説明

鋼板下地材

【課題】耐火タイルと共に耐火外壁構造を形成することにより、ロングサポートの点でミスマッチを生じることなく、優れた耐火性能を簡易に且つ安価に発揮させることのできる鋼板下地材を提供する。
【解決手段】表面に多数の耐火タイル12を掛着して、屋内側に火炎が侵入するのを防止する耐火外壁構造10を、外壁30に形成するための鋼板下地材11であって、外壁下地面13を覆って配置される被覆プレート14と、この被覆プレート14の表面側に交互に取付けられる複数の第1レールプレート15及び複数の第2レールプレート16とからなる。第1レールプレート15は、耐火タイル12の裏面の中間係止凹部17を斜め上方から係止させる斜め引掛け片18を備えると共に、耐火タイル12の裏面の下端部19aを密着させる下部密着段差部20を備える。第2レールプレート16は、耐火タイル12の裏面の上端部19bを密着させる上部密着段差部21を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板下地材に関し、特に、表面側に多数の耐火タイルを掛着させて、該耐火タイルと共に耐火外壁構造を形成して屋内側に火炎が侵入するのを防止する鋼板下地材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅建築物等の建物において、建物の外部から内部への火炎の侵入を効果的に防止できるようにするために、建物の外壁に耐火性能を付与することが望まれている。例えば準耐火45分の耐火性能として、非加熱側へ10秒を超えて継続する火炎の噴出がないこと、非加熱側で10秒を超えて継続する発炎がないこと、火炎が通る亀裂などの損傷を生じないこと等の、大臣認定試験と同様のIS0834に準拠した垂直加熱試験による所望の準耐火性能を備える耐火外壁構造が種々開発されている。
【0003】
これらの従来の耐火外壁構造では、例えば不燃性能を備えるタイルを表面材として使用すると共に、サイディング材やモルタルを下地材として用いて、サイディング材にタイルを引掛ける乾式工法や、モルタルにタイルを接着させる湿式接着工法等によってタイルを外壁部分に取り付けることによって形成されるものが主流であるが、従来の耐火外壁構造では、外壁の耐火性能は、サイディング材やモルタルによる下地材の耐火性能によって担保されるようになっており、これらの下地材に所望の耐火性能を付与するために多くの手間とコストを要することになる。
【0004】
また、タイルは耐用年数が非常に長い部材であるのに対して、サイディング材や接着剤は、その耐用年数が、タイルの耐用年数と比較して例えば30年程度と短いことから、例えば3世代住宅等の長期間に亘って使用される建物に、下地材としてサイディング材やモルタルを使用する場合には、下地材の改修やタイルの張り替えを行う必要を生じて、ロングサポートの点でミスマッチを生じることになる。
【0005】
一方、アルミニウム等の金属の押出し成形品によるタイル配設基板を下地材として用いて、建物の外壁面にタイルを長期的に安定した状態で固定し、且つ改修時や解体時には容易にタイルを着脱できるようにしたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−214219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、引用文献1のタイル配設基板は、金属製品であることから、固定されたタイルと共に優れた耐火性能を発揮できるものと考えられるが、押出し成形品であるためコストがかかることになると共に、相当の厚さを有するものとなって取り扱いが不便になる。また、引用文献1のタイル配設基板は、外壁の耐火性能の向上を意図して用いられるものではないため、耐火外壁構造の下地材として用いるには、特別の工夫を要することになる。
【0007】
本発明は、耐火タイルと組み合わせて耐火外壁構造を形成することにより、ロングサポートの点でミスマッチを生じることなく、且つ優れた耐火性能を簡易に且つ安価に発揮させることのできる鋼板下地材を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、建物の外壁の外壁下地面に沿って取り付けられ、表面側に多数の耐火タイルを掛着させて、該耐火タイルと共に耐火外壁構造を形成して屋内側に火炎が侵入するのを防止する鋼板下地材であって、前記外壁下地面を覆って配置される被覆プレートと、該被覆プレートの表面側に平行に延設して交互に取り付けられた複数の第1レールプレート及び複数の第2レールプレートとを含んで構成され、前記第1レールプレートは、前記耐火タイルの裏面に設けられた中間係止凹部を斜め上方から係止させる斜め引掛け片を上端部分に備えると共に、前記耐火タイルの裏面の下端部を密着させる下部密着段差部を下端部分に備えており、前記第2レールプレートは、前記耐火タイルの裏面の上端部を密着させる上部密着段差部を備えており、前記耐火タイルの裏面の前記中間係止凹部を前記斜め引掛け片に係止し、前記耐火タイルの裏面の下端部を前記下部密着段差部に密着させ、且つ前記耐火タイルの裏面の上端部を前記上部密着段差部に密着させた状態で前記耐火タイルが掛着されることにより、多数の前記耐火タイルは、各々、前記下部密着段差部及び前記上部密着段差部を介して前記被覆プレートから離間した状態で取り付けられる鋼板下地材を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
そして、本発明の鋼板下地材は、前記被覆プレートには、上下方向に延設して、裏面側に突出する突起溝が設けられており、該突起溝の裏面を前記外壁下地面に密着させて取り付けることにより、該突起溝以外の部分で前記被覆プレートと前記外壁下地面との間に間隔が保持されるようになっていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の鋼板下地材は、前記第1レールプレートの下端部には、前記下部密着段差部の下端部分をコの字形状に折り曲げてタイル受凹部が設けられており、前記耐火タイルの裏面の前記中間係止凹部を前記斜め引掛け片に係止した状態で、前記耐火タイルの下端装着突部が前記タイル受凹部に位置決め装着されるようになっていることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の鋼板下地材は、前記タイル受凹部の先端よりも先の部分が下方に向けてさらに外側に折り返されて、折返し重合部が形成されていることが好ましい。
【0012】
さらにまた、本発明の鋼板下地材は、前記折返重合せ部の下端が、前記タイル受凹部の下面よりも下方に突出していて、脱落防止片を形成していることが好ましい。
【0013】
また、本発明の鋼板下地材は、前記第1レールプレートの前記斜め引掛け片には、前記被覆プレートの突起溝と対応する位置に水抜き切欠き部が設けられていることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の鋼板下地材は、前記第1レールプレートの前記タイル受凹部の部分、及び前記第2レールプレートの前記上部密着段差部の部分には、前記被覆プレートの複数の前記突起溝の各中間部分に配置されて、中間部水抜き切欠き部が形成されていることが好ましい。
【0015】
さらにまた、本発明の鋼板下地材は、前記被覆プレート、前記第1レールプレート、及び前記第2レールプレートを形成する鋼板が、厚さが0.15〜3.5mmのガルバリューム鋼板であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の鋼板下地材によれば、耐火タイルと組み合わせて耐火外壁構造を形成することにより、ロングサポートの点でミスマッチを生じることなく、且つ優れた耐火性能を簡易に且つ安価に発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の好ましい一実施形態に係る鋼板下地材11は、図1及び図2に示すように、耐火タイル12と組み合わせて、建物として例えば木造の住宅建築物における、外壁30の屋外側の部分に設置される耐火外壁構造10を形成し、この耐火外壁構造10によって、外壁30に、建物の外部から内部への火炎の侵入を効果的に防止することが可能な、例えば準耐火45分の耐火性能を発揮させるようにするものである。
【0018】
すなわち、本実施形態の鋼板下地材11は、建物の外壁30の外壁下地面13に沿って取り付けられ、表面側に多数の耐火タイル12を掛着させて、これらの耐火タイル12と共に耐火外壁構造10を形成して屋内側に火炎が侵入するのを防止する下地材であって、外壁下地面13を覆って配置される被覆プレート14と、この被覆プレート14の表面側に平行に延設して交互に取り付けられた複数の第1レールプレート15及び複数の第2レールプレート16とを含んで構成される。第1レールプレート15は、耐火タイル12の裏面に設けられた中間係止凹部17を斜め上方から係止させる斜め引掛け片18を上端部分に備えると共に、耐火タイル12の裏面の下端部を密着させる下部密着段差部20を下端部分に備えており、第2レールプレート16は、耐火タイル12の裏面の上端部を密着させる上部密着段差部21を備えている。そして、耐火タイル12の裏面の中間係止凹部17を斜め引掛け片18に係止し、耐火タイル12の裏面の下端部を下部密着段差部20に密着させ、且つ耐火タイル12の裏面の上端部を上部密着段差部21に密着させた状態で耐火タイル12が掛着されることにより、多数の前記耐火タイル12は、各々、下部密着段差部20及び上部密着段差部21を介して被覆プレート14から離間した状態で取り付けられるようになっている。
【0019】
また、本実施形態では、被覆プレート14には、上下方向に延設して、裏面側に突出する突起溝22(図3参照)が設けられており、この突起溝22の裏面を外壁下地面13に密着させて取り付けられていることにより、突起溝22以外の部分で被覆プレート14と外壁下地面13との間に間隔s1が保持されるようになっている(図1参照)。
【0020】
さらに、本実施形態では、第1レールプレート15の下端部には、下部密着段差部20の下端部分をコの字形状に折り曲げてタイル受凹部24が設けられており、耐火タイル12の裏面の中間係止凹部17を第1レールプレート15の斜め引掛け片18に係止した状態で、下耐火タイル12の下端装着突部23がタイル受凹部24に位置決め装着されるようになっている。
【0021】
本実施形態では、建物の外壁30は、好ましくは耐力壁を構成するものであり、例えば柱や梁等の骨組部材(図示せず)に支持されて、これらの骨組部材の屋外側及び屋内側の面に耐力面材25が取り付けられるようになっており(図1参照)、また屋外側の耐力面材25の表面には、透湿防水シート26が敷設されている。この透湿防水シート26の表面を外壁下地面13として、本実施形態の鋼板下地材10が取り付けられることになる。
【0022】
なお、本実施形態では、骨組部材の屋内側の面に取り付けられた耐力面材(図示せず)には、内装仕上材等が適宜取り付けられ、屋外側の耐力面材25と屋内側の耐力面材との間の中空部分には、断熱材等が適宜配設されることになる。また、本実施形態では、屋外側の耐力面材25として、好ましくは特開2000−160732号公報に記載のパネル部材と同様の構成を備える、間隔をおいて平行に配置された複数の表側帯状小幅板と、間隔をおいて平行に配置された複数の裏側帯状小幅板とを互いに交差させた状態で接合一体化してなるクロスパネルが用いられている。
【0023】
そして、本実施形態の鋼板下地材11は、多数の耐火タイル12と共に外壁30の屋外側の部分に設置される耐火外壁構造10を構成する部材であり、図3及び図4にも示すように、好ましくは厚さが0.15〜3.5mm程度、さらに好ましくは厚さが0.4〜0.6mm程度のガルバリューム鋼板からなり、被覆プレート14と、第1レールプレート15と、第2レールプレート16とによって形成される。
【0024】
被覆プレート14は、例えば厚さが0.4mmのガルバリューム鋼板からなり、取り扱いに便利なように、例えば幅1820mm、高さ420mm程度の大きさの横長矩形形状に形成された複数の単位プレートを、周縁部を例えば5mm程度の幅で重ね合せて接合しつつ縦横に並べて配置することにより、外壁下地面13の全体を覆うようにして取り付けられる。なお、単位プレートは、その周縁部を、例えば柱や間柱等の外壁骨組部材が設けられた部分で重ね合せて接合するようにすることが好ましい。
【0025】
また、被覆プレート14には、ガルバリューム鋼板に折曲げ加工やプレス加工等を施すことにより、上下方向に延設して裏面側に突出する突起溝22が、例えば深さ4mm程度、幅13mm程度の略等脚台形の断面形状を有するように突出して、横方向に例えば227.5mm程度のピッチで複数設けられている。被覆プレート14を、突起溝22の裏面を透湿防水シート26による外壁下地面13に密着させて取り付けることにより、被覆プレート14と外壁下地面13との間に空気が流通可能な間隔s1が保持されることになる(図1参照)。
【0026】
そして、被覆プレート14の表面には、複数の第1レールプレート15と複数の第2レールプレート16とが、例えばスポット溶接、プレスカシメ等による接合方法によって、横方向に平行に延設した状態で、上下方向に交互に接合一体化されて取り付けられることになる。
【0027】
第1レールプレート15は、例えば厚さが0.6mmのガルバリューム鋼板に、折曲げ加工やプレス加工等を施すことによって形成される。第1レールプレート15には、被覆プレート14の表面に密着接合される中間平板部27の上方部分を、例えば45°の角度で斜め前方に折り曲げて、斜め引掛け片18が設けられており、また中間平板部27の下方部分を斜面部を介して前方に押し出すことにより、耐火タイル12の裏面の下端部19aを密着させる下部密着段差部20が、中間平板部27と平行な面に沿って配置されて設けられている。
【0028】
また、本実施形態では、第1レールプレート15の下端部には、下部密着段差部20の下端部分をコの字形状に折り曲げてタイル受凹部24が形成されており、このタイル受凹部24には、鋼板下地材11に掛着される耐火タイル12の下端装着突部23が装着されるようになっている。
【0029】
さらに、本実施形態では、タイル受凹部24の先端よりも先の部分が下方に向けてさらに外側に折り返されていて、折返し重合部28を形成している。またこの折返重合せ部28の下端は、タイル受凹部24の下面よりも下方に突出していて、脱落防止片29を形成している。
【0030】
タイル受凹部24の外側に折返し重合部28が形成されていることにより、タイル受凹部24を効果的に補強することが可能になる。また折返し重合部28の下端がタイル受凹部24の下面よりも下方に突出していて脱落防止片29が形成されていることにより、タイル受凹部24の下面と下段の耐火タイル12の上端面との間に介在して取り付けられる、後述する板ばねクリップ31が、取付け位置から脱落するのを効果的に回避することが可能になる。
【0031】
さらにまた、本実施形態では、第1レールプレート15の斜め引掛け片18には、被覆プレート14の突起溝22と対応する位置に、水抜き切欠き部32が設けられている。斜め引掛け片18の突起溝22と対応する位置に水抜き切欠き部32が設けられていることにより、鋼板下地材11と耐火タイル12との間に存在する水を、突起溝22を介してスムーズに排水することが可能になる。
【0032】
第2レールプレート16は、例えば厚さが0.4mmのガルバリューム鋼板に、折曲げ加工やプレス加工等を施すことによって形成される。第2レールプレート16には、被覆プレート14の表面に密着接合される下部平板部33の上方部分を斜面部を介して前方に押し出すことにより、耐火タイル12の裏面の上端部19bを密着させる上部密着段差部21が、下部平板部33と平行な面に沿って配置されて設けられている。
【0033】
なお、本実施形態では、第2レールプレート16は、その上部密着段差部21の上端縁部を、第1レールプレート15のタイル受凹部24の被覆プレート14側の下面角部分に下方から当接させるようにして、第1レールプレート15と上下方向に交互に取り付けられることになる。
【0034】
また、本実施形態では、第2レールプレート16の上部密着段差部21の部分、及び第1レールプレート15のタイル受凹部24の部分には、第1レールプレート15の斜め引掛け片18に設けられた複数の水抜き切欠き部32、及び被覆プレート14に設けられた複数の突起溝22の各中間部分に配置されて、中間部水抜き切欠き部34,35が形成されている。これらの中間部水抜き切欠き部34,35を介することにより、鋼板下地材11と耐火タイル12との間に存在する水を、さらにスムーズに排水することが可能になる。
【0035】
本実施形態の鋼板下地材11と共に耐火外壁構造10を構成する耐火タイル12は、例えば陶磁器製のタイル部材であり、図3に示すように、横長矩形の平面形状を有すると共に、例えば30mm程度の厚さを有している。耐火タイル12は、その表面及び裏面が平坦な面となるように形成されており、また裏面の上下方向中間部分には、上面17aが例えば45°の角度で斜め上方に切り欠かれた中間係止凹部17が形成されている。
【0036】
さらに、耐火タイル12の上端部の裏面側略半分の部分が、裏面側上端突部36として上方に突出していると共に、下端部の表面側略半分の部分が、表面側下端突部37として下方に突出している。さらにまた、耐火タイル12の裏面側下端部には、表面側下端突部37との間に係止溝38を介在させて当該表面側下端突部37よりも突出高さが小さな下端装着突部23が設けられている。この下端装着突部23は、上述のように、鋼板下地材11に耐火タイル12が掛着された際に、第1レールプレート15のタイル受凹部24に装着されることになる。
【0037】
また、本実施形態では、耐火タイル12は、両側の側端面の間を横方向に貫通して、貫通穴39が形成されており、耐火タイル12が横方向に連設配置された際に、複数の耐火タイル12の貫通穴39が横方向に直線状に連通するようになっている。横方向に連設配置される耐火タイル12の貫通穴39が横方向に直線状に連通することにより、耐火タイル12の中間部分に空気の流通路を確保して、耐火外壁構造10による耐火効果をさらに向上させることが可能になる。
【0038】
本実施形態の鋼板下地材11を用いて耐火外壁構造10を形成するには、例えば固定ビス等を用いて、外壁下地面13を覆うようにして鋼板下地材11を屋外側の耐力面材25に取り付けた後に、第1レールプレート15及び第2レールプレート16が一体接合された鋼板下地材11の表面に、多数の耐火タイル12を縦横に並べて掛着してゆく。
【0039】
すなわち、各耐火タイル12を、中間係止凹部17を第1レールプレート15の斜め引掛け片18に係止し、裏面の下端部19aを下部密着段差部20に密着させ、且つ裏面の上端部19bを第2レールプレート16の上部密着段差部21に密着させた状態で各々掛着してゆくことにより、耐火外壁構造10が、多くの手間を要することなく、簡易な作業によって容易に形成されることになる。ここで、各耐火タイル12の中間係止凹部17の上面17aは、鋼板下地材11の第1レールプレート15の斜め引掛け片18の上面に沿って係止されるので、耐火タイル12の重量によって、裏面の下端部19aや上端部19bを下部密着段差部20や上部密着段差部21に押し付ける方向の力が負荷されることになり、これによって各耐火タイル12の下端部19aや上端部19bを、下部密着段差部20や上部密着段差部21に安定した状態で密着させることが可能になる。
【0040】
また、本実施形態では、図3及び図1に示すように、第1レールプレート15のタイル受凹部24の下面と、下段の耐火タイル12の裏面側上端突部36の上端面との間に介在して、板ばねクリップ31が取り付けられる。タイル受凹部24の下面と、下段の耐火タイル12の上端面との間に板ばねクリップ31が介在することにより、当該板ばねクリップ31の弾性付勢力によって、各耐火タイル12の中間係止凹部17を第1レールプレート15の斜め引掛け片18に押し付ける力や、耐火タイル12の裏面の下端部19aや上端部19bを下部密着段差部20や上部密着段差部21に押し付ける力が負荷されることになり、さらに安定した状態で各耐火タイル12を鋼板下地材11に取り付けることが可能になる。
【0041】
そして、上述の構成を有する本実施形態の鋼板下地材11によれば、耐火タイル12と組み合わせて耐火外壁構造10を形成することにより、ロングサポートの点でミスマッチを生じることなく、且つ優れた耐火性能を簡易に且つ安価に発揮させることが可能になる。
【0042】
すなわち、本実施形態では、鋼板下地材11が、多数の耐火タイル12を外壁30に取り付けるための下地材として用いられているので、鋼板下地材11による優れた耐火性能及び長期間使用可能な長い耐用年数によって、同じように優れた耐火性能を備え且つ耐用年数も長い耐火タイル12と効果的にマッチングして、例えば3世代住宅等の長期間に亘って使用される建物においても、ロングサポートが可能な状態で耐火外壁構造10を容易に設けることが可能になる。
【0043】
また、本実施形態の鋼板下地材11は、好ましくは厚さが0.15〜3.5mm程度の薄いガルバリューム鋼板に折曲げ加工やプレス加工等を施したプレート部材を用いて形成されることから、金属製の押出し成形品と比較して加工等が容易で安価に形成することができると共に、全体の厚さも押出し成形品よりも薄くすることが可能になる。さらに、多数の耐火タイル12は、中間係止凹部17を第1レールプレート15の斜め引掛け片18に係止し、裏面の下端部19aを下部密着段差部20に密着させ、且つ裏面の上端部19bを第2レールプレート16の上部密着段差部21に密着させた状態で取り付けられて、下部密着段差部20及び上部密着段差部21を介して被覆プレート14から離間した状態を保持するようになっているので、耐火タイル12と被覆プレート14との間に空気が流通することになって、耐火外壁構造10による耐火性能をさらに向上させることが可能になる。
【0044】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、鋼板下地材は、ガルバリューム鋼板以外のその他の種々の鋼板を用いて形成することもできる。また、第1レールプレートの斜め引掛け片や第2レールプレートの上部密着段差部等に水抜き切欠き部を設ける必要は必ずしも無い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る鋼板下地材を用いて形成された耐火外壁構造の構成を説明する要部断面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る鋼板下地材を用いて形成された耐火外壁構造の構成を説明する部分切欠き略示正面図である。
【図3】本発明の好ましい一実施形態に係る鋼板下地材を用いて形成される耐火外壁構造の構成を説明する要部分解斜視図である。
【図4】本発明の好ましい一実施形態に係る鋼板下地材を用いて形成される耐火外壁構造の構成を説明する要部斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
10 耐火外壁構造
11 鋼板下地材
12 耐火タイル
13 外壁下地面
14 被覆プレート
15 第1レールプレート
16 第2レールプレート
17 中間係止凹部
18 斜め引掛け片
19a 耐火タイルの裏面の下端部
19b 耐火タイルの裏面の上端部
20 下部密着段差部
21 上部密着段差部
22 突起溝
23 下端装着突部
24 タイル受凹部
30 外壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁の外壁下地面に沿って取り付けられ、表面側に多数の耐火タイルを掛着させて、該耐火タイルと共に耐火外壁構造を形成して屋内側に火炎が侵入するのを防止する鋼板下地材であって、
前記外壁下地面を覆って配置される被覆プレートと、該被覆プレートの表面側に平行に延設して交互に取り付けられた複数の第1レールプレート及び複数の第2レールプレートとを含んで構成され、
前記第1レールプレートは、前記耐火タイルの裏面に設けられた中間係止凹部を斜め上方から係止させる斜め引掛け片を上端部分に備えると共に、前記耐火タイルの裏面の下端部を密着させる下部密着段差部を下端部分に備えており、前記第2レールプレートは、前記耐火タイルの裏面の上端部を密着させる上部密着段差部を備えており、
前記耐火タイルの裏面の前記中間係止凹部を前記斜め引掛け片に係止し、前記耐火タイルの裏面の下端部を前記下部密着段差部に密着させ、且つ前記耐火タイルの裏面の上端部を前記上部密着段差部に密着させた状態で前記耐火タイルが掛着されることにより、多数の前記耐火タイルは、各々、前記下部密着段差部及び前記上部密着段差部を介して前記被覆プレートから離間した状態で取り付けられる鋼板下地材。
【請求項2】
前記被覆プレートには、上下方向に延設して、裏面側に突出する突起溝が設けられており、該突起溝の裏面を前記外壁下地面に密着させて取り付けることにより、該突起溝以外の部分で前記被覆プレートと前記外壁下地面との間に間隔が保持される請求項1に記載の鋼板下地材。
【請求項3】
前記第1レールプレートの下端部には、前記下部密着段差部の下端部分をコの字形状に折り曲げてタイル受凹部が設けられており、前記耐火タイルの裏面の前記中間係止凹部を前記斜め引掛け片に係止した状態で、前記耐火タイルの下端装着突部が前記タイル受凹部に位置決め装着される請求項1又は2に記載の鋼板下地材。
【請求項4】
前記タイル受凹部の先端よりも先の部分が下方に向けてさらに外側に折り返されて、折返し重合部が形成されている請求項3に記載の鋼板下地材。
【請求項5】
前記折返重合せ部の下端は、前記タイル受凹部の下面よりも下方に突出していて、脱落防止片を形成している請求項4に記載の鋼板下地材。
【請求項6】
前記第1レールプレートの前記斜め引掛け片には、前記被覆プレートの突起溝と対応する位置に水抜き切欠き部が設けられている請求項2〜5のいずれかに記載の鋼板下地材。
【請求項7】
前記第1レールプレートの前記タイル受凹部の部分、及び前記第2レールプレートの前記上部密着段差部の部分には、前記被覆プレートの複数の前記突起溝の各中間部分に配置されて、中間部水抜き切欠き部が形成されている請求項2〜6のいずれかに記載の鋼板下地材。
【請求項8】
前記被覆プレート、前記第1レールプレート、及び前記第2レールプレートを形成する鋼板が、厚さが0.15〜3.5mmのガルバリューム鋼板である請求項1〜7のいずれかに記載の鋼板下地材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−156128(P2010−156128A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334348(P2008−334348)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【出願人】(509131683)株式会社パイオニア・コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】