説明

銅石鹸による青色着色物を除去する除去剤

【課題】給湯器及び設備配管に使用した銅管から溶出したわずかの銅イオンと湯垢や石鹸に含まれる脂肪酸が反応して、不溶性の銅石鹸が生成され、これが浴槽、浴室や洗面台等に付着して青く着色する。この青色着色物を除去する除去剤を提供すること。
【解決手段】浴槽、浴室や洗面台等で、銅イオンと、湯垢や石鹸に含まれる脂肪酸が反応してできる銅石鹸による青色着色部分に、エタノールアミンを必須成分として含有する除去剤を塗布し、表面或いは内部に付着した青色着色物を除去するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽、浴室や洗面台等に生じる青色着色物の除去剤に関するものであり、さらに詳しくは、給湯器及び設備配管に使用した銅管から溶出する銅イオンと湯垢や石鹸に含まれる脂肪酸が反応して、不溶性の銅石鹸が生成し、これが浴槽、浴室や洗面台等に付着して青く着色する。この青色着色物を除去する除去剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銅管から溶出した銅は、銅イオンとなり、そのものには色はないが、人の身体や石鹸からでた脂肪酸と反応して不溶性の青い物質となる。これが、空気中の酸素や炭酸ガスと反応して、浴槽、浴室や洗面台等の青色着色物となる。付着初期には、比較的簡単に除去できるが、乾燥が繰り返され、固着すると除去が困難となる。しかし、銅石鹸による青色着色物の除去の為の専用のものはない。
【0003】
銅管は、加工の良さ、熱伝導の良さ、水道水、地下水に対する耐食性が優れていることから、浴槽、浴室や洗面台等に湯を供給する給湯器及び設備配管に多く用いられている。通常、銅管は、数週間から数ケ月かけ表面が酸化され、酸化被膜が出来、銅の溶出はおこらなくなる。しかし、それまでの期間、又は水道水、地下水の水質でpHが低い場合等、この被膜がつきにくく、銅の溶出がおこる。
【0004】
一般的に銅石鹸による青色着色物を除去するには、市販されている浴槽、浴室や洗面台等の洗浄剤、アンモニア水を薄めた水溶液、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの強アルカリ性水溶液、炭酸水素ナトリウムの弱アルカリ性水溶液、酸性である食酢を薄めたものやクエン酸を使用すること等が知られている。
【0005】
しかし、市販されている洗浄剤では、銅石鹸による青色着色物を容易に落とすことはできない。このため、タワシ等で強くこする等して物理的な力を加えて洗浄する、あるいは研磨する必要があり、作業に多大な労力と時間を要する割には、着色物が除去できないという不具合と浴槽をきずつける心配があった。
【0006】
尚、市販されている浴槽、浴室や洗面台等の洗浄剤には、中性、アルカリ性のものがあり、中性のものは、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤が主成分となり、エタノールアミンは配合されていない。また、アルカリ性のものは、次亜塩素酸ナトリウムや過炭酸ナトリウムの酸化剤に非イオン界面活性剤を加え、水酸化ナトリウムでpHを調整しアルカリ性とするものであるため、エタノールアミンは、含まれていない。
【0007】
アンモニア水を薄めた溶液では、青色着色物は除去できるが、医薬用外劇物であることによる取扱いと、その強い刺激臭により、浴室等での作業は危険である。
【0008】
水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの強アルカリ性水溶液は、青色着色物を除去できるが、白色の不溶物が残る。また、アンモニア水と同様に医薬用外劇物で、強アルカリ性でもあるため、作業は危険である。
【0009】
炭酸水素ナトリウム、食酢、クエン酸は、何れも安全な物質であるが、それらの水溶液を使用しても銅石鹸による青色着色物は、ほとんど除去できない。
【0010】
一方、下記特許文献1に、配管に使われている銅管から溶出した銅イオンに触れても、青色着色物を生ぜしめることなく、同時に食器などのすすぎ効果も十分に発揮する、すすぎ用助剤が提案され、青色着色物の原因となる銅イオンの反応性を抑える効果は、示されている。しかし、青色着色物を除去する内容は開示されていない。
【0011】
また、下記特許文献2に、浴槽の表面にこびり付いた湯垢等の汚れを容易に洗浄除去するのに、アルカリ剤を使用するものが提案されている。湯垢等の汚れに対しては、効果をしめすものであるが、青色着色物を除去する効果は満足いくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−349996号公報
【特許文献2】特開平11−290230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、浴槽、浴室や洗面台等に供給される湯の給湯器及び設備配管に使用した銅管から溶出したわずかの銅イオンと、湯垢や石鹸に含まれる脂肪酸が反応して生成する銅石鹸による青色着色物を除去するものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
銅イオンと、湯垢や石鹸に含まれる脂肪酸が反応して生成する銅石鹸による青色着色物を、エタノールアミンを必須成分とする青色着色物除去剤を青色着色箇所に塗布して、刺激臭がなく効率良く除去するものである。
【0015】
本発明の銅石鹸による青色着色物を除去する除去剤は、エタノールアミンを必須成分として含有し、浴槽、浴室や洗面台等の青色着色物に本青色着色物除去剤を塗布し、本青色着色物を除去する事を特徴とする。
【0016】
本発明において、エタノールアミンとは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが挙げられる。モノエタノールアミンは、銅石鹸と反応して青色着色物を除去するが、医薬用外劇物であることから取り扱いに注意を要する。また、ジエタノールアミンは、銅石鹸による青色着色物を除去するが、そのものが常温で固体であり取り扱いが不便である。トリエタノールアミンは、常温で液体である為、銅石鹸と反応して溶解しやすく、刺激臭がなく、青色着色物除去効果が高く特に好ましい。
【0017】
トリエタノールアミンの含有量は、特に限定されないが、5〜100重量%であることが好ましい。さらに青色着色物の除去効果を高めるためにトリエタノールアミンの含有量が、50〜100重量%であることがより好ましい。
【0018】
エタノールアミンは、トリエタノールアミンとともに、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の1種以上を併用して用いることもできる。
【0019】
本青色着色物を除去する除去剤には、上記成分に加え、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、例えば陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、金属イオン封鎖剤、多価アルコール等、一般に洗浄剤に用いられている他の成分を配合しても良い。
【0020】
除去剤の使用できる浴槽、浴室や洗面台は、何でも良いが、ガラス繊維強化ポリエステル(FRP)、ガラス繊維強化アクリル(FRA)、人工大理石(ポリエステル系、アクリル系)、ホーロー、木、石、タイルの材質のものが挙げられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、エタノールアミンを用いることで、化学的に銅石鹸による青色着色物を除去できるため、物理的に、浴槽、浴室や洗面台等を強くこする等の必要はなく、それらの表面を傷つける心配はない。塗布し、放置して、水で流すのみで良好な青色着色物除去効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。実施例中の配合量は重量%である。
【実施例】
【0023】
(試験1)3種のエタノールアミンを用い、疑似青色着色物として、銅石鹸であるステアリン酸銅を常温で加え、ステアリン酸銅の溶解試験を行った。評価は下記基準にて行い、結果を表1に示した。
【0024】
<試験方法>実施例1〜10に示す各液100gをビーカーに量り、ステアリン酸銅0.01gを加え、撹拌して静置した。その後、ビーカー内の水溶液を目視及び嗅覚にて評価を行った。また、比較例1〜5についても同様に試験を行い評価した。
【0025】
<評価基準1>ビーカーの水溶液の匂いを嗅ぎ、刺激臭なし「○」、刺激臭あり「×」とした。
【0026】
<評価基準2>ビーカーの中の水溶液を観察し、青色固体であるステアリン酸銅の溶解を確認し、溶解できたものを「○」、ステアリン酸銅の青色固体は溶解したが、白色の沈殿物があるものを「△」、青色固体の残ったものを「×」と評価した。
【0027】
<評価基準3>ビーカーにステアリン酸銅を加えて、撹拌し続け、溶解までの時間を測定した。添加直後から10分以内に溶解したものを「◎」、10分を超えて30分以内に溶解したものを「○」、30分を超えて60分以内に溶解したものを「△」とした。60分を超えても溶解しないものは、「×」とした。
【0028】
【表1】

【0029】
表1に示すように、エタノールアミンを用いた実施例1〜10では、銅石鹸であるステアリン酸銅を溶解することができ、浴槽、浴室や洗面台に着色した青色着色物を除去することができる。これに対して、比較例1では、ステアリン酸銅を溶解するが、アンモニアの強い刺激臭があり、危険である。比較例2と3では、銅石鹸の青色はなくなるが、白色の沈殿物ができる。比較例4と5では、そのまま青色のステアリン酸銅が残り、除去効果はない。
【0030】
また、表1の評価基準3に示すように、トリエタノールアミンを50重量%以上配合することにより、ステアリン酸銅を溶解する時間が短縮され効率が良い。つまり、短時間で浴槽、浴室や洗面台等に付着した青色着色物を除去できる。
【0031】
(試験2)ガラス繊維強化ポリエステル(FRP)の浴槽に、200Lの45℃のお湯を入れる。炭酸ナトリウム20gと固形石鹸5gを入れ、よくかき混ぜてそれぞれを溶解させる。次に銅イオン濃度が200ppmとなるように硝酸銅を加えてよくかき混ぜた後、静置し、24時間後に水を抜く。浴槽を洗浄することなく、同様の事を毎日繰り返して、水面に接する浴槽の壁面に青色の着色物を生じさせる。この浴槽壁面にできた青色帯状の部分を下記の試験に用いた。
【0032】
<試験方法>実施例11〜15に示すトリエタノールアミン水溶液をコットンに含浸させ、このコットンを上記浴槽の青色部分に密着させ、1時間放置して水ですすいだ。
【0033】
比較例6〜8も同様に試験を行い、その後、たわしで浴槽表面をこすった。比較例7は、界面活性剤にポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とした市販の中性浴槽洗浄剤、比較例8は、界面活性剤にアルキルアミンオキシド、アルカリ剤に水酸化ナトリウムを用いた市販のアルカリ性浴槽洗浄剤である。
【0034】
<評価基準4>浴槽表面を水ですすぐのみで、青色着色物を除去できたものを「○」、水ですすぐのみでは除去できず、浴槽表面を若干こすることにより、青色着色物の大部分を除去できたものを「△」、浴槽表面をこすっても除去できなかったものを「×」とした。その結果を表2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
表2に示すように、トリエタノールアミンを5重量%以上用いた実施例11〜15では、銅石鹸による青色着色物を除去することができる。これに対して、比較例6は、水ですすぐだけでは除去できず、浴槽表面をこする必要がある。また、比較例7の市販の中性浴槽洗浄剤、比較例8の市販のアルカリ性浴槽洗浄剤では青色着色物を除去できない。
【0037】
液剤
成分 配合量(重量%)
実施例16 比較例9
1 トリエタノールアミン 20 −
2 ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル 5 5
3 ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム10 10
4 香料 0.1 0.1
5 プロピレングリコール 5 5
6 ポリリン酸ナトリウム 0.1 0.1
7 水 59.8 79.8
合計 100 100
(製造方法)成分7に成分6を溶解し、撹拌しながら成分1〜5を添加し目的の液剤を得る。
(試験方法)上記(試験2)と同様の方法にて、実施例16と比較例9を試験した。
(結果)実施例16の液剤は、刺激臭もなく、効率よく銅石鹸による青色着色物を除去できた。これに対し、比較例9においては青色着色物を除去できなかった。
【0038】
半固形剤
成分 配合量(重量%)
実施例17 比較例10
1 トリエタノールアミン 10 −
2 モノエタノールアミン 5 −
3 ラウリル硫酸ナトリウム 5 5
4 香料 0.3 0.3
5 カルボマー 0.8 0.8
6 グリセリン 2 2
7 エデト酸4ナトリウム 0.1 0.1
8 水 76.8 91.8
合計 100 100
(製造方法)成分8に成分7を溶解し、撹拌しながら成分5〜6を添加し分散溶解し、その後、成分1〜4を添加し目的の半固形剤を得る。
(試験方法)上記(試験2)と同様の方法にて、実施例17と比較例10を試験した。
(結果)実施例17の半固形剤は、刺激臭もなく、効率よく銅石鹸による青色着色物を除去できた。これに対し、比較例10においては青色着色物を除去できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、銅石鹸による青色着色物を、刺激臭がなく、効率よく除去できる除去剤を提供することができる。当該青色着色物を除去する除去剤は、浴槽、浴室や洗面台等の衛生用品を提供するものである。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノールアミンを必須成分として含有することを特徴とする銅石鹸による青色着色物を除去する除去剤。
【請求項2】
エタノールアミンが、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンよりなる群から選ばれる、1種又は2種以上である請求項1記載の青色着色物を除去する除去剤。
【請求項3】
トリエタノールアミンを、5〜100重量%含有することを特徴とする請求項1記載の青色着色物を除去する除去剤。
【請求項4】
浴槽、浴室や洗面台等で使用することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の青色着色物を除去する除去剤。


【公開番号】特開2011−195715(P2011−195715A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64293(P2010−64293)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】