説明

銅微粒子分散液の製造方法

【課題】電解槽中で分散安定性に優れかつデンドロイト化が抑制された銅微粒子を速やかに回収して、分散液に分散する、銅微粒子分散液の製造方法を提供する。
【解決手段】銅イオン、アルカリ金属イオン、及び分散媒が溶解している還元反応水溶液4において、銅イオンの電解還元反応により一次粒子の粒子径が1〜500nmの範囲にある銅微粒子をカソード2表面近傍に析出し(工程1)、前記カソード2表面近傍に析出した銅微粒子を、該掻き取り用ブレード5とカソード2間の相対移動速度が該還元反応水溶液4における銅微粒子の沈降速度よりも遅い速度で掻き取とって、銅微粒子を沈降させてスラリーで濃縮し、該スラリーを抜き出して洗浄液で洗浄して回収する工程(工程2)、及び回収した銅微粒子を分散液に分散する工程(工程3)を含む、銅微粒子分散液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅イオンの電解還元反応により一次粒子の粒子径が1〜500nmの範囲にある銅微粒子分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属微粒子は、融点の低下、触媒活性、磁気特性、比熱特性、光学特性の変化等を発現することから、電子材料、触媒材料、蛍光体材料、発光体材料等の分野で広く用いられている。特に、電子材料用の導電性ペーストのような配線形成材料として、プリント配線、半導体の内部配線、プリント配線板と電子部品との接続等に利用されている。最近では、インクジェットプリンターを用いて金属微粒子を含有するインクにより配線パターンの印刷を行い、低温焼成して配線を形成する技術が着目され、研究開発が進められている。しかし、インクジェットプリンターの場合、インクに含まれる金属微粒子は、インク中において長期間分散性を保つことが要請されており、そのため金属微粒子のより微細化が必要となっている。
【0003】
下記特許文献1には、銅(I)アンミン錯イオンを含む水溶液に酸を加えてpHを低下させ、銅(I)イオン(Cu)を、銅(II)イオン(Cu2+)と金属銅(Cu)とに不均化分解反応させることによって、銅を析出させることを特徴とする銅微粒子製造方法が記載されている。特許文献2には、塩化銅(II)を添加して成るデキストリン・銅水溶液に、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを加えて銅イオンを還元・析出する銅ナノ粒子製造方法が開示されている。
特許文献3には、10〜100nm程度の粒子径の銅ナノ粒子を提供するために、有機溶媒中で、該有機溶媒に溶解可能な銅を構成元素とする化合物と、多価アルコールと、保護剤とを含む組成液を非酸化条件下で加熱することによって還元された銅ナノ粒子の形成が開示されている。
特許文献4には、銅の酸化物、水酸化物又は塩をポリエチレングリコール又はエチレングリコール溶液中で加熱還元して銅微粒子を得る方法において、核生成のためのパラジウムイオンを添加すると共に、分散剤としてポリエチレンイミンを添加し、パラジウムを含有する粒子径50nm以下の銅微粒子を得る方法が記載されている。
【0004】
特許文献5には、カソード上に析出させた平均粒径5〜50μm程度の銅粒子を剥離して回収する手段として、ブラシ、掻き取り、及び逆電流を用いる手段、カソードを電解還元溶液の水面上に持ち上げて還元反応水溶液や水を噴霧する手段、及び電流付近で乱流を発生する手段が開示されている。
特許文献6には、電解採取により金属粉末を生成するための装置として、振動器、衝撃デバイス、パルス流動システム、パルス電力源、超音波発生器、気泡発生器、またはそれらの組み合わせた装置が開示されている。
また、特許文献6には、電解採取用電解槽の運転電流密度は、銅粉末生成物の形態に影響し、一般に、電流密度が高くなると、銅粉末粒径が縮小することは記載されているが具体的な粒子径については開示されていない。
特許文献7には、電解採取により銅粉末を生成するプロセスが開示されている。
特許文献7の請求項8には、分粒段階において、スラリー流中の少なくとも一部の粗大銅粉末粒子(150μmよりも大きな銅粉末粒子)を、該スラリー流中の少なくとも一部の微細な銅粉末粒子(約45μm小さな銅粉末粒子)から分離する工程を包含するプロセスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−363618号公報
【特許文献2】特開2003−213311号公報
【特許文献3】特開2005−281781号公報
【特許文献4】特開2005−330552号公報
【特許文献5】特表2002−502915号公報
【特許文献6】特表2008−507625号公報
【特許文献7】特表2008−507626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の銅微粒子製造方法では不均化分解反応によるので、反応収量が必ずしも十分といえない。特許文献2の銅ナノ粒子製造方法にはAu、Ag、Pd、Pt、Ru、Rh等の貴金属の場合は、加熱のみで還元反応が生じるために、還元剤を使用せずに金属ナノ粒子を合成することが可能であり、還元剤の除去が不要であると記載されている。一方、Cu、Co、Ni等は、加熱のみでは還元され難いために、還元剤を使用することが好ましいと記載されているが、還元反応後に還元剤を効率よく除去して高純度の銅微粒子を合成する方法は開示されていない。
【0007】
特許文献3に記載の銅ナノ粒子の形成法では、銅化合物(例えばアセチルアセトナト銅錯体)と還元剤として機能しうる多価アルコールで金属イオンを還元する方法が適用されるが、還元反応後にポリビニルピロリドン等の分散剤で覆われた状態の銅ナノ粒子の精製法については開示されていない。特許文献4に記載の銅微粒子製造方法では、ポリエチレングリコール又はエチレングリコールを用いて得られる銅微粒子の分散性を向上しているが、得られる微粒子のデンドライト化を抑制する対策が開示されていない。また、パラジウムイオンの添加が必要であるという問題点もある。
特許文献5〜7には、比較的大きな粒径(5μm以上)を有する金属微粒子をカソード表面から回収する方法について記載されているが、ナノサイズ(ここでナノサイズとは粒子径が1μm以下のものをいう)の金属微粒子をカソード表面から回収する方法については開示されていない。
また、特許文献5〜7には、カソード近傍から銅微粒子を回収するのに、逆電流を用いる手段、還元反応水溶液や水を噴霧する手段、及び電流付近で乱流を発生する等の手段が記載されているが、本発明でカソード表面近傍に形成された銅微粒子の剥離、回収技術に特許文献5〜7に開示された手段を採用すると、銅微粒子の二次凝集塊が崩壊して電解水溶液中に広く分散し、銅微粒子の沈降速度が極めて遅くなり、銅微粒子スラリーとしての回収が困難になる。
従って、一次粒子の粒子径が小さく、分散安定性に優れかつデンドロイト化が抑制された銅微粒子を、簡便な方法でかつ大量に生成することのできる製造方法は未だ確立されていない。
また、デンドロイト化が抑制された粒子径がナノサイズの銅微粒子がカソード近傍に析出されている場合に、これらの微粒子をスラリーとして回収し、回収された銅微粒子を分散溶液に分散させてインクジェット用のインキとして使用すると有用である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、有機物分散媒とアルカリ金属イオンとの存在する還元反応水溶液で銅イオンの電解還元反応を行うと得られる粒子径1〜500nmの銅微粒子のデンドライト化が抑制された銅微粒子をカソード表面近傍に析出させ、更に該カソード表面近傍に析出した銅微粒子を特定の速度で掻き取ることにより、該銅微粒子の早い沈降速度で電解槽下部から銅微粒子スラリーを速やかに回収できることを見出し、本発明を完成するに至った。尚、ここで、電解還元において還元反応が行われる溶液を還元反応水溶液という。
【0009】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(13)に記載する発明を要旨とする。
(1)銅微粒子分散液の製造方法であって、
少なくとも、銅イオン、アルカリ金属イオン、及び有機物分散媒が溶解している還元反応水溶液において、銅イオンの電解還元反応により一次粒子の粒子径が1〜500nmの範囲にある銅微粒子をカソード表面近傍に析出させる工程(工程1)
前記カソード表面近傍に析出した銅微粒子を掻き取り用ブレードを用い、該掻き取り用ブレードとカソード間の相対移動速度が該還元反応水溶液における銅微粒子の沈降速度よりも遅い速度で掻き取とって、銅微粒子を沈降させて還元反応水溶液下部にスラリーで濃縮し、該スラリーを抜き出して該スラリー中の銅微粒子を洗浄液で洗浄して銅微粒子を回収する工程(工程2)、及び
回収した銅微粒子を分散液に分散する工程(工程3)
を含むことを特徴とする、銅微粒子分散液の製造方法。
(2)前記工程1における、アルカリ金属イオンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンから選択される1種又は2種以上である、前記(1)に記載の銅微粒子分散液の製造方法。
(3)前記工程1における、アルカリ金属イオンの供給源がフッ化物、塩化物、臭化物、沃化物、酢酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、ピロリン酸塩、及びシアン化物から選択される1種又は2種以上である、前記(1)又は(2)に記載の銅微粒子分散液の製造方法。
(4)前記工程1における、還元反応水溶液中のアルカリ金属イオン濃度が0.002〜1.0モル/リットルである、前記(1)ないし(3)のいずれかに記載の銅微粒子分散液の製造方法。
(5)前記工程1における、有機物分散媒が水溶性化合物であって、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、デンプン、及びゼラチンから選択される1種又は2種以上である、前記(1)ないし(4)のいずれかに記載の銅微粒子分散液の製造方法。
(6)前記工程1における、還元反応水溶液における有機物分散媒の添加量が該還元反応水溶液に存在する銅原子に対する質量比([有機物分散媒/Cu]質量比)で0.01〜5である、前記(1)ないし(5)のいずれかに記載の銅微粒子分散液の製造方法。
【0010】
(7)前記工程1における、還元反応水溶液に存在する銅イオン濃度が0.01〜4.0モル/リットルである、前記(1)ないし(6)のいずれかに記載の銅微粒子分散液の製造方法。
(8)前記工程2における、還元反応水溶液下部に濃縮したスラリー中の銅微粒子濃度が0.3〜5質量%であることを特徴とする、前記(1)ないし(7)のいずれかに記載の銅微粒子分散液の製造方法。
(9)前記工程2における、ブレードを用いた掻き取り方法が、軸方向が垂直方向の円柱形状であるカソード外表面を、外形が全体として輪型形状である掻き取り用ブレードを用いて、カソード上部近傍から垂直下部方向に向かってカソード表面近傍に析出した銅微粒子を掻き取る方法である、前記(1)ないし(8)のいずれかに記載の銅微粒子分散液の製造方法。
(10)前記工程2における、ブレードを用いた掻き取りが水平方向を回転軸として円周方向に回転する円柱形状のカソードの円周面を固定ブレードでカソード表面近傍に析出した銅微粒子を掻き取る方法である、前記(1)ないし(8)のいずれかに記載の銅微粒子分散液の製造方法。
(11)前記工程2における、ブレードがゴム又はプラスチック材料である、前記(1)ないし(10)のいずれかに記載の銅微粒子分散液の製造方法。
(12)前記工程2における、掻き取り用ブレードとカソード間の相対的移動速度が2cm/sec以下であることを特徴とする、前記(1)ないし(11)のいずれかに記載の銅微粒子分散液の製造方法。
(13)前記工程2における、洗浄液が炭素原子数1〜4の低級アルコールであることを特徴とする、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の銅微粒子分散液の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の「銅微粒子の製造方法」において、電解還元反応の際に還元反応水溶液にアルカリ金属イオン、及び有機物分散媒を存在させることにより、粒子径が小さく、粒度分布が比較的狭く、分散安定性に優れ、デンドライト状の凝集が抑制された顆粒状の銅粒子をカソード表面近傍に析出することが可能となる。
又、前記カソード表面近傍に析出した銅微粒子を掻き取り用ブレードを用い、該掻き取り用ブレードとカソード間の相対移動速度が該還元反応水溶液における銅微粒子の沈降速度よりも遅い速度で掻き取ることにより、該銅微粒子の早い沈降速度で電解槽下部から銅微粒子スラリーを回収できる。
銅微粒子を回収後、洗浄して有機分散液に分散して得られる銅微粒子分散液は、インクジェットプリンター用インク等に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の縦型円柱形状カソードが配設された例の電解槽断面の概念図である。
【図2】本発明の横型円柱形状カソードが配設された例の電解槽断面の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明について詳述する。
本発明の「銅微粒子の製造方法」は、
少なくとも、銅イオン、アルカリ金属イオン、及び有機物分散媒が溶解している還元反応水溶液において、銅イオンの電解還元反応により一次粒子の粒子径が1〜500nmの範囲にある銅微粒子をカソード表面近傍に析出させる工程(工程1)
前記カソード表面近傍に析出した銅微粒子を掻き取り用ブレードを用い、該掻き取り用ブレードとカソード間の相対移動速度が該還元反応水溶液における銅微粒子の沈降速度よりも遅い速度で掻き取とって、銅微粒子を沈降させて還元反応水溶液下部にスラリーで濃縮し、該スラリーを抜き出して該スラリー中の銅微粒子を洗浄液で洗浄して銅微粒子を回収する工程(工程2)、及び
回収した銅微粒子を分散液に分散する工程(工程3)
を含むことを特徴とする。
【0014】
〔1〕工程1
工程1は、少なくとも、銅イオン、アルカリ金属イオン、及び有機物分散媒が溶解している還元反応水溶液において、銅イオンの電解還元反応により一次粒子の粒子径が1〜500nmの範囲にある銅微粒子をカソード表面近傍に析出させる工程である。
(1)還元反応水溶液
還元反応水溶液を構成する銅イオン、アルカリ金属イオン、及び有機物分散媒について説明する。
尚、還元反応水溶液としては水溶液、該水溶液にメタノール、エタノール等の親水性化合物を添加した混合溶液、及び親水性溶液が使用可能であるが、メタノールやエタノール等の親水性化合物を添加しない水溶液の使用がより好ましい。
(i)銅イオン
還元反応水溶液中に存在する銅イオンは、電解還元により銅微粒子を生成する。
銅イオンは、一価ないし二価の銅イオンを生成するイオン性化合物を使用することができる。
使用可能なイオン性化合物として、酢酸銅、硝酸銅、ハロゲン化銅、シアン化銅、ピロリン酸銅、硫酸銅等が挙げられるが、酢酸銅の使用が好ましく、実用上酢酸銅(II)の1水和物((CHCOO)Cu・1HO)の使用が特に望ましい。還元反応水溶液中の好ましい銅イオン濃度は、0.01〜4.0モル/リットルである。銅イオン濃度が0.01モル/リットル未満では、銅粒子の生成量が低減し反応相からの銅微粒子の収率が低下するという不都合を生じ、4.0モル/リットルを超えると生成される粒子間での粗大な凝集がおこるおそれがある。よリ好ましい銅イオン濃度は、0.05〜0.5モル/リットルである。
【0015】
(ii)有機物分散媒
本発明における有機物分散媒の作用についてのメカニズムは、明らかではないが、有機物分散媒は、還元反応水溶液に存在して、銅イオンが還元されて結晶核が生成するのを助長し、更に析出してくる銅粒子結晶を分散させる機能を有しているものと推定される。
有機物分散媒としては、上記機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、このような機能を有する好ましいものとして、水溶性化合物が挙げられ、水溶性化合物の中でも水溶性高分子化合物がより好ましい。該水溶性高分子化合物としてポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン等のアミン系の高分子、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等のカルボン酸基を有する炭化水素系高分子、ポリアクリルアミド等のアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、更にはデンプン、ゼラチン等が例示できる。
【0016】
上記例示した水溶性の高分子化合物の具体例として、ポリビニルピロリドン(分子量:1,000〜500,000)、ポリエチレンイミン(分子量:100〜100,000)、カルボキシメチルセルロース(ヒドロキシル基Na塩のカルボキシメチル基への置換度:0.4以上、分子量:1,000〜100,000)、ポリアクリルアミド(分子量:100〜6,000,000)、ポリビニルアルコール(分子量:1,000〜100,000)、ポリエチレングリコール(分子量:100〜50,000)、ポリエチレンオキシド(分子量:50,000〜900,000)、ゼラチン(平均分子量:61,000〜67,000)、水溶性のデンプン等が挙げられる。上記かっこ内にそれぞれの高分子化合物の数平均分子量を示すが、このような分子量範囲にあるものは水溶性を有するので、本発明の有機物分散媒として好適に使用できる。尚、これらの2種以上を混合して使用することもできる。
また、有機物分散媒の添加量は、還元反応水溶液に存在する銅原子に対する質量比([有機物分散媒/Cu]質量比)で0.01〜5.00が好ましい。有機物分散媒の添加量が前記質量比で5.00を超えると溶液の粘性が高くなり還元反応終了後の銅粒子精製に支障をきたす場合がある。一方、前記質量比で0.01未満では粒子分散の効果が十分に発揮されなくなる。より好ましい上記添加量は、質量比で0.5〜2.0である。
【0017】
(iii)アルカリ金属イオン
本発明におけるアルカリ金属イオンの作用についてのメカニズムは、明らかではないが、アルカリ金属イオンが還元反応水溶液中に好適な濃度範囲で存在していると、還元反応により銅微粒子の結晶が結晶核から成長する際に、銅イオン(陽イオン)が銅微粒子に接近するのをアルカリ金属イオン(陽イオン)が妨げ、銅微粒子がデンドライト状に凝集するのを抑制して、結晶が顆粒状に成長していくのを助長しているものと推定される。
一方、還元反応水溶液中にアルカリ金属イオンを存在させずに、銅化合物及び有機物分散媒が溶解している水溶液から電解還元により銅微粒子を析出させた場合には、析出した結晶中に原料の銅化合物の混入、及び該銅化合物の結晶面を介して結晶がデンドライト状に成長する現象が観察される。
従って、アルカリ金属イオンは、還元反応水溶液中でデンドライト状の凝集を顕著に抑制して、粒子形状が顆粒状に成長するのを助長していることが確認される。
このようなアルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンから選択される1種又は2種以上が好ましい。上記アルカリ金属イオンのうち特に好ましいのは、ナトリウムイオンである。また、前記アルカリ金属イオンの供給源としては、フッ化物、塩化物、臭化物、沃化物、酢酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、ピロリン酸塩、及びシアン化物が挙げられる。これらは2種以上であってもよい。
【0018】
還元反応水溶液中での上記アルカリ金属イオンの濃度は、還元反応水溶液中において0.002〜1.0モル/リットル(L)が好ましい。アルカリ金属イオンの濃度が前記0.002モル/L未満ではデンドライト形状の混入という不都合を生じ、1.0モル/Lを超えるとアルカリ金属イオンを除去するのに不都合を生じるおそれがある。
より好ましいアルカリ金属イオンの濃度は、0.005〜0.2モル/Lである。
【0019】
(iv)その他の添加剤
還元反応水溶液のpH調整等は特に不要である。光沢剤(アミン誘導体とエピハロヒドリンとのモル比1:1の反応生成物等)や光沢補助剤(パラホルムアルデヒド等のアルデヒド誘導体)を添加すると析出物が膜状となり、粒子状物の析出を抑制するので、これらの添加剤の添加は避けるべきである。
以下に、本発明の銅微粒子の製造方法の具体例について説明する。
【0020】
(2)電解還元
(i)電解槽
電解槽は、本発明が実施可能な構造であれば特に制限されるものではないが、本発明が実施可能な構造の例を図1、2に示す。
図1は、カソードが縦型円柱形状である電解槽の例である。電解槽1内には軸方向が垂直方向の円柱形状であるカソード2、カソード2の周囲には該カソード表面と相対する位置に円筒形状のアノード3が配設されている。また、電解槽1内には後述する還元反応水溶液4が供給されていて、カソード2とアノード3には直流電源6から印加されることにより、電解還元反応が進行して、カソード2の外表面近傍に銅微粒子が析出する。カソード2外表面近傍に析出した銅微粒子はカソード上部近傍から下方に移動可能な、外形が全体として輪型形状であるブレード5によって、カソード上部近傍から垂直下部方向に向かって掻き取られて、漏斗状のスラリー回収部11に濃縮され、スラリー回収弁を開けることにより、スラリー回収口から回収される。
【0021】
図2は、カソードが横型円柱形状である電解槽の例である。電解槽1内には軸方向が水平方向の円柱形状で、周方向に回転可能であるカソード22、とカソード22の該表面と相対する一部の周囲にはクオーターパイプ形状のアノード23が配設されている。また、電解槽1内には後述する還元反応水溶液4が供給されていて、カソード22とアノード23には直流電源6から印加されることにより、電解還元反応が進行して、カソード22の外表面近傍に銅微粒子が析出する。カソード22外表面近傍に析出した銅微粒子はカソードを円周方向に回転させることにより、固定ブレード25によって、掻き取られて、漏斗状のスラリー回収部11に濃縮され、スラリー回収弁を開けることにより、スラリー回収口から回収される。
尚、電解還元反応を回分式で行う方法について記載したが、図1、2の概念図に示す電解槽を使用して電解還元反応を連続的に行うことも可能である。この場合、図1の縦型円柱形状カソードが配置された電解槽を使用する場合には、掻き取り用のブレードを例えば垂直方向に2分割可能な構造(以下、2分割型ということがある)として、カソード上部近傍から下部近傍にブレードを下降させて掻き取り操作を行った後に、円周方向に2分割型を開いてカソード上部近傍まで上昇させ、その後2分割型を閉じて再び下降させる操作を繰り返し、スラリー回収部に銅微粒子が濃縮されているスラリーをスラリー回収口から断続的に回収すればよい。
又、図2の縦型円柱形状カソードが配置された電解槽を使用する場合には、カソードを円周方向に連続的に回転させて、ブレードにより銅微粒子を連続的に掻き取り、スラリー回収部に銅微粒子が濃縮されているスラリーをスラリー回収口から断続的に回収すればよい。
(ii)還元反応水溶液
還元反応水溶液は、少なくとも銅イオン、アルカリ金属イオン、及び有機物分散媒を含む溶液である。それぞれの好ましい濃度は上記した通りである。
(iii)電極
カソード(陰極)材料としては、白金、カーボン等の棒状、板状電極、ドット電極のようなナノ構造電極が例示でき、アノード(陽極)材料としては、Cu、カーボン、白金等の棒状・板状・網状の形状電極が例示できる。
【0022】
(iv)電流密度、電解温度
電流密度は好ましくは0.1〜150A/dm、より好ましくは3〜100A/dm程度であり、直流のほかパルス電流とすることもできる。
還元温度は、10〜70℃が好ましく、10〜40℃がより好ましい。還元温度は、高温になるほど還元反応速度は速くなり、低温になるほど析出する粒子の粒子径は小さくなる傾向がある。
【0023】
〔2〕工程2
工程2は、前記工程1でカソード表面近傍に析出した銅微粒子を掻き取り用ブレードを用い、該掻き取り用ブレードとカソード間の相対移動速度が該還元反応水溶液における銅微粒子の沈降速度よりも遅い速度で掻き取とって、銅微粒子を沈降させて還元反応水溶液下部にスラリーで濃縮し、該スラリーを抜き出して該スラリー中の銅微粒子を洗浄液で洗浄して銅微粒子を回収する工程である。
一般にスラリーとは、粒子と液体の混合状態であり高い流動性を持つものである。当該スラリーは、工程1に記載の電解還元により析出し、その後ブレードでカソード表面から掻き取られて電解槽底部に沈降した微粒子と、該微粒子間に存在する還元反応水溶液から構成されている。
(1)ブレードを使用したカソード表面近傍からの銅微粒子の掻き取り
電解槽の構造の例は、前記した通りである。尚、ブレードの材質は特に制限されるものではないが、ポリテトラフルオロエチレン等の合成樹脂を使用することが可能である。
縦型円柱形状カソードの場合には図1に示す通り、カソード2を固定させて、ブレード5を垂直方向に向かって移動させることにより銅微粒子を掻き取って、銅微粒子を下方方向に沈降させてスラリー回収部11にスラリーとして回収する。
この場合のカソード2の外形形状は円柱形状、角柱形状等を採用することが可能であるが外形が全体として輪型形状である掻き取り用ブレード5を用いて掻き取ることから、円柱形状の使用が好ましい。縦型円柱形状カソードの場合にはカソードを固定させて、ブレードを垂直方向に向かって移動させることにより銅微粒子を掻き取って、銅微粒子を下方方向に沈降させてスラリー回収部にスラリーとして回収する。
【0024】
横型円柱形状カソードの場合には図2に示す通り、カソード22を円周方向に回転させて、ブレード25を固定させることにより銅微粒子を掻き取って、銅微粒子を下方方向に沈降させてスラリー回収部にスラリーとして回収する。
この場合のカソード22の外形形状は、ブレード25を固定させていることから円柱形状の使用が好ましい。横型円柱形状カソードの場合には円筒形状のカソード22を円周方向に回転させて、固定ブレード25によりカソード表面近傍の銅微粒子を掻き取って、銅微粒子を下方方向に沈降させてスラリー回収部にスラリーとして回収する。
【0025】
(2)ブレードによる銅微粒子の掻き取り速度
工程2において、前記カソード表面近傍に析出した銅微粒子を掻き取り用ブレードを用い、該掻き取り用ブレードとカソード間の相対移動速度が該還元反応水溶液における銅微粒子の沈降速度よりも遅い速度で掻き取とって、銅微粒子を沈降させて還元反応水溶液下部にスラリーで濃縮し、該スラリーを抜き出しすることを特徴とする。
電解還元反応によりカソード表面に析出する銅微粒子の粒子径が10μm程度を超える程度のナノ粒子に相当しない場合には、掻き取られた粒子の沈降速度も速く、金属粒子の回収は比較的容易に行うことができる。一方、本発明におけるような銅微粒子の粒子径が1〜500nmの場合には、ブレードによる掻き取り速度が早いとき、還元反応水溶液や水を噴霧する手段、及び電流付近で乱流を発生する等の手段を用いると銅微粒子の二次凝集塊が崩壊して、電解還元水溶液中に広く分散して銅微粒子の沈降速度が極めて遅くなり、銅微粒子スラリーとしての迅速な回収が困難になる。
本発明においては、該掻き取り用ブレードとカソード間の相対移動速度が該還元反応水溶液における銅微粒子の沈降速度よりも遅い速度で掻き取ることにより、銅微粒子の二次凝集塊の崩壊を抑制して、銅微粒子の沈降速度を早くすることを可能にしている。
【0026】
尚、電解還元を実際に行う系における銅微粒子の沈降速度は、例えば下記方法により求めることができる。
銅微粒子沈降速度の測定は前述の透明なガラス製電解槽中で析出を行い、カソードに析出した粒子がブレードにより掻き取られて剥離する過程を動画で撮影し、カソードから剥離した粒子が5cm沈降する時間を計測し、沈降速度を算出する。
【0027】
(3)生成銅微粒子の洗浄と回収
カソード表面近傍に析出した銅微粒子は、還元反応水溶液中に長い時間保持されると、該水溶液中に溶解している酸素により徐々に酸化を受けて、酸化銅を形成する虞がある。
一方、エタノール等のアルコール溶媒中では、金属銅微粒子は比較的酸化を受けづらく、安定して存在する。
従って、電解槽のスラリー回収口13から回収された銅微粒子スラリーはろ過操作により、銅微粒子を回収して、炭素原子数1〜4の低級アルコールを洗浄液として、還元反応水溶液から同伴されてきた不純物を除去するために、洗浄されることが望ましい。
洗浄操作の具体例としては、回収した銅微粒子にエタノールを加えて撹拌洗浄して遠心分離機で銅微粒子を回収するエタノール洗浄操作を1度又は2度以上行い、次にエタノール等のアルコールを添加して撹拌洗浄後、遠心分離機で銅微粒子を回収する洗浄操作を1度又は2度以上行い、その後、得られた銅微粒子を回収する。
【0028】
(4)回収銅微粒子
上記電解還元で得られる銅微粒子には、酸化銅が1質量%以下で還元剤や他の金属は含まれない。不純物の除去は溶媒を用いた洗浄により比較的容易であるので、比較的容易な操作で高純度の銅微粒子を得ることができる。
上記した電解還元により得られる銅微粒子は、粒子径が1〜500nm程度の範囲にあり、その形状はデンドライト状に凝集していない顆粒状の微粒子である。
ここで、一次粒子の平均粒径とは、二次粒子を構成する個々の金属等の微粒子の一次粒子の直径の意味である。該一次粒子径は、電子顕微鏡を用いて測定することができる。また、平均粒径とは、一次粒子の数平均粒径を意味する。
尚、還元反応水溶液にアルカリ金属イオンを使用しないと、銅イオンの原料となる銅化合物(例えば酢酸銅(II)一水和物を原料に使用すると、無水酢酸銅(II))が20〜30質量%混入し、更に得られる微粒子は、複数の基本粒子がデンドライト状に凝集をおこして、1μmから10μmぐらいの凝集体になる。
【0029】
〔3〕工程3
工程3は、回収した銅微粒子を分散液に分散する工程である。
工程2で得られた銅微粒子を以下に記載する分散溶媒に分散させて、その濃度が2〜70質量%となる分散溶液を得る。
尚、銅微粒子濃度が2質量%未満では、燒結後の導電材の機械的強度が低くなるという不都合を生ずるおそれがあり、一方、70質量%を超えると分散溶液中で高い分散性を得ることが困難になるおそれがある。
【0030】
(i)分散溶媒の成分
分散溶媒の成分として使用可能な多価アルコールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、グリセロール、トレイトール、エリトリトール、ペンタエリスリトール、ペンチトール、キシリトール、リビトール、アラビトール、ヘキシトール、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール、グリセリンアルデヒド、ジオキシアセトン、トレオース、エリトルロース、エリトロース、アラビノース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、イドース、ソルボース、グロース、タロース、タガトース、ガラクトース、アロース、アルトロース、ラクトース、イソマルトース、グルコヘプトース、ヘプトース、マルトトリオース、ラクツロース、及びトレハロースの中から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0031】
分散溶媒の成分としては、多価アルコール以外にアミド基を有する有機溶媒が例示できる。前記アミド基を有する有機溶媒としては、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルプロパンアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、及びアセトアミドの中から選択される1種又は2種以上が例示できる。
【0032】
更に、分散溶媒の他の成分としては、一般式R−O−R(R、Rは、それぞれ独立にアルキル基で、炭素原子数は1〜4である。)で表されるエーテル系化合物、一般式R−OH(Rは、アルキル基で、炭素原子数は1〜4である。)で表されるアルコール、R−C(=O)−R(R、Rは、それぞれ独立にアルキル基で、炭素原子数は1〜2である。)で表されるケトン系化合物、及び一般式R−(N−R)−R(R、R、Rは、それぞれ独立にアルキル基、又は水素で、炭素原子数は0〜2である。)で表されるアミン系化合物が例示できる。
前記エーテル系化合物の具体例として、ジエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、t−アミルメチルエーテル、ジビニルエーテル、エチルビニルエーテル、及びアリルエーテルの中から選択される1種又は2種以上が例示でき、
前記アルコールの具体例として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、及び2−メチル2−プロパノールの中から選択される1種又は2種以上が例示でき、
前記ケトン系化合物の具体例として、アセトン、メチルエチルケトン、及びジエチルケトンの中から選択される1種又は2種以上が例示でき、
前記アミン系化合物の具体例として、トリエチルアミン、及び/又はジエチルアミンが例示できる。
【0033】
(ii)銅微粒子分散溶液の分散性の向上
銅微粒子分散溶液中には、一次粒子の平均粒径が1〜500nmの銅微粒子が少なくともその表面の一部が有機物分散媒で覆われて分散液中に、二次凝集性が少ない状態で分散されていることが好ましい。有機物分散媒の成分は前記した通りである。
【0034】
銅微粒子分散溶液の分散性を向上するのに、撹拌手段を採用することが望ましい。分散溶液の撹拌方法としては、公知の撹拌方法を採用することができるが、超音波照射方法を採用するのが好ましい。
上記超音波照射時間は、特に制限はなく任意に選択することが可能である。例えば、超音波照射時間を5〜60分間の間で任意に設定すると照射時間が長い方が平均二次凝集サイズは小さくなる傾向にある。更に超音波照射時間を長くすると分散性は一層向上する。
このようにして得られた分散溶液は、銅微粒子が有機物分散剤に覆われた状態で分散溶液中に分散している。このような有機物分散剤が銅微粒子を分散させるメカニズムは完全に解明されてはいないが、有機物分散剤を使用する場合には、例えば高分子に存在する官能基の非共有電子対を有する原子部分が銅微粒子の表面に吸着して、分子層を形成し、互いに銅微粒子同士の接近をさせない、斥力が発生していることが予想される。
【実施例】
【0035】
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下に本実施例、比較例において使用した電解槽、及び銅微粒子の沈降速度の測定方法を記載する。
(1)電解槽
(i)縦型円柱形状カソードが配設された電解槽
本実施例、比較例において使用した電解槽は図1に示す縦型の回分式タイプの電解槽で、透明なガラス製容器内に、カソード、アノード、及び掻き取り用のブレードが設けられている。カソードは直径4cm、長さ7cmの円柱形状をしており、円柱の底部から5cmが還元反応水溶液に浸かった状態になっている。還元反応水溶液に浸かっていないカソード及びアノード部分は直流電源と接続されている。
アノードは、カソード表面から3cm離れた位置に設置された内径8cmの円筒形状物で、チタン表面に白金メッキを施したメッシュ形状のものである。また、円筒型アノードには析出過程を観察するために、液面から深さ6cmの位置まで、幅1cmの開口部が一ヶ所設けられている。
電解槽下部には漏斗状のスラリー回収部が配設され、その底部にはスラリーを電解槽外に回収するためのスラリー回収弁が設けられている。
カソード周囲には、カソード表面近傍に金属イオンが還元されて析出した金属微粒子を掻き取るための、上下に移動可能なブレードが配設されて、該ブレードは下降する際にはカソード表面の金属微粒子を掻き取り可能な形状である。尚、ブレードにはポリテトラフルオロエチレン製ブレードを使用した。
【0036】
(ii)横型円柱形状カソードが配設された電解槽
本実施例において使用した横型の回分式タイプの電解槽は、図2の概念図に示す電解槽である。
透明なガラス製容器内に、カソード、アノード、及び掻き取り用のブレードが設けられている。カソードは直径6cm、長さは5cmの円柱形状をしており、還元反応水溶液面は円周方向の回転軸近傍の位置である。カソードの還元反応水溶液に浸かっていない部分で直流電源と接続されている。
アノードは、カソード表面から2cm離れた位置に設置された内径10cmのクオーターパイプ形状で、チタン表面に白金メッキを施したメッシュ形状のものである。また、円柱状の電極の回転軸方向から容器内部における析出過程を観察することができる。
電解槽上部は角型筒状になっている。電解槽下部には上部角パイプと滑らかに接続された、漏斗状のスラリー回収部が配設され、その底部にはスラリーを電解槽外に回収するためのスラリー回収弁が設けられている。
カソード外周面の下部近傍に、カソード表面近傍に金属イオンが還元されて析出した金属微粒子を掻き取るための、ポリテトラフルオロエチレン製固定ブレードが配設されている。
【0037】
(2)銅微粒子の沈降速度の測定方法
銅微粒子沈降速度の測定は前述の透明なガラス製電解槽中で析出を行い、電極の回転軸方向から粒子がブレードにより掻き取られて剥離する過程を動画で撮影し、カソードから剥離した粒子が5cm沈降する時間を計測し、沈降速度を算出した。
【0038】
[実施例1]
縦型円柱形状カソードが配設された図1に示す電解槽を用いて、銅微粒子を電解還元によりカソード表面に析出させ、該析出した銅微粒子をブレードで掻き取り、スラリーとして回収した後、洗浄して分散溶液に分散して銅微粒子分散液を調製した。
(1)銅微粒子の電解還元による析出(工程1)
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CHCOO)Cu・1HO)20g、有機物分散剤としてポリビニルピロリドン5g([有機物分散剤/Cu]質量比で0.78)、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CHCOONa・3HO)1.36gを使用して、還元反応水溶液1Lを調製した。尚、還元反応水溶液中のアルカリ金属イオン濃度は0.01モル/リットル(L)であり、pHは約5.0であった。
次にこの溶液500mlを図1に示す縦型円柱形状カソードが配設された電解槽に供給し、2.5Aで2分間通電して、カソード表面近傍に銅微粒子を析出させた。
【0039】
(2)銅微粒子の回収(工程2)
カソード表面上を上端部近傍から下端部近傍に向かって、2cm/secの速度で移動するようにブレードを可動させて、カソード表面上の銅微粒子をブレードで掻き取った。掻き取られた銅微粒子は電解槽の下方に沈降していき、電解槽底部の錐状部分にスラリーとして沈降・濃縮した。沈降したスラリー10ml(ミリリットル)を、回収口より取り出した。
尚、掻き取られた銅微粒子の電解槽における沈降速度は、2.4〜3.2cm/secであり、スラリー中の銅微粒子濃度は2質量%であった。
回収したスラリーを40mlのエタノール中に滴下し、銅微粒子を沈降させて沈降した粒子を抽出し、遠沈管に採取した。該遠沈管にエタノール50mlを添加し、超音波ホモジナイザーを用いて良く撹拌した後、遠心分離器で銅微粒子成分を回収するエタノール洗浄を3度繰り返した。続いて、同じく遠沈管中に、得られた銅微粒子と1−ブタノール50mlを入れ、超音波ホモジナイザーを用いて良く撹拌した後、遠心分離器で粒子成分を回収する1−ブタノール洗浄を3度繰り返した。
上記操作により、200mgの銅微粒子が得られた。
【0040】
(3)銅微粒子の分散溶液中への分散(工程3)
銅微粒子を、エチレングリコールに混合して超音波ホモジナイザーで5分間撹拌することで、銅微粒子分散溶液を得た。
得られた、銅微粒子分散溶液をガラス基板上に塗布後、真空乾燥させてを行ったところ、銅の純度は95質量%以上であった。
また、得られた銅微粒子分散溶液をカーボン支持膜を取り付けたアルミメッシュ上に採取し、溶媒を乾燥除去したのち、透過電子顕微鏡で観察したところ一次粒子径は7〜350nmの範囲で、形状は顆粒状でありデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0041】
[実施例2]
実施例1で使用したのと同様の電解槽を用いて、電解還元によりカソード表面に析出させ、該析出した銅微粒子をブレードの掻き取り速度を実施例1とは異なる速度で掻き取り、スラリーとして回収した後、洗浄して分散溶液に分散して銅微粒子分散液を調製した。
(1)銅微粒子の電解還元による析出(工程1)
実施例1で使用したと同様の電解槽を用いて、実施例1と同様にして、カソード表面近傍に銅微粒子を析出させた。
(2)銅微粒子の回収(工程2)
カソード表面上を上端部近傍から下端部近傍に向かって、ブレードの移動速度を1.5cm/secの速度で移動させて掻き取りを行った以外は実施例1に記載したと同様にして、銅微粒子の回収を行った。掻き取られた銅微粒子は電解槽の下方に沈降していき、電解槽底部の錐状部分にスラリーとして沈降・濃縮した。沈降したスラリー10ml(ミリリットル)を、回収口より取り出した。
尚、掻き取られた銅微粒子の電解槽における沈降速度は、2.7〜5.0cm/secであった。
回収したスラリーを40mlのエタノール中に滴下し、銅微粒子を沈降させて沈降した粒子を抽出し、遠沈管に採取した。該遠沈管にエタノール50mlを添加し、超音波ホモジナイザーを用いて良く撹拌した後、遠心分離器で銅微粒子成分を回収するエタノール洗浄を3度繰り返した。続いて、同じく遠沈管中に、得られた銅微粒子と1−ブタノール50mlを入れ、超音波ホモジナイザーを用いて良く撹拌した後、遠心分離器で粒子成分を回収する1−ブタノール洗浄を3度繰り返した。
上記操作により、200mgの銅微粒子が得られた
(3)銅微粒子の分散溶液中への分散(工程3)
銅微粒子を、エチレングリコールに混合して超音波ホモジナイザーで5分間撹拌することで、銅微粒子分散溶液を得た。
得られた、銅微粒子分散溶液をガラス基板上に塗布後、真空乾燥させてX線回折による分析を行ったところ、銅の純度は98質量%以上であった。
また、得られた銅微粒子分散溶液をカーボン支持膜を取り付けたアルミメッシュ上に採取し、溶媒を乾燥除去したのち、透過電子顕微鏡で観察したところ一次粒子径は7〜350nmの範囲で、形状は顆粒状でありデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0042】
[実施例3]
横型円柱形状カソードが配設された図2に示す電解槽を用いて、銅微粒子を電解還元によりカソード表面に析出させ、該析出した銅微粒子をブレードで掻き取り、スラリーとして回収した後、洗浄して分散溶液に分散して銅微粒子分散液を調製した。
(1)銅微粒子の電解還元による析出(工程1)
実施例1と同様の方法で、還元反応水溶液を調整した。
次にこの還元反応水溶液500mlを図2に示す横型円柱形状カソードが配設された電解槽に供給し、1.9Aで2分間通電して、カソード表面近傍に銅微粒子を析出させたところ、アノードと対向している面において、銅微粒子の析出がみられた。
【0043】
(2)銅微粒子の回収(工程2)
カソード表面が、2cm/secの速度で移動するように図2において時計回りの方向に回転させて、カソード表面上の銅微粒子をブレードで掻き取った。掻き取られた銅微粒子は電解槽の下方に沈降していき、電解槽底部の錐状部分にスラリーとして沈降・濃縮した。沈降したスラリー10ml(ミリリットル)を、回収口より取り出した。
尚、掻き取られた銅微粒子の電解槽における沈降速度は、2.4〜3.2cm/secであり、スラリー中の銅微粒子濃度は2質量%であった。
実施例1と同様にして銅微粒子を洗浄したところ、150mgの銅微粒子が得られた。
(3)銅微粒子の分散溶液中への分散(工程3)
銅微粒子を、エチレングリコールに混合して超音波ホモジナイザーで5分間撹拌することで、銅微粒子分散溶液を得た。
得られた、銅微粒子分散溶液をガラス基板上に塗布後、真空乾燥させてX線回折による分析を行ったところ、銅の純度は95質量%以上であった。
また、得られた銅微粒子分散溶液をカーボン支持膜を取り付けたアルミメッシュ上に採取し、溶媒を乾燥除去したのち、透過電子顕微鏡で観察したところ一次粒子径は7〜350nmの範囲で、形状は顆粒状でありデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0044】
[比較例1]
(1)銅微粒子の電解還元による析出
実施例1で使用したと同様の電解槽を用いて、実施例1と同様にして、カソード表面近傍に銅微粒子を析出させた。
(2)銅微粒子の回収
カソード表面上を上端部近傍から下端部近傍に向かって、ブレードの移動速度を3cm/secの速度で移動させて掻き取りを行った以外は実施例1に記載したと同様にして、銅微粒子の回収を行った。
この場合、大半の粒子が沈降するのに10分以上要した。液面から容器底部までの距離は10cm程度であったことから、沈降速度は、0.017cm/sec以下であったと想定される。
実施例1に記載したと同様の方法により、得られた金属微粒子を洗浄した。
上記操作により、215mgの銅微粒子が得られた。
(3)銅微粒子の分散溶液中への分散
実施例1に記載したと同様の操作を行って、銅微粒子分散溶液を得た。
得られた、銅微粒子分散溶液をガラス基板上に塗布後、真空乾燥させてX線回折による分析を行ったところ、銅の純度は70質量%、酸化銅の含有量は30質量%であった。
また、得られた銅微粒子分散溶液をカーボン支持膜を取り付けたアルミメッシュ上に採取し、溶媒を乾燥除去したのち、透過電子顕微鏡で観察したところ一次粒子径は7〜500nmの範囲であった。
【0045】
[比較例2]
(1)銅微粒子の電解還元による析出
実施例1で使用したと同様の電解槽を用いて、実施例1と同様にして、カソード表面近傍に銅微粒子を析出させた。
(2)銅粒子の回収
ブレードを動かさずに、超音波ホモジナイザーを電解槽に挿入し還元反応水溶液を2分間撹拌したところ、カソード上の粒子が分散し還元反応水溶液の懸濁がみられた。この場合、大半の粒子が沈降するのに1時間以上要したことから、粒子の沈降速度は0.0028cm/sec以下であったと想定される。
実施例1に記載したと同様の方法により、得られた金属微粒子を洗浄した。
上記操作により、220mgの銅微粒子が得られた。
(3)銅微粒子の分散溶液中への分散
実施例1に記載したと同様の操作を行って、銅微粒子分散溶液を得た。
得られた、銅微粒子分散溶液をガラス基板上に塗布後、真空乾燥させてX線回折による分析を行ったところ、銅の純度は1質量%、酸化銅の含有量は99質量%であった。
また、得られた銅微粒子分散溶液をカーボン支持膜を取り付けたアルミメッシュ上に採取し、溶媒を乾燥除去したのち、透過電子顕微鏡で観察したところ酸化凝集をおこしており粒子径は0.1〜10μmの範囲であった。
【0046】
[比較例3]
(1)銅微粒子の電解還元による析出
実施例1で使用したと同様の電解槽を用いて、実施例1と同様にして、カソード表面近傍に銅微粒子を析出させた。
(2)銅粒子の回収
ブレードを動かさずに、超音波ホモジナイザーを電解槽に挿入し還元反応水溶液を2分間撹拌したところ、カソード上のから剥離した粒子が、分散し還元反応水溶液の懸濁がみられた。還元反応水溶液を2分間遠心分離にかけて、銅粒子スラリーを回収した。
実施例1に記載したと同様の方法により、得られた金属微粒子を洗浄した。
上記操作により、220mgの銅微粒子が得られた。
(3)銅微粒子の分散溶液中への分散
実施例1に記載したと同様の操作を行って、銅微粒子分散溶液を得た。
得られた、銅微粒子分散溶液をガラス基板上に塗布後、真空乾燥させてX線回折による分析を行ったところ、銅の純度は1質量%、酸化銅の含有量は99質量%であった。
また、得られた銅微粒子分散溶液をカーボン支持膜を取り付けたアルミメッシュ上に採取し、溶媒を乾燥除去したのち、透過電子顕微鏡で観察したところ酸化凝集をおこしており粒子径は0.1〜10μmの範囲であった。
【0047】
[比較例4]
(1)銅微粒子の電解還元による析出
酢酸ナトリウム濃度を0モル/Lとした以外は実施例1と同様に、還元反応水溶液を調製し、還元反応を行った。
(2)銅粒子の回収
実施例1と同様の方法で、銅微粒子を洗浄・回収したところ230mgの銅微粒子が得られた。
(3)銅微粒子の分散溶液中への分散
実施例1に記載したと同様の操作を行って、銅微粒子分散溶液を得た。
得られた、銅微粒子分散溶液をガラス基板上に塗布後、真空乾燥させてX線回折による分析を行ったところ、銅の純度は70〜80質量%、酸化銅の含有量は1質量%以下、無水酢酸銅((CHCOO)Cu)20〜30質量%であった。
また、得られた銅微粒子分散溶液を、カーボン支持膜を取り付けたアルミメッシュ上に採取し、溶媒を乾燥除去したのち、透過電子顕微鏡で観察したところデンドライト状に凝集をおこしており粒子径は1〜10μmの範囲であった。
【0048】
[比較例5]
(1)銅微粒子の電解還元による析出
酢酸ナトリウム濃度を1.5モル/Lとした以外は実施例1と同様に、還元反応水溶液を調製し、還元反応を行ったところ水素発生が顕著になり、銅粒子が析出しにくくなった。還元反応水溶液のpHは約5.5であった。
(2)銅粒子の回収
実施例1と同様の方法で、銅微粒子を洗浄・回収したところ220mgの銅微粒子が得られた。洗浄する際にアルカリ金属イオンが除去しづらくなっていた。
(3)銅微粒子の分散溶液中への分散
実施例1に記載したと同様の操作を行って、銅微粒子分散溶液を得た。
得られた、銅微粒子分散溶液をガラス基板上に塗布後、真空乾燥させてX線回折による分析を行ったところ、銅の純度は85質量%、水酸化銅(Cu(OH))10質量%、酸化銅の含有量は1質量%以下、無水酢酸銅((CHCOO)Cu)1質量以下%であった。
また、得られた銅微粒子分散溶液を、カーボン支持膜を取り付けたアルミメッシュ上に採取し、溶媒を乾燥除去したのち、透過電子顕微鏡で観察したところ一次粒子の粒子径は1〜200nmの範囲で、形状は顆粒状でありデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0049】
[比較例6]
(1)実施例3で使用したと同様の電解槽を用いて、実施例3と同様にして、カソード表面でアノードと対向している近傍に銅微粒子を析出させた。
(2)銅微粒子の回収
カソード表面が3cm/secの速度で動くように、銅粒子の掻き取りを行った以外は実施例3に記載したと同様にして、銅微粒子の回収を行った。
この場合、大半の粒子が沈降するのに5分以上要した。固定されたブレードから容器底部までの距離は5cm程度であったことから、沈降速度は、0.017cm/sec以下であったと想定される。
実施例1に記載したと同様の方法により、得られた金属微粒子を洗浄した。
上記操作により、161mgの銅微粒子が得られた。
(3)銅微粒子の分散溶液中への分散
実施例1に記載したと同様の操作を行って、銅微粒子分散溶液を得た。
得られた、銅微粒子分散溶液をガラス基板上に塗布後、真空乾燥させてX線回折による分析を行ったところ、銅の純度は1質量%、酸化銅の含有量は99質量%であった。
また、得られた銅微粒子分散溶液を、カーボン支持膜を取り付けたアルミメッシュ上に採取し、溶媒を乾燥除去したのち、透過電子顕微鏡で観察したところ酸化凝集をおこしており粒子径は0.1〜10μmの範囲であった。
【0050】
[比較例7]
(1)実施例3で使用したと同様の電解槽を用いて、実施例3と同様にして、カソード表面でアノードと対向している近傍に銅微粒子を析出させた。
(2)銅粒子の回収
カソードを動かさずに、超音波ホモジナイザーを電解槽に挿入し還元反応水溶液を2分間撹拌したところ、カソード上のから剥離した粒子が、分散し還元反応水溶液の懸濁がみられた。還元反応水溶液を2分間遠心分離にかけて、銅粒子スラリーを回収した。
実施例1に記載したと同様の方法により、得られた金属微粒子を洗浄した。
上記操作により、165mgの銅微粒子が得られた。
(3)銅微粒子の分散溶液中への分散
実施例1に記載したと同様の操作を行って、銅微粒子分散溶液を得た。
得られた、銅微粒子分散溶液をガラス基板上に塗布後、真空乾燥させてX線回折による分析を行ったところ、銅の純度は1質量%、酸化銅の含有量は99質量%であった。
また、得られた銅微粒子分散溶液を、カーボン支持膜を取り付けたアルミメッシュ上に採取し、溶媒を乾燥除去したのち、透過電子顕微鏡で観察したところ酸化凝集をおこしており粒子径は0.1〜10μmの範囲であった。
【符号の説明】
【0051】
1 電解槽
2 カソード
3 アノード
4 還元反応水溶液
5 ブレード
6 直流電源
11 スラリー回収部
12 スラリー回収弁
13 スラリー回収口
22 カソード
23 アノード
25 ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅微粒子分散液の製造方法であって、少なくとも、銅イオン、アルカリ金属イオン、及び有機物分散媒が溶解している還元反応水溶液において、銅イオンの電解還元反応により一次粒子の粒子径が1〜500nmの範囲にある銅微粒子をカソード表面近傍に析出させる工程(工程1)
前記カソード表面近傍に析出した銅微粒子を掻き取り用ブレードにより、該掻き取り用ブレードとカソード間の相対移動速度が該還元反応水溶液における銅微粒子の沈降速度よりも遅い速度で掻き取とって、銅微粒子を沈降させて還元反応水溶液下部にスラリーで濃縮し、該スラリーを抜き出して該スラリー中の銅微粒子を洗浄液で洗浄して銅微粒子を回収する工程(工程2)、及び
回収した銅微粒子を分散液に分散する工程(工程3)
を含むことを特徴とする、銅微粒子分散液の製造方法。
【請求項2】
前記工程1における、アルカリ金属イオンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンから選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の銅微粒子分散液の製造方法。
【請求項3】
前記工程1における、アルカリ金属イオンの供給源がフッ化物、塩化物、臭化物、沃化物、酢酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、ピロリン酸塩、及びシアン化物から選択される1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載の銅微粒子分散液の製造方法。
【請求項4】
前記工程1における、還元反応水溶液中のアルカリ金属イオン濃度が0.002〜1.0モル/リットルである、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の銅微粒子分散液の製造方法。
【請求項5】
前記工程1における、有機物分散媒が水溶性化合物であって、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、デンプン、及びゼラチンから選択される1種又は2種以上である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の銅微粒子分散液の製造方法。
【請求項6】
前記工程1における、還元反応水溶液における有機物分散媒の添加量が該還元反応水溶液に存在する銅原子に対する質量比([有機物分散媒/Cu]質量比)で0.01〜5である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の銅微粒子分散液の製造方法。
【請求項7】
前記工程1における、還元反応水溶液に存在する銅イオン濃度が0.01〜4.0モル/リットルである、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の銅微粒子分散液の製造方法。
【請求項8】
前記工程2における、還元反応水溶液下部に濃縮したスラリー中の銅微粒子濃度が0.3〜5質量%であることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の銅微粒子分散液の製造方法。
【請求項9】
前記工程2における、ブレードを用いた掻き取り方法が、軸方向が垂直方向の円柱形状であるカソード外表面を、外形が全体として輪型形状である掻き取り用ブレードを用いて、カソード上部近傍から垂直下部方向に向かってカソード表面近傍に析出した銅微粒子を掻き取る方法である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の銅微粒子分散液の製造方法。
【請求項10】
前記工程2における、ブレードを用いた掻き取りが水平方向を回転軸として円周方向に回転する円柱形状のカソードの円周面を固定ブレードでカソード表面近傍に析出した銅微粒子を掻き取る方法である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の銅微粒子分散液の製造方法。
【請求項11】
前記工程2における、ブレードがゴム又はプラスチック材料である、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の銅微粒子分散液の製造方法。
【請求項12】
前記工程2における、掻き取り用ブレードとカソード間の相対的移動速度が2cm/sec以下であることを特徴とする、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の銅微粒子分散液の製造方法。
【請求項13】
前記工程2における、洗浄液が炭素原子数1〜4の低級アルコールであることを特徴とする、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の銅微粒子分散液の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−222603(P2010−222603A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68766(P2009−68766)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】