接合ガン10aを手首に備えるロボット40とからなる。
【0076】
接合ガン10aは、図1に示す接合ガンユニット10を構成する一方の接合ガン10aと同様の構成である。但しその先端には回転工具70に代えて回転工具70a(詳細構造は後述する)が装着されている。接合ガンユニット10の取付ボックス11からはL字状のアーム12が延出され、その先端には円柱状の受け具98が設けられている。受け具98は、回転工具70aと同一軸線上に対向するように設けられている。
【0077】
接合ガン10aを移動させるロボット40の構成は第1実施形態と同様であって、制御ユニット50aは1台の接合ガン10aに対する駆動制御と移動制御とを行う。
【0078】
図11は接合装置1aによる接合工程の説明図であるが、まずこの左上の図を参照して回転工具70aの構造を説明する。回転工具70aは第1実施形態の回転工具70と同様の回転軸73、円板部74および磁石ユニット71を備える。そしてさらに加工部91とピン部93とを備える。
【0079】
加工部91は、回転軸73と同軸かつ一体に設けられた略円柱状の部材である。加工部91の先端縁部はショルダ部92となっている。加工部91のワーク100に対向する先端面は平坦ないしは中央がやや窪んだ浅いすり鉢状の面となっている。その先端面の中央に、さらに先端側に突出する小径円柱状のピン部93が設けられている。
【0080】
次に図11を参照しつつ、当実施形態の接合装置1aによる接合工程について説明する。当実施形態のワーク100(金属部材101,103)の材質としては例えばアルミニウム合金板が好適である。まず金属部材101に接着剤102を塗布し、その上に金属部材103を重ね合わせる工程は、第1実施形態と同様である(図7の上段および中段に示す。)なお図11では、説明の都合上接着剤102の厚みを実際よりも誇張して示している。
【0081】
そして回転軸73を回転させつつ(矢印A1)、回転工具70aと受け具98とでワーク100の接合部を挟むようにして相互に接近させる(矢印A5,A6)。なお回転工具70aを降下させるのは昇降用モータ14の駆動によって行われ、受け具98を降下させる(ワーク100に近づける)のは、ロボット40で接合ガン10a全体を移動させることによって行われる。
【0082】
当実施形態では、磁石ユニット71がワーク100の片側のみに配置されている。従って、磁場は磁石ユニット71を構成する3個のN配置磁石71aと3個のS配置磁石71bとによって生成される。つまり主に隣接するN配置磁石71aとS配置磁石71bとの間にアーチ状の磁束が生成される。その磁場は回転工具70aの回転によって変化する。回転工具70aをワーク100に近づけるに伴い、その磁場の変化がワーク100に作用し、誘導電流を生じさせ、発熱させる。従って第1実施形態と同様に接着剤102の硬化を促進する作用を得ることができる。また、磁力によって金属部材101と金属部材103との隙間を低減する効果も得られる。
【0083】
続いて当実施形態では、さらに回転工具70aと受け具98とを接近させる。そして受け具98を金属部材101に当接させるとともに、加工部91を金属部材103に接触させ、さらに降下させて加圧する(図11右上)。このとき、まず細いピン部93がショルダ部92よりも先に金属部材103に当接することにより、小さな摩擦抵抗で回転工具70aの位置決めが良好になされ、回転振れが抑制される。
【0084】
加工部91を回転させつつワーク100に押圧することにより、誘導電流による発熱に加えて摩擦熱も発生するので、ワーク100が一層加熱される。従って接着剤102の硬化が一層促進される。またそれらの熱でワーク100が軟化する。
【0085】
続いて、さらに回転工具70aを降下させ、ピン部93が金属部材101に挿入されるまで加圧する(図11右下)。これにより、さらに摩擦熱が増大し、ワーク100の軟化が促進されて塑性流動を起こす(このときの温度は約400℃となる)。この塑性流動によっても金属部材101と金属部材103とが相互に接合される。また接着剤102が周囲に押出され、接合面積を拡大させつつ硬化が促進される。
【0086】
所定期間(0.5〜2.5s程度)の押圧が完了すると、図11左下に示すように回転工具70aと受け具98とがワーク100から離反される(矢印A7,A8)。
【0087】
このように当実施形態の接合装置1aによれば、誘導電流による発熱に加え、加工部91を押込むことによる摩擦熱をも利用することができるので、その相乗効果によってより効率的に接着剤102を硬化させることができる。また金属部材101と金属部材103との接合を、接着剤102にのみ依るのではなく、塑性流動による接合にも依ることができる。従って例えば位置ずれ防止(仮止め)として求められる接合力に対する接着剤102の接合力の分担を削減することができる。すなわち接着剤102に求められる半硬化の程度を低減することが期待できる。
【0088】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定するものではなく、特許請求の範囲内で適宜変更が可能である。
【0089】
例えば、上記各実施形態の磁石ユニット71は、合計6個の磁石(71a,71b)を用いたものであるが、その数を限定するものではなく、それより多くしても少なくしても良い。
【0090】
また磁場発生のために用いられる磁石は永久磁石に限定するものではなく、電磁石を用いても良い。電磁石を用いた場合、磁場を変化させる手段として、当実施形態のように電磁石自体を移動(回転を含む)させても良いし、電磁石に供給する電流を変化させることにより磁場を変化させても良い。
【0091】
また磁石の移動は必ずしも回転移動である必要はなく、適宜機構を用いて例えば直線的な往復運動をさせても良い。
【0092】
第2実施形態において、受け具98側にも磁石ユニット71を設け、第1実施形態と同様に磁束がワーク100を貫通するようにしても良い。そのとき、磁石ユニット71を受け具98と一体に固定しても良いし、回転工具70aと同方向または逆方向に回転させても良い。
【0093】
また第2実施形態において、金属部材101および金属部材103の材質を鋼板としても良い。但しその場合、塑性流動するときの温度が約800℃となるので、接着剤102の耐熱性に留意する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第1実施形態に係る金属部材の接合装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す接合ガンの正面図である。
【図3】図1に示す接合ガンの側面図である。
【図4】図1に示す本体ケースの内部構造を示す断面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】図1に示す回転工具の構造説明図である。
【図7】接着剤を用いた金属部材の接合工程を示す模式図である。
【図8】回転工具の回転動作についての変形例を示す説明図である。
【図9】回転工具の回転動作についての別の変形例を示す説明図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る金属部材の接合装置の概略構成図である。
【図11】図10に示す接合装置による接合工程の説明図である。
【符号の説明】
【0095】
1 (金属部材の)接合装置
10a 接合ガン(駆動手段)
40 ロボット(移動制御手段)
70,70a 回転工具(磁場変化手段)
71 磁石ユニット
71a (N配置)磁石
71b (S配置)磁石
91 加工部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の重ね合わせた金属部材の間に熱硬化性接着剤を介在させて接合する方法であって、
上記金属部材の接合部で磁石による磁場を発生させ、
上記磁場を変化させることによって上記金属部材に誘導電流を発生させ、
上記誘導電流による上記金属部材の発熱によって上記熱硬化性接着剤の加熱硬化を促進させることを特徴とする金属部材の接合方法。
【請求項2】
上記金属部材の重ね合わせ方向と交わる方向に、複数の上記磁石を異なる極性が交互に並ぶように配置した磁石ユニットを準備し、
上記磁石ユニットを上記磁石の並び方向に移動させることにより上記磁場の変化を行わせることを特徴とする請求項1記載の金属部材の接合方法。
【請求項3】
一対の上記磁石ユニットを、上記接合部を挟んで対向配置し、少なくとも一方の上記磁石ユニットを移動させることにより上記磁場の変化を行わせることを特徴とする請求項2記載の金属部材の接合方法。
【請求項4】
上記金属部材の重ね合わせ方向と略平行な回転軸を有する回転工具に上記磁石ユニットを取付け、
上記回転工具を上記金属部材の上記接合部の近傍に位置させて回転させることにより上記磁石ユニットを移動させることを特徴とする請求項2または3記載の金属部材の接合方法。
【請求項5】
上記回転工具の、上記金属部材に対面する先端部に加工部を備え、
上記回転工具を回転させながら上記加工部を上記金属部材に押込んで摩擦熱を発生させ、この摩擦熱と上記誘導電流による発熱とによって上記金属部材を軟化させ塑性流動を生じさせて接合するとともに、上記熱硬化性接着剤の加熱硬化を促進させることを特徴とする請求項4記載の金属部材の接合方法。
【請求項6】
上記金属部材の接合部を上記回転工具の回転軌跡よりも広い範囲に設け、
上記回転工具を上記接合部の広がる範囲内で移動させ、上記熱硬化性接着剤の加熱硬化の促進をその移動軌跡に沿って連続的または断続的に行わせることを特徴とする請求項4または5記載の金属部材の接合方法。
【請求項7】
複数の重ね合わせた金属部材の間に熱硬化性接着剤を介在させて接合する装置であって、
上記金属部材の接合部に磁場を発生させる磁石と、
上記磁場を変化させることによって上記金属部材に誘導電流を発生させる磁場変化手段とを備え、
上記誘導電流による上記金属部材の発熱によって上記熱硬化性接着剤の加熱硬化を促進させることを特徴とする金属部材の接合装置。
【請求項8】
上記金属部材の重ね合わせ方向と交わる方向に、異なる極性が交互に並ぶように複数の上記磁石が配置された磁石ユニットを備え、
上記磁場変化手段は、上記磁石ユニットを上記磁石の並び方向に移動させるものであることを特徴とする請求項7記載の金属部材の接合装置。
【請求項9】
一対の上記磁石ユニットが上記接合部を挟んで対向配置され、
上記磁場変化手段は、少なくとも一方の上記磁石ユニットを移動させるものであることを特徴とする請求項8記載の金属部材の接合装置。
【請求項10】
上記磁場変化手段は、上記金属部材の重ね合わせ方向と略平行な回転軸を有するとともに上記磁石ユニットが取付けられた回転工具であり、
上記回転工具を上記金属部材の上記接合部の近傍に位置させて回転させることにより上記磁石ユニットを移動させることを特徴とする請求項8または9記載の金属部材の接合装置。
【請求項11】
上記回転工具は、上記金属部材に対面する先端部に加工部を備え、
上記回転工具を回転させながら上記加工部を上記金属部材に押込んで摩擦熱を発生させ、この摩擦熱と上記誘導電流による発熱とによって上記金属部材を軟化させ塑性流動を生じさせて接合するとともに、上記熱硬化性接着剤の加熱硬化を促進させることを特徴とする請求項10記載の金属部材の接合装置。
【請求項12】
上記回転工具を少なくともその回転軸に交わる方向に移動させる移動制御手段を備え、
上記移動制御手段は、上記回転工具を、上記接合部の広がる範囲に沿って移動させ、上記熱硬化性接着剤の加熱硬化の促進をその移動軌跡に沿って連続的または断続的に行わせることを特徴とする請求項10または11記載の金属部材の接合装置。
【請求項13】
上記移動制御手段は、先端に上記回転工具が装着されるとともに、該回転工具を回転駆動する駆動手段を備えたロボットであることを特徴とする請求項12記載の金属部材の接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−115285(P2008−115285A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300151(P2006−300151)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】