説明

銅ペースト組成物およびセラミック構造体

【課題】セラミック基板に対して優れた密着性を有するメタライズ配線を形成することができる銅ペースト組成物を提供することである。
【解決手段】少なくとも銅粉、非鉛ガラスフリットおよび酸化銅(I)を含有する銅ペースト組成物であって、前記銅粉は、軟化開始温度が互いに異なる第1の複数の銅粒子および第2の複数の銅粒子をそれぞれ複数含むとともに、前記第1の複数の銅粒子の軟化開始温度をT1(℃)、前記第2の複数の銅粒子の軟化開始温度をT2(℃)としたとき、T1−T2の値が200℃以上であり、前記非鉛ガラスフリットは、少なくともビスマス、ホウ素およびシリコンの各酸化物を含むとともに、軟化開始温度が400℃以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック配線基板のメタライズ配線等を形成するのに適した銅ペースト組成物および銅ペースト組成物をセラミック焼結体に塗布して焼成したセラミック構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック配線基板のメタライズ配線は、通常、金属ペースト組成物により形成されている。金属ペースト組成物は、金属粉およびガラスフリットを含有し、これに樹脂バインダーや溶剤を添加して混練することにより得られる。
【0003】
金属粉としては、電気伝導性および熱伝導性に優れ、かつ安価な銅粉を用いることが多い(例えば、特許文献1参照)。また、ガラスフリットは、セラミック基板に対するメタライズ配線の密着性を向上させるものであり、従来は鉛を含有するものが採用されていたが、鉛は有害であるため、近時は鉛を含有しない非鉛ガラスフリットへの代替が進んでいる。
【0004】
ここで、銅ペースト組成物をセラミック基板に印刷塗布して焼成することによりメタライズ配線を形成する場合には、銅が酸化されて導電性が低下するのを抑制するため、非酸素雰囲気中で焼成する。
しかし、非鉛ガラスフリットを含有する銅ペースト組成物を非酸素雰囲気中で焼成すると、メタライズ配線とセラミック基板との密着性が得られ難いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−106808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、セラミック基板に対して優れた密着性を有するメタライズ配線を形成することができる銅ペースト組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)少なくとも銅粉、非鉛ガラスフリットおよび酸化銅(I)を含有する銅ペースト組成物であって、前記銅粉は、軟化開始温度が互いに異なる第1の複数の銅粒子および第2の複数の銅粒子をそれぞれ複数含むとともに、前記第1の複数の銅粒子の軟化開始温度をT1(℃)、前記第2の複数の銅粒子の軟化開始温度をT2(℃)としたとき、T1−T2の値が200℃以上であり、前記非鉛ガラスフリットは、少なくともビスマス、ホウ素およびシリコンの各酸化物を含むとともに、軟化開始温度が400℃以下であることを特徴とする銅ペースト組成物。
(2)前記第1の複数の銅粒子の平均粒子径をD1(μm)、前記第2の複数の銅粒子の平均粒子径をD2(μm)としたとき、D1−D2の値が1.8μm以上である前記(1)記載の銅ペースト組成物。
(3)前記非鉛ガラスフリットは、ジルコニウム、クロム、アルミニウム、亜鉛およびナトリウムの各酸化物をさらに含む前記(1)または(2)記載の銅ペースト組成物。
(4)アクリル樹脂およびニトロセルロース樹脂を含む樹脂バインダーをさらに含有する前記(1)〜(3)のいずれかに記載の銅ペースト組成物。
(5)前記アクリル樹脂は、ガラス転移温度が互いに異なるとともに、いずれも(メタ)アクリル酸エステルからなるH成分とL成分とを、両成分の合計モル分率が80モル%以上となる割合で共重合させた共重合体からなり、前記H成分におけるホモポリマーのガラス転移温度をTgh(℃)、前記L成分におけるホモポリマーのガラス転移温度をTgl(℃)としたとき、Tghが100℃以上であるとともに、Tgh−Tglの値が50℃以上であり、前記共重合体に、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルおよびポリアルキレンオキサイド鎖含有(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種の極性官能基含有(メタ)アクリル酸エステルをさらに共重合させる前記(4)記載の銅ペースト組成物。
(6)チキソ剤をさらに含有する前記(1)〜(5)のいずれかに記載の銅ペースト組成物。
(7)前記チキソ剤は、水添ヒマシ油およびアマイドワックスを含む前記(6)記載の銅ペースト組成物。
(8)ポストファイア用である前記(1)〜(7)のいずれかに記載の銅ペースト組成物。
(9)非酸素雰囲気中、最高温度900〜1000℃で焼成される前記(1)〜(8)のいずれかに記載の銅ペースト組成物。
(10)前記(1)〜(9)のいずれかに記載の銅ペースト組成物を、セラミック焼結体に塗布して焼成し得られることを特徴とするセラミック構造体。
(11)多数個取りのセラミック配線基板である前記(10)記載のセラミック構造体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、非酸素雰囲気中で焼成してもセラミック基板に対して優れた密着性を有するメタライズ配線を形成することができるという効果がある。しかも、非鉛ガラスフリットを用いるので、環境や人体への悪影響を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の銅ペースト組成物は、少なくとも銅粉、非鉛ガラスフリットおよび酸化銅(I)を含有する。銅粉は、軟化開始温度が互いに異なる第1の複数の銅粒子および第2の複数の銅粒子をそれぞれ複数含んでいる。
【0010】
具体的に説明すると、第1の複数の銅粒子の軟化開始温度は、第2の複数の銅粒子の軟化開始温度より高く、第1の複数の銅粒子の軟化開始温度をT1(℃)、第2の複数の銅粒子の軟化開始温度をT2(℃)としたとき、T1−T2の値が200℃以上、好ましくは200〜300℃、より好ましくは200〜250℃である。これにより、セラミック基板に対して優れた密着性を有するメタライズ配線を形成することができる。この理由としては、以下の理由が推察される。
【0011】
すなわち、銅粉の軟化開始温度を低くすると、焼成時の流動性が向上してセラミック基板に対する密着性が得られ易くなるものの、メタライズ配線の強度が低下する。強度の低いメタライズ配線では、LED等の電子部品を信頼性よく実装することはできない。一方、銅粉の軟化開始温度を高くすると、メタライズ配線に強度を付与することはできるものの、焼成時の流動性が低下し、セラミック基板に対する密着性が得られ難い。銅粉に軟化開始温度の高い第1の複数の銅粒子と軟化開始温度の低い第2の複数の銅粒子とを含ませ、かつ両者の温度差を200℃以上にすると、第1の複数の銅粒子によってメタライズ配線に強度を付与することができ、かつ第2の複数の銅粒子によってセラミック基板に対する密着性が得られ、その結果、強度を維持しつつ、セラミック基板に対して優れた密着性を有するメタライズ配線が形成される。
【0012】
T1としては、500〜600℃であるのが好ましく、530〜570℃であるのがより好ましい。T2としては、270〜370℃であるのが好ましく、300〜340℃であるのがより好ましい。T1,T2は、第1,第2の複数の銅粒子の各々の平均粒子径または第1,第2の複数の銅粒子の製造時の反応条件、還元剤もしくは脱酸材等を変えることによって任意に調整することができる。本実施形態において、複数の銅粒子の軟化開始温度とは、TMA(Thermomechanical Analysis,熱機械分析)によって測定される値であり、複数の銅粒子によって作製された測定用タブレットに一定の荷重を掛けることによって測定される熱収縮開始温度のことである。TMAは、例えば還元雰囲気または窒素ガス150ml/min雰囲気において昇温しつつ測定用タブレットに一定の荷重を掛けて行なわれる。TMAにおける昇温速度は、例えば10℃/分である。測定用タブレットは、例えば、複数の銅粒子およびワックスを含む混合物に10ton/cm2のプレスを行なうことによって、直径5mm、高さ10mmの円柱形状に成形されたものである。
【0013】
また、第1の複数の銅粒子および第2の複数の銅粒子は、その平均粒子径を互いに異ならせるのが好ましい。具体的には、第1の複数の銅粒子の平均粒子径を第2の複数の銅粒子の平均粒子径より大きくするのが好ましい。これにより、軟化開始温度が高く平均粒子径が大きい第1の複数の銅粒子によってメタライズ配線に強度を付与することができる。また、軟化開始温度が低く平均粒子径が小さい第2の複数の銅粒子は、第1の複数の銅粒子の間に隙間なく充填されるようになり、この状態で溶融されるので、緻密なメタライズ配線を形成することができる。
【0014】
より具体的に説明すると、第1の複数の銅粒子の平均粒子径を第2の複数の銅粒子の平均粒子径より大きくすると、第1の複数の銅粒子の周囲に第2の複数の銅粒子が存在し易くなり、その結果、上述した第1,第2の複数の銅粒子を含むことによる効果が得られ易くなるとともに、メタライズ配線のバルク強度も向上する。また、第1,第2の複数の銅粒子が最密充填構造を形成し易く、それによりメタライズ配線が低抵抗化されるとともに、ボイドの発生も抑制することができる。これにより、後述するめっき工程でのめっき薬剤がメタライズ配線中に浸入し、含有するガラスをケミカルアタックすることに起因する密着性の低下を抑制する効果も期待できる。
【0015】
特に、第1の複数の銅粒子の平均粒子径をD1(μm)、第2の複数の銅粒子の平均粒子径をD2(μm)としたとき、D1−D2の値が1.8μm以上であるのが好ましく、1.8〜2.0μmであるのがより好ましい。これにより、上述した第1,第2の複数の銅粒子の平均粒子径を互いに異ならせることによる効果をより向上させることができる。
【0016】
第1の複数の銅粒子の平均粒子径としては、2〜5μmであるのが好ましく、2〜3μmであるのがより好ましい。第2の複数の銅粒子の平均粒子径としては、0.1〜1μmであるのが好ましく、0.1〜0.7μmであるのがより好ましい。
【0017】
第1の複数の銅粒子の割合は、第2の複数の銅粒子の割合より多いのが好ましい。具体的には、質量比で、第1の複数の銅粒子:第2の複数の銅粒子=9:1〜6:4であるのが好ましく、9:1〜7:3であるのがより好ましい。これにより、第1の複数の銅粒子の周囲に第2の複数の銅粒子が存在し易くなり、その結果、上述した第1,第2の複数の銅粒子を含むことによる効果が得られ易くなる。
【0018】
一方、非鉛ガラスフリットは、少なくともビスマス(Bi)、ホウ素(B)およびシリコン(Si)の各酸化物(Bi23,B23,SiO2)を含むものであり、いわゆるホウケイ酸ビスマス(Bi23−B23−SiO2)系ガラスである。Bi23,B23,SiO2は、いずれもガラスの骨格をなすものである。特にBi23は、ガラスの軟化開始温度を低下させる効果があり、セラミック基板との密着性を向上させる効果がある。また、B23は、ガラスの軟化開始温度を低下させる効果と、ガラスを安定化させる効果とがある。SiO2は、めっき薬剤等に対するガラスの耐薬品性や耐水性を向上させる効果がある。
【0019】
非鉛ガラスフリットは、酸化物換算で、Bi23を50〜94質量%、B23を5〜30質量%、SiO2を1〜50質量%、の割合で含むのが好ましい。この割合は、XRF(蛍光X線分析)およびICP(Inductively Coupled Plasma)分析で測定して得られる値である。
【0020】
また、非鉛ガラスフリットは、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)およびナトリウム(Na)の各酸化物(ZrO2,Cr23,Al23,ZnO,Na2O)をさらに含むのが好ましい。各酸化物のうち、ZrO2およびAl23は、耐薬品性を向上させる効果がある。Cr23,ZnOおよびNa2Oは、セラミック基板に対する密着性を向上させる効果がある。したがって、非鉛ガラスフリットが、これらの酸化物をさらに含むと、セラミック基板に対するメタライズ配線の密着性および耐薬品性が向上する。
【0021】
非鉛ガラスフリットがZrO2,Cr23,Al23,ZnO,Na2Oをさらに含む場合には、非鉛ガラスフリットは、酸化物換算で、Bi23を50〜93.1質量%、B23を5〜30質量%、SiO2を1〜50質量%の割合で含み、さらにZrO2を0.1〜10質量%、Cr23を0.1〜3質量%、Al23を0.1〜10質量%、ZnOを0.1〜10質量%、Na2Oを0.5〜10質量%の割合で含むのが好ましい。
【0022】
非鉛ガラスフリットとしては、酸化物換算で、Bi23を80質量%、B23を15質量%、SiO2を2質量%、ZrO2を0.7質量%、Cr23を0.6質量%、Al23を0.3質量%、ZnOを0.1質量%、およびNa2Oを1.3質量%の割合で含むものが好適である。この組成を有する非鉛ガラスフリットは、後述する実施例で使用したGF1に相当する。
【0023】
非鉛ガラスフリットの軟化開始温度としては、400℃以下、好ましくは300〜400℃、より好ましくは340〜400℃である。これにより、銅粉およびセラミック基板に対する濡れ性が向上し、非鉛ガラスフリットが銅粉およびセラミック基板に対して十分に浸透するようになるので、セラミック基板に対するメタライズ配線の密着性を向上させることができる。非鉛ガラスフリットの軟化開始温度は、非鉛ガラスフリットの組成や平均粒子径を変えることによって任意に調整することができる。
【0024】
非鉛ガラスフリットの割合は、銅粉100質量部に対して1〜20質量部であるのが好ましく、1〜10質量部であるのがより好ましい。非鉛ガラスフリットの平均粒子径としては、0.5〜5μmであるのが好ましい。
【0025】
酸化銅(I)は、亜酸化銅(Cu2O)であり、通常、粉末の状態で銅ペースト組成物に含有される。ここで、上述した非鉛ガラスフリットは、非酸素雰囲気中で焼成するとセラミック基板に対する密着性が発現し難い傾向にある。酸化銅(I)を含有する銅ペースト組成物を非酸素雰囲気中で焼成すると、焼成時に微量の酸素が酸化銅(I)から焼成雰囲気中に導入されるので、非酸素雰囲気中で焼成しても非鉛ガラスフリットがセラミック基板に対して密着性を発現するようになる。
【0026】
酸化銅(I)の割合は、銅粉100質量部に対して1〜20質量部であるのが好ましく、5〜15質量部であるのがより好ましい。酸化銅(I)の形態が粉末である場合の平均粒子径としては、1〜5μmであるのが好ましい。
【0027】
銅ペースト組成物は、カップリング剤をさらに含有するのが好ましい。カップリング剤は上述した銅粉と酸素とが接触するのを低減する効果を奏する。それゆえ、銅ペースト組成物がカップリング剤を含有すると、銅粉が酸化されるのを抑制することができる。
【0028】
カップリング剤としては、例えばビニルメトキシシラン,ビニルエトキシシラン,ビニルトリクロルシラン,クロロプロピルトリメトキシシラン,アミノプロピルトリメトキシシラン,アミノプロピルトリエトキシシラン,N−(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン,N−(アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン,グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン,グリシドキシプロピルトリエトキシシラン,p−スチリルトリメトキシシラン,(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン,メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン,メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン,メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン,メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン,アクリロキシプロピルトリメトキシシラン,メルカプトプロピルトリメトキシシラン,メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン,ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド,イソシアネートプロピルトリエトキシシラン,テトラメトキシシラン,テトラエトキシシラン,メチルトリメトキシシラン,メチルトリエトキシシラン,ジメチルトリエトキシシラン,フェニルトリエトキシシラン,ヘキサメチルジシラザン,ヘキシルトリメトキシシラン,デシルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;テトライソプロピルチタネート,イソプロピルトリイソステアロイルチタネート,イソプロピルトリオクタノイルチタネート,イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート,イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート,イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート,テトラノルマルブチルチタネート,ブチルチタネートダイマー,テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート,テトラメチルチタネート,チタンアセチルアセトネート,チタンテトラアセチルアセトネート,チタンエチルアセトアセテート,チタンオクタンジオレート,テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート,テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート,ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート,ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート,チタンラクテート,チタントリエタノールアミネート,ポリヒドロキシチタンステアレート等のチタンカップリング剤;ジルコニウムノルマルプロピレート,ジルコニウムノルマルブチレート,ジルコニウムモノアセチルアセトネート,ジルコニウムビスアセチルアセトネート,ジルコニウムテトラアセチルアセトネート,ジルコニウムモノエチルアセトアセテート,ジルコニウムアセテート,ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート,ジルコニウムモノステアレート等のジルコニウムカップリング剤;アルミニウムイソプロピレート,モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート,アルミニウムsec−ブチレート,アルミニウムエチレート,エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート,アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート),アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート,アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート),アルミニウムトリス(アセチルアセトネート),アルミニウムモノイソプロポキシモノオレオキシエチルアセトアセテート,環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート,環状アルミニウムオキサイドオクチレート,環状アルミニウムオキサイドステアレート等のアルミニウムカップリング剤等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。カップリング剤の割合は、銅粉100質量部に対して0.1〜5質量部程度が適当である。
【0029】
銅ペースト組成物は、樹脂バインダーをさらに含有するのが好ましい。樹脂バインダーとしては、アクリル樹脂およびニトロセルロース樹脂を含むものが好ましい。これにより、銅ペースト組成物に適度なチキソ性が付与されるので、銅ペースト組成物を微細な配線パターンでセラミック基板に印刷塗布することが可能になり、かつ均一な線幅でメタライズ配線を形成することができる。
【0030】
アクリル樹脂は、ガラス転移温度が互いに異なるとともに、いずれも(メタ)アクリル酸エステルからなるH成分とL成分とを後述する割合で共重合させた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(以下、「共重合体P」と言う。)からなるのが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを意味する。(メタ)アクリル酸エステル共重合体とは、アクリル酸エステルの共重合体、メタアクリル酸エステルの共重合体、またはアクリル酸エステルとメタアクリル酸エステルとの共重合体を意味する。
【0031】
共重合体Pは、H成分におけるホモポリマーのガラス転移温度をTgh(℃)、L成分におけるホモポリマーのガラス転移温度をTgl(℃)としたとき、Tghが100℃以上、好ましくは100〜120℃、より好ましくは100〜110℃であるとともに、Tgh−Tglの値が50℃以上であるのが好ましい。また、銅ペースト組成物のレオロジーを制御し易くする上で、Tgh−Tglの値は250℃以下であるのが好ましく、150℃以下であるのがより好ましく、100℃以下であるのがさらに好ましい。Tglとしては、10〜60℃程度が適当である。
【0032】
H成分としては、例えばアダマンチルアクリレート(Tgh=153℃),ジメチルアダマンチルアクリレート(Tgh=106℃),ビフェニルアクリレート(Tgh=110℃),シアノブチルアクリレート(Tgh=111〜123℃),シアノヘプチルアクリレート(Tgh=116℃),シアノメチルアクリレート(Tgh=160℃)等のアクリレート類;メチルメタクリレート(Tgh=105℃),アクリロニトリルメタクリレート(Tgh=110℃),アダマンチルメタクリレート(Tgh=141℃),ジメチルアダマンチルメタクリレート(Tgh=196℃),tert−ブチルメタクリレート(Tgh=118℃),シアノメチルフェニルメタクリレート(Tgh=128℃),シアノフェニルメタクリレート(Tgh=155℃),ジメチルブチルメタクリレート(Tgh=108℃),イソボニルメタクリレート(Tgh=110℃),メトキシカルボニルフェニルメタクリレート(Tgh=106℃),フェニルメタクリレート(Tgh=110℃),トリメチルシクロヘキシルメタクリレート(Tgh=125℃),キシレニルメタクリレート(Tgh=125〜167℃)等のメタクリレート類が挙げられる。熱分解性の観点からは、メタクリレートが好ましい。コスト面の観点からは、メチルメタクリレートが好ましい。
【0033】
L成分としては、Tgh−Tglの値が50℃以上である限り、H成分で例示したアクリレート類およびメタクリレート類から選ぶことができる。L成分においても、熱分解性の観点からはメタクリレートが好ましく、コスト面の観点からは、汎用系のメタクリレートであるブチルメタクリレート(Tgl=20℃)またはイソブチルメタクリレート(Tgl=48℃)等が好ましい。
【0034】
上述したH成分およびL成分は、これらを共重合させた共重合体Pに対して、H成分およびL成分の合計モル分率が80モル%以上となる割合で共重合させるのが好ましい。すなわち、共重合体Pを構成するモノマー単位の全モル数をPm、共重合体Pを構成するH成分モノマー単位のモル数をHm、共重合体Pを構成するL成分モノマー単位のモル数をLmとしたとき、(Hm+Lm)/Pm≧0.8を満たすような共重合組成比率にするのが好ましい。
【0035】
H成分およびL成分の各比率は、特に限定されるものではなく、所望とする銅ペースト組成物のレオロジーに合わせて適宜選択すればよい。銅ペースト組成物のレオロジーは、H成分が多い場合には弾性的性質が支配的になり、L成分が多い場合には粘性的性質が支配的になる傾向にある。粘弾性バランスの観点からは、HmとLmとのモル比は、Hm:Lm=7:3〜3:7であるのが好ましく、6:4〜4:6であるのがより好ましい。
【0036】
また、共重合体Pに、極性官能基含有(メタ)アクリル酸エステルをさらに共重合させるのが好ましい。これにより、樹脂バインダーの熱分解性を向上させることができるとともに、銅ペースト組成物に適度な粘度およびチキソ性を付与することができ、かつ粘度の経時安定性を維持することができる。
【0037】
極性官能基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルおよびポリアルキレンオキサイド鎖含有(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
【0038】
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばヒドロキシエチルアクリレート,ヒドロキシエチルメタクリレート,ヒドロキシブチルアクリレート,ヒドロキシブチルメタクリレート,ヒドロキシプロピルアクリレート,ヒドロキシプロピルメタクリレート,ジヒドロキシエチルアクリレート,ジヒドロキシエチルメタクリレート,ジヒドロキシプロピルアクリレート,ジヒドロキシプロピルメタクリレート,ジヒドロキシブチルアクリレート,ジヒドロキシブチルメタクリレート,(ポリ)エチレングリコールモノアクリレート,(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート,ジエチレングリコールモノアクリレート,ジエチレングリコールモノメタクリレート,グリセリンモノアクリレート,グリセリンモノメタクリレート等が挙げられる。
【0039】
ポリアルキレンオキサイド鎖含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばポリメチレンオキサイドモノアクリレート,ポリメチレンオキサイドモノメタクリレート,ポリエチレンオキサイドモノアクリレート,ポリエチレンオキサイドモノメタクリレート,ポリプロピレンオキサイドモノアクリレート,ポリプロピレンオキサイドモノメタクリレート等が挙げられる。
【0040】
例示したヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルおよびポリアルキレンオキサイド鎖含有(メタ)アクリル酸エステルの末端は、例えば水酸基末端にしたもの、またはメチル基、エチル基等のアルキル基でアルコキシ基末端にしたものが好適に使用される。具体例を挙げると、メトキシ(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート等が挙げられる。極性官能基含有(メタ)アクリル酸エステルの割合は、Pmに対して20モル%以下とするのが好ましい。
【0041】
上述した共重合体Pは、例えば溶液重合、懸濁重合、乳化重合等により製造することができ、取扱が容易であるという観点からは、溶液重合が好ましい。共重合体Pのより詳細な説明については、例えば特開2008−202041号公報等に記載されている。
【0042】
一方、樹脂バインダーが、上述したアクリル樹脂とともに、ニトロセルロース樹脂を含む場合には、スクリーン印刷等の印刷性に適した粘度やチキソ性等に表される銅ペースト組成物のレオロジー特性をさらに向上させることができる。
【0043】
ニトロセルロース樹脂は、通常、天然セルロースの水酸基を硝酸エステル化して得られるが、そのときの置換度(硝化度)または重合度によって後述する溶剤に対する溶解性や粘度が変わるため、溶剤に合わせてニトロセルロース樹脂の選定を行うのが望ましい。ニトロセルロース樹脂の割合は、アクリル樹脂およびニトロセルロース樹脂の総量に対して1〜20質量%であるのが好ましく、5〜15質量%であるのがより好ましい。
【0044】
上述したアクリル樹脂およびニトロセルロース樹脂以外の樹脂バインダーとしては、例えばアクリル系、ポリビニルアセタール系、セルロース系、ポリビニルアルコール系、ポリ酢酸ビニル系、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンカーボネート系等の重合体が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの重合体は一種のモノマーの単独重合体であってもよいし、異なる種類のモノマーの共重合体であってもよい。
【0045】
アクリル系の重合体を構成するモノマーとしては、例えばメチルアクリレート,メチルメタクリレート,エチルアクリレート,エチルメタクリレート,n−プロピルアクリレート,n−プロピルメタアクリレート,イソプロピルアクリレート,イソプロピルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,n−ブチルメタクリレート,イソブチルアクリレート,イソブチルメタクリレート,tert−ブチルアクリレート,tert−ブチルメタクリレート,シクロヘキシルアクリレート,シクロヘキシルメタクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,2−エチルヘキシルメタクリレート,イソノニルアクリレート,イソノニルメタクリレート,イソデシルアクリレート,イソデシルメタクリレート等が挙げられる。
【0046】
これらアクリル酸エステルまたはメタクリル酸アルキルエステルを主鎖とする共重合体には、例えばカルボン酸基,アルキレンオキサイド基,水酸基,グリシジル基,アミノ基またはアミド基を有するモノマーが共重合成分として含まれているものを好適に用いることができる。また、これらアクリル酸エステルやメタクリル酸アルキルエステルを主鎖とする共重合体には、他の共重合可能なアクリロニトリル,スチレン,エチレン,酢酸ビニル,n−ビニルピロリドン等を共重合させてもよい。
【0047】
カルボン酸基を有するモノマーとしては、例えばアクリル酸,メタクリル酸,マレイン酸,イタコン酸,フマル酸等が挙げられ、アルキレンオキサイド基を有するモノマーとしては、例えばメチレンオキサイド,エチレンオキサイド,プロピレンオキサイド等が挙げられ、水酸基を有するモノマーとしては、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート,2−ヒドロキシエチルメタクリレート,2−ヒドロキシブチルアクリレート,2−ヒドロキシブチルメタクリレート,ジエチレングリコールモノアクリレート,ジエチレングリコールモノメタクリレート,グリセリンモノアクリレート,グリセリンモノメタクリレート,トリメチロールプロパントリアクリレート,トリメチロールプロパントリメタクリレート等が挙げられ、グリシジル基を有するモノマーとしては、例えばグリシジルアクリレート,グリシジルメタクリレート等が挙げられ、アミノ基またはアミド基を有するモノマーとしては、例えばジメチルアミノエチルアクリレート,ジメチルアミノエチルメタクリレート,ジエチルアミノエチルアクリレート,ジエチルアミノエチルメタクリレート,N−tert−ブチルアミノエチルアクリレート,N−tert−ブチルアミノエチルメタクリレート,アクリルアミド,シクロヘキシルアクリルアミド,シクロヘキシルメタクリルアミド,N−メチロールアクリルアミド,ジアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0048】
ポリビニルアセタール系の重合体としては、例えばポリビニルブチラール,ポリビニルエチラール,ポリビニルプロピラール,ポリビニルオクチラール,ポリビニルフェニラール、またはこれらの誘導体等が挙げられる。
【0049】
セルロース系の重合体としては、例えばメチルセルロース,エチルセルロース,カルボキシメチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,酢酸セルロース等が挙げられる。
【0050】
樹脂バインダーの重量平均分子量としては、2万〜10万であるのが好ましい。これにより、スクリーン印刷等の印刷性に適した粘度、チキソ性または曳糸性を銅ペースト組成物に付与することができる。樹脂バインダーの割合は、銅粉100質量部に対して1〜20質量部であるのが好ましく、1〜10質量部であるのがより好ましい。
【0051】
なお、銅ペースト組成物における樹脂バインダーの組成および組成比については、例えばGC−Mass(ガスクロマトグラフ質量分析)またはNMR(核磁気共鳴分析)等を用いることにより測定可能である。また、上述したTghおよびTglについては、それぞれの原料モノマーから重合したホモポリマーについて、DSC(示差熱走査熱量計)等を用いることにより測定可能である。また、TghおよびTglは、DSC等の測定装置で実測する他に、Foxの式;1/Tg=w1/Tg1+w2/Tg2・・・(式中、w1,Tg1およびw2,Tg2は、各ホモポリマー成分1,2の重量分率およびガラス転移温度を示す。)を利用して計算することによっても求めることができる。
【0052】
銅ペースト組成物は、溶剤をさらに含有するのが好ましい。溶剤としては、高沸点溶剤が好適であり、該高沸点溶剤としては、例えばテルピネオール,ジヒドロテルピネオール,エチルカルビトール,ブチルカルビトール,カルビトールアセテート,ブチルカルビトールアセテート,ジイソプロピルケトン,メチルセルソルブアセテート,セルソルブアセテート,ブチルセルソルブ,ブチルセルソルブアセテート,シクロヘキサノン,シクロヘキサノール,イソホロン,シプロピレングリコール,プロピレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート,ブチルカルビトールメチル−3−ヒドロキシヘキサノエート,トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート,パイン油,ミネラルスピリット等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0053】
溶剤の選択は重要であり、上述した樹脂バインダーとの相溶性によって銅ペースト組成物のレオロジカルな性質が左右される。一般には、樹脂バインダーと溶剤とのSP値(Solubility Parameter;溶解度パラメーター)の相違が大きいほど、銅ペースト組成物は高粘度化または高チキソ化する傾向にある。また、樹脂バインダーの溶剤に対する溶解性が高いと、取扱が容易になるとともに、銅ペースト組成物の粘度の経時安定性が維持され易くなる。溶剤の割合は、銅粉100質量部に対して1〜20質量部であるのが好ましく、10〜20質量部であるのがより好ましい。
【0054】
銅ペースト組成物は、チキソ剤をさらに含有するのが好ましい。チキソ剤としては、例えば水添ヒマシ油、アマイドワックス、酸化ポリエチレン系、多糖類脂肪族エステル系等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0055】
例示したチキソ剤のうち、特に水添ヒマシ油およびアマイドワックスを含むものが好ましい。これにより、銅ペースト組成物に適度なチキソ性が付与されるので、銅ペースト組成物を微細な配線パターンでセラミック基板に印刷塗布することが可能になり、かつ均一な線幅でメタライズ配線を形成することができる。
【0056】
チキソ剤の割合は、銅粉100質量部に対して0.1〜5質量部であるのが好ましく、0.1〜2質量部であるのがより好ましい。チキソ剤として水添ヒマシ油およびアマイドワックスを含む場合には、水添ヒマシ油とアマイドワックスとの割合は、質量比で、水添ヒマシ油:アマイドワックス=9:1〜1:9であるのが好ましく、9:1〜5:5であるのがより好ましく、8:2〜6:4であるのがさらに好ましい。
【0057】
銅ペースト組成物には、可塑剤または滑剤を添加してもよい。可塑剤または滑剤としては、例えばジメチルフタレート,ジブチルフタレート,ジ−2−エチルヘキシルフタレート,ジヘプチルフタレート,ジ−n−オクチルフタレート,ジイソノニルフタレート,ジイソデシルフタレート,ブチルベンジルフタレート,エチルフタリルエチルグリコレート,ブチルフタリルブチルグリコレート等のフタル酸エステル系;ジ−2−エチルヘキシルアジペート,ジブチルジグリコールアジペート等の脂肪族エステル系;ジエチレングリコール,トリエチレングリコール,ポリエチレングリコール,ジエチレングリコールメチルエーテル,トリエチレングリコールメチルエーテル,ジエチレングリコールエチルエーテル,ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル,トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル,エチレングリコールフェニルエーテル,エチレングリコール−n−アセテート,ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル,ジエチレングリコールモノビニルエーテル等のエチレングリコール系;ジプロピレングリコール,トリプロピレングリコール,ポリプロピレングリコール,ジプロピレングリコールメチルエーテル,トリプロピレングリコールメチルエーテル,ジプロピレングリコールモノエチルエーテル,ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル,トリプロピレングリコール−n−ブチルエーテル,プロピレングリコールフェニルエーテル,エチレングリコールベンジルエーテル,エチレングリコールイソアミルエーテル等のプロピレングリコール系;グリセリン,ジグリセリン,ポリグリセリン等のグリセリン系等が挙げられる。可塑剤または滑剤の割合は、銅粉100質量部に対して0.1〜10質量部程度が適当である。
【0058】
銅ペースト組成物には、分散剤を添加してもよい。分散剤としては、例えばポリオキシエチレングリコール,ポリオキシプロピレングリコール,ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル,グリセリン脂肪酸部分エステル,ソルビタン脂肪酸部分エステル,ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル,ポリオキシエチレンソルビタン酸脂肪部分エステル,ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボキシレート,脂肪酸アルカノールアミド,ポリオキシアルキレンアルキルアミン,アルキルジアルキルアミンオキシド等の非イオン性界面活性剤;アルキルアミン塩,ジアルキルアミン塩,第4級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤;エーテルカルボン酸塩,ジアルキルスルホこはく酸塩,アルカンスルホン酸塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩,アルキルナフタレンスルホン酸塩,ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩,アルキル燐酸エステル塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩,脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩,アルキル硫酸エステル塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩,脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩,アシル化アミノ酸塩等の陰イオン性界面活性剤;ベタイン型両性界面活性剤,アミノ酸型両性界面活性剤等の両性界面活性剤;ポリビニルアルコール,デンプン,デンプン誘導体,カルボキシメチルセルロース,メチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体,ポリアクリル酸ソーダ等の高分子型乳化分散剤等が挙げられる。分散剤の割合は、銅粉100質量部に対して固形分換算で0.1〜1質量部程度が適当である。
【0059】
上述した本発明にかかる銅ペースト組成物は、セラミック配線基板のメタライズ配線等を形成するのに適したものである。ここで、メタライズ配線は、所定の配線パターンでセラミック基板上に位置精度よく形成されることが要求される。この要求は、1枚のセラミック配線基板からLED等の電子部品を実装した実装基板を多数製造する多数個取りのセラミック配線基板において顕著である。
【0060】
メタライズ配線の形成は、通常、コファイア(co−fired)方式か、ポストファイア(post−fired)方式のいずれかにより行われる。コファイア方式は、セラミックグリーンシート上に銅ペースト組成物を印刷塗布し、これらを同時焼成してセラミック基板上にメタライズ配線を形成するものである。コファイア方式によれば、同時焼成することにより、セラミック配線基板を効率よく得ることができるものの、焼成時において、セラミックグリーンシートの収縮バラツキにより、セラミック配線基板上に形成されるメタライズ配線に位置ズレが発生し易い。
【0061】
一方、ポストファイア方式は、予めセラミックグリーンシートを焼成してセラミック焼結体であるセラミック基板を得、このセラミック基板上に銅ペースト組成物を印刷塗布して焼成することにより、セラミック基板上にメタライズ配線を形成するものである。したがって、ポストファイア方式によれば、一度焼成して収縮したセラミック基板上に、銅ペーストを印刷塗布して形成することにより、焼成時における収縮バラツキによる位置ずれを抑制することができ、メタライズ配線を所定の配線パターンでセラミック基板上に位置精度よく形成することができる。本発明にかかる銅ペースト組成物は、このポストファイア用の銅ペースト組成物として好適に用いることができるものである。
【0062】
ポストファイア方式について、より具体的に説明すると、まず、セラミックグリーンシートを作製する。セラミックグリーンシートの作製は、まず、原料粉に対して所望により焼結助剤を添加して混合し、混合物を得る。原料粉としては、例えばセラミック粉、ガラスフリット等が挙げられる。
【0063】
セラミック粉としては、例えば金属酸化物粒子、非金属酸化物粒子、非酸化物粒子等が挙げられる。セラミック粉の具体例としては、Li,K,Mg,B,Al,Si,Cu,Ca,Br,Ba,Zn,Cd,Ga,In,ランタノイド,アクチノイド,Ti,Zr,Hf,Bi,V,Nb,Ta,W,Mn,Fe,Co,Ni等の元素の炭化物、窒化物、ホウ化物、硫化物等が挙げられる。
【0064】
セラミック粉の他の例としては、SiO2,Al23,ZrO2およびTiO2から選ばれる少なくとも1種とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物等が挙げられる。セラミック粉のさらに他の例としては、ZnO,MgO,MgAl24,ZnAl24,MgSiO3,Mg2SiO4,Zn2SiO4,Zn2TiO4,SrTiO3,CaTiO3,MgTiO3,BaTiO3,CaMgSi26,SrAl2Si28,BaAl2Si28,CaAl2Si28,Mg2Al4Si518,Zn2Al4Si518,AlN,Si34,SiC,Al23およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物、すなわちスピネル,ムライト,コージェライト等が挙げられる。セラミック粉の平均粒子径としては、1〜10μm程度が適当である。
【0065】
ガラスフリットを構成するガラスとしては、例えばSiO2−B23系ガラス,SiO2−B23−Al23系ガラス,SiO2−B23−Al23−MO系ガラス(式中、Mは、Ca、Sr、Mg、BaまたはZnを示す。),SiO2−Al23−M1O−M2O系ガラス(式中、M1およびM2は、それぞれ同一または異なるものであって、Ca、Sr、Mg、BaまたはZnを示す。),SiO2−B23−Al23−M1O−M2O系ガラス(式中、M1およびM2は、上記と同じである。),SiO2−B23−M32O系ガラス(式中、M3は、Li、NaまたはKを示す。),SiO2−B23−Al23−M32O系ガラス(式中、M3は、上記と同じである。),Pb系ガラス,Bi系ガラス等が挙げられる。
【0066】
また、ガラスの他の例としては、アルカリ金属酸化物,アルカリ土類金属酸化物および希土類酸化物から選ばれる少なくとも1種を含有するガラス等が挙げられる。例示したこれらのガラスは、焼成処理することによって非晶質ガラスとなるものを含む。また、例示したこれらのガラスは、焼成処理することによって、リチウムシリケート,クォーツ,クリストバライト,コージェライト,ムライト,アノーサイト,セルジアン,スピネル,ガーナイト,ウイレマイト,ドロマイト,またはペタライトの結晶を析出する結晶化ガラスを含んでもよく、これらの置換誘導体の結晶を析出する結晶化ガラスを含んでもよい。ガラスフリットの平均粒子径としては、1〜5μm程度が適当である。
【0067】
焼結助剤としては、例えばB23,ZnO,MnO2,アルカリ金属酸化物,アルカリ土類金属酸化物,希土類金属酸化物等が挙げられる。
【0068】
上述のようにして得た混合物に、樹脂バインダー、可塑剤等の添加剤、溶剤等を加えてスラリーを得る。セラミックグリーンシートの樹脂バインダーとしては、例えばアクリル系、ポリビニルアセタール系、セルロース系、ポリビニルアルコール系、ポリ酢酸ビニル系、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンカーボネート系等の重合体を用いることができ、これらは銅ペースト組成物において例示したものと同じものが挙げられる。樹脂バインダーの割合は、原料粉100質量部に対して1〜20質量部であるのが好ましく、5〜15質量部であるのがより好ましい。
【0069】
可塑剤としては、銅ペースト組成物において例示したものと同じ可塑剤の他、フタル酸ジブチル等が挙げられる。可塑剤の割合は、原料粉100質量部に対して1〜20質量部であるのが好ましく、1〜10質量部であるのがより好ましい。
【0070】
溶剤としては、例えばトルエン等が好適であるが、本発明はこれに限定されるものではない。溶剤の割合は、原料粉100質量部に対して50〜150質量部程度が適当である。
【0071】
次いで、得られたスラリーを、例えばドクターブレード法、圧延法、プレス法等の成形法によって所定の厚さに成形し、70〜100℃の雰囲気温度で1時間程度かけて乾燥し、セラミックグリーンシートを得る。セラミックグリーンシートの厚さは、特に限定されるものではなく、用途に応じて所望の厚さに調製すればよい。また、セラミックグリーンシートは、その複数枚を積層してセラミックグリーンシート積層体としてもよい。
【0072】
次いで、得られたセラミックグリーンシートを、例えばAl23系セッター等に載置し、窒素−水素−水蒸気等の混合雰囲気の焼成炉内において、所定の温度プロファイルで脱バインダーする。その後、最高温度1500〜1600℃で焼成を行い、セラミック基板を得る。
【0073】
得られたセラミック基板上に銅ペースト組成物を所定の配線パターンで印刷塗布する。印刷は、例えばスクリーン印刷法等が好適である。次いで、70〜90℃の雰囲気温度で1時間程度かけて乾燥した後、セラミック基板を、例えばAl23系セッター等に載置し、非酸素雰囲気中の焼成炉内において、所定の温度プロファイルで脱バインダーする。
【0074】
非酸素雰囲気としては、酸素が実質存在しない雰囲気である限り、特に限定されるものではなく、例えば窒素雰囲気、窒素−水素の混合雰囲気、窒素−水蒸気の混合雰囲気等が挙げられる。
【0075】
その後、最高温度900〜1000℃で焼成を行い、セラミック基板上にメタライズ配線が形成されたセラミック配線基板を得る。焼成の最高温度が900℃未満であると、銅粒子やガラス成分の焼結が不十分となり、メタライズ配線の密着強度の低下やメタライズ配線中にボイドが多発し、めっき工程でのめっき薬剤がメタライズ配線中に浸入し、含有するガラスをケミカルアタックすることに起因する密着性の低下を招くおそれがある。また、焼成の最高温度が1000℃を超えると、銅やガラスが過焼結され、メタライズ配線の変形を招くおそれがある。また、メタライズ配線とセラミック基板との界面付近において、密着に寄与するガラス成分が軟化しすぎて流出し、密着性が低下するおそれもある。メタライズ配線の厚さやパターンについては、特に限定されるものではなく、用途に応じて所望の厚さおよびパターンに形成すればよい。
【0076】
得られたセラミック配線基板のメタライズ配線は、上述の通り、銅を含有する。この銅が酸化されるのを抑制する上で、メタライズ配線には、めっき層を形成するのが好ましい。めっき層の形成法としては、例えば電解めっき法、無電解めっき法等が挙げられる。めっき層の層構成や厚さとしては、特に限定されるものではなく、所望の層構成および厚さを採用することができる。具体例を挙げると、厚さ1〜2μm程度のニッケル(Ni)めっき層と、厚さ0.1〜1μm程度の金(Au)めっき層とをこの順にメタライズ配線上に形成してなる2層構成のめっき層等が挙げられる。なお、一般的にガラス成分および銅粒子の耐酸性および耐アルカリ性は十分ではないため、可能な限り、中性付近での薬液を使用するとともに、めっき工程時間も短縮する工夫を行うことで密着性の低下をより抑制することが可能となる。
【0077】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0078】
[実施例1〜21および比較例1〜14]
<セラミック配線基板の作製>
(セラミック基板の作製)
まず、セラミック基板を作製した。セラミック基板の作製に使用した材料は、次の通りである。
原料粉:SiO2−B23−Al23−CaO−ZnO系ガラスからなる平均粒子径3.5μmのガラスフリットを用いた。
樹脂バインダー:重量平均分子量40万のアクリル系重合体を用いた。
可塑剤:フタル酸ジブチルを用いた。
溶剤:トルエンを用いた。
【0079】
原料粉100質量部に対して、樹脂バインダーを11質量部、可塑剤を5質量部、および溶剤を80質量部の割合で添加し、ボールミルで36時間混合してスラリーを得た。このスラリーをドクターブレード法で成形し、温風乾燥炉を用いて80℃で1時間乾燥させ、厚さ300μmのセラミックグリーンシートを得た。
【0080】
このセラミックグリーンシートをAl23系セッターに載置し、窒素−水素−水蒸気の混合雰囲気の焼成炉内において、所定の温度プロファイルで脱バインダーした。その後、最高温度1500〜1600℃で焼成を行い、厚さ250μmのセラミック基板を得た。
【0081】
(銅ペースト組成物の調製)
次に、銅ペースト組成物を調製した。銅ペースト組成物の調製に使用した材料は、次の通りである。
【0082】
銅粉:表1に示すCu1〜Cu4を用いた。なお、表1中、T1は第1の複数の銅粒子の軟化開始温度、T2は第2の複数の銅粒子の軟化開始温度をそれぞれ示している。複数の銅粒子の軟化開始温度とは、TMA(Thermomechanical Analysis,熱機械分析)によって測定される値であり、複数の銅粒子によって作製された測定用タブレットに一定の荷重を掛けることによって測定される熱収縮開始温度のことである。TMAは、例えば還元雰囲気または窒素ガス150ml/min雰囲気において昇温しつつ測定用タブレットに一定の荷重を掛けて行なわれる。TMAにおける昇温速度は、例えば10℃/分である。測定用タブレットは、例えば、複数の銅粒子およびワックスを含む混合物に10ton/cm2のプレスを行なうことによって、直径5mm、高さ10mmの円柱形状に成形されたものである。また、D1は第1の複数の銅粒子の平均粒子径、D2は第2の複数の銅粒子の平均粒子径をそれぞれ示している。
【表1】

【0083】
非鉛ガラスフリット:表2に示すGF1〜GF15を用いた。
【表2】

【0084】
酸化銅(I):平均粒子径2.5μmの粉末の酸化銅(I)を用いた。
樹脂バインダー:表3に示すRB1〜RB13を用いた。
【表3】

【0085】
表3中、組成の欄において、MMAはメチルメタクリレート、BMAはブチルメタクリレート、MPEGMAはメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、NCはニトロセルロース樹脂、PEGMAはポリエチレングリコールモノメタクリレート、GLMAはグリセリンモノメタクリレート、2HEMAは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、MAAはメタクリル酸、IBMAはイソブチルメタクリレート、EMAはエチルメタクリレート、2EHMAは2−エチルヘキシルメタクリレートをそれぞれ示す。
【0086】
また、組成の欄において、「−co−」は共重合体組成(copolymer)を示し、数値は構成比率(モル比)を示す。ガラス転移温度は、H成分のガラス転移温度をTgh、L成分のガラス転移温度をTglとして記載した。TghおよびTglは、それぞれの原料モノマーから重合したホモポリマーについて、DSCを用いて測定した値である。H成分およびL成分は、式:(Hm+Lm)/Pm≧0.8を満たすものを記載した。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0087】
溶剤:テルピネオールとブチルカルビトールアセテートとを質量比で5:5の割合で混合した混合溶剤を用いた。
チキソ剤:表4に示すTA1〜TA5を用いた。
【表4】

【0088】
上述した銅粉、非鉛ガラスフリット、樹脂バインダーおよびチキソ剤を、表5,6に示す組み合わせで用いて銅ペースト組成物を調製した。具体的には、銅粉100質量部に対して、非鉛ガラスフリットを5質量部、酸化銅(I)を10質量部、アクリル樹脂(樹脂バインダー)を5質量部、ニトロセルロース樹脂(樹脂バインダー)を0.5質量部、溶剤を15質量部、およびチキソ剤を0.8質量部の割合でそれぞれ混合した。その後、銅粉および樹脂バインダー等の凝集体が目視で観察されなくなるまで3本ロールミルで混合し、銅ペースト組成物を得た。
【0089】
(セラミック配線基板の作製)
上記で得たセラミック基板および銅ペースト組成物を用いてセラミック配線基板を作製した。まず、上記で得たセラミック基板上に銅ペースト組成物を所定の配線パターンA,Bでスクリーン印刷法により印刷塗布した。配線パターンA,Bは、次の通りである。
【0090】
配線パターンA:焼成後の目標設計値を下記の値とした配線パターンである。
形状:1mm×1mmの正方形
膜厚:12μm
【0091】
配線パターンB:焼成後の目標設計値を下記の値とした微細な配線パターンである。
線幅:50μm
膜厚:12μm
【0092】
次いで、温風乾燥炉を用いて80℃で1時間乾燥させた後、セラミック基板をAl23系セッターに載置し、非酸素雰囲気中の焼成炉内において、所定の温度プロファイルで脱バインダーした。非酸素雰囲気としては、窒素−水蒸気の混合雰囲気を採用した。その後、最高温度950℃で焼成を行い、セラミック配線基板を得た。
【0093】
得られたセラミック配線基板のメタライズ配線には、常法によりめっき層を形成した。めっき層には、厚さ1.5μmのNiめっき層と、厚さ0.2μmのAuめっき層とをこの順にメタライズ配線上に形成してなる2層構成のめっき層を採用した。
【0094】
<評価>
得られたセラミック配線基板について、密着強度および配線線幅を評価した。各評価方法を以下に示すとともに、その結果を表5,6に併せて示す。
【0095】
(密着強度)
密着強度は、配線パターンAのメタライズ配線が形成されたセラミック配線基板を用いて評価した。具体的には、鉛フリー半田を使用して180°引張試験を実施することにより、配線パターンAのメタライズ配線と、セラミック基板との密着強度を測定した。試験条件は、次の通りである。
引張試験機:(株)エー・アンド・デイ製の「STA−1150」
引っ張り速度:5mm/分
鉛フリー半田:厚さ2〜3mm
測定回数:3回
なお、表1中の値は、n=3の平均値である。
【0096】
評価条件は、次のように設定した。
◎:密着強度が3kgf/mm2以上であった。
○:密着強度が2kgf/mm2以上3kgf/mm2未満であった。
×:密着強度が2kgf/mm2未満であった。
【0097】
(配線線幅)
配線線幅は、配線パターンBのメタライズ配線が形成されたセラミック配線基板を用いて評価した。具体的には、めっき層を形成した配線パターンBのメタライズ配線の線幅を、形状測定顕微鏡((株)キーエンス製の「VK8510」)で計測した。計測は、任意に選定した5箇所で行い、その平均値を表1に示した。メタライズ配線のめっき層を含んだ目標設計値は、線幅50±5μmである。
【0098】
【表5】

【0099】
【表6】

【0100】
表5,6から明らかなように、実施例1〜21では、非酸素雰囲気中で焼成してもセラミック基板に対して優れた密着性を有するメタライズ配線が形成されているのがわかる。非鉛ガラスフリットがZrO2,Cr23,Al23,ZnO,Na2Oをさらに含む実施例1〜12,16〜21では、特に優れた密着強度を示した。また、実施例1〜15では、均一な線幅でメタライズ配線を形成できており、良好な微細印刷性を示した。
【0101】
一方、T1−T2の値が200℃未満の比較例1〜3、および非鉛ガラスフリットの軟化開始温度が400℃を超える比較例4〜14は、いずれも密着強度に劣る結果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも銅粉、非鉛ガラスフリットおよび酸化銅(I)を含有する銅ペースト組成物であって、
前記銅粉は、軟化開始温度が互いに異なる第1の複数の銅粒子および第2の複数の銅粒子を含むとともに、前記第1の複数の銅粒子の軟化開始温度をT1(℃)、前記第2の複数の銅粒子の軟化開始温度をT2(℃)としたとき、T1−T2の値が200℃以上であり、
前記非鉛ガラスフリットは、少なくともビスマス、ホウ素およびシリコンの各酸化物を含むとともに、軟化開始温度が400℃以下であることを特徴とする銅ペースト組成物。
【請求項2】
前記第1の複数の銅粒子の平均粒子径をD1(μm)、前記第2の複数の銅粒子の平均粒子径をD2(μm)としたとき、D1−D2の値が1.8μm以上である請求項1記載の銅ペースト組成物。
【請求項3】
前記非鉛ガラスフリットは、ジルコニウム、クロム、アルミニウム、亜鉛およびナトリウムの各酸化物をさらに含む請求項1または2記載の銅ペースト組成物。
【請求項4】
アクリル樹脂およびニトロセルロース樹脂を含む樹脂バインダーをさらに含有する請求項1〜3のいずれかに記載の銅ペースト組成物。
【請求項5】
前記アクリル樹脂は、ガラス転移温度が互いに異なるとともに、いずれも(メタ)アクリル酸エステルからなるH成分とL成分とを、両成分の合計モル分率が80モル%以上となる割合で共重合させた共重合体からなり、
前記H成分におけるホモポリマーのガラス転移温度をTgh(℃)、前記L成分におけるホモポリマーのガラス転移温度をTgl(℃)としたとき、Tghが100℃以上であるとともに、Tgh−Tglの値が50℃以上であり、
前記共重合体に、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルおよびポリアルキレンオキサイド鎖含有(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種の極性官能基含有(メタ)アクリル酸エステルをさらに共重合させる請求項4記載の銅ペースト組成物。
【請求項6】
チキソ剤をさらに含有する請求項1〜5のいずれかに記載の銅ペースト組成物。
【請求項7】
前記チキソ剤は、水添ヒマシ油およびアマイドワックスを含む請求項6記載の銅ペースト組成物。
【請求項8】
ポストファイア用である請求項1〜7のいずれかに記載の銅ペースト組成物。
【請求項9】
非酸素雰囲気中、最高温度900〜1000℃で焼成される請求項1〜8のいずれかに記載の銅ペースト組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の銅ペースト組成物を、セラミック焼結体に塗布して焼成し得られることを特徴とするセラミック構造体。
【請求項11】
多数個取りのセラミック配線基板である請求項10記載のセラミック構造体。

【公開番号】特開2012−54113(P2012−54113A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196140(P2010−196140)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】