説明

鉄筋の機械継手の製造装置、及び製造方法

【課題】鉄筋の機械継手を製造する技術、及び塑性加工を行って機械継手の強度を高める技術を提供する。
【解決手段】心金5が差し込まれたワークW1を押圧するパンチ32と、パンチ32がワークW1と共に突入する、大径部421と小径部422とからなる成形孔42aを備えたダイ42と、パンチ32と連動して成形孔に突入するノックアウト46と、を有するプレス機と、ワークW1の貫挿孔内に差し込まれると共に、ノックアウト46からの押圧力を受ける心金ピン54を有する心金5とにより、パンチ32によりワークW1をダイ42内に押し入れる工程と、ノックアウト46により、ワークW1の貫挿孔の開口端から食み出した心金5の心金ピン54を押圧して、心金5をワークW2の貫挿孔から押し出す工程と、ノックアウト46により、ダイ42内に押し入れられたワークW2を、ダイ42外へ押し出す工程とを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋の機械継手を製造する技術に関し、特に円筒状のワークを縮径する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
超高層ビルなど、鉄筋に大きな引張強度が求められる場合には、径の大きい高強度の鉄筋が用いられ、また、鉄筋の継手には機械継手が最も多く採用されている。鉄筋コンクリート造において、鉄筋は主に引張りの力に抗するために用いられるため、機械継手自体の引張り強度も、非常に高いものが求められる。
【0003】
この点、特許文献1では、本願出願人により、機械継手による鉄筋の連結構造として、円筒状の機械継手であって、一端側に鉄筋を挿入して冷間圧着加工により一体化し、他端部側に雌ネジが形成された挿通孔を有するものが提案されている。この機械継手は二つ一組で鉄筋を連結するもので、一対の機械継手の挿通孔の雌ネジ側を互いに向かい合わせて、夫々の雌ネジ部分に、外周面上に雄ネジが形成された接続ボルトをねじ込む。これにより、鉄筋が連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−037384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の機械継手は大きな引張強度を備えるが、このような機械継手を製造する技術は、これまで開示されていなかった。また、製造時に塑性加工を行って、機械継手の強度自体を高める技術についても、これまで開示されていなかった。
【0006】
そこで、本発明は、鉄筋の機械継手を製造する技術、及び塑性加工を行って機械継手の強度を高める技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る鉄筋の機械継手の製造装置は、内部に貫挿孔が形成された円筒状のワークを縮径することにより、内部に鉄筋を挿入させるための貫挿孔を有し、径方向内側に塑性加工された鉄筋の機械継手を製造する装置であって、上記ワークに塑性加工を施すプレス機と、上記ワークの貫挿孔に差し込まれる略棒状の心金と、を有し、上記プレス機は、上記心金が差し込まれたワークを押圧するパンチと、上記パンチが上記ワークと共に突入する、一定の長さを有した孔であって、内径が、上記ワークの外径と略同径で、上記パンチ側に形成された大径部と、内径が、上記ワークの外径よりも小径で、当該大径部を挟んで上記パンチと対向する側に形成された小径部とからなる成形孔を備えたダイと、上記成形孔を挟んで、上記パンチと対向する側に配置され、上記パンチと連動して、上記成形孔に突入するノックアウトと、有し、上記心金は、外径が、上記ワークの貫挿孔の径よりも小さく、軸心方向の長さが、上記製造される機械継手の貫挿孔の軸心方向の長さよりも長尺で、上記ワークの貫挿孔内に差し込まれると共に、上記ワークの貫挿孔から上記ノックアウト側へ延び出た端部が、上記ノックアウトからの押圧力を受ける心金ピン、を有することを特徴とする。
【0008】
また、上記心金は、上記ワークと上記パンチとの間に挟みこまれて上記ダイに突入するパンチからの押圧力を受けるヘッド、をさらに有し、上記心金ピンは、軸心方向に伸縮するバネを介在させて上記ヘッドに取り付けられているものとしてもよい。
【0009】
上記ヘッドには、上記ワークの貫挿孔の縁に掛止して、上記心金を、その軸心が上記貫挿孔の中心に一致する位置に位置決めする爪部が形成されているものとしてもよい。
【0010】
上記製造される鉄筋の機械継手はその内周面に、外周面に雄ネジが形成された、一対の機械継手を連結するボルトを螺合させるための雌ネジが形成されており、上記心金の心金ピンの径は、上記貫挿孔に形成される雌ネジの下径からなるものとしてもよい。
【0011】
また、上記心金の心金ピンはその表面に、耐磨耗性材料が被覆、または耐磨耗処理が施されているものとしてもよい。
【0012】
また、上記心金の心金ピンには、上記ノックアウト側に向かって径が小さくなるテーパーが形成されているものとしてもよい。
【0013】
また、本発明の別の観点に係る鉄筋の機械継手の製造方法は、内部に貫挿孔が形成された円筒状のワークを縮径することにより、内部に鉄筋を挿入させるための貫挿孔を有し、径方向内側に塑性加工された鉄筋の機械継手を製造する方法であって、上記心金が差し込まれたワークを押圧するパンチと、上記パンチが上記ワークと共に突入する、一定の長さを有した孔であって、内径が、上記ワークの外径と略同径で、上記パンチ側に形成された大径部と、内径が、上記ワークの外径よりも小径で、当該大径部を挟んで上記パンチと対向する側に形成された小径部とからなる成形孔を備えたダイと、上記成形孔を挟んで、上記パンチと対向する側に配置され、上記パンチと連動して、上記成形孔に突入するノックアウトと、を有するプレス機と、外径が、上記ワークの貫挿孔の径よりも小さく、軸心方向の長さが、上記製造される機械継手の貫挿孔の軸心方向の長さよりも長尺で、上記ワークの貫挿孔内に差し込まれると共に、上記ワークの貫挿孔から上記ノックアウト側へ延び出た端部が、上記ノックアウトからの押圧力を受ける心金ピン、を有する心金とにより、上記パンチにより、上記ワークを、上記ダイ内に押し入れる工程と、上記ノックアウトにより、上記ワークの貫挿孔の開口端から食み出した心金の心金ピンを押圧して、上記心金を、上記ワークの貫挿孔から押し出す工程と、上記ノックアウトにより、上記ダイ内に押し入れられたワークを、上記ダイ外へ押し出す工程と、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、製造時に塑性加工が施され、強度が高められた、鉄筋の機械継手を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る鉄筋の機械継手の製造装置、及び製造方法において、(a)加工前のワーク、(b)一部が縮径されたワーク、(c)完成品としての機械継手、の斜視図を示す。
【図2】本実施形態に係る鉄筋の機械継手の製造装置を構成するプレス機の構成を示す断面図である。
【図3】本実施形態に係る鉄筋の機械継手の製造装置を構成する心金を示す断面図である。
【図4】本実施形態に係る鉄筋の機械継手の製造装置、及び製造方法によって実行される一連の工程のうち、最初の待機状態を示す断面図である。
【図5】本実施形態に係る鉄筋の機械継手の製造装置、及び製造方法によって実行される一連の工程において、パンチによって、ワークがダイ内へ押し入れられた状態を示す断面図である。
【図6】本実施形態に係る鉄筋の機械継手の製造装置、及び製造方法によって実行される一連の工程のうち、パンチによって、ワークがダイ内へ押し入れられる様子を示す部分拡大断面図であって、(a)押し入れられる前の状態、(b)押し入れられた状態、を示す。
【図7】本実施形態に係る鉄筋の機械継手の製造装置、及び製造方法によって実行される一連の工程のうち、パンチによって、ワークがダイ外へ押し出される様子を示す部分拡大断面図であって、(a)心金がワークから押し出された状態、(b)ワークがダイ外へ押し出された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態に係る鉄筋の機械継手の製造装置、及び鉄筋の機械継手の製造方法について、図を参照して説明する。
まず、図1に、本実施形態に係る鉄筋の機械継手の製造装置、及び鉄筋の機械継手の製造方法による縮径加工を施すワークW1、縮径加工が施されたワークW2、及び、最終的に製造される機械継手W3を示す。
【0017】
図1(a)に示されるように、本実施形態に係る鉄筋の機械継手の製造装置による加工が施される前のワークW1は、円筒形状からなり、両端が開口した貫挿孔11を内部に備えている。なお、このワークW1は鉄等の金属材料からなる。
また、本実施形態に係る鉄筋の機械継手の製造装置、及び製造方法は、ワークW1の一部を縮径する縮径加工を施すもので、図1(b)に示されるように、縮径加工されたワークW2は、略中央から一端部側が、他端側に比して縮径されている(以下、当該縮径された部分を小径部12とし、縮径されない部分を大径部13とする)。
さらに、図1(c)に示されるように、小径部12の貫挿孔11の内周面に雌ネジ12aが形成されて、完成品としての機械継手W3が得られる。
【0018】
なお、この機械継手W3を用いて鉄筋を連結するときには、二つ一組の機械継手W3と、雌ネジ12aに螺合する雄ネジが外周面に形成された略円柱状のボルトを用意する。そして、各機械継手W3の大径部13の貫挿孔11内に鉄筋を挿入して冷間圧着加工により一体化すると共に、両機械継手W3の小径部12を向かい合わせにし、一の鉄筋の小径部12の貫挿孔11にボルトの一端を螺合させ、他の鉄筋の小径部12の貫挿孔11にボルトの他端を螺合させる。
これにより、二つ一組の機械継手3によって鉄筋が連結される。
【0019】
次に、本実施形態に係る鉄筋の機械継手の製造装置について説明する。
本実施形態に係る鉄筋の機械継手の製造装置は、プレス機2と心金5とからなり、まず、プレス機2を図1に示す。
プレス機2は、上下動する上側ベース3と、固定設置された下側ベース4とからなる。
【0020】
上側ベース3は、パンチプレート31、パンチ32、パンチホルダ33、パンチ締め付け金具34、プレーンガイド35、ノックアウト連結継手36、ノックアウト受け金具37、ノックアウト調整ネジ38を備える。
【0021】
一方、下側ベース4は、ダイプレート41、ダイ42、ダイホルダ43、ダイ締め付け金具44、ノックアウトガイドフランジ45を備える。
さらに、ノックアウトガイドフランジ45に形成されている挿通孔45aには、ノックアウト46が上下に摺動可能に挿し込まれている。
【0022】
パンチ32は、図5に示されるように、ワークW1に差し込まれた心金5を押圧することにより、ワークW1をダイ42内に押し入れる。
このパンチ32は、円柱状の押圧部32aと、押圧部32aの一端側に設けられたフランジ32bからなる。
【0023】
押圧部32aは、外径がダイ42の円筒部421の成形孔42aの径よりも僅かに小さく、上側ベース3の上下動に応じてダイ42内に突入する。この押圧部32aは、図5に示されるように、ワークW1をダイ42内に押し入れる際、ワークW1の貫挿孔11に差しこまれた心金5のヘッド51に当接して押圧力を伝え、ワークW1と共にダイ42内に突入する。
【0024】
フランジ32bは、パンチホルダ33とパンチ締め付け金具34によって形成される係合溝33aに係合しており、これによりパンチ32がパンチプレート31に固定されている。
【0025】
パンチホルダ33は、パンチプレート31に取り付けられている。
このパンチホルダ33は、下端部においてパンチ締め付け金具34と係合溝33aを形成しており、係合溝33aにパンチ32のフランジ32bが係合することにより、パンチ32を固定的に保持して、パンチプレート31とパンチ32とを連動させる。
【0026】
パンチ締め付け金具34は、パンチ32を締め付けて水平方向の動きを規制し、ダイ42の成形孔42a上にパンチ32を位置決めする。
また、このパンチ締め付け金具34は、上端部においてパンチホルダ33と係合溝33aを形成しており、係合溝33aにパンチ32のフランジ32bが係合することにより、パンチ32がパンチプレート31に固定される。
【0027】
プレーンガイド35は、パンチプレート31上に取り付けられたシャフト35aと、ダイプレート41に取り付けられたブッシュ35bとから構成されている。シャフト35aは例えば、図示しないモータを駆動源として上下動し、これによりプレーンガイド35は上側ベース3を上下動させる。
【0028】
ノックアウト連結継手36は、パンチプレート31とノックアウト受け金具37とを連結する。
ノックアウト受け金具37は、ノックアウト連結継手36を介してパンチプレート31と連動して上下動する。このノックアウト受け金具37には、両端が鉛直方向に開口し、内周面に雌ネジが形成されたネジ孔37aが形成されている。このネジ孔37aには、ノックアウト調整ネジ38が螺合する。
【0029】
ノックアウト調整ネジ38は、外周面上に雄ネジが形成されている略棒状の部材であり、ノックアウト受け金具37のネジ孔37aの内周面に形成されている雌ネジに螺合することにより、ノックアウト受け金具37に取り付けられている。
このノックアウト調整ネジ38とノックアウト46とは、軸心が同一直線上にあり、上側ベース3が一定距離だけ上昇した範囲では、ノックアウト調整ネジ38の上端部がノックアウト46の下端部に当接し、ノックアウト調整ネジ38の上下動に応じてノックアウト46を上下させることができる。
また、このノックアウト調整ネジ38は、回動させることで、ネジ孔37aの内周面に形成されている雌ネジに沿って上下方向に取付位置を調整することができる。取付位置を上下方向に調整することで、ノックアウト46の上下動の幅を調整することができる。
【0030】
ダイプレート41は、ダイ42を設置するための盤状の基台であり、中央部には、ノックアウト46を挿通させるための挿通孔41aが形成されている。また、ダイプレート41には、ダイプレート41の挿通孔41a、ダイホルダ43の挿通孔43a、及びノックアウトガイドフランジ45の挿通孔45aの中心が一致するようにして、上面側にダイホルダ43、下面側にノックアウトガイドフランジ45が取り付けられている。
【0031】
ダイ42は、ワークW1を成型するための金型であり、内部に、ワークW1を成型するための成形孔42aを備えた筒状部材である。
このダイ42は、パンチ32側の円筒部421と、ノックアウト46側の縮径部422とからなる。
円筒部421は、内部の成形孔42aが、ワークW1の外径よりも略同一の径を有している。なお、円筒部421の成形孔42aの径は、ワークW1の外径よりも僅かに小さく構成してもよく、この場合には、円筒部421の成形孔42a内にワークW1をパンチ32により押し込んだ際に、ワークW1の個体差による僅かな外径の誤差を調整することができる。
また、縮径部422は、内部の成形孔42aの径が、円筒部421の成形孔42aの径よりも小さく形成されている。さらに詳しくは、円筒部421との境界部分から、ワークW2の小径部12の外径よりも僅かに大きい径に徐々に縮径する部分と、当該縮径した径に一定距離だけ保たれた部分と、ノックアウト46が突入する開口部側へ向かって徐々に拡径した部分とからなる。
【0032】
ダイホルダ43は、ダイプレート41上にダイ42を保持するための部材であり、ダイプレート41とダイ42とを一体的に固定する。このダイホルダ43には、中央にノックアウト46を挿通させるための挿通孔43aが形成されている。
【0033】
ダイ締め付け金具44は、ダイ42の開口端部に取り付けられて、ダイ42を締め付けて安定的に固定する。このダイ締め付け金具44には、中央にパンチ32を挿通させるための挿通孔44aが形成されている。
【0034】
ノックアウトガイドフランジ45は、ダイプレート41の挿通孔41aの近傍に取り付けられており、その中央には、ノックアウト46の軸心部の外径よりも僅かに大きく、ノックアウト46の頭部の径よりも小さい径の挿通孔45aが形成されている。
ノックアウトガイドフランジ45の挿通孔45a、ダイプレート41の挿通孔41a、ダイホルダ43の挿通孔43a、ダイ42の成形孔42aは全て一直線上にあり、ノックアウト46は、上側ベース3の上昇に応じてノックアウトガイドフランジ45にガイドされ、ダイ42内に突入する。
【0035】
ノックアウト46は、軸心部46aと頭部46bとから構成される、断面略T字状の棒状部材である。平面円形の頭部46bは、その径が、ダイ42の縮径部422の貫挿孔11の径よりも僅かに小さく構成されている。
このノックアウト46は、ノックアウト調整ネジ38の上下動に応じて上下動する。上下動の際、ノックアウト46は、ノックアウトガイドフランジ45にガイドされて、ダイ42内に下方から突入し、ダイ42内のワークW2をダイ42外へ押し出す。
【0036】
次に、プレス機2と共に用いられる心金5について、図3を参照して説明する。
心金5は、プレス機2によりワークW1を加工する際、ワークW1の貫挿孔11に差し込んで利用される部材であり、ヘッド51と、キャップスクリュー52と、バネ53と、心金ピン54とからなる。
【0037】
ヘッド51は、心金ピン54の一端側に取り付けられる円柱状の部材である。
このヘッド51は、外径がワークW1の外径と略同径に構成されており、心金5をワークW1の貫挿孔11に差し込んだ際、ヘッド51の開口端部の縁が、ワークW1の縁に引っ掛かり、ヘッド51はワークW1に挿入不能となっている。
また、後述の通り、このヘッド51には一端が開口した空隙512が内部に形成されており、当該開口端部の縁には、径方向内側に向かって徐々に突出した爪部511が形成されている。この爪部511は、ワークW1の貫挿孔11に心金5を差し込んだ際、貫挿孔11の縁に掛止し、心金5の軸心とワークW1の貫挿孔11の中心とが一致するようにワークW1上に心金5を位置決めする。
【0038】
また、ヘッド51の内部には、一端が開口した略筒状の空隙512が形成されており、この空隙512によってキャップスクリュー52が保持される。
空隙512には、内壁から径方向内側に突出した突出部513が形成されており、これにより空隙512は、突出部513より奥側の空隙512aと、開口部側の空隙512bとから構成されている。
【0039】
空隙512aには、キャップスクリュー52の頭部52bが、軸心方向に摺動可能に嵌合する。キャップスクリュー52の頭部52bの径は、空隙512aの内径よりも僅かに小さく、且つ、突出部513が形成する内径よりも大きく構成されており、突出部513によって空隙512a外へ抜出不能に構成されている。
また、突出部513と、キャップスクリュー52の頭部52bとの間には、バネ53が挟み込まれており、キャップスクリュー52を空隙512aの閉端部方向(奥側)に付勢する。
【0040】
空隙512bには、開口部から心金ピン54が、軸心方向に摺動可能に嵌合している。
心金ピン54は、略棒状の部材であって、大径部54aと、小径部54bと、先端部54cとから構成されている。なお、大径部54aと小径部54bの境目では、大径部54aから小径部54bへ徐々に径が小さくなっている。
大径部54aの外径は、空隙512bの内径よりも僅かに小さく、大径部54aの一部は空隙512bに摺動可能に嵌合する。また、大径部54aの外径は、ワークW1の貫挿孔11の径よりも小さく構成されており、ワークW1の貫挿孔11に挿入可能に構成されている。
【0041】
さらに、大径部54aの内部には、一端側に開口した嵌合孔54dが形成されている。
この嵌合孔54dの内周面には雌ネジが切られており、キャップスクリュー52の軸心部52aの外周面に形成されている雄ネジに螺合される。
【0042】
小径部54bには、先端部54c側に向かって徐々に径が小さくなるよう、テーパーが形成されている。
この小径部54bの外径は、ワークW2の小径部12の貫挿孔11の内径よりも僅かに小さく構成されており、この小径部54bの外径に合わせて、ワークW1が縮径される。
【0043】
先端部54cは、ワークW1の貫挿孔11に心金5を差し込む際の先端部分を構成する。
この先端部54cには、小径部54bとの境目から先端に向かって径が小さくなるようにテーパーが形成されている。
このようにテーパーが形成されていることで、ワークW1の貫挿孔11に心金5を差し込む際、差し込み易くなっている。
【0044】
なお、心金ピン54は、その表面に、硬質クロムメッキ処理、窒化処理、炭化チタンコーティング、窒化チタンコーティング、窒化アルミニウムチタンコーティング、ダイヤモンドライクカーボンコーティング等、耐磨耗性材料が被覆、または耐磨耗処理が施されており、平滑性や硬度が保持されている。
【0045】
また、心金ピン54は、ワークW1の貫挿孔11に差し込まれた際、ヘッド51に形成されている爪部511が貫挿孔11の縁に掛止し、その軸心がワークW1の貫挿孔11の中心と正確に一致する。そのため、ワークW1を縮径して得られたワークW2の縮径部12の貫挿孔11は、周方向において厚みに偏りがなく、その内径及び外径において歪みのない、正確な円形状を構成する。
このように高い精度で縮径を行うことができるので、心金ピン54の小径部54bの径を、ワークW2の貫挿孔11に形成する雌ネジ12aの下径に応じたものとすることで、ワークW2の縮径部12の貫挿孔11の径を、雌ネジ12aの下径と同寸に形成することができる。この場合には、雌ネジ42aを形成する前工程としてドリル加工を施す必要がなくなることから、精度及び強度の高い、縮径された貫挿孔11を形成することができるし、ドリル加工による切粉が発生することもない。また、心金5を用いた縮径加工により、貫挿孔11の径を雌ネジ42aの下径と同寸の径に形成しつつ、従来であればドリル加工による切粉として廃棄された余剰な厚みを展延させ、ワーク1自体の伸長に用いることができる。これにより、従来よりも短いワークW1から所望の長さのワークW2を得ることができ、材料の無駄がなく、コスト削減にも効果がある。
【0046】
キャップスクリュー52は、平面円形の略棒状の部材であり、軸心部52aと、軸心部52aよりも大径の頭部52bとから構成される。
このキャップスクリュー52の頭部52bは、ヘッド51の空隙512aに摺動可能に嵌合している。また、軸心部52aの外周面には雄ネジが形成されており、心金ピン54の嵌合孔54dの内周面に形成されている雌ネジに螺合する。軸心部52aと嵌合孔54dが螺合することにより、キャップスクリュー52と心金ピン54が一体的に動作する。
【0047】
以上のような構成からなる心金5は、ヘッド51が固定された状態で、心金ピン54がヘッド51と対向する側へ引っ張られた際、一体的に螺合している心金ピン54とキャップスクリュー52とが、バネ53の付勢力に抗して空隙512外へ引っ張られる。
【0048】
続いて、本実施形態に係る機械継手の製造方法について説明する。
まず、加工の開始時点では、図4に示されるように、プレス機2は上側ベース3が上死点に位置し、パンチ32がダイ42から離間した状態で待機している。
また、ノックアウト46も上端位置に押し上げられた状態になっている。このとき、ノックアウト46の上端面は、ダイ締め付け金具44の上端面よりも低い位置にある。
また、ダイ締め付け金具44の挿通孔44aから、ダイ42の成形孔42a内にワークW1の一部を嵌め入れると、ワークW1の外径と略同じ、あるいは僅かに小さい径の、ダイ42の円筒部421の成形孔42aにワークW1が引っ掛かり、ワークW1を、横倒しない状態に保持することができる。
【0049】
上記のとおりに、ワークW1の貫挿孔11に心金5を挿入した上で、ワークW1をダイ42上に設置すると、上側ベース3を下降させる。上側ベース3を下降させると、ノックアウト46とパンチ32が下降し始める。
【0050】
さらに上側ベース3を下降させると、図5に示されるように、パンチ32がワークW1に差し込まれた心金5のヘッド51に当接し、ワークW1を、ダイ42の成形孔42a内へ押し込み始める。
これによりワークW1は、ダイ42の縮径部422の成形孔42aの形状に縮径される。
【0051】
ここで、ワークW1の縮径の過程を図6に示す。
図6(a)に示されるように、縮径される前の状態では、心金5のキャップスクリュー52は、バネ53の付勢力を受けて上端位置にある。
これに対して、パンチ32がワークW1をダイ42の縮径部422の成形孔42a内に押し入れ始めると、図6(b)に示されるように、ワークW1は、ダイ42の縮径部422の成形孔42aの内壁の形状と、心金ピン54の外周形状に応じて縮径する。このとき、ワークW1の縮径された部分は、心金ピン54の外周面と、ダイ42の縮径部422の成形孔42aの内壁との間の距離が、ワークW1の厚みよりも狭く構成されていることから、心金ピン54に圧着すると共に、端部方向(図示、下方向)に展延する。このように、ワークW1の縮径された部分が心金ピン54に圧着した状態で端部方向に展延すると、心金ピン54もワークW1の展延方向に引っ張られ、心金ピン54と一体的に嵌合したキャップスクリュー52と共に、バネ53の付勢力に抗して空隙512外へ引っ張り出される。
【0052】
以上のようにして上側ベース3を下降させることにより、ワークW1の所定の部分を縮径してワークW2を得ると、上側ベース3を上昇させてワークW2をダイ42から抜き出す。
図7(a)に示されるように、上側ベース3を上昇させると、パンチ32がワークW2から離間する。また、これと同時に、ノックアウト46が再び、ダイ42の成形孔42a内へ突入してくる。
【0053】
ここで、ダイ42の成形孔42a内に突入したノックアウト46はまず、心金5の心金ピン54に当接し、心金ピン54に上向きの押圧力を与える。
このとき、ワークW2の小径部12が、心金ピン54よりも、ダイ42の成形孔42aの内壁により強く圧着していること、心金ピン54に耐磨耗性材料がコーティングされ、あるいは耐磨耗処理が施されているために、心金ピン24とワークW2の貫挿孔11の内周面との摩擦が小さいこと、また、バネ53の付勢力が働くことから、図7(b)に示されるように、ワークW2がダイ42の縮径部422の成形孔42aに留まったままの状態で、ノックアウト46に押圧された心金ピン54が空隙512内へ引っ込む。心金ピン54が空隙512内に引っ込むと、心金ピン54の小径部54bに、先端部54c方向に向かって径が小さくなるテーパーが形成されているために、心金ピン54がワークW2の貫挿孔11の内壁から離れる。
【0054】
ここからさらに、上側ベース3を上昇させると、ノックアウト46の上端面がワークW2の下端面に当接し、ノックアウト46がワークW2を上方に押圧し始める。
これによりワークW2は、図7(c)に示されるように、ダイ42の成形孔42a外に押し出される。
【0055】
こうして縮径加工が施されたワークW2は、小径部12の貫挿孔11の内壁に雌ネジ12aを形成することで、完成品としての機械継手W3となる。
以上の本実施形態に係る鉄筋の機械継手の製造装置、及び製造方法によれば、プレス機2と心金5が別体として構成されているので、ワークW1が縮径されてワークW1と心金5が圧着した状態でも、パンチ32をワークW1から離間させることができる。そのため、パンチ32と心金5とを一体とした場合と異なり、ダイ42内に突入させたパンチ32をダイ42外に戻す際、ワークW1と心金5の圧着によってパンチ32等に無理な力がかかり、パンチ32等を破損するといったことを防ぐことができる。
また、縮径加工によってワークW2に圧着した心金5は、ノックアウト46によってワークW2から外すことができる。
【0056】
また、心金ピン54が、バネ53を介在させてヘッド51に取り付けられて、軸心方向に伸縮させることができるので、ワークW1が縮径加工によって、心金ピン54に圧着しながら展延する際、バネ53の伸長分だけ、心金ピン54に作用する力を吸収して、心金5の破損を防ぐことができる。
【0057】
なお、以上の本実施形態において、ワークW1の縮径する部分の長さは、ダイ42の縮径部422の長さや、パンチ32によってワークW1をダイ42の成形孔42aに押し入れる量を適宜に設定することで変えることができる。
また、心金ピン54は、大径部54a、小径部54b、先端部54cの、径の異なる3つの部分から構成されるものとしたが、これに限らず、ワークW2の縮径部12の貫挿孔11の径を決定する小径部54bのみで構成することもできる。
【符号の説明】
【0058】
W1 ワーク
W2 ワーク
W3 機械継手
11 貫挿孔
12 小径部
12a 雌ネジ
13 大径部
2 プレス機
3 上側ベース
31 パンチプレート
32 パンチ
33 パンチホルダ
34 パンチ締め付け金具
35 プレーンガイド
36 ノックアウト連結継手
37 ノックアウト受け金具
38 ノックアウト調整ネジ
4 下側ベース
41 ダイプレート
42 ダイ
43 ダイホルダ
44 ダイ締め付け金具
45 ノックアウトガイドフランジ
46 ノックアウト
5 心金
51 ヘッド
52 キャップスクリュー
53 バネ
54 心金ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に貫挿孔が形成された円筒状のワークを縮径することにより、内部に鉄筋を挿入させるための貫挿孔を有し、径方向内側に塑性加工された鉄筋の機械継手を製造する装置であって、
上記ワークに塑性加工を施すプレス機と、上記ワークの貫挿孔に差し込まれる略棒状の心金と、を有し、
上記プレス機は、
上記心金が差し込まれたワークを押圧するパンチと、
上記パンチが上記ワークと共に突入する、一定の長さを有した孔であって、内径が、上記ワークの外径と略同径で、上記パンチ側に形成された大径部と、内径が、上記ワークの外径よりも小径で、当該大径部を挟んで上記パンチと対向する側に形成された小径部とからなる成形孔を備えたダイと、
上記成形孔を挟んで、上記パンチと対向する側に配置され、上記パンチと連動して、上記成形孔に突入するノックアウトと、有し、
上記心金は、
外径が、上記ワークの貫挿孔の径よりも小さく、軸心方向の長さが、上記製造される機械継手の貫挿孔の軸心方向の長さよりも長尺で、上記ワークの貫挿孔内に差し込まれると共に、上記ワークの貫挿孔から上記ノックアウト側へ延び出た端部が、上記ノックアウトからの押圧力を受ける心金ピン、を有する、
ことを特徴とする鉄筋の機械継手の製造装置。
【請求項2】
上記心金は、上記ワークと上記パンチとの間に挟みこまれて上記ダイに突入するパンチからの押圧力を受けるヘッド、をさらに有し、
上記心金ピンは、軸心方向に伸縮するバネを介在させて上記ヘッドに取り付けられている、
請求項1記載の鉄筋の機械継手の製造装置。
【請求項3】
上記ヘッドには、上記ワークの貫挿孔の縁に掛止して、上記心金を、その軸心が上記貫挿孔の中心に一致する位置に位置決めする爪部が形成されている、
請求項2記載の鉄筋の機械継手の製造装置。
【請求項4】
上記製造される鉄筋の機械継手はその内周面に、外周面に雄ネジが形成された、一対の機械継手を連結するボルトを螺合させるための雌ネジが形成されており、
上記心金の心金ピンの径は、上記貫挿孔に形成される雌ネジの下径からなる、
請求項1乃至3いずれかの項に記載の鉄筋の機械継手の製造装置。
【請求項5】
上記心金の心金ピンはその表面に、耐磨耗性材料が被覆、または耐磨耗処理が施されている、
請求項1乃至4いずれかの項に記載の鉄筋の機械継手の製造装置。
【請求項6】
上記心金の心金ピンには、上記ノックアウト側に向かって径が小さくなるテーパーが形成されている、
請求項1乃至5いずれかの項に記載の機械継手の製造装置。
【請求項7】
内部に貫挿孔が形成された円筒状のワークを縮径することにより、内部に鉄筋を挿入させるための貫挿孔を有し、径方向内側に塑性加工された鉄筋の機械継手を製造する方法であって、
上記心金が差し込まれたワークを押圧するパンチと、
上記パンチが上記ワークと共に突入する、一定の長さを有した孔であって、内径が、上記ワークの外径と略同径で、上記パンチ側に形成された大径部と、内径が、上記ワークの外径よりも小径で、当該大径部を挟んで上記パンチと対向する側に形成された小径部とからなる成形孔を備えたダイと、
上記成形孔を挟んで、上記パンチと対向する側に配置され、上記パンチと連動して、上記成形孔に突入するノックアウトと、を有するプレス機と、
外径が、上記ワークの貫挿孔の径よりも小さく、軸心方向の長さが、上記製造される機械継手の貫挿孔の軸心方向の長さよりも長尺で、上記ワークの貫挿孔内に差し込まれると共に、上記ワークの貫挿孔から上記ノックアウト側へ延び出た端部が、上記ノックアウトからの押圧力を受ける心金ピン、を有する心金とにより、
上記パンチにより、上記ワークを、上記ダイ内に押し入れる工程と、
上記ノックアウトにより、上記ワークの貫挿孔の開口端から食み出した心金の心金ピンを押圧して、上記心金を、上記ワークの貫挿孔から押し出す工程と、
上記ノックアウトにより、上記ダイ内に押し入れられたワークを、上記ダイ外へ押し出す工程と、を実行する、
ことを特徴とする鉄筋の機械継手の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−110919(P2012−110919A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261279(P2010−261279)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(396016504)株式会社富士ボルト製作所 (21)
【Fターム(参考)】