説明

鉄道車両用台車の可変絞り取付構造

【課題】可変絞り装置の取り扱いを容易にした鉄道車両用台車の可変絞り取付構造を提供すること。
【解決手段】台車枠5には、空気バネ10を搭載する位置に、補助空気室55に接続された受部材53によって挿入口を備えたバネ支持部50が形成され、空気バネ10には、ダイアフラム11の内部と台車枠の補助空気室55とを連通するための下方に突き出した筒状部162が形成され、バネ支持部50の受部材53内に筒状部162を挿入することにより空気バネ10が台車枠5に取り付けられるものであり、可変絞り装置18が、筒状部162を挿入した受部材53内に位置し、着脱可能な状態で取り付けられるようにした鉄道車両用台車の可変絞り取付構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に設けられる空気ばねと、その空気ばねを搭載する台車枠に形成された補助空気室との間に存在する空気バネ用絞り装置について、その空気バネ用可変絞りを鉄道車両用台車に対して着脱可能に取り付けるための可変絞り取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は、車体の振動を抑えるため台車との間に空気バネが設けられ、その空気バネは、台車枠の内部空間からなる補助空気室と連通している。そのため、空気バネの容積は、補助空気室の分だけ見かけ上大きくなっている。そうした空気バネと補助空気室とを結ぶ流路には、可変の空気バネ用絞り装置(以下、単に「可変絞り装置」とする)が設けられ、粘性減衰特性を発揮させるよう構成されている。図7は、下記特許文献1に記載された、可変絞り装置の取付構造について示した断面図である。
【0003】
この可変絞り装置100は空気バネと一体に構成されている。空気バネの下部に下面板101が固定され、その下面板101の中央には下方に突き出して装置本体102が形成されている。装置本体102は、空気バネ内部に開口した上部の空気穴103が形成され、側部には補助空気室内に開口した小径の空気穴105と大径の空気穴106とが形成されている。空気穴105,106はスプール107の挿入された連通穴を介して繋がり、スプール107は、下端側にプランジャ108が固定され、上方からバネ109によって付勢されている。また、装置本体102の下部には、プランジャ108の周りにソレノイド110が設けられている。
【0004】
一方、台車枠側には、その上面121に挿入孔122が形成されている。可変絞り装置100が孔122に入れられ、空気バネが、下面板101と上面板121との間にライナー125を挟み込んで搭載される。可変絞り装置100の挿入部分には、隙間を無くし補助空気室130内が気密になるように、挿入孔122の内周面がOリング123によってシールされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−229859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の可変絞り取付構造は、空気バネと一体に構成されている可変絞り装置100にメンテナンスや交換の必要が生じた場合、空気バネの分解を行わなければならなかった。ところが、空気バネの分解及び組立は専門業者によって行われる場合が多く、更に空気バネの品質保全のため組立後はエアをかけて圧力試験を行う必要があった。従って、従来の可変絞り取付構造では、可変絞り装置の取り扱いが不便であった。また、可変絞り装置が空気バネと一体に構成された場合だけではなく、交換可能な構造の可変絞り装置であっても、その可変絞り装置が空気バネ側に組み付けられる取付構造は、空気バネの分解および組立が必要であり、同じように取り扱いが不便であった。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決すべく、可変絞り装置の取り扱いを容易にした鉄道車両用台車の可変絞り取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る鉄道車両用台車の可変絞り取付構造は、空気バネと鉄道車両用台車の台車枠に形成された補助空気室との間に可変絞り装置を取り付けるためのものであり、前記台車枠には、前記空気バネを搭載する位置に、内部の補助空気室に接続された筒形状の受部材によって当該台車枠上面に挿入口を備えたバネ支持部が形成され、前記空気バネには、本体を構成するダイアフラムの内部と前記台車枠の補助空気室とを連通するための下方に突き出した筒状部が形成され、前記バネ支持部の受部材内に前記筒状部を挿入することにより前記空気バネが前記台車枠に取り付けられるものであり、前記可変絞り装置が、前記筒状部を挿入した前記受部材内に位置し、着脱可能な状態で取り付けられたものであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る鉄道車両用台車の可変絞り取付構造は、前記可変絞り装置が、円柱形状の本体にフランジ部が張り出した形状であり、前記受部材の内部に形成された取付座に対し、前記空気バネの筒状部内に挿入されたコイルバネにより前記フランジ部が押し付けられるようにしたものであることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両用台車の可変絞り取付構造は、前記可変絞り装置が、円柱形状の本体にフランジ部が張り出した形状であり、前記受部材の内部に形成された雌ネジに対応して、前記フランジ部に雄ネジが形成されたものであることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る鉄道車両用台車の可変絞り取付構造は、前記可変絞り装置が、円柱形状の本体にフランジ部が張り出した形状であり、前記空気バネの筒状部に形成された雌ネジに対応して、前記フランジ部に雄ネジが形成されたものであることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両用台車の可変絞り取付構造は、前記可変絞り装置が、前記雄ネジを前記雌ネジに螺合させる際に力を伝達する回転伝達部が形成されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、可変絞り装置が空気バネとは分離した構成であり、バネ支持部の受部材内に着脱可能であるため、交換やメンテナンスに際して空気バネを分解する必要がなく、取り扱いが容易である。また、可変絞り装置の取り付けにおいてコイルバネを使用したり、ネジによって可変絞り装置を取り付けるようにしたため、取り付け位置の状況が変化しても安定した取り付け状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】鉄道車両用台車の一部を示した概略の平面図である。
【図2】空気バネの取付構造を示した断面図であり、図1のA−A断面を示した図である。
【図3】空気バネの取付構造を示した組み立て図である。
【図4】第2実施形態の可変絞り取付構造について示したバネ支持部の断面図である。
【図5】第3実施形態の可変絞り取付構造について示した空気バネの一部断面図である。
【図6】第4実施形態の可変絞り取付構造について示した空気バネの一部断面図である。
【図7】従来の可変絞り取付構造について示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る鉄道車両用台車の可変絞り取付構造について、その実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、鉄道車両用台車の一部を示した概略の平面図である。鉄道車両用台車(以下、単に「台車」とする)1は、レール方向に配置された側梁2を左右に有し、その側梁2が枕木方向に配置された2本の横梁3に貫かれている。貫通部分では側梁2と横梁3とが溶接され、これにより台車枠5が構成される。台車枠5には、前後に輪軸7が回転可能に支持され、不図示のユニットブレーキやモータなどが取り付けられる。また、台車枠5には、台車1に搭載される車体を支持する空気バネ10が取り付けられる。
【0014】
台車枠5は、側梁2から突き出した横梁3にバネ支持部50が形成され、空気バネ10は、そのバネ支持部50上に取り付けられている。図2は、第1実施形態の可変絞り取付構造を示した断面図であり、図1のA−A断面を示した図である。空気バネ10は、ダイアフラム11によって空気バネ本体が構成され、その上下開口部分に円形の上面板12と下面板13とが接続されている。上面板12の中心部分には、上方に突き出して貫通孔の形成された空気供給部128が形成され、この空気供給部128が、空気バネ10上の車体に設置された不図示のコンプレッサに接続される。
【0015】
下面板13には、その下側に円筒形状の積層ゴム14が連結されている。積層ゴム14は、ドーナッツ形状の金属板141とゴム部材142とが交互に重ねて接合され、上面にはドーナッツ形状の接合板15が一体になっている。その下面板13と接合板15がボルトで締結され、ダイアフラム11と積層ゴム14とが一つになった空気バネ10を構成している。一方、積層ゴム14の下面には、ダイアフラム11の内部と台車枠5側に形成された補助空気室55とを連通する連通パイプ162を備えた下受部材16が固定されている。
【0016】
ここで、図3は、可変絞り取付構造を示した組み立て図である。ただし、空気バネに関しては、ダイアフラム11を除いた積層ゴム14の部分を示している。下受部材16は、下プレート161が積層ゴム14の下面に固定され、中心には上下方向に連通パイプ162が突き出している。連通パイプ162は、その上端部がダイアフラム11の下面板13の中心に形成された孔部に挿入され、下方に突設された部分が台車枠5側に挿入される。
【0017】
台車枠5は、横梁3が貫いた側梁2の外側に、図1に波線で示すバネ支持部50が形成されている。図2及び図3には、そうした台車枠5のバネ支持部50が記載されている。バネ支持部50は、内部が気密な箱状になっている。バネ支持部50の上面板51には挿入口となる穴があけられ、筒状の受部材53が固定されている。受部材53は、バネ支持部50の内部空間に形成された補助空気室55に接続され、連通パイプ162が嵌り込むようにしたものである。
【0018】
受部材53には、空気バネの連通パイプ162が挿入され、可変絞り装置18がその内部に収められる。可変絞り装置18について具体的な説明は省略するが、その形状は、円柱形状の本体181にフランジ部182が張り出している。受部材53は、下側の孔径を小さくした段付の孔が形成され、内部にフランジ部182を載せる取付座531を有している。可変絞り装置18は、受部材53内に挿入された連通パイプ162がフランジ部182を取付座531へ押さえ込むことにより、受部材53内に位置決めされる。
【0019】
空気バネ10は、連通パイプ162が受部材53に対して嵌り込むことで台車枠5に連結されているが、両者の間に上下方向の拘束はない。そして、走行によって車輪が磨り減るなどして車輪径が小さくなると、台車枠5の高さが低くなるため、下プレート161と上面板51との間にライナー52が挿入され高さ調整が行われる。ライナー52の枚数増加によって下プレート161と上面板51との距離が広くなると、可変絞り装置18は、連通パイプ162による押さえ付けがなくなってしまう。
【0020】
そこで、本実施形態では、可変絞り装置18が適切に取り付けられるように、コイルバネ21が設けられている。具体的には、連通パイプ162内にはコイルバネ21を受けるカラー22が挿入され、図2に示すように、カラー22とフランジ部182の間にコイルバネ21が装填されている。これにより、可変絞り装置18は、コイルバネ21の付勢力によって常にフランジ部182が取付座531へ押し当てられ、受部材53内で不安定な状態になることなく位置決めされる。
【0021】
本実施形態の可変絞り取付構造によれば、可変絞り装置18が空気バネ10とは分離した構成であり、バネ支持部50の受部材53内に着脱可能であるため、交換やメンテナンスに際して空気バネ10を分解する必要がなく、取り扱いが容易である。また、コイルバネ21によって可変絞り装置18を位置決めしているため、ライナー52の枚数が増加して下プレート161と上面板51との距離が広がっても、常にフランジ部182を取付座531へ押し当てた位置決め状態が維持される。
【0022】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態の可変絞り取付構造について示したバネ支持部50の断面図である。なお、空気バネは前記第1実施形態と共通するものであるため省略し、図面上、第1実施形態と共通する構成については同じ符号を付して説明する。
本実施形態の可変絞り取付構造では、可変絞り装置18をバネ支持部50の受部材53に対し、ネジによって着脱可能にしたものである。そのため、可変絞り装置18には、外周面に雄ネジ201が切られたフランジ部183が形成されている。一方、受部材53には取付座531の内径側に雌ネジ202が形成されている。
【0023】
そこで、この可変絞り取付構造は、受部材53への螺設によって可変絞り装置18がバネ支持部50内に装着される。そのため、ライナー52の増加によって下プレート161(図2参照)と上面板51との距離が広がった場合にでも、可変絞り装置18は、受部材53内において常に位置決めされた状態にある。また、可変絞り装置18は、ネジによる着脱可能な取り付けであるため、交換やメンテナンスに際して取り扱いが容易である。
【0024】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態の可変絞り取付構造について示した空気バネの一部断面図である。なお、バネ支持部50は前記第1実施形態と共通するものであるため省略し、図面上、第1実施形態と共通する構成については同じ符号を付して説明する。
本実施形態の可変絞り取付構造では、可変絞り装置18を空気バネ10の連通パイプ162に対し、ネジによって着脱可能にしたものである。そのため、可変絞り装置18には、外周面に雄ネジ203が切られたフランジ部184が形成されている。一方、連通パイプ162には先端部内径側に雌ネジ204が形成されている。
【0025】
そこで、この可変絞り取付構造は、連通パイプ162への螺設によって可変絞り装置18が空気バネ10に装着される。そのため、ライナー52の増加によって下プレート161(図2参照)と上面板51との距離が広がった場合にでも、可変絞り装置18は、バネ支持部50の受部材53内において常に位置決めされた状態にある。また、可変絞り装置18は、ネジによる着脱可能な取り付けであるため、交換やメンテナンスに際して取り扱いが容易である。
【0026】
(第4実施形態)
図6は、第4実施形態の可変絞り取付構造について示した空気バネの一部断面図である。なお、バネ支持部50は前記第1実施形態と共通するものであるため省略し、図面上、第1実施形態と共通する構成については同じ符号を付して説明する。
本実施形態の可変絞り取付構造は、前記第3実施形態の変形例であり、可変絞り装置18を空気バネ10の連通パイプ162に対し、ネジによって着脱可能にしたものである。そのため、可変絞り装置18には、外周面に雄ネジ205が切られたフランジ部185が形成され、連通パイプ162には先端部内径側に雌ネジ206が形成されている。そして更に可変絞り装置18には、取り付け時の回転を伝達するナット部186が形成されている。
【0027】
そこで、この可変絞り取付構造は、ナット部186を介して可変絞り装置18に回転が与えられ、それによって可変絞り装置18が空気バネ10の連通パイプ162に装着される。そのため、ライナー52の増加によって下プレート161(図2参照)と上面板51との距離が広がった場合にでも、可変絞り装置18は、バネ支持部50の受部材53内において常に位置決めされた状態にある。また、可変絞り装置18は、ネジによる着脱可能な取り付けであるため、交換やメンテナンスに際して取り扱いが容易である。
【0028】
以上、本発明に係る鉄道車両用台車の可変絞り取付構造について実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、可変絞り装置18を装着し易いように設けた第4実施形態のナット部186を、第2実施形態のように受部材53側に装着する可変絞り装置18に形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 台車
5 台車枠
10 空気バネ
11 ダイアフラム
14 積層ゴム
18 可変絞り装置
21 コイルバネ
50 バネ支持部
53 受部材
55 補助空気室
162 連通パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気バネと鉄道車両用台車の台車枠に形成された補助空気室との間に可変絞り装置を取り付けるための鉄道車両用台車の可変絞り取付構造において、
前記台車枠には、前記空気バネを搭載する位置に、内部の補助空気室に接続された筒形状の受部材によって当該台車枠上面に挿入口を備えたバネ支持部が形成され、
前記空気バネには、本体を構成するダイアフラムの内部と前記台車枠の補助空気室とを連通するための下方に突き出した筒状部が形成され、
前記バネ支持部の受部材内に前記筒状部を挿入することにより前記空気バネが前記台車枠に取り付けられるものであり、前記可変絞り装置が、前記筒状部を挿入した前記受部材内に位置し、着脱可能な状態で取り付けられたものであることを特徴とする鉄道車両用台車の可変絞り取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載する鉄道車両用台車の可変絞り取付構造において、
前記可変絞り装置は、円柱形状の本体にフランジ部が張り出した形状であり、前記受部材の内部に形成された取付座に対し、前記空気バネの筒状部内に挿入されたコイルバネにより前記フランジ部が押し付けられるようにしたものであることを特徴とする鉄道車両用台車の可変絞り取付構造。
【請求項3】
請求項1に記載する鉄道車両用台車の可変絞り取付構造において、
前記可変絞り装置は、円柱形状の本体にフランジ部が張り出した形状であり、前記受部材の内部に形成された雌ネジに対応して、前記フランジ部に雄ネジが形成されたものであることを特徴とする鉄道車両用台車の可変絞り取付構造。
【請求項4】
請求項1に記載する鉄道車両用台車の可変絞り取付構造において、
前記可変絞り装置は、円柱形状の本体にフランジ部が張り出した形状であり、前記空気バネの筒状部に形成された雌ネジに対応して、前記フランジ部に雄ネジが形成されたものであることを特徴とする鉄道車両用台車の可変絞り取付構造。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載する鉄道車両用台車の可変絞り取付構造において、
前記可変絞り装置は、前記雄ネジを前記雌ネジに螺合させる際に力を伝達する回転伝達部が形成されたものであることを特徴とする鉄道車両用台車の可変絞り取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−218603(P2012−218603A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87192(P2011−87192)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】