説明

鋼材品質情報伝達装置およびそれを用いた鋼材品質管理方法

【課題】出荷時に鋼材に添付された品質データが、鋼材の加工流通過程において確実に伝達されるように管理するために用いる鋼材品質情報伝達装置およびそれを用いた鋼材の品質管理方法を提供する。
【解決手段】鋼材に貼り付けた一の情報記録媒体の固有情報を前記鋼材の他の場所に貼り付けた他の情報記録媒体へ転写する鋼材品質情報伝達装置であって、前記鋼材品質情報伝達装置は前記一の情報記録媒体と前記他の情報記録媒体が同一鋼板内に貼り付けられていることを電気信号により確認した後、前記一の情報記録媒体の固有情報を前記他の情報記録媒体に転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は出荷時に鋼材に添付された品質データが、鋼材の加工流通過程において確実に伝達されるように管理するために用いる鋼材品質情報伝達装置およびそれを用いた鋼材品質管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼メーカーから需要家に至る鋼材の加工流通過程において当該鋼材の品質情報が正確に伝達されるように種々の品質管理方法が提案実用化されている。
【0003】
現在、厚鋼板の品質管理方法として最も一般的な方法は、鉄鋼メーカーから厚鋼板が出荷される際に、製品情報や識別記号、識別色などを鋼板表面に直接印字するマーキングを施し、需要家において、鋼板に記載された固有情報と、鉄鋼メーカーで別途発行されるミルシート(規格品証明書)に記載されている固有情報を照合して品質情報を入手する方法である。H形鋼などでは、鋼種、サイズ、製造者、製品番号などを標記したラベルを鋼材に貼り付ける場合もある。
【0004】
図1にマーキングによる品質情報の管理方法の一例を示す。(a)は製品情報2、識別記号3がマーキングされた鋼板1、(b)は鋼板表面の拡大図、(c)は鋼材1の品質情報が記載されたミルシート4を示す。
【0005】
最近のIT技術の進歩を利用した方法として、鋼板に取り付けられたICタグから固有情報を読み取り、ネットワークを通じて対応する固有情報と照合する手法や(例えば、特許文献1)、ボルトのように小さくてICタグで管理が困難な物品を対象として、レーザーマーキングにより、電子透かしパタ−ンを物品の表面に視認可能に直接描画する技術が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−296679号公報
【特許文献2】特開2009−129424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、厚鋼板の場合、鉄鋼メーカーで製造された後、厚板を剪断する設備を持つシャー業者(加工業者)や需要家において希望する寸法に剪断された後、建築、橋梁、造船などの鋼構造物に使用されることが多く、剪断前の鋼板(大板)から、剪断後の複数の鋼板(小板製品)のそれぞれに品質情報が正確に伝達されることが要求される。
【0008】
しかしながら、鉄鋼メーカーから出荷される厚鋼板(出荷製品:大板)に品質情報を付与する方法は、鋼板(大板)毎の識別は可能であるが、1枚の大板から採取される小板製品である複数の鋼板(小売製品)夫々への伝達に適したものではない。例えば、鋼板表面にマーキングしたり、ICタグを貼り付けることは以下のような問題がある。
【0009】
(1)マーキング:加工業者において裁断される大きさ、形状は2次製品(小板製品)によって多種多様であり、マーキングの途中において鋼板が切断された場合、品質情報の全てが継承されない。
【0010】
例えば、バーコード、QRコードあるいは電子透かしなどにより品質情報を縮小化することは可能であるが、想定される切断サイズより狭いピッチ(例えば板厚以下など)でマーキングするためには、膨大な設備投資が必要となる。
【0011】
(2)ICタグ:マーキングと同様に、切断サイズ以下のピッチで貼り付けることはコスト的に現実的でなく、仮に可能であったとしても、切断後の加工(曲げ、溶接など)に耐え得るものは開発されていない。
【0012】
したがって、鉄鋼メーカーで出荷製品(大板)に付与する品質情報は最小限に抑え、加工業者や需要家が小売製品の必要量に応じて個々に品質情報を伝達する方法が望ましい。
【0013】
ただし、鋼板にマーキングされたバーコード、QRコードあるいは電子透かしなどを機械的に読み取り、複製することは技術的に可能であるが、転写する鋼板が同一のものであるかどうかの確認は作業員が行うため、作業ミスや異材混入により誤伝達が生じる可能性がある。
【0014】
また、特許文献1では、書き換え不可で且つユニークな識別情報を提供する半導体チップを用いたタグを(段落0054)、鋼材メーカーにて大板製品の現品に添付する(段落0064)。次に、加工業者、需要家が半導体チップから発信されるマイクロ波による当該識別情報をリーダで読み取ってデータセンタに照会して当該識別情報で管理される品質情報を入手し(段落0072)、品質情報に関連つけた情報を加工後の小板製品の現品に添付する(段落0074、0075)。
【0015】
しかし、小板製品にタグを添付したり、リーダをタグに近づけて識別情報を読み取るのは作業員が行うため(段落0098)、作業ミスや異材混入により誤伝達が生じる可能性がある。
【0016】
このように、いずれの方法であったとしても、大板の品質情報を小板製品に伝達する際、方法によってその機会が相違するものの、人為的ミスを払拭することはできない。
【0017】
そこで、本発明は、大板の品質情報を経済的負担が小さく、且つ確実に小板製品に伝達できる鋼材品質管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、鉄鋼メーカーにて出荷製品(鋼板の場合、大板)に付与された品質情報を小売製品(鋼板の場合、小板製品)に伝達する際、出荷製品と小売製品が同一の鋼板であることを電気信号の伝達によって確認する手段をフェールセーフとして用いることを着想し、作業員が持ち運び可能な簡便な鋼材品質情報伝達装置および該装置による品質情報の伝達による鋼材品質管理方法を完成した。
【0019】
すなわち、本発明は、
(1)鋼材に貼り付けた一の情報記録媒体の固有情報を前記鋼材の他の場所に貼り付けた他の情報記録媒体へ転写する鋼材品質情報伝達装置であって、前記鋼材品質情報伝達装置は前記一の情報記録媒体と前記他の情報記録媒体が同一鋼板内に貼り付けられていることを電気信号により確認した後、前記一の情報記録媒体の固有情報を前記他の情報記録媒体に転写することを特徴とする鋼材品質情報伝達装置。
(2)鋼材に貼り付けた一の情報記録媒体の固有情報を前記鋼材の他の場所に貼り付けた他の情報記録媒体へ転写する鋼材品質情報伝達装置であって、前記鋼材品質情報伝達装置は前記一の情報記録媒体から固有情報を読み取る読取手段と鋼材内のみ伝達可能な特定信号を発信する発信手段と前記読取手段で読み取った固有情報と前記発信手段で発信された特定信号を決定づける信号情報(波形データなど)を発信する伝達手段とを具備した起点装置と、
前記起点装置の発信手段から発信された鋼材内を伝達する特定信号を受信する受信手段、前記起点装置の伝達手段で発信された固有情報と前記発信手段で発信された特定信号を決定づける信号情報を受信する受取手段、前記固有情報を他の情報記録媒体に転写する書込手段、および前記受信手段で受信した特定信号と前記受取手段で受信した前記発信手段で発信された特定信号を決定づける信号情報を比較して、同一であると判断した場合のみ前記書込手段で固有情報を他の情報記録媒体に転写することを許可する判定手段とを具備した転写装置を有し、
前記転写装置は、前記起点装置からの特定信号を受信した後、前記判定手段に従って前記他の情報記録媒体に前記一の情報記録媒体の固有情報を転写することを特徴とする鋼材品質情報伝達装置。
(3)鋼材に貼り付けた一の情報記録媒体の固有情報を前記鋼材の他の場所に貼り付けた他の情報記録媒体へ転写する鋼材品質情報伝達装置であって、前記鋼材品質情報伝達装置は前記一の情報記録媒体から固有情報を読み取る読取手段と、固有情報に含まれる当該鋼材を決定づける発信信号情報に基づく鋼材内のみ伝達可能な特定信号を発信する発信手段と前記読取手段で読み取った固有情報を発信する伝達手段とを具備した起点装置と、
前記起点装置の発信手段から発信された鋼材内を伝達する特定信号を受信する受信手段、前記起点装置の伝達手段で発信された固有情報を受信する受取手段、および固有情報を他の情報記録媒体に転写する書込手段を具備した転写装置を有し、
前記転写装置は前記受信手段で受信した鋼板内を伝達する特定信号と、固有情報に含まれる当該鋼材を決定づける発信信号情報にリンクした受信信号情報とを比較する判定手段を有し、前記判定手段で両者が同一であると判断した場合にのみ、情報記録媒体に固有情報を転写できるようにしたことを特徴とする鋼材品質情報伝達装置。
(4)鋼材を出荷製品から小売製品に切断加工する際に、鋼材の品質情報を出荷製品から小売製品に伝達する鋼材品質管理方法であって、出荷製品に貼り付けた、品質情報が入力された情報記録媒体から、切断加工前の小売製品となるべく鋼材位置の夫々に貼り付けた情報記録媒体に前記品質情報を(1)乃至(3)のいずれか一つに記載の鋼材品質情報伝達装置を用いて転写することを特徴とする鋼材品質管理方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば以下に述べる効果が得られ、産業上極めて有用である。
(1)同一鋼材内に貼り付けた情報記録媒体に対してのみ固有情報を転写できるようにしたので、加工業者は出荷製品(鋼板の場合、大板)から小売製品(鋼板の場合、小板製品)に加工する際、既に切断された異材の混入や転写ミスを完全に取り除くことが可能となる。
(2)固有情報を出荷製品(鋼板の場合、大板)から小売製品(鋼板の場合、小板製品)に確実に転写できるようにしたので、出荷製品(鋼板の場合、大板)の製品に対しては、1つの情報記憶媒体のみを貼り付ければよく、小売製品(鋼板の場合、小板製品)に対しては、切断の必要量に応じた情報記憶媒体のみを貼り付ければよく、結果として、加工流通過程におけるトータル管理コストを最小限に抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】マーキングによる品質情報の管理を示す図で(a)は製品情報や識別記号などがマーキングされた鋼板、(b)は鋼板表面の拡大図、(c)は鋼材の品質情報が記載されたミルシートを示す図。
【図2】本発明に係る鋼材品質情報伝達装置の構成を説明する図。
【図3】本発明の作用効果を示す模式図。
【図4】本発明の作用効果を示し、転写不可な場合を示す模式図。
【図5】本発明に係る鋼材品質情報伝達装置を用いた鋼材品質管理方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。説明は鋼板について行う。
図3は、本発明の一実施例に係る鋼材品質情報伝達装置の構成を説明する模式図で、図において1は鋼板(大板)、5は起点装置、51は鋼板1の内部のみ伝達可能な特定信号9を発信する発信手段、52は鋼板1に貼り付けた情報記録媒体8aの固有情報を読み取る読取手段,53は読取手段52で読み取った固有情報を発信する伝達手段、6は転写装置、61は発信手段51からの特定信号9を受信する受信手段、62は伝達手段53から発信される固有情報を受信する受取手段、63は受取手段62で受信した固有情報を情報記録媒体8bに書き込む書込手段、7は伝達手段53と受取手段62間の信号経路を示す。
【0023】
図示した鋼材品質情報伝達装置は、鉄鋼メーカーから出荷する際に、大板状態の鋼板1に貼り付けた情報記録媒体8aの固有情報を、鋼板1を大板から小板製品に切断加工する際、小板製品の寸法に罫書きされた鋼板1の各位置に貼り付けた情報記録媒体8bへ転写する。図では小板製品の寸法を示す罫書き線を省略している。
【0024】
鋼材品質情報伝達装置の起点装置5は情報記録媒体8aから固有情報を読み取る読取手段52と鋼板内のみ伝達可能な特定信号9を発信する発信手段51と読み取った固有情報と発信手段51で発信された特定信号9を決定づける信号情報(波形データなど)を発信する伝達手段53とを有する。情報記録媒体8aの固有情報として品質情報が重要であるが読み取る際、加工業者の管理データを追加することも可能である。
【0025】
発信手段51から発信する特定信号9として、鋼材内の亀裂発生状況の診断に用いる超音波や擬似ランダム信号(JFE技報No.11 p.50−55)などが利用できる。
【0026】
転写装置6は、起点装置5の発信手段51から発信された鋼板1の内部を伝達する特定信号9を受信する受信手段61と、起点装置5の伝達手段53で発信され、信号経路7で伝達された固有情報と発信手段51で発信された特定信号9を決定づける信号情報を受信する受取手段62、および受け取った固有情報を情報記録媒体8bに転写する書込手段63と、受信手段61で受信した特定信号9と受取手段62で受信した、発信手段51で発信された特定信号9を決定づける信号情報を比較して、同一であると判断した場合のみ書込手段63で固有情報を情報記録媒体8bに転写することを許可する判定手段(図示しない)とを有する。信号経路7は原則有線とするが、混線等による誤伝達がないことを確認できた場合は、無線としても良い。
【0027】
転写装置6は、起点装置5からの特定信号9を受信した後、判定手段(図示しない)の指示で小板製品(罫書き線10で区分された状態を示す)の夫々に貼り付けた情報記録媒体8b(図は一枚のみの場合を示す)に大板の情報記録媒体8aの固有情報を転写する。図4に本発明を模式的に示す。
【0028】
本発明は、起点装置5から転写装置6への固有情報の伝達機構に、フェールセーフとして鋼板内を伝達する特定信号9の送受信手段、および特定信号9を判定する判定手段を備えているので、加工業者は大板から小板製品に加工する際、図5に示すように特定信号9が伝達されない、既に切断された異材11や他の大板の情報記録媒体8aからの転写ミスを完全に取り除くことが可能となる。
【0029】
確実性を向上させる他の方法として、鋼板1を決定づける固有情報と特定信号9を一義的にリンクさせ、予備試験により特定信号9に対する受信信号情報を測定し、情報記録媒体8aに保管しておくことにより、受取手段62で受け取った前記受信信号情報と、受信手段61で受信した鋼板1の内部を伝達する特定信号9とを比較して両者が同一であると判断した場合にのみ、情報記録媒体8bに情報記録媒体8aの固有情報を転写できるようにしても良い。
【0030】
本発明に係る鋼材品質情報伝達装置を用いて鋼材に貼り付けた、品質情報が入力された情報記録媒体から、切断加工前の罫書きされた小板製品の夫々に貼り付けた情報記録媒体に前記品質情報を転写する場合、情報記録媒体としてICタグや電子透かしが利用できる。
【0031】
<情報記録媒体としてICタグを用いた鋼材品質管理方法>
(1)鉄鋼メーカーにて、鋼材表面の任意の位置に固有情報を記憶させたICタグを貼り付ける。この際、ICタグは、無理に剥がすと損傷して再利用できないといった不正防止機能を有しているものが望ましい。
【0032】
(2)製品を切断する加工業者は、事前に計画した切断位置の計測・罫書き等を行い、その後の加工状況や検査状況を考慮した最適位置に、切断数に相当する数のICタグ(記憶情報なし)を貼り付ける。
【0033】
(3)起点装置の読取手段を既存のICタグ位置にセットし、同時に発信手段を鋼材に接するようにセットする。
【0034】
(4)同様に、転写装置の書込手段を新たに貼り付けたICタグ位置にセットし、同時に受信手段を鋼材に接するようにセットする。
【0035】
(5)起点装置を作動させると、発信手段から特定の信号(例えば同一鋼材内のみ伝達される擬似ランダム波など)が鋼材内に発信されると同時に、発信された信号を決定づける信号情報(波形データなど)と、読取手段にて情報記憶媒体から読み取った固有情報が、転写装置に有線あるいは無線にて送信される。
【0036】
(6)転写装置の受信手段にて、鋼材内を伝達する特定の信号を受信するとともに、有線あるいは無線にて別途送信された信号情報を受信し、両者の信号を照合する。
【0037】
(7)照合した結果、両者の信号が同じである(起点装置と転写装置が同一鋼材上にある)と判定された場合は、転写装置の書込手段によってICタグ(記憶情報なし)に起点装置から送信された固有情報を書き込む。
【0038】
(8)両者の信号が不一致と判定された場合は、書込手段が作動せず、エラー信号を起点装置に送信する。転写装置が複数存在する場合は、(3)〜(8)を繰り返すか、信号経路を分岐させて一の起点装置と複数の転写装置を結びつけることにより、(3)〜(8)を同時に行ってもよい。
【0039】
図6に上記(1)〜(8)の工程をフローチャートで示す。図においてICタグを情報記憶媒体A,情報記憶媒体Bとし、発信手段は発振器、受信手段は受信センサーとする。
【0040】
<電子透かしを用いた鋼材品質管理方法>
(1)鉄鋼メーカーにて、鋼材表面の任意の位置に固有情報を暗号化し、電子透かしとしてレーザーマーキングする。この際、当然ながらバーコードやQRコードなどを利用することも考えられるが、汚れや傷に強く、サイズや形状に依存しない電子透かしマーキングが望ましい。
【0041】
(2)製品を切断する加工業者は、事前に計画した切断位置の計測・罫書き等を行い、その後の加工状況や検査状況を考慮して、転写すべき最適位置を決定する。
【0042】
(3)起点装置の読取手段を既存のレーザーマーキング位置にセットし、同時に発信手段を鋼材に接するようにセットする。
【0043】
(4)同様に、転写装置の書込手段を新たに転写すべきマーキング位置にセットし、同時に受信手段を鋼材に接するようにセットする。
【0044】
(5)起点装置を作動させると、発信手段から特定の信号が鋼材内に発信されると同時に、発信された特定信号を決定づける信号情報と、読取装置にて情報記憶媒体から読み取った固有情報が、転写装置に有線あるいは無線にて送信される。
【0045】
(6)転写装置の受信手段にて、鋼材内を伝達する特定の信号を受信するとともに、有線あるいは無線にて別途送信された信号情報を受信し、両者の信号を照合する。
【0046】
(7)照合した結果、両者の信号が同じである(起点装置と転写装置が同一鋼板上にある)と判定された場合は、転写装置の書込手段によって起点装置から送信された固有情報をレーザーマーキングにて書き込む。
【0047】
(8)両者の信号が不一致と判定された場合は、書込手段が作動せず、エラー信号を起点装置に送信する。転写装置が複数存在する場合は、(3)〜(8)を繰り返すか、信号経路を分岐させて一の起点装置と複数の転写装置を結びつけることにより、(3)〜(8)を同時に行ってもよい。
【0048】
また、加工業者にて切断位置を決定する際に、歩留まりを考慮した最適な配置を決定する(ネスティング)プログラムを使用するケースが多く、このようなプログラムを用いて転写すべきICタグあるいはマーキングの位置を決定することも含まれる。
【0049】
さらに、転写すべきICタグあるいはマーキングに、予め切断情報(位置、大きさ)を自動あるいは手動で書き込んだり、転写装置に切断情報を入力あるいは送信し、転写の際に、固有情報に加えて、切断情報を付加して書き込むことも可能である。
【0050】
この際は、もとの鋼材の形状・大きさと切断情報を照合して、もとの鋼材量を上回らないなどの判定を行うことで、入力ミス等を排除することが望ましい。
【0051】
また、ネットワークを介した鋼材管理を行う際には、例えば、もとの鋼材を特定する製品番号(ex.ABCD0001)に、枝番号を付加した製品番号(ex.ABCD0001−1)として転写することにより、ネットワーク上で切断情報を書き込むことも可能であり、もとの鋼材からどのように切断されたか、トータル量がもとの鋼材量を超えないかなどのチェックを行うこともできる。以上の説明は鋼板について行ったが、本発明は形鋼など他の形状の鉄鋼製品、更には素材内部で電気的信号の伝達が可能な素材にも適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 鋼板
2 製品情報
3 識別記号(鋼種など)
4 ミルシート
5 起点装置
51 発信手段
52 読取手段
53 伝達手段
6 転写装置
61 受信手段
62 受取手段
63 書込手段
7 信号経路
8a、8b 情報記憶媒体
9 特定信号
10 罫書き線
11 異材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材に貼り付けた一の情報記録媒体の固有情報を前記鋼材の他の場所に貼り付けた他の情報記録媒体へ転写する鋼材品質情報伝達装置であって、前記鋼材品質情報伝達装置は前記一の情報記録媒体と前記他の情報記録媒体が同一鋼板内に貼り付けられていることを電気信号により確認した後、前記一の情報記録媒体の固有情報を前記他の情報記録媒体に転写することを特徴とする鋼材品質情報伝達装置。
【請求項2】
鋼材に貼り付けた一の情報記録媒体の固有情報を前記鋼材の他の場所に貼り付けた他の情報記録媒体へ転写する鋼材品質情報伝達装置であって、前記鋼材品質情報伝達装置は前記一の情報記録媒体から固有情報を読み取る読取手段と鋼材内のみ伝達可能な特定信号を発信する発信手段と前記読取手段で読み取った固有情報と前記発信手段で発信された特定信号を決定づける信号情報(波形データなど)を発信する伝達手段とを具備した起点装置と、
前記起点装置の発信手段から発信された鋼材内を伝達する特定信号を受信する受信手段、前記起点装置の伝達手段で発信された固有情報と前記発信手段で発信された特定信号を決定づける信号情報を受信する受取手段、前記固有情報を他の情報記録媒体に転写する書込手段、および前記受信手段で受信した特定信号と前記受取手段で受信した前記発信手段で発信された特定信号を決定づける信号情報を比較して、同一であると判断した場合のみ前記書込手段で固有情報を他の情報記録媒体に転写することを許可する判定手段とを具備した転写装置を有し、
前記転写装置は、前記起点装置からの特定信号を受信した後、前記判定手段に従って前記他の情報記録媒体に前記一の情報記録媒体の固有情報を転写することを特徴とする鋼材品質情報伝達装置。
【請求項3】
鋼材に貼り付けた一の情報記録媒体の固有情報を前記鋼材の他の場所に貼り付けた他の情報記録媒体へ転写する鋼材品質情報伝達装置であって、前記鋼材品質情報伝達装置は前記一の情報記録媒体から固有情報を読み取る読取手段と、固有情報に含まれる当該鋼材を決定づける発信信号情報に基づく鋼材内のみ伝達可能な特定信号を発信する発信手段と前記読取手段で読み取った固有情報を発信する伝達手段とを具備した起点装置と、
前記起点装置の発信手段から発信された鋼材内を伝達する特定信号を受信する受信手段、前記起点装置の伝達手段で発信された固有情報を受信する受取手段、および固有情報を他の情報記録媒体に転写する書込手段を具備した転写装置を有し、
前記転写装置は前記受信手段で受信した鋼板内を伝達する特定信号と、固有情報に含まれる当該鋼材を決定づける発信信号情報にリンクした受信信号情報とを比較する判定手段を有し、前記判定手段で両者が同一であると判断した場合にのみ、情報記録媒体に固有情報を転写できるようにしたことを特徴とする鋼材品質情報伝達装置。
【請求項4】
鋼材を出荷製品から小売製品に切断加工する際に、鋼材の品質情報を出荷製品から小売製品に伝達する鋼材品質管理方法であって、出荷製品に貼り付けた、品質情報が入力された情報記録媒体から、切断加工前の小売製品となるべく鋼材位置の夫々に貼り付けた情報記録媒体に前記品質情報を(1)乃至(3)のいずれか一つに記載の鋼材品質情報伝達装置を用いて転写することを特徴とする鋼材品質管理方法。

【図2】
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【図5】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−65135(P2013−65135A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202589(P2011−202589)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】