説明

鉄骨構造物柱梁接合部の梁と内ダイアフラム直結工法

【課題】従来、建築鉄骨柱梁接合部は角形鋼管柱を建物階毎に切断して、サイコロ製作の小組立、サイコロにH形鋼梁取付の中組立、更に角形鋼管柱取付の大組立の工程を得て製作しているが、複雑で工数が掛かり、その上ダイアフラムが柱から張り出して、ダイアフラム外周部が傘折れ現象・熱歪み脆化・壁じまいの悪さ等により目違い・脆化・内部空間の縮小等を起こして、問題になっている。
【解決手段】本発明では、角形鋼管柱を各階ごとに切断することなく、内ダイアフラムと角形鋼管柱を溝溶接し、更に、H形鋼梁を、溝溶接部を含めて多層盛りの一つの溶接部で溶接接合することによりこれらの問題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築鉄骨構造物の柱梁接合部において、梁と内ダイアフラムを溝溶接で直結する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術では、建築鉄骨構造物の柱梁接合部は、接合部は図1に示すように、薄鋼板によるダイアフラム1と短い角形鋼管2との間で溶接6を施すことによりサイコロを形成させ、このサイコロとH形鋼梁フランジ4を溶接接合7し、更に、該サイコロと角形鋼管柱5とを溶接接合して構成する事が多い。この従来の技術では、図2に示すように、サイコロの角形鋼管2とダイアフラム1との溶接6及びサイコロのダイアフラム1とH形鋼フランジ4の溶接7は裏当金10を用いて片側溶接で実施されている。このダイアフラム1と梁フランジ4との従来溶接方法では、フランジ4の接合予定端部の開先加工をしてから、裏当金10の製作及び裏当金取付の仮付溶接8を行い、本溶接7を実施している。また、ダイアフラム1と角形鋼管2又は5との溶接も角形鋼管2又は5の接合予定端部の開先加工をしてから、裏当金10の製作及び裏当金取付の仮付溶接8を行いダイアフラム1と角形鋼管2又は5との本溶接6を実施している。
【0003】
更に、特願2000−202582(特開2001−259830)において、図3の一例に示すように、溶接継手部材13端部の裏面に非消耗式銅当金12をあてがい肉盛溶接14を行った後、開先加工を13Cの位置で肉盛部14を含めて開先加工して、図5のように部材13と肉盛部14を含めた開先15を得て、図6に示すように、消耗式の裏当金や裏当材を用いず、部材16と13を片側から溶接施工する片側溶接方法で継手溶接17をし、溶接継手部材端部の部材の板厚18を超えるのど厚19を獲得する技術の方法がある。
【0004】
また、特願2002−061326(特開2003−260591)において、図4の一例に示すように、溶接継手部材13端部の裏面に板厚3mm程度の薄鋼板28をあてがい、肉盛溶接14を行った後、開先加工を13Cの位置で部材13の端部のみを開先加工を行い、図5のように部材13と肉盛部14を含めた開先15を得て、図6に示すように、消耗式の裏当金や裏当材を用いず、部材16と13を片側から溶接施工する片側溶接方法で継手溶接17をし、溶接継手部材端部の部材の板厚18を超えるのど厚19を獲得する技術の方法がある。
【0005】
また。図7に示すように、角形鋼管柱5の内面側にH形鋼梁フランジと同じ高さの位置に4内ダイアフラムを取り付ける方法が用いられることがある。
【0006】
また、特願平06−331303(特開平08−158476)にあるように、角形鋼管柱にボルト貫通孔をあけてH鋼構造仕口部内部に内ダイアフラムを取付けこの内ダイアフラムにめねじを加工し,このめねじに、梁端部に取り付けたエンドプレートのボルト孔を通して高力ボルトを入れてエンドプレート側でナットを締めて梁を固定接合することを特徴とする内ダイアフラムと梁の接合を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−259830号公報
【特許文献2】特開2003−260591号公報
【特許文献3】特開平08−158476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の建築鉄骨柱梁接合部では、殆どが図1で示すサイコロで製作されており、図1及び図2に示すように、ダイアフラム1・角形鋼管2・裏当金10・エンドタブ等部材が多く、溶接6は角形鋼管2の周囲に一周しており溶接量が多い。そのため、部品製作コストが掛かると共に、サイコロ製作後角形鋼管柱から張り出したダイアフラムが折れ曲がり、いわゆる傘折れ現象が起きて、ダイアフラム1と梁フランジ4との間で目違いが起こりやすいと言う問題がある。このようにダイアフラムが柱から張り出していると外壁を該ダイアフラムの外に作る必要があり建設上取り合いが悪くなると共に居住空間が狭くなる。また、ダイアフラムの使用材料が増加するなどの問題がある。また、裏当金10を角形鋼管2の端部内周に取付け仮付溶接8を行うのは手間とコストが掛かる。また、角形鋼管2とダイアフラム1の溶接6を全周に亘って行うため、溶接量が多いので溶接残留応力が大きくなるだけでなく、裏当金10を用いると部材4,5との間で切り欠きが出来て応力集中が発生し、強度を弱める結果となる。
【0009】
また、図2に示すように、従来、スカラップ11を用いているが、ダイアフラム1が存在しているために、該スカラップ加工が手間の掛かるものとなっている。スカラップ11を省略するにしてもダイアフラム11の板厚が梁フランジ4の板厚よりも大きいため、梁フランジ4の開先加工が難しい面がある。
【0010】
更に、一般に溶接熱影響部は脆化し易いという事があり、従来、2つの溶接部が近接する場合、両溶接部による熱影響部が重なって脆化が更に促進されないように、両溶接部は該熱影響部が重ならないように遠ざけるようにするのが通例である。特に、両溶接部による溶接熱影響が重なった部分が外面に露出すると問題である。図2に示すように柱5とダイアフラム1との溶接部6が、梁4とダイアフラム1との溶接部7に近接し両溶接部に挟まれた共通の溶接熱影響部が外面に生じると該熱影響部は単一の熱影響部よりも脆化しやすいと言う現象がある。このような現象のために、柱梁接合部の脆性破壊強度・疲労強度及び塑性変形性能が低下するという問題が起こる。
【0011】
従来、建築鉄骨の組立は、工場においてサイコロと短尺梁を取り付けてパネルゾーンを製作し、該パネルゾーンに柱を溶接で繋ぎ、通常は建物の3階分の長さに製作し、建設現場でパネルゾーン付きの柱を直立させてから短尺梁間を長尺梁でボルト接合により連結して行う。この従来工法は、梁付きの柱は梁が1メートル程度の短尺とは言え柱に直交して2〜4方向に張り出すことがあるため工場から現場へ運送する効率が悪く、建設現場での梁同士の多数のボルトを使った接合に工数と費用が溶接よりも掛かるという問題がある。
【0012】
一方、図7に示す内ダイアフラム方式の柱梁接合部は、角形鋼管柱の端部から離れた位置にある内ダイアフラム1を内部が良く見えない状態で角形鋼管内面に溶接接合させる必要があり、その場合内面の溶接施工が難しくなると共に、角形鋼管柱5の外側のH形鋼梁フランジと高さ位置を合わせることが難しく梁フランジから内ダイアフラムへ応力が伝えにくくなり柱梁接合部の強度が低下しやすいという問題が存在する。当然のことながら、この内ダイアフラム方式では、該内ダイアフラムを角形鋼管内面に溶接するため、角形鋼管を内ダイアフラムの近傍で切断する必要がある。更に、その切断によるその後の突合せ溶接が必要になり、それらの工数が大きく掛かることになる。
【0013】
また、従来はダイアフラムと角形鋼管の短管からサイコロを製作する小組立工程と、それから、このサイコロにH形鋼梁を取り付ける中組立と、サイコロにH形鋼梁を取り付けたものに角形鋼管柱を取り付ける大組立を行う方法を採用している。この従来方法では、角形鋼管柱は各階ごとに切断して溶接接合する必要があり、複雑で製作工数が大きく掛かると言う問題がある。
【0014】
また、特願平06−331303では、ボルト孔が角形鋼管柱を貫通させているので、角形鋼管の強度が低下するし、この強度低下を補うためにはかなりの厚肉の角形鋼管柱を使用する必要がある。角形鋼管柱は各階ごとに切断して溶接接合する必要がある。また、本方法では、かなり大きなエンドプレートを必要とする。
【0015】
目的
本発明は、建築鉄骨構造物の柱梁接合部熱歪み・熱歪み脆化を防止し・スカラップ加工・溶接開先加工を単純化して省力化すると共に、応力集中を緩和し、該仕口部の強度及び塑性変形性能を向上させると共に、柱を各階ごとに切断することなく、ダイアフラムを取付けて、柱の製作コストを低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような諸課題は、種々研究した結果、図1及び図2に示すような部材1と2で構成されるサイコロではダイアフラムの柱からの張り出しを無くして、例えば図8に示すような柱貫通ダイアフラムを内ダイアフラムにして、角形鋼管の各階ごとの切断をすることなく、梁位置に相当するところに梁形状の貫通孔を開けて、柱5とダイアフラム1との溶接部6を溝溶接にして、梁4を、該溝溶接部を含めて溶接接合させれば解決することを見いだした。
【0017】
そこで、請求項1に係る発明では、建築鉄骨構造物において、角形鋼管柱を各階ごとに切断することなく、該角形鋼管柱の梁フランジ取付位置に梁フランジ断面形状相当の貫通孔を開けて、該貫通孔位置に内ダイアフラムを該角形鋼管柱内部に設置して、該角形鋼管柱の外面から溝溶接を行うことにより、該角形鋼管柱と該内ダイアフラムを溶接接合して、しかる後、該溝溶接部を含めた角形鋼管柱とH形鋼梁とを溶接接合し鉄骨構造物を製作する方法であって、該角形鋼管柱内に設置する上下内ダイアフラムを、スティフナーで仮付溶接又はすみ肉溶接で固定し、該スティフナーで固定された上下内ダイアフラムを該角形鋼管柱の端部開口部から該角形鋼管柱内部に挿入し所定位置に設置することを特徴とする鉄骨構造物の製作方法とした。
【0018】
請求項2に係る発明では、建築鉄骨構造物において、角形鋼管柱を各階ごとに切断することなく、該角形鋼管柱の梁フランジ取付位置に梁フランジ断面形状相当の貫通孔を開けて、該貫通孔位置に内ダイアフラムを該角形鋼管柱内部に設置して、該角形鋼管柱の外面から溝溶接を行うことにより、該角形鋼管柱と内ダイアフラムを溶接接合して、しかる後、該溝溶接部を含めた角形鋼管柱とH形鋼梁とを溶接接合し鉄骨構造物を製作する方法であって、内ダイアフラムの溝溶接を行う場合に、内ダイアフラム端部両面に裏当金を該内ダイアフラム端部から突出させずに取り付けることにより、該裏当金のない場合に比べて内ダイアフラムの厚さを大きくすることなく該溝溶接を安定的に行うことを特徴とする鉄骨構造物の製作方法とした。
【0019】
請求項3に係る発明では、梁ウエブの延長上へ梁ウエブの厚さ以上のスティフナーを予め上下内ダイアフラム間に溶接接合させて、溶接接合した該内ダイアフラムと該スティフナーを角形鋼管柱の端部開口部から角形鋼管柱内に挿入し所定位置に設置して、該スティフナーを角形鋼管柱と溝溶接させ、更に該溝溶接部に該梁ウエブを溶接接合させることを特徴とする請求項1又は2記載の鉄骨構造物の製作方法とした。
【0020】
請求項4に係る発明では、梁フランジ端部継手溶接後、該梁フランジ端部継手溶接部に繋げてフランジの側面又は下面に肉盛溶接することにより、梁端部側面の応力集中を軽減することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の鉄骨構造物の製作方法とした。
請求項5に係る発明では、方向の異なった複数の梁の高さ位置の異なったフランジを、同時に1枚のダイアフラムに溝溶接できるように十分な厚さのダイアフラムを用いることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の鉄骨構造物の製作方法とした。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明では、ダイアフラムが柱の外径より外にはみ出ていないので、いわゆる傘折れ現象が無く、建物外壁製作の取り合いが良くて、且つ、ダイアフラムの張り出しの分だけたても建物室内空間が増加するという効果がある。少なくとも柱長管部材溶接部と梁端溶接部を個別に溶接し、両者を繋げて一体化させることにより、従来の柱・ダイアフラム間の溶接とダイアフラム・梁端の溶接によるダイアフラム張り出し部の熱歪脆化を防止することができる。ダイアフラムの使用材料が従来よりも20〜50%程度減少し省資源になる。また、内ダイアフラムと角形鋼管柱との溝溶接、及び該溝溶接部を含めた角形鋼管柱梁端溶接を個別に溶接し、両者を繋げて一体化させることにより、柱と梁の応力の伝達がスムーズになる。また、該一体化及び角形鋼管柱の切断無しの通し柱により、柱の切断作業をなくすると共に柱の溶接量が50%以上低減し溶接能率が向上する。更に、内ダイアフラムの位置は溝溶接位置で明確に認識できるので内ダイアフラムと梁フランジとのずれが問題になることはない。また、ダイアフラムが角形鋼管柱を貫通していないので、内ダイアフラムのラメラーテアが問題になることもない。
【0022】
請求項2に係る発明では、裏当金のない場合に比べて内ダイアフラムの厚さを大きくすることなく溝溶接を安定的に行うことができる。
【0023】
請求項3に係る発明では、梁に掛かるモーメントを梁フランジだけでなく梁ウエブにも負担させることができ柱梁接合部に安全性が増加すると共に、梁せいを小さくすることができるという効果がある。また、内ダイアフラムとスティフナーを予め溶接接合しておくことにより、内ダイアフラムを角形鋼管内の所定位置に設置しやすくなるという効果がある。
【0024】
請求項4に係る発明では、梁端部側面の応力集中を軽減することが出来る。柱部材端・梁部材端又はダイアフラム部材端を肉盛溶接により強化しても柱梁接合部の破壊発生箇所は梁端になることが多い。このような状況を改善するためには、梁端部を側面・上面・裏面から補強することが必要であり、この方法により、柱梁接合部の強度が一層向上するという利点がある。
請求項5に係る発明では、方向の異なった複数の梁の高さ位置の異なったフランジを、同時に1枚のダイアフラムに溝溶接できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る鉄骨構造物柱梁接合部の梁と内ダイアフラム直結工法について実施例を次に述べる。
【実施例1】
【0026】
請求項1に係る発明の実施の形態について説明する。図8は角形鋼管柱5を柱梁接合部で切断分離することなく該角形鋼管側面に梁フランジ形状に合わせて貫通孔27を明けた状態である。図12は、内ダイアフラム1Aと角形鋼管5とを該貫通孔27に溝溶接22を実施し、更に、梁フランジ4を溝溶接部22の上に重ねて溶接17を行い、梁ウエブ9を角形鋼管柱5と溶接した断面図を示す。図13は、図12の上面図である。
【0027】
請求項1に係る発明の実施の形態について説明する。図12及び図13において、角形鋼管柱5は、建築物の各階ごとに柱を切断することなく、2〜4階分を通し柱にして、該角形鋼管5の梁フランジ取付位置に梁フランジ断面形状相当の貫通孔を開けて、該貫通孔位置27に内ダイアフラム1Aを角形鋼管柱5の内部に設置して、角形鋼管柱5の外面から溝溶接22を行うことにより、角形鋼管柱5と内ダイアフラム1Aを溶接接合して、しかる後、該溝溶接部22を含めた角形鋼管柱5とH形鋼梁フランジ4とを溶接接合17して鉄骨構造物を製作する方法を示している。溶接部17は裏当金10及び仮付8を用いて溶接している。図13に示すように、内ダイアフラムの形状はスニップカットで4角形の角を切り欠いたものであるが、角形鋼管柱内面の形状に合わせたものでも良い。その肉厚は梁フランジよりも通常5〜15mm程度大きく取る。また、図13に示すように、内ダイアフラム1Aの中央に貫通孔24を設けて、該内ダイアフラムの角形鋼管柱5内部への挿入に役立てる。また、溝溶接22は梁が1方向しかなくても梁から掛かる応力を受けるために通常角形鋼管柱5の側面の4面について行う。
【実施例2】
【0028】
請求項1に係る発明の実施の形態のうち、角形鋼管柱内への内ダイアフラムの設置方法について説明する。図8に示すように、該角形鋼管5の梁フランジ取付位置に梁フランジ断面形状相当の貫通孔27を開けて、該貫通孔位置27に内ダイアフラム1Aを角形鋼管柱5の内部に設置する場合、図9に示すように、上下内ダイアフラムを、梁フランジ間隔を保ちながらスティフナー25で仮付溶接又はすみ肉溶接で固定し、角形鋼管柱5の端部開口部から角形鋼管柱5の内に挿入し所定位置27に設置する。
【実施例3】
【0029】
請求項3に係る発明の実施の形態について説明する。請求項3に係る発明は、請求項1に記載の発明において、図16、図9及び図17に示すように、梁ウエブ9の延長上へ梁ウエブの厚さ以上のスティフナー25を上下ダイアフラム1A間に溶接接合26させて、溶接接合した該内ダイアフラム1Aと該スティフナー25を角形鋼管柱5の端部開口部から角形鋼管柱5の内に挿入し所定位置に設置し、該スティフナー25を角形鋼管柱5と溝溶接5Wさせ、更に、該溝溶接部5Wに該梁ウエブ9をすみ肉溶接23させることを特徴とする鉄骨構造物の製作方法である。このスティフナー25と角形鋼管柱5との溝溶接5Wは梁取付側だけでなく梁が無くてもその反対側の柱5にも溝溶接を実施する。また、該すみ肉溶接23は突合せ溶接で行うことも可能である。
【実施例4】
【0030】
請求項3に係る発明の実施の形態について説明する。請求項3に係る発明は、請求項1に記載の発明において、直角方向に梁が角形鋼管柱に接合される場合、図10及び図11に示すように、その両方の梁ウエブから、梁ウエブ9の延長上へ梁ウエブの厚さ以上のスティフナー25を上下ダイアフラム1A間に溶接接合26させて、溶接接合した該内ダイアフラム1Aと該スティフナー25を角形鋼管柱5の端部開口部から角形鋼管柱5の内に挿入し所定位置に設置し、図17に示すように、該スティフナー25を角形鋼管柱5と溝溶接5Wさせ、更に、該溝溶接部5Wに該梁ウエブ9をすみ肉溶接23させることを特徴とする鉄骨構造物の製作方法である。なお直角方向に梁が角形鋼管柱に接合される場合においても、スティフナー25は片方の梁のウエブの延長上にしか取り付けないことも本発明の実施形態の一つである。
【実施例5】
【0031】
本発明の参考形態について説明する。図14において、角形鋼管柱5を建築物の各階ごとに切断することなく、該角形鋼管5の梁フランジ取付位置に梁フランジ断面形状相当の貫通孔を開けて、該貫通孔位置に内ダイアフラム1Aを角形鋼管柱5の内部に設置して、角形鋼管柱5の外面から溝溶接22を行うことにより、角形鋼管柱5と内ダイアフラム1Aを溶接接合して、しかる後、H形鋼梁フランジ4の端部内面を肉盛溶接14して開先加工をした後、該溝溶接部22を含めた角形鋼管柱5とH形鋼梁4とを溶接接合17して鉄骨構造物を製作する方法を示している。溶接部17は肉盛溶接14及び仮付8を用いて溶接している。図13に示すように、内ダイアフラムの形状は4角形の角を切り欠いたものであるが、角形鋼管柱内面の形状に合わせたものでも良く、その肉厚は通常梁フランジよりも5〜15mm程度大きく取る。
【実施例6】
【0032】
本発明の参考形態について説明する。図15及び図8において、角形鋼管柱5を建築物の各階ごとに切断することなく、該角形鋼管5の梁フランジ取付位置に梁フランジ断面形状相当の貫通孔27を開けて、内ダイアフラム1Aの端部両面に肉盛溶接14した後、該貫通孔位置27に内ダイアフラム1Aを角形鋼管柱5の内部に設置して、角形鋼管柱5の外面から溝溶接22を行うことにより、角形鋼管柱5と内ダイアフラム1Aを溶接接合して、しかる後、H形鋼梁フランジ4の端部内面を肉盛溶接14して開先加工をした後、該溝溶接部22を含めた角形鋼管柱5とH形鋼梁4とを溶接接合17して鉄骨構造物を製作する方法を示している。溶接部17は肉盛溶接14及び仮付8を用いて溶接している。図13に示すように、内ダイアフラムの形状はスニップカットで4角形の角を切り欠いたものであるが、角形鋼管柱5の内面の形状に合わせたものでも良い。このように、内ダイアフラム1Aの端部両面に肉盛溶接した場合、しない場合よりも内ダイアフラム1Aの肉厚を10〜20mm程度低減することが出来る。
【0033】
なお、本発明の参考形態において、内ダイアフラム1Aの端部両面に肉盛溶接14をする代わりに、図18に示すように、内ダイアフラム1Aの端部両面に裏当金10を仮付溶接8により取り付けておく方法も内ダイアフラム1Aと角形鋼管5との溝溶接を安定的に実施する良い方法であり、本発明の応用例の一つ(請求項2に係る発明)である。この場合、この裏当金を用いた場合に、裏当金10を付けない場合よりも、内ダイアフラムの厚さを大きくすることなく溝溶接22を安定的に行うことができる。なお、必要により、図17のスティフナーの溝溶接側に同様の裏当金10を、スティフナーの端部に仮付溶接8により取り付ける方法も本発明の応用例の一つである。
【実施例7】
【0034】
請求項4に係る発明の実施の形態について説明する。図19に、請求項1乃至3の発明又は参考形態に掛かる梁フランジ端部継手溶接7又は17の後、該梁フランジ端部継手溶接部に繋げてフランジの側面に肉盛溶接20することにより鉄骨構造物を製作する方法を示す。この肉盛寸法は幅フランジ厚さ程度、長さ20〜200mm、高さ3〜10mmが適当である。応力集中緩和のためには、梁端に向かって次第に肉盛高さを大きくすることが望ましい。
【実施例8】
【0035】
請求項4に係る発明の実施の形態について説明する。図20に、請求項1乃至3の発明又は参考形態に掛かる梁フランジ端部継手溶接7又は17の後、該梁フランジ端部継手溶接部に繋げてフランジの上面に梁の軸方向に細長い肉盛溶接20をすることにより鉄骨構造物を製作する方法を示す。この肉盛寸法は幅10〜30mm、長さ20〜200mm、高さ3〜10mmが適当である。応力集中緩和のためには、梁中央側の肉盛溶接端部をなだらかに仕上げてテーパにすることが望ましい。
【実施例9】
【0036】
請求項4に係る発明の実施の形態について説明する。図21に、請求項1乃至3の発明又は参考形態に掛かる梁フランジ端部継手溶接7又は17の後、該梁フランジ端部継手溶接部に繋げてフランジの上面に梁の軸方向に広幅に肉盛溶接20をすることにより鉄骨構造物を製作する方法を示す。この肉盛寸法は梁フランジ幅程度、長さ20〜200mm、高さ3〜10mmが適当である。応力集中緩和のためには、梁中央側の肉盛溶接端部をなだらかに仕上げてテーパにすることが望ましい。
【実施例10】
【0037】
請求項4に係る発明の実施の形態について説明する。図22に、請求項1乃至3の発明又は参考形態に掛かる梁フランジ端部継手溶接7又は17の後、該梁フランジ端部継手溶接部に繋げてフランジの上面に梁の軸方向に広幅に且つ梁側面側を長く肉盛溶接20をすることにより鉄骨構造物を製作する方法を示す。この肉盛寸法は梁フランジ幅程度、長さ20〜200mm、高さ3〜10mmが適当である。応力集中緩和のためには、梁中央側の肉盛溶接端部をなだらかに仕上げてテーパにすることが望ましい。
【実施例11】
【0038】
請求項5に係る発明の実施の形態について説明する。請求項5に係る発明の実施の形態である梁せいの異なる梁を2種類以上柱に接合する場合の角形鋼管柱内への内ダイアフラムの設置方法について説明する。図23に示すように、梁4とは異なった方向からせいの異なる梁3及び3Aが柱5に接合される場合に、該角形鋼管柱5の梁フランジ取付位置に梁3及び3Aのフランジ断面形状相当の貫通孔をそれぞれ開けて、該貫通孔位置27に内ダイアフラム1Aを角形鋼管柱5の内部に設置する場合、両梁のフランジを同時に溝溶接22ができるように十分な厚さのダイアフラム1Aを図23に示すように、角形鋼管柱5の内に挿入し所定位置に設置する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】従来の建築鉄骨柱梁接合部の立体図の一例
【図2】従来の建築鉄骨柱梁接合部の角形鋼管・ダイアフラム・梁フランジ接合部の断面図
【図3】部材端部に水冷又は非水冷の銅製当て金をあてがい肉盛溶接をした断面図の一例
【図4】部材端部に薄い鋼板をあてがい、肉盛溶接をした断面図の一例
【図5】部材13の端部に肉盛溶接し部材端部及び肉盛溶接部14を共に開先加工した状態の断面図
【図6】部材13の端部に肉盛溶接14と開先加工をして継手の相手部材16にあてがい、継手溶接を実施した状態の断面図
【図7】角形鋼管柱内部に装填された内ダイアフラムの施工状況を示す断面図
【図8】角形鋼管の側面に梁フランジ断面形状に似せて開けた貫通孔の外観図
【図9】内ダイアフラムにスティフナーを取り付けた状態の外観図
【図10】角形鋼管の側面に梁断面形状に似せて開けた貫通孔の外観図
【図11】内ダイアフラムにスティフナーを直角方向の2方向に取り付けた状態の外観図
【図12】内ダイアフラムと角形鋼管柱とを溝溶接し、梁フランジを、裏当金を用いて溝溶接部に重ねて溶接し、梁ウエブを角形鋼管柱にすみ肉溶接した断面図
【図13】内ダイアフラムと角形鋼管柱とを溝溶接し、梁フランジを溝溶接部に重ねて溶接し、梁ウエブを角形鋼管柱にすみ肉溶接した横断面上面図
【図14】内ダイアフラムと梁フランジ直結の柱梁接合部で梁フランジの裏面に肉盛溶接を施した場合の縦断面図
【図15】内ダイアフラムと梁フランジ直結の柱梁接合部で内ダイアフラムの端部両面及び梁フランジの裏面に肉盛溶接を施した場合の縦断面図
【図16】内ダイアフラム及びスティフナーと角形鋼管柱とを溝溶接し、梁フランジを溝溶接部に重ねて溶接し、梁ウエブを角形鋼管柱にすみ肉溶接した横断面上面図
【図17】内ダイアフラム及びスティフナーと角形鋼管柱とを溝溶接し、梁フランジをその裏面に肉盛溶接して溝溶接部に重ねて溶接し、梁ウエブを角形鋼管柱にすみ肉溶接した横断面上面図
【図18】内ダイアフラムと梁フランジ直結の柱梁接合部で、内ダイアフラムの端部に裏当金を取付け、梁フランジの裏面に肉盛溶接を施した場合の縦断面図
【図19】梁端部側面に肉盛溶接を実施した場合の柱梁接合部
【図20】梁端部上面に梁の軸方向に細く肉盛溶接を実施した場合の柱梁接合部
【図21】梁端部上面に梁の軸方向に幅広く肉盛溶接を実施した場合の柱梁接合部
【図22】梁端部上面に梁の軸方向に幅広く且つ梁の側面近くを長く肉盛溶接を実施した場合の柱梁接合部
【図23】せい及び方向の異なる2つ以上の梁が角形鋼管柱に溝溶接される場合の柱梁接合部断面図
【符号の説明】
【0040】
1 建築鉄骨柱梁接合部のダイアフラム
1A 建築鉄骨柱梁接合部の内ダイアフラム
2 ダイアフラム間の角形鋼管の短管。1と2から構成される部材をサイコロという。
3 H形鋼梁
3 異なった方向から柱に接合されるH形鋼梁
4 H形鋼梁フランジ
5 角形鋼管による柱
5W 角形鋼管による柱とスティフナーを取り付ける溝溶接部又はスロット溶接部
6 角形鋼管とダイアフラムとの溶接
7 梁フランジとダイアフラムとの溶接
8 仮付又は組立溶接
9 H形鋼梁ウエブ
10 裏当金
11 スカラップ
12 非消耗式当て金(銅など)
12P 非消耗式当て金(銅など)の突起
13 フランジ又は角形鋼管などの部材
13C 部材13の開先切断位置
14 部材裏面又は表面に施工された肉盛溶接
15 肉盛溶接部14及び母材を含めた開先面
16 相手部材
17 継手溶接
18 部材13の板厚又は肉厚
19 部材16と13の溶接部の実効のど厚
20 フランジ側面・上面又は裏面の肉盛溶接
21 梁応力集中部
22 角形鋼管による柱と内ダイアフラムを取り付ける溝又はスロット溶接部
23 角形鋼管とH形鋼梁ウエブとの溶接
24 内ダイアフラムの中央に開けた貫通孔
25 スティフナー
26 内ダイアフラムとスティフナーとを接合する溶接
27 角形鋼管側面に梁フランジ形状に合わせて明けた貫通孔即ちスロット
28 薄鋼板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築鉄骨構造物において、角形鋼管柱を各階ごとに切断することなく、該角形鋼管柱の梁フランジ取付位置に梁フランジ断面形状相当の貫通孔を開けて、該貫通孔位置に内ダイアフラムを該角形鋼管柱内部に設置して、該角形鋼管柱の外面から溝溶接を行うことにより、該角形鋼管柱と該内ダイアフラムを溶接接合して、しかる後、該溝溶接部を含めた角形鋼管柱とH形鋼梁とを溶接接合し鉄骨構造物を製作する方法であって、該角形鋼管柱内に設置する上下内ダイアフラムを、スティフナーで仮付溶接又はすみ肉溶接で固定し、該スティフナーで固定された上下内ダイアフラムを該角形鋼管柱の端部開口部から該角形鋼管柱内部に挿入し所定位置に設置することを特徴とする鉄骨構造物の製作方法。
【請求項2】
建築鉄骨構造物において、角形鋼管柱を各階ごとに切断することなく、該角形鋼管柱の梁フランジ取付位置に梁フランジ断面形状相当の貫通孔を開けて、該貫通孔位置に内ダイアフラムを該角形鋼管柱内部に設置して、該角形鋼管柱の外面から溝溶接を行うことにより、該角形鋼管柱と内ダイアフラムを溶接接合して、しかる後、該溝溶接部を含めた角形鋼管柱とH形鋼梁とを溶接接合し鉄骨構造物を製作する方法であって、内ダイアフラムの溝溶接を行う場合に、内ダイアフラム端部両面に裏当金を該内ダイアフラム端部から突出させずに取り付けることにより、該裏当金のない場合に比べて内ダイアフラムの厚さを大きくすることなく該溝溶接を安定的に行うことを特徴とする鉄骨構造物の製作方法。
【請求項3】
梁ウエブの延長上へ梁ウエブの厚さ以上のスティフナーを予め上下内ダイアフラム間に溶接接合させて、溶接接合した該内ダイアフラムと該スティフナーを角形鋼管柱の端部開口部から角形鋼管柱内に挿入し所定位置に設置して、該スティフナーを角形鋼管柱と溝溶接させ、更に該溝溶接部に該梁ウエブを溶接接合させることを特徴とする請求項1又は2記載の鉄骨構造物の製作方法。
【請求項4】
梁フランジ端部継手溶接後、該梁フランジ端部継手溶接部に繋げてフランジの側面又は下面に肉盛溶接することにより、梁端部側面の応力集中を軽減することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の鉄骨構造物の製作方法。
【請求項5】
方向の異なった複数の梁の高さ位置の異なったフランジを、同時に1枚のダイアフラムに溝溶接できるように十分な厚さのダイアフラムを用いることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の鉄骨構造物の製作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−216236(P2010−216236A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113524(P2010−113524)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【分割の表示】特願2004−139297(P2004−139297)の分割
【原出願日】平成16年5月10日(2004.5.10)
【出願人】(503318518)株式会社アークリエイト (16)
【出願人】(301043812)
【Fターム(参考)】