説明

鉛弾分別回収システムおよび方法

【課題】鉛弾の分離回収率を向上させる鉛弾分別回収システムを提供する。
【解決手段】鉛弾が混じった土砂を、鉛弾に近い粒径で鉛弾の粒径より若干大きい粒径以上の土砂と、それより小さい鉛弾を含む土砂とに分級する分級工程と、上記鉛弾を含む土砂を風力を用いて鉛弾を含む土砂と含まない土砂に比重差選別する比重差選別工程と、比重差選別された鉛弾を含む土砂について渦電流を利用して非鉄金属を選別する磁力選別工程とを行うことにより、鉛弾を土砂から分別する土壌に分散された鉛弾を分別回収する鉛弾分別回収システムであって、上記分級工程には、鉛弾と水分を含む土砂を乾燥させる乾燥工程と、上記乾燥した鉛弾混じりの土砂について鉛弾から土砂を剥離させる剥離工程とを実施した土砂を導入するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射撃場等において鉛弾を分別回収する鉛弾分別回収システムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、散弾銃やライフル等の射撃場では、屋外で的撃ちをすることから土壌中に鉛弾が分散される。これらの鉛弾は、従来はそのまま放置されているため、近年の酸性雨等によって鉛成分が溶出し土壌を汚染するという問題を有している。
【0003】
このような鉛弾を土砂から分離回収する方法として、水流等を利用した湿式の比重差選別、風力を利用した乾式の比重差選別が考えられる。湿式による分離回収方法は、100%近い回収率で鉛弾の分別回収が可能であるが、鉛汚染された水処理設備を別途必要とするため設備効率が悪く、設備コストおよびランニングコストが著しく高くなるという問題を有している。これに対し、乾式による分離回収方法は、設備効率がよくランニングコスト面でも有利であるが、風力による分別だけでは90%以下程度の鉛弾しか回収することができないという問題があり、残留した鉛弾を手作業で分別する必要が生じてしまう。
【0004】
そこで、乾式による分離回収方法において鉛弾の分離回収率を向上するシステムとして、下記の特許文献1に記載のものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4043917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1記載の分離回収システムは、まず、鉛弾を含む土砂を解砕工程で解砕し、解砕後の土砂を温風送風機等により強制的に乾燥させる。ついで、この乾燥した土砂を分級工程に送って、鉛弾の粒径より若干大きい土砂と、鉛弾を含むそれより小さい土砂とに分級する。つぎに、上記鉛弾を含む土砂を風力を用いて比重差選別した後、渦電流により非鉄金属を選別する磁力選別することにより、鉛弾を土砂から分別する射撃場等で土壌に分散された鉛弾を分別して回収することが行われる。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載のシステムでは、鉛弾を含む土砂を解砕工程で解砕した後に乾燥させ、その後に分級、比重差選別および磁力選別を行う。すなわち、鉛弾を含む土砂について水分を含んだ状態で解砕し、細かく解砕された土砂をその状態で乾燥させた後に分級等を行うようにしている。このように、鉛弾を含む土砂を水分を含む状態のまま解砕すると、その解砕工程では、土砂と鉛弾と水分が混じった状態で解砕される。この状態の土砂を乾燥工程にかけると、土砂に鉛弾が混じった状態のまま乾燥することとなる。鉛弾混じりで乾燥した土砂においては、鉛弾と土砂が強固に固着してなかなか剥がれないため、その後の工程を行ったとしても、鉛弾と土砂が固着したままで分級、比重差選別および磁力選別が行われることとなる。したがって、鉛弾と土砂を分離する分離回収率を向上させるにも限度があった。
【0008】
上記特許文献1記載のシステムでは、分離回収率を向上させんとして、分級工程において分級した鉛弾の粒径より大きい土砂を風力を用いて別途比重差選別し、この比重差選別後の比重が大きい方の土砂を分級し、所定の粒径以下の土砂を前記分級工程に送ることを行うが、上記分級工程を行う前提の土砂が、上述したように水分を含んだまま解砕した後に乾燥させ、鉛弾と土砂が強固に固着したものであるため、やはり鉛弾の分離回収率を向上させるには限度があるのが実情である。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたもので、鉛弾の分離回収率をさらに向上させることができる鉛弾分別回収システムおよび方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の鉛弾分別回収システムは、鉛弾が混じった土砂を、鉛弾に近い粒径で鉛弾の粒径より若干大きい粒径以上の土砂と、それより小さい鉛弾を含む土砂とに分級する分級工程と、
上記鉛弾を含む土砂を風力を用いて鉛弾を含む土砂と含まない土砂に比重差選別する比重差選別工程と、
比重差選別された鉛弾を含む土砂について渦電流を利用して非鉄金属を選別する磁力選別工程とを行うことにより、
鉛弾を土砂から分別する土壌に分散された鉛弾を分別回収する鉛弾分別回収システムであって、
上記分級工程に、鉛弾と水分を含む土砂から水分を除去する水分除去工程と、上記水分除去した鉛弾混じりの土砂を解砕するとともに鉛弾から土砂を剥離させる解砕および剥離工程とを実施した土砂を導入することを要旨とする。
【0011】
また、本発明の鉛弾分別回収方法は、鉛弾が混じった土砂を、鉛弾に近い粒径で鉛弾の粒径より若干大きい粒径以上の土砂と、それより小さい鉛弾を含む土砂とに分級する分級工程と、
上記鉛弾を含む土砂を風力を用いて鉛弾を含む土砂と含まない土砂に比重差選別する比重差選別工程と、
比重差選別された鉛弾を含む土砂について渦電流を利用して非鉄金属を選別する磁力選別工程とを行うことにより、
鉛弾を土砂から分別する土壌に分散された鉛弾を分別回収する鉛弾分別回収方法であって、
上記分級工程に、鉛弾と水分を含む土砂から水分を除去する水分除去工程と、上記水分除去した鉛弾混じりの土砂を解砕するとともに鉛弾から土砂を剥離させる解砕および剥離工程とを実施した土砂を導入することを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
すなわち、本発明の鉛弾分別回収システムおよび方法は、上記分級工程に、鉛弾と水分を含む土砂をあらかじめ水分除去し、水分除去した鉛弾混じりの土砂を解砕するとともに鉛弾から土砂を剥離させる。このように、あらかじめ鉛弾と水分を含む土砂を水分除去することにより、水分除去した土砂が鉛弾から剥離しやすくなる。そして、鉛弾から土砂を剥離させてから分級、比重差選別および磁力選別を行うため、従来に比べて分級回収率を飛躍的に向上させることができる。
【0013】
本発明において、上記水分除去工程は、水分除去工程後の鉛弾と水分を含む土砂の含水率を10%以上15%以下となるよう含水率を調整する場合には、上記水分率に調整することにより、その後の解砕および剥離工程において、極めて容易に土砂を解砕し、鉛弾から土砂をきれいに剥離できる。すなわち、含水率が10%未満では、土砂が硬くなりすぎて解砕が困難になるだけでなく、鉛弾と土砂が強固に固着して剥離も困難になり、反対に、15%を超えると、土砂が柔らかくて鉛弾表面に粘着した土砂の除去が困難となるうえ、粘着する土砂等の解砕も困難になるからである。
【0014】
本発明において、上記水分除去工程は、鉛弾と水分を含む土砂を、コンベア上で搬送するときに熱線ランプで加熱することにより水分除去する場合には、熱線ランプの照射時間等により、水分除去工程後の土砂の水分含有率を所定の範囲内に調節することが容易であり、鉛弾からの土砂の剥離が容易となるよう水分含有率を調節することが可能となる。
【0015】
本発明において、上記水分除去工程は、鉛弾と水分を含む土砂に対し、石灰を混入させて混合することにより石灰の発熱作用により水分除去する場合には、石灰の混入率等により、水分除去工程後の土砂の水分含有率を所定の範囲内に調節することが容易であり、鉛弾からの土砂の剥離が容易となるよう水分含有率を調節することが可能となる。
【0016】
本発明において、上記解砕および剥離工程は、上記水分除去した鉛弾混じりの土砂についてバレル内で混錬して共ずりすることにより、解砕と剥離を同時に行うものである場合には、バレル内で混錬して共ずりするという、比較的簡単な設備による容易な処理により、確実に土砂を解砕し、解砕と同時に鉛弾から土砂を剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の鉛弾分別回収システムの一実施形態における工程図の一例を示すフローチャートである。
【図2】含水率調整装置を示す図であり(A)は第1例、(B)は第2例である。
【図3】解砕および剥離装置の一例を示す図である。
【図4】分級装置および第1磁選装置の一例を示す図である。
【図5】風力選別装置の一例を示すテーブルである。
【図6】第2磁選装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0019】
図1は、本発明が適用された鉛弾分別回収システムの一実施形態を示す図である。
【0020】
この鉛弾分別回収システムは、(1)本発明の水分除去工程としての含水率調節工程、(2)解砕および剥離工程、(3)分級工程、(4)第1磁選工程、(5)本発明の比重差選別工程としての風力選別工程、(6)本発明の磁力選別工程としての第2磁選工程を実施し、鉛弾を土砂から分別する土壌に分散された鉛弾を分別回収する。
【0021】
(1)本発明の水分除去工程としての含水率調節工程は、鉛弾と水分を含む土砂から水分を除去する。
(2)解砕および剥離工程は、上記水分除去した鉛弾混じりの土砂を解砕するとともに鉛弾から土砂を剥離させる。
(3)分級工程は、鉛弾が混じった土砂を、鉛弾に近い粒径で鉛弾の粒径より若干大きい粒径以上の土砂と、それより小さい鉛弾を含む土砂とに分級する。
(4)第1磁選工程は、分級された鉛弾を含む土砂から鉄類を選別除去する。
(5)本発明の比重差選別工程としての風力選別工程は、上記鉛弾を含む土砂を風力を用いて鉛弾を含む土砂と含まない土砂に比重差選別する。
(6)本発明の磁力選別工程としての第2磁選工程は、比重差選別された鉛弾を含む土砂について渦電流を利用して非鉄金属を選別する。
【0022】
そして、本実施形態のシステムでは、上記(3)分級工程に、上記(1)水分除去工程としての含水率調節工程と、(2)解砕および剥離工程を行った土砂を導入する。
【0023】
以下、それぞれの工程について詳しく説明する。
【0024】
図2は、水分除去工程としての含水率調節工程を行うための含水率調節装置を示す図である。(A)は第1例、(B)は第2例である。
【0025】
図2(A)は、第1例の含水率調節装置1Aである。
【0026】
この第1例の含水率調節装置1Aは、鉛弾と水分を含む土砂を、コンベア上で搬送するときに熱線ランプで加熱することにより水分除去するものである。
【0027】
この装置は、鉛弾と水分を含む土砂を供給するためのホッパ2と、上記ホッパ2に投入された土砂等を搬送するためのベルトフィーダ3とを備えている。また、ベルトフィーダ3で送られた土砂等は、搬入コンベア4によって搬入され、処理コンベア5上に投入される。
【0028】
上記処理コンベア5は、投入された土砂等を図示しない振動付与装置によって振動させながら前方に搬送するものである。上記処理コンベア5の上部には、振動されながら搬送される土砂等に対して赤外光等の熱線を照射して加熱する赤外ランプが搬送方向に沿って複数個並べられて配置されている。これにより、処理コンベア5上の土砂等は、振動されながら搬送される最中に、赤外光等の熱線を受けて加熱され、水分が除去される。このとき、上記振動により、投入された土砂等は水分除去されながらある程度の大きさの塊状に分割される。
【0029】
上記処理コンベア5の上部前後には、ファン8A,8Bが配置されており、処理コンベア5の上部に後方から前方に向かう気流を発生させて当該気流を循環させるようになっている。また、上記処理コンベア5の上部には、上記気流を循環させるためのダクト9が配置され、このダクト9内には、上記気流に混入する塵埃等を除去するフィルタ10が設けられている。上記フィルタ10を通過した循環気流の一部は開口11から外部に排出され、新鮮な外気を上記開口11から取り込むようになっている。
【0030】
上記処理コンベア5で水分除去処理され、所定の水分含有率に調節された土砂等は、排出コンベア6によって排出されて次工程の解砕および剥離工程に送られる。
【0031】
上記含水率調節装置1Aによる水分除去工程は、水分除去工程後の鉛弾と水分を含む土砂の含水率を10%以上15%以下となるよう含水率を調整するのが好ましい。このように、上記水分率に調整することにより、その後の解砕および剥離工程において、極めて容易に土砂を解砕し、鉛弾から土砂をきれいに剥離できる。すなわち、含水率が10%未満では、土砂が硬くなりすぎて解砕が困難になるだけでなく、鉛弾と土砂が強固に固着して剥離も困難になる。反対に、含水率が15%を超えると、土砂が柔らかくて鉛弾表面に粘着した土砂の除去が困難となるうえ、粘着する土砂等の解砕も困難になるからである。
【0032】
また、上記第1例の含水率調節装置1Aは、鉛弾と水分を含む土砂を、処理コンベア5上で搬送するときに熱線ランプとしての赤外ランプ7で加熱することにより水分除去するため、赤外ランプ7の照射時間等により、水分除去工程後の土砂の水分含有率を所定の範囲内に調節することが容易であり、鉛弾からの土砂の剥離が容易となるよう水分含有率を調節することが可能となる。
【0033】
すなわち、処理後の水分含有率が10%未満となるような場合は乾燥しすぎなので、点灯する赤外ランプ7の数を少なくしたり、あるいは処理コンベア5の搬送スピードを上げたりすることにより、水分含有率が10%以上となるよう調節することが可能である。反対に、処理後の水分含有率が15%を超えるような場合は乾燥不足なので、点灯する赤外ランプ7の数を多くしたり、あるいは処理コンベア5の搬送スピードを下げたりすることにより、水分含有率が15%以下となるよう調節することが可能である。
【0034】
図2(B)は、第2例の含水率調節装置1Bである。
【0035】
第2例の含水率調節装置1Bは、鉛弾と水分を含む土砂に対し、石灰を混入させて混合することにより石灰の発熱作用により水分除去するものである。
【0036】
この装置は、鉛弾と水分を含む土砂を供給するためのホッパ2と、上記ホッパ2に投入された土砂等を搬送するためのベルトフィーダ13とを備えている。また、ベルトフィーダ13で送られた土砂等は、搬入コンベア14によって搬入され、上記搬入コンベア14上に投入された石灰とともに混合機15内に投入される。
【0037】
符号17は石灰導入装置であり、石灰サイロ19に貯留された粉末状の石灰を計量器20内に導入し、所定量が計量された石灰をコンプレッサ21の圧縮空気で貯留ホッパ22内に圧送する。制御装置24は、レベルセンサ25の信号を受信して所定量の石灰を貯留ホッパ22に導入するとともに、開閉器23の開閉制御を行なって貯留ホッパ22に貯留された所定量の石灰をスクリューコンベア18に導入する。スクリューコンベア18から少しずつ押し出された所定量の石灰は、上記搬入コンベア14上に投入され、土砂等とともに混合機15内に投入される。
【0038】
混合機15は、この例では、回転式の連続混合機であり、傾斜状に配置されたドラムの内部に土砂等と石灰が投入されると、ドラムが軸心を中心に回転することにより、内部に投入された土砂等と石灰が混合されながら徐々に前方に送られる。このとき、混入された石灰が土砂等に含まれる水分に反応して発熱し、この発熱により水分が乾燥して除去されるのである。このとき、上記ドラムの回転により、投入された土砂等は水分除去されながらある程度の大きさの塊状に分割される。
【0039】
上記混合機15で水分除去処理され、所定の水分含有率に調節された土砂等は、排出コンベア16によって排出されて次工程の解砕および剥離工程に送られる。
【0040】
上記含水率調節装置1Bによる水分除去工程は、水分除去工程後の鉛弾と水分を含む土砂の含水率を10%以上15%以下となるよう含水率を調整するのが好ましいことは、上述した説明と同様である。
【0041】
また、上記第1例の含水率調節装置1Bは、鉛弾と水分を含む土砂を、鉛弾と水分を含む土砂に対し、石灰を混入させて混合することにより石灰の発熱作用により水分除去する。このため、石灰の混入率等により、水分除去工程後の土砂の水分含有率を所定の範囲内に調節することが容易であり、鉛弾からの土砂の剥離が容易となるよう水分含有率を調節することが可能となる。
【0042】
すなわち、処理後の水分含有率が10%未満となるような場合は乾燥しすぎなので、石灰の混入率を下げるよう石灰導入装置17を制御することにより、水分含有率が10%以上となるよう調節することが可能である。反対に処理後の水分含有率が15%を超えるような場合は乾燥不足なので、石灰の混入率を上げるよう石灰導入装置17を制御することにより、水分含有率が15%以下となるよう調節することが可能である。
【0043】
上記第1例の含水率調節装置1Aと、第2例の含水率調節装置1Bは、いずれか一方を設備することもできるし、第1例の含水率調節装置1Aと第2例の含水率調節装置1Bを併設し、状況によっていずれかを使い分けたり場合によって双方を併用したりすることも可能である。また、第1例の含水率調節装置1Aと第2例の含水率調節装置1Bを直列に設備して状況によっていずれかを使い分けたり場合によって双方を併用したりすることも可能である。
【0044】
図3は、解砕および剥離装置31である。
【0045】
この解砕および剥離装置31は、上記含水率調節装置1A,1Bで所定の水分含有率に調節された鉛弾混じりの土砂を供給するためのホッパ32と、上記ホッパ2に投入された鉛弾混じりの土砂等を搬送するためのベルトフィーダ33とを備えている。また、ベルトフィーダ33で送られた鉛弾混じりの土砂等は、搬入コンベア34によって搬入され、バレル35内に投入される。
【0046】
上記バレル35は、筒状のバレル本体が傾斜状に配設されて軸心を中心として回転し、内部に投入された、鉛弾混じりの土砂についてバレル35内で混錬して共ずりすることにより、水分除去された土砂等の解砕と、鉛弾表面からの土砂等の剥離とを同時に行うものである。上記バレル35は、例えば、断面多角形としたり、内部に羽根を設けたりすることにより、混錬効率を向上させることができる。
【0047】
このように、上記解砕および剥離工程は、上記水分除去した鉛弾混じりの土砂についてバレル35内で混錬して共ずりすることにより、解砕と剥離を同時に行うものであるため、バレル35内で混錬して共ずりするという、比較的簡単な設備による容易な処理により、確実に土砂を解砕し、解砕と同時に鉛弾から土砂を剥離することができる。
【0048】
このとき、傾斜角度を調節することにより、内部に投入された土砂等の前方の送り速度を調節することが可能となる。したがって、解砕および剥離の度合いが不足しているときには、傾斜角度を緩やかにして処理時間を長くすることが行われる。反対に、解砕および剥離の度合いが十分なときには、傾斜角度を大きくして処理時間を短縮することが行われる。
【0049】
上記バレル35で解砕および剥離処理された鉛弾と土砂等は、排出コンベア36によって排出されて次工程の分級工程に送られる。
【0050】
図4は、分級装置41および第1磁選装置42を示す図である。
【0051】
上記分級装置41は、分級工程は、鉛弾が混じった土砂を、鉛弾に近い粒径で鉛弾の粒径より若干大きい粒径以上の土砂と、それより小さい鉛弾を含む土砂とに分級するものであり、解砕および剥離処理された鉛弾と土砂等をふるいにかけて分級するための第1振動ふるい43および第2振動ふるい44とを備えている。上記第1振動ふるい43および第2振動ふるい44は、図示しない振動付与手段により振動が与えられている。
【0052】
上記第1振動ふるい43は、例えば開口40mm程度に設定されたウレタン使用の保護網であり、上記開口を通過しない比較的大きな塊の土砂等を手選別工程に送るためのものである。上記第2振動ふるい44は、例えば開口3.5mmに設定された金属網であり、上記開口を通過しない土砂等を手選別工程に送るためのものである。上記第2振動ふるい44の上に第1振動ふるい43を配置することにより、比較的大きな塊が第2振動ふるい44に直撃するのを防止し、第2振動ふるい44の損傷を防ぐようになっている。
【0053】
上記手選別工程は、第1振動ふるい43および第2振動ふるい44を通過しなかった土砂等から、コロス、クレー、草木その他、土砂を選別する。
【0054】
第1磁選装置42は、分級された鉛弾を含む土砂から鉄類を選別除去するもので、上記第1振動ふるい43および第2振動ふるい44を通過した鉛弾と小さな土砂等を搬送する搬送コンベア46と、上記搬送されるときに鉄類を吸着して選別する吊り下げ磁選器47とを備えている。上記吊り下げ磁選器47で鉄類が吸着除去された鉛弾と小さな土砂等は、搬送コンベア46により、次工程である風力選別工程に送られる。
【0055】
図5は、風力選別装置51を示す図である。
【0056】
この風力選別装置51は、本発明の比重差選別工程としての風力選別工程を実施し、上記鉛弾を含む土砂を風力を用いて鉛弾を含む土砂と含まない土砂に比重差選別するものであり、第1磁選装置42で鉄類が吸着除去された鉛弾と小さな土砂等が投入されるホッパ52と、外ケース55内で気流を発生させるファン53とを備えている。図では気流を小さな矢印で示している。
【0057】
上記外ケース55内には、ファン53の回転によって発生する気流の下流側と上流側を仕切る仕切板54が配置されている。これにより、比重の小さな軽量物(主として鉛弾を含まない土砂等である)は、上記気流によって下流側に流され、仕切板54の下流側に設けられた軽量物出口56から排出される。反対に、比重の大きな重量物(主として鉛弾と大きな土砂等である)は、上記気流に流されず、仕切板54の上流側に設けられた重量物出口57から排出される。
【0058】
軽量物出口56から排出された比重の小さな軽量物(主として鉛弾を含まない土砂等)は、軽量物搬出コンベア58により搬出される。一方、重量物出口57から排出された比重の大きな重量物(主として鉛弾と大きな土砂等)は、重量物搬出コンベア59により搬出されて次工程の第2磁選工程に送られる。
【0059】
図6は、第2磁選装置61を示す図である。
【0060】
この第2磁選装置61は、比重差選別された鉛弾を含む土砂について渦電流を利用して非鉄金属を選別するものであり、比重差選別された鉛弾を含む土砂を投入するためのホッパ62を備えている。外ケース65内には、コンベアベルト63が掛け渡された磁選ドラム66が配置されている。上記磁選ドラム66の下方には、2枚の仕切板67、68が配置されることにより、コンベアベルト63による土砂等の搬送方向の先側の鉛弾選別領域72と、上記鉛弾選別領域72より手前で磁選ドラム66の先端部真下の土砂選別領域73と、それよりさらに手前の鉄類選別領域74とに仕切られている。上記鉛弾選別領域72には鉛弾出口69が設けられ、土砂選別領域73には土砂出口71が設けられ、鉄類選別領域74には鉄類出口70が設けられている。
【0061】
上記第2磁選装置61では、磁選ドラム66に、多数の永久磁石64を極性を変えて交互に埋設し、上記磁選ドラム66をコンベアベルト63と逆方向に高速で回転させることにより、磁選ドラム66の傍を通過する導電体すなわち鉛弾に渦電流を発生させ、鉛弾の磁界と永久磁石64の磁界とを反発させることによって、鉛弾をはじき飛ばすことにより、鉛弾を先側の鉛弾選別領域72に選別する。また、鉄類は、永久磁石64の磁力に吸着されて長くコンベアベルト63上にいるので、手前の鉄類選別領域74に選別される。一方、土砂は、磁力等の影響を受けないので、磁選ドラム66の先端部真下の土砂選別領域73に選別される。
【0062】
本実施形態の鉛弾分別回収システムでは、上記分級工程に、鉛弾と水分を含む土砂をあらかじめ水分除去し、水分除去した鉛弾混じりの土砂を解砕するとともに鉛弾から土砂を剥離させる。このように、あらかじめ鉛弾と水分を含む土砂を水分除去することにより、水分除去した土砂が鉛弾から剥離しやすくなる。そして、鉛弾から土砂を剥離させてから分級、比重差選別および磁力選別を行うため、従来に比べて分級回収率を飛躍的に向上させることができる。
【符号の説明】
【0063】
1A:含水率調節装置(第1例)
1B:含水率調節装置(第2例)
2:ホッパ
3:ベルトフィーダ
4:搬入コンベア
5:処理コンベア
6:搬出コンベア
7:赤外ランプ
8A:ファン
8B:ファン
9:ダクト
10:フィルタ
11:開口
12:ホッパ
13:ベルトフィーダ
14:搬入コンベア
15:混合機
16:搬出コンベア
17:石灰導入装置
18:スクリューコンベア
19:石灰サイロ
20:計量器
21:コンプレッサ
22:貯留ホッパ
23:開閉器
24:制御装置
25:レベルセンサ
31:解砕および剥離装置
32:ホッパ
33:ベルトフィーダ
34:搬入コンベア
35:バレル
36:搬出コンベア
41:分級装置
42:第1磁選装置
43:第1振動ふるい
44:第2振動ふるい
46:搬送コンベア
47:吊り下げ磁選器
51:風力選別装置
52:ホッパ
53:ファン
54:仕切板
55:外ケース
56:軽量物出口
57:重量物出口
58:軽量物搬出コンベア
59:重量物搬出コンベア
61:第2磁選装置
62:ホッパ
63:コンベアベルト
64:永久磁石
65:外ケース
66:磁選ドラム
67:仕切板
68:仕切板
69:鉛弾出口
70:鉄類出口
71:土砂出口
72:鉛弾選別領域
73:土砂選別領域
74:鉄類選別領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛弾が混じった土砂を、鉛弾に近い粒径で鉛弾の粒径より若干大きい粒径以上の土砂と、それより小さい鉛弾を含む土砂とに分級する分級工程と、
上記鉛弾を含む土砂を風力を用いて鉛弾を含む土砂と含まない土砂に比重差選別する比重差選別工程と、
比重差選別された鉛弾を含む土砂について渦電流を利用して非鉄金属を選別する磁力選別工程とを行うことにより、
鉛弾を土砂から分別する土壌に分散された鉛弾を分別回収する鉛弾分別回収システムであって、
上記分級工程に、鉛弾と水分を含む土砂から水分を除去する水分除去工程と、上記水分除去した鉛弾混じりの土砂を解砕するとともに鉛弾から土砂を剥離させる解砕および剥離工程とを実施した土砂を導入することを特徴とする鉛弾分別回収システム。
【請求項2】
上記水分除去工程は、水分除去工程後の鉛弾と水分を含む土砂の含水率を10%以上15%以下となるよう含水率を調整する請求項1記載の鉛弾分別回収システム。
【請求項3】
上記水分除去工程は、鉛弾と水分を含む土砂を、コンベア上で搬送するときに熱線ランプで加熱することにより水分除去する請求項1または2記載の鉛弾分別回収システム。
【請求項4】
上記水分除去工程は、鉛弾と水分を含む土砂に対し、石灰を混入させて混合することにより石灰の発熱作用により水分除去する請求項1または2記載の鉛弾分別回収システム。
【請求項5】
上記解砕および剥離工程は、上記水分除去した鉛弾混じりの土砂についてバレル内で混錬して共ずりすることにより、解砕と剥離を同時に行うものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の鉛弾分別回収システム。
【請求項6】
鉛弾が混じった土砂を、鉛弾に近い粒径で鉛弾の粒径より若干大きい粒径以上の土砂と、それより小さい鉛弾を含む土砂とに分級する分級工程と、
上記鉛弾を含む土砂を風力を用いて鉛弾を含む土砂と含まない土砂に比重差選別する比重差選別工程と、
比重差選別された鉛弾を含む土砂について渦電流を利用して非鉄金属を選別する磁力選別工程とを行うことにより、
鉛弾を土砂から分別する土壌に分散された鉛弾を分別回収する鉛弾分別回収方法であって、
上記分級工程に、鉛弾と水分を含む土砂から水分を除去する水分除去工程と、上記水分除去した鉛弾混じりの土砂を解砕するとともに鉛弾から土砂を剥離させる解砕および剥離工程とを実施した土砂を導入することを特徴とする鉛弾分別回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−101832(P2011−101832A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256842(P2009−256842)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(506003727)株式会社コウキ (3)
【Fターム(参考)】