説明

銅製品の緑青の付いた表面を保護する方法並びに緑青の付いた銅製品

【課題】 緑青の付いた銅製品を搬送及び包装する際に緑青ダストが生じるのを防止し、かつ、同時に風化性を持続的に阻止しないことを保証する、銅製品の緑青の付いた表面を保護する方法の提供。
【解決手段】 この課題は、ポリマー水性分散物を緑青の付いた表面に適用して、ポリマー分散物を多孔質の緑青の表面近辺領域に浸透させそしてそのポリマー水性分散物を次いで乾燥させ、その際にポリマー分散物が緑青と一緒に水蒸気拡散透過性の複合体を生じることによって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は緑青の付いた銅製品の表面を保護する方法並びに緑青の付いた表面を持つ銅製品に関する。
【背景技術】
【0002】
屋根用外被及びカーテンウオールのために並びに屋根排水のために、特別に開発された機械的化学的熱的方法で銅製薄板を工業的に緑青化することは公知である。この方法の場合には酸化層が銅から生成される。これは、長期間に亙っての周囲雰囲気の影響で自然に緑青が生じる場合にも起こる様な方法である。銅製薄板の工業的風化作用は、傾斜した表面が自然気象条件のもとで最終段階に自然に緑色になるまでの待機時間を短縮する。それによって、屋根、建物の正面及び屋根排水系は銅にだけ生じる緑青を初めから有している。個々の銅製薄板相互の間に仕上げ技術的に色に差異が生じ得るので、全ての風化工程を制御することは困難である。色範囲表は黄緑色から青緑まであり、その結果、結局、緑青の付いたあらゆる銅製品はそれぞれ一品製品である。自然暴露によって緑青は、最終的には色の違いを調整するために、色変化をもたらすことのできる更なる処理に付される。このことが表面の自然さを強調する。
【0003】
異なる銅製品の場合には、建設場所に組み込む前又は間に材料に施される処理に依存して表面の視覚的外観に既にしばしば問題がある。緑青の付いた銅製薄板の場合には、銅製製品を搬送及び包装する際に緑青の磨耗が生じそして緑青ダストが舞い上がり、該ダストが銅製品の加工の際に健康に害を及ぼしそして使用される道具を攻撃的に侵蝕し得る。屋根用外被及びカーテンウオール並びに屋根排水系の分野の未被覆の銅製品はしばしばフィルムによって障害に対して保護して市販することができるが、このような解決法は緑青の付いた表面には適さない。原因は銅製品の上に固定されずに存在する緑青ダストがフィルムが十分に密着するのを阻止することにあると思われる。フィルムを固定するために接着剤を用いる場合には、これが接着剤の種類及び塗布量次第で緑青層との相互作用をもたらし、これが不所望の変色をもたらし得る。緑青を保護するための塗装は、この場合には銅製品の所望の風化を中断させるので、勿論、不可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このことから本発明の課題は、緑青の付いた銅製品を搬送及び包装する際に緑青ダストが生じるのを防止し、かつ、同時に風化性を持続的に阻止しないことを保証する、銅製品の緑青の付いた表面を保護する方法を提供することである。更にこの性質を持つ相応する銅製品を提供するべきである。
【0005】
この課題は、請求項1の特徴的構成要件を持つ方法によって解決される。これらの要求を満足する銅製品は請求項6の対象である。
【0006】
本発明の技術思想の有利な実施態様は従属項の対象である。
【0007】
銅製品、特に銅製薄板の緑青の付いた表面を保護する本発明の方法の場合には、緑青の付いた表面にポリマー水性分散物を適用することを構成要件とする。この場合、このポリマー分散物は多孔質の緑青の表面近辺領域に侵入しそして乾燥後に、表面近辺の空隙或いは孔が有機物質で凝固される。即ち、ポリマー分散物は緑青と一緒に水拡散透過性複合体を形成する。
【0008】
この方法によって固定していない緑青ダストが固定される。同時に緑青の耐摩耗性が改善され、その結果新たなダストは生じない。この様な作業で処理された緑青付きの銅製品は包装及び搬送の際に実質的に簡単に取り扱うことができる。緑青ダストによる健康への悪影響は、道具への攻撃的な腐食と同時に回避される。
【0009】
更にポリマー水性分散物の形の有機被覆物は、更に加工する際の取り扱い性を簡単にし、かつ、銅製品の曲げ又は延伸の際に緑青が剥落するのを減少させる。特に銅製品を折り曲げた領域でも剥落を明らかに減少させることができる。
【0010】
ポリマー水性分散物は、水質危険度1の、水質をあまり危険にしない液体である。このポリマー水性分散物はその粘度について、多孔質緑青層によって完全に吸収されるように調整されている。それによって緑青自身は少なくとも表面近辺領域において、未被覆の緑青に比べて変更された構造になる。
【0011】
本発明において銅製品とは、自然な風化の過程でも生じる様な、銅塩から緑青を生じている銅及び銅合金の半製品も意味する。
【0012】
ポリマー分散物を緑青の付いた表面に小滴の状態で適用する場合が有利であることがわかっている。特にポリマー分散物は細かく霧状化しそして、塗料の場合のように完全に密封された被覆層を生じることなく、その個々の小滴が緑青層によって吸収されるように適用するのが有利である。この様に適用されそして特に噴霧される量は、全ての空隙或いは孔がポリマー水性分散物で満たされることがなく、表面近辺の空隙だけが満たされるように5g/m〜10g/mと少ない量に保つ。
【0013】
規定した量を滑らかな、即ち解放孔のない表面に塗布した場合には、乾燥後に約5μmの厚さの密封層がもたらされる。普通の塗料は塗布・乾燥後に80μm〜150μmの比較的に厚い層圧を持つ。ポリマー水性分散物は約15%〜20%の比較的に少ない固形分含有量を有するようにする。これに比較して塗料はしばしば50%までの固形分含有量を有している。この少ない固形分含有量は、ポリマー分散物が水の様に薄い液体でありそしてそれ故に緑青中に問題なく拡散するという長所を有している。ポリマー分散物の高含有量の水は、乾燥の際に環境を汚染することなく蒸発する。蒸発は、特に赤外線によって非常に効率を上げることができる。後に残る固体成分は乾燥後に空隙の壁だけに存在し、空隙を完全に満することがない。これによって緑青の付いた銅製品の解放孔が保持されたままになる。
【0014】
本発明の方法の本質的な長所は、このように処理された緑青層が自然な緑青の表面と視覚的に殆ど相違していないが、本質的に良好に加工させそして取り扱わせることにある。水蒸気透過性のポリマー層、好ましくはアクリレートをベースとするそれは、銅製品の取り付け位置及び要求次第で時間の経過につれて、痕跡も変色も後に残すことなく分解される。それ故にこれは一時的な保護なのである。従来に搬送の際に使用されてきた保護フィルムと違って、現場でダストを生じない。
【0015】
この有機層は一方では疎水性であり、もう一方では、必要とする湿気及び水の緑青層中への入り込みを許容するので、緑青の表面が風雨にさらされる過程で公知のように更に変化することができる。
【0016】
驚くべきことに銅製品の未被覆の緑青付き表面の場合よりも風雨にさらされる過程で色の同化が速やかに生じることがわかった。
【0017】
本発明の方法に従って処理された緑青付き表面が変化した湿潤挙動を示すことがもちろんわかっている。未処理の表面は水で濡らした場合にただちに湿気を吸収し薄暗く変色するが、処置された表面によって水が最初は撥かれる。処理された銅製品も水で長時間濡れた場合に始めて同様に薄暗く変色する。ポリマー分散物が適用された保護層は透明であり、未被覆の緑青表面と僅かに異なった反射挙動を示し、横から光が射した場合には僅かに鈍い光沢が確認できる。
【0018】
本発明の方法は公知の緑青化法と組合せて使用するのが有利である。一般に、緑青化の際に、最初に銅製品の表面の研磨を行い、次いで緑青化用セラミックで被覆する。その次に耐候室に保存しそして状態調節して風化処理する。所定の緑青品質が達成された後に今度は本発明の方法を実施してもよい。即ち表面を、ポリマー水性分散物の状態の一時的な保護層で被覆しそして次にポリマー分散物を乾燥する。最後に完成銅製品を品質試験しそして完成品を包装する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑青の付いた銅製品の表面を保護する方法において、ポリマー水性分散物を緑青の付いた表面に適用して、ポリマー分散物を多孔質の緑青の表面近辺領域に浸透させそしてそのポリマー水性分散物を次いで乾燥させ、その際にポリマー分散物が緑青と一緒に水蒸気拡散透過性の複合体を生じることを特徴とする、上記方法。
【請求項2】
5g/m〜10g/mの量のポリマー水性分散物を緑青の付いた表面に適用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリマー水性分散物を小滴状で緑青の付いた表面に適用する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ポリマー水性分散物の固体分含有量が15〜20%である、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
適用されたポリマー分散物の水成分を赤外線によって蒸発させる、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
多孔質の緑青の表面近辺領域が、緑青と水蒸気拡散透過性の複合体を形成するポリマー水性分散物で固化されていることを特徴とする、緑青の付いた表面を持つ銅製品。
【請求項7】
緑青に比べて視覚的に色のくすんだポリマー水性分散物が緑青に適用されている、請求項6に記載の緑青の付いた表面を持つ銅製品。
【請求項8】
ポリマー分散物の固形分含有量が15%〜25%である、請求項6又は7に記載の銅製品。
【請求項9】
5g/m〜10g/mの量のポリマー水性分散物が緑青の付いた表面に適用されている、請求項6〜8のいずれか一つに記載の銅製品。
【請求項10】
ポリマー水性分散物がアクリレートをベースとして製造されている、請求項6〜9のいずれか一つに記載の銅製品。
【請求項11】
ポリマー水性分散物が溶剤を含まない請求項6〜10のいずれか一つに記載の銅製品。

【公開番号】特開2008−119688(P2008−119688A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287995(P2007−287995)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(391011951)ケイエムイー・ジャーマニー・アクチエンゲゼルシャフト (9)
【Fターム(参考)】