説明

銅管加工用潤滑油及びそれを用いた銅管の製造方法

【課題】抽伸加工あるいは転造加工での境界潤滑性、成形性に優れ、プラグへの銅の凝着や銅磨耗粉の発生を抑制でき、焼鈍後の残油量が少ない銅管加工用潤滑油を提供すること
【解決手段】銅管加工用潤滑油である。添加剤として、アルコールを5〜40%、リン酸エステルを1〜20%、アミン誘導体、アルキルスルホン酸塩、数平均分子量200以上1000未満であり水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物及びそのハイドロカルビルエーテル、数平均分子量120以上1000未満のポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテル、炭素数2〜10の2価アルコールから選ばれる1種以上を0.01〜2.0%含有する。残部に、基油として、平均分子量30000以上のポリイソブチレンの1種以上と、平均分子量400以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンの1種以上とを含有する。粘度は100〜1000cStである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機器、冷凍・冷蔵機器の熱交換等に使用される銅あるいは銅合金からなる銅管の製造に使用される銅管加工用潤滑油に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ルームエアコン等の空調機、冷蔵庫、冷凍庫等の冷凍機の熱交換器には伝熱管が使用されている。伝熱管には、伝熱性、加工性、耐食性に優れた銅及び銅合金(以下、銅と称する。)管が用いられている。該銅管は、内面及び外面に潤滑油を供して、所定の寸法、内面形状になるよう抽伸あるいは転造し、数1000mに及ぶ銅管を整列巻きにしたレベルワウンドコイルにする。その後、所定の調質になるよう焼鈍処理が施される。実際、焼鈍処理では、銅管内を窒素ガスや水素ガスなどの非酸化性ガスで置換した後、約500℃で約1時間焼鈍される。
【0003】
銅管の抽伸あるいは転造加工では、焼き付きや所定の溝形状を形成し易くするために、高粘度の高分子合成炭化水素に脂肪酸エステルあるいはアルコール、ポリオールエステル等の油性剤が添加された潤滑油が銅管内外面に供給されている。抽伸及び転造後、銅管内面に潤滑油が付着しており、その付着潤滑油は、非酸化性ガス内で焼鈍されるが、気化あるいは熱分解する。それら気化物質は、体積膨張だけでは銅管外に放出されず、銅管冷却時に凝集し、銅管内面に油分として残留する。その量は、潤滑油の種類、置換ガス、あるいは銅管の長さ、コイルの大きさ、さらには、焼鈍速度、冷却速度によって左右される。
【0004】
銅管に残油が多いと、機器組み立て時に行われるろう付け接合において接合不良が生じ易くなる。また、近年のフロン使用規制にともなって、塩素フリーの代替フロン冷媒が使用されるが、それらは、銅管残留油との相溶し難い。その結果、コンタミネーションによりキャピラリー部が閉塞や冷凍機の性能が低下するという問題が生じるため、残油を減らすべく、その対策が検討されている。
【0005】
例えば、加工後の銅管内面を洗浄する方法や、銅管を真空中で焼鈍する方法(特許文献1)、焼鈍時にDXガスを通しながら焼鈍し、気化あるいは熱分解気化した物質を銅管外に排出し、残留油を最小限にする方法(特許文献2)等が報告されている。
しかしながら、これらの従来技術では、生産性の低下、莫大な設備費や設備設置スペースが必要となる欠点がある。
また、潤滑油によっては、転造時に、プラグに凝着する銅が増加したり、銅磨耗粉の量が多くなることもあった。
【0006】
【特許文献1】特開平1−287258号公報
【特許文献2】特開平6−170348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、抽伸加工あるいは転造加工での境界潤滑性、成形性に優れ、プラグへの銅の凝着や銅磨耗粉の発生を抑制することができ、焼鈍後の残油量が少ない銅管加工用潤滑油を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、銅又は銅合金よりなる銅管を加工するための銅管加工用潤滑油であって、
添加剤として、1価アルコールを5〜40%と、
リン酸エステルを1〜20%と、
アミン誘導体、アルキルスルホン酸塩、数平均分子量200以上1000未満であると共に水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、及びそのハイドロカルビルエーテル、数平均分子量120以上1000未満のポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテル、及び炭素数2〜10の2価アルコールから選ばれる1種または2種以上を0.01〜2.0%(重量%、以下同じ)とを含有し、
残部に、基油として、平均分子量30000以上のポリイソブチレンの1種又は2種以上と、平均分子量400以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンの1種又は2種以上とを含有し、
粘度が100〜1000cSt(at40℃)であることを特徴とする銅管加工用潤滑油にある(請求項1)。
【0009】
本発明の銅管加工用潤滑油は、添加剤と基油の成分を選定し、粘度を調整することにより、境界潤滑性、成形性に優れ、プラグへの銅の凝着や銅磨耗粉の発生を抑制することができ、焼鈍後の残油量が少ない銅管加工用潤滑油を得ることができる。
すなわち、上記銅管加工用潤滑油の必須成分として、第1の添加剤(以下第1添加剤という)としての1価アルコールを5〜40%と、第2添加剤(以下第2添加剤という)としてのリン酸エステルを1〜20%と、第3添加剤(以下第3添加剤という)としての、アミン誘導体、アルキルスルホン酸塩、数平均分子量200以上1000未満であると共に水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物及びそのハイドロカルビルエーテル、数平均分子量120以上1000未満のポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテル、及び炭素数2〜10の2価アルコールから選ばれる少なくとも1種または2種以上を含有する。これら第1〜第3の添加剤を同時に含有することにより、成形性が向上し、過酷な加工条件下でも使用することができ、境界潤滑性が向上することができ、プラグへの銅の凝着や銅磨耗粉の発生を抑制することができる。
【0010】
また、残部に、基油として、平均分子量30000以上のポリイソブチレン1種又は2種以上と、平均分子量400以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンの1種又は2種以上とを組み合わせて含有し、その組合せの割合を調整することによって、潤滑油全体の粘度が100〜1000cStとなるように調整する。これにより、優れた成形性を維持し、かつ焼鈍後の残油量を少なくすることができる。
【0011】
第2の発明は、銅又は銅合金からなる銅管の少なくとも内面に、請求項1〜5のいずれか一項に記載の上記銅管加工用潤滑油を供給し、抽伸加工あるいは転造加工を施すことを特徴とする銅管の製造方法にある(請求項8)。
本発明の銅管の製造方法は、抽伸加工あるいは転造加工において、第1の発明の上記銅管加工油を用いることで、優れた内面形状を有し、焼鈍時に焼き付きや外面変色がなく、成形後に焼鈍した場合の焼鈍後の残油量が少ない銅管を作製することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
第1の発明の銅管加工用潤滑油においては、上述したように、第1添加剤として、1価アルコールを5〜40%(重量%、以下同じ)含有し、第2添加剤として、リン酸エステルを1〜20%含有し、第3添加剤として、アミン誘導体、アルキルスルホン酸塩、数平均分子量200以上1000未満であると共に水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物及びそのハイドロカルビルエーテル、数平均分子量120以上1000未満のポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテル、及び炭素数2〜10の2価アルコールから選ばれる少なくとも1種または2種以上を0.01〜2.0%(重量%、以下同じ)含有する。
【0013】
上記添加剤としての1価アルコールの含有量が5%未満の場合には、潤滑不足となり、成形性が低下するという問題があり、一方、上記1価アルコールの含有量が40%を超える場合には、焼鈍後の残油量が多くなるという問題がある。
また、リン酸エステルの含有量が1%未満の場合には、連続加工した場合に、成形性が悪くなるという問題があり、一方、リン酸エステルの含有量が20%を超える場合には、焼鈍後の残油量が増加するという問題がある。
【0014】
また、上記第3添加剤の含有量が0.01%未満の場合には、銅粉の凝集力及びロールコーティング抑制の効果が見られず、一方、上記第3添加剤の含有量が2.0%を超える場合には、銅分の凝集効果が伸びず、コストアップとなる。また、含有量が多くなると、基油揮発後の残留分が多くなり、品質を悪化させることにつながる。上記含有量は0.1〜1.0%がより好ましい。
【0015】
また、残部に、基油として、平均分子量30000以上のポリイソブチレンの1種又は2種以上と、平均分子量400以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンの1種又は2種以上とを含有する。
上記平均分子量30000以上のポリイソブチレンが含まれない場合には、摩擦面へ導入される油量が少なく潤滑不足となるという問題があり、一方、平均分子量400以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンが含まれない場合には、高粘度となり、取り扱いが困難で作業性を悪化させるという問題がある。
また、上記基油の含有量は、基本的に、上記添加剤の含有量が確保できる範囲とし、潤滑不足を防ぎ、適正な成形性を確保する。
【0016】
また、上記平均分子量30000以上のポリイソブチレンとしては、工業的に入手可能な範囲である、平均分子量30000〜平均分子量60000のポリイソブチレンであることがより好ましい。
また、平均分子量400以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンとしては、引火の危険性や、潤滑油の臭気性を考慮すると、平均分子量80〜平均分子量400のイソパラフィン又はポリイソブチレンであることがより好ましい。
【0017】
また、上記銅管加工用潤滑油は、粘度が100〜1000cSt(at40℃)である。
上記粘度が100cSt未満の場合には、潤滑性が不足するという問題があり、一方、上記粘度が1000cStを超える場合には、粘度が増加し取り扱いが困難になるという問題や、焼鈍後の残油が増加するという問題がある。
上記動粘度は、JIS K 2283の「原油及び石油製品の動粘度試験方法」に準拠して40℃における動粘度を測定し、測定器具としては、JIS K 2839の「石油類試験用ガラス器具」のキャノン−フェンスケ粘度計を用いて測定することができる。
【0018】
なお、添加剤として上記第1添加剤、第2添加剤及び第3添加剤のみを含有する場合、上記基油の合計含有量は、38〜93.99%の範囲となる。しかし、後述する添加剤をさらに加えた場合には、添加剤の含有量に応じて、添加剤と基油との合計が100%となるように、基油の合計含有量が変化する。
また、本発明の銅管加工用潤滑油は、上記基油と添加剤とにより100%になるものであるが、実使用に際して、上述の優れた効果を安定的に操業するために、上記100%の外に、必要に応じて、酸化防止剤、錆止め剤、腐食防止剤、消泡剤等の一種又は二種以上をさらに添加することも勿論可能である。
【0019】
上記酸化防止剤としては、例えば、DBPC(2,6−ジターシャリーブチル−P−クレゾール)等のフェノール系化合物、フェニル−α−ナフチルアミン等の芳香族アミン、ソルビタンモノオレート等の多価アルコールの部分エステル、リン酸エステル及びその誘導体等が挙げられる。
上記錆止め剤としては、例えば、ジノニルナフタレンスルホン酸バリウム等が挙げられる。
上記腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
上記消泡剤としては、例えば、シリコン系のものが挙げられる。
【0020】
また、上記第1添加剤としての1価アルコールは、下記の一般式(1)で表されることが好ましい(請求項2)。
【化3】

(但し、R1は、炭素数9〜18の炭化水素基である。)
上記1価アルコールの炭化水素基の炭素数が8以下の場合には、潤滑性が劣るという問題があり、一方、上記炭化水素基の炭素数が19以上の場合には、潤滑油が残留し易くなるという問題がある。そのため、上記1価アルコールの炭化水素基の炭素数は12〜15であることがより好ましい。
また、上記炭化水素基R1としては、具体的に、例えば、アルキル基及びアルケニル基等がある。より好ましくは、上記アルコールの炭化水素基R1は、アルキル基又はアルケニル基である。
【0021】
また、上記第2添加剤としてのリン酸エステルは、下記の一般式(2)で表されるリン酸エステル、又はリン酸トリトリルであることが好ましい(請求項3)。
【化4】

(但し、R2は、炭素数が12〜18の炭化水素基であり、R3及びR4は炭素数が1〜4の炭化水素基である。)
【0022】
上記の一般式(2)で表される特定のリン酸エステルの炭化水素基R2の炭素数が11以下である場合には、潤滑性が劣るという問題があり、一方、上記炭化水素基R2の炭素数が19以上の場合には、残油しやすくなるという問題がある。
また、上記特定のリン酸エステルの炭化水素基R3及びR4の炭素数が5以上の場合には、焼鈍後に残油量が増加するおそれがある。
また、上記炭化水素基としては、具体的に、例えば、アルキル基及びアルケニル基等がある。より好ましくは、上記R2はアルキル基又はアルケニル基であり、上記炭化水素基R3及びR4はアルキル基である。
【0023】
上記特定のリン酸エステルの具体例としては、例えば、ドデシルフォスフォン酸ジメチルエステル、テトラデシルフォスフォン酸ジメチルエステル、オレイルフォスフォン酸ジメチルエステル、ドデシルフォスフォン酸ジエチルエステル、ドデシルフォスフォン酸ジブチルエステル、テトラデシルフォスフォン酸ジエチルエステル等がある。
【0024】
また、上記リン酸エステルとして、リン酸トリトリルを用いる場合には、焼鈍時に浮遊する熱分解成分が銅管の外周表面(外面)に再付着し難いため、外面変色を抑制することができる。
【0025】
上記アミン誘導体は、脂肪族アミン、アルカノールアミン、脂肪族ポリアミン、芳香族アミン、脂環式アミン、複素環アミン、及びそれらのアルキレンオキシド付加物であることが好ましい(請求項4)。
また、上記アミン誘導体は、ヒドロキシル基、エーテル基が含まれていてもよい。
【0026】
上記脂肪族アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、カプリルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、牛脂アミンジメチルアミン、ジエチルアミン、ジオクチルアミン、ブチルオクチルアミン、ジステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、及びトリオクチルアミン等が挙げられる。
【0027】
また、上記アルカノールアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、N,N−ジイソプロピルエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチルイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルイソプロパノールアミン、N−エチルイソプロパノールアミン、N,N−ジエチルイソプロパノールアミン、N−イソプロピルイソプロパノールアミン、N,N−ジイソプロピルイソプロパノールアミン、モノn−プロパノールアミン、ジn−プロパノールアミン、トリn−プロパノールアミン、N−メチルn−プロパノールアミン、N,N−ジメチルn−プロパノールアミン、N−エチルn−プロパノールアミン、N,N−ジエチルn−プロパノールアミン、N−イソプロピルn−プロパノールアミン、N,N−ジイソプロピルn−プロパノールアミン、モノブタノールアミン、ジブタノールアミン、トリブタノールアミン、N−メチルブタノールアミン、N,N−ジメチルブタノールアミン、N−エチルブタノールアミン、N,N−ジエチルブタノールアミン、N−イソプロピルブタノールアミン、及びN,N−ジイソプロピルブタノールアミン等が挙げられる。
【0028】
また、上記脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ヘキサメチレンジアミン、及び硬化牛脂プロピレンジアミン等が挙げられる。
また、上記芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、ジメチルアニリン、及びジエチルアニリン等が挙げられる。
【0029】
また、上記脂環式アミンとしては、例えば、N−シクロヘキシルアミン、N,N−ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチル−シクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルーシクロヘキシルアミン、N,N−ジ(3−メチル−シクロヘキシル)アミン、N,N−ジ(2−メトキシ−シクロヘキシル)アミン、及びN,N−ジ(4−ブロモ−シクロヘキシル)アミン等が挙げられる。
【0030】
上記複素環アミンとしては、例えば、ピロリジン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、ピペラジン、ホモピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、N−プロピルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、N−アセチルピペラジン、N−プロピルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、N−アセチルピペラジン、N−アセチルホモピペラジン、1−(クロロフェニル)ピペラジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノエチルピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、及び1,4−ビス(アミノプロピル)ピペラジン等が挙げられる。
【0031】
上記アミン誘導体は、油に対する溶解性の面から、分枝鎖を有する全炭素数4以上の炭化水素基を有していることが好ましい。また、全炭素数が20を超えた場合には、銅管の加工処理後に行われる焼鈍において、オイルステインが発生しやすくなるおそれがある。
【0032】
また、上記アルキレンオキシド付加物は、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、α−オレフィンオキシド、スチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加重合することにより得ることができる。付加されるアルキレンオキシドの重合形態として、1種類のアルキレンオキシドの単独重合、2種類以上のアルキレンオキシドランダム共重合、ブロック共重合又は、ランダム/ブロック共重合等がある。
また、アルキレンオキシドの付加モル数が6モルを超える場合には、基油への溶解性が悪くなるおそれがある。より好ましくは、アルキレンオキシドの付加モル数は1〜4モルである。
【0033】
上記アルキルスルホン酸塩としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルアリルスルホン酸、アミドスルホン酸、及びジアルキルスルホこはく酸ナトリウム等が挙げられる。
また、上記アルキルスルホン酸塩は、アルキル基が炭素数4〜18であることが好ましい。
【0034】
上記数平均分子量200以上1000未満である水酸基を3〜6個有する多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜4量体、例えば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等)、トリメチロールアルカン(例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)、及びこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトース、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール、イジリトール、タリトール、ズルシトール、アリトール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロース等が挙げられる。
【0035】
付加されるアルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜6のものが好ましい。より好ましくは炭素数2〜4のものがよい。
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、1,2−エポキシ−1−メチルプロパン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシヘキサン等がある。
上記アルキレンオキシド等付加物は、例えば、1種類のアルキレンオキシド等の単独重合、2種類以上のアルキレンオキシド等のランダム共重合、ブロック共重合又は、ランダム/ブロック共重合等がある。
また、水酸基を3〜6個有する多価アルコールにアルキレンオキシドを付加させる際、付加される水酸基は、全ての水酸基であっても、一部の水酸基であってもよい。
【0036】
また、上記多価アルコールのアルキレンオキシド付加物及びそのハイドロカルビルエーテルを構成するアルキレンオキサイド付加物の末端水酸基の一部又は全てを、ハイドロカルビルエーテル化させたものを使用することもできる。
ハイドロカルビル基は、炭素数1〜24の炭化水素基である。
炭化水素基としては、たとえば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等がある。
【0037】
炭素数1〜24のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖又は分枝のペンチル基、直鎖又は分枝のヘキシル基、直鎖又は分枝のヘプチル基、直鎖又は分枝のオクチル基、直鎖又は分枝のノニル基、直鎖又は分枝のデシル基、直鎖又は分枝のウンデシル基、直鎖又は分枝のドデシル基、直鎖又は分枝のトリデシル基、直鎖又は分枝のテトラデシル基、直鎖又は分枝のペンタデシル基、直鎖又は分枝のヘキサデシル基、直鎖又は分枝のヘプタデシル基、直鎖又は分枝のオクタデシル基、直鎖又は分枝のノナデシル基、直鎖又は分枝のイコシル基、直鎖又は分枝のヘンイコシル基、直鎖又は分枝のドコシル基、直鎖又は分枝のトリコシル基、直鎖又は分枝のテトライコシル基等がある。
【0038】
炭素数2〜24のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、直鎖又は分枝のプロペニル基、直鎖又は分枝のブテニル基、直鎖又は分枝のペンテニル基、直鎖又は分枝のヘキセニル基、直鎖又は分枝のヘプテニル基、直鎖又は分枝のオクテニル基、直鎖又は分枝のノネニル基、直鎖又は分枝のデセニル基、直鎖又は分枝のウンデセニル基、直鎖又は分枝のドデセニル基、直鎖又は分枝のトリデセニル基、直鎖又は分枝のテトラデセニル基、直鎖又は分枝のペンタデセニル基、直鎖又は分枝のヘキサデセニル基、直鎖又は分枝のヘプタデセニル基、直鎖又は分枝のオクタデセニル基、直鎖又は分枝のノナデセニル基、直鎖又は分枝のイコセニル基、直鎖又は分枝のヘンイコセイル基、直鎖又は分枝のドコセニル基、直鎖又は分枝のトリコセニル基、直鎖又は分枝のテトラコセニル基等がある。
【0039】
炭素数5〜7のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等がある。
【0040】
炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む)、メチルエチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルシクロペンチル基(全ての構造異性体を含む)、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む)、メチルエチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルシクロヘキシル基(全ての構造異性体を含む)、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む)、メチルエチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む)、ジエチルシクロヘプチル基(全ての構造異性体を含む)等がある。
【0041】
炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等がある。
【0042】
炭素数7〜18のアルキルアリール基としては、例えば、トリル基(全ての構造異性体を含む)、キシリル基(全ての構造異性体を含む)、エチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のプロピルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖または分枝のブチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のペンチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のヘキシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のヘプチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のオクチルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のノニルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のウンデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)、直鎖又は分枝のドデシルフェニル基(全ての構造異性体を含む)等がある。
【0043】
炭素数7〜12のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基(プロピル基の異性体を含む)、フェニルブチル基(ブチル基の異性体も含む)、フェニルペンチル基(ペンチル基の異性体も含む)、フェニルヘキシル基(ヘキシル基の異性体も含む)等がある。
【0044】
次に、上記数平均分子量120以上1000未満のポリアルキレングリコール及び、そのハイドロカルビルエーテルを構成するアルキレンオキシドは、炭素数2〜6が好ましい。
このようなアルキレンオキシドとしては、上述の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物及びそのハイドロカルビルエーテルを構成するアルキレンオキシドとして列挙したものと同様のもの等がある。
また、上記ポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテルとしては、ポリアルキレングリコールの末端水酸基の一部又は全てをハイドロカルビルエーテル化させたものを用いることができる。
ハイドロカルビル基としては、例えば、上述の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物及びそのハイドロカルビルエーテルを構成するハイドロカルビル基として列挙した各基等がある。
【0045】
次に、上記2価アルコールは、分子中にエーテル結合を有しておらず、炭素数2〜10のものであり、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、及び1,10−デカンジオール等が挙げられる。
【0046】
また、添加剤として、さらに、芳香族炭化水素を1〜10%含有することが好ましい(請求項5)。
この場合には、成形性をさらに向上させるという効果を得ることができる。
上記芳香族炭化水素の含有量が1%未満である場合には、効果が現れず、一方、上記芳香族炭化水素の含有量が10%を超える場合には、残油量が増加するおそれや、臭気が発生するおそれがある。
【0047】
また、上記銅管の内面を加工する際に該内面に供給される内面加工用であることが好ましい(請求項6)。
銅管の内面に残留した潤滑油を除去することは外面に比べ相当困難である。すなわち、この場合には、残油量が少ないことが重要となるため、特に有効である。上記銅管は、ルームエアコン等の空調機、冷蔵庫、冷凍庫等の冷凍機の熱交換器に用いられる伝熱管として、特に好適に使用することができる。なお、加工の種類を特定することなく、多目的に利用が可能であることは言うまでもない。
【0048】
また、上記内面加工は、上記銅管の内面に凹凸形状を設ける転造加工であることを特徴とする銅管加工用潤滑油(請求項7)。
上記転造加工は、銅管内にプラグを入れて、外面から、例えば、回転ボールで圧下することによって、銅管内面に複雑なリップルフィンを付与する、非常に過酷な加工である。また、内面形状が複雑となる分だけ残油しやすくなる。このような転造加工においても、上記潤滑油は、優れた成形性を有し、焼鈍後の残油量を少なくすることができ、特に有効である。
【0049】
第2の発明の銅管の製造方法において、上記抽伸加工あるいは上記転造加工を施した後に焼鈍を行う場合には、上記抽伸加工あるいは上記転造加工を施した上記銅管の管内雰囲気を非酸化性ガスで置換し、焼鈍を行うことが好ましい(請求項9)。
この場合には、焼鈍後の上記銅管の内面に残留する潤滑油の量の低減に非常に有効である。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明する。なお、これらの実施例は、本発明の1実施様態を示すものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
本例では、本発明の実施例及び比較例として、総重量500kgのリン脱銅管を、表1及び表2に示す組成の潤滑油(試料E1〜試料E25、試料C1〜試料C5)を使用して転造加工を行い、銅管外径φ7.00mm、銅管内径φ6.35mm、肉厚0.25mm、長さ約5000mとし、切断及び整列巻取りして重量250kgのレベルワウンドコイル状の銅管を作製した。
なお、転造加工では、フィン高さ0.24mm、フィン頂角10°、リード角30°の条件で加工を行うことにより、図1に示すごとく、内側に突出した多数のリップルフィンを有する断面形状に成形した。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
表1及び表2の記号を説明する。
A1:平均分子量60000のポリイソブチレン
A2:平均分子量30000のポリイソブチレン
A3:平均分子量3700のポリイソブチレン
B1:平均分子量120のイソパラフィン
B2:平均分子量270のポリイソブチレン
C1:ヘキサデシルアルコール
C2:ドデシルアルコール
C3:ウンデシルアルコール
C4:オレイルアルコール
D1:ドデシルフォスフォン酸ジメチルエステル
D2:テトラデシルフォスフォン酸ジメチルエステル
D3:オレイルフォスフォン酸ジメチルエステル
D4:リン酸トリトリル
E1:トリプロピレングリコール
E2:N,N−ジシクロヘキシルアミンエチレンオキシド2モル付加物
E3:ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム
【0055】
得られた各試料を用い、以下の評価試験を行った。結果を表3及び表4に示す。
<リップルフィン高さ>
リップルフィン高さH(図1)は、転造加工直後の銅管長手方向における、転造開始より100mの位置の断面を、拡大鏡を用いて観察し、存在する全てのリップルフィンの高さを測定し、それらの平均値を求めることにより評価した。
(評価基準)
5:0.235mm以上
4:0.230mm以上0.235mm未満
3:0.225mm以上0.230mm未満
2:0.220mm以上0.225mm未満
1:0.220mm未満
【0056】
<リップルフィン高さ維持性>
リップルフィン高さ維持性は、転造直後の銅管長手における転造開始より100m、及び転造終了100m手前の2ヵ所の位置での、リップルフィン高さを上記リップルフィン高さHと同様にして測定し、両測定値の差分より評価した。
(評価基準)
5:0.005mm以下
4:0.005mm超え0.010mm以下
3:0.010mm超え0.015mm以下
2:0.015mm超え0.020mm以下
1:0.020mm超え
【0057】
次に、上記レベルワウンドコイル状の銅管の銅管内雰囲気を、水素混合ガス(H2:5%、N2:95%)により置換した後、量産用のローラーハース型焼鈍炉を用いて、銅管の両端を封止することなく、DXガス雰囲気中において軟質材の焼鈍条件に従って530℃で1時間焼鈍処理を施した。
また、焼鈍処理後の各試料について以下の評価試験を行った。結果を表3及び表4に示す。
【0058】
<残油量>
残油量は、焼鈍処理後、上記レベルワウンドコイル上面に相当する銅管をコイルの入り口端から出側端までの各段について1m長さで残油測定用銅管を採取し、有機溶剤で抽出洗浄し、赤外分光分析法によって3000〜2800cm-1における赤外吸光度を測定した。事前に作成しておいた検量線を元に、銅管内に残留する焼鈍残油量を求め、評価した。
(評価基準)
5:0.03mg/m以下
4:0.03mg/m超え0.05mg/m以下
3:0.05mg/m超え0.07mg/m以下
2:0.07mg/m超え0.10mg/m以下
1:0.10mg/m超え
【0059】
<相溶性>
相溶性は、JISK2211「冷凍機油」の付属書2「冷媒との化学安定性試験方法(シールドチューブテスト)」に準拠して、シールドチューブテストを実施し、得られた焼鈍残油が冷凍システムに与える影響を調査することで評価した。
上記シールドチューブテストは以下のように行った。内径がφ10mmであるガラス管に10mLの冷媒と、1mLの試験油と、太さが1.6mm、長さ50mmである金属線からなる触媒とを入れた後、ガラス管の上部を溶融して密閉した。次に、ガラス管を170℃の温度で14日間保持した後に、液層の状態変化を観察し、相溶性を評価した。
(評価基準)
○:液層の状態変化がない場合
×:触媒の劣化、液層の変色、白濁もしくは析出物が存在する場合
【0060】
<コーティング>
ピンオンディスク式摩擦磨耗試験機を用い、コーティングを評価した。ピンオンディスク装置は、ピンを固定する支持部と、これに対面して回転可能に配設されたディスク部とを有する。ピンとして、先端R2mm、φ5mm、8mmLの純銅、ディスクとして、φ50mm、5mmtの冷間工具鋼SKD11を用い、荷重20kgf、周速18m/minの条件で20分間、試験を実施した。
試験後のディスク表面を目視にて観察し、銅のコーティング量を評価した。
(評価基準)
○:明瞭な銅のコーティングが確認されない場合
×:明瞭な銅のコーティングが確認される場合
【0061】
<境界潤滑性>
摺動部材としてのSUJ2製鋼球(3/16インチ)、試験材としての150mmLのリン脱酸銅板を用い、板温度50℃、摺動速度5mm/sec、摺動回数150回として、バウデンレーベン摩擦試験を実施し、摩擦係数を求めることによって境界潤滑性を評価した。
(評価基準)
○:摩擦係数が0.15未満の場合
×:摩擦係数が0.15以上の場合
【0062】
本実施例に置いて、試料としては、焼鈍残油0.01gと、冷凍機油1.0gとを混合したものを使用し、触媒としては、鉄、銅、及びアルミニウムの線材を用いた。また、冷媒としては、R410Aを使用し、冷凍機油としてはエステル油を用いた。
リップルフィン高さ、リップルフィン高さ維持性、残油性とも、評価1以下を不合格、相溶性、コーティング、及び境界潤滑性は評価×を不合格とした。
【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
表3より知られるごとく、本発明の実施例である試料E1〜試料E16は、リップルフィン高さ、リップルフィン高さ維持性、残油量、相溶性、コーティング、及び境界潤滑性のいずれの項目においても、良好な結果を示した。
【0066】
表4より知られるごとく、本発明の比較例である試料C1は、基油として平均分子量30000以上のポリイソブチレンを含有していないため潤滑不足になり、また、第3添加剤を含有していないため、銅粉の凝集力及びロールコーティング抑制の効果が見られないため、リップルフィン高さ及びコーティングが不合格であった。
また、本発明の比較例である試料C2は、基油として平均分子量30000以上のポリイソブチレンを含有していないため潤滑不足になり、また、添加剤として、第2添加剤及び第3添加剤を含有しておらず、成形性、銅粉の凝集力、及びロールコーティング抑制の効果が見られないため、リップルフィン高さ及びコーティングが不合格であった。
【0067】
また、本発明の比較例である試料C3は、基油として平均分子量30000以上のポリイソブチレンを含有していないため、潤滑不足になり、また、添加剤として第2添加剤及び第3添加剤のいずれも含有していないため、成形性、銅粉の凝集力、及びロールコーティング抑制の効果が見られないため、残油量、リップルフィン高さ、及びコーティングが不合格であった。
また、本発明の比較例である試料C4は、基油として平均分子量30000以上のポリイソブチレンを含有しておらず、また、第3添加剤を含有していないため、残油量、リップルフィン高さ、外面変色、及びコーティングが不合格であった。
【0068】
また、本発明の比較例である試料C5は、基油として平均分子量30000以上のポリイソブチレンを含有していないため潤滑不足となり、添加剤として、第2添加剤及び第3添加剤を含有していないため、成形性、銅粉の凝集力、及びロールコーティング抑制の効果が見られず、またアルコールの含有量が本発明の上限を上回り、焼鈍後の銅管内残油量が多くなり、冷媒への不溶解生成物が増加するため、リップルフィン高さ、相溶性及びコーティングが不合格であった。
また、本発明の比較例である試料C6は、基油として平均分子量30000以上のポリイソブチレンを含有していないため潤滑不足となり、また、第3添加剤を含有しておらず、銅粉の凝集力、及びロールコーティング抑制の効果が見られないため、リップルフィン高さ及びコーティングが不合格であった。
【0069】
また、本発明の比較例である試料C7、試料C8、及び試料C9は、基油として平均分子量30000以上のポリイソブチレンを含有していないため潤滑不足となり、また、第3添加剤の含有量が本発明の上限を上回っているため、残油量、リップルフィン高さ、境界潤滑性が不合格であった。
【0070】
また、本発明の比較例である試料C10は、潤滑油全体の粘度が本発明の下限を下回るため、潤滑性が不足し、リップルフィン高さ維持性が不合格であった。
また、本発明の比較例である試料C11は、潤滑油全体の粘度が本発明の上限を上回るため、残油量が不合格であった。
【0071】
また、本発明の比較例である試料C12は、基油の合計含有量が本発明の下限を下回り、アルコールの含有量が本発明の上限を上回るため、焼鈍後の銅管内残油量が多くなり、冷媒への不溶解生成物が増加するため、残油量及び相溶性が不合格であった。
また、本発明の比較例である試料C13は、アルコールの含有量が本発明の下限を下回るため、潤滑不足となり成形性が低下するため、リップルフィン高さが不合格であった。
【0072】
また、本発明の比較例である試料C14は、リン酸エステルの含有量が本発明の下限を下回るため、連続成形した場合に成形性が悪くなるため、リップルフィン高さ維持性が不合格であった。
また、本発明の比較例である試料C15は、リン酸エステルの含有量が本発明の上限を上回るため、焼鈍後の残油量が増加するため、残油量が不合格であった。
【0073】
また、本発明の比較例である試料C16は、第3添加剤の含有量が本発明の下限を下回るため、銅粉の凝集力及びロールコーティング抑制の効果が見られず、コーティングが不合格であった。
また、試料C17は、芳香族化合物の含有量が本発明の好ましい範囲の下限を下回るため、成形性を向上させる効果が見られないためリップルフィン高さが優れない。
また、試料C18は、芳香族化合物の含有量が本発明の好ましい範囲の上限を上回るため、残油量が優れない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】転造加工後の銅管の断面図。
【符号の説明】
【0075】
1 銅管
2 リップルフィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅又は銅合金よりなる銅管を加工するための銅管加工用潤滑油であって、
添加剤として、1価アルコールを5〜40%と、
リン酸エステルを1〜20%と、
アミン誘導体、アルキルスルホン酸塩、数平均分子量200以上1000未満であると共に水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、及びそのハイドロカルビルエーテル、数平均分子量120以上1000未満のポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテル、及び炭素数2〜10の2価アルコールから選ばれる1種または2種以上を0.01〜2.0%(重量%、以下同じ)とを含有し、
残部に、基油として、平均分子量30000以上のポリイソブチレンの1種又は2種以上と、平均分子量400以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンの1種又は2種以上とを含有し、
粘度が100〜1000cSt(at40℃)であることを特徴とする銅管加工用潤滑油。
【請求項2】
請求項1において、上記1価アルコールは、下記の一般式(1)で表されることを特徴とする銅管加工用潤滑油。
【化1】

(但し、R1は、炭素数9〜18の炭化水素基である。)
【請求項3】
請求項1又は2において、上記リン酸エステルは、下記の一般式(2)で表されるリン酸エステル、又はリン酸トリトリルであることを特徴とする銅管加工用潤滑油。
【化2】

(但し、R2は、炭素数が12〜18の炭化水素基であり、R3及びR4は炭素数が1〜4の炭化水素基である。)
【請求項4】
請求項1〜3において、上記アミン誘導体は、脂肪族アミン、アルカノールアミン、脂肪族ポリアミン、芳香族アミン、脂環式アミン、複素環アミン、及びそれらのアルキレンオキシド付加物であることを特徴とする銅管加工用潤滑油。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、添加剤として、さらに、芳香族炭化水素を1〜10%含有することを特徴とする銅管加工用潤滑油。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、上記銅管加工用潤滑油は、上記銅管の内面を加工する際に該内面に供給される内面加工用であることを特徴とする銅管加工用潤滑油。
【請求項7】
請求項6において、上記内面加工は、上記銅管の内面に凹凸形状を設ける転造加工であることを特徴とする銅管加工用潤滑油。
【請求項8】
銅又は銅合金からなる銅管の少なくとも内面に、請求項1〜7のいずれか一項に記載の上記銅管加工用潤滑油を供給し、抽伸加工あるいは転造加工により内面加工を施すことを特徴とする銅管の製造方法。
【請求項9】
請求項8において、上記内面加工を施した上記銅管の管内雰囲気を非酸化性ガスで置換し、焼鈍を行うことを特徴とする銅管の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−154055(P2007−154055A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351755(P2005−351755)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000002277)住友軽金属工業株式会社 (552)
【Fターム(参考)】